JP3619389B2 - 高炉スラグ細骨材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉から排出される際に、水を用いて急冷して製造した粒状の固形スラグを破砕して、コンクリートやモルタル等に用いられる細骨材の製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉から排出されるスラグの処理方法は、スラグを溶融状態でヤードやドライピットに流して徐冷する方法と、溶融状態のスラグを、加圧水を噴出している水樋の中で水冷し、急速冷却する方法がある。このうち、水冷する方法で製造された高炉スラグは、水砕スラグと呼ばれる5mm以下の粒径のガラス質の固形スラグである。この水砕スラグは、微破砕して、高炉セメント原料とする用途があるとともに、無加工もしくは、軽破砕して、天然砂代替の土木建築用の原料としても利用されている。この土木建築用の用途のうちには、コンクリートやモルタル等に使用される細骨材、以降、スラグ細骨材と称す、がある。特に、近年は海砂の採取規制や陸砂開発に伴う環境破壊の問題も発生しており、天然資源を保全するための重要なリサイクル材料として、スラグ細骨材の需要が高まっている。
【0003】
スラグ細骨材は、高炉セメント原料用の微粉末に用いられる水砕スラグとは異なる物性が要求されており、JIS A5011にも規定されているように、比較的比重が大きく、吸水率の少ない水砕スラグである。例えば、特開昭55−136151号公報記載の方法のように、その冷却方法も、高炉セメント原料用とは異なっており、比較的冷却の強い条件で製造されている。このような冷却方法の改善で、絶対乾燥比重、単位容積質量の大きい、細骨材に適用しやすい水砕スラグを製造することは可能である。しかし、冷却後の製品スラグを無加工で、スラグ細骨材としての性能を満足させるために十分な強い冷却条件を作るために、冷却水量が過大となり、ポンプ等の設備費が高くなる、用役費用が高くなる、といった問題があった。
【0004】
また、冷却されて製造された無加工の水砕スラグ、以下、原鉱水砕スラグと称す、には、粒状のスラグに混じって、細かい針状のガラス化したスラグが混合している。この針状スラグが混合しているために、水砕スラグ粒子は密に詰まった状態になりづらい特徴を持っている。この結果、スラグ粒子の空間占有率、以下、実積率を称す、が低く、従って、各種の物性指標がJIS規定の物性範囲に入っていても、細骨材としては、必ずしも良い性能が発揮できていなかった。
【0005】
つまり、従来の土木工学の知見から、一般に細骨材の実積率が低いと、生コンクリートの流動性が悪くなり、コンクリート打ち施工時のポンプ圧送時に、ポンプ詰まりを起こしたり、型枠のコーナー部までコンクリートが廻らないため、仕上がりの表面性状が悪くなるといった問題が認められている。スラグ細骨材においても同様の現象があることから、実積率の高い水砕スラグ細骨材を製造することが重要であった。
【0006】
したがって、実積率を高くする方法として、例えば、特開昭53−22522号公報に記載されているように、従来から、原鉱水砕スラグをインパクトクラッシャー等の破砕機を用いて破砕することが行われている。つまり、原鉱水砕スラグを軽破砕することにより、粒径を小さくするとともに、針状スラグを破壊して、実積率及び単位容積質量を向上させ、細骨材としての性能を向上させることが行われている。
実績率を実積率へ変更する
【0007】
また、破砕の操作によって、水砕スラグの粒径分布を細骨材に適正なものとすることも重要である。つまり、原鉱水砕スラグの粒径を小さくして、かつ、粒径分布を広げて、粒径分布を細かいものから粗いものを適正な比率とすることが、生コンクリートやモルタルの流動性を向上させることもまた重要で、破砕操作により、粒径を改善することも可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、細骨材としての性能を向上させるために、原鉱水砕スラグを破砕機を用いて、軽破砕することは有効である。しかし、粒径が1mmから5mmと大きい水砕スラグは、表面に凹凸があるものの、比較的球に近い形状をしているが、1mm以下の粒径の水砕スラグには、針状スラグが混じっている。原鉱の段階では、この針状スラグは、比較的大きい粒状スラグの間に入りやすく、その結果、原鉱水砕スラグの実積率は低く、緻密な細骨材はできなかった。
【0009】
また、水砕スラグの細骨材としての性能を向上させるために、従来から、原鉱水砕スラグを破砕することが行われていたが、従来法では、ただ破砕すれば良いとの考えしかなく、十分な細骨材としての性能向上の効果が上げられてこなかった。つまり、原鉱スラグを破砕する場合にも、針状スラグが比較的大きい粒状スラグの間に分散していることが、原鉱スラグの破砕を行ったにおいても良好な細骨材の製造の障害になっていた。すなわち、従来法の破砕機で、原鉱水砕スラグをそのまま破砕する場合、針状スラグが粒径が大きい粒状スラグの間に入り込んでしまい、針状スラグが効果的に破砕機の破砕作用面と接触しないことから、針状スラグの形状が破壊しづらい問題があった。したがって、従来法での破砕方法では、破砕の完了した水砕スラグでも、針状スラグが残ってしまい、充填密度が低くなるため、破砕処理を行っても、さぼど実積率が上がらず、スラグ細骨材としての性能が十分には向上しなかった。
【0010】
また、従来法のこの欠点を補うため、原鉱水砕スラグの破砕の程度を上げると、針状スラグの形状が破壊され、水砕スラグの実積率を十分に向上するものの、水砕スラグの粒径が小さくなりすぎて、粗骨材とのなじみに影響する粗めの2mmから5mm径の粒子が不足して、やはり生コンクリートの流動性の点で不十分な結果となっていた。したがって、破砕加工を十分に行い、粒径を相当に小さくする破砕方法の場合でも、水砕スラグの細骨材としての性能を確保することは難しかった。
【0011】
このように、従来法によって製造された水砕スラグ細骨材は、生コンクリートの流動性を確保するための性能が不十分で、これを使用した生コンクリートでは、生コンクリート施工用のポンプ詰まりを起こしやすいといった問題や、生コンクリートの流動性を確保するために、セメントと水の使用量が増加して、コンクリート製造費用が増加するといった問題、が生じていた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の(1)及び(2)である。
(1)水を用いて急冷した粒粉状の高炉スラグを0.3〜1.2mmの分級点で分級した後、篩上を破砕処理して細骨材とすることを特徴とする高炉スラグ細骨材の製造方法。
(2)水を用いて急冷した粒粉状の高炉スラグを破砕処理した後、0.3〜1.2mmの分級点で分級し、篩上を細骨材とすることを特徴とする高炉スラグ細骨材の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の水砕スラグ破砕方法を実施する設備の1例を示す。本図では、破砕を行った後に分級を行う装置を示す。原鉱水砕スラグ供給ホッパー1内の原鉱水砕スラグをベルトコンベア2で、破砕機3に供給し、ここで、原鉱水砕スラグを軽破砕する。軽破砕後の水砕スラグを分級装置4に送り、篩上と篩下に分ける。篩上の水砕スラグをスラグ細骨材として製品水砕スラグホッパー5に回収する。この際、分級の際に篩上の水砕スラグの平均粒径が、1.2mmから2mmになるように、分級することが望ましい。スラグ細骨材として、破砕機3と分級装置4を調整する。特に、篩効率も考慮すれば、分級装置4の分級点を0.3mmから1.2mmに調整することが望ましい。
【0014】
この分級後の篩上として、回収された細骨材は、粒径の小さい部分に含まれる針状スラグの大半が除去されるため、実積率が高く、絶対乾燥比重も高い、良好な細骨材が製造できる。
【0015】
また、図2に、本発明の水砕スラグ破砕方法を実施する設備の他の1例を示す。原鉱水砕スラグ供給ホッパー1内の原鉱水砕スラグをベルトコンベア2で、分級装置4に送り、篩上と篩下に分ける。各々の水砕スラグを破砕機3に供給し、ここで、軽破砕する。各々の軽破砕後のスラグを製品水砕ホッパー5に回収する。必要に応じて、この軽破砕後の水砕スラグを混合装置6にて、混合する。この際、水砕スラグ中の大きい球状に近いものに、針状のものの混合が少なくなる分級点は、0.3mmから1.2mmである。水砕スラグの冷却方法によって、針状スラグの粒径分布の状態が変わるため、前述の分級点の範囲で、いくつかの篩を用意して、原鉱水砕スラグの粒径分布により、篩を選択して設置し、分級する。本図では、分級を行った後に破砕を行う装置を示す。場合によっては、各々の破砕後の水砕スラグを混合できる設備である。
【0016】
【実施例】
表1に示す原鉱水砕スラグ1を、図1に示された設備で軽破砕された後、1.0mmの篩で分級した篩上で集められた水砕スラグの平均粒径、実積率、単位容積質量を、実施例1として表2に示す。なお、破砕はインパクトクラッシャーで行ったが、ロッドミル等の他方式の破砕機でも良い。また、生コンクリートの流動特性を示すスランプ試験結果も表2に示す。スランプ試験は、JISに適合した良好な天然細骨材で、スランプが15cmとなる条件で生コンクリートを準備・調合して、スランプ試験したものである。なお、細骨材の性能が悪化すると、流動性が悪化し、スランプ値は小さくなる。なお、原鉱水砕スラグ性状は表1に記載されたとおりである。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
実施例1では、平均粒径は、1.7mmと比較例よりもやや大きいものの、細骨材として適正な範囲にあった。また、実積率は、57%と高く、単位容積質量も1.55kg/lと高かった。その結果、細骨材としての性能は良好で、スランプが、14.5cmとなり、このスラグ細骨材を用いた生コンクリートとしての流動性が十分であった。
【0020】
また、実施例2として、表1に示す原鉱水砕スラグ2を同設備で、0.4mmで分級したスラグ細骨材の試験結果も表2に示す。
【0021】
実施例2では、平均粒径は1.6mmと比較例と同等であったが、実積率は56%と高く、単位容積質量も1.52kg/lと高かった。その結果、スランプが14.0cmとなり、この実施例のスラグ細骨材を用いた生コンクリートとしての流動性が十分であった。
【0022】
表1に示す原鉱水砕スラグ1を、図2に示された設備で1.0mmの篩で分級した後、篩の上下各々を軽破砕し、両者を混合した結果を、表2に実施例3として示す。なお、ここでも破砕はインパクトクラッシャーを用いて行った。このスラグ細骨材の平均粒径は、1.55mmと細骨材として適正な範囲にあった。実積率は58%と高く、単位容積質量も1.59kg/lと高かった。その結果、スランプが15.5cmであって、良好な天然細骨材と全く同等の生コンクリートとしての流動性であることが分かった。
【0023】
また、表1に示す原鉱水砕スラグ2を同設備で、0.4mmの篩で分級した後、篩の上下各々を軽破砕した篩上の水砕スラグを細骨材として評価した結果を実施例4として、表2に示す。水砕スラグの平均粒径は、1.45mmと細骨材として適正な範囲にあった。実積率は57%と高く、単位容積質量も1.52kg/lと高かった。その結果、スランプが14.5cmであって、良好な生コンクリートとしての流動性が確保されていることが分かった。
【0024】
このように、原鉱水砕スラグの性状の変化にともなって、分級装置の分級点を変更することが望ましく、一般的な原鉱水砕スラグの加工には、分級点を0.3mmから1.2mmの範囲とすることが有効である。
【0025】
ところが、従来法で製造した水砕スラグ細骨材は骨材としての性能を十分に発揮できなかった。従来法での水砕スラグ細骨材製造の結果を示す。従来法で原鉱水砕スラグ1を軽破砕のみ実施した結果を、表2の比較例1として示す。比較例1では、平均粒径は1.65mmと細骨材として適性な範囲にあるが、実積率は53%と低く、単位容積質量も1.45kg/lと比較的低かった。その結果、細骨材としての性能が十分でなく、スランプが12.5cmしかなく、生コンクリートとしての流動性が低いことが分かった。
【0026】
次に、分級の際の分級点の影響を調査するために、篩目の大きい試験結果と篩目の小さい試験結果を示す。試験製造は、図2の設備で行い、比較例として表1に記載の原鉱水砕スラグ1を用いた。
【0027】
破砕した後、篩の分級点を1.3mmとした場合の試験操業結果を、比較例2として表2に示す。実績率と単位容積質量は良好であったが、平均粒径が、2.1mmと大きすぎることが理由で、潤滑のために重要な微細な粒子が不足しており、生コンクリートでの流動性が悪くなっており、スランプが12.5cmと、細骨材としての性能が十分に満足できないことが判明した。
【0028】
また、篩の分級点が、0.3mm以下の例として、0.25mmの篩で分級した場合の例を比較例3に示すが、平均粒径が1.1mmと小さすぎ、比較的粗い水砕スラグが不足していることと、針状の水砕スラグの除去が不十分であり、実積率が上がっていないことの理由で、やはり、スランプが12.0cmと、細骨材としての性能が満足できないことが判明した。以上の理由から、本発明での分級装置の分級点を0.3mmから1.2mmとした。
【0029】
また、表2の比較例4a及び4bに、原鉱水砕スラグ1を破砕をせずに、0.7mmの篩を用いて分級を行っただけのスラグ細骨材の評価も行った結果を示す。分級後の水砕スラグの測定値では、比較例4aには、篩上の水砕スラグの結果を示すが、平均粒径は1.8mmと良好な値を示していたが、実積率は50%とかなり低く、単位容積質量も1.27kg/lと低かった。この結果、スランプ値は10.5cmと小さく、劣質な細骨材であることが分かった。また、比較例4bには篩下の水砕スラグの結果を示すが、平均粒径は1.0mmと小さく、実積率は49%とかなり低く、単位容積質量も1.22kg/lと低かった。この結果、スランプ値は10.0cmと小さく、これも劣質の細骨材であることが分かった。
【0030】
分級したのみの水砕スラグ細骨材を光学顕微鏡にて調査したところ、針状のガラス化したスラグが大量に存在しており、これが、実積率が上がらないことの原因であることが判明した。このように、水砕スラグに分級のみを施すことでは、良質の水砕スラグ細骨材を製造することができなかった。
【0031】
以上に説明したように、本発明を用いてスラグ細骨材を製造した結果、生コンクリート向けに適正なスラグ細骨材を経済的に製造することができた。また、モルタル用細骨材にもコンクリート向けと同様に流動性を良好とする性質を要求されていることから、モルタル用スラグ細骨材製造にも、本発明は、同様に有効である。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、水を用いて急冷した水砕スラグを原料として、簡易な設備で、安価かつ大量にコンクリート、モルタル向け等の細骨材を製造できる。また、破砕と分級を行うことにより、水砕スラグの製造時の冷却方法の変動にともなう原鉱水砕スラグの性状の変化を修正して、適正な細骨材を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水砕スラグの破砕・分級装置の例を示す図である。
【図2】本発明の水砕スラグの破砕・分級装置の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
1 原鉱水砕スラグ供給ポッパー
2 ベルトコンベア
3 破砕機
4 分級装置
5 製品水砕スラグホッパー
6 混合装置
Claims (2)
- 水を用いて急冷した粒粉状の高炉スラグを0.3〜1.2mmの分級点で分級した後、篩上を破砕処理して細骨材とすることを特徴とする高炉スラグ細骨材の製造方法。
- 水を用いて急冷した粒粉状の高炉スラグを破砕処理した後、0.3〜1.2mmの分級点で分級し、篩上を細骨材とすることを特徴とする高炉スラグ細骨材の製造方法。
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