JP3655512B2 - 中高炭素鋼の吹酸昇熱方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉等の精錬炉から取鍋内に受鋼した炭素量が 0.3質量%以上の溶鋼を昇熱する中高炭素鋼の吹酸昇熱方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
取鍋内溶鋼に底部から不活性ガスを吹込みつつ、溶鋼内に浸漬管を浸漬せしめ、この浸漬管内に上吹きランスにて吹酸により昇熱する方法として、特開昭53−149826号公報、特公平 2−9645号公報、特公平 3− 48247号公報等が提案されている。
【0003】
特開昭53−149826号公報に提案の方法は、取鍋底部からガス(窒素ガス等)を吹込み、溶鋼を浮上せしめ、溶鋼表面の溶鋼浮上部位に酸化反応剤(Al、Si、Ti等)を添加するとともに、酸素ガスを吹付けて、取鍋内溶鋼を加熱する方法である。そして、この方法によれば、連続鋳造、造塊に際し、鋳込みに好適な温度に確実に、しかも迅速に調整(加熱)することができ、鋳込みを遅滞なく連続して行うことができ、鋳込み工程の進行を円滑にできる、とされている。
【0004】
特公平 2−9645号公報に提案の方法は、上記特開昭53−149826号公報に提案の方法を改善してなしたもので、上吹きランスによる酸化性ガスの吹酸に先行して浸漬管内に酸化反応剤を添加して後に、前記上吹きランスを介して酸化性ガスの吹酸と酸化反応剤の添加を連続して行う、取鍋内溶鋼の昇熱法である。そして、この方法によれば、酸化性ガスの吹酸に先行して浸漬管内に酸化反応剤を添加するので、浸漬管内の溶鋼表面には酸化反応剤の添加と吹酸を同時に行うときのような高酸素含有(高FeO)の酸化スラグ層の形成が抑制され酸化反応剤の溶融層が形成されるので、その後に、吹酸とこの吹酸と同時に酸化反応剤を連続的に添加すれば酸化反応剤が優先して酸化され、形成したスラグは流動して鋼の汚染及び耐火物を損耗することなく溶鋼への酸化反応熱の伝達が良好となる、とされている。
【0005】
特公平 3− 48247号公報に提案の方法は、取鍋内溶鋼に底部から不活性ガスを吹込みつつ、溶鋼内に浸漬管を浸漬せしめて、この浸漬管内に上吹きランスを介して吹酸により昇熱する方法において、上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離LをK<L<〔K+(10・Fo2/d2+200 )〕とする、取鍋内溶鋼の昇熱法である。そして、この方法によれば、上吹き吹酸によりもり上がる極めて高いフォーミング性の溶鋼の中で吹酸することで高熱効率、高速昇熱が実現し得た、とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記に提案されている方法は、目標炭素量が 0.3質量%未満の低炭素鋼には非常に有効な方法と認められるが、目標炭素量が 0.3質量%以上の中高炭素鋼に対しては、脱炭反応が起こり、目標炭素量の調整が難しくなる上に、発生したCOガスが排ガス設備周辺にて二次燃焼を起こすことにより、排ガスダクト、合金シュート等の溶損トラブルを発生させたり、あるいは、脱炭時に発生するCOガスにより溶鋼がフォーミングし、取鍋内溶鋼の昇熱操業はもとより鋳込み操業を停止させる原因にもなる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、目標炭素量が0.3質量%以上の中高炭素鋼を対象として、目標炭素量の調整、取鍋精錬の周辺設備あるいは鋳込み操業等に支障を来す脱炭反応を抑えつつ、中高炭素鋼を昇熱し得る、中高炭素鋼の吹酸昇熱方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明に係る中高炭素鋼の吹酸昇熱方法は、取鍋の底部より不活性ガスを吹込み炭素量が0.3質量%以上の取鍋内溶鋼を攪拌しつつ、その取鍋内溶鋼に浸漬管を浸漬して、浸漬管内の溶鋼表面に上吹きランスを介して酸素ガスを吹付け取鍋内溶鋼を昇熱する方法であって、予め溶鋼に酸化剤を投入した後、上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離L を下記式・におけるεが0.006 以上の値を満たす距離とし、上吹きランスより酸素を吹付けるものである。
ε=0.06/〔 [C]・(Fo2 2/3・exp(-63L/(Fo2/d)2/3)) 0.5・(1+Fo2 2/3・
exp(-63L/(Fo2/d)2/3)/L)〕------(1)
但し
[C]:溶鋼中の炭素量(質量%)
Fo2:酸素流量〔m3/(h・t)〕
d:上吹きランス孔の直径(m )
L:上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離(m )
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離を低炭素鋼の場合と同様の 400mm程度の距離で、目標炭素量が 0.3質量%以上の中高炭素鋼の吹酸昇熱を行うと、溶鋼がフォーミングし、脱炭が起こり、また排ガスダクト、合金シュート等の溶損トラブルが発生すると言った問題を知見し、その改善に取り組んだ。
【0010】
そして、調査、研究の結果、上記式(1)を導き出したもので、図1に示す吹酸の状態を示す模式図において、上吹きランス1からの吹酸による溶鋼へこみ部2における酸素ガスの平均流速をv(m/s)とする。その時の脱炭量C(質量%)は、溶鋼3中の炭素量[C](質量%)と溶鋼へこみ部2の酸素ガスの平均流速vと時間T(h)の積に比例する。従って、比例定数をαとしたとき、
C=α・[C] ・v ・T --------(2)
と表すことができる。
【0011】
溶鋼へこみ部2の酸素ガスの平均流速v は、上吹きランス1〜溶鋼湯面4の間の距離L(m)と溶鋼へこみ部2の深さl(m)により、βを比例定数として
v=β・l0.5・(1+ l/L)------▲3▼
で表せる。
【0012】
また、溶鋼へこみ部2の深さl は、酸素流量Fo2[m3/(h・t)] 、上吹きランス孔の直径d(m)としたとき、
l=γ・Fo2 2/3・exp(-63L/(Fo2/d)2/3)--------▲4▼
と表せる。
【0013】
ここで、上記式▲2▼に式▲3▼と▲4▼を代入し、トータルの比例定数をεとすると、
となる。
【0014】
よって、脱炭速度は C/T で表せるから、
C/T =ε・[C] ・(Fo2 2/3 ・exp(-63L/(Fo2/d)2/3))0.5・(1+Fo2 2/3・
exp(-63L/(Fo2/d)2/3)/L)----------▲6▼
となる。
【0015】
上記脱炭速度(C/T)は、目標炭素量を大きく下回ることなく問題のない範囲で取鍋内精錬するためには0.06%/h以下とする必要があり、そうするためには、ε・[C] ・(Fo2 2/3・exp(-63L/(Fo2/d)2/3))0.5・(1+Fo2 2/3・exp(-63L/(Fo2/d)2/3)/L)=0.06--------(7)
を満たせばよく、この式(7)を変形して
ε=0.06/〔 [C]・(Fo2 2/3・exp(-63L/(Fo2/d)2/3)) 0.5・(1+Fo2 2/3・
exp(-63L/(Fo2/d)2/3)/L)〕------(1)
式(1)を導き出したものである。
【0016】
一方、図2は、上吹きランス孔の直径d を0.055mで、目標炭素量[C]0.4質量%の場合における酸素ガス流量 Fo2と上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離 Lを変化させた場合の、aは排ガス温度、bは脱炭速度、cは昇熱速度を示すグラフ図であり、また図3は、上吹きランス孔の直径d を0.055mで、目標炭素量[C]0.8質量%の場合における同様のグラフ図である。
【0017】
そして、上述した式(1)と図1乃至3より理解されるように、本発明では、取鍋の底部より不活性ガスを吹込み炭素量が0.3質量%以上の取鍋内溶鋼を攪拌しつつ、その取鍋内溶鋼に浸漬管を浸漬して、浸漬管内の溶鋼表面に上吹きランスを介して酸素ガスを吹付け取鍋内溶鋼を昇熱するに当たり、予め溶鋼にAl、Si等の酸化剤を投入した後、上吹きランス先端と浸漬管内の溶鋼表面までの距離及び吹酸速度を溶鋼中の炭素量により規定することにより、脱炭の反応サイトとなる吹酸時の溶鋼へこみ部の面積を小さくし、且つ脱炭反応を発生させるより優先的にAl、Si等の酸化剤を酸化させ、脱炭反応を抑制し得ることが分かった。すなわち、予め溶鋼にAl、Si等の酸化剤を投入した後、上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離Lを式(1)におけるεが0.006以上の値を満たす距離とし、上吹きランスより酸素を吹付けると、脱炭反応を起こすことなく、また溶鋼のフォーミングも起こさずに、取鍋内溶鋼を昇熱できることが分かったものである。
【0018】
【実施例】
以下、本発明に係る中高炭素鋼の吹酸方法の実施例について説明する。
図4は、本発明に係る中高炭素鋼の吹酸方法を適用する取鍋精錬装置の断面図である。
図において、取鍋5内の溶鋼3の上面に浸漬管6を設置し、浸漬管6の上方には合金材や酸化反応剤などの投入シュート7が浸漬管6の上下昇降に追随する構造体で接続されている。また浸漬管6とは独立して昇降する上吹きランス1が設置されている。また、取鍋内溶鋼3を攪拌する目的で取鍋5の底部にポーラスプラグ8が埋設されている。なお、9は排ガスダクトを示す。
【0019】
そして、上記の如く構成された装置を用いて実際の昇熱作業は次のようにして行われる。まず、転炉(図示せず)の出鋼時に予めSi、Al等の酸化剤を添加した目標炭素量が0.3質量%以上の溶鋼3を取鍋5に受鋼した後、取鍋底部に設置されたポーラスプラグ8より不活性ガスを吹込み、バブリング中に取鍋5内の溶鋼湯面4上の転炉スラグ10を外側に排除した後浸漬管6を浸漬し、浸漬管6内の転炉スラグ10を排除した溶鋼湯面4に上吹きランス1から酸素ガスを吹込む。この時、上吹きランス1の下端と溶鋼湯面4間の距離と酸素ガスの吹酸速度が溶鋼中の炭素量により、上述した式(1)を満たす条件で吹酸する。
【0020】
上記吹酸時、T.[Al]≧0.0010%を満足すればよい場合は、吹酸中に並行して投入シュート7よりAlを添加し、昇熱速度を高める。その際のAlの添加速度は、例えば 6m3/(t・h)の速度で吹酸している時は 6〜10kg/(t・h)で実施すると、昇熱速度を10%増加することができる。一方、T.[Al]<0.0010%を満足させなければならない場合には、並行してAlの添加を行わない。
【0021】
上記のように中高炭素鋼の吹酸を上記式▲1▼を満足する条件で行うことにより、脱炭速度を0.06%/h 以下にして目標炭素量を大きく下回ることなく取鍋内溶鋼の昇熱操業が行え、また排ガス設備周辺にて起こる二次燃焼を抑えることができ、排ガスダクト9、投入シュート7等の溶損トラブルの発生を抑えることができ、更には脱炭時に発生するCOガスによる溶鋼のフォーミングを抑えることができ、取鍋内溶鋼の昇熱操業はもとより鋳込み操業を円滑に行うことができた。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る中高炭素鋼の吹酸方法を用いることにより、脱炭速度を0.06%/h 以下にして目標炭素量を大きく下回ることなく取鍋内溶鋼の昇熱操業が行え、また排ガス設備周辺にて起こる二次燃焼を抑えることができ、排ガスダクト、投入シュート等の溶損トラブルの発生を抑えることができ、更には脱炭時に発生するCOガスによる溶鋼のフォーミングを抑えることができ、取鍋内溶鋼の昇熱操業はもとより鋳込み操業を円滑に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】取鍋内溶鋼の吹酸の状態を示す模式図である。
【図2】上吹きランス孔の直径d を0.055mで、目標炭素量[C]0.4質量%の場合における酸素ガス流量 Fo2と上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離 Lを変化させた場合の、aは排ガス温度、bは脱炭速度、cは昇熱速度を示すグラフ図である。
【図3】上吹きランス孔の直径d を0.055mで、目標炭素量[C]0.8質量%の場合における酸素ガス流量 Fo2と上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離 Lを変化させた場合の、aは排ガス温度、bは脱炭速度、cは昇熱速度を示すグラフ図である。
【図4】本発明に係る中高炭素鋼の吹酸方法を適用する取鍋精錬装置の断面図である。
【符号の説明】
1:上吹きランス 2:溶鋼へこみ部 3:溶鋼
4:溶鋼湯面 5:取鍋 6:浸漬管
7:投入シュート 8:ポーラスプラグ 9:排ガスダクト
10:転炉スラグ
Claims (1)
- 取鍋の底部より不活性ガスを吹込み炭素量が0.3質量%以上の取鍋内溶鋼を攪拌しつつ、その取鍋内溶鋼に浸漬管を浸漬して、浸漬管内の溶鋼表面に上吹きランスを介して酸素ガスを吹付け取鍋内溶鋼を昇熱する方法であって、予め溶鋼に酸化剤を投入した後、上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離L を下記式・におけるεが0.006以上の値を満たす距離とし、上吹きランスより酸素を吹付けることを特徴とする中高炭素鋼の吹酸昇熱方法。
ε=0.06/〔 [C]・(Fo2 2/3・exp(-63L/(Fo2/d)2/3)) 0.5・(1+Fo2 2/3・
exp(-63L/(Fo2/d)2/3)/L)〕------(1)
但し
[C]:溶鋼中の炭素量(質量%)
Fo2:酸素流量〔m3/(h・t)〕
d:上吹きランス孔の直径(m )
L:上吹きランスの先端と浸漬管内の溶鋼静止面との距離(m )
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32958499A JP3655512B2 (ja) | 1999-11-19 | 1999-11-19 | 中高炭素鋼の吹酸昇熱方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP32958499A JP3655512B2 (ja) | 1999-11-19 | 1999-11-19 | 中高炭素鋼の吹酸昇熱方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JP2001152240A JP2001152240A (ja) | 2001-06-05 |
JP3655512B2 true JP3655512B2 (ja) | 2005-06-02 |
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JP32958499A Expired - Lifetime JP3655512B2 (ja) | 1999-11-19 | 1999-11-19 | 中高炭素鋼の吹酸昇熱方法 |
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JP (1) | JP3655512B2 (ja) |
-
1999
- 1999-11-19 JP JP32958499A patent/JP3655512B2/ja not_active Expired - Lifetime
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