JP3619331B2 - ステンレス鋼の真空脱炭方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の真空下における脱炭精錬方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェライト系ステンレス鋼の製造は、転炉、電気炉、AOD等で炭素濃度が0.6〜0.2%程度まで脱炭した後、引き続きクロムの酸化損失を抑制するために真空下で吹酸脱炭されている。真空下での吹酸脱炭方法としては、VOD、RHOBが広く用いられているが、その他特開昭62−313772号公報に開示されているように、大径直胴型の浸漬管と上吹きランスを用いた方法も知られている。これらの真空脱炭方法の場合、生産性を上げるために送酸速度を上昇させることが必要であるが、送酸速度を上昇させると、激しくスプラッシュが発生し、操業に多大の支障を与えるため送酸速度を上昇することができないという問題がある。
【0003】
一方、転炉精錬においては、スプラッシュの発生を抑制するため以下の技術が開示されている。
【0004】
例えば、特開昭60−165313号公報では、多孔ノズルでのスプラッシュ低減の方策として、溶鋼表面での火点の重なりを最小限にする技術が開示されている。
【0005】
しかし、ステンレス鋼の真空下の吹酸は取鍋精錬のために溶鋼面の直径が転炉よりも小さく、火点の重なりを小さくすることは取鍋耐火物の溶損を引き起こす問題があり、転炉精錬の技術をそのまま真空下の精錬には適用できない。
【0006】
また、真空下での上吹き噴流挙動については、「鉄と鋼」、第62年(1976)、第14号19頁以降に測定結果が示されているが、スプラッシュの発生に対する最適条件は知られてはいない。また、当該文献には不足膨張条件で吹酸することで脱炭酸素効率が高く安定して進行することが示されているがスプラッシュに関する言及はない。
【0007】
一方、一般に、図2に示すように上吹きランスのノズル1は先広がり形状(ラバールノズル)をしている。最も狭くなった部分をスロート2と呼び、設計2次圧PO(kgf/cm2)、スロート径d(mm)、設計真空度PE(Torr)、適正膨張出口径D(mm)との間には次の関係がある。
【0008】
また、設計送酸速度F(Nm3/Hr)は、ノズル数をnとすると以下の関数がある。
【0009】
F=S×{0.581・n・(PO+1.033)}
通常は出口径を適正膨張出口径と一致させたノズルがガスの圧力を最も効率的に噴流の流速に変換できるため、出口径が1.0Dのノズルが真空下の脱炭精錬に用いられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、真空下で上吹きランス(ラバールノズル)を用い酸素吹練によりステンレス溶鋼を脱炭する際に、スプラッシュの発生量を低減することができる真空脱炭方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは真空下でのスプラッシュの発生量の低減に対する最適条件について研究した結果、真空下でスプラッシュの発生を低減させるには溶鋼面位置での噴流流速を適正範囲に制御させることが最も重要であることを見いだし本発明を完成した。
【0012】
本発明の具体的解決手段は以下の通りである。
【0013】
(1)ステンレス鋼の真空下での吹酸脱炭方法において、上吹きガスの溶鋼面到達位置での噴流流速を10〜50m/sとすることを特徴とするステンレス鋼の真空脱炭方法。
【0014】
(2)ステンレス鋼の真空下での吹酸脱炭方法において、上吹きガスの溶鋼面到達での噴流流速を1m/s以下とすることを特徴とするステンレス鋼の真空脱炭方法。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)において、ランスノズルのスロート径d(mm)、背圧p(kgf/cm 2 )、真空度P(Torr)により、以下に示される関係から求められる適正膨張出口径D(mm)よりも大きな出口径のランスノズルを用いることを特徴とするステンレス鋼の真空脱炭方法。
D=[(4/π)×S・{(1+0.2・M2)/1.2}3/M]1/2
S=π(d/2)2
M=[5×[{(p+1.033)/(P/760×1.033)}2/7−1]]1/2
【0016】
【発明の実施の形態】
スプラッシュ発生量と噴流流速との関係を実験により調査したところ、スプラッシュの発生を抑制する条件は、第1図に示すように溶鋼面位置での噴流流速Uが1m/s以下の領域(領域1)及び10〜50m/sの領域(領域2)の2つの領域が存在することを見い出した。本発明では、この領域でステンレス鋼の真空脱炭を行うものである。領域1は上吹きの酸素ガスの運動エネルギーが小さいため火点で生成した酸化物が浴内に押し込まれない領域である。このため、酸化物は浴表面で溶鋼中の炭素と反応しCOガスを発生するためスプラッシュが発生しない。そして、噴流流速Uが1m/sよりも大きいと、火点で生成した酸化物が上吹きガスのエネルギーで浴内に押し込まれるため、酸化物は浴内部で炭素と反応し、COガスを発生すると同時に周囲の溶鋼を吹き上げ、スプラッシュを発生させる。しかし、さらに噴流流速Uが増加すると、火点の温度が上昇するため、上吹き酸素の内、火点で酸化物を形成することなしに、直接溶鋼中の炭素と反応する割合が増えるため、スプラッシュの発生は低減し、噴流流速Uが10m/s以上の領域2に入ると、ほとんど発生しなくなる。しかし、噴流流速Uが50m/sよりも大きいと上吹きガスの運動エネルギーにより溶鋼が跳ね飛ばされる現象が始まるため、再びスプラッシュが増加する。尚、噴流流速Uが0.2m/sよりも小さい場合は、脱炭酸素効率が低下するため実用的ではない。
【0017】
本発明で用いた噴流流速Uは以下の式で求められる。
【0018】
また、f(X)はXが0.7より小さい場合には
f(X)=0.8X−0.06
Xが0.7以上2.1以下の場合には
f(X)=−2.7X4+17.7X3−41X2+40X−12.9
Xが2.1よりも大きい場合には
f(X)=0.11X3−1.43X2+6.6X−6.35
である。
【0019】
さらに、上記の条件を満足するには、噴流流速を低下させる必要があるが、ランスノズルのスロート径d、背圧p、真空度Pにより求められる適正膨張出口径Dよりも大きな出口径のランスノズルを用いることが重要である。
【0020】
ランスノズルのスロート径d(mm)、背圧p(kgf/cm2)、真空度P(Torr)により求められる適正膨張出口径D(mm)の関係は以下に示される。
【0021】
D=[(4/π)×S・{(1+0.2・M2)/1.2}3/M]1/2
S=π(d/2)2
M=[5×[{(p+1.033)/(P/760×1.033)}2/7−1]]1/2
即ち、本発明では適正膨張出口径Dよりも大きな出口径のランスノズルを用いることにより噴流流速が低下したソフトブローでの吹酸が可能となり、上吹ガスの溶鋼面到達位置での噴流流速を1m/s以下又は10〜50m/sに制御することができる。
【0022】
【実施例】
150トンの溶鋼を入れた取鍋に、内直径が1.6mの直胴型浸漬管を浸漬し、該浸漬管内を真空に吸引し、上方より装入した水冷ランスより酸素ガスを溶鋼面に吹き付けた。溶鋼はCrを16%、Cを0.5%含み、温度は約1550℃であった。この条件のもとで下記実施例1〜2及び比較例の実施を行った。
【0023】
(実施例1)
上吹きランスを単孔とし、スロート径dが20mm、出口径dOが83(mm)、設計2次圧POは4(kgf/cm2)、設計真空度PEは150(Torr)というノズルを用いた。このランスで酸素を3500Nm3/Hrの速度で供給した。吹酸中の真空度は約150Torrであった。この時の適正膨張出口径Dは73(mm)であり、噴流流速Uは19m/sであった。その結果、スプラッシュの発生は少なく、処理中の浸漬管への付着地金は約2トンであった。
【0024】
(実施例2)
上吹きランスを単孔とし、スロート径dが25mm、出口径dOが175(mm)、設計2次圧POは4(kgf/cm2)、設計真空度PEは20(Torr)というノズルを用いた。このランスで酸素を2次圧が2(kgf/cm2)で3500Nm3/Hrの速度で供給した。吹酸中の真空度は約150Torrであった。この時の適正膨張出口径Dは78(mm)であり、噴流流速Uは0.76m/sであった。その結果、スプラッシュの発生は少なく、処理中の浸漬管への付着地金は約1トンであった。
【0025】
(比較例)
上吹きランスを単孔とし、スロート径dが15mm、出口径dOが44(mm)、設計2次圧POは3(kgf/cm2)、設計真空度PEは250(Torr)というノズルを用いた。このランスで酸素を2次圧が8(kgf/cm2)で3500Nm3/Hrの速度で供給した。吹酸中の真空度は約150Torrであった。この時の適正膨張出口径Dは65(mm)であり、噴流流速Uは70m/sであった。その結果、スプラッシュの発生は激しく、処理中の浸漬管への付着地金は約8トンであった。
【0026】
上記に示すように、本発明の実施例によれば、従来法に相当する比較例よりも1/4〜1/8のスプラッシュ発生量に低減できた。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、真空下でのステンレス鋼の真空脱炭法において困難であったスプラッシュの発生量を低減することができ、そのため生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶鋼面位置での噴流流速Uとスプラッシュ発生量との関係を示す図である。
【図2】ラバールランスノズルの先端部の断面図である。
【符号の説明】
1 ノズル
2 スロート
3 酸素ガス噴流
Claims (3)
- ステンレス鋼の真空下での吹酸脱炭方法において、上吹きガスの溶鋼面到達位置での噴流流速を10〜50m/sとすることを特徴とするステンレス鋼の真空脱炭方法。
- ステンレス鋼の真空下での吹酸脱炭方法において、上吹きガスの溶鋼面到達位置での噴流流速を1m/s以下とすることを特徴とするステンレス鋼の真空脱炭方法。
- 請求項1又は2において、ランスノズルのスロート径d(mm)、背圧p(kgf/cm 2 )、真空度P(Torr)により、以下に示される関係から求められる適正膨張出口径D(mm)よりも大きな出口径のランスノズルを用いることを特徴とするステンレス鋼の真空脱炭方法。
D=[(4/π)×S・{(1+0.2・M2)/1.2}3/M]1/2
S=π(d/2)2
M=[5×[{(p+1.033)/(P/760×1.033)}2/7−1]]1/2
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- 1996-07-18 JP JP20647096A patent/JP3619331B2/ja not_active Expired - Fee Related
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