JP3620167B2 - 再熱式軸流蒸気タービン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再熱式軸流蒸気タービン、詳しくはタービンのケーシング構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、本発明の実施対象となる再熱式軸流蒸気タービンの従来構成を図3に示す。図において、1は車室を構成するタービンケーシング、2はロータ、3は高圧部、4は低圧部、5は再熱器、6は蒸気加減弁である。ここで、タービンケーシング1は、単シリンダの外部ケーシング7と、外部ケーシング7の内部に高圧部3,低圧部4にそれぞれ対応する高圧内部ケーシング8,低圧内部ケーシング9を組み込んだ二重ケーシング構造としてなり、また、高圧内部ケーシング8,低圧内部ケーシング9は、それぞれケーシング胴の中央部から外周側に張出した鍔状のフランジ部8a,9aを外部ケーシング7の周溝部に嵌合して軸方向に固定するとともに、該フランジ部8a,9aを隔壁として高圧部と低圧部の境界をシールしている。
【0003】
一方、ロータ2はその回転軸上に表した固定点Aにスラスト軸受を設置して軸方向に固定しており、かつ外部ケーシング7のロータ軸貫通部,および高圧内部ケーシング8の蒸気入口側(低圧部4との境界部)のロータ軸貫通部をラビリンスパッキン10で封止している。なお、低圧内部ケーシング9は単純な静翼ホルダとしてなる。
【0004】
かかる構成で、蒸気加減弁6を通じてケーシング1に導入した主蒸気は、高圧内部ケーシング8の高圧蒸気流入口(低圧部4との境界側に開口している)8bから高圧部3の内部を流れ、その出口から外部ケーシング7内に流出した後、外部ケーシング7の高圧蒸気流出口(高圧蒸気流入口と反対側に開口している)7aを通じて外部に取り出され、再熱器5で再熱された後に外部ケーシング7開口した再熱蒸気入口7bを通じて低圧部4に導入される。
【0005】
上記から判るように、従来のタービンでは、高圧部3に流れる蒸気流と低圧部4に流れる蒸気流とが逆向きとなるカウンタフロー方式とし、ロータ2に加わる軸方向の推力を相殺し合うようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のように高圧部と低圧部とで蒸気流の通流方向が逆のカウンターフロー方式とした従来の蒸気タービンでは、次記のような問題点がある。
1)高圧内部ケーシング8に対する蒸気流による冷却が行えない。すなわち、高圧部3を出た蒸気流はある程度膨張して温度も低下しているが、そのまま外部ケーシング7の高圧蒸気流出口7aを通じて外部に取り出されために高圧内部ケーシング8を冷却することはない。
【0007】
かかる点、高圧部3から流出した蒸気流を高圧部の出口から反転させて高圧内部ケーシングの外周側を軸方向に沿って流してやれば、高圧内部ケーシングを効果的に冷却できる。しかして、図3の構成で高圧内部ケーシングの外周側に高圧排気蒸気を反転して流すには、そのフランジ部8a,および外部ケーシング7の高圧排気口7aをできるだけ高圧内部ケーシング8の蒸気入口側に寄せる必要がある。
【0008】
しかしながら、図3のカウンターフロー方式では、固定点(スラスト軸受)Aを支点とする熱膨張に起因するロータ2の軸方向の伸び(矢印P)と、フランジ部8aを固定点Bとする高圧内部ケーシング8の軸方向の伸び(矢印Q)とが互いに逆方向であることから、前記のようにフランジ部8aを蒸気入口側に寄せると、それだけロータ2と高圧内部ケーシング8との相対的な軸方向の伸び差が大きくなり、このためにロータ2の動翼と高圧内部ケーシング8の静翼との間の隙間Sを大きくとる必要があって無駄な設計となる。
【0009】
2)ロータの危険速度が低くなり、ロータの安定性が低下する。すなわち、図3で示すようにカウンターフロー方式の構成では、主蒸気導入口がロータ2の高圧部3と低圧部4の中間付近に配置されていることから、必然的に高圧部3と低圧部4の中間のロータ胴径φ1 が小径となり、このためにロータ全体の剛性が小さくなるほか、ロータの危険速度が下がる。特に、図示のような単一ケーシング内に高圧部,低圧部を組み込んだの再熱式タービンではロータ2の軸受間のスパンが長くなり、かつその軸上に高圧部3,低圧部4が設けてあることから危険速度の回転数が低くなってタービンの定格回転数が安定限界速度(一般には危険速度の2〜3倍)に近くなるために、ロータの回転が不安定域になる傾向にある。
【0010】
本発明は上記の点にかんがみなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、高圧内部ケーシングの蒸気排気流による冷却,ロータと高圧内部ケーシングとの間の伸び差低減,ロータの不安定振動の軽減が図れるように改良した再熱式軸流蒸気タービンを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、本発明により次記のように構成することで達成される。
1)タービンケーシングが、単シリンダの外部ケーシングの内側に高圧部,低圧部に対応する高圧内部ケーシング,低圧内部ケーシングを組み込んだ二重ケーシング構造であり、蒸気加減弁を通じて高圧部に導入した蒸気の高圧排気流を外部ケーシングの高圧蒸気流出口より取り出して再熱した後、低圧部に導入して流す再熱式の軸流蒸気タービンにおいて、蒸気流をシングルフロー方式として高圧部,低圧部を流れる蒸気流が同じ方向となるように低圧部を高圧部の蒸気出口側に配置するとともに、外部ケーシングの高圧蒸気流出口を高圧蒸気流入口と同じ側に設け、高圧部から流出した蒸気流の向きを反転させて高圧内部ケーシングと外部ケーシングの間の空間に流し、高圧内部ケーシングを冷却した後に高圧蒸気流出口より取り出すように構成する。
【0012】
前記構成によれば、高圧部を通流して温度の低下した高圧蒸気の排気流が高圧部の出口から反転して高圧内部ケーシングの外側を迂回して流れので、この蒸気排気流で高圧内部ケーシングを効果的に冷却することかできる。
また、前記構成のように蒸気流をシングルフロー方式として、高圧部の蒸気出口側に低圧部の再熱蒸気入口が並ぶように配置したことにより、高圧部と低圧部の間のロータ中間胴部が太くなってロータ全体の剛性が増し、これに相応して危険速度も高くなる。これにより、ロータの安定限界速度が定格回転数から十分に離れるようになるのでロータの安定性が増す。
【0013】
2)また、前記の冷却方式と併せて本発明によれば、前項1)の構成において、外部ケーシングに対する高圧内部ケーシングの軸方向の固定点を、ロータの固定点に近い高圧蒸気流入口側に設定した上で、前記固定点に合わせて高圧内部ケーシングから左右に突き出したアームを外部ケーシングに係止して軸方向に固定するものとする。
【0014】
かかる構成により、高圧部の出口から反転して高圧内部ケーシングの外側に迂回する蒸気流の流れを阻害することがなく、かつタービン運転時には、前記アームを固定点とする高圧内部ケーシングの軸方向の伸びとロータの伸びが同じ方向となるので、両者間の相対的な伸び差が小さくなる。したがって、その分だけ高圧部における動翼と静翼との間の隙間を小さく設計してタービン内部効率の改善が図れる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1,図2に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図3に対応する同一部材には同じ符号が付してある。
図示実施例においては、図3の従来構成と比べて高圧部3の向きが逆であり、後段の低圧部4と同様に蒸気入口が左側,出口が右側に来るように配置し、これで高圧部3を流れる蒸気流と低圧部4を流れる蒸気流が同じ方向のシングルフロー方式に構成している。
【0016】
また、このシングルフローの配置に合わせて高圧内部ケーシング8の蒸気流入口8bは左端の上面に開口しており、かつ高圧内部ケーシング8は蒸気流入口側に位置を合わせてケーシングの外周から左右に突き出した一対の固定アーム8cを設けるとともに、該アーム8cを外部ケーシング7の内周面側に形成した凹溝部に嵌合して係合支持し、このアーム支持点を外部ケーシング7に対する高圧内部ケーシング8の軸方向に固定点Bとしている。一方、低圧内部ケーシング9は、再熱蒸気の導入口側でロータ2の軸貫通部をラビリンスパッキン10でシールしている。
【0017】
かかる構成で、蒸気加減弁6を通じてケーシング1に導入した主蒸気は、高圧内部ケーシング8の蒸気流入口8bから右側に向けて高圧部3の中を流れ、その出口から外部ケーシング7に出た後に方向を反転して高圧内部ケーシング8と外部ケーシング7との間の空間を逆方向に通流し、その終端から外部ケーシング7の高圧蒸気流出口7aを通じて外部に取り出される。これにより、高圧内部ケーシング8がその外周側を流れる排気流(膨張して温度が低下している)で冷却される。なお、高圧内部ケーシング8は、図3で示したような仕切隔壁となるフランジ部8aを設けず、左右一対の支持アーム8cを介して外部ケーシング7に固定しているので、前記のように高圧内部ケーシング8の外周側を迂回する蒸気排気流の流れを阻害することがない。
【0018】
また、外部ケーシング7に対する高圧内部ケーシング8の固定点Bは、ロータ2の固定点(支持点)Aに近づけて外部ケーシング7の左端側に位置しているので、タービン運転時の熱膨張による高圧内部ケーシング7の軸方向の伸びは、ロータ2の伸びと同じ方向になる。したがって、ロータ2と高圧内部ケーシング8との相対的な伸び差が小さく、動翼と静翼との間の隙間Sが殆ど不変の状態に保てる。
【0019】
さらに、蒸気流をシングルフロー方式とし、これに合わせて図示のように高圧部3の蒸気出口側の後段に低圧部4が並ぶように配置したことにより、高圧部と低圧部の間のロータ中間胴部が必然的に太くなり、その外径φ2 が図3のφ1 に比べて大きくなる。これにより、ロータ2の剛性が増すとともに、ロータの危険速度も高くなってロータの安定限界速度がタービンの定格回転数から十分に離れるようになり、この結果として運転時におけるロータの安定性が向上する。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の構成によれば、蒸気流をシングルフロー方式とし、これに合わせてタービンケーシング内に高圧部,低圧部,および高圧内部ケーシング,低圧内部ケーシングを請求項1,2のように配置したことにより、次記の効果を奏する。
【0021】
1)高圧部を通過して温度の低下した蒸気排気流を高圧内部ケーシングと外部ケーシングとの間の空間に流して高圧内部ケーシングを効果的に冷却することができる。
2)外部ケーシングに対する高圧内部ケーシングの軸方向の固定点を、ロータの固定点と同じ側に設定してタービン運転時における伸びの方向を合わせるようにしたことにより、ロータと高圧内部ケーシングの相対的な軸方向の伸び差を小さくして動翼と静翼との間の隙間を殆ど不変の状態に保つことができ、これによりタービン内部効率の改善が図れる。
【0022】
3)従来の構成と比べてロータ全体の剛性が増すとともに、ロータの危険速度も高くなってロータの安定限界速度が定格回転数から十分に離れるようになるので、これによりロータの振れ回り現象を防いで運転時の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による再熱式軸流タービンの構成を示す縦断側面図
【図2】図1における固定アームの取付け部を含めたタービンケーシングの軸方向の断面図
【図3】従来における再熱式軸流タービンの構成断面図
【符号の説明】
1 タービンケーシング
2 ロータ
3 高圧部
4 低圧部
5 再熱器
6 蒸気加減弁
7 外部ケーシング
7a 高圧蒸気流出口
7b 再熱蒸気流入口
8 高圧内部ケーシング
8b 高圧蒸気流入口
8c 固定アーム
9 低圧内部ケーシング
10 ラビリンスパッキン
A ロータの軸方向の固定点
B 外部ケーシングに対する高圧内部ケーシングの固定点

Claims (2)

  1. タービンケーシングが、単シリンダの外部ケーシングの内側に高圧部,低圧部に対応する高圧内部ケーシング,低圧内部ケーシングを組み込んだ二重ケーシング構造であり、蒸気加減弁を通じて高圧部に導入した蒸気の高圧排気流を外部ケーシングの高圧蒸気流出口より取り出して再熱した後、低圧部に導入して流す再熱式軸流蒸気タービンにおいて、蒸気流をシングルフロー方式として高圧部,低圧部を流れる蒸気流が同じ方向となるように低圧部を高圧部の蒸気出口側に配置するとともに、外部ケーシングの高圧蒸気流出口を高圧蒸気流入口と同じ側に設け、高圧部から流出した蒸気流の向きを反転させて高圧内部ケーシングと外部ケーシングの間の空間に流し、高圧内部ケーシングを冷却した後に高圧蒸気流出口より取り出すようにしたことを特徴とする再熱式軸流蒸気タービン。
  2. 請求項1記載の蒸気タービンにおいて、外部ケーシングに対する高圧内部ケーシングの軸方向の固定点を、ロータの固定点に近い高圧蒸気流入口側に設定した上で、前記固定点に合わせて高圧内部ケーシングから左右に突き出した固定アームを外部ケーシングに係止して軸方向に固定したことを特徴とする再熱式軸流蒸気タービン。
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