JP3619504B2 - 活性炭の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は活性炭の製造方法に関する。より詳細には、炭素原料を用いて、2000m2/g以上の高比表面積を有する活性炭を連続で、安価に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
活性炭は、その優れた吸着性能をもつことから、種々の液体及び気体からの不純物の除去並びに有用物質の回収等に古くから利用されている。具体的には、上水の脱臭、脱色等の処理や有機溶剤の除去、回収等に利用されている。従来より、活性炭は、石炭、石炭コークス、木材、ヤシ殻等を原料に製造されている。その賦活方法としては、水蒸気、空気、酸素等の酸化剤の存在下に、選択的な酸化を行わせて細孔を形成する方法や、塩化亜鉛の存在下、セルロース系物質中の水素と酸素を化合させて水を形成させて、炭素骨格を残す方法等が主にとられている。このように製造された活性炭は、100オングストローム以上の大きい細孔の存在によって、比表面積が最大1500m2/g程度にしか賦活できなかった。
【0003】
また、繊維状の活性炭が開発されることによって、その特異な性能及び形態に加え、比表面積が2000m2/g程度まで向上し、活性炭の用途が大幅に向上した。しかしながら、セルロース系、ポリアクリルニトリル系、フェノール系、ピッチ系等を原料とする繊維状活性炭は、賦活時の収率が著しく低いため、コストが高くなっているのも事実である。更に、近年、特殊な薬剤賦活法によって、2000m2/g以上の表面積をもつ活性炭が開発されている。比表面積が2000m2/g以上、更に3000m2/gを超えるような活性炭は、工業用ガスの精製、食品工業等における液相精製のみならず、解毒剤や電池用材料等の新しい分野への展開が図れつつある。
【0004】
このような高表面積をもつ活性炭を製造する方法としては、いくつかの方法が提案されている。特公昭62−61529号公報には、炭素原料として石油コークスまたはこれと石炭との混合物を用い、この炭素原料と含水水酸化カリウム粒子とを混合した後、まず、予備賦活装置で600°F〜900°Fで加熱して脱水し、ついで賦活装置で1300°F〜1800°Fで賦活することにより、比表面積が2300m2/gを超える高表面積を有する活性炭が製造できると提案されている。また、特開平2−97414号公報には、炭素原料としてヤシ殻チャー、賦活助剤として含水水酸化カリウムを用いて、含水水酸化カリウムを予め加熱溶解し、その溶融液中にヤシ殻チャーを投入して両者を混合して、480℃以上で加熱賦活することにより、比表面積3000m2/g以上の活性炭を製造する方法が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特公昭62−61529号公報に開示される方法では、予備賦活工程はKOHの脱水を主目的にしているため(600°F〜900°Fと比較的低温での処理である)、賦活工程での反応生成物の発泡や再溶融が起こりやすく、コマーシャルプラントに適用するには未だ不十分な方法であった。また、特開平2−97414号公報に開示される方法はバッチ式の方法であって、製造コストが高くなるだけでなく、運転方法においても煩雑な方法であった。高比表面積の活性炭の用途開発が進むにつれ、大量の製品を低コストで製造できるプロセスの開発が重要な課題となっていた。本発明は、このような問題に対し、大量の製品をよりシンプルなプロセスで製造できる工業的なレベルでの製造方法を提供することを目的になされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
課題を解決するための手段は、前述した特許請求の範囲に記載の発明である。具体的には、以下説明する。
[請求項1]炭素原料と水酸化カリウムを供給し、混合、賦活、洗浄を行い、高表面積を有する活性炭を製造する方法において、炭素原料と水酸化カリウムとの比率を重量比で1:2〜1:8として予備賦活装置に連続で供給し、不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、1分以上15分以下の滞留時間、485℃以上530℃以下の温度で連続処理を行って、600℃以上の温度において、発砲せず、且つ、再溶融しない反応生成物を製造した後、再度、不活性ガス雰囲気下で600℃以上1000℃以下の温度で連続賦活処理を行うことを特徴とする活性炭の製造方法。
本発明者らは、上記の如き技術の現状を鑑みて、新しい製造プロセスについて、種々検討を重ねてきた結果、高比表面積を有する活性炭を製造しうる連続製造プロセスを開発することができた。即ち、原料の供給から、混合、賦活に至るまでのプロセスを連続プロセスで行うことを特徴とする製造方法である。
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。まず、炭素原料と賦活助剤を重量比で1:2〜1:8の比率で供給し、不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、450℃以上550℃以下の温度で連続処理を行った後、再度、600℃以上1000℃以下の温度で連続賦活処理を行う製造方法である。ここで、450℃以上550℃以下の温度で連続処理を行うに際し、炭素原料と賦活助剤を個別に供給しながら、混合を十分に行い、且つ、滞留時間を15分以下で予備賦活処理を行う。このとき、処理して吐出してきた反応生成物は、最終の賦活を行う不活性ガス雰囲気下で、600℃以上の温度で、発泡せず、且つ、再溶融しないものでなければならない。また、600℃以上1000℃以下の温度で最終賦活を行うに際しては、予備賦活した反応生成物を、不活性ガス雰囲気下において、連続でトレーに吐出させ、トレー内の反応生成物の高さを15cm以下とした後、順次、賦活炉へ間欠的に投入して、最終賦活を行った後、洗浄、乾燥することによって、高比表面積を有する活性炭を製造することができる。
【0008】
炭素原料と賦活助剤の比率は、重量比で1:2〜1:8が好ましい。より好ましくは、1:3〜1:6である。重量比が1:2未満であると、賦活助剤の溶融時の粘度が上昇し、予備賦活装置内での流動性がなくなり、両者の混合が十分できなくなったり、最終的には吐出不能になる。また、1:8を超えると炭素原料の賦活が進行しすぎて、賦活収率が小さくなるとともに細孔が大きくなりすぎ、比表面積は低下してくるので好ましくない。
【0009】
予備連続賦活装置条件としては、450℃以上550℃以下が好ましい。本発明者等は、炭素原料と賦活助剤との賦活反応について、詳細に検討した結果、まず、330℃〜400℃の温度領域において、KOHの溶融や脱水が起こり、更に、450℃〜550℃の温度領域において、賦活反応が始まり、一部炭素原料中の炭素の酸化によるガス化が起こって、一酸化炭素や二酸化炭素ガスが発生すること、H2ガスの発生が一旦おさまる領域であること、更に、液体状態から、固体への状態変化が完了すること等、種々の変化が同時に起こることを見出した。即ち、炭素原料とKOHが反応し、炭酸カリウム(K2CO3)が生成しだすことに起因している。K2CO3の融点は890℃前後であるため、K2CO3の一部生成によって、反応生成物全体の融点が上昇する。
【0010】
そして、製造上問題点について、鋭意検討した。賦活助剤の脱水やH2ガス等のガスの発生と液体から固体への変化に伴う高粘度化とが同時に急速に起こり、処理物の突沸や発泡現象が生じることと及び600℃以上の賦活工程での再溶融の2点が大きな問題点であった。上述したように、450℃〜550℃の間の温度領域を一気に通過させ、更に、600℃以上の温度まで昇温するのは好ましくない。そこで、一旦、処理物の突沸や発泡の起こらない状態の反応生成物とした後、再度、600℃以上1000℃以下での賦活を行う、いわゆる2段階賦活方式を採用することが望ましいことが判明した。
【0011】
このときの1段目となる予備賦活工程は450℃〜550℃の温度が必要である。450℃以下の温度では、KOHの脱水は起こるものの、K2CO3への反応は起こらず、反応生成物の融点上昇は望めない。更に、好ましくは、485℃〜530℃の温度で予備賦活を行えば、完全に融点上昇が達成されており、更に、安定した運転が可能になる。この融点上昇、即ち固化が予備賦活段階で終了することにより、600℃以上1000℃以下の賦活において、再溶融や突沸、発泡することがなくなり、安定した製造運転が可能となった。また、550℃以上の高温度での予備賦活になると、電力量の増加及び効率の低下や材質等の装置上の問題から好ましくない。
【0012】
また、450℃〜550℃(好ましくは、485℃〜530℃)の比較的高温で予備賦活を行うことで処理時間は15分以下(好ましくは、2分以上10分以下)で終了するが、更に、減圧下で行えば、その処理温度は低温側に移動し、且つ、処理時間は短時間となるため、製造コストの大幅な低減が図れる結果となった。予備連続賦活処理装置としては、混合、混練、溶融、反応、押しだし機構のあるものであればよく、例えば、混練機や押出機などの装置が挙げられる。更に、装置内部に付着した反応生成物を掻き取ることができるセルフクリーニング機構をもつ装置があれば、望ましい。
【0013】
次に、600℃以上1000℃以下の温度で、連続賦活処理を行うに際し、450℃以上550℃以下で予備賦活された反応生成物を連続で、不活性ガス雰囲気下で、トレーに吐出させ、順次、不活性ガス雰囲気下で、連続賦活炉へ投入して、賦活を行えば、生産性が格段に向上して、安価で大量生産が可能になる。この時、トレーに入れる反応生成物の高さは、できるだけ高い方が生産性からみれば望ましいが、15cmを超えて高くすると賦活した後の活性炭において、性能(比表面積)のばらつきが大きくなるので好ましくない。即ち、上部と下部は高いが中心部が低下する傾向にある。熱伝達がスムーズにできないことによるものと考えられる。反応生成物の高さが15cm以下であれば、反応生成物の大きさによらず、安定した比表面積をもった活性炭が製造できる。
【0014】
連続賦活炉の温度条件としては、昇温速度は、30℃/分以下であれば、比表面積の低下はなく、また、賦活最高温度での保持時間は1〜20分(好ましくは、3〜10分)であればよい。また、段階的に昇温するステップ昇温であってもよい。また、トレーを送る方法としては、特に限定するものではないが、例えば、ベルト方式やプッシャー方式による送りだしが使用できる。次に、賦活を行った後、トレーから取り出し、水洗を繰り返し、濾過によって活性炭のみを分別し、乾燥を十分に行って、比表面積の高い活性炭を得ることができる。水洗以後の工程については、従来の方法を用いて行うことができる。
【0015】
本発明において、使用できる原料としては、炭素原料では、石炭、石油コークスや石炭類或いはタール等の芳香族類を熱処理して生成して得られるメソカーボンマイクロビーズなどが良く、その他の炭素質原料も使用できる。賦活助剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、塩化亜鉛などが使用できる。
【0016】
【発明の効果】
本発明方法によれば、高比表面積の活性炭を連続で且つシンプルなプロセスで製造することができ、生産性が大幅に向上したプロセスになる。従って、大量生産が十分可能であり、且つ、安価な生産コストで高比表面積の活性炭を製造することができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明らかにするが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1平均粒径20μを有するメソカーボンマイクロビーズと水酸化カリウムとを重量比で1:5に混合し、供給量12g/分で2軸の混練機に連続で供給し、混練機温度485℃、N2雰囲気、平均滞留時間6分の条件で、予備賦活を行った。混練機には、送り機構及びセルフクリーニング機構が付与されており、5時間の間、吐出も安定しており、吐出物も破砕粒形状の固形物(ほぼ、4.4〜5.8mm)が得られた。得られた反応生成物をニッケル製のトレー(200mm×200mm×高さ150mm)に、10cm高さまで入れ、幅250mmの連続ベルトコンベア賦活炉に投入した。連続賦活炉条件は、N2雰囲気下、昇温速度20℃/分、最高賦活温度での保持時間は約3分で、最高賦活温度は、700℃、850℃、950℃の3条件で行った。連続賦活炉内での処理時間は約30分であった。連続ベルトコンベア賦活炉から出てきた後、トレー内反応生成物高さを測定したところ、すべて、9.6〜10.5cmの範囲にあり、発泡や突沸はなかった。また、再度溶融した形跡も全く見られなかった。次に、反応生成物を水で洗浄し、アルカリが検出されなくなった時点で水を切り、温度120℃の熱風乾燥機中で乾燥した。このようにして得られた活性炭の各種物性を表1に示す。表1に示されるように、比表面積が2000〜3500m2/gの高い吸着性能を示す活性炭を得ることができた。
【0018】
【0019】
また、950℃での賦活を行った場合のBET比表面積のばらつきは、30箇所からのサンプリング測定において3460±150m2/gで、ばらつきの程度を示すCV値は約2.0%であった。
【0020】
実施例2実施例1の方法において、混練温度を450℃、530℃、550℃とした以外は全く同様にして、ベルトコンベア賦活炉で、850℃にて賦活を行った。450℃の場合において、10cmの高さまで入れた反応生成物が炉から出てきた後、その高さを測定すると、10.0〜11.1cmであり、発泡はなかった。ただ、トレー内の最下部のトレーに接した部分が若干溶融していた。しかし、トレーからは簡単に剥離できたので、なんらの支障もなかった。530℃、550℃の場合には、発泡も溶融も全く観測されなかった。この時の活性炭の物性は、それぞれ収率が56.8、55.9、56.7wt%で、BET比表面積が3190、3300、3260m2/gであった。上記のように、予備賦活温度が450℃〜550℃の範囲であれば、製造には全く問題はない。ただ、450℃と低温側になると、若干溶融すること、逆に、550℃と高温側になるとエネルギーロスが大きくなってくるため、好ましくない。従って、好ましくは、485℃〜530℃が望ましい。
【0021】
実施例3炭素原料を石油コークスにした以外は実施例1と全く同様にして、供給、混練、賦活(トレー式)、洗浄、乾燥を行った。トレー賦活を行った後の反応生成物の高さは9.2〜9.9cmと若干低くなっており、溶融した形跡はなかった。このようにして得られた活性炭の各種物性を表2に示す。表2に示されるように、比表面積で2000〜3300m2/gの高い吸着性能を持つ活性炭を得ることができた。
【0022】
【0023】
実施例1〜3に示されるように、本発明の方法によれば、メソカーボンマイクロビーズ又は石油コークスを原料として、連続式で、大量生産が可能となり、2000m2/g以上の比表面積をもつ活性炭が低コストで製造できることがわかった。
【0024】
比較例1撹拌機、加熱機構及びN2供給可能な縦型バッチ反応炉に、メソカーボンマイクロビーズと水酸化カリウムを重量比で1:6の混合物を均一に混合し、N2ガス雰囲気中で室温から850℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、同温度で1時間保持した後、反応生成物を100℃以下に2時間かけて冷却し、水洗し、乾燥させた。次に、再度反応を行うため、炉内の洗浄を十分行った後、原料を仕込み反応させた。このとき、できた活性炭のBET比表面積は、3320m2/gであった。このようなバッチ式賦活方法では、原料の仕込みの煩わしさ、冷却時間の長さ、及び反応生成物の取り出しや炉内洗浄などマンパワーがかかりすぎるため、低コスト化は望めない。
【0025】
比較例2実施例1において、混練機の温度を380℃にした以外は全く同様の処理を行った。このとき、380℃で5分混練機で予備賦活した反応生成物をトレーに10cm入れて、ベルトコンベア連続炉で賦活した後のトレー内の反応生成物高さは、トレーの上部を超えて、1/3以上の量がベルト上にこぼれていた。また、溶融した反応生成物がトレーに付着し、トレーからの取り出しがスムーズでなかった。このときの活性炭の比表面積は、2620m2/gであった。このことから、混練機温度と滞留時間を適当な条件にすることが必要であり、本発明の範囲外では、賦活時において発泡が起こり、安定した製造はできないことがわかる。
【0026】
比較例3実施例1において、トレーの大きさを200mm×200mm×高さ250mmとし、反応生成物の高さ19cmまで入れた以外は全く同様の条件として、賦活温度を950℃で賦活を行った。賦活終了後のトレー内の反応生成物の高さは18.7cmであった。この時のBET比表面積の測定をランダムに30点サンプリングして行った。比表面積は3150±390m2/gで、CV値は約7%であった。トレーに入れる反応生成物の高さを15cm以上にした場合、実施例1の場合(高さに10cm)に比べ、比表面積の平均値は低下し、且つ、ばらつきも大きくなっており、好ましくない。
Claims (1)
- 炭素原料と水酸化カリウムを供給し、混合、賦活、洗浄を行い、高表面積を有する活性炭を製造する方法において、炭素原料と水酸化カリウムとの比率を重量比で1:2〜1:8として予備賦活装置に連続で供給し、不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、1分以上15分以下の滞留時間、485℃以上530℃以下の温度で連続処理を行って、600℃以上の温度において、発砲せず、且つ、再溶融しない反応生成物を製造した後、再度、不活性ガス雰囲気下で600℃以上1000℃以下の温度で連続賦活処理を行うことを特徴とする活性炭の製造方法。
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