JP2010194801A - インクジェットヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】インク流路口の数を増やすことなく、流路抵抗の差を低減し、ノズル孔の数が増えても各ノズル孔からのインク滴の飛翔速度および体積のばらつきを低減するインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】インクが供給される第1の共通インク溝11において、この第1の共通インク溝11に設けられた第1の流路口13aと、この第1の流路口13aに最も近い位置にある個別インク溝6の開口部16との間に、インク流れを邪魔する突起部18が設けられている。
【選択図】図2

Description

この発明は、例えば、プリンタなどに用いられるインクジェットヘッドに関する。
一般に、インクジェットヘッドは、ノズル面に形成された複数のノズル孔から塗布対象物に対して微小なインク滴を吐出するデバイスである。インクジェットヘッドは、民生用として用紙等に画像形成を行うインクジェットプリンタに用いられるだけでなく、インクとして導電材料を吐出させることによって配線を描画したり、R,G,Bの各色のインクを吐出させることによってカラーフィルタを作製したり、熱硬化性または紫外線(UV)硬化性のインクを吐出させることによって、マイクロレンズやスペーサなどのような3次元構造物を作製したり、といった産業用途にも用いられている。
産業用途においては特に、高精細化や処理時間の短縮のために、1つのインクジェットヘッドに多数のノズル孔を形成させるという要求がある。一方で、インク滴の着弾位置や塗布量を精密にコントロールするために、それぞれのノズル孔から吐出されるインク滴の飛翔速度や体積のばらつきを低く抑える必要がある。
ノズル孔ごとの吐出インク滴の飛翔速度や体積がばらつく要因としては、ノズル孔そのものの形状ばらつきのほかに、インク供給口から共通インク室、圧電基板に形成された溝を介して各ノズル孔に至るまでの流路抵抗のばらつきが挙げられる。インク供給口との距離が短いノズル孔では流路抵抗が小さいためインクを引き込みやすく、逆にインク供給口との距離が長いノズル孔ではインクを引き込みにくい。このように流路抵抗に差があると、インク供給能力のばらつきが生じ、吐出インク滴の飛翔速度や体積がばらつくことになる。
ノズル孔の数が増えるほど、インク供給口とノズル孔との距離の差は大きくなり、流路抵抗の差が大きくなるので、吐出インク滴の飛翔速度や体積のばらつきは大きくなってしまう。
流路抵抗の差を小さくする構成として、特開平9−262980号公報(特許文献1)に記載されたインクジェットヘッドがある。これによると、共通インク室を複数に分割し、それぞれにインク供給口を配設することで、流路抵抗の差を小さくする構成となるようにしている。
特開平9−262980号公報
しかしながら、上記従来のインクジェットヘッドでは、インク流路口が増えると、繋ぎこむ流路、配管の数が増えるため、インクジェットヘッド内の流路や、インクジェットヘッドを搭載する装置の配管が複雑化するという問題があった。
また、流路の接続箇所が増えるため、インクリークの可能性が増し、インクジェットヘッドやインクジェットヘッドを搭載する装置の信頼性を低下させるという問題があった。
そこで、この発明の課題は、インク流路口の数を増やすことなく、流路抵抗の差を低減し、ノズル孔の数が増えても各ノズル孔からのインク滴の飛翔速度および体積のばらつきを低減するインクジェットヘッドを提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明のインクジェットヘッドは、
X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にX方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて配列された複数の個別インク溝を有する圧電基板と、
上記圧電基板の複数の個別インク溝を覆うように配置されると共に、上記個別インク溝に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、
上記圧電基板が取り付けられ、上記複数の個別インク溝のX方向一端側の開口部に連通する第1の共通インク溝、および、上記複数の個別インク溝のX方向他端側の開口部に連通する第2の共通インク溝を有する本体部と
を備え、
上記本体部は、上記第1の共通インク溝に設けられた第1の流路口、および、上記第2の共通インク溝に設けられた第2の流路口を有し、
上記第1の共通インク溝および上記第2の共通インク溝のうちの少なくともインクが供給される共通インク溝において、この共通インク溝に設けられた流路口と、この流路口に最も近い位置にある個別インク溝の開口部との間に、インク流れを邪魔する突起部が設けられていることを特徴としている。
この発明のインクジェットヘッドによれば、インクが供給される共通インク溝において、この共通インク溝に設けられた流路口と、この流路口に最も近い位置にある個別インク溝の開口部との間に、インク流れを邪魔する突起部が設けられているので、上記流路口と上記個別インク溝との距離が最も短く流路抵抗の小さい流路上に、上記突起部を配設することで、流路抵抗を大きくし、上記流路口と全ての個別インク溝との間を結ぶ流路における流路抵抗の差を小さくすることができる。このため、ノズル孔ごとの飛翔インク滴の飛翔速度や体積のばらつきを低減することができる。
また、インクを個別インク溝に供給するための共通インク溝や流路口を一つにできるので、繋ぎこむ配管などの流路構成が簡素になる。また、流路の接続箇所を減らせるので、インクリークの可能性を低減できる。
したがって、ノズル孔の数が増えても各ノズル孔からのインク滴の飛翔速度および体積のばらつきを低減し、簡素で信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することができる。
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、
上記突起部は、上記流路口と複数の上記個別インク溝との間を結ぶ流路に交差するように配設され、
上記突起部は、上記流路口と上記個別インク溝との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する部分におけるX方向およびY方向に直交するZ方向の高さが高くなるように、形成されている。
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記突起部は、上記流路口と上記個別インク溝との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する部分の高さが高くなるように、形成されているので、流路口からそれぞれの個別インク溝への流路抵抗の差をさらに小さくすることができる。このため、ノズル孔ごとの飛翔インク滴の飛翔速度や体積のばらつきをさらに低減することができる。
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、
上記突起部は、Y方向に沿って、互いに間隔をあけて複数存在し、
この複数の突起部は、上記流路口と上記個別インク溝との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する上記突起部におけるX方向およびY方向に直交するZ方向の高さが高くなるように、形成されている。
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、この複数の突起部は、上記流路口と上記個別インク溝との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する上記突起部におけるX方向およびY方向に直交するZ方向の高さが高くなるように、形成されているので、流路口からそれぞれの個別インク溝への流路抵抗の差をさらに小さくすることができる。このため、ノズル孔ごとの飛翔インク滴の飛翔速度や体積のばらつきをさらに低減することができる。
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、上記突起部は、上記第1の共通インク溝および上記第2の共通インク溝の両方に、設けられている。
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記突起部は、上記第1の共通インク溝および上記第2の共通インク溝の両方に、設けられているので、インク流動の向きが逆になっても、複数の個別インク溝を流れるインク流路に対する流路抵抗のばらつきを低減できて、複数のノズル孔についてインク流動による効果を均一にすることができ、また、インク流動を長期間にわたって行うことができる。
つまり、供給タンクから共通インク溝や個別インク溝を経由して廃液タンクへインクを流し続けることで、ノズル孔の直近のインクを常に流動させることができ、微粒子を含むインクでの微粒子の沈降、浮上を防止し、圧電基板の駆動によるインクの温度上昇を防止することができる。この場合、2つのタンクに供給タンク、廃液タンクといった役割を決めず、インクを流す方向を定期的に変更することで、供給タンクにインクを補充することなく長期間にわたってインク流動を行うことができる。
また、廃液タンクから供給タンクへ直接インクを戻す流路を、インクジェットヘッドを搭載する装置に設置することでも、インク流動を長期間行うことができるが、この実施形態によれば、そのような流路を設置することの必要がなく、装置を簡素化することができる。
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、上記突起部の少なくとも一部は、上記ノズルプレートに取り付けられている。
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記突起部の少なくとも一部は、上記ノズルプレートに取り付けられているので、ノズルプレートのたわみを小さくすることができ、ノズルプレートの剥がれにくい、良好なクリーニングを行えるインクジェットヘッドを提供することができる。
つまり、共通インク溝は、複数の個別インク溝に連通されているので、ノズル孔の数が増えるほど、共通インク室が大きくなる。ノズルプレートが本体部とともに共通インク室の一部を形成している場合、ノズルプレートが接着されていない部分が広くなる。そして、突起部がノズルプレートに取り付けられていないと、インク加圧やノズル孔からのインク吸引時にノズルプレートが大きくたわみ剥がれる可能性が大きくなると共に、ワイプブレードによるノズルプレートのクリーニング時に、ワイプブレードの当接圧によりノズルプレートが大きくたわむため、適正な当接圧を維持することが困難となり、良好なクリーニングを行うことができない。
また、この実施形態では、ノズルプレートのたわみを小さくできるので、厚さが薄く、剛性の低いノズルプレートを使用することができる。ノズルプレートが薄いほど、ノズル孔の加工に要する時間を短くでき、ノズル孔の真円度などの形状精度が向上するため、作製時間が短く、安定したインク吐出の行えるインクジェットヘッドを提供することができる。
この発明のインクジェットヘッドによれば、インクが供給される共通インク溝において、この共通インク溝に設けられた流路口と、この流路口に最も近い位置にある個別インク溝の開口部との間に、インク流れを邪魔する突起部が設けられているので、ノズル孔の数が増えても各ノズル孔からのインク滴の飛翔速度および体積のばらつきを低減し、簡素で信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することができる。
個別インク溝を形成した圧電基板の斜視図である。 導電膜形成工程後の圧電基板の斜視図である。 除去工程後の圧電基板の斜視図である。 分離工程後の圧電基板の斜視図である。 個別インク溝が開口する圧電基板側面の拡大図である。 導電部材接着後の圧電基板の斜視図である。 第1の部材を取り付けた圧電基板の斜視図である。 第2の部材を取り付けた圧電基板の斜視図である。 本発明のインクジェットヘッドの第1実施形態を示す斜視図である。 図1IのA−A断面図である。 インクジェットヘッドをノズルプレート側からみた平面図である。 他の形態の突起部を示す平面図である。 他の形態の突起部を示す平面図である。 他の形態の突起部を示す平面図である。 別の形態の突起部を示す断面図である。 別の形態の突起部を示す断面図である。 別の形態の突起部を示す断面図である。 別の形態の突起部を示す断面図である。 別の形態の突起部を示す断面図である。 別の形態の突起部を示す断面図である。 別の形態の突起部を示す断面図である。 他の形態のインクジェットヘッドをノズルプレート側からみた平面図である。 本発明のインクジェットヘッドの第2実施形態を示す断面図である。 インクジェットヘッドをノズルプレート側からみた平面図である。 従来のインクジェットヘッドにおいて、インク加圧を行っている際の状態を示す断面図である。 本発明のインクジェットヘッドにおいて、インク加圧を行っている際の状態を示す断面図である。 従来のインクジェットヘッドにおいて、ノズル吸引を行っている際の状態を示す断面図である。 本発明のインクジェットヘッドにおいて、ノズル吸引を行っている際の状態を示す断面図である。 従来のインクジェットヘッドにおいて、ワイプブレードを用いて、共通インク室を形成する部分のノズルプレートをクリーニングしている状態を示す断面図である。 従来のインクジェットヘッドにおいて、ワイプブレードを用いて、圧電基板に接着された部分のノズルプレートをクリーニングしている状態を示す断面図である。 本発明のインクジェットヘッドにおいて、ワイプブレードを用いて、共通インク室を形成する部分のノズルプレートをクリーニングしている状態を示す断面図である。 本発明のインクジェットヘッドにおいて、ワイプブレードを用いて、圧電基板に接着された部分のノズルプレートをクリーニングしている状態を示す断面図である。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明のインクジェットヘッドの製造方法について説明する。まず、図1Aに示すように、アクチュエータ部材である圧電基板1にダイシングブレードを複数回一定方向に走査して複数の個別インク溝6を形成する溝形成工程を行う。
個別インク溝6は、X方向に延在しX方向の両端が開口する。個別インク溝6は、X方向の両端に、開口部16を有する。複数の個別インク溝6は、Y方向に互いに間隔をあけて配列されている。ここで、Y方向は、X方向に交差し、Z方向は、X方向およびY方向に直交する。
個別インク溝6は、後に、ノズルプレート2で覆うことにより、インクに圧力を伝達してインクを吐出するための圧力発生室(個別インク室6a)となる。
本実施の形態では、圧電基板1の大きさは5mm×50mmであり厚さは2mmのものを使用した。個別インク溝6の深さはおよそ300μm、幅は100μmとし、個別インク溝6のピッチは200μmで溝の数は200本とした。ただし、全ての図において、図の簡略化のため個別インク溝6の数、深さ等は正確に図示してはいない。溝の幅は、使用するダイシングブレードの厚みで変えることができ、溝の深さは、ダイシングブレードの切り込み量を変えることにより変更することができる。
また、圧電基板1には個別インク溝6の深さ方向における略中央にて分極方向が相反する2枚の圧電材料があらかじめ接着剤で貼りあわされている。本実施形態では2mmの圧電基板1では、0.15mmの薄板と1.85mmの厚板が貼りあわされている。この構成は外部より電圧を印加した際に、個別インク溝6の薄板部分と厚板部分とが反対方向に変形することにより、個別インク溝6とノズルプレート2とで囲まれた領域である圧力発生室(個別インク室6a)の容積を変えることによってインクを吐出するために必要である。
続いて、図1Bに示すように、圧電基板1の個別インク溝6の内壁に電極7となる導電膜を形成するための、且つ圧電基板1の側面に電極引き出し部9となる導電膜を形成するための導電膜形成工程を行う。斜線部が導電膜を形成した部分である。本実施の形態では銅をスパッタ法により成膜した。このとき成膜した銅の個別インク溝6の内壁における膜厚はもっとも薄い部分で0.5μmとなるようにした。
本実施形態におけるスパッタ法による導電膜形成工程では、圧電基板1の個別インク溝6を形成した面の裏側の面を除く全面に導電膜が形成されるため目的以外の部分にも導電膜が形成される。このとき圧電基板1の個別インク溝6が開口する側面に成膜された銅の厚みは1μmであった。個別インク溝6の内壁に成膜された銅の膜厚と、個別インク溝6が開口する圧電基板1の側面に成膜された銅の膜厚が異なるのは形状による銅のつきまわりの差によるものである。
続いて、導電膜形成工程で形成された、圧電基板1の個別インク溝6を形成した面における不要な導電膜を除去するための除去工程を行う。図1Cに示すように、この除去工程は、例えば圧電基板1の上部表面をダイシングブレードで複数回走査することで行うことができる。このとき、圧電基板1の個別インク溝6形成面において隣接する個別インク溝6同士が確実に絶縁するように、ダイシングブレードにより圧電基板1の表面もわずかに研削することが好ましい。除去工程後の圧電基板1には、個別インク溝6の内壁に形成された電極7と、圧電基板1の側面とに導電膜が形成されている。
次に、図1Dと図1Eに示すように、圧電基板1の側面に形成されている導電膜に対してダイシングブレードを複数回一定方向に走査して分離溝10を形成する分離工程を行う。この分離工程により、個別インク溝6にそれぞれ対応した電極引き出し部9を形成する。
個別インク溝6の内壁に形成された電極7と電極引き出し部9とは、個別インク溝6が開口する圧電基板1の側面において電気的に接続されている。本実施の形態では、分離溝10の深さは10μm、幅は50μmとして個別インク溝6が開口する圧電基板1の側面にそれぞれ分離工程を行った。また分離溝10を形成した部分は、個別インク溝6の間であり、隣接する個別インク溝6の間で電気的に導通することがない位置としている。
このような分離工程を、個別インク溝6が開口する圧電基板1の側面の両側に行った。両側に分離工程を行うことにより、圧電基板1は対称形となるため後工程において方向を間違うことはない。また片側の電極引き出し部9に損傷があった場合には反対側の電極引き出し部9を使用することができるため歩留まりを向上することができる。
その後、図1Fに示すように、圧電基板1の電極引き出し部9に導電部材を接続する。本実施の形態では導電部材としてフレキシブルケーブル4を用い、電極引き出し部9との接続はACF接続を用いた。フレキシブルケーブル4の他方の端部はインクを吐出するために、直接または他部材を介して外部電圧印加機構と接続される。本実施形態において、導電部材としてフレキシブルケーブルを使用するのは、フレキシブルケーブルは変形が容易であるため後工程においてプロセス上使用しやすく歩留まりの低下を抑制できるからであるが、必ずしもフレキシブルケーブルである必要はない。
次に、図1Gに示すように、第1の部材3aに、圧電基板1を取り付ける。圧電基板1と第1の部材3aとを接着する接着剤として、粘度4000cP程度のエポキシ接着剤を使用し、第1の部材3aと圧電基板1との接着面に接着剤を塗布して圧電基板1に押し当てた。全ての図において簡略化のため接着剤は省略しており記載していない。
続いて、図1Hに示すように、第1の部材3aに、第2の部材3bを取り付ける。第1の部材3aと第2の部材3bとの接着面に同じく接着剤を塗布して、第1の部材3aに第2の部材3bを押し当てた。この状態を室温にて24時間保持して接着した。
二つの第1の部材3aおよび第2の部材3bにて、本体部3を構成する。第1の部材3aは、複数の個別インク溝6のX方向一端側の開口部に連通する第1の共通インク溝11を有する。第2の部材3bは、複数の個別インク溝6のX方向他端側の開口部に連通する第2の共通インク溝12を有する。
第2の部材3bは、フレキシブルケーブル4と電極引き出し部9との接続部分がインクに曝されないように覆っている。フレキシブルケーブル4と電極引き出し部9との接続部は、第2の共通インク溝12の外側に位置する。したがって、導電性インクを使用する際に、導電性インクと、フレキシブルケーブル4と電極引き出し部9との接続部とが接していないため、電気的に短絡することがない。
また、本実施例にあるように本体部3を複数の部材より構成することによって、フレキシブルケーブル4を覆う部分など、接着剤を封止しづらい場所に予め接着剤を塗布して接着することで、封止が不十分になることを防止することができる。この点より、本体部3は複数の部材から形成することが好ましい。
第1の部材3aには、第1の流路口13aを通って、第1の流路部5aが接続され、第2の部材3bには、第2の流路口13bを通って、第2の流路部5bが接続されている。第1の流路部5aと第2の流路部5bは、インク、気泡が滞ることなく効率よく流れるように、折れ線部や段差、平面部などが極力少ない形状が好ましい。本実施形態においてはフィルターなどの次に連通する部材まで直線状となっており、かつドリルなどで加工がしやすいよう円柱形状となっている。
本実施の形態では、インクジェットヘッドの内部にてインクの流れを形成するため、またインクジェットヘッドの内部にダストを含まないインクを供給するため、第1の流路部5aはフィルター14を介してインクを供給するための供給タンク(図示しない)に接続し、第2の流路部5bはインクを排出するために用いられるため廃液タンク(図示しない)に接続される。
インクジェットヘッド内部にダストが混入した場合、ノズルプレート2のノズル孔にダストが詰まり不吐出が発生するため、フィルターをつけることが好ましい。第1の流路口13aを供給側とし、第2の流路口13bを排出側とすることで、フィルターは供給側だけで十分である。インクジェットヘッド供給側の第1の流路口13aの直前にフィルター14を持つことで、流路に付着したダストがインクジェットヘッド内部に混入することを防止することができる。
第1の部材3aおよび第2の部材3bには、あらかじめ第1の流路部5aや第2の流路部5bを接続しておいてもよいし、圧電基板1と第1の部材3aおよび第2の部材3bとを接着してから第1の流路部5aおよび第2の流路部5bを接続してもよい。また、第1、第2の流路部5a、5bは本体部3の中に形成してもよい。同様に、第1の流路部5aもしくは第2の流路部5bと、供給タンクまたは廃液タンクとはあらかじめ接続されていてもよいし、後に接続されてもよい。
また、圧電基板1と第1の部材3aとを直接接着せずに、例えば圧電基板1を別部材に接着し、その別部材と第1の部材3aとを接着してもよい。つまり圧電基板1と第1の部材3aとが固定されていればよい。さらに本実施の形態では二つの部材からなる本体部3を使用したが、二つの部材である必要はなく、一体型でもよいし、3種類以上のパーツから形成されていてもよい。
また、本体部3と圧電基板1が接着剤で固定されていることより、その二つの部材が異なった素材を用いた場合、熱膨張係数の差によって部材の破壊やリークが発生する虞がある。そのため熱膨張係数の近い素材、もしくは同一部材で構成することが好ましい。サンドブラスト加工法を用いることで、同一部材である圧電基板1で共通インク室を形成することができる。
また、コストを考慮した場合、本体部3は金属や樹脂などを加工、成型することで作製するのが好ましい。しかしながら、異素材を接着させて構成する場合は熱膨張係数の差によって、部材の破壊やリーク発生等の問題が発生する虞があるため、熱膨張係数の差を吸収できるよう、弾性接着剤を用いることが好ましい。そのことによって、温度変化信頼性が高く、かつ無駄なコストを削減したインクジェットヘッドを提供することができる。本実施例では硬度パラメータがショアD50の接着剤を使用した。軟らかさ、形状信頼性の観点よりショアDが20〜60程度のものが好ましい。
また、本実施の形態では、先にフレキシブルケーブル4を接続したが、圧電基板1に第1の部材3aを接着して後にフレキシブルケーブル4を接続してもよい。
続いて、図1Iと図1Jに示すように、個別インク溝6を覆うようにノズルプレート2を接着してインクジェットヘッドが完成する。
ノズルプレート2は、厚み50μmのポリイミド製フィルムで、エキシマレーザーをマスクを通して照射し加工することで、直径30μmの複数のノズル孔8が個別インク溝6に対応する位置に形成されている。
ノズルプレート2と第1の部材3a(第1の共通インク溝11)と圧電基板1に囲まれた領域は、第1の共通インク室11aであり、ノズルプレート2と第2の部材3b(第2の共通インク溝12)と圧電基板1に囲まれた領域は、第2の共通インク室12aである。
本実施の形態では、圧電基板1と第1の部材3aおよび第2の部材3bとの接着面に粘度が4000cP程度のエポキシ接着剤を塗布した後、ノズルプレート2を押し当てて室温で24時間保持して接着した。
ノズルプレート2に形成されている複数のノズル孔8は、圧電基板1に形成された個別インク溝6と連通するように位置あわせを行い、ノズル孔8からインクを吐出することができる構成となっている。
また、インクのリークを防ぎ、共通インク室11a,12aを形成するために、ノズルプレート2は、圧電基板1と本体部3との間の開放された空間を密閉する大きさである必要がある。ノズル孔8の位置は、圧電基板1の個別インク溝6の長手方向における中心位置となるように接着されており、これはノズル孔8が個別インク溝6の長手方向における中心に位置したときが、外部電圧印加機構により電圧を印加した際の圧力波の伝搬効率が最良で、低い吐出電圧でインクを吐出できるからである。
第1、第2の部材3a、3bにおけるノズルプレート2の接着面側端部は、圧電基板1の隔壁におけるノズルプレート2の接着面側端部より突出していない必要がある。これは、本体部3の端部と隔壁の端部とが、同時にノズルプレート2を接着するため、もし、本体部3が突出していた場合、ノズルプレート2が本体部3によって持ち上げられる形となり、隔壁の端部に接着できない、つまり連通状態の領域が発生する。溝間に連通した領域があると、インクが行き来することで効率良くインクを吐出できず速度低下等の原因になるため、第1、第2の部材3a、3bにおけるノズルプレート2の接着面側端部は、圧電基板1の隔壁におけるノズルプレート2の接着面側端部より突出していない必要がある。
供給タンクから第1の流路部5aを介して第1の共通インク室11aにインクが供給され、各個別インク溝6を通って第2の共通インク室12aに通じたインクが第2の流路部5bを介して廃液タンクへ流れる。一方インクの吐出は、外部からフレキシブルケーブル4を介して電極引き出し部9に電圧を印加し、印加された電圧は電極引き出し部9と導通している電極7に伝わる。電極7に印加された電圧により、圧電基板1の個別インク溝6の壁面が剪断変形し、個別インク溝6とノズルプレート2に囲まれた領域である個別インク室6a(圧力発生室)の容積を変形させるため押し出されたインクがノズル孔8から吐出される。
本実施の形態では、圧電基板1の個別インク溝6の長手方向における長さは個別インク室6aの長さであるため、例えば個別インク室6aの長さが5mmの場合には、長手方向における圧電基板1の長さは5mmあればよい。圧電基板1の溝が並ぶ溝列方向(Y方向)における圧電基板1の大きさは溝の数、溝の幅、ピッチによって異なる。
インクジェットヘッド吐出においては、吐出対象であるガラス基板などを、重力を用いて重力方向に設置して、移動、位置決め等を行うことで固定する部材、コストを削減できるため、インクジェットヘッドは主に重力方向に吐出することが多いことが公知である。この実施形態では、インクを重力方向に吐出することが前提となっている。つまり、ノズル孔8が下側を向くように配置される。
図1Jに示すように、上述のように製造されたインクジェットヘッドは、圧電基板1、ノズルプレート2および本体部3を有する。
圧電基板1は、複数の個別インク溝6を有する。個別インク溝6は、X方向に延在しX方向の両端が開口する。複数の個別インク溝6は、X方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて配列される。
ノズルプレート2は、圧電基板1の複数の個別インク溝6を覆うように配置される。ノズルプレート2は、個別インク溝6に連通する複数のノズル孔8を有する。
本体部3は、圧電基板1が取り付けられる。本体部3は、複数の個別インク溝6のX方向一端側の開口部に連通する第1の共通インク溝11、および、複数の個別インク溝6のX方向他端側の開口部に連通する第2の共通インク溝12を有する。
本体部3は、第1の共通インク溝11に設けられた第1の流路口13a、および、第2の共通インク溝12に設けられた第2の流路口13bを有する。
インクが供給される第1の共通インク溝11において、この第1の共通インク溝11に設けられた第1の流路口13aと、この第1の流路口13aに最も近い位置にある個別インク溝6の開口部16との間に、インク流れを邪魔する突起部18が設けられている。
次に、図2を用いて、インク吐出時のインクの流れを説明する。
図2は、インクジェットヘッドをノズルプレート側から見た図であり、ノズルプレートは図示していない。インクが吐出される際には、図示しない供給タンクと第1の流路口13aとの間の流路は開放され、図示しない廃液タンクと第2の流路口13bとの間の流路は遮断され、インクは、供給タンクから第1の流路口13aを通じて、第1の共通インク室11aおよび個別インク溝6に供給され、図示しないノズル孔より吐出される。
ここで、矢印17aは、第1の流路口13aから第1の流路口13аに最も近い個別インク溝6へのインク流路を示し、矢印17bは、第1の流路口13aから最も遠い個別インク溝6へのインク流路を示している。また、矢印17aで示す流路にかかるように、第1の部材3aに突起部18が配設されている。この突起部18は、図1Jで示すように、第1の流路口13аから個別インク溝6へのインク流路を狭くしており、突起部18が無い場合に比べて、矢印17aで示す流路の流路抵抗を増加させる。
一方、図2の矢印17bで示した流路には、突起部18が配設されていないが、流路が長い分、流路抵抗は大きい。
2つの流路(矢印17a、17b)を比較すると、矢印17aの流路は、流路が短いため流路抵抗が小さいが、突起部18があることにより流路抵抗が増し、結果として、流路抵抗の差が小さくなっている。
このように、インクが供給される第1の共通インク溝11において、この第1の共通インク溝11に設けられた第1の流路口13aと、この第1の流路口13aに最も近い位置にある個別インク溝6の開口部との間に、インク流れを邪魔する突起部18が設けられているので、第1の流路口13aと個別インク溝6との距離が最も短く流路抵抗の小さい流路上に、突起部18を配設することで、流路抵抗を大きくし、第1の流路口13aと全ての個別インク溝6との間を結ぶ流路における流路抵抗の差を小さくすることができる。このため、ノズル孔8ごとの飛翔インク滴の飛翔速度や体積のばらつきを低減することができる。
また、インクを個別インク溝6に供給するための第1の共通インク溝11や第1の流路口13aを一つにできるので、繋ぎこむ配管などの流路構成が簡素になる。また、流路の接続箇所を減らせるので、インクリークの可能性を低減できる。
したがって、ノズル孔8の数が増えても各ノズル孔8からのインク滴の飛翔速度および体積のばらつきを低減し、簡素で信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することができる。
図2では、突起部18の形状は、平面視、楕円形であるが、突起部の形状は、図3A〜図3Cに示すような形状であってもよい。
図3Aに示すように、突起部18Aの形状は、平面視、円形であってもよく、また、図3Bに示すように、突起部18Bの形状は、平面視、三角形であってもよく、また、図3Cに示すように、突起部18Cの形状は、平面視、菱形であってもよい。
図4Aは、図1JのB−B断面図であり、突起部18は、横断面、第1の流路口13aよりも大きな横長の矩形状であるが、突起部の形状や構成は、図4B〜図4Gに示すような形状であってもよい。
図4Bに示すように、突起部18Dは、横断面、第1の流路口13aと同じ大きさの縦長の矩形状である。図4Cに示すように、突起部18Eは、横断面、角部のない滑らかな形状である。
図4Dに示すように、突起部18Fは、第1の流路口13aと複数の個別インク溝6との間を結ぶ流路に交差する(かかる)ように配設されている。突起部18Fは、第1の流路口13aと個別インク溝6との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する部分におけるZ方向の高さが高くなるように、形成されている。
つまり、突起部18Fの高さは、複数の個別インク溝6が配列している方向であるY方向中央部が、最も高く、Y方向端部側へ次第に低くなっている。突起部18Fは、横断面、台形に形成されている。なお、突起部を、横断面、階段状に形成してもよい。
したがって、突起部18Fは、第1の流路口13aと個別インク溝6との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する部分の高さが高くなるように、形成されているので、第1の流路口13aからそれぞれの個別インク溝6への流路抵抗の差をさらに小さくすることができる。このため、ノズル孔8ごとの飛翔インク滴の飛翔速度や体積のばらつきをさらに低減することができる。
図4Eに示すように、突起部18Gは、Y方向に沿って、互いに間隔をあけて複数存在する。この複数の突起部18Gは、第1の流路口13aと個別インク溝6との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する突起部18GにおけるZ方向の高さが高くなるように、形成されている。
つまり、全ての突起部18Gの幅は、互いに、同一である。全ての突起部18Gの高さは、複数の個別インク溝6が配列している方向であるY方向中央部が、最も高く、Y方向端部側へ次第に低くなっている。
したがって、この複数の突起部18Gは、第1の流路口13aと個別インク溝6との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する突起部18GにおけるZ方向の高さが高くなるように、形成されているので、第1の流路口13aからそれぞれの個別インク溝6への流路抵抗の差をさらに小さくすることができる。このため、ノズル孔8ごとの飛翔インク滴の飛翔速度や体積のばらつきをさらに低減することができる。
図4Fに示すように、突起部18Hは、Y方向に沿って、互いに間隔をあけて複数存在する。この複数の突起部18Hは、第1の流路口13aと個別インク溝6との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する突起部18HにおけるY方向の幅が大きくなるように、形成されている。
つまり、全ての突起部18Hの高さは、互いに、同一である。全ての突起部18Hの幅は、複数の個別インク溝6が配列している方向であるY方向中央部が、最も大きく、Y方向端部側へ次第に小さくなっている。
図4Gに示すように、突起部18Iは、Y方向に沿って、互いに間隔をあけて複数存在する。隣接する突起部18Iの間隔は、第1の流路口13aと個別インク溝6との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差するY方向の間隔が小さくなるように、形成されている。
つまり、全ての突起部18Iの高さおよび幅は、互いに、同一である。隣接する突起部18Iの間隔は、複数の個別インク溝6が配列している方向であるY方向中央部が、最も小さく、Y方向端部側へ次第に大きくなっている。
図2では、突起部18を、第1の共通インク溝11のみに、設けていたが、図5に示すように、突起部18を、第1の共通インク溝11および第2の共通インク溝12の両方に、設けてもよい。
図5に示すように、このインクジェットヘッドでは、供給タンクから第1の流路口13a、第1の共通インク溝11、個別インク溝6、第2の共通インク溝12、第2の流路口13b、廃液タンクへとインクを流し続けることで、ノズル孔8の直近のインクを常に流動させることができる。そのため、ビーズのような微粒子を含むインクを使用した場合に、インクが流動していることにより微粒子の沈降、浮遊を防止し、吐出インク滴の微粒子濃度を安定化させることができる。また、高周波数でインク吐出を行った際に生じる圧電基板1の温度上昇を、インク流動により低減することができる。
この際、供給タンクのインクが空になるたびにインクを補充する必要があるが、2つのタンクに供給タンク、廃液タンクといった役割を決めずに、矢印25aで示す第1の流路口13aから第2の流路口13bへ向かう方向へのインク流動と、矢印25bで示す第2の流路口13bから第1の流路口13aへ向かう方向へのインク流動とを定期的に変更するようにすれば、インクを補充することなく長期間にわたってインクの流動を行うことができる。インクジェットヘッドを搭載する装置内に、廃液タンクから供給タンクへインクを直接戻す流路を設置することでも、インクの流動を長期間行うことができるが、装置が複雑化するため好ましくない。
図5において、第1の流路口13aと最も近い溝との間だけでなく、第2の流路口13bと最も近い溝との間にも、突起部18を配設することで、インク流動の際のインクの流れ方向が逆になっても、それぞれの個別インク溝6を通るインク流路について流路抵抗の差が小さくなり、それぞれの個別インク溝6でのインク流速を均一にすることができる。このため、吐出インク滴の微粒子濃度を安定化させる効果や、圧電基板1の温度上昇の防止効果をそれぞれのノズル孔8で均一にすることができる。
なお、本実施形態では電極として銅を使用したが、導電性材料ならば何でもよい。さらに、導電膜形成工程をスパッタ法により行っているが、イオンプレーティング法や無電解めっき法でも、同様の導電膜を形成することができることを確認している。イオンプレーティング法は密着力良く導電膜を形成することができ、無電解めっき法では、複数の複雑な溝形状が形成されている圧電基板1に対しても少ない膜厚ばらつきで導電膜を形成することができる。一方、気相成長法や蒸着法は圧電基板1の基板表面温度が上がりやすいため適していないことが分かった。これは圧電材料の圧電特性が高温において劣化してしまうことによるものである。イオンプレーティング法、無電解めっき法を導電膜形成工程に用いて形成したインクジェットヘッドでも、スパッタ法で導電膜形成を行ったインクジェットヘッドと同等の吐出性能を有することを確認した。
さらに本実施形態では導電膜形成工程の後に除去工程を行ったが、導電膜形成工程の前にレジスト材料などであらかじめ導電膜を成膜したくない部分を被覆しておき、導電膜形成工程後にレジスト材料を剥離して分離してもよい。
また、分離工程においてダイシングブレードによる分離溝10の形成を行っているが、ワイヤーソーなどのダイシングブレード以外の機械加工でもよい。さらにはダイシングブレードによる分離ではなく、YAGレーザー照射により不要な部分の導電膜を除去して電極引き出し部9を形成したインクジェットヘッドについても、ダイシングブレードで分離したインクジェットヘッドと同様の吐出性能、循環性能を持つことを確認した。レーザーの種類に関してはYAGレーザーである必要はなく、例えばCOレーザーやエキシマレーザーを用いて圧電基板1の側面の導電膜を分離して電極引き出し部9を形成することができることを確認した。
また、電極引き出し部9と導電部材の接続方法は、本実施形態ではACF接続により行ったが、これに限るものではなく、銀ペーストやハンダなどの導電性ペーストを用いても接続できることを確認した。しかしながら圧電基板1の厚さが薄いときには電極引き出し部9に塗布した導電性ペーストやハンダが個別インク溝6に流入する虞があるため、圧電基板1の厚さから個別インク溝6の深さを差し引いた長さ、つまり電極引き出し部9にフレキシブルケーブル4などの導電部材を接続することができる長さがすくなくとも1.5mm以上のときにのみ導電性ペーストやハンダを用いることが好ましい。
さらには、本実施形態に記載した工程は必要最小限の工程であり、必要に応じて前述した以外の工程を追加していてもよい。例えば圧電基板1のどこかに加工の基準とするための目印として溝を加工する工程や、電極7がインクに接することで腐食する場合などには電極7を保護膜で覆うような工程を追加してもよい。
(第2の実施形態)
図6は、この発明のインクジェットヘッドの第2の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第2の実施形態では、突起部の少なくとも一部は、ノズルプレートに取り付けられている。なお、この第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
図6に示すように、第1の共通インク溝11および第2の共通インク溝12には、突起部20が配設されており、突起部20の頂上部(先端部)は、ノズルプレート2に接着されている。
そして、図7に示すように、第1の流路口13aからこの流路口13aに最も近い個別インク溝6へのインクの流れは、矢印19aに示すような流れとなり、一方、第1の流路口13aからこの流路口13aに最も遠い個別インク溝6へのインクの流れは、矢印19bに示すような流れとなる。
したがって、この突起部20があることにより、無い場合に比べて、流路口13aと流路口13aから最も近い個別インク溝6とを結ぶ流路は、突起部20を迂回する必要があるため、流路抵抗が大きくなる。そのため、流路口13aから各個別インク溝6への流路抵抗の差が小さくなり、吐出インク滴の飛翔速度や体積のばらつきを低減することができる。
また、突起部20がノズルプレート2と接着されているため、突起部が無い場合と比較してノズルプレート2と、第1の部材3aおよび第2の部材3bとの接着面積が大きい。このため、気泡やダストをノズル孔から排出するために行うインク加圧やノズル吸引において、ノズルプレート2が剥がれるという不具合を低減することができる。このことを、図8A、図8B、図9A、図9Bを参照して説明する。
図8Aと図8Bは、インク加圧を行っている最中のインクジェットヘッドの断面を示している。図示しない廃液タンクと第2の流路口13bとの間の流路は遮断された状態で、図示しない供給タンクを加圧することで、ノズル孔8から加圧されたインクが気泡やダストとともに排出される。
図8Aは、共通インク室11a、12aに突起部の無い場合を示しており、インクが加圧されていることにより共通インク室11a、12aを形成する部分のノズルプレート2が大きくたわんでいる。
一方、図8Bは、共通インク室11a、12aに突起部20のある場合を示しており、ノズルプレート2には突起部20が接着しているので、ノズルプレート2のたわみが小さい。インク加圧によりノズルプレート2がたわみ、剥がれようとする力が発生するが、突起部20をノズルプレート2に接着することで、たわみを小さくすることができ、ノズルプレート2を剥がれにくくすることができる。
図9Aと図9Bは、ノズル吸引を行っている最中のインクジェットヘッドの断面を示している。図示しない供給タンクと第1の流路口13aとの間の流路は開放され、図示しない廃液タンクと第2の流路口13bとの間の流路は遮断されている。キャップ部材21には、Oリング22が取り付けられており、Oリング22をノズルプレート2に当接させて、ノズル孔8を密閉できるようになっている。キャップ部材21には吸引口23を介して図示しない吸引ポンプが接続されており、ノズル孔8を密閉した状態で吸引ポンプを動作させ吸引を行うことで、キャップ部材21とノズルプレート2で形成される空間が負圧になり、供給タンクからノズル孔8を通じてインクを吸引することができる。この過程で、インクが気泡やダストとともに排出される。
図9Aは、共通インク室11a、12aに突起部の無い場合を示しており、ノズル吸引を行うことでキャップ部材21とノズルプレート2で形成される空間になり、共通インク室11a、12aを形成している部分のノズルプレート2が大きくたわんでいる。
一方、図9Bは、共通インク室11a、12aに突起部20のある場合を示しており、ノズルプレート2には突起部20が接着しているので、ノズルプレート2のたわみが小さい。ノズル吸引によりノズルプレート2がたわみ、剥がれようとする力が発生するが、突起部20をノズルプレート2に接着することで、たわみを小さくすることができ、ノズルプレート2を剥がれにくくすることができる。
また、前述のようにノズルプレート2のたわみを低減できることは、ワイプブレードによるノズルプレートのクリーニングにおいても、クリーニング効果を損なうことを低減する効果を奏する。このことを、図10A、図10B、図11A、図11Bを参照して説明する。
図10A、図10B、図11A、図11Bは、いずれも、ワイプブレード24によりノズルプレート2のクリーニングを行っている最中のインクジェットヘッドの断面を示している。ワイプブレード24はパーフロゴムで形成されている。ワイプブレード24をノズルプレート2に押し付けながら移動させることで、ノズルプレート2に付着した異物をかきとり、除去することができる。ノズルプレート2に対するワイプブレード24の当接圧が小さいと異物を除去する効果が低くなるが、当接圧を大きくするとノズルプレートを傷つける不具合が生じるため、適切な当接圧を選択することが必要である。
図10Aと図10Bは、共通インク室11a、12aに突起部の無い場合を示しており、図10Aは、第1の共通インク室11aを形成している部分のノズルプレート2をクリーニングしているときを示し、図10Bは、圧電基板1に接着された部分のノズルプレート2をクリーニングしているときを示している。
図10Aと図10Bを比較すると、図10Aでは、ワイプブレード24の当接圧により、ノズルプレート2が大きくたわんでおり、その分ワイプブレード24の当接圧が小さくなっている。このように、共通インク室11a、12aに突起部の無い場合には、ワイプブレード24の位置により、当接圧が大きく変動するため、適切な当接圧を維持することが困難であり、ノズルプレート2のクリーニングを良好に行うことができない。
一方、図11Aと図11Bは、共通インク室11a、12aに突起部20が配設されており、突起部20の頂上部(先端部)がノズルプレート2と接着されている場合を示している。図11Aは、第1の共通インク室11aを形成している部分のノズルプレート2をクリーニングしているとき、図11Bは、圧電基板1に接着された部分のノズルプレート2をクリーニングしているときを示している。
図11Aと図11Bを比較すると、図11Aでは、ワイプブレード24の当接圧により、ノズルプレート2がたわんでいるものの、突起部20がノズルプレート2と接着されているため、たわみの程度が小さい。このため、ワイプブレード24の位置により当接圧が変動することを低減することができ、適切な当接圧を維持しながら良好なノズルプレート2のクリーニングを行うことができる。
また、ノズルプレート2にレーザーを用いてノズル孔8を加工する際、ノズルプレート2が薄いほど、加工に要する時間が短くなり、また加工後の真円度などの形状精度も良くなる。ノズル孔8の形状精度が良いほど、複数のノズル孔8間での吐出インク滴の飛翔方向や体積のばらつきが小さくなる。
前述のように共通インク室11a、12aに突起部20を配設し、ノズルプレート2と接着することで、インク加圧やノズル吸引、ノズルプレート2のクリーニングなどでのノズルプレート2のたわみを低減できるため、ノズルプレート2を厚くして剛性を高めることでたわみを低減する必要がなくなり、薄いノズルプレート2を使用することが出来るようになる。薄いノズルプレート2を使用できるようになれば、インクジェットヘッドの作製に要する時間を低減でき、またノズル孔8の形状精度を向上させることができる。
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、突起部18は、第1の共通インク溝11および第2の共通インク溝12のうちの少なくともインクが供給される共通インク溝に設けられていればよい。突起部の形状や数量は、設計変更自由である。上記第1の実施形態の特徴点と、上記第2の実施形態の特徴点とを、さまざまに組み合わせてもよい。
1 圧電基板
2 ノズルプレート
3 本体部
3a 第1の部材
3b 第2の部材
4 フレキシブルケーブル
5a 第1の流路部
5b 第2の流路部
6 個別インク溝
6a 個別インク室
7 電極
8 ノズル孔
9 電極引き出し部
10 分離溝
11 第1の共通インク溝
11a 第1の共通インク室
12 第2の共通インク溝
12a 第2の共通インク室
13a 第1の流路口
13b 第2の流路口
14 フィルター
16 個別インク溝の開口部
17a、17b インク流路を示す矢印
18、18A〜18I 突起部
19a、19b インク流路を示す矢印
20 突起部
21 キャップ部材
22 Oリング
23 吸引口
24 ワイプブレード
25a、25b インク流路を示す矢印

Claims (5)

  1. X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にX方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて配列された複数の個別インク溝を有する圧電基板と、
    上記圧電基板の複数の個別インク溝を覆うように配置されると共に、上記個別インク溝に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、
    上記圧電基板が取り付けられ、上記複数の個別インク溝のX方向一端側の開口部に連通する第1の共通インク溝、および、上記複数の個別インク溝のX方向他端側の開口部に連通する第2の共通インク溝を有する本体部と
    を備え、
    上記本体部は、上記第1の共通インク溝に設けられた第1の流路口、および、上記第2の共通インク溝に設けられた第2の流路口を有し、
    上記第1の共通インク溝および上記第2の共通インク溝のうちの少なくともインクが供給される共通インク溝において、この共通インク溝に設けられた流路口と、この流路口に最も近い位置にある個別インク溝の開口部との間に、インク流れを邪魔する突起部が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記突起部は、上記流路口と複数の上記個別インク溝との間を結ぶ流路に交差するように配設され、
    上記突起部は、上記流路口と上記個別インク溝との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する部分におけるX方向およびY方向に直交するZ方向の高さが高くなるように、形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  3. 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記突起部は、Y方向に沿って、互いに間隔をあけて複数存在し、
    この複数の突起部は、上記流路口と上記個別インク溝との間を結ぶ流路の距離が短いほど、この流路に交差する上記突起部におけるX方向およびY方向に直交するZ方向の高さが高くなるように、形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  4. 請求項1から3の何れか一つに記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記突起部は、上記第1の共通インク溝および上記第2の共通インク溝の両方に、設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  5. 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記突起部の少なくとも一部は、上記ノズルプレートに取り付けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
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