JP3620334B2 - 薄膜ヒータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱式フローセンサなどに用いられる薄膜ヒータに関し、とくに流体中を飛来してくるゴミ等の異物の付着による影響を少なくするようにした薄膜ヒータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、気体や液体などの流体の流量や流速などを測定するために、薄膜ヒータを用いた感熱式のフローセンサが提案されている。この感熱式フローセンサは半導体基板の表面に絶縁性の薄膜を形成し、さらにこの薄膜の表面にヒータ線を形成した構成となっている。
【0003】
また、半導体基板表面のヒータ線形成領域に対向する領域には、エッチングにより空隙部を形成し、薄膜のみでヒータ線を橋架状に支持することで、ヒータ線を半導体基板から熱的に絶縁した構成となっている。
【0004】
空隙部を形成するには、例えば半導体基板の表面の薄膜に多数の細いスリットを穿設し、このスリットから溶液にてエッチングすることで形成する。各々のスリットの幅は10〜20μmと微細に形成することで、薄膜と半導体基板との隙間にゴミ等の異物が入るのを少なくしている。これによってセンサとしての動作安定性や、橋架状部の熱的独立性が高いことによる検出精度の高さなど、優れた利点を有するフローセンサが得られる(特許公報第2602117号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スリットが微細であるとしても、スリットのエッジ部分に流体中のゴミが付着してしまい、本来熱絶縁のために設けている薄膜の熱容量が変化し、ヒータの安定性が劣化してしまうことがあった。
【0006】
また、薄膜上にヒータ線をパタニングして形成しているため、薄膜とヒータ線との境界位置にヒータ線の厚み分の段差が発生する。そのため、流体中のゴミがスリットに付着することなく流れたとしても、ヒータ線と薄膜との段差に捕らえられて付着してしまう。ヒータ線に直接ゴミが付着してしまうと、当然のことながらヒータとしての動作が安定せず、検出感度、再現性等が劣化してしまうことになる。
【0007】
また、ゴミが付着しにくい構造を考えたとしても、薄膜を堆積させてヒータ線を形成しているため、表面にラフネス、段差等が発生するので、実際の使用時において、ゴミ等の異物の付着は避けがたいものとなってしまう。また、ゴミトラップなどの構造を設けても流体が逆流したり、トラップに捕獲されたゴミなどにより乱流が発生した際にゴミが巻き上げられ、ヒータ線およびヒータ周囲の薄膜にダストが再付着してしまうことがあった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、ゴミ等の異物の付着による影響を少なくするように構成した薄膜ヒータを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の薄膜ヒータは、半導体基板の表面に形成された薄膜と、薄膜の表面に形成されたヒータ部と、ヒータ部に対向して半導体基板の表面側に開口するように該半導体基板に形成された空隙部と、ヒータ部の周囲を取り囲む状態で形成された一対の細線状の導電性部材からなる電位トラップと、電位トラップの両導電性部材を互いに接続するためのスイッチと、電位トラップに電位を印加するための電源と、を備え、導電性部材は、それぞれ一方の端部に電源と接続するための電源接続部を備え、他方の端部がスイッチを介して互いに接続されており、スイッチが開かれているときは各導電性部材がそれぞれ電源より印加された正又は負の電位をもつことにより流体中のダスト・ミスト等を吸着すると共に、スイッチが閉じられているときは両導電性部材が同時に発熱して、吸着したダスト・ミスト等を燃やして除去する構成を有するものである。
【0010】
本発明によれば、ヒータ部の周囲に電位を持つ電位トラップを設けることによって、電荷を有しているダスト・ミストなどの異物を引き寄せ、ヒータ部へ到達する異物を減少させるという作用を有する。
【0011】
本発明の請求項2記載の薄膜ヒータは、請求項1記載の発明において、電位トラップは、ヒータ部に電源を供給するリード配線に接続され、リード配線から電位が印加される構成を有するものである。
【0012】
本発明によれば、電位トラップによって異物を引き寄せ、ヒータ部へ到達する異物を減少させることができる。しかもヒータ部に供給する電源と電位トラップに供給する電源とを共通の電源とすることができ、さらにヒータ部の配線と電位トラップを構成する導電性部材とを同一工程で形成することができるという作用を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による薄膜ヒータの実施の形態を示す平面図(a)およびそのA−A線上の概略的断面図(b)である。この薄膜ヒータ1は、単結晶シリコンからなる半導体基板2の表面に、酸化膜および窒化膜からなる薄膜3が形成された構成を有している。
【0014】
薄膜3の表面には、中央部に多結晶シリコンからなるヒータ部4が凹字状に形成され、このヒータ部4の外側には周囲三方を囲むかたちで導電性を有する外側配線5aおよび内側配線5bからなる電位トラップ5が形成されている。
【0015】
ヒータ部4および電位トラップ5は、ポリシリコンにリン(P)等の不純物をイオンインプラによりドーピングし、拡散することによって抵抗体にしておく。不純物のドープ量や拡散条件を変更することによって、抵抗値は容易に変更可能である。
【0016】
また、ヒータ部4および電位トラップ5の表面には、酸化膜、窒化膜などから構成された保護膜6が形成されている。ヒータ部4の端部はアルミニウムまたは金等によりワイヤパッド7a,7bが形成されている。電位トラップ5の外側配線5aの両端にやはりアルミニウムまたは金等によりワイヤパッド8a、8cを接続し、内側配線5bの両端に同じくアルミニウムまたは金等によりワイヤパッド8b、8dを接続した構成となっている。
【0017】
ワイヤパッド7a,7bおよびワイヤパッド8a〜8dを形成する際は、最上面にある保護膜6のワイヤパッド形成領域の一部に貫通孔を開け、ヒータ部4および電位トラップ5の配線に通じるポリシリコンを露出させる。その状態でアルミニウムや金などの金属をスパッタリングによって形成し、パタニングしてワイヤパッド7a,7bおよびワイヤパッド8a〜8dを形成する。
【0018】
そして、最後に薄膜3および保護膜6に複数の微小な貫通孔を開け、半導体基板2を露出させる。そして、水酸化カリウム(KOH)等のエッチング液により半導体基板2を表面側からエッチングし、空隙部9を形成する。この結果、ヒータ部4は空隙部9上の薄膜3のみで架橋状に支えられるため、熱絶縁性の優れた構造になっている。なお、半導体基板2に形成する空隙部9は、図2に示すように、半導体基板2の裏面側からエッチングによって形成してもよい。
【0019】
そして、ヒータ部4に接続されたワイヤパッド7a,7b間に電源E1を接続し、電位トラップ5に接続されたワイヤパッド8a,8b間に電源E2を接続し、さらに電位トラップ5に接続されたワイヤパッド8c,8d間にスイッチSWを接続する。これによって抵抗体であるヒータ部4が発熱する。
【0020】
また、電位トラップ5は、外側配線5aがワイヤパッド8aを介して電源E2の陽極に接続され、内側配線5bがワイヤパッド8bを介して電源E2の陰極に接続されると共に、外側配線5aに接続されたワイヤパッド8dと内側配線5bに接続されたワイヤパッド8bとがスイッチSWを介して接続されており、通常の使用時にはスイッチSWはオフ(開)にしておく。この時、電位トラップ5の外側配線5aは正の電荷を持ち、電位トラップ5の内側配線5bは負の電荷をもつと共に微小な隙間で隣接しているので、電位トラップ5はあたかもコンデンサの要領で各配線5a,5bに正の電荷および負の電荷が蓄積されて、これらの電荷によって流体中のダスト・ミストを捕獲することができる。
【0021】
このとき、たとえ流体に逆流や乱流が発生しても、電気的な引力によってしっかりと捕獲するため、捕らえたゴミが再び流れ出すことはない。その結果、ヒータ部4および空隙部9上のメンブレンに付着するゴミが激減し、ヒータの精度や再現性が向上する。
【0022】
電位トラップ5にゴミが付着したとき、または一定期間毎に定期的にスイッチSWをオン(閉)すると、電源E2から外側配線5a、スイッチSW、内側配線5bの順に電流が流れる。これによって抵抗体である外側配線5aおよび内側配線5bが発熱する。
【0023】
このとき発生する熱を利用して捕獲したゴミを燃やし除去する。この工程は熱を発生するため、フローセンサのヒータに用いた場合は測定が不正確になる可能性がある。そのため、フローセンサの測定を停止するモードを用意しておき、スイッチSWをオンするときは測定停止モードに設定する。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、ゴミが付着したとき、または定期的に電位トラップ5に電流を流して発熱させることでゴミを炭化し除去することが可能となる。このため、電位トラップ5で収集可能なゴミのキャパシティが増え、長期に渡りゴミトラップ機能が働く素子となる。
【0025】
なお、2つの電源E1,E2を用いたが、電源を1つにしてヒータ部4および電位トラップ5を電気的に並列接続するようにしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ヒータ部の周囲に細線状の導電性部材からなる電位トラップを設け、この電位トラップに電位を持たせることによって、電荷を有しているゴミ等の異物を引き寄せ、ヒータ部へ到達する異物を減少させるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による薄膜ヒータの平面図(a)およびそのA−A線上の概略的断面図(b)である。
【図2】図1に示す薄膜ヒータの他の実施の形態を示すA−A線上の概略的断面図である。
【符号の説明】
1 薄膜ヒータ
2 半導体基板
3 薄膜
4 ヒータ部
5 電位トラップ
5a 外側配線
5b 内側配線
6 保護膜
7a,7b ワイヤパッド
8a〜8d ワイヤパッド
9 空隙部
E1,E2 電源

Claims (2)

  1. 半導体基板の表面に形成された薄膜と、
    前記薄膜の表面に形成されたヒータ部と、
    前記ヒータ部に対向して前記半導体基板の表面側に開口するように該半導体基板に形成された空隙部と、
    前記ヒータ部の周囲を取り囲む状態で形成された一対の細線状の導電性部材からなる電位トラップと
    前記電位トラップの両導電性部材を互いに接続するためのスイッチと、
    前記電位トラップに電位を印加するための電源と、
    を備え、
    前記導電性部材は、それぞれ一方の端部に前記電源と接続するための電源接続部を備え、他方の端部が前記スイッチを介して互いに接続されており、
    前記スイッチが開かれているときは前記各導電性部材がそれぞれ前記電源より印加された正又は負の電位をもつことにより流体中のダスト・ミスト等を吸着すると共に、前記スイッチが閉じられているときは前記両導電性部材が同時に発熱して、前記吸着したダスト・ミスト等を燃やして除去するように構成した、
    ことを特徴とする薄膜ヒータ。
  2. 前記電位トラップは、前記ヒータ部に電源を供給するリード配線に接続され、前記リード配線から電位が印加されることを特徴とする請求項1記載の薄膜ヒータ。
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