JP3619114B2 - 液体噴射記録ヘッド、液体噴射記録装置、および液体噴射記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

液体噴射記録ヘッド、液体噴射記録装置、および液体噴射記録ヘッドの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オリフィスプレートに形成された複数の吐出口から記録紙に向けてインクを吐出して、その記録紙に対して記録を行う液体噴射記録ヘッド、その液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置、および液体噴射記録ヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射記録装置は、例えば液体噴射記録ヘッドに、液体であるインクを供給し、液体噴射記録ヘッドに設けられたピエゾ素子や電気熱変換体等のインク滴吐出手段を画像データに基づいて駆動することによって用紙等の記録媒体にインクドットパターンで画像を形成するものである。
【0003】
このように液体噴射記録ヘッドの吐出口からインクを吐出することにより記録を行うインクジェット記録装置は低騒音、高速記録等の点で優れた記録装置として知られている。
【0004】
この種の液体噴射記録ヘッドは、例えば図28に示されるようにインクを吐出するための複数の吐出口141が形成されたオリフィスプレート140と、各吐出口141に連通した液流路401を形成するための溝が形成された天板400と、液流路401の壁面の一部を構成し、かつ吐出のための熱エネルギーを発生する電気熱変換体501を備えた素子基板500とから構成されている。
【0005】
一般にオリフィスプレート140は、素子基板500と天板400との接合段差や、素子基板500と天板400との、インクに対する濡れ性の違いに起因するところのインクの吐出方向のずれを防止するために、吐出口面を同一部材で構成することを主な目的の1つとして設けられたものである。このオリフィスプレート140は、天板400と一体的に設けられる場合と、天板400とは別部材で設けられて天板400や素子基板500に接合される場合とがある。
【0006】
オリフィスプレート140が天板400と別部材で設けられる場合には、オリフィスプレート140の各吐出口141を、素子基板500と天板400との圧接によって形成された液流路401に対して位置決めしてアライメントを行った後にオリフィスプレート140が、素子基板500および天板400からなるヘッド基体の前端面に接合される。この方法は、耐久性が必要とされるオリフィスプレート140の材質を任意に選択することができるという利点を有している。
【0007】
一方、オリフィスプレート140が天板400と一体的に設けられる場合には、オリフィスプレート140と天板400とが、液流路401となる溝が吐出口141に連通した一体部材であり、天板400と素子基板500との簡単な機械的な圧接によって各液流路401が形成されるため、液体噴射記録ヘッドの生産性が優れている。
【0008】
一般に、オリフィスプレート140が樹脂材料からなる場合、複数の吐出口141はエキシマレーザー加工によって形成される。その加工の際に用いられるエキシマレーザー光は光学系によって光量分布が均一化されており、複数の吐出口141は、このような光学系を介したレーザー光によって1工程もしくは2〜3工程の加工で形成される。これにより、吐出口141同士の相対位置や、吐出口141の配列ピッチの精度を高くして複数の吐出口141を形成することができるとともに、吐出口141の形状および開口面積の均一化が図られている。
【0009】
また、吐出口の形成装置において、このような光学系の集光特性上、エキシマレーザーの光束は、光学系がオリフィスプレートの加工部の入射面から後退するほど広がることになる。さらに、エキシマレーザー光を照射して樹脂をアブレーションする加工は、オリフィスプレート140の、入射面側と反対側の面に形成される穴の大きさが、その入射面に形成される穴の大きさよりも大きくなるという特徴を有している。
【0010】
上記の2つの特徴から、オリフィスプレート140と天板400とが一体化した部材に吐出口141を形成する場合には、オリフィスプレート140に液流路401側からレーザー光を照射し、照射されたレーザー光がオリフィスプレート140からインク吐出方向に出射する。
【0011】
具体的には、図29に示されるように、天板400の、オリフィスプレート140側と反対側にマスク222が配置され、マスク222を通過したレーザー光221が、液流路401となる液流路溝233の内壁面に干渉することがないように、天板200がレーザー光221の光軸221aに対して傾けられて保持されている。このようにしてマスク222を通してオリフィスプレート140にレーザー光221を照射することにより、天板200に対して傾斜した吐出口141がオリフィスプレート140に形成される。
【0012】
ここで、レーザー221が、オリフィスプレート140の、吐出口141が形成される吐出口形成面140aに対して垂直にオリフィスプレート140に照射されて吐出口141が形成されるため、作製された液体噴射記録ヘッドでは、インクが吐出口形成面(フェイス面)140aから垂直に吐出される。
【0013】
このような構成の天板200およびオリフィスプレート140を有する液体噴射記録ヘッドは、吐出口141の向き(レーザー加工時の傾斜方向)と素子基板500との傾斜量に相当する分だけ液体噴射記録装置の本体で傾斜して保持され、インクが液体噴射記録ヘッドから記録媒体に対して垂直に吐出される。
【0014】
これに対して、オリフィスプレート140と天板400とが別部材で形成される場合は、上記のようにレーザー光の光軸が天板400に干渉するということがないため、液体噴射記録ヘッドが記録媒体に対して垂直に保持される。
【0015】
一般に、インクジェット記録装置のような液体噴射記録装置では、液流路内の気泡の除去や、長期間の放置によってインクの粘度が増すことの回避等のため、液流路内のインクを吸引してインクを排出させるにより液体噴射記録ヘッドの状態を回復させる吸引回復動作、または液流路内のインクを加圧して排出させることにより液体噴射記録ヘッドの状態を回復させる加圧回復動作が行われている。さらには、液体噴射記録ヘッドの吐出口周辺部におけるインクの増粘や乾燥を防止するために、オリフィスプレートの表面にキャップ部材を当接させてその面を密封するキャッピング動作が行われている。
【0016】
また、連続的にインクを吐出させた場合等には、紙面から跳ね返ったインクや、空中の霧状の液体(インクミスト)がオリフィスプレートの表面に付着し、その表面に余分な液体が溜まることがある。この場合、オリフィスプレートの表面に付着した余分な液体によって不安定な吐出が引き起こされたり、場合によっては不吐出が引き起こされてしまうことがある。そこで、オリフィスプレートの表面に付着した残留インクを拭き取る清掃手段として、ゴム、エラストマー、または吸水性の材料等で形成されたブレードを用い、そのブレードによって、オリフィスプレートに付着したインクを拭き取ったりしている。
【0017】
しかしながら、オリフィスプレートにおいてキャップ部材が密着する領域を、オリフィスプレートのフェイス面における吐出口の外周部に確保しようとすると、オリフィスプレートの面積を大きくする必要があり、その面積が大きいと、肉厚の薄いフィルム状部材であるオリフィスプレートのハンドリング(取り扱い)が悪化し、天板や素子基板との接合精度が低下してしまうことになる。さらに、オリフィスプレート全体の接合面積が大きくなると、オリフィスプレートに作用する接着剤の硬化収縮応力が増大することになり、オリフィスプレートのキャッピング部分の平面性が損なわれてキャッピング不良が引き起こされたり、あるいは吐出口の周辺部分が変形して、吐出口の向きや配列精度の悪化が引き起こされたりする。
【0018】
このため、図28に示したような従来の液体噴射記録ヘッドでは、オリフィスプレート140の周囲にシール部材を設け、そのシール部材にキャップ部材を当接させてオリフィスプレート140の表面を密封することにより、吐出口面のキャッピング動作を行う等の対処をしていた。
【0019】
次に、回復装置の一例を、図30に示す液体噴射記録装置の斜視図を参照して説明する。図30は、液体噴射記録ヘッドを搭載した従来の液体噴射記録装置の一例を示す外観斜視図である。図30に示される液体噴射記録ヘッド101は、図28に示したものと同様の構成のものである。
【0020】
図30に示されるインクジェット記録装置では、液体噴射記録ヘッド101がキャリッジ102に搭載されており、液体噴射記録ヘッド101の吐出口形成面140aに形成された吐出口141よりインクを吐出して記録媒体105に画像が記録される。キャリッジ102はガイド軸103により支持され、キャリッジ102がその移動方向にガイド軸103によって案内されることで、キャリッジ102が被記録媒体105に対向しながら往復移動する。被記録媒体105は、ピンチローラ(不図示)によりフィードローラ(不図示)に圧接されてそれらのローラの間に挟持され、フィードローラが回転することにより搬送される。さらに、画像形成後の被記録媒体105は排出ローラ(不図示)によって記録装置の外部に排出される。
【0021】
このインクジェット記録装置にはワイピング装置が備えられており、そのワイピング装置のワイピングブレード104が、液体噴射記録ヘッド101の画像形成領域の外部に設けられている。液体噴射記録ヘッド101の吐出口形成面140aに付着した紙粉等の異物や余分なインクは、画像形成領域外に設けられたワイピングブレード104によって掻き取られる。また、吐出口形成面140aを覆って吐出口141の目詰まりを防止したり、液体噴射記録ヘッド101の外部より液流路401内のインクを吸引したりするためにキャップ106が設けられている。そのキャップ106と、キャップ106を通して液流路401内のインクを吸引する吸引手段等とから吸引装置が構成されている。
【0022】
ここで、従来のインクジェット記録装置においてワイピングブレード104により液体噴射記録ヘッド101の吐出口形成面140aの異物やインクを掻き取ってクリーニングを行う動作(ワイピング動作)について説明する。
【0023】
図31は、図30に示したインクジェット記録装置におけるワイピング動作について説明するための模式図であり、ワイピングブレード104の状態a,b,cはそれぞれ、ワイピング動作前、ワイピング動作中、ワイピング動作後の状態を示している。
【0024】
図31に示すように、ワイピングブレード104が状態aから矢印A方向に移動して、液体噴射記録ヘッド101の吐出口形成面140a上に進入しようとすると、ワイピングブレード104の先端部が液体噴射記録ヘッド101の側方を押しながら湾曲し、その先端部が適当な圧力で吐出口形成面140aに圧接する。ワイピングブレード104は、吐出口形成面140aに圧接した状態bのまま吐出口形成面140a上を通過していくので、吐出口形成面140aに付着した異物やインクはワイピングブレード140aの端部で掻き取られ、ワイピングブレード140aが完全に液体噴射記録ヘッド101を通過しきると、ワイピングブレード104はその弾性力によって状態cのように回復して元の形状に復元する。
【0025】
以上のような一連のワイピング動作により吐出口形成面140aをクリーニングすることで、液体噴射記録ヘッド101からのインクの吐出が安定し、良好な画像を得ることができる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
液体噴射記録装置は近年の記録技術の進歩に伴って、さらなる高速、高精細な記録が要求されており、液体噴射記録ヘッドの吐出口群は、その吐出口の大きさ(吐出口の開口面積)がより微小で高密度に形成されることが必須となっている。これに伴って、図28に示した液体噴射記録ヘッドにおいては、吐出口141と液流路401の加工精度、および吐出口141と液流路401とのアライメント精度をさらに向上させていく必要がある。
【0027】
しかしながら、オリフィスプレート140に開けられる複数の吐出口141が高密度化されると、隣り合う吐出口141の間隔が狭くなるため、吐出口141同士の間の部分の接着面積が小さくなるという問題点がある。つまり、オリフィスプレート140と液流路401の間の液流路側壁402にオリフィスプレート104を接合する接着剤は、オリフィスプレート400と天板400との圧接の際に広がって移動するため、隣り合う吐出口141の間隔に塗布された接着剤が、吐出口141の内部や液流路401の内部に流れ込むという恐れがある。接着剤が吐出口内や液流路内へ進入すると、その接着剤によって吐出口や液流路の内部形状に変化が起こり、インクの吐出方向に乱れが生じたり、安定した吐出が得られなくなる等の不具合の原因となる。
【0028】
したがって、オリフィスプレート104と液流路側壁402とを圧接して接合する際には、圧接力、接着剤の塗布量、接着剤の塗布領域、接着剤の粘度、接合面の形状、接着剤の硬化条件、環境条件等を最適に管理して、接着剤の広がりを規制する必要がある。このように従来の液体噴射記録ヘッドの構成では、オリフィスプレート140の接合工程の難易度が非常に高く、液体噴射記録ヘッドの生産性を悪化させていた。さらに、接着剤の塗布量や塗布領域を制限しているため、オリフィスプレート140の接着強度を低下させる要因となっていた。
【0029】
また、一方では、オリフィスプレート140の材質と、液流路構成部材の材質との違いによる熱膨張率の差の問題がある。つまり、接着剤を加熱硬化させる工程の際に、オリフィスプレート140と天板400が個別に熱膨張を起こすため、吐出口141と液流路401との相対位置が変化し、両者の相対位置がずれた状態で接着剤が硬化してしまうといった問題点がある。
【0030】
これらに対して、特開平2−187342号公報等のように、樹脂フィルム製のオリフィスプレートを、ヘッド基体における液流路一端の開口端側の面に接合した後に、レーザー光をオリフィスプレートの表面側から照射して吐出口を加工形成する方法が提案されている。しかしながら、このようにして吐出口を形成する方法では、レーザー加工時のアブレーションによって生じるカーボン等のゴミや異物が液流路内に入り込んで、液流路が目詰まりを起こすという問題点を抱えている。
【0031】
また、ワイピング動作においても次のような問題点を抱えていた。
【0032】
すなわち、一般にオリフィスプレートが液流路(ノズル)形成部材すなわちヘッド基体に接合されて構成された液体噴射記録ヘッドでは、回復装置のワイピング動作によってインク吐出面をクリーニングする際、ワイピングブレードの先端がオリフィスプレートの吐出口形成面(フェイス面)に摺接するために、ワイピング動作の繰り返しによって、オリフィスプレートと液流路形成部材との接合部が剥離する恐れがあった。
【0033】
特に、ワイピングブレードがオリフィスプレートの吐出口形成面上に進入する際、ワイピングブレード先端がオリフィスプレートの端部稜線を引っ掛けるようにして進入するため、ワイピングブレードがオリフィスプレートを引きずってしまう可能性があり、このような状況下でワイピング動作が繰り返されると、オリフィスプレートの端部が液体噴射記録ヘッドの本体から剥離してしまうことになる。そして、オリフィスプレートの端部が僅かでも剥離すると、その後のワイピング動作の繰り返しによって、オリフィスプレートの剥離は端部以外の領域まで波及し、液体噴射記録ヘッドに回復不能な損傷を与えてしまうことになる。
【0034】
このような問題点を回避するために、前述したようにオリフィスプレートの周囲にシール部材として前面プレートを配設する構成では、キャッピングに要する面積が必然的に狭くなり、キャッピング動作の精度を上げるために高精度な部品を使用しなければならないといった必要性が伴うことになる。また、前面プレートの面積を拡大して、キャッピング面積を確保しようとすると、前面プレート部品が相対的に大きくなり、液体噴射記録ヘッドのコストアップ、および記録装置全体の大型化の要因となってしまう。
【0035】
さらに、前面プレートとオリフィスプレートとの間には段差が形成されることから、オリフィスプレートの吐出口形成面上の残留インクをブレードで拭き取る際にその段差の隅部にインクが溜まったり、ブレードが段差部に摺接してその段差部を擦る際に振動や飛び越え等を起こして、ブレードの接触が不十分となり、拭きむらが生じる可能性がある。また、ブレードが、前面プレートとオリフィスプレートとの段差部を片当り状態で跨ぐようにして液体噴射記録ヘッドに接触するため、ブレードに損傷を与えることになり、ブレードの耐久性の低下を招き、ワイピングの信頼性の面からも問題がある。
【0036】
一方、吐出口形成面で前面プレートを用いない構成では、ワイピングブレードがオリフィスプレートの端面に引っ掛からないようにワイピングブレードの可動範囲を狭くして、ワイピングブレードとオリフィスプレートの吐出口形成面との摺接領域を規制する方法がある。ところが、このような方法の場合、第1に、ワイピングブレードをオリフィスプレートフェイス面に対して進退させるような構成にする必要があり、ワイピング装置が高価になるという問題点がある。第2に、ワイピング動作によってワイピングブレードが回収した塵埃(塵、紙粉、紙けば等)や増粘インク(揮発成分が蒸発したインク)の再転写による不具合がある。
【0037】
すなわち、ワイピング動作によってワイピングブレードの摺接面に回収されて付着した塵埃や増粘インクが、ワイピングブレードの進退時にオリフィスプレートの吐出口形成面へ転写されて戻されたり、その吐出口形成面に圧接されたりする恐れがある。このように、ワイピングブレードとオリフィスプレートフェイス面とが摺接する範囲を規制する方法はあまり得策ではない。
【0038】
本発明の目的は、液流路が形成されたヘッド基体にオリフィスプレートが接合される構成の液体噴射記録ヘッドで、オリフィスプレートのフェイス面、すなわち液体噴射記録ヘッドの吐出口形成面の平面性を保ってオリフィスプレートがヘッド基体に確実に接合され、また、その吐出口形成面におけるキャップ部材のキャッピング面積を広く取ることができるとともに、ワイピング動作に対してもオリフィスプレートが剥離することのない液体噴射記録ヘッド、その液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置、およびその液体噴射記録ヘッドの製造方法を提供することにある。
【0039】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記ヘッド基体の前記縁部に、前記縁部に沿って延びる切欠きが形成されている。
【0040】
具体的には、前記記録ヘッドの前記縁部の形状が段付き形状となるように前記切欠きが前記縁部に形成されていることが好ましい。
【0041】
また、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記ヘッド基体の前記縁部の表面が曲面になっている。
【0042】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記ヘッド基体の前記縁部が面取りされている。
【0043】
さらに、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の前記前端面にも接着されており、前記ヘッド基体の前記縁部の表面に前記オリフィスプレートが面で接していてもよい。あるいは、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の、前記前端面と異なる面にのみ接着されており、前記ヘッド基体の前記縁部の表面に前記オリフィスプレートが面で接していてもよい。
【0044】
さらに、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の前記前端面にも接着されており、前記オリフィスプレートの折り曲げ線と前記ヘッド基体の前記前端面の縁とが所定の距離だけ離れていることが好ましい。あるいは、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の、前記前端面と異なる面にのみ接着されており、前記オリフィスプレートの折り曲げ線と前記ヘッド基体の前記前端面の縁とが所定の距離だけ離れていることが好ましい。
【0045】
上記の通りの液体噴射記録ヘッドでは、オリフィスプレートをヘッド基体の縁部に沿って折り曲げてオリフィスプレートをヘッド基体に接合する構成において、ヘッド基体の縁部に切欠きが形成されてその縁部が段付き形状にされたり、その縁部の表面が曲面になっていたり、あるいはその縁部が面取りされていたりすることにより、オリフィスプレートの屈曲部には、ヘッド基体の前端面の端部稜線を中心とした曲げ円弧ではなく、オリフィスプレートの曲げ応力なりの円弧を形成させることができる。これにより、ヘッド基体における液流路の開口面側の前端面や縁部、すなわちオリフィスプレートを受ける面から、オリフィスプレートが大きく浮くことや、出っ張ることをなくすことができる。ヘッド基体の縁部の表面を曲面にしたり、その縁部を面取りしたりして、その縁部の表面にオリフィスプレートの屈曲部を面で接するように構成した場合、オリフィスプレートの曲げ応力をその縁部の表面に沿って滑らかに分布させることができる。これにより、ヘッド基体の縁部とそれに繋がる前端面からオリフィスプレートが大きく浮くことや、出っ張ることをなくすことができる。さらに、ヘッド基体の縁部の形状を上記のいずれかの形状にすることにより、オリフィスプレートとヘッド基体の前端面とを接着剤や、接着性を有する封止材で接着する場合においても、オリフィスプレートの前端面の端部付近に滞留する接着剤または封止材はある程度変形できるため、その接着剤または封止材がオリフィスプレートの屈曲部の曲率にならって変形する。よって、滞留した接着剤または封止材が、オリフィスプレートを折り曲げた後の接着面の浮きや剥がれの起点にはならず、オリフィスプレートとヘッド基体の前端面との接着の効果を十分に得ることができる。これらの作用によって、オリフィスプレートの、ヘッド基体の前端面に接合された部分のフェイス面、すなわち液体噴射記録ヘッドの吐出口形成面の平面性を確保できるので、その吐出口形成面におけるキャッピング面積をオリフィスプレートのフェイス面の面積と同一化することによる液体噴射記録ヘッドの小型化と、ワイピング動作におけるオリフィスプレートの剥がれに対する信頼性の向上とを図ることができる。さらに、オリフィスプレートのフェイス面上に段差がないことにより、ワイピングブレードの耐久性が向上するなどして、液体噴射記録装置を高寿命化させることが可能な液体噴射記録ヘッドを実現できる。
【0046】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記オリフィスプレートの前記ヘッド基体側の面における前記縁部に対応する部分の少なくと一部に、前記縁部と平行な方向に延びる溝が形成されている。
【0047】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口、および前記吐出口の周囲に前記吐出口ごとにそれぞれ独立して形成された複数の凸部を備え、該凸部の少なくとも一部が前記液流路内に進入して嵌合するように前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記オリフィスプレートの前記ヘッド基体側の面における前記縁部に対応する部分の少なくと一部に、前記縁部と平行な方向に延びる溝が形成されている。
【0048】
前記オリフィスプレートの前記溝は複数個に分割されて形成されていてもよい。また、前記オリフィスプレートの前記溝内の側壁面が前記溝の底面に対して傾斜していることが好ましい。さらに、前記オリフィスプレートの前記溝における長手方向に対して垂直な方向の断面形状が楔形であってもよい。さらに、前記オリフィスプレートの前記溝が、前記オリフィスプレートの両端部を除く位置に形成されていてもよい。さらに、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の前記前端面にも接着されて接合されていてもよい。
【0049】
上記の通りの液体噴射記録ヘッドでは、オリフィスプレートをヘッド基体の縁部に沿って折り曲げてオリフィスプレートをヘッド基体に接合する構成において、オリフィスプレートのヘッド基体側の面におけるヘッド基体の縁部に対応する部分、すなわちオリフィスプレートにおける折り曲げの内側面の屈曲部に、ヘッド基体の縁部と平行な方向、すなわちオリフィスプレートの折り曲げ稜線と平行な方向に延びる溝が形成されたことにより、オリフィスプレートを容易に折り曲げることが可能になり、液体噴射記録ヘッドの生産性が向上する。具体的に説明すると、そのような溝をオリフィスプレートに形成したことにより、オリフィスプレートを折り曲げた際にオリフィスプレート全体の張力が、溝が形成された部分を境にして分断されることになり、ヘッド基体へのオリフィスプレートの接合時に、オリフィスプレートの、ヘッド基体の前端面に接する面の周辺に反発力として作用するオリフィスプレートの張力が軽減される。したがって、オリフィスプレートを接合する工程の際に、オリフィスプレートの、ヘッド基体の前端面に接する部分のフェイス面に生じる波打ちやうねり等の接合に逆らう反発力が軽減され、その結果、オリフィスプレートのフェイス面の平滑性、およびフェイス面の裏側の接着面における接合強度が向上するようになる。ここで、オリフィスプレートにおける吐出口の周囲に、ヘッド基体の液流路内に進入して嵌合する凸部が形成されている場合には、上記のような作用によりその凸部を液流路内に容易にはめ込むことができるようになる。さらに、オリフィスプレートに対して作用する接着剤の熱効果による収縮応力は、溝が配設された効果によって、主に溝の内側に向けてのみ作用するようになるため、オリフィスプレートの端部に作用する収縮応力は軽減されることになる。これにより、接着剤の硬化収縮応力に伴ってオリフィスプレート全体に生じる波打ちやうねり等の不具合は、大幅に抑制されることになる。そして、このようにしてオリフィスプレートを、そのフェイス面(前面)と、折り曲げた両端部の面との3面で固定することができ、ヘッド基体に対してオリフィスプレートをより強固に保持することができる。したがって、ワイピングブレードによる外力に対してオリフィスプレートの煎断強度が格段に向上し、オリフィスプレートの端部などの剥離を防止することができる。また、このようにオリフィスプレートを折り曲げる構成の場合、オリフィスプレートのフェイス面に平滑な面積を創出することができるようになり、オリフィスプレートの周辺に前面プレート等の別部材を設けるような構成に比べて、オリフィスプレートのフェイス面に段差が形成されるようなことはなく、平滑な面積が広範囲に確保されて、キャップ部材のキャッピング面積を広く取れるようになる。さらに、オリフィスプレートのフェイス面全域が平滑面となっているため、ブレード拭き取り時の液体残留や拭きムラなどを大幅に削減することができる。その上、平滑な拭き取り面はブレードに対するダメージも減らすことができるため、ブレードの耐久性とワイピングの信頼性を向上させることができる。また、エキシマレーザーを用いた加工等によりオリフィスプレートの吐出口や凸部などを形成する際に、そのような溝を同一の工程で形成することにより、オリフィスプレートの製造コストを大幅に削減することができる。また、オリフィスプレートにおける吐出口や凸部、溝の加工にエキシマレーザーを用いることで、それらの位置精度、および面の平滑性が良好な上、残留応力が極めて少ない加工をすることができる。したがって、これらの作用により、液体噴射記録ヘッドの設計的な自由度が増すとともに、上述したのと同様に液体噴射記録ヘッドや液体噴射記録装置の小型化および低コスト化を図ることでき、また、液体噴射記録装置を高寿命化させることが可能な液体噴射記録ヘッドを実現できる。
【0050】
一方、オリフィスプレートの接合に関しては、オリフィスプレート背面の吐出口の周辺に各吐出口ごとに凸部を設け、凸部全域もしくはその一部をヘッド基体の液流路内に進入させつつオリフィスプレートをヘッド基体に接合することによって、液体通路を吐出口に連結させるためのオリフィスプレートの圧接時にオリフィスプレートとヘッド基体の前端面との間で接着剤が広がっても、凸部が接着剤の流れを阻止するため、接着剤が吐出口の内面や液流路の内面へ流れ込むことを抑制できるようになる。また、液流路内に挿入される凸部の外周面と液流路の内面との隙間には接着剤が流入するものの、接着剤は凸部の外周面と液流路の内面との隙間で表面張力によって停滞するために、さらに液流路の奥までは進入して行かないようになる。その上、凸部の外周面と液流路の内面との隙間部分に停滞した接着剤によって、オリフィスプレートの接合面積が増大して、オリフィスプレート全体の接合強度を向上させることができる。さらに、オリフィスプレートが液流路を形成するための部材とは異なる材質で構成されたとしても、オリフィスプレートの凸部が液流路内に挿入されるため、接着剤のキュア工程の際に、吐出口と液流路との相対位置が移動しないように物理的に阻止することができるようになる。
【0051】
さらに、本発明は、被記録媒体に向けて液体を吐出して該被記録媒体に該液体を付着させることにより前記被記録媒体に記録を行う液体噴射記録装置であって、上述したいずれかの液体噴射記録ヘッドと、前記液体噴射記録ヘッドにおける前記吐出口が位置した吐出口形成面の、前記吐出口を含む領域を密封するためのキャップ部材とを有する。
【0052】
さらに、本発明は、被記録媒体に向けて液体を吐出して該被記録媒体に該液体を付着させることにより前記被記録媒体に記録を行う液体噴射記録装置であって、上述したいずれかの液体噴射記録ヘッドと、前記液体噴射記録ヘッドにおける前記吐出口が位置した吐出口形成面を拭いて該吐出口形成面をクリーニングするためのワイピングブレードとを有する。
【0053】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に、該縁部に沿って延びる切欠きが形成された前記ヘッド基体、および前記オリフィスプレートを準備する工程と、前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する。
【0054】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の端部における縁部の表面が曲面となった前記ヘッド基体、および前記オリフィスプレートを準備する工程と、前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する。
【0055】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部が面取りされた前記ヘッド基体、および前記オリフィスプレートを準備する工程と、前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する。
【0056】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有し、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合された液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、前記オリフィスプレートの前記ヘッド基体側の面における前記縁部に対応する部分の少なくと一部に、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体に接合した際に前記ヘッド基体の前記縁部と平行な方向に延びるような溝を形成する工程と、前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する。
【0057】
さらに、前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせする工程で、前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲に前記吐出口ごとにそれぞれ独立して形成された複数の凸部の少なくとも一部を前記液流路内に進入させて前記液流路に嵌合させることが好ましい。
【0058】
さらに、前記オリフィスプレートに前記溝を形成する工程が、前記複数の吐出口を形成するための穴加工、および前記複数の凸部を形成するための掘り込み加工と同時に、前記溝を形成するための掘り込み加工により行われることが好ましい。この場合、前記複数の吐出口、前記複数の凸部、および前記溝を、エキシマレーザーを用いた加工により形成することが好ましい。
【0059】
さらに、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程の前に、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面に接合する工程を有していてもよい。
【0060】
さらに、本発明は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、前記ヘッド基体および前記オリフィスプレートを準備する工程と、前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせする工程と、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面に接合する工程と、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げる工程と、前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記前端面と異なる面に接合する工程とを有する。
【0061】
上記の通りの本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法によれば、オリフィスプレートをヘッド基体の縁部に沿って折り曲げてオリフィスプレートをヘッド基体に固定する構成の液体噴射記録ヘッドを作製する際に、オリフィスプレートをヘッド基体に対して確実に折り曲げ固定することができ、オリフィスプレートを容易に折り曲げることが可能になるため、液体噴射記録ヘッドの生産性が向上するという効果がある。また、オリフィスプレートを折り曲げる前にオリフィスプレートをヘッド基体の前端面に接合することで、折り曲げによるオリフィスプレートの曲げ剛性により応力が発生し、オリフィスプレートの屈曲部はある曲率Rをもった形状になろうとするが、ヘッド基体の少なくとも前端面にはオリフィスプレートが接着されて接合されているがため、オリフィスプレートのフェイス面の平面性を保って液体噴射記録ヘッドを作製することができる。この作用により、オリフィスプレートのフェイス面の平面性を確保して、そのフェイス面におけるキャッピング面積をオリフィスプレートのフェイス面の面積と同一化することによる液体噴射記録ヘッドの小型化と、ワイピング動作におけるオリフィスプレートの剥がれに対する信頼性の向上とを図ることができる。さらに、オリフィスプレートのフェイス面上に段差がないことにより、ワイピングブレードの耐久性が向上するなどして、液体噴射記録装置を高寿命化させることが可能な液体噴射記録ヘッドを作製することができる。
【0062】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0063】
(第1の実施の形態)
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図であり、図1では、液体噴射記録ヘッドの基体が部分的に断面で示されている。また、図3では、液体噴射記録ヘッドのオリフィスプレートが折り曲げられる状態が表されている。
【0064】
図1に示すように本実施形態の液体噴射記録ヘッド15では、支持基板であるベースプレート3上にヒータボード1がダイボンディングされている。ヒータボード1は、液体であるインクを吐出するための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段である電気熱変換体(以下では、吐出ヒータと称する)1aと、吐出ヒータ1aへ電力を供給する配線とがシリコン成膜プロセスによりシリコン基板上に形成されてなるものである。ベースプレート3の材質としてはアルミニウムまたはセラミックス等が用いられ、ベースプレート3は、吐出ヒータ1aの駆動に伴って生じるヒータボード1の熱を放熱してヒータボード1を冷却するヒートシンクとしても機能する。
【0065】
ヒータボード1の吐出ヒータ1a側の面上には、インク流路を形成するための天板5が接合されている。天板5のヒータボード1側の面には、液流路であるノズル7を形成するための複数の溝と、各ノズル7と連通した共通液室8を形成するための凹部とが形成されている。天板5のこれらの溝や凹部は、例えば感光性樹脂で形成されていてもよい。それぞれがノズル7となる複数のインク流路溝は、ヒータボード1の吐出ヒータ1aの配列と合致するように天板5に配設されており、ヒータボード1と天板5とが接合されることで、一直線上に1列に並んだ複数のノズル7、および共通液室8が形成され、各ノズル7に吐出ヒータ1aが配置される。
【0066】
複数のノズル7を形成するための溝は、天板5側でなく、ヒータボード1上に形成されていてもよい。その場合、エポキシ等の感光性樹脂層をヒータボード1の上面に積層した後に、エッチング等のようなフォトリソ工程を経て、各ノズル7を仕切る隔壁を形成し、ノズル7となる溝を形成する。次に、ヒータボード1上の隔壁層を介してヒータボード1上に天板を接合することにより、ヒータボード1上の溝が天板によって塞がれ、インク流路としてのノズル7が形成される。
【0067】
また、天板5が樹脂で成形されるような形態では、射出成形によってノズル7用の溝を天板5の下面に一体的に形成したり、射出成形後にエキシマレーザー加工でノズル7用の溝を形成しても構わない。さらに、天板5がシリコン等で製作されるような場合は異方性エッチングによってインク流路溝を形成してもよい。
【0068】
いずれにしても、ノズル7用の溝がヒータボード1上面に設けられる形態では、ノズル7用の溝と吐出ヒータ1aは、半導体成膜技術によって両者の相対位置が高精度に合わせられて配設されるようになる。一方、ノズル7用の溝が天板5の下面に設けられる形態では、ノズル7用の溝と吐出ヒータ1aはメカニカルなアライメント処理によって両者の相対位置が高精度に合わせられて配設されるようになる。
【0069】
また、天板5には、不図示のインクタンクから供給されるインクを受けて共通液室8内にインクを導入する受け口となるインク供給口9が形成されており、共通液室8内のインクが各ノズル7へと供給される。共通液室8は、各ノズル7に供給するためのインクを一時的に収納するタンクとしての役割をもっている。
【0070】
また、液体噴射記録ヘッド15には、ベースプレート3や天板5およびヒータボード1に接合されたチップタンク11が備え付けられている。チップタンク11の内部には、インクジェット記録装置のインク供給経路における液体噴射記録ヘッド15の上流位置に配設された不図示のインク貯蔵タンクまたはサブタンク等から天板5のインク供給口9へインクを導くためのインク通路11aが形成されている。このチップタンク11が、ヒータボード1におけるノズル7の開口端側の前端面1bの周囲や、天板5におけるノズル7の開口端側の前端面5bの周囲に配置される前面プレート部11bを有している。
【0071】
これらベースプレート3、ヒータボード1、天板5、およびチップタンク11とからヘッド基体4が構成され、そのヘッド基体4にフィルム状のオリフィスプレート6が接合される。このオリフィスプレート6は、チップタンク11の前面プレート部11bの表面や、ヒータボード1の前端面1b、および天板5の前端面5b、すなわちヘッド基体4における複数のノズル7の開口端側の前端面を覆うようにチップタンク11およびベースプレート3に接合される。オリフィスプレート6には、ノズル7内のインクを被記録媒体に向けて吐出するための吐出口6aがノズル7の数に対応して所望の数だけ形成されており、各吐出口6aが、ヒータボード1と天板5の間のノズル7と連通する。したがって、それらの吐出口6aも、複数のノズル7と同様に一直線上に1列に並べられて配列されている。複数の吐出口6aは、オリフィスプレート6の背面側、すなわちヘッド基体4側となる面側からオリフィスプレート6にエキシマレーザー光を照射してオリフィスプレート6を貫通させることにより形成される。
【0072】
チップタンク11の上面、すなわちチップタンク11の、ベースプレート3側と反対側の面は、前面プレート部11bの表面に対してほぼ垂直な平面状の接合面11eとなっており、この接合面11eにオリフィスプレート6の一端部が接合されて固定される。また、ベースプレート3の、チップタンク11側と反対側の面も、チップタンク11の接合面11eとほぼ同じ大きさで、前面プレート部11bの表面に対してほぼ垂直な平面状の接合面となっており、その接合面にオリフィスプレート6の他端部が接合されて固定される。
【0073】
チップタンク11の前面プレート部11bにおける接合面11d側の縁部31には、後述するようにオリフィスプレート6を折り曲げてオリフィスプレート6をヘッド基体4に良好に接合するために、縁部31に沿って延びる切欠き33が形成されている。また、チップタンク11の前面プレート部11bにおけるベースプレート3側の縁部32にも、オリフィスプレート6を折り曲げてオリフィスプレート6をヘッド基体4に良好に接合するために、縁部32に沿って延びる切欠き34が形成されている。このように縁部31,32のそれぞれに切欠き33,34が形成されることにより、縁部31,32のそれぞれの形状が段付き形状となっている。
【0074】
図1〜図3に示すように、オリフィスプレート6の面積はチップタンク11の前面プレート部11bの面積よりも大きくなっており、オリフィスプレート6は、吐出口6aの配列方向に対して垂直な方向の断面形状が「コ」の字形となるように折り曲げ稜線6f,6gの2個所で折り曲げられてチップタンク11およびベースプレート3に接合される。折り曲げ稜線6fがヘッド基体4の縁部31に沿った折り曲げ線であり、折り曲げ稜線6gがヘッド基体4の縁部32に沿った折り曲げ線である。オリフィスプレート6の一端部は、固定部6iとなってチップタンク11の接合面11eに接合され、オリフィスプレート6の他端部は、固定部6jとなってベースプレート3の、ヒータボード1側と反対側に面に接合される。
【0075】
本実施形態では、オリフィスプレート6が吐出口6aの配列方向に沿って曲げられる構成であるが、本発明では、オリフィスプレート6が吐出口6aの配列方向と直角な方向に曲げられるような構成であっても構わない。
【0076】
そして、オリフィスプレート6の、固定部6iと6jとの間のフェイス部分6kに吐出口6aの列が配置されており、このフェイス部分6kが前面プレート部11bの表面、すなわちヘッド基体4における複数のノズル7の開口端側の前端面に接合される。したがって、前面プレート部11bは、オリフィスプレート6における吐出口6aの周囲の部分をその部分との接合によって保持する役割と、記録装置の本体に配設されたキャップ部材のキャッピング動作時にそのキャップ部材から加えられる脱着力や押圧保持力に対してオリフィスプレート6が十分に耐え得るようにオリフィスプレート6を支持する役割を担っている。このオリフィスプレート6の支持には、後述するようにベースプレート3の前端面部が用いられ、ベースプレート3がオリフィスプレート6を直接支持する場合もある。オリフィスプレート6のフェイス部分6kにおけるヘッド基体4側と反対側の面が、液体噴射記録ヘッド15の吐出口形成面であるフェイス面6bとなる。
【0077】
図2に示すように折り曲げられたオリフィスプレート6はヘッド基体4に対して、押さえ板12などの係合手段や不図示の鋲、あるいは接着剤による接着、溶着等により、オリフィスプレート6の固定部6i,6jがヘッド基体4に固定される構成となっている。
【0078】
天板5の材質としては、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、エポキシ、または液晶ポリマー等の樹脂、あるいはセラミックス、シリコン、窒化シリコン、ニッケル、カーボン、ガラス等を用いることができる。
【0079】
オリフィスプレート6としては、SUS(ステンレス鋼)、Ni、Cr、Al等の金属プレート、またはポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン等の樹脂成形品や樹脂フィルム材等を用いることができる。
【0080】
次に、上述した液体噴射記録ヘッド15の組立工程の概略を説明する。
【0081】
まず、ヒータボード1上の吐出ヒータ1aと、吐出ヒータ1aに相対する、天板5におけるノズル7となる溝とが高精度に合致するようにアライメントした後に、接着剤等の接合手段あるいは押えばね(不図示)等の圧接手段によってヒータボード1と天板5とを密着させることで、インク流路となるノズル7をヒータボード1と天板5との間に形成する。
【0082】
次に、天板5が密着しているヒータボード1がベースプレート3上に固定されてなるものにチップタンク11を組み込み、天板5のインク供給口9とチップタンク11のインク通路11aとを接続する。これにより、チップタンク11の前面プレート部11bが、ヒータボード1の前端面1b、および天板5の前端面5bの周囲を覆うことになる。この時、前端面1b,5bが、前面プレート部11bの前面よりも数十μmから数百μm程度前方へ突出するように構成されている。
【0083】
次に、ヒータボード1と天板5との密着によって前面プレート部11bより突出して形成された前端面1b,5bに対して、オリフィスプレート6を接着剤等の接合手段によって接合する。この際、前面プレート部11bの前面が前端面1b,5bよりも後退しているため、オリフィスプレート6と前端面1b,5bとの接合が妨げられないようになっている。
【0084】
図4は、ヘッド基体4にオリフィスプレート6を接合する工程について説明するための断面図であり、図4には、ヘッド基体4のノズル7側の部分の断面が示されている。また、図5は、本実施形態の液体噴射記録ヘッド15における吐出口6a側の部分、すなわち液体噴射記録ヘッド15のフェイス部分の断面図である。
【0085】
図4に示すように、ヘッド基体4にオリフィスプレート6を接合する際には、まず、オリフィスプレート6が折り曲げられていない状態で、ノズル7に吐出口6aが連通するように、前面プレート部11bより突出した前端面1b,5bに対してオリフィスプレート6を位置合わせし、接着剤等の固定手段によりオリフィスプレート6を固定する。そして、オリフィスプレート6のヘッド基体4側の背面と前面プレート部11bとの間に形成された隙間16に接着剤、または接着力を有する封止材等を流し込む。
【0086】
オリフィスプレート6の背面と前面プレート部11bとの接合には、一般的に耐インク特性に優れるエポキシ系の接着剤が用いられる。エポキシ系の接着剤による接合では、UV照射もしくは加熱によって接着剤の硬化が促進されるが、接着剤の硬化収縮、熱膨張等の影響を低減させ、吐出口6aの高精度な配列を維持させるために、UV照射と低温キュアの併用による硬化方式が好ましいとされる。
【0087】
このようにしてオリフィスプレート6における吐出口6aの周囲の部分、すなわちオリフィスプレート6のフェイス部分6kをヘッド基体4に固定した後に、チップタンク11の前面プレート部11bの端部付近、すなわちヘッド基体4の縁部31,32のそれぞれの付近でオリフィスプレート6を折り曲げ、最後にオリフィスプレート6の、折り曲げられた固定部6i,6jを、上述したように押さえ板12等によりヘッド基体4に固定する。
【0088】
オリフィスプレート6の折り曲げにより、オリフィスプレート6の材料自体が有する曲げ弾性によってもとの平面に戻ろうとする応力がオリフィスプレート6に発生し、オリフィスプレート6の屈曲部が弧を描くが、上述したように縁部31,32のそれぞれに切欠き33,34を形成したことにより、図5に示されるように前面プレート部11bの前端部稜線11c,11dのそれぞれが、オリフィスプレート6の折り曲げ稜線6f,6gより内側にあるため、オリフィスプレート6の屈曲部でオリフィスプレート6の曲げ応力なりの円弧を形成させることができる。これにより、オリフィスプレート6の折り曲げ稜線6f,6gが前面プレート部11bの表面より浮くことなく、オリフィスプレート6を曲げることができる。
【0089】
さらに、オリフィスプレート6の背面と前面プレート部11bとの間の隙間16に接着剤、あるいは接着力を有する封止材を流し込むと、切欠き33,34に封止材溜り16aができる。オリフィスプレート6の折り曲げ時には、その封止材溜り16aが、切欠き33の内壁面とオリフィスプレート6との間や、切欠き34オリフィスプレート6との間に入り込み、かつ変形するため、封止材溜り16aがオリフィスプレート6の突起や出っ張りを生じさせることはない。
【0090】
また、図5に示される、オリフィスプレート6の折り曲げ稜線6fと前面プレート部11bの前端部稜線11cとの距離aや、折り曲げ稜線6gと前端部稜線11dとの距離を適切に設定してやることで、封止材溜り16aの量のばらつきを吸収することができ、製造工程でのマージンを大きくすることができる。
【0091】
このように接着剤、または接着力を有する封止材により、オリフィスプレート6の背面と前面プレート部11bとを接合すると、オリフィスプレート6の曲げ応力が押さえ込まれ、オリフィスプレート6のフェイス面6bの平面性、すなわち液体噴射記録ヘッド15の吐出口形成面の平面性を、より確実に、かつ信頼性を高くして得ることができる。フェイス面6bの平面性および信頼性をより確実に得るために、オリフィスプレート6と前面プレート部11bとが接着されていると、折り曲げ後の接着が望ましいものとなる。
【0092】
オリフィスプレート6の折り曲げ稜線と、前面プレート部11bの前端部稜線との距離は、オリフィスプレート6の材質、曲げ剛性、厚み、形状等により所定の値に設定する。また、オリフィスプレート6と前面プレート部11bを接合するか接合しないかによってもその選択肢がひろがる。当然ながら折り曲げ稜線6fと前端部稜線11cの距離aが大きいほうが、オリフィスプレート6の曲げ形状は良好であるが、その分、前面プレート部11bでオリフィスプレート6を受ける面積が小さくなる。逆に、距離aが小さすぎると、オリフィスプレート6の曲げ形状に不具合がでる。距離a、および図5に示される折り曲げ稜線6fから縁部33の段差面33bまでの距離bは、オリフィスプレート6の材質による特性等を考慮し、適切な値に設定することが必要である。
【0093】
図6は、オリフィスプレート6を折り曲げてヘッド基体4に固定する方法について説明するための図である。
【0094】
オリフィスプレート6を折り曲げてヘッド基体4に固定する際には、図6に示すように、オリフィスプレート6のそれぞれの両端部がフェイス面6aから離れる方向へと、吐出口6aの配列方向に対して垂直な方向にオリフィスプレート6の両端部を引っ張りながらオリフィスプレート6にテンションを加えて、オリフィスプレート6を固定することが好ましい。これにより、オリフィスプレート6のフェイス面6bの平面性がより向上し、オリフィスプレート6の、チップタンク11からの浮きもなくなるため、オリフィスプレート6の剥離等を防止する効果が増大することになる。ただし、オリフィスプレート6に加えるテンションが必要以上に大きくなると、吐出口6aが変形して破壊を起こすため、オリフィスプレート6の材質や、その強度および形状を考慮して、そのテンションを適切な値に設定する必要がある。
【0095】
図7は、液体噴射記録ヘッド15におけるキャッピング動作について説明するための斜視図である。図8は、液体噴射記録ヘッド15におけるワイピング動作について説明するための模式図である。
【0096】
本実施形態の液体噴射記録ヘッド15は、被記録媒体に記録を行う液体噴射記録装置であるインクジェット記録装置に搭載されるものである。そのインクジェット記録装置では、液体噴射記録ヘッド15から被記録媒体に向けて、液体であるインクが吐出され、そのインクが被記録媒体に付着することで被記録媒体に対して記録が行われる。また、液体噴射記録ヘッド15が搭載されたインクジェット記録装置には、従来の記録装置と同様に、液体噴射記録ヘッド15のフェイス面6b、すなわち液体噴射記録ヘッド15における複数の吐出口6aが位置した吐出口形成面の、それら全ての吐出口6aを含む領域を密封するためのキャップ部材と、フェイス面6bを拭いてフェイス面6bをクリーニングするためのワイピングブレードが備えられている。
【0097】
本実施形態の液体噴射記録ヘッド15では、図7に示すように、液体噴射による記録動作において液体噴射記録ヘッド15の回復動作を行うためにキャップ部材13がオリフィスプレート6のフェイス面6b上に進入してフェイス面6bに接触し、そのフェイス面6bにおける吐出口6aの列を含むキャッピング領域13aがキャップ部材13により密封される。その際、本実施形態の液体噴射記録ヘッド15の構成によれば、オリフィスプレート6のフェイス面6b、すなわち液体噴射記録ヘッド15の吐出口形成面は平滑であり、段差がないため、フェイス面6bにおけるキャップ部材13との接触部は、そのフェイス面6bのどの領域であっても密封性を良好に確保することができる。したがって、キャップ部材13の部品精度、およびキャップ部材13をオリフィスプレート6のフェイス面6b上に進入させる進入位置決め部の精度を高精度に設定する必要がないため、回復装置、および液体噴射記録ヘッド15が搭載される記録装置を簡素化でき、記録装置を安価に作製することができる。
【0098】
次に、キャップ部材13によってオリフィスプレート6のフェイス面6bをキャッピングした後、あるいは連続吐出後等に行われるワイピング動作について説明する。図8では、ワイピングブレードの状態aがワイピング動作前、状態bがワイピング動作開始、状態c,d,eがワイピング動作中、状態fがワイピング動作後の状態を示している。
【0099】
図8に示すようにワイピング動作によりオリフィスプレート6のフェイス面6b上にワイピングブレード2を進入させ、そのワイピングブレード2によってフェイス面6bを拭いてクリーニングすることは、良好な記録を得るために必要な動作とされている。ここで、ワイピングブレード2が状態aから、吐出口6aの配列方向と平行な矢印B方向に移動し、ワイピングブレード2が状態bでフェイス面6a上に進入する際、ワイピングブレード2は、オリフィスプレート6における吐出口6aの配列方向の端部6hに接触するため、ワイピングブレード2によってオリフィスプレート6を剥離させてしまう恐れがある。これは、ワイピングブレード2がオリフィスプレート6上に進入する際に、ワイピングブレード2がオリフィスプレート6の端部6hを引っ掛けてしまうこと、オリフィスプレート6の接着強度が不足していること等によるものである。いずれにしても、従来の液体噴射記録ヘッドのようにオリフィスプレートがそのフェイス面の部分のみでヘッド基体に接合されている一面接合の形態では、オリフィスプレートの接着強度が十分に得られなかった。
【0100】
これに対して、本実施形態の液体噴射記録ヘッド15では、オリフィスプレート6が曲げられたことによって、オリフィスプレート6の、ヘッド基体4との接着面や、はめ込み等による接合面が3面となっている。すなわち、オリフィスプレート6を接合する形態が、オリフィスプレート6の固定部6iとチップタンク11の接合面11dとの接合、オリフィスプレート6のフェイス部分6kと前面プレート部11bとの接合、およびオリフィスプレート6の固定部6jとベースプレート3の裏面との接合を含む3面保持形態となっている。これにより、ワイピングブレード2に対するオリフィスプレート6の反力について、オリフィスプレート6のフェイス部分6kの背面だけでなく、オリフィスプレート6の固定部6i,6jの背面、すなわち折り曲げ側の2つの面を加えることができ、より大きな反力を得ることができる。したがって、このような3面保持形態では、オリフィスプレート6の接合強度が格段に向上し、オリフィスプレート6は、ワイピングブレード2の摺動に対して多大な反力を得ることができる。
【0101】
また、オリフィスプレート6の、ワイピングブレード2との接触面に外力が加わり、オリフィスプレート6を剥離させる場合には、オリフィスプレート6が折り曲げられていることから、オリフィスプレート6をその屈曲部等でせん断する力が必要になる。通常、オリフィスプレート6のせん断方向の破断力は、ワイピングブレード2によるオリフィスプレート6の表面への押付圧よりもはるかに大きいため、実質上、ワイピングブレード2によりオリフィスプレート6が剥離されることはなくなる。
【0102】
ワイピングブレード2の進入方向が、図8に示した方向に対して垂直な方向、すなわち吐出口6aの配列方向に対して垂直な方向に設定された場合には、ワイピングブレード2がオリフィスプレート6の折り曲げ稜線6fまたは6gから接触することになる。したがって、この場合では、ワイピングブレード2がオリフィスプレート6の端部を引っ掛けるようなことがなく、オリフィスプレート6が剥離する可能性はほとんどない。
【0103】
次に、本実施形態の液体噴射記録ヘッド15の変形例について図9および図10を参照して説明する。図9および図10は、液体噴射記録ヘッド15の変形例について説明するための断面図であり、図9および図10には、液体噴射記録ヘッド15のフェイス部の断面が示されている。また、図9および図10では、オリフィスプレート6が折り曲げられてヘッド基体4に接合される前の状態が示されている。
【0104】
図9に示される液体噴射記録ヘッド15の変形例では、ヘッド基体4の縁部31,32のそれぞれが面取りされ、図10に示される液体噴射記録ヘッド15の変形例では、ヘッド基体4の縁部31,32のぞれぞれの表面が、所定の曲率半径Rで規定された曲面になっている。
【0105】
これらの変形例ついても、上述したように縁部31,32のそれぞれに沿ってオリフィスプレート6を折り曲げた時に、縁部31,32の傾斜面21a,21b、あるいは縁部31,32の曲面22a,22bが折り曲げ稜線6f,6gのそれぞれを広い面積で受けるため、オリフィスプレート6の曲げ応力を縁部31,32に沿って滑らかに分布させることができ、前面プレート部11bに対してオリフィスプレート6が大きく浮くことや出っ張ることを無くすことができる。さらに、前面プレート部11bとオリフィスプレート6との接着の有無に関わりなく、そのような効果を得ることができる。これらの変形例のうち縁部31,32の表面を曲面にする形状は、本実施形態で説明した縁部31,32の3つの形状の中で、前面プレート部11bとオリフィスプレート6とを接着しない場合に最も適した形状である。
【0106】
(第2の実施の形態)
図11は、本発明の第2の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図であり、図12は、液体噴射記録ヘッドのフェイス部分の断面図である。本実施形態の液体噴射記録ヘッドは、第1の実施形態のものと比較して、チップタンクおよびベースプレートの吐出口側の部分の形状が異なっており、以下では、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0107】
本実施形態の液体噴射記録ヘッドでは図11および図12に示すように、ヘッド基体44aが、ヒータボード1、天板5、ベースプレート43a、およびチップタンク51aから構成されており、ヘッド基体44aの前面プレート部が、ベースプレート43aの前面プレート部24と、チップタンク51aの前面プレート部23とから構成されている。したがって、前面プレート部23および24が組み合わされて構成されるプレート部が、第1に実施形態における前面プレート部11bに相当する。ベースプレート43aの、前面プレート部24以外の形状は、第1の実施形態で用いたベースプレート3の形状と同様であり、チップタンク51aの、前面プレート部23以外の形状は、第1の実施形態で用いたチップタンク11と同様である。
【0108】
したがって、本実施形態では、オリフィスプレート6のフェイス部分6kを受ける前面プレート部がチップタンク51aとベースプレート43aの2部品のそれぞれの端部から構成されている。このようにヘッド基体44aの前面プレート部を前面プレート部23と24とで構成することにより、チップタンク51aおよびベースプレート43aのそれぞれの部品形状の簡略化が実現され、部品の組み込み、特にチップタンク51aの組み込みにおいてベースプレート43aに対するチップタンク51aの組み込む方向25で非常に良好な組立性が実現されている。
【0109】
(第3の実施の形態)
図13は、本発明の第2の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図であり、図14は、液体噴射記録ヘッドのフェイス部分の断面図である。本実施形態の液体噴射記録ヘッドは、第1の実施形態のものと比較して、チップタンクの吐出口側の部分の形状が異なり、また、ヘッド基体の前面プレート部として、チップタンクやベースプレートとは異なる部材を用いている点が異なっている。以下では、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0110】
本実施形態の液体噴射記録ヘッドでは図13および図14に示すように、ヘッド基体44bが、ヒータボード1、天板5、ベースプレート3、チップタンク51a、および前面プレート専用部材26から構成されている。前面プレート専用部材26は、ベースプレート3およびチップタンク51aの、吐出口6a側となる前端面に接合されており、オリフィスプレート6のフェイス部分6kを受ける前面プレート部が前面プレート専用部材26にて構成されている。このように前面プレート専用部材26にて構成することにより、ヘッド基体44bにおけるオリフィスプレート受け部の平面性を確保しやすいことが最大の特徴となっている。特にノズル数が多くなり、ノズル列の長さが伸びた場合、オリフィスプレート6のフェイス面6bの平面性を確保するのが困難になってくる。この場合、特にオリフィスプレート6のフェイス部分6kを支える前面プレート部の平面性が大変重要になってくる。したがって、本実施形態のようにヘッド基体44bの前面プレート部が前面プレート専用部材26であれば、オリフィスプレート6の受け部が一体部材であり、また、その構造が比較的単純であるため、前面プレート部表面の平面度を確保しやすい。
【0111】
上述した第2および第3の実施形態ともに、ヘッド基体44a,44bにおける前面プレート部の縁部の形状として、第1の実施形態において図1〜図5に示した段付き形状、図9に示した面取り形状、図10に示した曲面にすることが可能である。オリフィスプレート6とヘッド基体の前面プレート部との接着の有無についてはどちらであっても構わない。実際には、第1の実施形態における前面プレート部の縁部の3つの形状、第1〜第3の実施形態のそれぞれの前面プレート部の構成、およびオリフィスプレートと前面プレート部との接着の有無等これらの組み合わせについて、性能、コスト、組立性、使用形態等の様々な点から液体噴射記録ヘッドの最適な構成を選択することになる。
【0112】
(第4の実施の形態)
図15は、本発明の第4の実施形態の液体噴射記録ヘッドについて説明するための分解斜視図である。本実施形態の液体噴射記録ヘッドは、第1〜第3の実施形態のそれぞれのものと比較して、オリフィスプレートをヘッド基体に良好に接合するために、ヘッド基体の縁部の形状を段付き形状等にする代わりにオリフィスプレートの背面に溝を形成した点が主に異なっている。図15では、第1の実施形態と同一の構成部品に同一の符号を付し、以下では、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0113】
本実施形態の液体噴射記録ヘッドでは、図15に示すようにヘッド基体64が、ヒータボード1と、天板5と、ベースプレート3と、チップタンク71等とから構成されている。このヘッド基体64にオリフィスプレート46が接合される。
【0114】
図16は、図15に示されるオリフィスプレートが折り曲げられる前の状態を示す斜視図であり、図17は、図15に示されるオリフィスプレートが折り曲げられた状態を示す斜視図である。図18は、本実施形態の液体噴射記録ヘッドにおける吐出口側の部分の断面図である。図19は、オリフィスプレートの折曲部を拡大した図である。
【0115】
オリフィスプレート46の外形形状は、第1〜第3の実施形態で用いたオリフィスプレート6とほぼ同様であるが、図16〜図18に示すようにオリフィスプレート46の、フェイス面46g側と反対側の背面46gには、オリフィスプレート46の折り曲げ稜線46fに沿って延びる溝17aが2つ形成されている。したがって、オリフィスプレート46のヘッド基体64側の平面におけるヘッド基体64の縁部に対応する部分、すなわちオリフィスプレート46における折り曲げの内側面の屈曲部に、チップタンク71の前面プレート部71bにおける吐出口46aの配列方向と平行な前端部稜線71cに沿って平行に延びる溝17aが形成されている。このように、オリフィスプレート46の折曲部46mに所望の幅の溝17aが形成されると、折曲部46mの肉厚が他の部分に対して薄くなるため、折り曲げ時の反発力が軽減されて、オリフィスプレート46が簡単に折り曲げられるようになり、液体噴射記録ヘッドの生産性が向上する。
【0116】
さらに、折り曲げられたオリフィスプレート46における固定部46i,46jの2面に対しては所定のテンションが付加された上でチップタンク71の上面およびベースプレート3の裏面のそれぞれで固定されて保持される。このため、オリフィスプレート46はフェイス面(前面)46bの背面と、固定部46i,46jのそれぞれの背面の3面で固定されるようになり、オリフィスプレート46がフェイス面46bの背面のみで固定される形態に比べて、保持強度が格段に向上するようになる。
【0117】
本実施形態では、オリフィスプレート46が吐出口46aの配列方向に沿って曲げられる構成であるが、オリフィスプレート46が吐出口46aの配列方向と直角な方向に曲げられるような構成であっても構わない。
【0118】
オリフィスプレート46の背面46gにおける吐出口46aの周囲には、その背面46gから突出した凸部18aが吐出口46aごとに独立して複数形成されている。凸部18aの形状は、円筒形状、多角柱形状等いずれであってもよく、また、それぞれの凸部18aは、その突起形状が一様な壁部で構成されていてもよく、あるいは数個に分断された壁部で構成されていてもよい。
【0119】
それぞれの凸部18aは、吐出口46aと同様にエキシマレーザー加工によって形成されるが、突起を形成する加工のため、凸部18a以外の部分をエキシマレーザーで凸部18aの高さ分だけ除去する加工となる。また、上述した溝17aもエキシマレーザー加工によって掘り込み加工される。すなわち、複数の凸部18aおよび2つの溝17aはエキシマレーザー加工によって形成されるため、それらの位置精度、および面の平滑性が良好な上、残留応力が極めて少ない加工をすることができる。したがって、凸部18aと溝17aが、エキシマレーザーの掘り込み加工による同一工程で形成されるように、さらにはエキシマレーザーによる吐出口46aの穴加工と同一の工程で形成されるように、オリフィスプレート46を製作すれば、オリフィスプレート46の加工コストを削減できるようになる。
【0120】
一般に、オリフィスプレート46は、SUS(ステンレス鋼)、Ni、Cr、Al等の金属プレート、またはポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン等の樹脂成形品や樹脂フィルム材等、さらにはシリコン、セラミックス等によって形成されるが、吐出口46a、凸部18a、溝17aはエキシマレーザー加工によって形成されるだけでなく、採用される材質に応じて、射出成形、トランスファー成形、電鋳、サンドブラスト、エッチング等、様々な方式を適用して、それらを形成することができる。
【0121】
チップタンク71の形状および役割は、その前面プレート部71bの縁部の形状を除いて、第1の実施形態で用いたチップタンク11と同様である。したがって、前面プレート部71bの役割も、チップタンク11の前面プレート部11bと同様であり、オリフィスプレート46における吐出口46aの周囲の部分をその部分との接合によって保持する役割と、記録装置の本体に配設されたキャップ部材のキャッピング動作時にそのキャップ部材から加えられる脱着力や押圧保持力に対してオリフィスプレート46が十分に耐え得るようにオリフィスプレート46を支持する役割を担っている。
【0122】
また、前述したオリフィスプレート46の溝17aは、その溝幅の中心が前面プレート部71bの前端部稜線71cとほぼ一致するような位置に配設されている。
【0123】
液体噴射記録ヘッドの内部では、図18に示すように、ベースプレート3上に配線基板35が粘着剤などによって接着されている。配線基板35は、ヒータボード1に対する配線と、液体噴射記録装置の本体に対する電気的なコンタクトとを行うためのものである。配線基板35としては、ガラスエポキシ基板に銅やニッケルにて配線パターンを形成したPWB基板や、フレキシブルフィルム等に配線パターンを形成したTABフィルム等が用いられる。ヒータボード1と配線基板35とは、例えばワイヤーボンディング35aにより電気的に接続される。
【0124】
次に、液体噴射記録ヘッドの組立工程の概略を説明する。
【0125】
まず、第1の実施形態と同様にしてヒータボード1と天板5とを密着させた後に、チップタンク71を組み込み、天板5のインク供給口9とチップタンク71内のインク通路と接続する。これにより、チップタンク71の前面プレート部71bが、ヒータボード1の前端面1b、および天板5の前端面5bの周囲を覆うことになる。この時、前端面1b,5bが、前面プレート部71bの前面よりも数十μmから数百μm程度前方へ突出するように構成されている。
【0126】
次に、ヒータボード1と天板5との密着によって、前面プレート部71bより突出して形成された前端面1b,5bに対して、オリフィスプレート46を接着剤等の接合手段によって接合する。この際、前面プレート部71bの前面が前端面1b,5bよりも後退しているため、オリフィスプレート46と前端面1b,5bとの接合が妨げられないようになっている。
【0127】
前面プレート部71bへのオリフィスプレート46の接合は、オリフィスプレート46の凸部18aと、その凸部18aと相対するノズル7とを高精度にアライメントした後に、凸部18aをノズル7の内部へ進入させて凸部18aをノズル7に嵌合させることによって行われ、接着剤が双方の接合面を結合することによって完了する。
【0128】
このオリフィスプレート46の背面46gと前面プレート部71bとの接合には、一般に耐インク特性に優れるエポキシ系の接着剤が採用されている。エポキシ系の接着剤による接合では、UV照射もしくは加熱によって接着剤の硬化が促進されるが、接着剤の硬化収縮、熱膨張等の影響を低減させ、吐出口46aの高精度な配列を維持させるために、UV照射と低温キュアの併用による硬化方式が好ましいとされる。
【0129】
オリフィスプレート46の背面46gを前面プレート部71bの端面に圧接する際、接着剤が両者に挟まれて広がるが、それぞれの凸部18aが接着剤の流れを阻止するため、接着剤が吐出口46aの内面やノズル7の内面へ流れ込むことを抑制する効果がある。また、オリフィスプレート46の凸部18aの外周面とノズル7の内面とのクリアランスは数μmに設定されているので、仮に接着剤が両者の隙間に流れ込んでも、表面張力によってこの隙間より奥のノズル7の内面までは接着剤が流動しにくくなる。このように、接着剤は凸部18aの外周面とノズル7の内面との隙間部分に流れ込むため、オリフィスプレート46の接合面積が増えて、接合強度を向上させることができる。
【0130】
さらに、オリフィスプレート46と、ノズル7を形成するための部材とが異なる材質で構成されたとしても、オリフィスプレート46の凸部18aがノズル7内に挿入されるため、接着剤のキュア工程の際に、吐出口46aとノズル7との相対位置が変動しないように物理的に阻止することができるようになる。
【0131】
また、溝17aの配設により、オリフィスプレート46全体の張力(腰の強さ)が溝17aを境にして分断されることになり、オリフィスプレート46の接合時に、フェイス面46b周辺に反発力として作用するオリフィスプレート46の張力が軽減される。すなわち、オリフィスプレート46の接合工程の際に、フェイス面46bに生じる波打ちやうねり等の接合に逆らう反発力が軽減されて、凸部18aの、ノズル7に対するはめ込みが容易にできるようになり、その結果、フェイス面46bの平滑性および接合精度が向上するようになる。
【0132】
さらに、オリフィスプレート46に対して作用する接着剤の熱硬化による収縮応力は、溝17aを配設した効果によって、主に溝17aの内側に向けてのみ作用するようになるため、オリフィスプレート46の固定部46i,46jに作用する収縮応力は軽減されることになる。これにより、接着剤の硬化収縮応力に伴ってオリフィスプレート46全体に生じる波打ちやうねり等の不具合は、大幅に抑制されることになる。
【0133】
次の工程では、オリフィスプレート46の背面46gにおける吐出口46aの外周領域と前面プレート部71bとの間の隙間(前面プレート部71bと前端面1b,5bとの数十μmから数百μmの段差)に接着剤または封止材等が流し込まれて、オリフィスプレート46における吐出口46aの外周領域の部分と前面プレート部71bとの接合が完了する。
【0134】
次に、オリフィスプレート46の固定部46i,46jのそれぞれが、チップタンク71の前面プレート部71bの前端部稜線71cに沿って折り曲げられる。図19に示すように、オリフィスプレート46の折曲部には、折り曲げ稜線46fが通る曲面を形成することが好ましい。これは、回復処理のワイピングブレードの摺擦やキャップ部材の着脱の際に、折り曲げ稜線46fの折曲部に対して応力が集中して、オリフィスプレート46に亀裂や切断等の不具合を発生させることのないようにするためである。
【0135】
ただし、チップタンク71の前端部稜線71cがオリフィスプレート46における折り曲げ稜線46fの曲面部に干渉しないようにするため、チップタンク71の前端部稜線71cにおいても面取りや曲面等を形成する必要がある(図19参照)。
【0136】
オリフィスプレート46の固定部46iはチップタンク71の上面に沿うようにして折り曲げられ、チップタンク11の上面に接合手段や係合手段等によって固定されて保持される。同様に、オリフィスプレート46の固定部46jはベースプレート3の裏面に沿うようにして折り曲げられ、ベースプレート3の裏面に接合手段や係合手段等によって固定されて保持される。図20は、オリフィスプレート46の固定部46i,46jをヘッド基体64に固定するための係合手段の一例を示す斜視図であり、図20に示すように、例えば、第1の実施形態と同様に係合手段である押さえ板12によってオリフィスプレート46の固定部46i,46jを押え込むように固定部46i,46jのそれぞれを固定して保持する。
【0137】
オリフィスプレート46を折り曲げる手順としては、オリフィスプレート46の凸部18aをノズル7内にはめ込んで接着した後にオリフィスプレート46を折り曲げてもよいし、予め、オリフィスプレート46が折り曲げ稜線46fに沿って曲げ加工され、その後に、凸部18aをノズル7内にはめ込んで接着を行うような構成にしてもよい。
【0138】
凸部18aをノズル7内にはめ込んでからオリフィスプレート46を折り曲げる前者の方法の場合は、オリフィスプレート46がチップタンク71の外形部に沿って折り曲げられるため、チップタンク71の個体差が大きい場合でも柔軟に対応できるようになる。一方、オリフィスプレート46の折り曲げ加工後に凸部18aをノズル7内にはめ込む後者の方法の場合は、オリフィスプレート46の折り曲げをより確実にできることから、オリフィスプレート46の折り曲げ稜線46fをしっかり確保することができる。
【0139】
また、前者の方法では、オリフィスプレート46の材質として樹脂フィルムや薄膜金属プレート等、曲げ強度が弱くて曲げやすいものが適しており、逆に後者の方法では、オリフィスプレート46の材質として曲げ強度の強いものが適している。いずれにしても、オリフィスプレート46を曲げる方法は、その材料や形状等により適切に選択する必要がある。
【0140】
また、オリフィスプレート46の背面46gにおける吐出口46aの外周領域と前面プレート部71bとの間の隙間に接着剤または封止材等を流し込む工程については、オリフィスプレート46を折り曲げて固定した後に行うこともできる。この工程は、他に接着剤や封止材を使用する工程がある場合等にその工程と同時に行えば、硬化のための滞留時間を削減することができ、生産仕掛を減らすことができる。
【0141】
本実施形態の液体噴射記録ヘッドにおいても、回復動作を行う場合は、第1の実施形態において図7に基づいて説明したキャッピング動作と同様に、キャップ部材13がオリフィスプレート46のフェイス面46bへ進入し、そのキャップ部材13が吐出口46aの周辺部分と接触することにより、吐出口46aが密封される。この時、オリフィスプレート46のフェイス面46bは平滑であり、段差が形成されていないため、フェイス面46bにおけるキャップ部材13との接触部は、そのフェイス面46bのどの領域であっても密封性を良好に確保できる。したがって、キャップ部材13の部品精度および位置決め精度を高精度に設定する必要はなく、回復装置が簡素化され、回復装置を安価に製作することができる。
【0142】
また、キャップ部材13のキャッピング動作の繰り返しによるオリフィスプレート46の端部の剥離に関しては、オリフィスプレート46の上記3面固定によって、オリフィスプレート46のフェイス面46bが強固に保持されため、キャップ部材13の密着および離間の繰り返しによって生じる剥離等の不具合を阻止することができる。
【0143】
また、キャッピング後および連続吐出後等に行われるワイピング動作についても、第1の実施形態において図8に基づいて説明したのと同様に、本実施形態の液体噴射記録ヘッドにおいてもオリフィスプレート46を曲げることによって、オリフィスプレート46の固定部46i,46jをヘッド基体64の上面および下面のそれぞれに固定するような3面保持形態となっているので、オリフィスプレート46の接合強度が格段に向上し、オリフィスプレート46はワイピングブレード2の摺動に対して多大な反力を得ることができるようになる。
【0144】
また、ワイピングブレード2の進入方向が、吐出口46aの配列方向に対して垂直な方向に設定された場合でも、ワイピングブレード2が折り曲げ稜線46fから接触することになり、ワイピングブレード2がオリフィスプレート46の端部を引っ掛けるようなことはなく、オリフィスプレート46が剥離する可能性はほとんどない。
【0145】
また、オリフィスプレート46を折り曲げてヘッド基体64に固定する際には、第1の実施形態において図6に基づいて説明したのと同様に、オリフィスプレート46のそれぞれの両端部がフェイス面46aから離れる方向へと、吐出口46aの配列方向に対して垂直な方向にオリフィスプレート46の両端部を引っ張りながらオリフィスプレート46にテンションを加えてオリフィスプレート46を固定する。これにより、オリフィスプレート46のフェイス面46bの平面性がより向上し、オリフィスプレート46の、チップタンク71からの浮きもなくなるため、オリフィスプレート46の剥離等を防止する効果が増大することになる。
【0146】
この場合においても、上記のテンションが必要以上に大きくなって吐出口46aが変形破壊を起こさないように、オリフィスプレート46の材質の強度や形状を考慮して、そのテンションを適切な値に設定する必要がある。本実施形態の液体噴射記録ヘッドのようにオリフィスプレート46の凸部18aがノズル7内に挿入される構成は、凸部18aが配設されない構成に比べて、テンションに対する抵抗力が大きくなるため、オリフィスプレート46に加えるテンションを大きく設定できるようになる。
【0147】
以上のように、オリフィスプレート46は、前面プレート部71bの前端部稜線71cに沿って、前面プレート部71bの表面と同一寸法に折り曲げられて固定されるため、オリフィスプレート46の強固な固定が得られる。これにより、フェイス面46bに平滑な面積を創出することができ、キャッピングに必要な平滑面を広く取れ、かつフェイス面46bを所望の面積に設定し易くなる。
【0148】
さらに、オリフィスプレート46のフェイス面46bは、全面が平滑となっているため、ワイピングブレードによる拭き取り時の液体残留や拭きムラ等を大幅に削減することができる。その上、平滑な拭き取り面はワイピングブレードに対するダメージも減らすことができるため、ワイピングブレードの耐久性とワイピング動作の信頼性も向上させることができる。
【0149】
したがって、液体噴射記録ヘッドおよび液体噴射記録装置の設計的な自由度が増して、液体噴射記録ヘッドや液体噴射記録装置の小型化や低コスト化等を図ることができ、液体噴射記録ヘッドの高寿命化を実現することができるようになる。
【0150】
また、本実施形態のようにオリフィスプレート46の背面46gに折り曲げ稜線46fに沿って溝17aを形成する構成は、吐出口の周囲に突起が設けられたオリフィスプレートに限定して適用されるものではなく、当然のことながら、そのような突起が配設されないようなオリフィスプレートのおいても適用されるものである。
【0151】
また、オリフィスプレート46は同一材質による一体構成に限られるものではなく、同一材質による積層構成や、異なる材質による積層構成であっても、本発明を適用できる。つまり、吐出口の周囲の突起部を個別の層で形成したり、オリフィスプレート46の段差部を個別の層で形成するようにしてもよい。さらに、オリフィスプレート46の固定部46i,46jの背面全域が溝17aの底面と同一の面になるように、オリフィスプレート46のフェイス部分に対して、屈曲部から外側の領域が薄肉厚となるようなオリフィスプレートの構成にしても、同様な効果が得られる。
【0152】
(第5の実施の形態)
図21は、本発明の第2の実施形態の液体噴射記録ヘッドを構成するオリフィスプレートを背面から見た斜視図である。
【0153】
上述した第4の実施形態のように、オリフィスプレート46の背面に溝17aを配設することで、オリフィスプレート46の折り曲げが容易にできるようになるが、反面、オリフィスプレート46の固定部46i,46jが自重により、溝17aが形成された部分を支点にして下方へ向けて曲がるようになり、オリフィスプレート46のハンドリング(取り扱い)を悪化させる可能性がある。
【0154】
本実施形態は、部品のハンドリングを悪化させることなく、オリフィスプレート46の折り曲げ面が折り曲げ稜線で容易に折り曲げられるような構成を提案するものである。以下では、本実施形態で用いられるオリフィスプレートについて、第4の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、図21を参照して説明する。
【0155】
本実施形態で用いられるオリフィスプレート46では、図21に示すように、オリフィスプレート46の背面46gに形成される溝17aが、オリフィスプレート46の長手方向、すなわち吐出口46aの配列方向の両端部46h近傍で遮断されるように形成されている。すなわち、溝17aは、オリフィスプレート46の両端部46hを除く位置に形成されており、これにより、オリフィスプレート46の曲げ剛性が増すようになる。したがって、溝17aが長手方向に貫通した構成と異なり、オリフィスプレート46の固定部46i,46jが、溝17aが形成された部分を支点にして下方に曲がってしまうようなことはなく、オリフィスプレート46のハンドリング性が良好となる。
【0156】
なお、溝17aが遮断される部分は端部46hにおける狭い領域であることから、固定部46i,46jを曲げる際の抵抗力は小さく、固定部46i,46jをフェイス部分に対して容易に曲げることができる。
【0157】
(第6の実施の形態)
図22は、本発明の第6の実施形態の液体噴射記録ヘッドにおけるオリフィスプレートの折曲部を拡大した図である。
【0158】
第4および第5の実施形態におけるオリフィスプレート46では、そのフェイス面46bとして、回復処理のために平滑面を確保しなければならず、オリフィスプレート46の接合面の浮きを極力なくす必要がある。オリフィスプレート46における折曲部の周辺部は浮きが発生し易い領域であり、この領域の浮きを抑えるためには、オリフィスプレート46における折り曲げ稜線46fの部分を緩やかな曲面もしくは曲率の大きな曲面で形成して、折り曲げに対する反発力を軽減させることが有効である。
【0159】
チップタンク71の上面やベースプレート3の裏面に沿わせてオリフィスプレート46を折り曲げる工程の際、オリフィスプレート46は曲がりやすい部分から曲げ変形を起こす。その際、第4の実施形態で説明した図19に示されるように溝17aの底面と溝17aの側壁面とが交差部17bで直交している場合では、オリフィスプレート46における交差部17bの近傍の部分が、曲げ剛性が極端に変化する領域であり、仮に、図19のように、溝17aが垂直壁のままその幅を広げてしまうと、オリフィスプレート46における交差部17b近傍の領域部分が曲がりやすくなるだけでなく、この領域部分に曲げが集中する恐れがある。このように、折り曲げが一ヶ所に集中して進行してしまうと、折り曲げ稜線46fの部分の曲面が小さくなるだけでなく、交差部17b近傍の領域部分に応力が集中して、オリフィスプレート46はダメージを受け易くなってしまう。
【0160】
そこで、本実施形態では、オリフィスプレート46における折り曲げ稜線46fの部分に、緩やかな曲面あるいは曲率の大きな曲面を形成させることにより、オリフィスプレート46における溝17aの周辺、すなわち折曲部周辺で浮き等の不具合が発生しないようにするものである。以下では、本実施形態で用いられるオリフィスプレートについて、第4の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、図22を参照して説明する。
【0161】
本実施形態の液体噴射記録ヘッドに用いるオリフィスプレート46では、図22に示すように溝17a内の側壁17cを溝17aの底面に対して傾斜させるとともに、溝17aの全体の開口幅を広げてオリフィスプレート46の折曲部が緩やかに曲がるようにする。一方、チップタンク71は前端部稜線71cに面取りや曲面を設けて、オリフィスプレート46の折曲部と干渉しないようにする。このように、溝17a内の側壁17cを傾斜面に設定することにより、オリフィスプレート46における溝17aの底面と側壁17cとの交差部の近傍部分で曲げ剛性が緩やかに変化するようになり、オリフィスプレート46における折り曲げ稜線46fの部分は大きな曲面を形成しつつ折り曲げられるようになる。
【0162】
(第7の実施の形態)
図23は、本発明の第7の実施形態の液体噴射記録ヘッドを構成するオリフィスプレートを背面から斜視図であり、図23では、オリフィスプレートが折り曲げられる前の状態が示されている。図24は、図23に示されるオリフィスプレートが折り曲げられた状態を示す斜視図である。
【0163】
オリフィスプレートの吐出口や溝、凸部を形成するための用いられるエキシマレーザーは加工コストが高く、掘り込み面積が広くなると、レーザー光の照射時間が長くなり、加工単価が高くなる。そこで、本実施形態では、レーザー光の照射範囲を狭くすることによって、オリフィスプレートの溝加工のコストを軽減させるものである。以下では、本実施形態で用いられるオリフィスプレートについて、第4の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、図23および図24を参照して説明する。
【0164】
本実施形態で用いるオリフィスプレート46では、図23に示すように、第4の実施形態で形成した溝17aの代わりに、楔形状の溝17dが折り曲げ稜線46fに沿って3つ形成されている。よって、溝17dにおける長手方向に対して垂直な方向の断面形状が楔形となっており、1箇所の折り曲げ稜線46fに対して3個の楔形状の溝17dが配設されている。図24に示すように、オリフィスプレート46の折り曲げ時には、楔形状の溝17dのそれぞれの開口角度が狭小化されるため、折り曲げ稜線46fに所望の曲面を形成させることができる。溝17dの数は、折曲部の曲面の大きさや、オリフィスプレート46の材質に合わせて適宜設定される。
【0165】
また、溝17dの形状は楔形状に限定されるものではなく、台形形状、直角形等でも構わない。いずれにしても、オリフィスプレート46の折曲部の背面において折り曲げ稜線46fに対して垂直な方向で溝を分割して形成する構成にすることで、溝加工の掘り込み面積を狭くすることができ、エキシマレーザー光の照射時間を短縮して、オリフィスプレート46の加工時間を削減することができる。
【0166】
(第8の実施の形態)
図25および図26は、本発明の第8の実施形態に係る液体噴射記録ヘッドの製造方法について説明するための断面図である。
本実施形態の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、上述した第1〜第7の実施形態の液体噴射記録ヘッドや、それらの変形例に適用される製造方法であり、以下では、第1の実施形態の液体噴射記録ヘッドを例にとって説明する。図25および図26では、チップタンク11の前面プレート部11bの縁部における段付き形状が省略して示されている。
【0167】
図25では、オリフィスプレート6が、ヒータボード1と天板5との密着によって突出して形成されたノズル7の端面に対して位置合わせされ、接着剤等の接合手段によってオリフィスプレート6がヘッド基体4に接合された状態が示されている。図26では、オリフィスプレート6が、チップタンク11の前面プレート部11bの前端部稜線11cで折り曲げられた状態が示されている。
【0168】
まず、図25に示すように、天板5とヒータボード1の密着によって前面プレート部11bから突出して形成された複数のノズル7に対して、オリフィスプレート6に形成された複数の吐出口6aを位置あわせし、接着剤等の固定手段によりオリフィスプレート6を固定する。そしてオリフィスプレート6における背面領域と前面プレート部11bとの間に形成された隙間16に接着剤、または接着力を有する封止材等が流し込まれる。
【0169】
次に、図26に示すようにチップタンク11の前面プレート部11bの前端部稜線11c,11dに沿ってオリフィスプレート6を折り曲げ、オリフィスプレート6の固定部6i,6jを押さえ板12等によりチップタンク11の上面やベースプレート3の裏面に固定する。
【0170】
オリフィスプレート6の折り曲げで、オリフィスプレート6の材料自体が有する曲げ弾性により、オリフィスプレート6にはもとの平面に戻ろうとする応力が発生するが、接着剤、または接着力を有する封止材によりオリフィスプレート6の背面領域と前面プレート部11bとが接着領域30で接合されているため、この応力は押さえ込まれる。
【0171】
本実施形態では、この接着領域30を、オリフィスプレート6の背面領域と前面プレート部11bとが対向する面全体で接合するような構成としている。この接着領域30の面積および接合強度は、オリフィスプレート6の材質および厚み等から決定される曲げ剛性に応じて選択的に決定されるべきものである。当然のことながら、オリフィスプレート6の曲げに対する応力に対してその接合強度が十分なマージンをもった強さでなければならない。
【0172】
この接着領域30の接合強度は、接着剤あるいは封止材そのものの性能にも影響されるが、オリフィスプレート6の背面領域や前面プレート部11bにおける表面性や、ゴミ、油脂等の付着等の要因にも影響されるため、接合強度を向上させる必要がある時には、接着前の処理として洗浄や表面処理等を行うとより効果的である。
【0173】
また、このオリフィスプレート6の曲げに対する応力を打ち消すために、オリフィスプレート6のもつ弾性限界を超える曲げを加えることも有効である。ただし、オリフィスプレート6の材料によりその有効性も変わるため、状況により選択することが必要である。
【0174】
次に、オリフィスプレートを折り曲げる工程について図27を参照して説明する。図27は、ヘッド基体に接着されたオリフィスプレートを折り曲げる工程を順に示した図である。
【0175】
まず、図27(a)において、天板5とヒータボード1により形成されたノズル7に対して、オリフィスプレート6に形成された吐出口6aを位置決めし、オリフィスプレート6が接着剤等により固定されている。この時、オリフィスプレート6に対し、天板5とヒータボード1は接着されているが、上述したようにオリフィスプレート6と前面プレート部11bとの間には数十〜数百ミクロンの隙間16が存在するような構成となっている。
【0176】
次に、この隙間16に、図27(b)に示すように接着剤、あるいは接着力を有する封止材19を流し込む。これにより接着領域30においてオリフィスプレート6と前面プレート部11bとが接着されて一体化する。
【0177】
次に、図27(c)に示すように、オリフィスプレート6を前面プレート部11bの縁部(エッジ)31,32に沿って折り曲げる。この時、オリフィスプレート6の折り曲げ方向20と同方向にオリフィスプレート6の折り曲げ応力20aが発生する。また、それと同時に派生力20bも発生する。この派生力20bは、オリフィスプレート6と前面プレート部11bの隙間16を拡大させる方向に働いている。しかし、先の工程において、オリフィスプレート6のフェイス部分が前面プレート部11bに接着されて固定されているため、この隙間16の大きさは変化しない。よって、図27(d)に示すようにオリフィスプレート6の屈曲部やその周辺部においてオリフィスプレート6の浮き等もなくなり、フェイス面6bの平面性を保てる。
【0178】
このようにオリフィスプレート6のフェイス面6bの平面性を確保するための接着工程を、オリフィスプレート6の折り曲げ前に行うことで、その効果をより大きくすることができる。
【0179】
したがって、本実施形態の液体噴射記録ヘッドの製造方法によれば、平滑であり、段差のないフェイス面6bを有する液体噴射記録ヘッドを作製することができるので、上述したのと同様に、液体噴射による記録動作において回復動作を行う場合に、キャップ部材がオリフィスプレート6のフェイス面6b上へ進入して接触し、キャップ部材によってフェイス面6bにおける吐出口6aの列を含む領域が密封される際、フェイス面6bは平滑であり、段差がないため、フェイス面6bにおけるキャップ部材との接触部は、フェイス面6bの部分であっても密封性を確保できる。よって、キャップ部材の進入位置決め部の精度を高度に設定する必要がないため、記録装置を簡素化できる。
【0180】
キャッピング動作後あるいは連続吐出後等に行われるワイピング動作についても、オリフィスプレート6が曲げられたことによって、オリフィスプレート6の、ヘッド基体4との接着面や、はめ込み等による接合面が3面となっているので、ワイピングブレードに対するオリフィスプレート6の反力について、オリフィスプレート6のフェイス部分6kの背面だけでなく、オリフィスプレート6の固定部6i,6jの背面、すなわち折り曲げ側の2つの面を加えることができ、より大きな反力を得ることができる。したがって、このような3面保持形態では、オリフィスプレート6の接合強度が格段に向上し、オリフィスプレート6は、ワイピングブレードの摺動に対して多大な反力を得ることができる。
【0181】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、オリフィスプレートをヘッド基体の縁部に沿って折り曲げてオリフィスプレートをヘッド基体に固定する構成の液体噴射記録ヘッドで、ヘッド基体の縁部に切欠きを形成してその縁部を段付き形状にしたり、その縁部の表面を曲面にしたり、あるいはその縁部を面取りしたりしたことにより、液体噴射記録ヘッドの吐出口形成面の平面性を十分に確保して、オリフィスプレートをヘッド基体に対して確実に折り曲げ固定することができる。これにより、液体噴射記録ヘッドの吐出口形成面、すなわちオリフィスプレートのフェイス面上へのワイピングブレードの侵入に対してオリフィスプレートの浮きを防止することができ、液体噴射記録ヘッドの耐久性を向上させることができる。また、オリフィスプレートで凹凸のない平滑なフェイス面を創出することにより、キャップ部材のキャッピング面積を最大限にとることができるため、液体噴射記録ヘッドに対する回復吸引動作を確実に行うことができるとともに、複雑なキャッピング機構を不要とするために液体噴射記録装置のコストを低く押さえることができる。そして、液体噴射記録ヘッド自体を小型化できることから、複数の液体噴射記録ヘッドを実装した時のヘッドの高密度配置や、これに伴う記録装置自体の小型化など、省スペース化かつ低コスト化を大いに進めることができる。さらに、オリフィスプレートの平滑なフェイス面は、ワイピングブレードに対するダメージを低減させ、記録装置の高寿命化を可能にする。そして、凹凸面に固着しやすい記録液などに対しても、オリフィスプレートのフェイス面の平滑面のためそのフェイス面に記録液が固着することが少なく、かつワイピングによりフェイス面から記録液が確実に除去されるため、良好な記録品位を長く維持することができるという効果がある。
【0182】
また、本発明は、オリフィスプレートをヘッド基体の縁部に沿って折り曲げてオリフィスプレートをヘッド基体に固定する構成の液体噴射記録ヘッドで、オリフィスプレートのヘッド基体側の面におけるヘッド基体の縁部に対応する部分に、ヘッド基体の縁部と平行な方向に延びる溝が形成されたことにより、オリフィスプレートを容易に折り曲げることが可能になり、液体噴射記録ヘッドの生産性が向上するという効果がある。また、そのような溝をオリフィスプレートに形成したことにより、オリフィスプレートを折り曲げた際にオリフィスプレート全体の張力が、溝が形成された部分を境にして分断されることになり、ヘッド基体へのオリフィスプレートの接合時に、オリフィスプレートの、ヘッド基体の前端面に接合された部分のフェイス面に生じる波打ちやうねり等の接合に逆らう反発力が軽減される。その結果、フェイス面の平滑性、およびフェイス面の裏側の接着面における接合強度が向上するという効果がある。
【0183】
さらに、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法によれば、オリフィスプレートをヘッド基体の縁部に沿って折り曲げてオリフィスプレートをヘッド基体に固定する構成の液体噴射記録ヘッドを作製する際に、オリフィスプレートをヘッド基体に対して確実に折り曲げ固定することができ、オリフィスプレートを容易に折り曲げることが可能になるため、液体噴射記録ヘッドの生産性が向上するという効果がある。また、オリフィスプレートを折り曲げる前にオリフィスプレートをヘッド基体の前端面に接合することで、オリフィスプレートのフェイス面の平面性を保って液体噴射記録ヘッドを作製することができる。この作用により、フェイス面の平面性を確保して、そのフェイス面におけるキャッピング面積をオリフィスプレートのフェイス面の面積と同一化することによる液体噴射記録ヘッドの小型化と、ワイピング動作におけるオリフィスプレートの剥がれに対する信頼性の向上とを図ることができる。さらに、オリフィスプレートのフェイス面上に段差がないことにより、ワイピングブレードの耐久性が向上するなどして、液体噴射記録装置を高寿命化させることが可能な液体噴射記録ヘッドを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図である。
【図4】ヘッド基体にオリフィスプレートを接合する工程について説明するための断面図である。
【図5】液体噴射記録ヘッドのフェイス部分の断面図である。
【図6】オリフィスプレートを折り曲げてヘッド基体に固定する方法について説明するための図である。
【図7】液体噴射記録ヘッドにおけるキャッピング動作について説明するための斜視図である。
【図8】液体噴射記録ヘッドにおけるワイピング動作について説明するための模式図である。
【図9】液体噴射記録ヘッドの変形例について説明するための断面図である。
【図10】液体噴射記録ヘッドの変形例について説明するための断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図である。
【図12】液体噴射記録ヘッドのフェイス部分の断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の液体噴射記録ヘッドの構成について説明するための分解斜視図である。
【図14】液体噴射記録ヘッドのフェイス部分の断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態の液体噴射記録ヘッドについて説明するための分解斜視図である。
【図16】図15に示されるオリフィスプレートが折り曲げられる前の状態を示す斜視図である。
【図17】図15に示されるオリフィスプレートが折り曲げられた状態を示す斜視図である。
【図18】図15に示される液体噴射記録ヘッドにおける吐出口側の部分の断面図である。
【図19】オリフィスプレートの折曲部を拡大した図である。
【図20】オリフィスプレートの固定部をヘッド基体に固定するための係合手段の一例を示す斜視図である。
【図21】本発明の第2の実施形態の液体噴射記録ヘッドを構成するオリフィスプレートを背面から見た斜視図である。
【図22】本発明の第6の実施形態の液体噴射記録ヘッドにおけるオリフィスプレートの折曲部を拡大した図である。
【図23】本発明の第7の実施形態の液体噴射記録ヘッドを構成するオリフィスプレートを背面から斜視図である。
【図24】図23に示されるオリフィスプレートが折り曲げられた状態を示す斜視図である。
【図25】本発明の第8の実施形態に係る液体噴射記録ヘッドの製造方法について説明するための断面図である。
【図26】本発明の第8の実施形態に係る液体噴射記録ヘッドの製造方法について説明するための断面図である。
【図27】ヘッド基体に接着されたオリフィスプレートを折り曲げる工程を順に示した図である。
【図28】従来の液体噴射記録ヘッドを部分的に断面にして示した斜視図である。
【図29】図28に示したオリフィスプレートにレーザー加工で吐出口を形成する様子について説明するための断面図である。
【図30】液体噴射記録ヘッドを搭載した従来の液体噴射記録装置の一例を示す外観斜視図である。
【図31】図30に示した液体噴射記録装置におけるワイピング動作について説明するための模式図である。
【符号の説明】
1 ヒータボード
1a 吐出ヒータ
1b、5b 前端面
2 ワイピングブレード
3、43a ベースプレート
4、44a、44b、64 ヘッド基体
5 天板
6、46 オリフィスプレート
6a、46a 吐出口
6b、46b フェイス面
6f、6g、46f 折り曲げ稜線
6h、46h 端部
6i、6j、46i、46j 固定部
6k フェイス部分
7 ノズル
8 共通液室
9 インク供給口
11、51a、51b、71 チップタンク
11a インク通路
11b、23、24、71b 前面プレート部
11c、11d、71c 前端部稜線
11e 接合面
12 押さえ板
13 キャップ部材
13a キャッピング領域
14 曲面部
15 液体噴射記録ヘッド
16 隙間
16a 封止材溜り
17a、17d 溝
17b 交差部
17c 側壁
18a、18b 凸部
19 封止材
20 折り曲げ方向
20a 応力
20b 派生力
21a、21b 傾斜面
22a、22b 曲面
25 組み込み方向
26 前面プレート専用部材
30 接着領域
31、32 縁部
33、34 切欠き
33b 段差面
35 配線基板
35a ワイヤーボンディング
46m 屈曲部
a、b 距離

Claims (26)

  1. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、
    前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、
    前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記ヘッド基体の前記縁部に、前記縁部に沿って延びる切欠きが形成されていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
  2. 前記記録ヘッドの前記縁部の形状が段付き形状となるように前記切欠きが前記縁部に形成されている、請求項1に記載の液体噴射記録ヘッド。
  3. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、
    前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、
    前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記ヘッド基体の前記縁部の表面が曲面になっていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
  4. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、
    前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、
    前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記ヘッド基体の前記縁部が面取りされていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
  5. 前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の前記前端面にも接着されており、前記ヘッド基体の前記縁部の表面に前記オリフィスプレートが面で接している、請求項3または4に記載の液体噴射記録ヘッド。
  6. 前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の、前記前端面と異なる面にのみ接着されており、前記ヘッド基体の前記縁部の表面に前記オリフィスプレートが面で接している、請求項3または4に記載の液体噴射記録ヘッド。
  7. 前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の前記前端面にも接着されており、前記オリフィスプレートの折り曲げ線と前記ヘッド基体の前記前端面の縁とが所定の距離だけ離れている、請求項1〜のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  8. 前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の、前記前端面と異なる面にのみ接着されており、前記オリフィスプレートの折り曲げ線と前記ヘッド基体の前記前端面の縁とが所定の距離だけ離れている、請求項1〜4または6のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  9. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記オリフィスプレートの前記ヘッド基体側の面における前記縁部に対応する部分の少なくと一部に、前記縁部と平行な方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
  10. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口、および前記吐出口の周囲に前記吐出口ごとにそれぞれ独立して形成された複数の凸部を備え、該凸部の少なくとも一部が前記液流路内に進入して嵌合するように前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合されており、前記オリフィスプレートの前記ヘッド基体側の面における前記縁部に対応する部分の少なくと一部に、前記縁部と平行な方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
  11. 前記オリフィスプレートの前記溝が複数個に分割されて形成されている、請求項9または10に記載の液体噴射記録ヘッド。
  12. 前記オリフィスプレートの前記溝内の側壁面が前記溝の底面に対して傾斜している、請求項9〜11のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  13. 前記オリフィスプレートの前記溝における長手方向に対して垂直な方向の断面形状が楔形である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  14. 前記オリフィスプレートの前記溝が、前記オリフィスプレートの両端部を除く位置に形成されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  15. 前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体の前記前端面にも接着されて接合されている、請求項9〜14のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  16. 被記録媒体に向けて液体を吐出して該被記録媒体に該液体を付着させることにより前記被記録媒体に記録を行う液体噴射記録装置であって、
    請求項1〜15のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッドと、
    前記液体噴射記録ヘッドにおける前記吐出口が位置した吐出口形成面の、前記吐出口を含む領域を密封するためのキャップ部材とを有する液体噴射記録装置。
  17. 被記録媒体に向けて液体を吐出して該被記録媒体に該液体を付着させることにより前記被記録媒体に記録を行う液体噴射記録装置であって、
    請求項1〜15のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッドと、
    前記液体噴射記録ヘッドにおける前記吐出口が位置した吐出口形成面を拭いて該吐出口形成面をクリーニングするためのワイピングブレードとを有する液体噴射記録装置。
  18. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、
    前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に、該縁部に沿って延びる切欠きが形成された前記ヘッド基体、および前記オリフィスプレートを準備する工程と、
    前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、
    前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、
    前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  19. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、
    前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の端部における縁部の表面が曲面となった前記ヘッド基体、および前記オリフィスプレートを準備する工程と、
    前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、
    前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、
    前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  20. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、
    前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部が面取りされた前記ヘッド基体、および前記オリフィスプレートを準備する工程と、
    前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、
    前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、
    前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  21. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有し、前記オリフィスプレートが前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げられるとともに、前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に前記オリフィスプレートの端部が接合された液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、前記オリフィスプレートの前記ヘッド基体側の面における前記縁部に対応する部分の少なくと一部に、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体に接合した際に前記ヘッド基体の前記縁部と平行な方向に延びるような溝を形成する工程と、前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせして前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲の部分を固定する工程と、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程と、前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面と異なる面に接合する工程とを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  22. 前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせする工程で、前記オリフィスプレートにおける前記吐出口の周囲に前記吐出口ごとにそれぞれ独立して形成された複数の凸部の少なくとも一部を前記液流路内に進入させて前記液流路に嵌合させる、請求項21に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  23. 前記オリフィスプレートに前記溝を形成する工程が、前記複数の吐出口を形成するための穴加工、および前記複数の凸部を形成するための掘り込み加工と同時に、前記溝を形成するための掘り込み加工により行われる、請求項21に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  24. 前記複数の吐出口、前記複数の凸部、および前記溝を、エキシマレーザーを用いた加工により形成する、請求項23に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  25. 前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の前記縁部に沿って折り曲げる工程の前に、前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面に接合する工程を有する、請求項18〜24のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  26. 液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生するエネルギー発生手段、および該エネルギー発生手段がそれぞれ配置された複数の液流路を備えたヘッド基体と、前記液流路とそれぞれ連通して一直線上に配列された複数の吐出口が形成され、前記ヘッド基体に接合されたオリフィスプレートとを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法であって、
    前記ヘッド基体および前記オリフィスプレートを準備する工程と、
    前記ヘッド基体の前記複数の液流路に対して前記オリフィスプレートの前記複数の吐出口を位置合わせする工程と、
    前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体の、前記複数の液流路の開口端側の前端面に接合する工程と、
    前記オリフィスプレートを前記ヘッド基体における前記複数の液流路の開口端側の端部の縁部に沿って折り曲げる工程と、
    前記オリフィスプレートの端部を前記ヘッド基体の、前記前端面と異なる面に接合する工程とを有する液体噴射記録ヘッドの製造方法。
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