JP3620149B2 - エンジンおよび変速機の一体制御装置 - Google Patents
エンジンおよび変速機の一体制御装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3620149B2 JP3620149B2 JP15488896A JP15488896A JP3620149B2 JP 3620149 B2 JP3620149 B2 JP 3620149B2 JP 15488896 A JP15488896 A JP 15488896A JP 15488896 A JP15488896 A JP 15488896A JP 3620149 B2 JP3620149 B2 JP 3620149B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- engine
- torque
- speed
- transmission
- automatic transmission
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02T—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
- Y02T10/00—Road transport of goods or passengers
- Y02T10/10—Internal combustion engine [ICE] based vehicles
- Y02T10/12—Improving ICE efficiencies
Landscapes
- Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
- Control Of Transmission Device (AREA)
- Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
- Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両におけるエンジンおよびこれに連結された変速機を制御するための装置に関し、特にバルブタイミングによって変更することのできるトルク特性を、変速機で設定される変速比に応じて設定するエンジンとこれに連結された変速機を制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの出力の向上の要因として充填効率を向上させることが知られており、そこで従来では、エンジン回転数に応じてバルブの開閉タイミングを変更することが行われている。その制御は、例えば高回転用と低回転用との二つのカムをカムシャフトに取り付けておき、これをエンジン回転数に応じて選択的に作用させることによって行い、あるいはプーリーとカムシャフトとの相対的な取付け位相を、エンジン回転数に応じて連続的に変化させてバルブの開閉のタイミングを変更することにより行っている。その結果、従来のエンジンでは、低中速回転でのトルクを向上させて車両の発進加速性が良好になってきている。
【0003】
一方、車両の駆動性能は、エンジンの出力のみによらず変速機で設定される変速段によっても異なる。すなわち自動変速機を搭載した車両では、変速比の大きい変速段を多用するように変速制御を行い、またその変速比を大きい値に設定すれば、変速比に応じてトルクが増大するから、駆動トルクが大きくなる。したがって車両全体としては、エンジンと自動変速機とを総合的に制御することが好ましく、例えば特開平7−238845号公報に記載されている発明では、ギヤ位置すなわち変速段に応じて、エンジン出力の切り換え基準点すなわちバルブタイミングの変更基準回転数を変更するようにしている。
【0004】
より具体的には、ローギヤやリバースギヤでエンジン回転数を低くして走行している場合には、その変速段や回転数に応じてバルブタイミングを設定するが、その状態でアクセルペダルを大きく踏み込んでエンジン回転数が増大すると、スロットル開度の増大に伴うエンジントルクの増大に加えて、出力特性(バルブタイミング)が変更されることによるトルクの増大が生じる。そこで、上記の公報に記載された発明では、所定の低速段では、エンジン回転数が増大してもバルブタイミングが変化しないように前記基準点を変更している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来一般には、低車速時のトルクが低下しないようにバルブタイミングを変更してエンジン出力を向上させており、また上記の公報に記載された発明では、アクセル操作に伴うエンジントルクの増大と出力特性の変更に伴うトルクの増大とが重畳しないようにしている。いずれにしても従来では、低速段で低速走行する場合にも充分なトルクが得られるようにしている。
【0006】
しかるに前述したように車両の全体としての駆動トルクは、変速機で設定される変速比によっても異なるのであり、したがって多段化あるいはワイドレンジ化した変速機を搭載している車両では、前進段での最低速段である第1速や後進段では、その変速比がかなり大きくなる。そのためこれらの変速段に対応するエンジントルク特性として高トルクの特性を設定するとすれば、エンジントルクが大きいことに加えて変速機でのトルクの増大が顕著になるので、僅かなアクセル操作量でも大きい駆動トルクが生じ、ドライバビリティが損なわれる可能性があった。
【0007】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、ドライバビリティを損なうことなくエンジントルク特性を制御することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じてバルブタイミングを変えて所定のスロットル開度に対する出力トルクが異なる他のトルク特性にトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記自動変速機でのアップシフトの際のイナーシャ相を検出するイナーシャ相検出手段と、前記アップシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記イナーシャ相検出手段で検出されたイナーシャ相中に開始するトルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載した発明は、前記自動変速機が該自動変速機で設定される変速段に応じて複数の異なるトルク特性が設定されるように変速段に応じてバルブタイミングを変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記イナーシャ相検出手段と、前記トルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
したがって請求項1あるいは請求項5に記載した発明では、エンジントルク特性の変更に伴う駆動トルクの変化が、アップシフトでのイナーシャ相で生じてアップシフトに伴うトルク変化に紛れ込んだ状態になり、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0012】
さらに請求項2に記載した発明は、複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じてバルブタイミングを変えてトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記自動変速機でのダウンシフトを検出するダウンシフト検出手段と、前記ダウンシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記ダウンシフト検出手段で検出されたダウンシフトの終了までの時間が予め定めた時間になった時点に開始するトルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
そのダウンシフトの終了までの予め定めた時間は、請求項4に記載されているように、前記ダウンシフトを達成する一方向クラッチが係合する時点より所定時間前とすることができる。
また、請求項6に記載した発明は、請求項2に記載した発明の前記車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記ダウンシフト検出手段と、前記ダウンシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記ダウンシフト検出手段で検出されたダウンシフトの終了前の所定期間に至った時点に開始するトルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
したがって請求項2あるいは請求項4あるいは請求項6に記載した発明では、エンジントルク特性の変更に伴うトルク変化が、ダウンシフトが終了する前に実行され、したがってダウンシフトによって変速比が大きくなっている時点では低速側のトルクに低下しているので、駆動トルクの変動要因が重畳しないことと相まって、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0014】
そして請求項3に記載した発明は、後進段を設定するレンジと複数の前進段を設定するレンジとを含む複数のレンジを設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定されるレンジに応じてバルブタイミングを変えてトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、後進段を設定するレンジに対応させたエンジンのトルク特性と前進段での最低速段に対応させたエンジンのトルク特性とがほぼ等しく設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
したがって請求項3に記載した発明では、後進レンジと前進レンジとのレンジの誤判定が生じても、これらの走行レンジでの発進の際には、エンジンのトルク特性がほぼ同じになるため、車両の駆動性能に変化が特にはなく、その結果、レンジの誤判定に伴う違和感を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図面を参照して具体的に説明する。先ずこの発明で対象とする車両の全体的な制御系統を簡単に説明すると、図6はその全体的な制御系統図であって、自動変速機1を連結してあるエンジン2は、その出力を電気的に制御するように構成されており、サーボモータからなるスロットルアクチュエータ3によって駆動される電子スロットルバルブ4が吸気管路5に設けられている。一方、エンジン2の出力を制御するためのアクセルペダル6の踏み込み量すなわちアクセル開度は、図示しないセンサによって検出され、その検出信号がエンジン用電子制御装置(E−ECU)7に入力されている。この電子制御装置7は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置7には、制御のためのデータとして、エンジン(E/G)回転数Ne 、吸入空気量Q、スロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチ、カムポジションセンサ、クランクポジションセンサ、ノックセンサからの信号などの各種の信号が入力されている。そしてこれらのデータに基づいて電子スロットルバルブ4の開度を制御し、またエンジン2の燃料噴射量および点火時期ならびにバルブタイミングを変えるオイルコントロールバルブ(OCV)などを制御するようになっている。
【0017】
ここでエンジン2のトルク特性を制御するための機構について簡単に説明する。図6に示すエンジン2は、連続可変バルブタイミング機構(VVT)を備えており、吸気バルブの開閉タイミングを調整することによりトルク特性を制御するようになっている。すなわち図7において、符号8はインテークカムシャフトを示しており、その一端部には外周面にヘリカルスプラインを形成したギヤピース9が固定されている。またこのギヤピース9の外周に油圧ピストン10が液密状態を保って軸線方向に前後動自在でかつ回転自在に嵌合されている。
【0018】
この油圧ピストン10はギヤピース9におけるヘリカルスプラインに噛合する内歯としてのヘリカルスプラインを形成した円筒部を有し、この円筒部の外周には、ねじれ角がギヤピース9におけるヘリカルスプラインとは反対のヘリカルスプラインが形成されている。この油圧ピストン10の外周には、有底円筒状の油圧シリンダ11が液密状態に嵌合されている。この油圧シリンダ11の内周面には、油圧ピストン10における外周側のヘリカルスプラインに噛合したヘリカルスプラインが形成されている。
【0019】
さらにインテークカムシャフト8の外周で前記油圧シリンダ11の先端側には、インテークカムタイミングプーリー12が液密状態を保って回転自在に嵌合されており、油圧ピストン11の開口側の先端部がこのプーリー12の側面に液密状態を保って密着固定されている。したがって油圧シリンダ11の内部には、油圧ピストン10を挟んだ両側(図での左右両側)に油圧室である進角室と遅角室とが形成されており、前記インテークカムシャフト8には、これらの油圧室に連通する油路13,14が形成されている。
【0020】
そしてこれらの油路13,14がオイルコントロールバルブ15に連通されている。このオイルコントロールバルブ15は、前記エンジン用電子制御装置7によってデューティ制御され、そのデューティ比に応じて調圧した油圧を油路13,14のいずれか一方から供給し、かつ他方からドレーンし、これにより油圧ピストン10を図7の左右いずれかに移動させ、また油圧の給排を止めて油圧ピストン10を所定の位置に保持するようになっている。
【0021】
したがって油圧ピストン10が軸線方向に移動すると、油圧シリンダ11との間のヘリカルスプラインの作用によって油圧シリンダ11と油圧ピストン10とが相対的に回転し、かつ油圧ピストン10とインテークカムシャフト8に固定したギヤピース9との間のヘリカルスプラインの作用によって油圧ピストン10とインテークカムシャフト8とが相対的に回転する。すなわち油圧ピストン10が軸線方向に移動することにより、インテークカムシャフト8が油圧シリンダ11およびプーリー12に対して相対的に回転する。その結果、インテークカムシャフト8に固定してある吸気バルブ用のカムのクランク角に対する実質的な位相が変化し、バルブタイミングおよびそれに伴うエンジントルク特性が変化するようになっている。
【0022】
一方、自動変速機1は、油圧制御装置16によって変速およびロックアップクラッチやライン圧あるいは所定の摩擦係合装置の係合圧が制御される。その油圧制御装置16は、電気的に制御されるように構成されており、また変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4 、ライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLT、アキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLN、ロックアップクラッチや所定の摩擦係合装置の係合圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUが設けられている。
【0023】
これらのソレノイドバルブに信号を出力して変速やライン圧あるいはアキュームレータ背圧などを制御する自動変速機用電子制御装置(T−ECU)17が設けられている。この自動変速機用電子制御装置17は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置17には、制御のためのデータとしてスロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号、シフトポジション、パターンセレクトスイッチからの信号、オーバードライブスイッチからの信号、後述するクラッチC0 の回転速度を検出するC0 センサからの信号、自動変速機の油温、マニュアルシフトスイッチからの信号、出力トルクを検出するトルクセンサからの信号などが入力されている。
【0024】
またこの自動変速機用電子制御装置17とエンジン用電子制御装置7とは、相互にデータ通信可能に接続されており、エンジン用電子制御装置7から自動変速機用電子制御装置17に対しては、1回転当たりの吸入空気量(Q/Ne )などの信号が送信され、また自動変速機用電子制御装置17からエンジン用電子制御装置7に対しては、各ソレノイドバルブに対する指示信号と同等の信号および変速段を指示する信号などが送信されている。
【0025】
すなわち自動変速機用電子制御装置17は、入力されたデータおよび予め記憶しているマップに基づいて変速段やロックアップクラッチのON/OFF、あるいはライン圧や係合圧の調圧レベルなどを判断し、その判断結果に基づいて所定のソレノイドバルブに指示信号を出力し、さらにフェールの判断やそれに基づく制御を行うようになっている。またエンジン用電子制御装置7は、入力されたデータに基づいて燃料噴射量や点火時期あるいは電子スロットルバルブ4の開度ならびにバルブタイミングを変更することによるトルク特性などを制御することに加え、自動変速機1での変速時に燃料噴射量を削減し、あるいは点火時期を変え、もしくは電子スロットルバルブ4の開度を絞ることにより、出力トルクを一時的に低下させるようになっている。
【0026】
図8は上記の自動変速機1の歯車列の一例を示す図であり、ここに示す構成では、前進5段・後進1段の変速段を設定するように構成されている。すなわちここに示す自動変速機1は、トルクコンバータ20と、副変速部21と、主変速部22とを備えている。そのトルクコンバータ20は、ロックアップクラッチ23を有しており、このロックアップクラッチ23は、ポンプインペラ24に一体化させてあるフロントカバー25とタービンランナ26を一体に取付けた部材(ハブ)27との間に設けられている。エンジンのクランクシャフト(それぞれ図示せず)はフロントカバー25に連結され、またタービンランナ26を連結してある入力軸28は、副変速部21を構成するオーバードライブ用遊星歯車機構29のキャリヤ30に連結されている。
【0027】
この遊星歯車機構29におけるキャリヤ30とサンギヤ31との間には、多板クラッチC0 と一方向クラッチF0 とが設けられている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ31がキャリヤ30に対して相対的に正回転(入力軸28の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ31の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部21の出力要素であるリングギヤ32が、主変速部22の入力要素である中間軸33に接続されている。さらにその多板クラッチC0 の回転数すなわち入力回転数を検出するためのC0 センサ34が設けられている。
【0028】
したがって副変速部21は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構29の全体が一体となって回転するため、中間軸33が入力軸28と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ31の回転を止めた状態では、リングギヤ32が入力軸28に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0029】
他方、主変速部22は三組の遊星歯車機構40,50,60を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構40のサンギヤ41と第2遊星歯車機構50のサンギヤ51とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構40のリングギヤ43と第2遊星歯車機構50のキャリヤ52と第3遊星歯車機構60のキャリヤ62との三者が連結され、かつそのキャリヤ62に出力軸65が連結されている。さらに第2遊星歯車機構50のリングギヤ53が第3遊星歯車機構60のサンギヤ61に連結されている。
【0030】
この主変速部22の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構50のリングギヤ53および第3遊星歯車機構60のサンギヤ61と中間軸33との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構40のサンギヤ41および第2遊星歯車機構50のサンギヤ51と中間軸33との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0031】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構40および第2遊星歯車機構50のサンギヤ41,51の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ41,51(すなわち共通サンギヤ軸)とケーシング66との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ41,51が逆回転(入力軸28の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構40のキャリヤ42とケーシング66との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構60のリングギヤ63の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがケーシング66との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ63が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0032】
上記の自動変速機1では、各クラッチやブレーキを図9の作動表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図9において○印は係合状態、●印はエンジンブレーキ時に係合状態、△印は係合・解放のいずれでもよいこと、空欄は解放状態をそれぞれ示す。
【0033】
上述したエンジン2は、図7に示す機構によりバルブタイミングすなわちエンジントルク特性を連続的に変化させることができる。これに対して自動変速機1は、前進段として5段の変速段を設定でき、その最低ギヤ比と最高ギヤ比との幅が広く(ワイドレンジ)、第1速でのギヤ比が一般的な自動変速機における第1速のギヤ比より大きくなっている。また図9の作動表に示すように、後進段(Rレンジ)では、ブレーキB0 を係合させて副変速部21を高速段に設定しているが、それでも後進段でのギヤ比がある程度大きくなる。そこでこの発明にかかる制御装置は、エンジン回転数が低回転数の場合のトルクの落ち込みが生じないようにバルブタイミングを図7に示す機構によって制御し、自動変速機1で設定される各変速段ごとのエンジントルク特性を設定するが、第1速と後進段については、低回転数側(低スロットル開度側)のトルクが他の変速段でのトルク特性より低くなるように制御する。
【0034】
図1はそのための制御ルーチンを概念的に示しており、入力信号の読み込みやタイマあるいはフラグなどの初期化を含む入力信号の処理(ステップ1)を行った後に各センサが正常か否かを判断する(ステップ2)。これは、出力信号とその結果行われた制御の内容を示す入力信号との矛盾によって判断でき、通常行われている判断制御を採用すればよい。
【0035】
いずれかのセンサに異常があってステップ2で否定判断された場合には、所期どおりの制御を行うことができないので、特に制御を行うことなくこのルーチンから抜ける。また肯定判断された場合には、後進段を設定するためのRレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ3)。この判断は、シフト装置(図示せず)に設けられているシフトポジションスイッチの出力信号に基づいて行うことができる。
【0036】
Rレンジが選択されていないことによりステップ3で否定判断された場合には、レンジを問わずに第1速が設定されているか否かを判断する(ステップ4)。前述したように自動変速機用電子制御装置17は、車速やスロットル開度ならびに予め記憶しているマップなどに基づいて変速段を判断し、その変速段を設定するようソレノイドバルブS1 ,〜S3 に信号を出力するので、その変速信号に基づいて第1速か否かを判断することができる。
【0037】
第1速が設定されていてステップ4で肯定判断された場合には、エンジントルク特性として図2に線Aで示す第1速用特性を設定する(ステップ5)。これに対してステップ4で否定判断された場合には、エンジントルク特性として図2に線Bで示す第2〜5速用特性を設定する(ステップ6)。
【0038】
ここでこれらのエンジントルク特性について説明すると、エンジン回転数が低回転数の場合には、シリンダでの充填効率(体積効率)が低いなどの理由でトルクが低下するのが一般的であり、そこで上述したエンジン2では、吸気バルブのバルブタイミングを変更してトルクを向上させている。そのトルク特性は、各変速段ごとに設定されており、第2速ないし第5速でのエンジントルク特性は、図2の線Bで示すように、可及的にフラットな特性に設定されている。これに対して第1速に対応させたエンジントルク特性(図2の線A)は、エンジン回転数が所定の値以下の場合、すなわちスロットル開度が所定値以下の低開度の場合に、トルクが他の前進段でのトルクより低くなる特性に設定されている。
【0039】
したがって上記の制御装置によってエンジン2および自動変速機1を制御すると、第1速の低回転時(低スロットル開度時)には、エンジントルクが低く抑えられるのに対して、自動変速機1でのギヤ比(すなわちトルクの増大効果)が大きくなり、その結果、両者相まって車両全体としての駆動トルクが過大にならず、アクセルペダル6をわずか踏み込んでも車両が大きく前進するいわゆる飛び出し感を防止することができ、ひいてはドライバビリティが向上する。
【0040】
また一方、Rレンジが選択されていることによりステップ3で肯定判断された場合、エンジントルク特性として図2に線Cで示す後進用特性を設定する(ステップ7)。このエンジントルク特性は、図2に示すように、エンジン回転数の中高速域まで(すなわち低中スロットル開度域で)トルクを他の変速段でのトルクより低く抑える特性である。
【0041】
一般に、後進走行は、低車速の方が操舵が容易になり、またいわゆる飛び出し感を防ぐうえから低トルクであることが望ましい。したがってRレンジ用のエンジントルク特性を上記のように設定することにより、過剰な駆動トルクとなることを防止してドライバビリティを向上させることができる。
【0042】
なお、第1速用のエンジントルク特性とRレンジ用のエンジントルク特性とは、他の前進段での特性におけるトルクより低トルクとなるように設定されていればよく、したがって第1速用のトルク特性とRレンジ用のトルク特性とは同一もしくは近似したものであってよい。すなわち図2に示すように特に異ならせなくてもよい。このようにすれば、シフトポジションセンサのフェールなどによってRレンジと他のレンジとのレンジの誤判定が生じても、発進時のエンジントルクが同一もしくはほぼ同じになるので、違和感を防止できる。
【0043】
上記のように変速段ごとにエンジントルク特性を設定した場合、一つのエンジン回転数に対して複数のトルクが対応して存在することになる。すなわちエンジン回転数が変化しなくても、自動変速機1での変速が生じると、エンジントルクが増大もしくは低下することになる。そこでこの発明にかかる制御装置は、変速に起因する駆動トルクの変化と変速に伴うエンジントルク特性の変化とが重畳することによるショックの悪化を防止するために、変速およびエンジントルク特性の変更とを以下のように制御する。
【0044】
図3はその制御ルーチンを概念的に示しており、入力信号処理(ステップ11)および各センサの正常判断(ステップ12)を、図1に示す制御ルーチンにおけると同様にして行い、センサに異常があればリターンし、またセンサが正常に機能していれば、Rレンジへのマニュアルシフトを判断する(ステップ13)。この判断は、シフト装置から自動変速機用電子制御装置17に入力されるシフトポジションセンサからの信号に基づいて判断することができる。
【0045】
Rレンジへのシフトが生じていないことによりステップ13で否定判断された場合には、第1速との間の変速が発生しているか否か判断する(ステップ14)。これは、車速やスロットル開度などに基づいて判断することができる。このステップ14で否定判断された場合にはリターンし、肯定判断された場合には、その変速が第1速からのアップシフトか否かを判断する(ステップ15)。なお、このステップ14およびステップ15が請求項3のダウンシフト検出手段に相当する。
【0046】
第1速からの変速がアップシフトであってステップ15で肯定判断された場合には、そのアップシフト制御におけるイナーシャ相が開始したか否かを判断する(ステップ16)。このステップ16が請求項2のイナーシャ相検出手段に相当し、この判断は、従来知られている方法によって行うことができ、例えば、出力軸回転数に変速前の変速比を掛けた値と入力回転数NC0との差が所定の値に達したことによって判断することができる。そしてイナーシャ相の開始を待って、すなわちステップ16で肯定判断された後に、エンジントルク特性の変更制御、具体的には、図7に示す機構によるバルブタイミングの変更を実行する(ステップ17)。
【0047】
上記の制御をパワーオン・アップシフト時に実行した場合の入力回転数NC0、出力トルクTO 、入力トルクTT の変化を図4のタイムチャートに実線で概略的に記載してある。図4において、t0 時点で変速が開始し、それに伴って入力回転数NC0が低下してイナーシャ相が開始する(t1 時点)。これとほぼ同時にエンジントルク特性が第2速などの他の変速段に対応した特性に変更され、その分、エンジントルクが増大するので、入力トルクTT は実線で示す勾配で増大する。
これに対してエンジントルク特性の変更を変速終了後に実行した場合には、図4に一点鎖線で示すように変化する。すなわち入力トルクは、第1速のエンジントルク特性に応じて変化するので、変化勾配が相対的に小さくなり、それに伴って入力回転数が相対的に早い時期に同期回転数に到達する。その際にトルクが低下するが、その直後にエンジントルク特性が変更されて入力トルクが増大するので、出力トルクもそれに応じて増大する。その結果、トルクが変速終了時期に一旦落ち込んだ後に増大することになり、これがショックの原因になる。
【0048】
前述したように制御してイナーシャ相中にエンジンのトルク特性を変更すれば、変速に伴うトルク変化の中でエンジントルク特性の変更に伴うトルク変化が紛れ込んだ状態になるので、ショックが悪化することが防止される。
【0049】
他方、第1速との間の変速がアップシフトではないことにより、すなわちダウンシフトであることにより、ステップ15で否定判断された場合には、ステップ18に進んで変速終了前の所定期間に至ったか否かを判断する。そしてこのステップ17で肯定判断されて変速終了までの時間が予め設定した所定の時間内に入ると、ステップ17に進んでエンジントルク特性を変更する。この場合は、第1速に対応して決めてあるエンジントルク特性となるようバルブタイミングを設定する。
【0050】
この場合のタイムチャートを図5に実線で示してあり、変速開始時点t10の後、入力回転数および変速比ならびに出力回転数から求められる変速終了までの時間TCYC が、予め設定した時間TRTに一致した時点t11でエンジントルク特性が第1速用の特性に変更される。したがって入力トルクが低下するとともに、入力回転数の変化勾配が低下する。その結果、第1速を設定する第2一方向クラッチがF2 が係合する際の入力トルクが低下しているために、第2一方向クラッチF2 が係合することに伴う衝撃が緩和され、ショックを防止することができる。
【0051】
これに対して変速の終了によってエンジントルク特性を第1速用の特性に変更する場合には、図5に一点鎖線で示すように、第1速への同期の時点t12では入力トルクが大きいトルクになっているので、第2一方向クラッチF2 の係合によってトルクが大きく変動し、その後にエンジントルク特性の変更によって入力トルクが低下するので、出力トルクも大きく低下する。その結果、変速終了時点でのトルクの変化が急激なものとなり、ショックが悪化する。
【0052】
なお、ステップ13で肯定判断された場合、すなわちRレンジへのシフトが判断された場合には、直ちにステップ17に進んでエンジントルク特性をRレンジ用の特性に変更する。したがってステップ17が請求項1および請求項2および請求項5および請求項6におけるトルク特性変更手段に相当する。
【0053】
以上、この発明の具体例について説明したが、この発明は、図7に示すバルブタイミング制御機構以外の機構によりエンジントルク特性を変更するよう構成したエンジンや図8に示すギヤトレーン以外のギヤトレーンを備えた自動変速機を対象とする制御装置に適用することができる。また上記の例では、前進第1速でのエンジントルク特性を低回転数側(低スロットル開度側)で低トルクとなるものに設定したが、他の低速側の変速段についても同様にエンジントルク特性を設定してもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1あるいは請求項5の発明によれば、アップシフトに伴うエンジントルク特性の変更がそのアップシフトでのイナーシャ相中に生じるので、エンジントルク特性の変更によるトルク変化が、アップシフトに伴うトルク変化に紛れ込んだ状態になり、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0056】
さらに請求項2あるいは請求項4あるいは請求項6に記載した発明によれば、ダウンシフトに伴うエンジントルク特性の変更が、そのダウンシフトの終了する前に実行され、ダウンシフトによって変速比が大きくなっている時点では低速側のトルクに低下しているので、駆動トルクの変動要因が重畳しないことと相まって、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0057】
そして請求項3に記載した発明では、後進段を設定するレンジに対応させたエンジンのトルク特性と前進段での最低速段に対応させたエンジンのトルク特性とがほぼ等しく設定されているので、後進レンジと前進レンジとのレンジの誤判定が生じても、これらの走行レンジでの発進の際には、エンジンのトルク特性がほぼ同じになるため、車両の駆動性能に変化が特にはなく、その結果、レンジの誤判定に伴う違和感を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Rレンジおよび第1速に応じたエンジントルク特性を設定するための制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図2】バルブタイミングを変更することによる各変速段に対応したエンジントルク特性を模式的に示す線図である。
【図3】変速に伴うエンジン出力の変更のタイミングの制御のためのルーチンを示すフローチャートである。
【図4】第1速からのアップシフト時のタイムチャートである。
【図5】第1速へのダウンシフト時のタイムチャートである。
【図6】この発明の一例を説明するための全体的な制御系統図である。
【図7】バルブタイミングを連続的に変更するための機構の一例を示す断面図である。
【図8】この発明で対象とする自動変速機におけるギヤトレーンの一例を示すスケルトン図である。
【図9】この自動変速機での各変速段を設定するための摩擦係合装置の係合作動表を示す図表である。
【符号の説明】
1 自動変速機
2 エンジン
7 エンジン用電子制御装置
8 インテークカムシャフト
10 油圧ピストン
12 インテークカムタイミングプーリー
15 オイルコントロールバルブ
17 自動変速機用電子制御装置
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両におけるエンジンおよびこれに連結された変速機を制御するための装置に関し、特にバルブタイミングによって変更することのできるトルク特性を、変速機で設定される変速比に応じて設定するエンジンとこれに連結された変速機を制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの出力の向上の要因として充填効率を向上させることが知られており、そこで従来では、エンジン回転数に応じてバルブの開閉タイミングを変更することが行われている。その制御は、例えば高回転用と低回転用との二つのカムをカムシャフトに取り付けておき、これをエンジン回転数に応じて選択的に作用させることによって行い、あるいはプーリーとカムシャフトとの相対的な取付け位相を、エンジン回転数に応じて連続的に変化させてバルブの開閉のタイミングを変更することにより行っている。その結果、従来のエンジンでは、低中速回転でのトルクを向上させて車両の発進加速性が良好になってきている。
【0003】
一方、車両の駆動性能は、エンジンの出力のみによらず変速機で設定される変速段によっても異なる。すなわち自動変速機を搭載した車両では、変速比の大きい変速段を多用するように変速制御を行い、またその変速比を大きい値に設定すれば、変速比に応じてトルクが増大するから、駆動トルクが大きくなる。したがって車両全体としては、エンジンと自動変速機とを総合的に制御することが好ましく、例えば特開平7−238845号公報に記載されている発明では、ギヤ位置すなわち変速段に応じて、エンジン出力の切り換え基準点すなわちバルブタイミングの変更基準回転数を変更するようにしている。
【0004】
より具体的には、ローギヤやリバースギヤでエンジン回転数を低くして走行している場合には、その変速段や回転数に応じてバルブタイミングを設定するが、その状態でアクセルペダルを大きく踏み込んでエンジン回転数が増大すると、スロットル開度の増大に伴うエンジントルクの増大に加えて、出力特性(バルブタイミング)が変更されることによるトルクの増大が生じる。そこで、上記の公報に記載された発明では、所定の低速段では、エンジン回転数が増大してもバルブタイミングが変化しないように前記基準点を変更している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来一般には、低車速時のトルクが低下しないようにバルブタイミングを変更してエンジン出力を向上させており、また上記の公報に記載された発明では、アクセル操作に伴うエンジントルクの増大と出力特性の変更に伴うトルクの増大とが重畳しないようにしている。いずれにしても従来では、低速段で低速走行する場合にも充分なトルクが得られるようにしている。
【0006】
しかるに前述したように車両の全体としての駆動トルクは、変速機で設定される変速比によっても異なるのであり、したがって多段化あるいはワイドレンジ化した変速機を搭載している車両では、前進段での最低速段である第1速や後進段では、その変速比がかなり大きくなる。そのためこれらの変速段に対応するエンジントルク特性として高トルクの特性を設定するとすれば、エンジントルクが大きいことに加えて変速機でのトルクの増大が顕著になるので、僅かなアクセル操作量でも大きい駆動トルクが生じ、ドライバビリティが損なわれる可能性があった。
【0007】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、ドライバビリティを損なうことなくエンジントルク特性を制御することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じてバルブタイミングを変えて所定のスロットル開度に対する出力トルクが異なる他のトルク特性にトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記自動変速機でのアップシフトの際のイナーシャ相を検出するイナーシャ相検出手段と、前記アップシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記イナーシャ相検出手段で検出されたイナーシャ相中に開始するトルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載した発明は、前記自動変速機が該自動変速機で設定される変速段に応じて複数の異なるトルク特性が設定されるように変速段に応じてバルブタイミングを変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記イナーシャ相検出手段と、前記トルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
したがって請求項1あるいは請求項5に記載した発明では、エンジントルク特性の変更に伴う駆動トルクの変化が、アップシフトでのイナーシャ相で生じてアップシフトに伴うトルク変化に紛れ込んだ状態になり、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0012】
さらに請求項2に記載した発明は、複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じてバルブタイミングを変えてトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記自動変速機でのダウンシフトを検出するダウンシフト検出手段と、前記ダウンシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記ダウンシフト検出手段で検出されたダウンシフトの終了までの時間が予め定めた時間になった時点に開始するトルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
そのダウンシフトの終了までの予め定めた時間は、請求項4に記載されているように、前記ダウンシフトを達成する一方向クラッチが係合する時点より所定時間前とすることができる。
また、請求項6に記載した発明は、請求項2に記載した発明の前記車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、前記ダウンシフト検出手段と、前記ダウンシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記ダウンシフト検出手段で検出されたダウンシフトの終了前の所定期間に至った時点に開始するトルク特性変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
したがって請求項2あるいは請求項4あるいは請求項6に記載した発明では、エンジントルク特性の変更に伴うトルク変化が、ダウンシフトが終了する前に実行され、したがってダウンシフトによって変速比が大きくなっている時点では低速側のトルクに低下しているので、駆動トルクの変動要因が重畳しないことと相まって、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0014】
そして請求項3に記載した発明は、後進段を設定するレンジと複数の前進段を設定するレンジとを含む複数のレンジを設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定されるレンジに応じてバルブタイミングを変えてトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、後進段を設定するレンジに対応させたエンジンのトルク特性と前進段での最低速段に対応させたエンジンのトルク特性とがほぼ等しく設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
したがって請求項3に記載した発明では、後進レンジと前進レンジとのレンジの誤判定が生じても、これらの走行レンジでの発進の際には、エンジンのトルク特性がほぼ同じになるため、車両の駆動性能に変化が特にはなく、その結果、レンジの誤判定に伴う違和感を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図面を参照して具体的に説明する。先ずこの発明で対象とする車両の全体的な制御系統を簡単に説明すると、図6はその全体的な制御系統図であって、自動変速機1を連結してあるエンジン2は、その出力を電気的に制御するように構成されており、サーボモータからなるスロットルアクチュエータ3によって駆動される電子スロットルバルブ4が吸気管路5に設けられている。一方、エンジン2の出力を制御するためのアクセルペダル6の踏み込み量すなわちアクセル開度は、図示しないセンサによって検出され、その検出信号がエンジン用電子制御装置(E−ECU)7に入力されている。この電子制御装置7は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置7には、制御のためのデータとして、エンジン(E/G)回転数Ne 、吸入空気量Q、スロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチ、カムポジションセンサ、クランクポジションセンサ、ノックセンサからの信号などの各種の信号が入力されている。そしてこれらのデータに基づいて電子スロットルバルブ4の開度を制御し、またエンジン2の燃料噴射量および点火時期ならびにバルブタイミングを変えるオイルコントロールバルブ(OCV)などを制御するようになっている。
【0017】
ここでエンジン2のトルク特性を制御するための機構について簡単に説明する。図6に示すエンジン2は、連続可変バルブタイミング機構(VVT)を備えており、吸気バルブの開閉タイミングを調整することによりトルク特性を制御するようになっている。すなわち図7において、符号8はインテークカムシャフトを示しており、その一端部には外周面にヘリカルスプラインを形成したギヤピース9が固定されている。またこのギヤピース9の外周に油圧ピストン10が液密状態を保って軸線方向に前後動自在でかつ回転自在に嵌合されている。
【0018】
この油圧ピストン10はギヤピース9におけるヘリカルスプラインに噛合する内歯としてのヘリカルスプラインを形成した円筒部を有し、この円筒部の外周には、ねじれ角がギヤピース9におけるヘリカルスプラインとは反対のヘリカルスプラインが形成されている。この油圧ピストン10の外周には、有底円筒状の油圧シリンダ11が液密状態に嵌合されている。この油圧シリンダ11の内周面には、油圧ピストン10における外周側のヘリカルスプラインに噛合したヘリカルスプラインが形成されている。
【0019】
さらにインテークカムシャフト8の外周で前記油圧シリンダ11の先端側には、インテークカムタイミングプーリー12が液密状態を保って回転自在に嵌合されており、油圧ピストン11の開口側の先端部がこのプーリー12の側面に液密状態を保って密着固定されている。したがって油圧シリンダ11の内部には、油圧ピストン10を挟んだ両側(図での左右両側)に油圧室である進角室と遅角室とが形成されており、前記インテークカムシャフト8には、これらの油圧室に連通する油路13,14が形成されている。
【0020】
そしてこれらの油路13,14がオイルコントロールバルブ15に連通されている。このオイルコントロールバルブ15は、前記エンジン用電子制御装置7によってデューティ制御され、そのデューティ比に応じて調圧した油圧を油路13,14のいずれか一方から供給し、かつ他方からドレーンし、これにより油圧ピストン10を図7の左右いずれかに移動させ、また油圧の給排を止めて油圧ピストン10を所定の位置に保持するようになっている。
【0021】
したがって油圧ピストン10が軸線方向に移動すると、油圧シリンダ11との間のヘリカルスプラインの作用によって油圧シリンダ11と油圧ピストン10とが相対的に回転し、かつ油圧ピストン10とインテークカムシャフト8に固定したギヤピース9との間のヘリカルスプラインの作用によって油圧ピストン10とインテークカムシャフト8とが相対的に回転する。すなわち油圧ピストン10が軸線方向に移動することにより、インテークカムシャフト8が油圧シリンダ11およびプーリー12に対して相対的に回転する。その結果、インテークカムシャフト8に固定してある吸気バルブ用のカムのクランク角に対する実質的な位相が変化し、バルブタイミングおよびそれに伴うエンジントルク特性が変化するようになっている。
【0022】
一方、自動変速機1は、油圧制御装置16によって変速およびロックアップクラッチやライン圧あるいは所定の摩擦係合装置の係合圧が制御される。その油圧制御装置16は、電気的に制御されるように構成されており、また変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4 、ライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLT、アキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLN、ロックアップクラッチや所定の摩擦係合装置の係合圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUが設けられている。
【0023】
これらのソレノイドバルブに信号を出力して変速やライン圧あるいはアキュームレータ背圧などを制御する自動変速機用電子制御装置(T−ECU)17が設けられている。この自動変速機用電子制御装置17は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置17には、制御のためのデータとしてスロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号、シフトポジション、パターンセレクトスイッチからの信号、オーバードライブスイッチからの信号、後述するクラッチC0 の回転速度を検出するC0 センサからの信号、自動変速機の油温、マニュアルシフトスイッチからの信号、出力トルクを検出するトルクセンサからの信号などが入力されている。
【0024】
またこの自動変速機用電子制御装置17とエンジン用電子制御装置7とは、相互にデータ通信可能に接続されており、エンジン用電子制御装置7から自動変速機用電子制御装置17に対しては、1回転当たりの吸入空気量(Q/Ne )などの信号が送信され、また自動変速機用電子制御装置17からエンジン用電子制御装置7に対しては、各ソレノイドバルブに対する指示信号と同等の信号および変速段を指示する信号などが送信されている。
【0025】
すなわち自動変速機用電子制御装置17は、入力されたデータおよび予め記憶しているマップに基づいて変速段やロックアップクラッチのON/OFF、あるいはライン圧や係合圧の調圧レベルなどを判断し、その判断結果に基づいて所定のソレノイドバルブに指示信号を出力し、さらにフェールの判断やそれに基づく制御を行うようになっている。またエンジン用電子制御装置7は、入力されたデータに基づいて燃料噴射量や点火時期あるいは電子スロットルバルブ4の開度ならびにバルブタイミングを変更することによるトルク特性などを制御することに加え、自動変速機1での変速時に燃料噴射量を削減し、あるいは点火時期を変え、もしくは電子スロットルバルブ4の開度を絞ることにより、出力トルクを一時的に低下させるようになっている。
【0026】
図8は上記の自動変速機1の歯車列の一例を示す図であり、ここに示す構成では、前進5段・後進1段の変速段を設定するように構成されている。すなわちここに示す自動変速機1は、トルクコンバータ20と、副変速部21と、主変速部22とを備えている。そのトルクコンバータ20は、ロックアップクラッチ23を有しており、このロックアップクラッチ23は、ポンプインペラ24に一体化させてあるフロントカバー25とタービンランナ26を一体に取付けた部材(ハブ)27との間に設けられている。エンジンのクランクシャフト(それぞれ図示せず)はフロントカバー25に連結され、またタービンランナ26を連結してある入力軸28は、副変速部21を構成するオーバードライブ用遊星歯車機構29のキャリヤ30に連結されている。
【0027】
この遊星歯車機構29におけるキャリヤ30とサンギヤ31との間には、多板クラッチC0 と一方向クラッチF0 とが設けられている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ31がキャリヤ30に対して相対的に正回転(入力軸28の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ31の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部21の出力要素であるリングギヤ32が、主変速部22の入力要素である中間軸33に接続されている。さらにその多板クラッチC0 の回転数すなわち入力回転数を検出するためのC0 センサ34が設けられている。
【0028】
したがって副変速部21は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構29の全体が一体となって回転するため、中間軸33が入力軸28と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ31の回転を止めた状態では、リングギヤ32が入力軸28に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0029】
他方、主変速部22は三組の遊星歯車機構40,50,60を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構40のサンギヤ41と第2遊星歯車機構50のサンギヤ51とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構40のリングギヤ43と第2遊星歯車機構50のキャリヤ52と第3遊星歯車機構60のキャリヤ62との三者が連結され、かつそのキャリヤ62に出力軸65が連結されている。さらに第2遊星歯車機構50のリングギヤ53が第3遊星歯車機構60のサンギヤ61に連結されている。
【0030】
この主変速部22の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構50のリングギヤ53および第3遊星歯車機構60のサンギヤ61と中間軸33との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構40のサンギヤ41および第2遊星歯車機構50のサンギヤ51と中間軸33との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0031】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構40および第2遊星歯車機構50のサンギヤ41,51の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ41,51(すなわち共通サンギヤ軸)とケーシング66との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ41,51が逆回転(入力軸28の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構40のキャリヤ42とケーシング66との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構60のリングギヤ63の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがケーシング66との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ63が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0032】
上記の自動変速機1では、各クラッチやブレーキを図9の作動表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図9において○印は係合状態、●印はエンジンブレーキ時に係合状態、△印は係合・解放のいずれでもよいこと、空欄は解放状態をそれぞれ示す。
【0033】
上述したエンジン2は、図7に示す機構によりバルブタイミングすなわちエンジントルク特性を連続的に変化させることができる。これに対して自動変速機1は、前進段として5段の変速段を設定でき、その最低ギヤ比と最高ギヤ比との幅が広く(ワイドレンジ)、第1速でのギヤ比が一般的な自動変速機における第1速のギヤ比より大きくなっている。また図9の作動表に示すように、後進段(Rレンジ)では、ブレーキB0 を係合させて副変速部21を高速段に設定しているが、それでも後進段でのギヤ比がある程度大きくなる。そこでこの発明にかかる制御装置は、エンジン回転数が低回転数の場合のトルクの落ち込みが生じないようにバルブタイミングを図7に示す機構によって制御し、自動変速機1で設定される各変速段ごとのエンジントルク特性を設定するが、第1速と後進段については、低回転数側(低スロットル開度側)のトルクが他の変速段でのトルク特性より低くなるように制御する。
【0034】
図1はそのための制御ルーチンを概念的に示しており、入力信号の読み込みやタイマあるいはフラグなどの初期化を含む入力信号の処理(ステップ1)を行った後に各センサが正常か否かを判断する(ステップ2)。これは、出力信号とその結果行われた制御の内容を示す入力信号との矛盾によって判断でき、通常行われている判断制御を採用すればよい。
【0035】
いずれかのセンサに異常があってステップ2で否定判断された場合には、所期どおりの制御を行うことができないので、特に制御を行うことなくこのルーチンから抜ける。また肯定判断された場合には、後進段を設定するためのRレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ3)。この判断は、シフト装置(図示せず)に設けられているシフトポジションスイッチの出力信号に基づいて行うことができる。
【0036】
Rレンジが選択されていないことによりステップ3で否定判断された場合には、レンジを問わずに第1速が設定されているか否かを判断する(ステップ4)。前述したように自動変速機用電子制御装置17は、車速やスロットル開度ならびに予め記憶しているマップなどに基づいて変速段を判断し、その変速段を設定するようソレノイドバルブS1 ,〜S3 に信号を出力するので、その変速信号に基づいて第1速か否かを判断することができる。
【0037】
第1速が設定されていてステップ4で肯定判断された場合には、エンジントルク特性として図2に線Aで示す第1速用特性を設定する(ステップ5)。これに対してステップ4で否定判断された場合には、エンジントルク特性として図2に線Bで示す第2〜5速用特性を設定する(ステップ6)。
【0038】
ここでこれらのエンジントルク特性について説明すると、エンジン回転数が低回転数の場合には、シリンダでの充填効率(体積効率)が低いなどの理由でトルクが低下するのが一般的であり、そこで上述したエンジン2では、吸気バルブのバルブタイミングを変更してトルクを向上させている。そのトルク特性は、各変速段ごとに設定されており、第2速ないし第5速でのエンジントルク特性は、図2の線Bで示すように、可及的にフラットな特性に設定されている。これに対して第1速に対応させたエンジントルク特性(図2の線A)は、エンジン回転数が所定の値以下の場合、すなわちスロットル開度が所定値以下の低開度の場合に、トルクが他の前進段でのトルクより低くなる特性に設定されている。
【0039】
したがって上記の制御装置によってエンジン2および自動変速機1を制御すると、第1速の低回転時(低スロットル開度時)には、エンジントルクが低く抑えられるのに対して、自動変速機1でのギヤ比(すなわちトルクの増大効果)が大きくなり、その結果、両者相まって車両全体としての駆動トルクが過大にならず、アクセルペダル6をわずか踏み込んでも車両が大きく前進するいわゆる飛び出し感を防止することができ、ひいてはドライバビリティが向上する。
【0040】
また一方、Rレンジが選択されていることによりステップ3で肯定判断された場合、エンジントルク特性として図2に線Cで示す後進用特性を設定する(ステップ7)。このエンジントルク特性は、図2に示すように、エンジン回転数の中高速域まで(すなわち低中スロットル開度域で)トルクを他の変速段でのトルクより低く抑える特性である。
【0041】
一般に、後進走行は、低車速の方が操舵が容易になり、またいわゆる飛び出し感を防ぐうえから低トルクであることが望ましい。したがってRレンジ用のエンジントルク特性を上記のように設定することにより、過剰な駆動トルクとなることを防止してドライバビリティを向上させることができる。
【0042】
なお、第1速用のエンジントルク特性とRレンジ用のエンジントルク特性とは、他の前進段での特性におけるトルクより低トルクとなるように設定されていればよく、したがって第1速用のトルク特性とRレンジ用のトルク特性とは同一もしくは近似したものであってよい。すなわち図2に示すように特に異ならせなくてもよい。このようにすれば、シフトポジションセンサのフェールなどによってRレンジと他のレンジとのレンジの誤判定が生じても、発進時のエンジントルクが同一もしくはほぼ同じになるので、違和感を防止できる。
【0043】
上記のように変速段ごとにエンジントルク特性を設定した場合、一つのエンジン回転数に対して複数のトルクが対応して存在することになる。すなわちエンジン回転数が変化しなくても、自動変速機1での変速が生じると、エンジントルクが増大もしくは低下することになる。そこでこの発明にかかる制御装置は、変速に起因する駆動トルクの変化と変速に伴うエンジントルク特性の変化とが重畳することによるショックの悪化を防止するために、変速およびエンジントルク特性の変更とを以下のように制御する。
【0044】
図3はその制御ルーチンを概念的に示しており、入力信号処理(ステップ11)および各センサの正常判断(ステップ12)を、図1に示す制御ルーチンにおけると同様にして行い、センサに異常があればリターンし、またセンサが正常に機能していれば、Rレンジへのマニュアルシフトを判断する(ステップ13)。この判断は、シフト装置から自動変速機用電子制御装置17に入力されるシフトポジションセンサからの信号に基づいて判断することができる。
【0045】
Rレンジへのシフトが生じていないことによりステップ13で否定判断された場合には、第1速との間の変速が発生しているか否か判断する(ステップ14)。これは、車速やスロットル開度などに基づいて判断することができる。このステップ14で否定判断された場合にはリターンし、肯定判断された場合には、その変速が第1速からのアップシフトか否かを判断する(ステップ15)。なお、このステップ14およびステップ15が請求項3のダウンシフト検出手段に相当する。
【0046】
第1速からの変速がアップシフトであってステップ15で肯定判断された場合には、そのアップシフト制御におけるイナーシャ相が開始したか否かを判断する(ステップ16)。このステップ16が請求項2のイナーシャ相検出手段に相当し、この判断は、従来知られている方法によって行うことができ、例えば、出力軸回転数に変速前の変速比を掛けた値と入力回転数NC0との差が所定の値に達したことによって判断することができる。そしてイナーシャ相の開始を待って、すなわちステップ16で肯定判断された後に、エンジントルク特性の変更制御、具体的には、図7に示す機構によるバルブタイミングの変更を実行する(ステップ17)。
【0047】
上記の制御をパワーオン・アップシフト時に実行した場合の入力回転数NC0、出力トルクTO 、入力トルクTT の変化を図4のタイムチャートに実線で概略的に記載してある。図4において、t0 時点で変速が開始し、それに伴って入力回転数NC0が低下してイナーシャ相が開始する(t1 時点)。これとほぼ同時にエンジントルク特性が第2速などの他の変速段に対応した特性に変更され、その分、エンジントルクが増大するので、入力トルクTT は実線で示す勾配で増大する。
これに対してエンジントルク特性の変更を変速終了後に実行した場合には、図4に一点鎖線で示すように変化する。すなわち入力トルクは、第1速のエンジントルク特性に応じて変化するので、変化勾配が相対的に小さくなり、それに伴って入力回転数が相対的に早い時期に同期回転数に到達する。その際にトルクが低下するが、その直後にエンジントルク特性が変更されて入力トルクが増大するので、出力トルクもそれに応じて増大する。その結果、トルクが変速終了時期に一旦落ち込んだ後に増大することになり、これがショックの原因になる。
【0048】
前述したように制御してイナーシャ相中にエンジンのトルク特性を変更すれば、変速に伴うトルク変化の中でエンジントルク特性の変更に伴うトルク変化が紛れ込んだ状態になるので、ショックが悪化することが防止される。
【0049】
他方、第1速との間の変速がアップシフトではないことにより、すなわちダウンシフトであることにより、ステップ15で否定判断された場合には、ステップ18に進んで変速終了前の所定期間に至ったか否かを判断する。そしてこのステップ17で肯定判断されて変速終了までの時間が予め設定した所定の時間内に入ると、ステップ17に進んでエンジントルク特性を変更する。この場合は、第1速に対応して決めてあるエンジントルク特性となるようバルブタイミングを設定する。
【0050】
この場合のタイムチャートを図5に実線で示してあり、変速開始時点t10の後、入力回転数および変速比ならびに出力回転数から求められる変速終了までの時間TCYC が、予め設定した時間TRTに一致した時点t11でエンジントルク特性が第1速用の特性に変更される。したがって入力トルクが低下するとともに、入力回転数の変化勾配が低下する。その結果、第1速を設定する第2一方向クラッチがF2 が係合する際の入力トルクが低下しているために、第2一方向クラッチF2 が係合することに伴う衝撃が緩和され、ショックを防止することができる。
【0051】
これに対して変速の終了によってエンジントルク特性を第1速用の特性に変更する場合には、図5に一点鎖線で示すように、第1速への同期の時点t12では入力トルクが大きいトルクになっているので、第2一方向クラッチF2 の係合によってトルクが大きく変動し、その後にエンジントルク特性の変更によって入力トルクが低下するので、出力トルクも大きく低下する。その結果、変速終了時点でのトルクの変化が急激なものとなり、ショックが悪化する。
【0052】
なお、ステップ13で肯定判断された場合、すなわちRレンジへのシフトが判断された場合には、直ちにステップ17に進んでエンジントルク特性をRレンジ用の特性に変更する。したがってステップ17が請求項1および請求項2および請求項5および請求項6におけるトルク特性変更手段に相当する。
【0053】
以上、この発明の具体例について説明したが、この発明は、図7に示すバルブタイミング制御機構以外の機構によりエンジントルク特性を変更するよう構成したエンジンや図8に示すギヤトレーン以外のギヤトレーンを備えた自動変速機を対象とする制御装置に適用することができる。また上記の例では、前進第1速でのエンジントルク特性を低回転数側(低スロットル開度側)で低トルクとなるものに設定したが、他の低速側の変速段についても同様にエンジントルク特性を設定してもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1あるいは請求項5の発明によれば、アップシフトに伴うエンジントルク特性の変更がそのアップシフトでのイナーシャ相中に生じるので、エンジントルク特性の変更によるトルク変化が、アップシフトに伴うトルク変化に紛れ込んだ状態になり、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0056】
さらに請求項2あるいは請求項4あるいは請求項6に記載した発明によれば、ダウンシフトに伴うエンジントルク特性の変更が、そのダウンシフトの終了する前に実行され、ダウンシフトによって変速比が大きくなっている時点では低速側のトルクに低下しているので、駆動トルクの変動要因が重畳しないことと相まって、ショックの悪化を未然に防止することができる。
【0057】
そして請求項3に記載した発明では、後進段を設定するレンジに対応させたエンジンのトルク特性と前進段での最低速段に対応させたエンジンのトルク特性とがほぼ等しく設定されているので、後進レンジと前進レンジとのレンジの誤判定が生じても、これらの走行レンジでの発進の際には、エンジンのトルク特性がほぼ同じになるため、車両の駆動性能に変化が特にはなく、その結果、レンジの誤判定に伴う違和感を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Rレンジおよび第1速に応じたエンジントルク特性を設定するための制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図2】バルブタイミングを変更することによる各変速段に対応したエンジントルク特性を模式的に示す線図である。
【図3】変速に伴うエンジン出力の変更のタイミングの制御のためのルーチンを示すフローチャートである。
【図4】第1速からのアップシフト時のタイムチャートである。
【図5】第1速へのダウンシフト時のタイムチャートである。
【図6】この発明の一例を説明するための全体的な制御系統図である。
【図7】バルブタイミングを連続的に変更するための機構の一例を示す断面図である。
【図8】この発明で対象とする自動変速機におけるギヤトレーンの一例を示すスケルトン図である。
【図9】この自動変速機での各変速段を設定するための摩擦係合装置の係合作動表を示す図表である。
【符号の説明】
1 自動変速機
2 エンジン
7 エンジン用電子制御装置
8 インテークカムシャフト
10 油圧ピストン
12 インテークカムタイミングプーリー
15 オイルコントロールバルブ
17 自動変速機用電子制御装置
Claims (6)
- 複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じてバルブタイミングを変えて所定のスロットル開度に対する出力トルクが異なる他のトルク特性にトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、
前記自動変速機でのアップシフトの際のイナーシャ相を検出するイナーシャ相検出手段と、
前記アップシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記イナーシャ相検出手段で検出されたイナーシャ相中に開始するトルク特性変更手段と
を備えていることを特徴とするエンジンおよび変速機の一体制御装置。 - 複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じてバルブタイミングを変えてトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、
前記自動変速機でのダウンシフトを検出するダウンシフト検出手段と、
前記ダウンシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記ダウンシフト検出手段で検出されたダウンシフトの終了までの時間が予め定めた時間になった時点に開始するトルク特性変更手段と
を備えていることを特徴とするエンジンおよび変速機の一体制御装置。 - 後進段を設定するレンジと複数の前進段を設定するレンジとを含む複数のレンジを設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定されるレンジに応じてバルブタイミングを変えてトルク特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、
後進段を設定するレンジに対応させたエンジンのトルク特性と前進段での最低速段に対応させたエンジンのトルク特性とがほぼ等しく設定されていることを特徴とするエンジンおよび変速機の一体制御装置。 - 前記ダウンシフトは、一方向クラッチが係合することにより達成される変速であり、かつ前記ダウンシフトの終了までの予め定めた時間は前記一方向クラッチが係合する時点より所定時間前であることを特徴とする請求項3に記載のエンジンおよび変速機の一体制御装置。
- 複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じて複数の異なるトルク特性が設定されるように変速段に応じてバルブタイミングを変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、
前記自動変速機でのアップシフトの際のイナーシャ相を検出するイナーシャ相検出手段と、
前記アップシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記イナーシャ相検出手段で検出されたイナーシャ相中に開始するトルク特性変更手段と
を備えていることを特徴とするエンジンおよび変速機の一体制御装置。 - 複数の変速段を設定することのできる自動変速機が、該自動変速機で設定される変速段に応じてバルブタイミングを変えて出力特性を変更可能なエンジンに連結された車両のエンジンおよび変速機の一体制御装置において、
前記自動変速機でのダウンシフトを検出するダウンシフト検出手段と、
前記ダウンシフトに伴う前記エンジンのトルク特性の変更を前記ダウンシフト検出手段で検出されたダウンシフトの終了前の所定時間に至った時点に開始するトルク特性変更手段と
を備えていることを特徴とするエンジンおよび変速機の一体制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15488896A JP3620149B2 (ja) | 1996-05-27 | 1996-05-27 | エンジンおよび変速機の一体制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15488896A JP3620149B2 (ja) | 1996-05-27 | 1996-05-27 | エンジンおよび変速機の一体制御装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09317514A JPH09317514A (ja) | 1997-12-09 |
JP3620149B2 true JP3620149B2 (ja) | 2005-02-16 |
Family
ID=15594159
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP15488896A Expired - Fee Related JP3620149B2 (ja) | 1996-05-27 | 1996-05-27 | エンジンおよび変速機の一体制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3620149B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4678238B2 (ja) * | 2005-05-26 | 2011-04-27 | 日産自動車株式会社 | 内燃機関の制御装置 |
JP5630211B2 (ja) * | 2010-10-26 | 2014-11-26 | 日産自動車株式会社 | ハイブリッド車両の制御装置 |
JP6716871B2 (ja) * | 2015-07-15 | 2020-07-01 | いすゞ自動車株式会社 | 走行制御装置および走行制御方法 |
-
1996
- 1996-05-27 JP JP15488896A patent/JP3620149B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH09317514A (ja) | 1997-12-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6790160B2 (en) | Control device and control method for a vehicular automatic transmission | |
US20040102288A1 (en) | Driving control apparatus for vehicle and driving control method for vehicle | |
US8287431B2 (en) | Vehicular control apparatus and vehicular control method | |
JP3041163B2 (ja) | 自動変速機の変速制御装置 | |
JP2005009395A (ja) | 車両の制御装置 | |
US6843756B2 (en) | Downshift control apparatus of vehicular automatic transmission, and control method thereof | |
US7824291B2 (en) | Shift control apparatus and method for automatic transmission | |
US6929581B2 (en) | Downshifting time torque-down control device and method | |
JP3620149B2 (ja) | エンジンおよび変速機の一体制御装置 | |
JP3658963B2 (ja) | 自動変速機のタイアップ判定装置及びこれを用いた変速制御装置 | |
JPH11108176A (ja) | ロックアップクラッチの締結力制御装置 | |
JP3395548B2 (ja) | 自動変速機の制御装置 | |
JP3195404B2 (ja) | 自動変速機のタイアップ判定装置、及びその制御装置 | |
JPH10141099A (ja) | 自動変速機付き内燃機関の制御装置 | |
JPH0989091A (ja) | 自動変速機の制御装置 | |
JP3352781B2 (ja) | エンジン及び自動変速機の制御装置 | |
JP2000008901A (ja) | 原動機と自動変速機との一体制御装置 | |
JP2993228B2 (ja) | 自動変速機の変速制御装置 | |
JPH0533858A (ja) | 自動変速機の制御装置 | |
JPH08270780A (ja) | 自動変速機の制御装置 | |
JP3001352B2 (ja) | 自動変速機の変速制御装置 | |
JPH11350999A (ja) | 自動変速機付車両のアイドリング制御装置 | |
JPH06341527A (ja) | 自動変速機の変速制御装置 | |
JPH01193450A (ja) | 自動変速機の制御装置 | |
JP3259594B2 (ja) | 自動変速機の制御装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20041026 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20041108 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |