JP3620134B2 - 可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸排気弁のバルブタイミングを可変に設定可能な可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、特に、エンジン停止時には始動時バルブタイミングに復帰する特性を有する可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばアイドリング時等の低回転低負荷走行域では、吸排気弁の開時期が重なるバルブオーバーラップは少ない方が望ましい。これに対し、高回転高負荷走行域では、バルブオーバーラップは大きい方が好ましい。従って、この相反する要請に応えるべく、近年は、運転条件に応じて吸排気弁のバルブタイミングを可変に調整可能な可変動弁機構を備えた内燃機関が種々提案されている。
【0003】
この可変動弁機構としては、カムシャフトを回転させて作動中心角を可変制御するカムひねり型(または中心角可変型)のもの、駆動軸外周に配置したカムシャフトを駆動軸に対して不等速回転させることで作動角を可変制御する作動角可変型のもの、作動角の異なるカムを切り換えてバルブタイミングを可変制御するカム切換型のものとが知られている。いずれも、通常、機関停止時には、再始動に備えて、初期状態としての始動時のバルブタイミングに自動的に復帰する構造となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術によるものでは、バルブオーバーラップが大きく設定された部分負荷時(パーシャル時)に、エンジンストール等で機関が停止すると、バルブリフトによるカム反力、カムの駆動伝達系(例えば駆動用ベルト、駆動用チェーン)及びリングギアの摩擦力等によって、機関停止直前のバルブオーバーラップがそのまま維持される場合がある。
【0005】
このため、部分負荷走行域に応じて設定された大きなバルブオーバーラップのままで、機関が再始動される可能性があり、再始動時に噴射される始動時燃料が排気側に過大に吹き抜けてしまい、排気性能が悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、再始動時の排気性能低下を防止できるようにした可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、機関再始動時には、始動時バルブタイミングに達したことを検出するか、または始動時バルブタイミングに達したとみなせる場合にのみ、始動時の燃料噴射を許可することにより、噴射燃料の排気側への過大な吹き抜けを防止せんとしている。
【0008】
即ち、本発明に係る可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置の採用する構成は、吸排気弁の開閉時期特性としてのバルブタイミングを可変制御する可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、機関始動時に、前記吸排気弁のバルブタイミングが所定の始動時バルブタイミングに復帰したことを条件として燃料噴射を許可する燃料噴射許可手段を設けたことことを特徴としている。これにより、機関再始動時には、吸排気弁のバルブタイミングが所定の始動時バルブタイミングに復帰しない限り、始動燃料の噴射が許可されることがない。
【0009】
また、より具体的な請求項2に係る発明では、吸排気弁の開閉時期特性としてのバルブタイミングを可変制御する可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記吸排気弁のバルブタイミングを検出するバルブタイミング検出手段と、この検出されたバルブタイミングが所定の始動時バルブタイミングに復帰したか否かを判定するバルブタイミング判定手段と、機関始動時に、前記吸排気弁のバルブタイミングが始動時バルブタイミングに復帰したことを条件として燃料噴射を許可する燃料噴射許可手段とを設けたことを特徴としている。これにより、バルブタイミング検出手段が検出した吸排気弁のバルブタイミングが所定の始動時バルブタイミングに復帰するまでの間、始動燃料の噴射が阻止される。
【0010】
請求項3に係る発明では、吸排気弁の開閉時期特性としてのバルブタイミングを可変制御する可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、機関始動時には所定の遅延時間が経過したときに燃料噴射を許可する燃料噴射許可手段を設けたことを特徴としている。可変動弁機構の特性に応じて遅延時間を設定することにより、直接的にバルブタイミングを検出することなく、バルブタイミングが始動時バルブタイミングに戻った頃を見計らって始動燃料を噴射することができる。
【0011】
特にこの請求項3に係る発明では、前記遅延時間を前記吸排気弁のバルブタイミングに関連したパラメータに基づいて設定することを特徴としている。機関再始動時に吸排気弁のバルブタイミングが始動時バルブタイミングに復帰するまでの所要時間は、可変動弁機構の特性、運転状態等によって種々変化する。従って、予め実機試験やシュミレーション等により、バルブタイミングに関連したパラメータ、即ち、始動時バルブタイミングへの復帰時間に影響を与えるパラメータを選定しておき、このパラメータの値に応じて遅延時間を設定することにより、正確に始動時バルブタイミングに達した時期に燃料噴射を開始することができる。
【0012】
具体的には、請求項4に係る発明では、前記パラメータとして、前記可変動弁機構を駆動する作動流体の温度または機関冷却水温のいずれかを用いることを特徴としている。温度によって作動流体(作動油)の粘性は変化し、この粘性によって始動時バルブタイミングに復帰するまでの所要時間は変化する。従って、作動流体の粘性を、作動流体の温度または機関冷却水温を介して間接的に検出することにより、最適な遅延時間を設定することができる。
【0014】
請求項5に係る発明では、前記パラメータとして、前記可変動弁機構の機関停止時におけるカム状態を用いることを特徴としている。機関停止時におけるカム状態、例えば作動角、作動中心角等によって、始動時バルブタイミングに復帰するまでの所要時間は変化する。従って、カム状態に基づいて遅延時間を設定することにより、始動時バルブタイミングに戻った時期に始動燃料を噴射することができる。
【0015】
請求項6に係る発明では、前記可変動弁機構を備えた内燃機関として、左右のバンクにそれぞれ可変動弁機構を有するV型内燃機関を用い、左右のバンクのうち先に前記始動時バルブタイミングに復帰したバンク側から燃料噴射を許可することを特徴としている。これにより、左右の各バンクのうち、いずれか一方が他方よりも早く始動時バルブタイミングに復帰した場合には、当該バンク側の燃料噴射が先行して開始される。従って、この片方のバンクの燃料噴射による機関回転数の上昇により、他方のバンクは通常のクランキング時よりも短時間で始動時バルブタイミングに復帰する。
【0016】
【発明の効果】
本発明に係る可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、機関再始動時には、吸排気弁のバルブタイミングが始動時バルブタイミングに復帰しない限り、始動燃料は噴射されない。従って、バルブオーバーラップが大きい状態で始動燃料が噴射されるのを防止でき、排気側に過大に噴射燃料が吹き抜けて排気が悪化するのを防止することができる。
【0017】
また、所定の遅延時間経過後に始動燃料を噴射する構成によれば、直接的にバルブタイミングを検出することなく、バルブタイミングが始動時バルブタイミングに戻ったとき頃を見計らって始動燃料を噴射でき、制御構造を簡素化することができる。
【0018】
より具体的には、前記遅延時間を前記吸排気弁のバルブタイミングに関連したパラメータに基づいて設定する構成により、より正確に始動時バルブタイミングに達した時期に燃料噴射を開始することができ、排気の悪化を防止できる。
【0019】
具体的なパラメータとして、作動流体の温度または機関冷却水温を用いれば、始動時バルブタイミングへの復帰時間に影響を与える作動流体の粘性に応じて、最適な遅延時間を設定することができ、排気悪化を防止できる。
【0021】
さらに、パラメータとして、可変動弁機構の機関停止時におけるカム状態を用いる構成によっても、例えば作動角、作動中心角等のカム状態によって変化する始動時バルブタイミングへの復帰時間に応じたタイミングで、始動燃料を噴射することができ、排気悪化を防止できる。
【0022】
可変動弁機構を備えた内燃機関として、左右のバンクにそれぞれ可変動弁機構を有するV型内燃機関を用い、左右のバンクのうち先に始動時バルブタイミングに達したバンク側から燃料噴射を許可する構成により、左右の各バンクのうち、いずれか早く始動時バルブタイミングに復帰した側の燃料噴射を先行して開始することができ、この先行した片方のバンクの燃料噴射による機関回転数の上昇によって、他方のバンクの復帰時間を通常のクランキングによる復帰時間よりも短縮でき、排気悪化を防止しつつ再始動時間を短縮して運転性を向上できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0024】
まず、図1は、本発明の第1の実施例に係る可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置の全体構成を示す構成説明図であって、機関本体1には、図示せぬ吸気弁を駆動するための吸気カムシャフト2がシリンダヘッドの上方に設けられている。また、図示を省略しているが、排気弁を駆動するための排気カムシャフトもシリンダヘッドの上方に機関本体1の長手方向に沿って配設され、これによりDOHC型機関が構成されている。以下、吸気カムシャフト2側について説明する。
【0025】
この吸気カムシャフト2は、その前部がカムスプロケット3及び駆動用チェーンを介してクランクシャフト(いずれも図示せず)に接続されており、その後部は機関本体1に軸支されている。吸気カムシャフト2には、2個1組の吸気カム4が軸方向に離間して各気筒毎に設けられていると共に、吸気カムシャフト2の前端には可変バルブタイミング装置5が設けられており、これによって、「可変動弁機構」を構成している。
【0026】
この可変バルブタイミング装置5は、制御油圧の給排によって吸気カムシャフト2のカムスプロケット3に対する位相を遅進させることにより、吸気カム4の作動中心角を可変に制御するものである。そして、これら各一対の吸気カム4によってロッカシャフト6に支持された吸気ロッカアーム7が揺動し、吸気弁が開閉される。従って、上記の位相の変化に伴い、吸気弁の開閉時期が遅進する。ここで、可変バルブタイミング装置5は、図8と共に後述する如く、吸気カムシャフト2の前端に取付ボルト等を介して軸方向に接続されたインナハウジングと、このインナハウジングの外周側に離間して設けられたアウタハウジングと、これら各ハウジング間の環状室内に軸方向に移動可能に設けられた第1,第2の各ヘリカルギアと、この各ヘリカルギアを常時所定の始動時バルブタイミングを形成する方向に向けて付勢するリターンスプリングと、このリターンスプリングの復帰力に抗して各ヘリカルギアを移動させるべく油圧を供給する油圧通路(いずれも図示せず)等から概略構成されており、機関本体1が停止したときには、リターンスプリングのばね力によって各ヘリカルギアは初期位置に押し戻され、これにより、吸気弁の開閉時期特性が、所定の始動時バルブタイミングに復帰するようになっている。
【0027】
図中において、9は機関回転数Nを検出するクランク角センサ、10は機関冷却水温Twを検出する水温センサ、11は吸入空気量Qを検出するエアフローメータ、12はカム角度θCを検出するカム角センサ、13はスタータモータ(図示せず)の作動を検出するスタータスイッチをそれぞれ示し、これら各センサ類は、図示せぬスロットルセンサ、空燃比センサ等と共に、後述のコントロールユニット14に接続されている。ここで、前記カム角センサ12が「バルブタイミング検出手段」を構成している。
【0028】
機関本体1には、例えば常開型の電磁弁等からなる油圧制御弁8が設けられている。この油圧制御弁8は、コントロールユニット14によって開閉制御されるものであり、可変バルブタイミング装置5に供給する油圧をオンオフ制御することにより、吸気カムシャフト2の位相を変化させるものである。
【0029】
機関を電気的に集中制御するコントロールユニット14は、例えばCPU,RAM,ROM,入出力インターフェース(いずれも図示せず)からマイクロコンピュータシステムとして構成されている。このコントロールユニット14の出力側には前記油圧制御弁8、各燃料噴射弁15、図示せぬ点火栓等が接続されており、各燃料噴射弁15から所定の燃料噴射時期に噴射された燃料は、点火栓によって強制着火される。ここで、このコントロールユニット14は、機関本体1の運転状態に応じた燃料噴射量を演算して各燃料噴射弁15の作動を制御するための燃料噴射量制御部と、機関本体1の運転状態に応じて最適のバルブタイミングを実現するべく可変バルブタイミング装置5を制御するバルブタイミング制御部(いずれも図示せず)とを備えている。
【0030】
また、コントロールユニット14には、その特徴的内部機能として、機関再始動時のバルブタイミングが所定の始動時バルブタイミングに復帰したか否かを判定する「バルブタイミング判定手段」としてのバルブタイミング判定部16と、始動時バルブタイミングに復帰したときには始動燃料の噴射を許可する「燃料噴射許可手段」としての燃料噴射許可部17とが設けられている。
【0031】
次に、本実施例の作動について図2及び図3を参照しつつ説明する。まず、図2は機関始動時の制御処理を示すフローチャートであって、ステップ(図中では「S」と示す)1では、エンジンキーの挿入回転によって「ACC」→「イグニッション」→「スタート」の順で信号が生成されると、スタータモータへの給電が開始され、スタータモータによるクランキングが始まる。次に、ステップ2では、カム角センサ12が検知したカム角θCによって現在のバルブタイミングを検出し、ステップ3では、この検出したバルブタイミングが始動時バルブタイミングであるか否か、即ち、可変バルブタイミング装置8のリターンスプリング等によって、バルブタイミングが始動時バルブタイミングに復帰したか否かを監視する。
【0032】
そして、バルブタイミングが始動時バルブタイミングに復帰したときは、前記ステップ3は「YES」と判定してステップ4に移る。このステップ4では、通常の燃料噴射制御部に対して燃料噴射許可を与え、これによって、始動燃料の噴射が開始される。
【0033】
このように構成される本実施例によれば、以下の効果を奏する。
【0034】
第1に、吸排気弁のバルブタイミングが始動時バルブタイミングに達したときには燃料噴射を許可する燃料噴射許可部17を設ける構成のため、例えばバルブオーバーラップが大きい部分負荷走行時にエンジンストール等で機関本体1が停止した場合でも、再始動時には、始動時バルブタイミングに復帰するのを待ってから始動燃料を噴射供給することができる。この結果、吸気カム2の駆動系の摩擦力やカム反力等でバルブオーバーラップの値が大きいまま再始動が開始された場合でも、始動時バルブタイミングに復帰しなければ燃料が噴射されないため、始動燃料が過大に排気側に吹き抜けて排気が悪化するのを効果的に防止することができる。
【0035】
この点について図3を参照しつつ説明する。図3は、始動時における燃料噴射時期、バルブオーバーラップ量及び機関回転数の各時間変化を示すタイミングチャートであって、機関本体1がバルブオーバーラップの大きい部分負荷走行域にある最中、時刻T0でエンジンストール等により機関停止となった場合、可変バルブタイミング装置5は、その内蔵したリターンスプリングによって、バルブタイミングを始動時バルブタイミングに戻そうとする。しかし、カム反力やチェーン、リングギア等の摩擦力によって、カムシャフト2の位相は初期状態としての始動時バルブタイミングに速やかに戻らないため、依然としてバルブオーバーラップは大きい値を維持している。
【0036】
そして、時刻T1で運転者がエンジンキーを操作して機関再始動を行うと、スタータモータが駆動してクランキングが開始される。ここで、従来技術によるものでは、バルブタイミングの復帰遅れに対する考慮を欠くため、クランキング開始後、時刻T3で燃料噴射を開始する。しかし、上記摩擦力等によって、まだバルブオーバーラップは大きいままであるため、図3中の点線で示す如く、この時刻T0で燃料を噴射すると、排気側に通常値よりも多い量の燃料が吹き抜けてしまい、排気性能が低下する。
【0037】
これに対し、本実施例では、クランキング開始によってバルブオーバーラップが小さい始動時バルブタイミングに復帰する時刻T2まで待ってから、燃料噴射を許可するため、通常値以上の燃料が排気側に吹き抜けることがなく、排気性能を改善することができるのである。
【0038】
第2に、具体的には、カム角センサ12が検出するカム角θCによってバルブタイミングを検知し、このバルブタイミングが始動時バルブタイミングに達したとバルブタイミング判定部16が判断したときに、燃料噴射許可部17が燃料の噴射開始を許可する構成のため、実際のバルブタイミングが始動時バルブタイミングに復帰したのを確認してから始動燃料を噴射することができ、一層排気性能を改善することができる。
【0039】
なお、ここで、「バルブタイミング検出手段」としては、カム角センサ12に限らず、油圧制御弁8によって制御される油圧を圧力センサで検出し、この検出油圧力によってバルブタイミングを検知する構成でもよい。可変バルブタイミング装置5は油圧制御されるため、かかる油圧力をモニタすれば、バルブタイミングを間接的に検出することができる。
【0040】
次に、図4及び図5を参照しつつ本発明の第2の実施例を説明する。なお、以下の各実施例では前記第1の実施例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。本実施例の特徴は、再始動時にバルブオーバーラップの小さい始動時バルブタイミングに復帰する遅延時間を予め設定しておき、その遅延時間経過後に燃料の噴射開始を許可するものである。
【0041】
図4は、本実施例によるコントロールユニット21の内部機能を示す機能ブロック図であって、このコントロールユニット21は、遅延時間の経過をもって始動時バルブタイミングに復帰したものとみなすバルブタイミング判定部22と、バルブタイミング判定部22が始動時バルブタイミングに達したとみなしたときに燃料噴射弁15による燃料の噴射開始を許可する燃料噴射許可部23とを備えている。また、前記バルブタイミング判定部22は、油圧制御弁8によって切換制御される「作動流体」としての作動油の温度tAを検出する油温センサ24が接続された遅延時間設定部25と、油温tAに応じた遅延時間Tdがマップ化された温度−遅延時間マップ26と、このマップ26に基づいて設定された遅延時間Tdが経過したか否かをタイマ27の計時情報に基づいて判定する遅延時間判定部28とから構成されている。
【0042】
ここで、作動油の油温tAが「吸排気弁のバルブタイミングに関連したパラメータ」の一例である。油温tAによって作動油の粘性が変化し、これにより可変バルブタイミング装置5の作動時間が影響されるからである(温度が低下するほど粘度が増し、粘度の増大に応じて復帰時間が長くなる)。従って、作動油の粘性を水温センサ10による機関冷却水温Twによって、より間接的に検出する構成であってもよい。この場合は、作動油粘度の検出がより間接的になる反面、構造を簡素化することができる。
【0043】
次に、図5のフローチャートに基づいて本実施例の作用について説明する。まず、エンジンキーが「スタート」位置まで回動された時点で本プログラムは開始され、ステップ11では、油温センサ24によって油温tAを検出する。次に、ステップ12では、この検出された油温tAに基づいて温度−遅延時間マップ26から該油温tAに応じた遅延時間Tdを読み出して遅延時間設定部25により設定し、次にステップ13では、スタータモータを回転させてクランキングを開始する。
【0044】
そして、ステップ14では、タイマ27をスタートさせてタイムカウントを開始し、ステップ15では、遅延時間判定部28により遅延時間Tdが経過するのを監視する。そして、遅延時間Tdが経過してタイムアップしたときは、前記ステップ15で「YES」と判定され、ステップ16では、燃料噴射許可部23によって燃料噴射弁15による燃料の噴射開始を許可する。
【0045】
このように構成される本実施例でも、図3中に示す如く、機関再始動時から所定の遅延時間Tdが経過するのを待ってから燃料の噴射開始を許可するため、バルブオーバーラップが小さい始動時バルブタイミングになってから燃料を供給することができ、排気性能の悪化を防止することができる。
【0046】
特に、前記第1の実施例とは異なり、バルブタイミングを常時監視するのではなく、再始動時に設定された遅延時間Tdの経過を待つだけであるから、制御構造を簡素化することができる。
【0047】
第2に、油圧制御弁8の作動油の温度tAに応じて遅延時間Tdを設定する構成のため、より正確に、始動時バルブタイミングになった時期に燃料を噴射することができる。
【0048】
なお、本実施例では、吸排気弁のバルブタイミングに関連したパラメータとして作動油の油温tAまたは冷却水温Twが使用可能であることは既に述べたが、これに限らず、クランキング時のエンジン回転数または機関本体1の停止時におけるカム状態を用いてもよい。すなわち、図3に示す如く、クランキングの開始によってチェーンの摩擦力等が軽減されるため、クランキングの開始時点を検出して、このクランキング開始時を起点に遅延時間を設定すれば、始動時バルブタイミングに復帰した時期に燃料を噴射することができる。また、機関本体1の停止時におけるカム状態をカム角センサ12により検出して記憶しておき、再始動時には、この記憶された停止時のカム状態に基づいて始動時バルブタイミングに達すると見込める遅延時間を可変に設定する構成としてもよい。
【0049】
次に、図6に基づき、本発明の第3の実施例を説明する。本実施例の特徴は、左右のバンクを備えたV型の内燃機関に適用したことにある。
【0050】
すなわち、図6は本実施例による可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射装置の全体構成を示す構成説明図であって、機関本体31は、左バンク32L及び右バンク32Rを備えたV型機関として構成され、各バンク32L,32Rには、それぞれ独立した可変バルブタイミング装置33L,33Rが設けられ、これら各可変バルブタイミング装置33L,33Rは、それぞれ別体の油圧制御弁34L,34Rによって制御されるようになっている。
【0051】
本実施例によるコントロールユニット35の入力側には、クランク角センサ9等と共に、左右の可変バルブタイミング装置33L,33Rによってそれぞれ変化されるカム角θCL,θCRをそれぞれ検出するための左バンク側カム角センサ36L,右バンク側カム角センサ36Rが接続されている。
【0052】
また、コントロールユニット35内には、左バンク側カム角センサ36Lが検出したカム角θCLに基づいて左バンク側のカムシャフト2が始動時バルブタイミングに復帰したか否かを判定する左バンク側バルブタイミング判定部37Lと、始動時バルブタイミングに達したときには左バンク側の燃料噴射の開始を許可する左バンク側燃料噴射許可部38Lと、これらと同様の作用を営む右バンク側バルブタイミング判定部37L及び右バンク側燃料噴射許可部38Rとを備えて構成されている。
【0053】
次に、本実施例の作用について図7に基づき説明する。図7は、本実施例による始動処理のフローチャートを示し、まず、ステップ21では、エンジンキーの操作によりスタータモータを回転させてクランキングを開始する。次に、ステップ23〜24の左バンク側処理と、ステップ25〜27の右バンク側処理とが並列的に実行される。
【0054】
左バンク側について説明すると、ステップ22では、左バンク側カム角センサ36Lが検出したカム角θCLによって現在のバルブタイミングを検出し、ステップ23では、このバルブタイミングがバルブオーバーラップの小さい始動時バルブタイミングに達するまで監視する。始動時バルブタイミングに復帰したときは、前記ステップ23で「YES」と判定されてステップ24に移り、このステップ24では、左バンク側の燃料噴射弁15による燃料の噴射開始を許可する。
【0055】
一方、右バンク側でも、右バンク側カム角センサ36Rのカム角θCRによって検出されたバルブタイミング(ステップ25)が始動時バルブタイミングに達するまで監視し(ステップ26)、始動時バルブタイミングに達したときは右バンク側の燃料噴射の開始を許可する。
【0056】
従って、このように、機関本体31の再始動時には、左右のバンク32L,32Rのそれぞれについて独立にバルブタイミングの監視が行われ、他方のバンクのバルブタイミング状態に拘わらず、先に始動時バルブタイミングに復帰した方から燃料噴射が開始される。
【0057】
このように構成される本実施例によれば、左右のバンク32L,32Rのそれぞれについて独立にバルブタイミングを検出し、いずれか早く始動時バルブタイミングに達した方のバンクから燃料噴射を許可する構成のため、先に燃料が噴射されるバンクによる機関回転数の上昇によって、他方のバンク側の復帰時間をクランキングのみの場合よりも短縮することができる。従って、再始動時の排気性能を改善しつつ再始動時間を短くして運転性を向上することができる。
【0058】
なお、前記各実施例では、可変動弁機構として、例えば特開平6−17618号公報等に記載された作動中心角を可変に制御する作動中心角可変型のものを例示したが、この型式の具体的一例を図8に基づいて簡単に説明する。カムシャフト2には、軸方向に油孔41Aが形成されたボルト41を介してインナハウジング42が固定され、インナハウジング42の外周側には、基端側にカムスプロケット3が形成されたアウタハウジング43が相対回転可能に配設されている。これら両ハウジング42,43間には、第1ヘリカルギア44,第2ヘリカルギア45が軸方向に移動可能に設けられている。各ヘリカルギア44,45は、リターンスプリング46によって、常時、始動時バルブタイミングを実現する方向に付勢されており、リターンスプリング46のばね力に対向するべく、油圧室47が画成されている。そして、油圧ポンプ48が発生させた油圧が、油通路49,油孔41Aを介して油圧室47に作用すると、各ヘリカルギア44,45はリターンスプリング42のばね力に抗して軸方向に移動し、この移動によってアウタハウジング43とインナハウジング42とが相対回転することにより、作動中心角が調整されてバルブオーバーラップが大きくなる。一方、アイドリング時等の低負荷域になると、油圧制御弁8が開弁して、油圧室47内の油圧が油孔41A,油通路49,リターン通路50を介して図示せぬ油タンク内に逃げるため、各ヘリカルギア44,45はリターンスプリングによって押し戻され、これにより、カムシャフト2の位相ずれが解消してバルブオーバーラップが小さい始動時バルブタイミングに設定される。
【0059】
また、本発明は中心角可変型のものに限定されず、例えば特開平6−185321号公報に記載されている如く、不等速継手の原理を応用した作動角可変型のものを用いてもよい。
【0060】
前記特開平6−185321号公報等において公知の構成であるので、その詳細な説明は省略するが、この作動角可変型のものは、機関の回転に同期して回転する駆動軸の外周側に、各気筒毎に分割した円筒状のカムシャフトを設け、かつ該カムシャフトの端部のフランジ部と駆動軸側のフランジ部とにそれぞれ半径方向に沿った係合溝を形成すると共に、両フランジ部間に介在する環状ディスクに各係合溝に係合する一対のピンを設けた構成を有しており、前記環状ディスクを制御ハウジングによって回転自在に保持すると共に、該制御ハウジングを介して環状ディスクをカムシャフトに対して偏心させることができるようにし、その偏心量を制御することにより、バルブリフト特性が変化するようになっている。また、前記特開平6−185321号公報には、制御ハウジングを軸直角方向に移動させるために、偏心カムを用いた構成が開示されている。即ち、制御ハウジングが支軸により揺動可能に支持されていると共に、該制御ハウジングに円形のカム嵌合孔が開口形成されており、制御シャフトに形成された偏心カムがこのカム嵌合孔に回転可能に嵌合している。そして、制御シャフトの回転位置をアクチュエータによって制御することにより、制御ハウジングを移動させる構成となっている。この公報記載のものでは、上述の可変機構が例えば吸気側に適用されており、一つの環状ディスクを一つの制御ハウジングが回転自在に保持している。かかる構成により、環状ディスクが駆動軸と同心位置にあれば、カムシャフトが等速回転するため、カムプロフィールに沿ったバルブリフト特性が得られ、環状ディスクが駆動軸の中心に対して偏心すると、一種の不等速継手となってカムシャフトは駆動軸に対して不等速回転し、これにより、バルブリフト特性及びバルブ作動角が変化する。
【0061】
さらには、例えば特公平3−75728号公報等に記載されている如く、大小2個のカムを切り換える型式のものでもよい。かかる技術は、前記公報等によって既に公知となっているため、その説明を省略する。このカム切換型の場合にあっては、油温が低い状態でカムを切り換える場合、油圧が高く粘度が高い低油温時のエンジンストール即再始動には、油圧低下しない可能性があるため、バルブタイミングを検知してから始動燃料を噴射する方が好ましい。
【0062】
なお、吸気側のカムシャフト2に可変動弁機構を適用する場合を示したが、これに限らず、排気側カムシャフトに適用してもよく、両カムシャフトに適用してもよい。両カムシャフトに可変動弁機構を適用する場合、違いに異なる型式の可変動弁機構を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置の全体構成図である。
【図2】機関再始動時の処理を示すフローチャートである。
【図3】燃料噴射時期、バルブオーバーラップ及び機関回転数の時間変化を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施例に係る可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図5】機関再始動時の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施例に係る可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置の全体構成を示す構成説明図である。
【図7】機関再始動時の処理を示すフローチャートである。
【図8】可変動弁機構としての一例である中心角可変型の可変動弁機構の要部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
1…機関本体
2…カムシャフト(吸気カムシャフト)
3…カムスプロケット
4…カム
5…可変バルブタイミング装置(可変動弁機構)
9…クランク角センサ
10…水温センサ
12…カム角センサ(バルブタイミング検出手段)
14,21,35…コントロールユニット
16,22,37L,37R…バルブタイミング判定部(バルブタイミング判定手段)
17,23,38L,38R…燃料噴射許可部(燃料噴射許可手段)
Claims (6)
- 吸排気弁の開閉時期特性としてのバルブタイミングを可変制御する可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
機関始動時に、前記吸排気弁のバルブタイミングが所定の始動時バルブタイミングに復帰したことを条件として燃料噴射を許可する燃料噴射許可手段を設けたことを特徴とする可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 吸排気弁の開閉時期特性としてのバルブタイミングを可変制御する可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記吸排気弁のバルブタイミングを検出するバルブタイミング検出手段と、
この検出されたバルブタイミングが所定の始動時バルブタイミングに復帰したか否かを判定するバルブタイミング判定手段と、
機関始動時に、前記吸排気弁のバルブタイミングが始動時バルブタイミングに復帰したことを条件として燃料噴射を許可する燃料噴射許可手段とを設けたことを特徴とする可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 吸排気弁の開閉時期特性としてのバルブタイミングを可変制御する可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
機関始動時には所定の遅延時間が経過したときに燃料噴射を許可する燃料噴射許可手段を設けるとともに、
前記遅延時間を前記吸排気弁のバルブタイミングに関連したパラメータに基づいて設定することを特徴とする可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記パラメータとして、前記可変動弁機構を駆動する作動流体の温度または機関冷却水温のいずれかを用いることを特徴とする請求項3記載の可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記パラメータとして、前記可変動弁機構の機関停止時におけるカム状態を用いることを特徴とする請求項3記載の可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記可変動弁機構を備えた内燃機関として、左右のバンクにそれぞれ可変動弁機構を有するV型内燃機関を用い、左右のバンクのうち先に前記始動時バルブタイミングに復帰したバンク側から燃料噴射を許可することを特徴とする請求項1または請求項2記載の可変動弁機構を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置。
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