JP2010284811A - インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吐出特性に優れ、量産性に優れるインクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】一方向に延在し互いに間隔を空けて平行に配置された複数の隔壁と、隣り合う上記隔壁の間に形成されて、少なくとも一端が開口する複数のインク溝とを有する圧電基板1を使用する。複数の隔壁の圧電基板1側とは反対側の端部における上記一方向の両端部にカバー部材16を接着する。このようにして、複数のインク溝の圧電基板1側とは反対側の両端部を、カバー部材16で覆うようにする。
【選択図】図9B

Description

本発明は、ノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドと、その製造方法に関する。
近年、プリンタにおいては、インパクト印字装置に代わって、カラー化、多階調化に対応しやすいインクジェット方式などのノンインパクト印字装置が急速に普及している。これに用いるインク噴射装置としてのインクジェットヘッドとしては、特に、印字に必要な液滴のみを噴射するというドロップ・オン・デマンド型が、噴射効率の良さ、低コスト化の容易さなどから注目されている。ドロップ・オン・デマンド型としては、カイザー(Kyser)方式やサーマルジェット方式が主流となっている。
しかし、カイザー方式は、小型化が困難で高密度化に不向きであるという欠点を有している。また、サーマルジェット方式は、高密度化には適しているものの、ヒータでインクを加熱してインク内にバブル(泡)を生じさせて、そのバブルのエネルギーを利用して噴射させる方式であるから、インクの耐熱性が要求され、また、ヒータの長寿命化も困難であり、エネルギー効率が悪いため、消費電力も大きくなる。
このような各方式の欠点を解決するものとして、圧電材料のシェアモード変形を利用したインクジェット方式が提案されている。この方式は、圧電材料からなるインクチャンネルの壁(以下、「チャンネル壁」という。)の両側面に形成した電極を用いて、圧電材料の分極方向と直交する方向に電界を生じさせることで、シェアモードでチャンネル壁を変形させ、その際に生じる圧力波変動を利用して液滴を吐出するものである。この方式は、ノズルの高密度化、低消費電力化、高駆動周波数化に適している。
近年はこのシェアモード変形を利用したインクジェットヘッドを産業用途に利用することが盛んに行われている。例えば、インクとして導電部材を吐出することによって、配線を描画したり、R,G,Bの各色のインクを吐出することによって、カラーフィルタを作製したり、ビーズ材料を分散させたインクを吐出することによって、スペーサ散布を行ったりしている。
また、使用されるインクも多種多様になっている。例えば、有機溶剤を含有して揮発性の高いインクや、強酸性・強アルカリ性のインク、顔料や樹脂成分を含むインク、ビーズなどの微粒子を含有するインク、さらにはこれらを複合したインクなどが使用されるようになっている。ここで、ビーズなどの微粒子を含有するインクは、インクの溶媒と含有される微粒子の比重差により、微粒子が沈殿または浮遊し、インク中の微粒子濃度に分布の偏在が引き起こされることがある。そして、分布が偏った場合、吐出時の液滴中に含まれる微粒子数にばらつきが生じ、製品の性能劣化、不良発生をもたらす。さらには、ノズル孔が目詰まりするおそれもある。
このような事態を回避するためには、インクジェットヘッド内でインクを循環、撹拌させることによって、微粒子の沈殿を防止する必要がある。さらに厳密に言うと、吐出時の液滴中に含まれる微粒子数を安定させて吐出させるためには、上述のインクの循環、撹拌は、インクがノズル孔の直近にある時点においてもなされることが重要である。
ノズル孔直近までインクを循環、撹拌させるための技術としては、特許第3252392号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1の第2図、第3図に示されたインクジェットヘッドでは、圧力発生室は、前側にノズル孔を有するノズル板と、後ろ側の振動板とで画定された空間である。この圧力発生室を挟むように圧力発生室の両側に2つの共通インク室が配置されており、これら2つの共通インク室は圧力発生室に連通している。この装置では、一方の共通インク室から他方の共通インク室へ圧力発生室を介してインクを供給できる構造となっている。このインクジェットヘッドにおいては、ノズル孔のある圧力発生室自体がインクの通り道となるため、ノズル孔の直近までインクを循環することが可能である。
また、特許文献1の第4図には、上記インクジェットヘッドを備える記録装置の全体が示されている。この記録装置では、インクを、インクカートリッジからインクジェットヘッドを経由してサブタンクへ補充する一方、インクを、サブタンクからインクジェットヘッドを経由してインクカートリッジへ水頭差を利用して戻すことも可能となっている。特許文献1の記録装置では、このようにしてインクを循環させている。
また、特開平5−229116号公報(特許文献2)には、インク流路となる溝を形成した圧電基板を、分極方向が逆になるように貼り合せ、圧電基板の片側に形成した導通孔に連通するように、ノズル穴を有する上板を接着したシェアモード型インクジェットヘッドが記載されている。
さらに、特開平9−94952号公報(特許文献3)には、ノズルを有するカバープレートと流路基板に形成した流路溝部とにより圧力室を形成し、カバープレートまたは流路基板に形成したノズルからインクを吐出することができるインクジェットヘッドが記載されている。
また、特開2006−142509号公報(特許文献4)に記載されたインクジェットヘッドでは、圧電基板の表面に互いに平行な2本の溝として2つの共通インク室が設けられている。これら2つの共通インク室の間に挟まれ、なおかつこれら2つの共通インク室の両方に連通するように、多数の溝状のインク室が設けられている。特許文献2に提案されているのは、この溝状インク室の壁部分の圧電材料のシェアモード変形を利用したインクジェットヘッドである。
さらに、特開2008−279711号公報(特許文献5)には、複数の溝を形成した圧電基板とノズル孔を形成したノズル板とで画定されたインク室と、圧電基板、ノズル板、マニホールドとから画定される第1と第2の共通インク室とを有するインクジェットヘッドについて記載されている。
特許第3252392号公報 特開平5−229116号公報 特開平9−94952号公報 特開2006−142509号公報 特開2008−279711号公報
上述したように、特許文献1に記載の記録装置では、インクカートリッジとサブタンクとの間でインクがやりとりされる際に、その流動の途上で、インクが一方の共通インク室から他方の共通インク室へ圧力発生室を介して供給されるため、インクをノズル孔直近まで循環することが可能である。しかし、このインクジェットヘッドは積層型のインクジェットヘッドであるという欠点がある。
積層型のインクジェットヘッドは、基台に振動子を取り付けた振動子ユニットと、流路構成部材と、振動板形成部材と、圧力発生室となるべき間隙を形成するためのスペーサと、ノズル孔を有するノズル板とから構成されている。そして、これら5つの部材をそれぞれ位置合わせし、重ね合わせることによって組み立てられている。インクジェットヘッドにおいて、高い着弾精度と均一な吐出性能を実現するためには、ノズル孔と駆動部の相対位置精度がきわめて重要である。そして、ノズル孔の中心と駆動部におけるインクの通り道の中心とが一致している必要がある。したがって、これら5つの部材は、それぞれについて高精度な位置合わせが要求される。つまり1つのインクジェットヘッドを作製するためには、このような高精度な位置合わせを4回繰り返す必要があり、歩留まりが低くなる。
一方、非積層型のインクジェットヘッドの例としては、特許文献2のインクジェットヘッドがある。ここで、特許文献2の第1の実施例では、圧電基板に形成した溝の上部に、ノズル穴を有する上板を接着している。この構造の場合には、圧電基板に形成した溝の隔壁上部と、ノズルプレートとの接着面積が小さくなる。ここで、強酸やNMPなどの溶解性の高い溶剤がインクに含まれている場合には、ノズルプレートを接着するために使用できる接着剤の選択肢は少なく、必ずしもノズルプレートと基板の接着力が強い接着剤を選択できないことがある。このような場合には、インク充填時などのインクの圧力によりノズルプレートと圧電基板との接着面に圧力がかかり、ノズルプレートが剥がれてしまうことがある。ノズルプレートが剥がれると、隣り合う圧力室同士が連通してしまうため、圧力伝播が充分に行われずに吐出体積が著しく小さくなったり、吐出しなくなったりして描画不良が、引き起こされる。
また、特許文献2の第2の実施例では、圧力室の全ての面は圧電基板から構成され、ノズル穴を有するノズルプレートを、圧電基板に形成した導通孔に連通するように圧電基板に接着して、インクジェットヘッドを製造している。一般的に圧電基板はセラミックであるから、このような圧電基板への穴加工は、加工時にクラック等を発生させる虞がある。
圧電基板に形成した隔壁がシェアモード変形して圧力波を発生させるシェアモード型インクジェットヘッドでは、隔壁にクラックが存在することにより、隔壁の振動特性が著しく変化する。このような振動特性の変化は吐出速度や吐出体積の変化を引き起こし、吐出特性のばらつきとなる。また、導通孔とノズル穴を位置あわせして接着する必要があり、クラックの発生や信頼性の低下を防ぐために導通孔を小さくすると、貼り合せ位置ずれが発生しやすくなり、ノズル穴が導通孔と連通しないなどの不良原因となる。
特許文献3のインクジェットヘッドも、ノズルがカバープレートもしくは流路基板に形成されている。流路基板は圧電材料であるから、特許文献2の第2の実施例のインクジェットヘッドと同様に、ノズル穴を形成することによりクラックが発生して吐出特性を劣化させる虞がある。また、カバープレートにノズルを形成する場合には、特許文献2の第1の実施例のインクジェットヘッドと同様に、ノズルプレートと圧電基板の接着面積が小さいことから、ノズルプレートの剥がれが発生する虞がある。
また、特許文献4のインクジェットヘッドは、特許文献2のインクジェットヘッドと近い構造である一方、高分子材料のフィルムをノズルプレートに用いている。インクジェットヘッドの吐出特性(吐出体積、吐出速度、着弾精度)は、ノズル孔の大きさ、形状均一性、加工位置精度などにより大きく左右される。例えば数ピコリットルの液滴を、体積ばらつき数%以下で吐出するためには、ノズル孔の加工精度はサブミクロン以下のばらつきである必要がある。このような高精度を実現するため、ポリイミドフィルムやポリエーテルサルフォンなどの材料にエキシマレーザーを照射して加工を行っている。ポリイミドフィルムやポリエーテルサルフォン等の高分子材料は、エキシマレーザーを吸収することにより分子結合が切断され、分子あるいは原子状態に分解して蒸発する。したがって、マスクのパターンに忠実に反映した形状を得ることができるから、ノズル孔や凹部を精度良く形成するうえで好都合である。しかしながら、ポリイミドフィルムのような剛性の低いノズルプレートを用いて、特許文献4のインクジェットヘッドの構造を製作すると、圧力室の一面が高分子材料であるノズルプレートにより形成されているため、吐出のために圧力室内で発生した圧力波の伝播によりノズルプレートが変形して、吐出方向が曲がり、着弾精度が低下してしまうことがある。また、圧電基板に形成した隔壁の上部と、ノズルプレートとの接着面積が小さいことにより接着強度が弱く、また、インクジェットヘッドへのインク充填の際などに、ノズルプレートが、インクの圧力により変形して、ノズルプレートの剥がれが発生する虞がある。
さらに特許文献5のインクジェットヘッドでも特許文献4の構造と同様に、ノズルプレートがインク室や共通インク室の一面を担っているため、圧力波の伝播によるノズルプレートの変形や、充填時などの圧力がかかった場合のノズルプレート剥がれの虞がある。
そこで、本発明の課題は、インクの循環を円滑に行うことができて、優れた吐出特性を有し、かつ、量産性にも優れるインクジェットヘッドを提供することにある。また、本発明の課題は、そのようなインクジェットを製造できるインクジェットの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明のインクジェットヘッドは、
一方向に延在し互いに間隔を空けて平行に配置された複数の隔壁と、隣り合う上記隔壁の間に形成されて、少なくとも一端が開口する複数のインク溝とを有する圧電基板と、
上記複数のインク溝に連通する共通インク室と、
上記複数のインク溝の上記圧電基板側とは反対側の両端部を覆うカバー部材と、
上記複数のインク溝の上記圧電基板側とは反対側の上記各インク溝の両端から間隔をおいた部分を覆うと共に、上記各インク溝に連通するノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
上記各インク溝の上記圧電基板側とは反対側は、上記ノズルプレートと、上記カバー部材とによって完全に覆われ、
上記カバー部材は、上記複数の隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部における上記一方向の両端部に接着される一方、上記ノズルプレートは、上記複数の隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部における上記一方向の両端から間隔をおいた部分と、上記カバー部材とに接着され、
上記共通インク室と連通する上記各インク溝の開口は、上記圧電基板の法線方向において、上記カバー部材に接着された上記ノズルプレートに重なっていることを特徴としている。
本発明によれば、上記複数のインク溝の上記圧電基板側とは反対側の両端部が、カバー部材によって覆われているから、各インク溝を覆っている部分で、かつ、ノズル孔に連通している近傍の部分を、カバー部材によって補強できる。また、カバー部材の存在によって、ノズルプレートの接着面積、すなわち、ノズルプレートと、カバー部材および隔壁との接着面積を、大きくできる。したがって、ノズルプレートの変形を抑制できる。したがって、インク充填時などに発生する圧力によるノズルプレート剥がれの発生を大きく抑制することができる。
また、一実施形態では、上記ノズルプレートが、高分子材料フィルムである。
ノズル孔の加工性精度は、インクジェットヘッドの吐出特性(吐出速度、吐出体積、着弾精度)に直接影響するため非常に重要な要素である。ここで、エキシマレーザー加工法を用いれば、高分子材料フィルムに高加工精度でノズル孔を形成することができる。しかしながら、高分子材料フィルムは剛性が低いため、インク溝を覆うことにより形成された圧力室の一部が高分子材料フィルムで形成されている場合には、圧力室内で発生した圧力波の伝播により変形し、吐出方向がずれてしまう。
上記実施形態によれば、ノズルプレートを、隔壁とカバー部材で支えることができて、サポートできるから、圧力波の伝播によって圧力室の一部を構成するノズルプレートが変形することを大きく抑制でき、ノズルプレートとして高分子材料フィルムを使用することができる。したがって、高い着弾精度を実現することができる。
また、一実施形態では、
上記カバー部材は、上記ノズルプレートよりも剛性が高い快削性セラミックからなる。
上記実施形態によれば、カバー部材の剛性がノズルプレートの剛性よりも高いから、圧力波の伝播による圧力室の変形を大きく抑制できる。また、カバー部材が、快削性セラミックスからなるから、例えば、隔壁に形成した凹部にカバー部材を接着した後、ダイシングソーなどの機械加工により、ノズルプレートを接着する面を容易に形成することができる。
また、一実施形態では、
上記各ノズル孔に、二つの上記インク溝が連通している。
本発明では、隔壁の一部が、カバー部材で覆われて、剛性が高くなっているから、各ノズル孔に、二つのインク溝を連通する構成を採用して、二つの圧力室から発生した別々の圧力波の位相ずれが発生したとしても、圧力波の伝播により圧力室が変形することがない。したがって、各ノズル孔に二つのインク溝が連通する構成であっても、吐出方向のずれは発生せず、高い着弾精度を実現できる。
また、一実施形態では、
上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向の上記隔壁の長さをL[μm]とし、隣接する上記隔壁間の距離をW[μm]としたとき、W≦L≦3Wである。
上記実施形態によれば、ノズル孔の中心から隔壁までの距離と、ノズル孔の中心からカバー部材のノズル孔側の端部までの距離との差が小さいから、吐出のための圧力波の伝播によるノズルプレートの変形を抑制する効果が大きい。また、ノズル孔からカバー部材の距離が近すぎることにより、ノズルプレートを接着する際の余剰の接着剤がノズル孔に入り込んで、ノズル孔を埋めてしまうことを、効率的に防止できる。
また、一実施形態では、
上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向の上記カバー部材の長さが、上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向の上記インク溝の長さよりも長い。
上記実施形態によれば、上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向のカバー部材の長さが、上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向のインク溝の長さよりも長いから、ノズルプレート接着時に余剰の接着剤が発生しても、その余剰の接着剤がインク溝内に入り込んでインク溝詰まりが生じさせることがない。つまり高い歩留りでインクジェットヘッドを製造することができる。
また、一実施形態では、
一つの上記ノズル孔に、二つの上記インク溝が連通し、
上記二つの上記インク溝は、電気的に導通していて、外部からの信号によってせん断変形する。
上記実施形態によれば、上述のように、ノズル孔に連通した二つのインク溝、すなわち、二つの圧力室の内部で発生した圧力波の伝播にずれが発生しても、吐出したインクの着弾精度が低下することはない。また、二つのインク溝を、共通の駆動信号で駆動させることができるから、吐出するための電圧を小さくすることができる。
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、
圧電基板に、一方向に延在して互いに間隔をおいて位置する複数の隔壁を形成する隔壁形成工程と、
上記隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部の一部に凹部を形成する凹部形成工程と、
上記凹部にカバー部材を接着するカバー部材接着工程と、
上記カバー部材の上記圧電基板側とは反対側の面と、上記隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部であって、上記凹部に間隔をおいて位置する部分とにノズルプレートを接着するノズルプレート接着工程と
を備えることを特徴としている。
本発明によれば、ノズル孔と連通するインク溝を有するインクジェットヘッドを容易に形成することができる。また、着弾精度に優れるインクジェットヘッドを形成することができる。
また、一実施形態では、
上記カバー部材接着工程と、上記ノズルプレート接着工程との間に、上記カバー部材の上記圧電基板側とは反対側の面と、上記隔壁の上記凹部に間隔をおいて位置する部分とを研削して、上記ノズルプレートを接着する部分を平坦にするノズルプレート接着面形成工程を備える。
上記実施形態によれば、ノズルプレートを接着する面を平坦化することができるから、ノズルプレート接着工程における歩留を向上させることでき、かつ、着弾精度を更に優れるものにすることができる。
本発明のインクジェットヘッドによれば、インクの循環を円滑に行うことができて、吐出特性が優れたものになる。
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法によれば、着弾精度に優れるインクジェットヘッドを、効率良く製造することができる。
隔壁形成工程後の圧電基板の平面図である。 隔壁形成工程後の圧電基板のY方向における側面図である。 導電膜形成工程後の圧電基板の平面図である。 導電膜形成工程後の圧電基板のY方向における側面図である。 凹部形成工程後の圧電基板の平面図である。 凹部形成工程後の圧電基板のY方向における側面図である。 凹部形成工程後の圧電基板のX方向における側面図である。 分離工程後の圧電基板の平面図である。 分離工程後の圧電基板のY方向における側面図である。 カバー部材接着工程後の圧電基板の平面図である。 カバー部材接着工程後の圧電基板のY方向における側面図である。 ノズルプレート接着面形成工程後の圧電基板のY方向における側面図である。 フレキシブルケーブル接続後の圧電基板のY方向における側面図である。 流路形成部材接着後の圧電基板のY方向における側面図である。 図8AにおけるA−A’断面図である。 インクジェットヘッドの平面図である。 図9AにおけるB−B’断面図である。 第1比較例のインクジェットヘッドのB−B’断面図である。 第1比較例のインクジェットヘッドにおける圧力室の説明図である。 第1比較例のインクジェットヘッドにおける圧力波の伝播の説明図である。 第2比較例のインクジェットヘッドにおける圧力室の説明図である。 第2比較例のインクジェットヘッドにおける圧力波の伝播の説明図である。 一実施形態のインクジェットヘッドにおける圧力室の説明図である。 一実施形態のインクジェットヘッドにおける圧力波の伝播の説明図である。 第3実施形態における、ノズルプレート接着面形成工程後の圧電基板のX方向における側面図である。 第3実施形態におけるインクジェットヘッドの圧力室と平行方向における断面図である。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態のインクジェットヘッド100の製造方法について説明する。
まず、アクチュエータ部材である圧電基板1にダイシングブレードを複数回一定方向に走査して複数のインク溝6aを加工して隔壁6bをする隔壁形成工程を行う。
インク溝6aを形成した基板1の平面図を、図1Aに、基板1のY方向における側面図を、図1Bに示す。尚、隣あうインク溝6aの間にある部分を隔壁6bと呼ぶこととする。上記インク溝6aを、後にカバー部材16およびノズルプレート2で覆うことにより、インクを吐出するための圧力を伝達する圧力室14が形成される。
本実施の形態では、圧電基板1は、長さ5mm、幅50mm、厚さ3mmのものを使用した。インク溝6aの深さは、およそ360μmとし、幅は、100μmとし、インク溝6aのピッチは、約200μmとし、溝の数は、200本とした。尚、図の簡略化のため、全ての図において、インク溝6aの数や、深さ等は、正確なものではない。
インク溝6aの幅は、使用するダイシングブレードを変えることで変更可能であり、インク溝6aの深さは、ダイシングブレードの切り込み量を変えることにより変更できる。また、圧電基板1では、インク溝6aの深さ方向における略中央にて分極方向が相反する2枚の圧電材料が、あらかじめ接着剤で貼りあわされている。この分極方向の異なる圧電材料を接着している接着剤の層を、圧電基板接着層18と呼ぶ。本実施形態の3mmの圧電基板1においては、0.21mmの薄板と、2.79mmの厚板とが、圧電基板接着層18で貼りあわされている。この構成により、外部より電圧を印加した際に、薄板部分の隔壁6bと、厚板部分の隔壁6bとが、反対方向に変形して、圧力室の容積が変化し、インクが吐出する。
続いて、導電膜形成工程を行う。この導電膜形成工程では、圧電基板1の隔壁6bに電極7となる導電膜を形成し、かつ、圧電基板1の側面に電極引き出し部9となる導電膜を形成する。
本実施の形態では、銅をスパッタ法により成膜する。詳しくは、成膜した銅の隔壁6bにおける膜厚が、もっとも薄い部分で、0.5μmとなるように、銅をスパッタ法により成膜する。
導電膜形成工程後の圧電基板1の平面図を、図2Aに、Y方向における側面図を、図2Bに示す。尚、図2A、Bにおける斜線部は、スパッタ法により成膜した導電膜である。
本実施形態におけるスパッタ法による導電膜形成工程では、圧電基板1の、インク溝6aを形成した面の裏側の面を除く全面に、導電膜を形成し、目的以外の部分にも導電膜を形成する。この実施形態では、圧電基板1のインク溝6aが開口する側面に、厚みが1μmの銅の膜を成膜する。尚、隔壁6bに成膜された銅の膜厚と、インク溝6aが開口する圧電基板1の側面に成膜された銅の膜厚とが異なるのは、銅が形成される部分の形状の違いに起因する銅のつきまわりの差によるものである。
続いて、導電膜形成工程で形成された不要な導電膜を除去する。詳しくは、圧電基板1のインク溝6aを形成した面における不要な導電膜を除去し、かつ、インク溝6aを形成した面に凹部を形成する凹部形成工程を行う。
この凹部形成工程は、例えば、圧電基板1の上部表面をダイシングブレードで複数回、インク溝6aと直交する方向に走査することで行う。このとき、圧電基板1のインク溝6a形成面において隣接するインク溝6a間の導電膜同士が確実に絶縁するように、ダイシングブレードにより圧電基板1の表面もわずかに研削すると好ましい。尚、インク溝6aの形成面において、隣接するインク溝6a間の導電膜同士が確実に絶縁するように、凹部形成工程と、不要な導電膜を除去する除去工程と、を分離して行っても良い。
この除去工程後の圧電基板1の平面図を、図3Aに、Y方向における側面図を、図3Bに示す。さらにX方向における圧電基板1の側面図を、図3Cに示す。
凹部形成工程後、圧電基板1には、隔壁6bに形成された電極7と、凹部13と、圧電基板1の側面とに、導電膜が存在している。凹部形成工程で形成した凹部13は、圧電基板1の端部から形成され、インク溝6aと平行方向の長さが、2.35mmであり、インク溝6aと直交方向の長さが、圧電基板1の幅と同じ50mmであり、深さは、60μmである。
上記凹部13が形成されていない隔壁6bは、圧電基板1において、隔壁6bと平行方向における中間部に存在している。その長さは、300μmである。上記凹部13に、後の工程で、カバー部材16を接着して、圧力室14を形成するようになっている。上記凹部13を形成していない隔壁6bは、後に、圧力室14の開口部となり、ノズルプレート2に形成されたノズル孔8と連通する。つまり、上記凹部13が、圧電基板1の両端部側にそれぞれ形成されることにより、ノズル孔8に二つの圧力室14が連通する構造とすることができる。尚、この実施形態では、ノズルプレート2の材料として、高分子フィルムを使用している。
次に、分離工程を行う。分離工程では、圧電基板1の側面に形成されている導電膜に対してダイシングブレードを複数回一定方向に操作して、分離溝12を形成する。
この分離工程により、インク溝6aにそれぞれ対応した電極引き出し部9を形成した圧電基板1の平面図を、図4Aに、Y方向における側面図を、図4Bに示す。
上記隔壁6bに形成された電極7と、電極引き出し部9とは、インク溝6aが開口する圧電基板1の側面において電気的に接続されている。本実施形態では、分離溝12の深さを、10μm、幅を、50μmとして、インク溝6aが開口する圧電基板1の側面に、それぞれ分離工程を行った。また、上記分離溝12を形成した部分は、インク溝6aの間であり、隣接するインク溝6aの間で、電気的な導通が発生することがないようにしている。
このような分離工程を、インク溝6aが開口する圧電基板1の側面の両側に行った。両側に分離工程を行うことにより、圧電基板1が、対称形となるから、後工程において、方向を間違うことを防止できる。また、片側の電極引き出し部9に損傷があった場合には、反対側の電極引き出し部9を使用することができるから、歩留まりを向上することができる。本工程は、必ずしもこの順番である必要はないが、後のカバー部材16を接着する工程よりも前に実施することが望ましい。それは、カバー部材16を接着した後に、カバー部材16の接着ずれなどが発生した場合、分離溝12を圧電基板1の側面を加工することが困難になり、歩留が低下する虞があるためである。
次に、凹部13にカバー部材16を接着するカバー部材接着工程を行う。カバー部材16の材料としては、快削性セラミックスを使用した。尚、カバー部材16の材料としては、圧電部材1と同じまたは異なる快削性の圧電材料を使用することができるが、分極処理は不要であるため施す必要はない。カバー部材16は、インク溝6aと平行方向には2.35mm、インク溝6aと直交方向には50mm、厚みは100μmとした。尚、カバー部材16はダイシングマシンにより任意の形状に容易に加工することができる。このカバー部材16にバーコータを使用して接着剤を転写し、凹部13に接着した。接着剤の塗工手段としてバーコータを用いることにより、接着剤をより均一に塗布することができるが、接着剤の塗工手段は、バーコータに限られるものではない。本実施形態において、カバー部材16を接着する為の接着剤の厚みは、2μmとした。このような接着剤の厚みは、バーコータならバーの番手を変えることにより容易に変更することが可能である。接着層の厚みは、ノズルプレート2を接着する為の接着剤を塗布した条件と同じ条件でサンプルを作製し、電気炉で硬化後に硬化した接着剤の厚みを、接触式の段差計で計測した。
上記カバー部材16の接着後の圧電基板1の平面図を、図5Aに、また、Y方向における側面図を、図5Bに示す。
50μmの深さである凹部13に、厚み100μmのカバー部材16を接着したため、本工程後、凹部13を形成していない隔壁6bの高さより40μm高い位置までカバー部材16が存在する。また、上記カバー部材16と、凹部13を形成している部分の隔壁6bによって囲まれている部分が、圧力室14の一部を構成する。
続いて、カバー部材接着工程後の圧電基板1を、ダイシングマシンにより、カバー部材16を接着した面側から研削加工を行う。この工程をノズルプレート接着面形成工程と呼ぶ。本工程により、カバー部材16の表面と、カバー部材16を接着していない隔壁6bを研削した。研削した深さは、カバー部材16の表面から50μmである。つまり、本工程後は、カバープレート16の厚みは50μmであり、凹部13を形成してない隔壁6bの高さは350μmとなる。ノズルプレート接着面形成工程後の圧電基板1のY方向における側面図を、図6に示す。尚、本実施形態では、60μmの深さの凹部13に、厚み100μmのカバー部材16を接着して50μm研削したが、60μmの深さの凹部13に厚み60μmのカバー部材16を接着してもよい。この場合には、このノズルプレート接着面形成工程を省略することによりリードタイムを短縮することができる。しかしながら、高い吐出特性を有するノズルプレート接着面を形成するためには、本実施形態のように、凹部13の深さよりも厚いカバー部材16を接着した後、ノズルプレート接着面形成工程を行うほうが望ましい。
次にこのようにして加工を施した圧電基板1と、電極引き出し部9とに導電部材を接続する。図7に導電部材を接続した圧電基板1の側面図を示す。本実施の形態では導電部材としてフレキシブルケーブル4を用い、電極引き出し部9との接続は、ACF接続を用いた。フレキシブルケーブル4の他方の端部は、インクを吐出するために、直接または他部材を介して外部電圧印加機構と接続される。本実施形態において導電部材としてフレキシブルケーブルを使用するのは、フレキシブルケーブルは、変形が容易であるため、後工程においてプロセス上使用しやすく歩留まりの低下を抑制できるからである。しかしながら、導電部材として、フレキシブルケーブル以外の導電部材を採用しても良い。
次に、圧電基板1に、ホルダ部としての二つの流路形成部材3a,3bを接着する。上記流路形成部材3aには、配管5aが、流路形成部材3bには、配管5bがそれぞれ接続されている。本実施の形態ではインクジェットヘッド100の内部にてインクの流れを形成するため、配管5aは、インクを供給するための供給タンク(図示しない)に接続し、配管5bは、インクを排出するために用いられるため廃液タンク(図示しない)に接続する。
尚、本実施形態では、配管5aを供給側とし、配管5bを排出側としたが、この限りではなく、配管5aが排出側で配管5bが供給側でもよい。さらに、インクの流れが必要ない場合には配管5aと配管5bの両方をインクの供給に用いてもよい。さらには、排出したインクをもう一度インクジェットヘッドに戻して、インクを循環させて使用する場合には、配管5aと配管5bを共通のタンクに接続するか、供給タンクと廃液タンクとの間をインクが移動できるように接続する。尚、圧電基板1と、流路形成部材3との接着剤として、粘度4000cP程度のエポキシ接着剤を使用し、流路形成部材3aと、圧電基板1との接着面に接着剤を塗布して圧電基板1に押し当てた。続いて、流路形成部材3bと、圧電基板1との接着面に同じく接着剤を塗布して、流路形成部材3bを圧電基板1に押し当てた。この状態を室温24時間保持して接着した。
上記流路形成部材3aと、流路形成部材3bを接着した圧電基板1の平面図を、図8Aに、図8AにおけるA−A’断面図を、図8Bに示す。
全ての図において簡略化のため接着剤は省略しており記載していない。流路形成部材3bにはフレキシブルケーブル4と電極引き出し部9との接続部分がインクに曝されないようにカバーが設けられているため、フレキシブルケーブル4と電極引き出し部9との接続部は流路形成部材3によってインクに触れない構造になっている。
この構造では、導電性インクを使用する際にも、導電性インクが、フレキシブルケーブル4と電極引き出し部9との接続部に接しないため電気的に短絡することがない。流路形成部材3aおよび流路形成部材3bには、あらかじめ配管5aや配管5bを接続しておいてもよいし、圧電基板1と、流路形成部材3aおよび流路形成部材3bとを接着してから、配管5aおよび配管5bを接続してもよい。同様に配管5aもしくは配管5bと、供給タンクまたは廃液タンクとは、あらかじめ接続されていてもよいし、後に接続されてもよい。また、圧電基板1と流路形成部材3aとを直接接着せずに、例えば、圧電基板1を別部材に接着し、その別部材と流路形成部材3aとを接着してもよい。つまり圧電基板1と流路形成部材3aとが固定されていればよい。さらに本実施の形態では、二つの部材からなる流路形成部材3を使用したが、二つの部材である必要はなく、一体型でもよいし、3種類以上のパーツから形成されていてもよい。また、本実施の形態では先にフレキシブルケーブル4を接続したが、圧電基板1に流路形成部材3を接着して、その後、フレキシブルケーブル4を接続してもよい。
続いて、カバー部材16を接着した面の側からノズルプレート2を接着することにより、インクジェットヘッド100が完成する。本実施形態におけるノズルプレート2には、厚み100μmのポリイミドフィルムを使用し、あらかじめエキシマレーザーを照射することにより、直径約30μmのノズル孔8を形成している。ノズル孔8は、インク溝6aのピッチと同じピッチで、インク溝6aと同じ数だけ形成されている。
完成したインクジェットヘッド100の平面図を、図9Aに、図9AにおけるB−B’断面図を、図9Bに示す。本実施の形態では凹部13を形成していない隔壁6bの上部と、カバー部材16と、流路形成部材3aおよび流路形成部材3bに、粘度が4000cP程度のエポキシ接着剤を塗布した後、ノズルプレート2を、カバー部材16を接着した面の側から押し当てて、室温で24時間保持して接着した。
上記ノズルプレート2に形成されている複数のノズル孔8は、圧力室14が開口している部分と連通するように位置あわせを行い、ノズル孔8からインクを吐出することができる構成となっている。また、インクの漏洩を防ぎ、共通インク室11を形成するために、ノズルプレート2は圧電基板1と流路形成部材3a,3bとの間の開放された空間を密閉している。本実施形態では、ノズルプレート2を接着することにより、共通インク室11を形成しているが、これに限るものではない。例えば、流路形成部材にあらかじめ共通インク室が形成されていても良い。
このようにして形成したインクジェットヘッド100に対してインクを供給し、外部より電圧を印加してインクを吐出させて、インクジェットヘッドとしての性能に問題が無いことを確認した。また、インクの循環も良好に行えることを確認した。本実施の形態のインクの流れは、供給タンクから配管5aを介して、配管5aと接続されている側の共通インク室11にインクが供給され、各圧力室を通って反対側の共通インク室11に通じたインクが、配管5bを介して廃液タンクへ流れる。一方、インクの吐出は、外部からフレキシブルケーブル4を介して電極引き出し部9に電圧を印加し、印加された電圧を、電極引き出し部9と導通している電極7に伝える。電極7に印加された電圧により、圧電基板1の隔壁6bが、剪断変形することにより発生した圧力波が、圧力室14を伝播することによりノズル孔8からインクを吐出する。
続いて、このインクジェットヘッド100の吐出特性を評価した。評価項目は、吐出速度、吐出体積、着弾精度である。吐出速度の評価は、インクの吐出に同期してストロボを周期的に発光させ、CCDカメラで観測した。吐出体積は、電子天秤の上に設置したシャーレに、1つのノズル孔8から5万滴を吐出させ、重量変化を滴数で割ることにより算出した。尚、体積測定は、各ノズル孔8に対して3回ずつ測定し平均値を求めた。着弾精度は、受容層を有するインクジェット用紙に対して全ノズル孔8から1滴だけ吐出させ、着弾した液滴間の相対位置から求めた。この相対位置の計測には、ミツトヨ社製の非接触計測器を用いた。このような手段で計測したインクジェットヘッド100の吐出特性は、吐出速度ばらつき±5%以内、吐出体積ばらつき±3%以内、着弾精度は±5μm以内であった。
比較のために、本実施形態とは異なり、圧力室が隔壁とノズルプレートによって形成されているインクジェットヘッドも製作した。このインクジェットヘッドをインクジェットヘッドBと呼ぶ。インクジェットヘッドBの製造方法は、インクジェットヘッド100とほぼ同じであるが、凹部13を形成しない点と、カバー部材16を接着しない点が異なる。インクジェットヘッドBの平面図は、図9Aと同じであるため省略する。しかしながらインクジェットヘッドBの図9AにおけるB−B’断面図を、図10に示す。
インクジェットヘッドBは、カバー部材16を接着しないため、ノズルプレート接着面形成工程も必要ない。その他の工程は本実施形態のインクジェットヘッド100の製造方法と同じである。このようにして形成するインクジェットヘッドBは、圧力室14の一面がノズルプレート2によって形成されている。このインクジェットヘッドBも同様に吐出特性を評価したところ、吐出速度ばらつき±6%以内、吐出体積ばらつき±4%以内、着弾精度は±15μm以内であった。
つまり、インクジェットヘッド100とインクジェットヘッドBの着弾特性を比較することにより、インクジェットヘッド100が、優れた着弾特性を有することが分かった。これは以下のように考えられる。
インクジェットヘッドBでは、圧力室14においてインクが吐出する側の面がノズルプレート2により形成されている。ノズルプレート2は、ポリイミドフィルムである。ポリイミドフィルムは、エキシマレーザーにより、高精度のノズル孔8を容易に加工することができる。ノズルプレート2に、剛性の高い材料を使用することも可能であるが、そのような高い剛性を持つ材料に、ポリイミドフィルムにエキシマレーザーで加工する精度と同等の精度でノズル孔8を形成することは非常に困難である。ノズル孔8の形状は、吐出速度、吐出体積、着弾精度の全てに大きく寄与するものであり、吐出特性が均一なインクジェットヘッドを製造するためには、ポリイミドフィルムのノズルプレートは、欠かすことができない。
図11Aに示すように、インクジェットヘッドBでは、あるノズル孔8に連通する二つの圧力室14を、それぞれ圧力室14Aと圧力室14Bとすると、圧力室14Aの長さ(図11A中の圧力室長さA)と、圧力室14Bの長さ(図11A中の圧力室長さB)とが等しいとき、圧力室14内において、圧力波は、図11Bのように伝播する。圧力波の伝播によって、ポリイミドフィルムであるノズルプレート2は、わずかではあるが変形する。しかしながら、圧力室長さAと圧力室長さBが、等しいため、ノズル孔8の圧力室14A側と圧力室14B側におけるノズルプレート2の変形は同程度であり、吐出されたインク10は、図11B中のZ方向に配置された、描画される基材15に向かってまっすぐ飛翔する。尚、図11Bではノズル孔8がZ+方向である上を向くように記載しているが、インクを吐出するにあたり、ノズル孔8はどちらの方向に向いていてもよい。
しかし、インクジェットヘッドBでは、圧力室14Aと圧力室14Bの長さは、隔壁6bに対してノズル孔8がどこに位置するようにノズルプレート2を接着するかによって変化する。実際には、ノズルプレート2を接着する際には必ずずれが発生するため、ノズル孔8に連通する2つの圧力室14の、圧力室長さAと圧力室長さBが全く等しいインクジェットヘッドを製造することは不可能である。
そのため、図12Aに示すように、ノズル孔8に連通する2つの圧力室14の長さが異なるインクジェットヘッドCが製造されることになる。インクジェットヘッドCでは、圧力室長さA’は、圧力室長さB’よりも短い。具体的には、インクジェットヘッドCでは、圧力室長さA’は、圧力室長さB’よりも100μm短かった。このような位置ずれは、ノズルプレート2を接着する際の位置ずれや、その後にノズルプレート2を接着するための接着剤を熱硬化させる際に、熱によって接着剤が一時的に粘度低下することによって生じるものである。
このインクジェットヘッドCにおける圧力波の伝播と、ノズルプレート2の変形についての関係を、図12Bに示す。圧力室長さA’と、圧力室長さB’が異なることにより、吐出のために発生させた圧力波A’と、圧力波B’の伝播にずれが生じ、ノズル孔8付近のノズルプレート2の変形に差が生じる。このため図12B中に示すように、吐出されたインク10は、ノズル孔8が描画される基材15に対して角度θだけ曲がって飛翔する。例えば0.2度の傾きでも、ノズルプレート2と描画される基材15との距離が750μmであれば、着弾位置はおよそ3μmずれることになる。一般的に、ノズルプレート2と描画される基材15との距離は近いほうが、吐出されたインク10が外乱の影響を受けないために好ましいが、近すぎればノズルプレート2と描画される基材15とが接触する虞があるため、ノズルプレート2と描画される基材15との距離は、1mm前後である。
一方、本実施形態のインクジェットヘッド100では、圧力室14は、全て快削性のセラミックスで形成されている。インクジェットヘッドCと同程度に、インクジェットヘッド100においても、圧力室長さA’は、圧力室長さB’よりも100μm程度短い。このときのインクジェットヘッド100における圧力波の伝播の説明図を、図13Bに示す。快削性のセラミックスは、ポリイミドフィルムなどの高分子材料フィルムよりも剛性が高いため、圧力波の伝播により圧力室14が変形することはない。つまり圧力波A’と、圧力波B’の伝播にずれが発生しても、ノズルプレート2が変形しない。圧力室14が開口しているノズル孔8の周辺について局所的に見れば、インクジェットヘッドCと似た構造となっているが、実際にはこの領域のすぐ近くまでカバー部材16と、ノズルプレート2とが接着剤を介して接着され、またノズル孔8の直近にカバー部材16がなくても、ノズルプレート2を接着する際の接着剤が、フィレット17を形成するため、インクジェットヘッド100では、ノズル孔8の周辺においてもノズルプレート2の変形は発生しない。つまり、吐出されたインク10は描画される基材15に対してまっすぐに飛翔することにより、高い着弾精度を実現することができる。
尚、本実施の形態では電極として銅を使用したが、導電性材料ならば何でもよい。さらに、導電膜形成工程をスパッタ法により行っているが、イオンプレーティング法や無電解めっき法でも、複雑な形状である圧電基板1に対して同様の導電膜を形成することができることを確認している。イオンプレーティング法は付きまわりがよく、複雑な構造である圧電基板に対して溝の内壁にも均一な膜厚で導電膜を形成することができる。無電解めっき法も、複数の複雑な溝形状が形成されている圧電基板1に対しても、少ない膜厚ばらつきで導電膜を形成することができるため好ましい。一方、気相成長法や蒸着法は、圧電基板の基板表面温度が上がりやすいため適していないことが分かった。これは、圧電材料の圧電特性が高温において劣化してしまうことによるものである。イオンプレーティング法、無電解めっき法を、導電膜形成工程に用いて形成したインクジェットヘッドでも、スパッタ法で導電膜形成を行ったインクジェットヘッドと同等の吐出性能を有することを確認した。
さらに、本実施形態では凹部形成工程により不要な導電膜を除去したが、導電膜形成工程の前にレジスト材料などであらかじめ導電膜を成膜したくない部分を被覆しておき、導電膜形成工程後にレジスト材料を剥離して分離してもよい。
また、分離工程においてダイシングブレードによる分離溝12の形成を行っているが、ワイヤーソーなどのダイシングブレード以外の機械加工でもよい。さらにはダイシングブレードによる分離ではなく、YAGレーザー照射により不要な部分の導電膜を除去して電極引き出し部9を形成したインクジェットヘッドについても、ダイシングブレードで分離したインクジェットヘッドと同様の吐出性能、循環性能を持つことを確認した。レーザーの種類に関してはYAGレーザーである必要はなく、例えばCO2レーザーやエキシマレーザーを用いて圧電基板1の側面の導電膜を分離して電極引き出し部9を形成することができることを確認した。
また、電極引き出し部9と導電部材の接続方法は、本実施形態ではACF接続により行ったが、これに限るものではなく、銀ペーストやハンダなどの導電性ペーストを用いても接続できることを確認した。しかしながら圧電基板1の厚さが薄いときには電極引き出し部9に塗布した導電性ペーストやハンダがインク溝6aに流入する虞があるため、圧電基板1の厚さからインク溝6aの深さを差し引いた長さ、つまり電極引き出し部9にフレキシブルケーブル4などの導電部材を接続することができる長さががすくなくとも1.5mm以上のときにのみ導電性ペーストやハンダを用いることが好ましい。
さらには本実施の形態に記載した工程は必要最小限の工程であり、必要に応じて前述した以外の工程を追加していてもよい。例えば圧電基板1のどこかに加工の基準とするための目印として溝を加工する工程や、電極7がインクに接することで腐食する場合などには電極7を保護膜で覆うような工程を追加してもよい。
(第2実施形態)
本実施形態では、以下の2点を除いては第1実施形態と同じである。第1実施形態と同様の点については、説明を省略する。1点目は凹部形成工程において形成する凹部13の、隔壁6bと平行方向における長さが異なる点である。2点目は、凹部13の大きさが異なることに応じて、カバー部材16の大きさも異なる点である。使用した装置、材料は、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
第2実施形態における凹部13は、圧電基板1の端部から形成され、凹部13の隔壁6bと平行方向における長さは2.3mm、2.4mm、2.45mm、2.425mmの4条件とした。つまり凹部13が形成されていない隔壁6bは、圧電基板1の、隔壁6bと平行方向における中間部に存在し、その長さは、それぞれ400μm、200μm、100μm、50μmとなる。隔壁6bと直交方向の長さは、圧電基板1の幅と同じ50mm、また、深さは、60μmとして統一した。その後の工程は、第1実施形態と同じであるが、カバー部材16の大きさは凹部13を埋める大きさであり、厚さは100μmとした。
第2実施形態では、凹部13の大きさに関わらず、ノズルプレート形成工程後の圧電基板1は、図6に示す状態、すなわち、凹部13の全領域にカバー部材16が接着されている状態になる。
このようにして製造したインクジェットヘッドの評価結果は以下の通りである。まず、凹部13を形成していない隔壁6bの長さが400μmとしたインクジェットヘッドDについての吐出特性は、吐出速度ばらつきは、±5%以内、吐出体積ばらつきは、±4%以内、また、着弾精度は、±9μm以内であった。これは第1実施形態において製作したインクジェットヘッドBと比較すればやや良好であるものの、第1実施形態のインクジェットヘッド100よりも劣るものであった。この着弾特性の劣化は、カバー部材16のノズル孔8側の端部が、ノズル孔8の中心から離れてすぎているため、圧力室14内の圧力波の伝播によるノズル孔8の近傍のノズルプレート2の変形に対する抑制が不十分であったと考えられる。このインクジェットヘッドDでは、ノズルプレート2と接着されている隔壁6bの長さLが、L=400μmであるのに対し、隣接する隔壁6b間の距離Wが、W=100μmであるから、L=4Wとなっている。
つづいて凹部13を形成していない隔壁6bの長さが、200μmであるインクジェットヘッドEと、凹部13を形成していない隔壁6bの長さが、100μmであるインクジェットヘッドFについての吐出特性はいずれも、吐出速度ばらつきが、±4.3%以内、吐出体積ばらつきが、±2.7%以内、着弾精度が、±4.6μm以内であり、第1実施形態のインクジェットヘッド100よりやや優れていた。インクジェットヘッドEとインクジェットヘッドFでは吐出特性に違いがないように見える。インクジェットヘッドEとインクジェットヘッドFの吐出特性の違いは、吐出特性を測定する際の測定誤差の範囲内に収まる程度である。このインクジェットヘッドEとインクジェットヘッドFでは、ノズルプレート2と接着されている隔壁6bの長さLが、L=100〜200μmであるのに対し、隣接する隔壁6b間の距離Wが、W=100μmであるから、W≦L≦2Wとなっている。
また、第1実施形態におけるインクジェットヘッド100では、L=3Wであり、吐出速度ばらつきが、±5%以内、吐出体積ばらつきが、±3%以内、着弾精度が、±5μm以内と高い吐出特性であったことは上述した通りである。以上の結果からL≦3Wであることが好ましい。
さらに、凹部13を形成していない隔壁6bの長さが50μmであるインクジェットヘッドGについては、駆動電圧を印加しても吐出できないノズル孔8が発生したため評価することができなかった。これは、ノズルプレート接着工程においてノズルプレート2を接着した際に、ノズルプレート2を接着するための接着剤の余剰分がノズル孔8に流れ込み、ノズル孔8を塞いでしまったことによるものである。
第1実施形態及び第2実施形態では、全てのインクジェットヘッドインク溝6aの幅は、100μmであり、ノズル孔8の中心から隔壁6bまでの距離は、50μmで統一されているが、インクジェットヘッドG以外では接着剤のノズル孔8への流れ込みは発生していない。一方、インクジェットヘッドGでは、ノズル孔8の中心から、ノズル孔8側のカバー部材16までの距離が25μmしかなく、ノズル孔8に対してカバー部材16が非常に近接している。このインクジェットヘッドGでは、ノズルプレート2と接着されている隔壁6bの長さL=50μmに対し、隣接する隔壁6b間の距離W=100μmであるため、L=0.5Wとなっている。
したがって、本実施形態における結果より、ノズルプレート2と接着されている隔壁6bの、隔壁6bと平行方向における長さをLとし、隣接する隔壁6b間の距離をWとしたとき、W≦L≦3Wとすることにより、歩留を落とすことなく、高い着弾特性を有するインクジェットヘッドを製造することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態は、カバー部材接着工程において接着するカバー部材16の大きさが第1実施形態と異なる点と、ノズルプレート接着工程において塗布する接着剤の量が異なる点の2点以外は、第1実施形態と同じである。このため、その2点以外の説明については、説明を省略する。
第3実施形態のカバー部材接着工程において接着したカバー部材16は、隔壁6bと平行方向の長さを、3mm、インク溝6aと直交方向の長さを、50mm、厚みを、100μmとした。つまり第1実施形態と比較して、カバー部材16の大きさを、隔壁6bと平行方向に対して、0.65mm長くした。
このようなカバー部材16を使用し、ノズルプレート接着面形成工程まで行った圧電基板1のX方向における側面図を、図14Aに示す。カバー部材16の長さが、凹部13よりも長いため、カバー部材16が、圧電基板1の隔壁6bと平行方向における端部よりも外側まで存在することになる。
さらに工程をすすめ、製造したインクジェットヘッドの、圧力室14と平行方向における断面図を図14Bに示す。第3実施形態における構造の場合には、ノズルプレート接着工程後に、図14Bに示すように、圧力室14を形成していない部分のカバー部材16の外側に、接着剤のフィレット17が形成されることがあった。具体的には、ノズルプレート2を接着する為の接着剤の厚さを、2、5、7μmとした。尚、接着剤の厚さを2μmとした条件が、第1実施形態における接着剤の量と同じである。このような接着剤の塗布量は、例えばバーコータを用いて塗工する際に、バーの番手を変えることによって容易に制御することが可能である。また、接着剤の塗布量の測定は、接着剤塗布後に電気炉にて熱硬化をさせた後、接触式の段差計を用いて行った。
まず、第3実施形態で製造したインクジェットヘッドに対して、接着剤の厚さを2μmとした場合には、フィレット17はなかったが、接着剤の厚さを5μm以上にした条件では、フィレット17が形成されていた。しかし接着剤量にかかわらず、圧力室14の内部に接着剤が入り込むことはなく、フィレット17でとどまっていた。
一方、第1実施形態において製造したインクジェットヘッド100に対して、同様にノズルプレート接着工程において使用した接着剤量を変化させた場合、接着剤の塗布量を5μm以上としたとき、接着剤が圧力室14内に入り込み、圧力室14の一部をふさいでしまうことを確認した。このような圧力室14への接着剤の入り込みは、圧力室14をふさいで、不吐出となったり、吐出特性を劣化させたりすることがある。
つまり、第1実施形態で製作したインクジェットヘッド100でも、ノズルプレート2の接着のための接着剤量を制御することにより圧力室14のつまりは抑制できたが、第3実施形態の構造とすることにより、ノズルプレート接着工程において塗布する接着剤の量に対するマージンを広げることができて、インクジェットヘッド製造の歩留まりを向上させることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態で製造したインクジェットヘッド100とインクジェットヘッドBについて、圧力を印加して、圧力変動による耐性を確認した。このような圧力への耐性は、例えば、インクジェットヘッドにインクを充填や、メンテナンスのために、ノズル孔8からインクを押し出すために加圧する場合に必要である。このようなインクの押し出しは、例えば、吐出しない時間が長かったときなどに、インクの溶媒が揮発して、固形分の濃度が高くなって増粘し、吐出ができなくなることを回避するために行われる。
圧力の印加方法は、ノズルプレート2にフィルムを貼り付けることでノズル孔8を塞ぎ、配管5aおよび配管5bを通じて加圧した。印加した圧力は30、40、60KPaである。インクジェットヘッドBでは、40KPaまでは問題は発生しなかったが、60KPaにおいて、隔壁6bとノズルプレート2の界面において剥がれが発生した。このようなノズルプレート2の剥がれが発生すると、隣り合う圧力室14が連通してしまうため、圧力波を伝播する際に減衰し、大幅に、吐出特性が劣化する。
一方、インクジェットヘッド100では、60KPaで印加してもこのような剥がれは発生しなかった。これはインクジェットヘッド100では、ノズルプレート2とカバー部材16とが接着されていることにより、インクジェットヘッドBよりも、接着面積が大きいことに起因している。例えば、インクジェットヘッドBでは隔壁6bが形成されている領域において、ノズルプレート2との接着面積は50%であるが、インクジェットヘッド100では97%であり、ほぼ倍となる。よって、カバー部材16を含む構成とすることによりノズルプレート2と圧電基板1との接着強度を強め、圧力変動に対する耐性を確保することができるのである。
上述のように、上記一実施形態では、カバー部材16における隔壁6bの法線方向およびノズルプレート2の法線方向の両方に垂直な方向の長さが、圧力室14における隔壁6bの法線方向およびノズルプレート2の法線方向の両方に垂直な方向の長さよりも長い。したがって、ノズルプレート2の接着時に余剰の接着剤が発生しても、その余剰の接着剤が圧力室内に入り込んで圧力室詰まりが生じさせることがなくて、高い歩留りでインクジェットヘッドを製造することができる。
尚、この発明では、各ノズル孔に、二つの上記圧力室が連通する構成であっても良い。圧力室が、カバー部材と、隔壁とを含んで、剛性が高くなっているから、各ノズル孔に、二つの圧力室を連通する構成を採用して、二つの圧力室から発生した別々の圧力波の位相ずれが発生したとしても、圧力波の伝播により圧力室が変形することがない。したがって、各ノズル孔に二つの圧力室が連通する構成であっても、吐出方向のずれは発生せず、高い着弾精度を実現できるのである。
また、この発明では、一つのノズル孔に、二つの圧力室が連通し、さらに、二つの圧力室は、電気的に導通していて、外部からの信号によってせん断変形するようになっていても良い。上述のように、ノズル孔に連通した二つの圧力室で発生した圧力波の伝播にずれが発生しても、吐出したインクの着弾精度が低下することはない。したがって、この場合、二つの圧力室を、共通の駆動信号で駆動させることができるから、吐出するための電圧を小さくすることができる。
1 圧電基板
2 ノズルプレート
3 流路形成部材
3a 流路形成基材1
3b 流路形成基材2
4 フレキシブルケーブル
5 配管
5a 供給側配管
5b 排出側配管
6a 溝
6b 隔壁
7 隔壁に形成された電極
8 ノズル孔
9 電極引き出し部
10 吐出されたインク
11 共通インク室
12 分離溝
13 凹部
14 圧力室
14A 圧力室A
14B 圧力室B
15 描画される基材
16 カバー部材
17 着剤のフィレット
18 圧電基板接着層
100 インクジェットヘッド

Claims (9)

  1. 一方向に延在し互いに間隔を空けて平行に配置された複数の隔壁と、隣り合う上記隔壁の間に形成されて、少なくとも一端が開口する複数のインク溝とを有する圧電基板と、
    上記複数のインク溝に連通する共通インク室と、
    上記複数のインク溝の上記圧電基板側とは反対側の両端部を覆うカバー部材と、
    上記複数のインク溝の上記圧電基板側とは反対側の上記各インク溝の両端から間隔をおいた部分を覆うと共に、上記各インク溝に連通するノズル孔を有するノズルプレートと
    を備え、
    上記各インク溝の上記圧電基板側とは反対側は、上記ノズルプレートと、上記カバー部材とによって完全に覆われ、
    上記カバー部材は、上記複数の隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部における上記一方向の両端部に接着される一方、上記ノズルプレートは、上記複数の隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部における上記一方向の両端から間隔をおいた部分と、上記カバー部材とに接着され、
    上記共通インク室と連通する上記各インク溝の開口は、上記圧電基板の法線方向において、上記カバー部材に接着された上記ノズルプレートに重なっていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記ノズルプレートが、高分子材料フィルムであることを特徴とするインクジェットヘッド。
  3. 請求項1または2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記カバー部材は、上記ノズルプレートよりも剛性が高い快削性セラミックからなることを特徴とするインクジェットヘッド。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記各ノズル孔に、二つの上記インク溝が連通していることを特徴とするインクジェットヘッド。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向の上記隔壁の長さをL[μm]とし、隣接する上記隔壁間の距離をW[μm]としたとき、W≦L≦3Wであることを特徴とするインクジェットヘッド。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向の上記カバー部材の長さが、上記隔壁の法線方向および上記ノズルプレートの法線方向の両方に垂直な方向の上記インク溝の長さよりも長いことを特徴とするインクジェットヘッド。
  7. 請求項6に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    一つの上記ノズル孔に、二つの上記インク溝が連通し、
    上記二つの上記インク溝は、電気的に導通していて、外部からの信号によってせん断変形することを特徴とするインクジェットヘッド。
  8. 圧電基板に、一方向に延在して互いに間隔をおいて位置する複数の隔壁を形成する隔壁形成工程と、
    上記隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部の一部に凹部を形成する凹部形成工程と、
    上記凹部にカバー部材を接着するカバー部材接着工程と、
    上記カバー部材の上記圧電基板側とは反対側の面と、上記隔壁の上記圧電基板側とは反対側の端部であって、上記凹部に間隔をおいて位置する部分とにノズルプレートを接着するノズルプレート接着工程と
    を備えることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  9. 請求項8に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
    上記カバー部材接着工程と、上記ノズルプレート接着工程との間に、上記カバー部材の上記圧電基板側とは反対側の面と、上記隔壁の上記凹部に間隔をおいて位置する部分とを研削して、上記ノズルプレートを接着する部分を平坦にするノズルプレート接着面形成工程を備えることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012196914A (ja) * 2011-03-22 2012-10-18 Toshiba Tec Corp インクジェットヘッドの製造方法
JP2015168188A (ja) * 2014-03-08 2015-09-28 株式会社リコー 液体吐出ヘッド、液体吐出装置

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