JP3618242B2 - 作業車の変速操作構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、前記ギヤ式変速装置の変速操作時に伝動を一時的に遮断する単一の多板式の油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、該弁機構の作動を制御する制御手段とを備え、前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するように、前記弁機構の作動を前記アクチュエータの作動に連動させてある作業車の変速操作構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような作業車の変速操作構造においては、ギヤ式変速装置を変速操作するアクチュエータの作動に連動して弁機構が油圧クラッチの作動状態を切り換えることから、変速操作の際に伝動を一時的に遮断するクラッチ操作を人為的に行う手間を無くすことができ、又、制御手段の制御作動で、油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は弁機構の開度が大きい開度に維持され、その設定時間の経過後は油圧クラッチが徐々に昇圧するように弁機構の開度を調節するように構成すれば、油圧クラッチの入り作動開始から弁機構の開度を徐々に大きくする場合に比較して、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を短縮できるようにしながら、クラッチミート時におけるショックの発生を抑制できるようになる。
【0003】
ところで、このような作業車の変速操作構造において、走行開始時に行われる中立位置からの変速操作の終了に基づいて油圧クラッチの入り作動を開始させる場合には、作動油が抜けきった状態の油圧クラッチに対して作動油を供給するようになるのに対し、走行中に行われる変速操作の終了に基づいて油圧クラッチの入り作動を開始させる場合は、作動油が抜けきっていない状態の油圧クラッチに対して作動油を供給するようになることから、走行開始時の変速操作後と走行中の変速操作後とでは、油圧クラッチの入り操作時間を短縮する上での油圧クラッチの入り操作初期に必要となるクラッチミートに至る直前までの作動油量が異なるようになる。
【0004】
そこで、従来では、走行開始時の変速操作においては、前記設定時間を走行開始用として予め長い時間に設定されたものに変更し、又、走行中の変速操作においては、前記設定時間を走行中用として予め短い時間に設定されたものに変更することにより、走行開始時の変速操作後と走行中の変速操作後とで、油圧クラッチの入り操作初期である油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間で得られる作動油量を調節できるようにして、走行開始時の変速操作か走行中の変速操作かに応じて、その後の油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を抑制するようにしたものがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アチュエータの作動による変速操作の間に油圧クラッチから排出される作動油量は、変速操作時間の長さや作動油の粘度に応じて変化し、又、変速操作後に油圧クラッチに供給される単位時間当たりの作動油量は、作動油の粘度や流量に応じて変化するのに対し、上記の従来技術においては、走行開始時の変速操作か走行中の変速操作かに応じて設定時間を変更するだけであることから、変速操作時間の長さや作動油の粘度あるいは流量を考慮した好適な油圧クラッチの入り操作が行えないようになっていた。
【0006】
本発明の目的は、変速操作後に変速操作時間の長さや作動油の粘度あるいは流量を考慮した好適な油圧クラッチの入り操作を行える変速性能に優れた作業車の変速操作構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のうちの請求項1記載の発明では、アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、前記ギヤ式変速装置の変速操作時に伝動を一時的に遮断する単一の多板式の油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、該弁機構の作動を制御する制御手段とを備え、前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するように、前記弁機構の作動を前記アクチュエータの作動に連動させてある作業車の変速操作構造において、前記アクチュエータの作動による前記ギヤ式変速装置の変速操作時間を計測する計時手段を設け、前記制御手段が、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記弁機構の開度を大きい開度に維持するとともに、前記計時手段により計測される前記変速操作時間に基づいて前記設定時間を設定変更し、その変更後の設定時間に基づいて、その設定時間の間は、前記油圧クラッチが迅速に昇圧するように前記弁機構の開度を大きい開度に維持し、その設定時間の経過後は、前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように前記弁機構の開度を調節するように構成した。
【0008】
〔作用〕
上記請求項1記載の発明によると、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作時間が長くなると、それに応じて、アクチュエータの作動開始に基づいて開始される弁機構の減圧作動による油圧クラッチの切り操作時間が長くなって、油圧クラッチから排出される作動油量が多くなり、その分、アクチュエータの作動終了に基づいて開始される弁機構の昇圧作動による油圧クラッチの入り操作の初期において油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となる作動油量も多くなることから、制御手段は、計時手段により計測される変速操作時間が長くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を長い時間に設定変更し、その設定時間の間で得られる作動油量を多くして、そのときの変速操作時間の長さに応じて多くなった油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量に迅速に到達させるようにするのであり、これによって、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作時間が長くなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、クラッチミートのかなり前の段階から弁機構の開度が絞られて油圧クラッチを徐々に昇圧させることによる無駄時間の発生を防止できるようになる。
【0009】
逆に、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作時間が短くなると、それに応じて、アクチュエータの作動開始に基づいて開始される弁機構の減圧作動による油圧クラッチの切り操作時間が短くなって、油圧クラッチから排出される作動油量が少なくなり、その分、アクチュエータの作動終了に基づいて開始される弁機構の昇圧作動による油圧クラッチの入り操作の初期において油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となる作動油量も少なくなることから、制御手段は、計時手段により計測される変速操作時間が短くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を短い時間に設定変更し、その設定時間の間で得られる作動油量を少なくして、そのときの変速操作時間の長さに応じて少なくなった油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量に好適に到達させるようにするのであり、これによって、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作時間が短くなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、その操作初期に弁機構の開度を大きい開度に維持する時間の間でクラッチミートすることによるショックの発生を防止できるようになる。
【0010】
つまり、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に行われる油圧クラッチの入り操作においては、そのときの変速操作時間に応じて、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となるクラッチ入り操作初期の作動油量が変化しても、そのときの変速操作時間から、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を、そのときに必要な作動油量が得られる長さに設定変更するようにしているのであり、これによって、変速操作時間の変化にかかわらず、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を更に適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を更に効果的に抑制できるようになる。
【0011】
〔効果〕
従って、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を更に適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を更に効果的に抑制できる、変速操作時間の長さを考慮した好適な油圧クラッチの入り操作を行える変速性能に優れた作業車の変速操作構造を提供できるようになった。
【0012】
本発明のうちの請求項2記載の発明では、アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、前記ギヤ式変速装置の変速操作時に伝動を一時的に遮断する単一の多板式の油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、該弁機構の作動を制御する制御手段とを備え、前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するように、前記弁機構の作動を前記アクチュエータの作動に連動させてある作業車の変速操作構造において、作動油の温度を検出する油温計を設け、前記制御手段が、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記弁機構の開度を大きい開度に維持するとともに、前記油温計により検出される油温に基づいて前記設定時間を設定変更し、その変更後の設定時間に基づいて、その設定時間の間は、前記油圧クラッチが迅速に昇圧するように前記弁機構の開度を大きい開度に維持し、その設定時間の経過後は、前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように前記弁機構の開度を調節するように構成した。
【0013】
〔作用〕
上記請求項2記載の発明よると、作動油が抜けきった状態の油圧クラッチに作動油を供給する油圧クラッチの入り操作のみが行われる走行開始時の変速操作においては、作動油の温度が低下して粘度が高くなると、作動油が流動し難くなって油圧クラッチに供給される単位時間当たりの作動油量が少なくなり、それによって、油圧クラッチの入り操作初期に油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を得るのに要する時間が長くなることから、制御手段は、油温計により検出される作動油の温度が低くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を長くすることによって、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を迅速に得られるようにするのであり、これによって、作動油の粘度が高くなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、クラッチミートのかなり前の段階から弁機構の開度が絞られて油圧クラッチを徐々に昇圧させることによる無駄時間の発生を防止できるようになる。
【0014】
逆に、作動油の温度が上昇して粘度が低くなると、作動油が流動し易くなって油圧クラッチに供給される単位時間当たりの作動油量が多くなり、それによって、油圧クラッチの入り操作初期に油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を得るのに要する時間が短くなることから、制御手段は、油温計により検出される作動油の温度が高くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を短くすることによって、その設定時間の間で油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を好適に得られるようにするのであり、これによって、作動油の粘度が低くなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、その操作初期の弁開度を大きい開度に維持する時間の間でクラッチミートすることによるショックの発生を防止できるようになる。
【0015】
一方、油圧クラッチから作動油を排出する油圧クラッチの切り操作と、油圧クラッチに作動油を供給する油圧クラッチの入り操作とが行われる走行中の変速操作においては、作動油の温度が低下して粘度が高くなると、作動油が流動し難くなることによって、変速操作の間に油圧クラッチから排出される作動油量と、変速操作後に油圧クラッチに供給される単位時間当たりの作動油量との双方が少なくなるのであるが、油圧クラッチは、その切り操作時には迅速さが求められることから弁機構の開度が大きい開度に設定維持されるのに対し、入り操作時にはクラッチミート時のショックを防止するために弁機構の開度が一旦小さい開度に設定されることによって、入り操作時の方が、切り操作時よりも作動油が流動し難くなって作動油の粘度による影響が大きくなるものであり、それによって、作動油の温度が低下して粘度が高くなると、油圧クラッチの切り操作時に油圧クラッチから排出される単位時間当たりの作動油量と、油圧クラッチの入り操作時に油圧クラッチへ供給される単位時間当たりの作動油量との差が大きくなって、油圧クラッチの入り操作初期に油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となる作動油量が多くなることから、制御手段は、油温計により検出される作動油の温度が低くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を長くすることにより、その設定時間の間で得られる作動油量を多くして、そのときの油圧クラッチから排出される単位時間当たりの作動油量と油圧クラッチへ供給される単位時間当たりの作動油量との差に応じて多くなった油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量に迅速に到達させるようにするのであり、これによって、作動油の粘度が高くなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、クラッチミートのかなり前の段階から弁機構の開度が絞られて油圧クラッチを徐々に昇圧させることによる無駄時間の発生を防止できるようになる。
【0016】
逆に、作動油の温度が上昇して粘度が低くなると、油圧クラッチの切り操作時に油圧クラッチから排出される単位時間当たりの作動油量と、油圧クラッチの入り操作時に油圧クラッチへ供給される単位時間当たりの作動油量との差が小さくなって、油圧クラッチの入り操作初期に油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となる作動油量が少なくなることから、制御手段は、油温計により検出される作動油の温度が高くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を短くすることにより、その設定時間の間で得られる作動油量を少なくして、そのときの油圧クラッチから排出される単位時間当たりの作動油量と油圧クラッチへ供給される単位時間当たりの作動油量との差に応じて少なくなった油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量に好適に到達させるようにするのであり、これによって、作動油の粘度が低くなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、その操作初期の弁開度を大きい開度に維持する時間の間でクラッチミートすることによるショックの発生を防止できるようになる。
【0017】
つまり、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に行われる油圧クラッチの入り操作においては、そのときの作動油の粘度に応じて、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となるクラッチ入り操作初期の作動油量、又は、その作動油量を得るのに要する時間が変化しても、そのときの作動油の温度から判別できる作動油の粘度から、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を、そのときに必要な作動油量が得られる長さに設定変更するようにしているのであり、これによって、作動油の粘度の変化にかかわらず、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を更に適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を更に効果的に抑制できるようになる。
【0018】
〔効果〕
従って、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を更に適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を更に効果的に抑制できる、作動油の粘度を考慮した好適な油圧クラッチの入り操作を行える変速性能に優れた作業車の変速操作構造を提供できるようになった。
【0019】
本発明のうちの請求項3記載の発明では、アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、前記ギヤ式変速装置の変速操作時に伝動を一時的に遮断する単一の多板式の油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、該弁機構の作動を制御する制御手段とを備え、前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するように、前記弁機構の作動を前記アクチュエータの作動に連動させてある作業車の変速操作構造において、前記油圧クラッチに向けて作動油を圧送する油圧ポンプをエンジンからの動力で駆動するとともに、前記エンジンの回転数を検出する回転計を設け、前記制御手段が、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記弁機構の開度を大きい開度に維持するとともに、前記回転計により検出されるエンジン回転数に基づいて前記設定時間を設定変更し、その変更後の設定時間に基づいて、その設定時間の間は、前記油圧クラッチが迅速に昇圧するように前記弁機構の開度を大きい開度に維持し、その設定時間の経過後は、前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように前記弁機構の開度を調節するように構成した。
【0020】
〔作用〕
上記請求項3記載の発明によると、エンジン回転数が低くなると、それに応じて油圧ポンプから圧送される作動油の流量が少なくなり、それによって、油圧クラッチの入り操作初期に油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を得るのに要する時間が長くなることから、制御手段は、回転計により検出されるエンジン回転数が低くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を長くすることによって、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を迅速に得られるようにするのであり、これによって、油圧ポンプから圧送される作動油の流量が少なくなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、クラッチミートのかなり前の段階から弁機構の開度が絞られて油圧クラッチを徐々に昇圧させることによる無駄時間の発生を防止できるようになる。
【0021】
逆に、エンジン回転数が高くなると、それに応じて油圧ポンプから圧送される作動油の流量が多くなり、それによって、油圧クラッチの入り操作初期に油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を得るのに要する時間が短くなることから、制御手段は、回転計により検出されるエンジン回転数が高くなると、それに対応させて弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を短くすることによって、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を好適に得られるようにするのであり、これによって、油圧ポンプから圧送される作動油の流量が多くなっているにもかかわらず、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を一定にした場合に生じる、その操作初期の弁開度を大きい開度に維持する時間の間でクラッチミートすることによるショックの発生を防止できるようになる。
【0022】
つまり、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に行われる油圧クラッチの入り操作においては、そのときの油圧ポンプからの作動油の供給量に応じて、クラッチ入り操作初期に油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を得るのに要する時間が変化しても、そのときのエンジン回転数から、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を、そのときに必要な作動油量が得られる長さに設定変更するようにしているのであり、これによって、油圧ポンプからの作動油の供給量の変化にかかわらず、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を更に適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を更に効果的に抑制できるようになる。
【0023】
〔効果〕
従って、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を更に適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を更に効果的に抑制できる、作動油の流量を考慮した好適な油圧クラッチの入り操作を行える変速性能に優れた作業車の変速操作構造を提供できるようになった。
【0024】
本発明のうちの請求項4記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、作動油の温度を検出する油温計を設けて、前記制御手段が、前記油温計により検出される油温を加味して前記設定時間を設定変更するように構成した。
【0025】
〔作用〕
上記請求項4記載の発明によると、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に行われる油圧クラッチの入り操作においては、そのときの変速操作時間と作動油の粘度に応じて、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となるクラッチ入り操作初期の作動油量、又は、その作動油量を得るのに要する時間が変化しても、制御手段は、そのときの変速操作時間と、そのときの作動油の温度から判別できる作動油の粘度とから、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を、そのときに必要な作動油量が得られる長さに設定変更するようになることから、変速操作時間の変化と作動油の粘度にかかわらず、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を一層適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を一層効果的に抑制できるようになる。
【0026】
〔効果〕
従って、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を一層適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を一層効果的に抑制できる、変速操作時間の長さと作動油の粘度を考慮したより好適な油圧クラッチの入り操作を行える、より変速性能に優れた作業車の変速操作構造を提供できるようになった。
【0027】
本発明のうちの請求項5記載の発明では、上記請求項1又は2記載の発明において、前記油圧クラッチに向けて作動油を圧送する油圧ポンプをエンジンからの動力で駆動するとともに、前記エンジンの回転数を検出する回転計を設けて、前記制御手段が、前記回転計により検出されるエンジン回転数を加味して前記設定時間を設定変更するように構成した。
【0028】
〔作用〕
上記請求項5記載の発明によると、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に行われる油圧クラッチの入り操作においては、そのときの変速操作時間と油圧ポンプからの作動油の供給量、又は、作動油の粘度と油圧ポンプからの作動油の供給量に応じて、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となるクラッチ入り操作初期の作動油量、又は、その作動油量を得るのに要する時間が変化しても、制御手段は、そのときの変速操作時間と油圧ポンプからの作動油の供給量、又は、そのときの作動油の温度から判別できる作動油の粘度と油圧ポンプからの作動油の供給量、から弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を、そのときに必要な作動油量が得られる長さに設定変更するようになることから、変速操作時間の変化と油圧ポンプからの作動油の供給量、又は、作動油の粘度と油圧ポンプからの作動油の供給量、にかかわらず、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を一層適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を一層効果的に抑制できるようになる。
【0029】
〔効果〕
従って、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間を一層適切に短縮させながら、クラッチミート時におけるショックの発生を一層効果的に抑制できる、変速操作時間の長さと油圧ポンプからの作動油の供給量、又は、作動油の粘度と油圧ポンプからの作動油の供給量、を考慮したより好適な油圧クラッチの入り操作を行える、より変速性能に優れた作業車の変速操作構造を提供できるようになった。
【0030】
本発明のうちの請求項6記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、前記油圧クラッチに向けて作動油を圧送する油圧ポンプをエンジンからの動力で駆動するとともに、前記エンジンの回転数を検出する回転計と、作動油の温度を検出する油温計とを設けて、前記制御手段が、前記回転計により検出されるエンジン回転数と前記油温計により検出される油温とを加味して前記設定時間を設定変更するように構成した。
【0031】
〔作用〕
上記請求項6記載の発明によると、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に行われる油圧クラッチの入り操作においては、そのときの変速操作時間、作動油の粘度、及び、油圧ポンプからの作動油の供給量に応じて、油圧クラッチをクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となるクラッチ入り操作初期の作動油量、又は、その作動油量を得るのに要する時間が変化しても、制御手段は、そのときの変速操作時間、そのときの作動油の温度から判別できる作動油の粘度、及び、油圧ポンプからの作動油の供給量から、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間を、そのときに必要な作動油量が得られる長さに設定変更するようになることから、変速操作時間の変化、作動油の粘度、及び、油圧ポンプからの作動油の供給量にかかわらず、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間をより一層適切に短縮させながら、クラッチミート時におけるショックの発生をより一層効果的に抑制できるようになる。
【0032】
〔効果〕
従って、アクチュエータの作動によるギヤ式変速装置の変速操作後に、油圧クラッチの入り操作に要する操作時間をより一層適切に短縮させながら、クラッチミート時におけるショックの発生をより一層効果的に抑制できる、変速操作時間の長さ、作動油の粘度、及び、油圧ポンプからの作動油の供給量を考慮したより一層好適な油圧クラッチの入り操作を行える、より一層変速性能に優れた作業車の変速操作構造を提供できるようになった。
【0033】
本発明のうちの請求項7記載の発明では、上記請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、後輪の回転数を検出する回転センサを備え、前記制御装置が、前記回転センサにより検出される前記後輪の回転数に基づいて走行速度を算出するとともに、前記油圧クラッチの切り作動時に低下する走行速度の変化から走行負荷を検知し、この走行負荷に基づいて前記設定時間の経過後における前記弁機構の開度を調節して、前記設定時間の経過後に前記油圧クラッチを徐々に昇圧させる際の昇圧特性を変更するように構成した。
【0034】
上記請求項7記載の発明によると、走行負荷が大きいほど、油圧クラッチの入り操作時に油圧クラッチが伝動を開始する圧力値が高くなることから、制御装置は、油圧クラッチの切り作動時に回転センサからの検出値に基づいて算出される走行速度の低下が大きいほど、走行負荷が大きいことを検知し、その検知した走行負荷の大きさに応じて、その走行負荷が大きいほど、弁機構の開度を大きい開度に維持する時間が経過した後の弁機構の開度を大きくして、油圧クラッチの圧力値を、そのときの走行負荷に応じて高くなった油圧クラッチが伝動を開始する圧力値に到達させ易くするのであり、これによって、走行負荷の変化にかかわらず、油圧クラッチが伝動を開始するまでに要する操作時間を適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を好適に抑制できる。
【0035】
ところで、回転計により検出されるエンジン回転数の低下量から走行負荷を検知することも考えられるが、エンジン回転数の低下は、走行負荷と作業車に連結される作業装置を駆動する際の作業負荷とに起因するものであることから、作業装置を駆動させる作業走行時には、エンジン回転数の低下から走行負荷のみを検知することができず、走行負荷に応じた適切な油圧クラッチの昇圧操作が行えないことから、作業走行時の変速操作においてはクラッチミートの際にショックが発生するようになる。
【0036】
そこで、上記請求項7記載の発明では、油圧クラッチの切り作動時における走行速度の低下から走行負荷を検知するようにしているのであり、これによって、作業走行時においても走行負荷のみを検知することができ、もって、非作業走行時と作業走行時とにかかわらず、油圧クラッチが伝動を開始するまでに要する操作時間を適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を好適に抑制することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
図1には、作業車の一例である農用トラクタの全体側面が示されており、このトラクタは、左右一対の前輪1と後輪2、前部に搭載されたエンジン3、ペダル操作式の主クラッチ4、後部フレーム兼用のミッションケース5、前輪操向用のステアリングホイール6、及び、運転座席7、などを備えて構成されている。
【0039】
図2に示すように、ミッションケース5には、主クラッチ4を介して伝達されるエンジン3からの動力を4段に変速する主変速装置8、主変速装置8からの動力を断続させる多板式の油圧クラッチ9、油圧クラッチ9を介して伝達される主変速装置8からの動力を前進動力として正転伝達する状態と後進動力として逆転伝達する状態とに切り換える前後進切換装置10、前後進切換装置10からの前進動力を2段に変速する補助変速装置11、前後進切換装置10からの後進動力又は補助変速装置11からの前進動力を2段に変速する副変速装置12、副変速装置12からの動力を大きい変速比で減速可能な超減速装置13、超減速装置13からの動力を左右の後輪2に伝達する後輪差動装置14、及び、超減速装置13からの動力を左右の前輪1に増速伝達可能な前輪変速装置15、などが内装されている。前輪変速装置15からの動力は、伝動軸16及び前輪差動装置17を介して左右の前輪1に伝達されるようになっている。
【0040】
主変速装置8は、主クラッチ4の出力軸4aに連動する入力軸18、入力軸18に一体回転するように装着された第1駆動ギヤ19と第2駆動ギヤ20と第3駆動ギヤ21と第4駆動ギヤ22、第1駆動ギヤ19に噛合する第1従動ギヤ23、第2駆動ギヤ20に噛合する第2従動ギヤ24、第3駆動ギヤ21に噛合する第3従動ギヤ25、第4駆動ギヤ22に噛合する第4従動ギヤ26、各従動ギヤ23〜26を回転自在に支持する出力軸27、出力軸27を第1従動ギヤ23に連動させる第1速位置と出力軸27を第2従動ギヤ24に連動させる第2速位置と出力軸27を第1従動ギヤ23及び第2従動ギヤ24に連動させない中立位置とに切り換え可能なシンクロメッシュ式の第1シフト部材28、及び、出力軸27を第3従動ギヤ25に連動させる第3速位置と出力軸27を第4従動ギヤ26に連動させる第4速位置と出力軸27を第3従動ギヤ25及び第4従動ギヤ26に連動させない中立位置とに切り換え可能なシンクロメッシュ式の第2シフト部材29、などによって構成されている。
【0041】
この構成から、主変速装置8は、第1シフト部材28及び第2シフト部材29を中立位置に位置させると、入力軸18の動力を出力軸27に伝達しない中立状態を現出し、第2シフト部材29を中立位置に位置させた状態で第1シフト部材28を第1速位置に位置させると、入力軸18の動力を出力軸27に低速で伝達する第1伝動状態を現出し、第2シフト部材29を中立位置に位置させた状態で第1シフト部材28を第2速位置に位置させると、入力軸18の動力を出力軸27に第1伝動状態よりも高速で伝達する第2伝動状態を現出し、第1シフト部材28を中立位置に位置させた状態で第2シフト部材29を第3速位置に位置させると、入力軸18の動力を出力軸27に第2伝動状態よりも高速で伝達する第3伝動状態を現出し、第1シフト部材28を中立位置に位置させた状態で第2シフト部材29を第4速位置に位置させると、入力軸18の動力を出力軸27に第3伝動状態よりも高速で伝達する第4伝動状態を現出するようになっている。
【0042】
油圧クラッチ9は、作動油が供給されることによって主変速装置8からの動力を前後進切換装置10に伝達する入り状態に切り換えられ、作動油が排出されることによって主変速装置8からの動力を前後進切換装置10に伝達しない切り状態に切り換えられるようになっている。
【0043】
前後進切換装置10は、油圧クラッチ9を介して主変速装置8の出力軸27と連動する入力軸30、入力軸30に回転自在に装着された円筒軸31と駆動ギヤ32、駆動ギヤ32に逆転ギヤ33を介して噛合連動する従動ギヤ34、従動ギヤ34と一体回転する出力軸35、及び、入力軸30に円筒軸31を連動させる前進位置と入力軸30に駆動ギヤ32を連動させる後進位置とに切り換え可能なシンクロメッシュ式のシフト部材36、などによって構成されている。
【0044】
この構成から、前後進切換装置10は、シフト部材36を前進位置に位置させると、入力軸30の動力を円筒軸31に前進動力として伝達する前進伝動状態を現出し、シフト部材36を後進位置に位置させると、入力軸30の動力を出力軸35に後進動力として逆転伝達する後進伝動状態を現出するようになっている。
【0045】
補助変速装置11は、前後進切換装置10の円筒軸31に回転自在に装着された高速駆動ギヤ37、前後進切換装置10の入力軸30に回転自在に装着された低速駆動ギヤ38、高速駆動ギヤ37に噛合する高速従動ギヤ39、低速駆動ギヤ38に噛合する低速従動ギヤ40、高速従動ギヤ39及び低速従動ギヤ40と一体回転する出力軸35、及び、円筒軸31に高速駆動ギヤ37を連動させる高速位置と円筒軸31に低速駆動ギヤ38を連動させる低速位置とに切り換え可能なシンクロメッシュ式のシフト部材41、などによって構成されている。
【0046】
この構成から、補助変速装置11は、シフト部材41を高速位置に位置させると、前後進切換装置10の円筒軸31からの動力を出力軸35に高速前進動力として正転伝達する高速前進伝動状態を現出し、シフト部材41を低速位置に位置させると、前後進切換装置10の円筒軸31からの動力を出力軸35に低速前進動力として正転伝達する低速前進伝動状態を現出するようになっている。
【0047】
副変速装置12は、前後進切換装置10及び補助変速装置11の共通の出力軸35と連動する入力軸42、入力軸42に回転自在に装着された低速駆動ギヤ43と高速駆動ギヤ44、低速駆動ギヤ43に噛合する低速従動ギヤ45、高速駆動ギヤ44に噛合する高速従動ギヤ46、低速従動ギヤ45及び高速従動ギヤ46と一体回転する円筒軸47、及び、入力軸42に低速駆動ギヤ43を連動させる低速位置と入力軸42に高速駆動ギヤ44を連動させる高速位置とに切り換え可能なシンクロメッシュ式のシフト部材48、などによって構成されている。
【0048】
この構成から、副変速装置12は、シフト部材48を低速位置に位置させると、入力軸42の動力を円筒軸47に低速で伝達する低速伝動状態を現出し、シフト部材48を高速位置に位置させると、入力軸42の動力を円筒軸47に高速で伝達する高速伝動状態を現出するようになっている。
【0049】
超減速装置13は、副変速装置12の円筒軸47を回転自在に支持する出力軸49、副変速装置12の円筒軸47と一体回転する減速駆動ギヤ50、出力軸49に回転自在に装着された減速従動ギヤ51、減速駆動ギヤ50に噛合する第1中継ギヤ52、減速従動ギヤ51に噛合する第2中継ギヤ53、第1中継ギヤ52と第2中継ギヤ53とを一体回転させる中継軸54、及び、出力軸49を副変速装置12の円筒軸47に連動させる非減速位置と出力軸49を減速従動ギヤ51に連動させる超減速位置とに切り換え可能なシンクロメッシュ式のシフト部材55、などによって構成されている。
【0050】
この構成から、超減速装置13は、シフト部材55を非減速位置に位置させると、副変速装置12の円筒軸47からの動力を出力軸49に変速せずに伝達する非減速伝動状態を現出し、シフト部材55を超減速位置に位置させると、副変速装置12の円筒軸47からの動力を出力軸49に大きく減速して伝達する超減速伝動状態を現出するようになっている。
【0051】
後輪差動装置14は、超減速装置13の出力軸49に連動するように構成されており、その出力軸49からの動力を左右の後輪2に伝達するようになっている。
【0052】
前輪変速装置15は、超減速装置13の出力軸49と一体回転する伝動ギヤ56に中継ギヤ57を介して噛合連動する入力ギヤ58、入力ギヤ58と一体回転する等速駆動ギヤ59、入力ギヤ58と入力軸60を介して一体回転する増速駆動ギヤ61、等速駆動ギヤ59に噛合する等速従動ギヤ62、増速駆動ギヤ61に噛合する増速従動ギヤ63、等速従動ギヤ62と増速従動ギヤ63とを回転自在に支持する出力軸64、増速従動ギヤ63と出力軸64との間に介装された多板式の摩擦クラッチ65、及び、出力軸64を等速従動ギヤ62に連動させる等速位置と摩擦クラッチ65を入り操作して出力軸64を増速従動ギヤ63に連動させる前輪増速位置と出力軸64を等速従動ギヤ62及び増速従動ギヤ63に連動させない中立位置とに切り換え可能なシフト部材66、などによって構成されている。等速駆動ギヤ59と等速従動ギヤ62のギヤレシオは、前輪1の周速度を後輪2の周速度と略同一する値に設定されている。増速駆動ギヤ61と増速従動ギヤ63のギヤレシオは、前輪1の周速度を後輪2の周速度よりも速くする値に設定されている。
【0053】
この構成から、前輪変速装置15は、シフト部材66を等速位置に位置させると、入力ギヤ58の動力を出力軸64に前輪1の周速度が後輪2の周速度と略同一となるように伝達する標準4輪駆動状態を現出し、シフト部材66を前輪増速位置に位置させると、入力ギヤ58の動力を出力軸64に前輪1の周速度が後輪2の周速度よりも速くなるように伝達する前輪増速4輪駆動状態を現出し、シフト部材66を中立位置に位置させると、入力ギヤ58の動力を出力軸64に伝達しない後輪2輪駆動状態を現出するようになっている。
【0054】
図2及び図3に示すように、主変速装置8の第1シフト部材28は3位置切り換え式の第1油圧シリンダ67の作動で、主変速装置8の第2シフト部材29は3位置切り換え式の第2油圧シリンダ68の作動で、前後進切換装置10のシフト部材36は2位置切り換え式の第1切換レバー69の操作で、補助変速装置11のシフト部材41は2位置切り換え式の第3油圧シリンダ70の作動で、副変速装置12のシフト部材48は2位置切り換え式の第4油圧シリンダ71の作動で、超減速装置13のシフト部材55は2位置切り換え式の第2切換レバー72の操作で、前輪変速装置15のシフト部材66は3位置切り換え式の第5油圧シリンダ73の作動で切り換え操作されるようになっている。
【0055】
つまり、主変速装置8、補助変速装置11、及び、副変速装置12は、アクチュエータAの一例である第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動で変速操作されるギヤ式変速装置Gである。
【0056】
図3に示すように、第1油圧シリンダ67は、2位置切り換え式の第1電磁切換弁74と第2電磁切換弁75の作動で、第2油圧シリンダ68は、2位置切り換え式の第3電磁切換弁76と第4電磁切換弁77の作動で、第3油圧シリンダ70は、2位置切り換え式の第5電磁切換弁78の作動で、第4油圧シリンダ71は、2位置切り換え式の第6電磁切換弁79の作動で、エンジン3からの動力で駆動される油圧ポンプ80から圧送される作動油の流動状態が切り換えられることによって作動状態が切り換わるようになっている。各電磁切換弁74〜79の作動は、マイクロコンピュータを備えた制御装置81によって制御されるようになっている。制御装置81は、ポテンショメータからなるレバーセンサ82により検出される変速レバー83の操作位置に基づいて、第1〜4電磁切換弁74〜77及び第6電磁切換弁79の作動を制御し、切換スイッチ84の操作に基づいて第5電磁切換弁78の作動を制御するように構成されている。
【0057】
変速レバー83の操作位置に基づく制御装置81の制御作動について詳述すると、制御装置81は、変速レバー83が駐車位置又は中立位置にある場合には、第1〜4電磁切換弁74〜77を作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28及び第2シフト部材29が中立位置に位置するように第1油圧シリンダ67及び第2油圧シリンダ68を作動させて、中立状態を現出するのである。
【0058】
変速レバー83が第1速位置にある場合には、第1電磁切換弁74と第6電磁切換弁79とを作動油排出状態にし、かつ、第2〜4電磁切換弁75〜77を作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が第1速位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が中立位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が低速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第1速状態を現出するのである。
【0059】
変速レバー83が第2速位置にある場合には、第2電磁切換弁75と第6電磁切換弁79とを作動油排出状態にし、かつ、第1電磁切換弁74と第3電磁切換弁76と第4電磁切換弁77とを作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が第2速位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が中立位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が低速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第2速状態を現出するのである。
【0060】
変速レバー83が第3速位置にある場合には、第3電磁切換弁76と第6電磁切換弁79とを作動油排出状態にし、かつ、第1電磁切換弁74と第2電磁切換弁75と第4電磁切換弁77とを作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が中立位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が第3速位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が低速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第3速状態を現出するのである。
【0061】
変速レバー83が第4速位置にある場合には、第4電磁切換弁77と第6電磁切換弁79とを作動油排出状態にし、かつ、第1〜3電磁切換弁74〜76を作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が中立位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が第4速位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が低速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第4速状態を現出するのである。
【0062】
変速レバー83が第5速位置にある場合には、第1電磁切換弁74を作動油排出状態にし、かつ、第2〜4電磁切換弁75〜77と第6電磁切換弁79とを作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が第1速位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が中立位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が高速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第5速状態を現出するのである。
【0063】
変速レバー83が第6速位置にある場合には、第2電磁切換弁75を作動油排出状態にし、かつ、第1電磁切換弁74と第3電磁切換弁76と第4電磁切換弁77と第6電磁切換弁79とを作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が第2速位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が中立位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が高速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第6速状態を現出するのである。
【0064】
変速レバー83が第7速位置にある場合には、第3電磁切換弁76を作動油排出状態にし、かつ、第1電磁切換弁74と第2電磁切換弁75と第4電磁切換弁77と第6電磁切換弁79とを作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が中立位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が第3速位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が高速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第7速状態を現出するのである。
【0065】
変速レバー83が第8速位置にある場合には、第4電磁切換弁77を作動油排出状態にし、かつ、第1〜3電磁切換弁74〜76と第6電磁切換弁79とを作動油供給状態にすることにより、主変速装置8の第1シフト部材28が中立位置に位置するように第1油圧シリンダ67を作動させ、主変速装置8の第2シフト部材29が第4速位置に位置するように第2油圧シリンダ68を作動させ、副変速装置12のシフト部材48が高速位置に位置するように第4油圧シリンダ71を作動させて、第8速状態を現出するのである。
【0066】
つまり、変速レバー83の操作位置に基づいて、制御装置81が、第1〜4電磁切換弁74〜77及び第6電磁切換弁79の作動を制御して、主変速装置8を変速操作する第1油圧シリンダ67と第2油圧シリンダ68、並びに、副変速装置12を変速操作する第4油圧シリンダ71の作動状態を切り換えることによって、前後進のそれぞれにおいて8段の変速操作を行えるようになっている。
【0067】
切換スイッチ84の操作に基づく制御装置81の制御作動について詳述すると、制御装置81は、補助変速装置11が高速前進伝動状態にある場合に切換スイッチ84が操作されると、第5電磁切換弁78を作動油排出状態にすることにより、補助変速装置11のシフト部材41が低速位置に位置するように第3油圧シリンダ70を作動させて、低速前進伝動状態を現出し、逆に、補助変速装置11が低速前進伝動状態にある場合に切換スイッチ84が操作されると、第5電磁切換弁78を作動油供給状態にすることにより、補助変速装置11のシフト部材41が高速位置に位置するように第3油圧シリンダ70を作動させて、高速前進伝動状態を現出するのである。
【0068】
尚、補助変速装置11におけるギヤレシオの比は、主変速装置8及び副変速装置12による8段変速構造における各ギヤレシオの比の半分程度の値に設定されている。つまり、補助変速装置11を変速作動させることによって、主変速装置8及び副変速装置12の変速作動による主変速の約半段分の補助変速を行えるようになっている。
【0069】
第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71に対する油圧回路には、主変速装置8、副変速装置12、及び、補助変速装置11の変速作動、並びに、前後進切換装置10の切り換え作動に連動して油圧クラッチ9の作動状態を切り換える弁機構Vが備えられている。弁機構Vは、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動開始、又は、第1切換レバー69の操作開始に基づいて作動油排出状態に切り換わることによって、油圧クラッチ9の減圧による切り作動を開始させ、かつ、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動終了、又は、第1切換レバー69の操作完了に基づいて作動油供給状態に切り換わることによって、油圧クラッチ9の昇圧による入り作動を開始させる切換弁85と、制御装置81により、図4に示すように、油圧クラッチ9の入り作動開始から設定時間tの間は大きい開度に開度調節され、かつ、設定時間tの経過後は油圧クラッチ9を徐々に昇圧させる開度に開度調節される電磁比例弁86とを、切換弁85に対して電磁比例弁86が油路上手側に位置する状態に直列に接続することによって構成されている。つまり、制御装置81は、弁機構Vの作動を制御する制御手段Cとしても機能するように構成されている。
【0070】
切換弁85は、主変速装置8の第1シフト部材28を第1速位置又は第2速位置に位置させた第1油圧シリンダ67の作動停止時に閉弁されるように第1油圧シリンダ67に連係された第1開閉弁87、主変速装置8の第2シフト部材29を第3速位置又は第4速位置に位置させた第2油圧シリンダ68の作動停止時に閉弁されるように第2油圧シリンダ68に連係された第2開閉弁88、補助変速装置11のシフト部材41を低速位置又は高速位置に位置させた第3油圧シリンダ70の作動停止時に閉弁されるように第3油圧シリンダ70に連係された第3開閉弁89、副変速装置12のシフト部材48を低速位置又は高速位置に位置させた第4油圧シリンダ71の作動停止時に閉弁されるように第4油圧シリンダ71に連係された第4開閉弁90、及び、前後進切換装置10のシフト部材36を前進位置又は後進位置に位置させた第1切換レバー69の操作完了時に閉弁されるように第1切換レバー69に連係された第5開閉弁91、の作動に基づいて、パイロット圧が所定圧よりも減少すると作動油排出状態に切り換わり、逆に、パイロット圧が所定圧以上に上昇すると作動油供給状態に切り換わるように構成されている。
【0071】
第1〜5開閉弁87〜91は、第1開閉弁87に対して、第2開閉弁88が直列に、又、第3〜5開閉弁89〜91が並列に接続されており、第1開閉弁87と第2開閉弁88の双方、又は、第3〜5開閉弁89〜91のいずれかが開弁されると、作動油を排出して切換弁85に対するパイロット圧を減少させ、逆に、第1開閉弁87及び第2開閉弁88のいずれかと、第3〜5開閉弁89〜91の全てが閉弁されると、作動油の排出を停止して切換弁85に対するパイロット圧を上昇させるようになっている。
【0072】
以上の構成から、変速レバー83による主変速装置8及び副変速装置12の変速操作の際には、第1油圧シリンダ67、第2油圧シリンダ68、又は、第4油圧シリンダ71の作動開始に基づいて油圧クラッチ9を自動的に切り作動させることができるとともに、第1油圧シリンダ67、第2油圧シリンダ68、又は、第4油圧シリンダ71の作動終了に基づいて油圧クラッチ9を自動的に入り作動させることができ、又、第1切換レバー69による前後進切換装置10の切り換え操作の際には、第1切換レバー69の操作開始に基づいて油圧クラッチ9を自動的に切り作動させることができるとともに、第1切換レバー69の操作完了に基づいて油圧クラッチ9を自動的に入り作動させることができ、更に、切換スイッチ84による補助変速装置11の変速操作の際には、第3油圧シリンダ70の作動開始に基づいて油圧クラッチ9を自動的に切り作動させることができるとともに、第3油圧シリンダ70の作動終了に基づいて油圧クラッチ9を自動的に入り作動させることができるようになっている。
【0073】
要するに、主変速装置8、補助変速装置11、及び、副変速装置12の変速操作、並びに、前後進切換装置10の切り換え操作の際に油圧クラッチ9の操作を人為的に行う手間を省くことができるようになっている。
【0074】
又、前述のように、制御装置81が、油圧クラッチ9の入り作動開始から設定時間tの間は電磁比例弁86の開度を大きい開度に調節することによって、油圧クラッチ9の入り作動開始から電磁比例弁86の開度を徐々に大きくする場合に比較して油圧クラッチ9の入り操作に要する操作時間を短縮できる上に、設定時間tの経過後は電磁比例弁86の開度を油圧クラッチ9を徐々に昇圧させる開度に調節することから、クラッチミート時におけるショックの発生を抑制できるようになっている。尚、制御装置81は、切換弁85の作動状態を切り換えるパイロット圧の所定圧への到達を検出する圧力スイッチ92の作動に基づいて、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作の開始に基づく油圧クラッチ9の切り作動の開始、及び、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作の終了に基づく油圧クラッチ9の入り作動の開始を検知し、又、内蔵されたタイマTで設定時間tを計時するようになっている。
【0075】
ところで、前述のように第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71と第1〜4開閉弁87〜90とが連係されていることから、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作時間が長くなるほど、それに応じて、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動開始に基づいて開始される弁機構Vの減圧作動による油圧クラッチ9の切り操作時間が長くなって、油圧クラッチ9から排出される作動油量が多くなり、その分、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動終了に基づいて開始される弁機構Vの昇圧作動による油圧クラッチ9の入り操作の初期において油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となる作動油量も多くなる。
【0076】
そこで、図3及び図5に示すように、制御装置81は、圧力スイッチ92の作動により、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作の開始に基づく油圧クラッチ9の切り作動の開始を検知するのに伴ってタイマTによる計測を開始させるとともに、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作の終了に基づく油圧クラッチ9の入り作動の開始を検知するのに伴ってタイマTによる計測を終了させることによって、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作時間を計測し、そのときの変速操作時間に基づいて、その後の油圧クラッチ9の入り操作の初期において油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させる作動油量を得るために必要となる設定時間tを設定するように構成されている。
【0077】
つまり、圧力スイッチ92とタイマTとから、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作時間を計測する計時手段Kが構成されており、制御装置81は、その計時手段Kにより計測される変速操作時間が長くなって油圧クラッチ9からの排出油量が多くなるほど、それに対応させて電磁比例弁86の開度を大きくする設定時間tを長くして、その設定時間tの間で得られる作動油量を多くすることにより、そのときの変速操作時間の長さに応じて多くなった油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量に過不足なく迅速に到達させるようにするのであり、これによって、変速段の違いなどに起因する変速操作時間の変化にかかわらず、油圧クラッチ9の入り操作に要する操作時間を適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を効果的に抑制できるようになっている。
【0078】
尚、制御装置81は、油圧クラッチ9から全ての作動油を排出するのに要する所定時間が経過した際には、計時手段Kによる計測を停止するとともに、設定時間tを、作動油が抜けきった状態の油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量が得られる長さに変更するように構成されており、走行開始時の変速操作においては、この制御作動が適用されるようになっている。ちなみに、制御装置81は、レバーセンサ82からの検出に基づいて、走行開始時の変速操作であるか走行中の変速操作であるかを判別するようになっている。
【0079】
ところで、作動油は、その温度が低くなるほど粘度が高くなって流動し難くなる。そのため、作動油が抜けきった状態の油圧クラッチ9に作動油を供給する油圧クラッチ9の入り操作のみが行われる走行開始時の変速操作においては、作動油の温度が低下するほど、油圧クラッチ9に供給される単位時間当たりの作動油量が少なくなり、それによって、油圧クラッチ9の入り操作初期に油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を得るのに要する時間が長くなる。一方、油圧クラッチ9から作動油を排出する油圧クラッチ9の切り操作と、油圧クラッチ9に作動油を供給する油圧クラッチ9の入り操作とが行われる走行中の変速操作においては、作動油の温度が低下するほど、変速操作の間に油圧クラッチ9から排出される作動油量と、変速操作後に油圧クラッチ9に供給される単位時間当たりの作動油量の双方が少なくなるのであるが、油圧クラッチ9は、その切り操作時には迅速さが求められることによって弁機構Vの開度が電磁比例弁86により開度調節されない大きい開度に設定されているのに対し、その入り操作時にはクラッチミート時のショックを防止するために弁機構Vの開度が電磁比例弁86の開度調節作動により一旦小さい開度に設定されることによって、入り操作時の方が、切り操作時よりも作動油が流動し難くなって作動油の粘度による影響が大きくなるものであることから、作動油の温度が低下するほど、油圧クラッチ9の切り操作時に油圧クラッチ9から排出される単位時間当たりの作動油量と、油圧クラッチ9の入り操作時に油圧クラッチ9に供給される単位時間当たりの作動油量との差が大きくなって、油圧クラッチ9の入り操作初期に油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるために必要となる作動油量が多くなる。
【0080】
そこで、図3及び図6に示すように、このトラクタには作動油の温度を検出する油温計93が備えられるとともに、制御装置81は、計時手段Kにより計測された変速操作時間に基づいて設定した設定時間tを、油温計93からの検出温度に基づいて補正するように構成されている。
【0081】
つまり、制御装置81は、油温計93により検出される作動油の温度が低いほど、それに対応させて電磁比例弁86の開度を大きくする設定時間tが長くなるように設定時間tを補正することによって、作動油の温度に起因した粘度の変化にかかわらず、油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を過不足なく迅速に得られるようにするのであり、これによって、油圧クラッチ9の入り操作に要する操作時間を一層適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を一層効果的に抑制できるようになっている。
【0082】
又、このトラクタにおいては、前述のように油圧ポンプ80をエンジン3からの動力で駆動するようにしているから、エンジン回転数が低くなるほど、それに応じて油圧ポンプ80から圧送される作動油の流量が少なくなって、油圧クラッチ9の入り操作初期に油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を得るのに要する時間が長くなる。
【0083】
そこで、図3及び図7に示すように、このトラクタにはエンジン3の回転数を検出する回転計94が備えられるとともに、制御装置81は、計時手段Kにより計測された変速操作時間に基づいて設定した設定時間tを、上記の油温計93からの検出温度に基づく補正に加えて、回転計94からの検出回転数に基づく補正を行うように構成されている。
【0084】
つまり、制御装置81は、回転計94により検出されるエンジン回転数が低くなるほど、それに対応させて電磁比例弁86の開度を大きくする設定時間tが長くなるように設定時間tを補正することによって、エンジン回転数に起因した作動油の流量の変化にかかわらず、油圧クラッチ9をクラッチミート直前まで適切に作動させるための作動油量を過不足なく迅速に得られるようにするのであり、これによって、油圧クラッチ9の入り操作に要する操作時間をより一層適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生をより一層効果的に抑制できるようになっている。
【0085】
要するに、制御装置81は、そのときの変速操作時間、作動油の温度から判別できる作動油の粘度、及び、油圧ポンプ80からの作動油の流量から、電磁比例弁86の開度を大きくする設定時間tを、そのときに必要な作動油量が得られる長さに設定するのであり、これによって、第1〜4油圧シリンダ67,68,70,71の作動による変速操作後に、変速操作時間の長さ、作動油の粘度、及び、油圧ポンプ80からの作動油の流量を考慮した好適な油圧クラッチ9の入り操作を行えるようになっている。
【0086】
図3及び図8に示すように、このトラクタには、後輪2の回転数を検出する回転センサ95が備えられており、制御装置81は、回転センサ95からの検出値に基づいて走行速度を算出するとともに、油圧クラッチ9の切り作動時に低下する走行速度の変化から走行負荷を検知し、その走行負荷に基づいて、油圧クラッチ9の入り操作時における設定時間t経過後の電磁比例弁86の開度を変更することによって設定時間t経過後の昇圧特性を変更するように構成されている。
【0087】
つまり、走行負荷が大きいほど、油圧クラッチ9の入り操作時に油圧クラッチ9が伝動を開始する圧力値が高くなることから、制御装置81は、油圧クラッチ9の切り作動時に回転センサ95からの検出値に基づいて算出される走行速度の低下が大きいほど、走行負荷が大きいことを検知し、その分、油圧クラッチ9の入り操作時における設定時間t経過後の電磁比例弁86の開度を大きくすることによって、油圧クラッチ9の圧力値を、そのときの走行負荷に応じて高くなった油圧クラッチ9が伝動を開始する圧力値に到達させ易くするのであり、これによって、走行負荷の変化にかかわらず、油圧クラッチ9が伝動を開始するまでに要する操作時間を適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を好適に抑制できるようになっている。
【0088】
尚、回転計94により検出されるエンジン回転数の低下量から走行負荷を検知することも考えられるが、エンジン回転数の低下は、走行負荷とトラクタに連結される作業装置を駆動する際の作業負荷とに起因するものであることによって、作業装置を駆動させる作業走行時には、エンジン回転数の低下から走行負荷のみを検知することができず、走行負荷に応じた適切な油圧クラッチ9の昇圧操作が行えないことから、作業走行時の変速操作においてはクラッチミートの際にショックが発生するようになる。これに対し、本実施形態では、油圧クラッチ9の切り作動時における走行速度の低下から走行負荷を検知することによって、作業走行時においても走行負荷のみを検知できることから、非作業走行時と作業走行時とにかかわらず、油圧クラッチ9が伝動を開始するまでに要する操作時間を適切に短縮させながらクラッチミート時におけるショックの発生を好適に抑制できるようになっている。
【0089】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)本発明を、農用トラクタ以外の作業車に適用するようにしてもよい。
(2)制御手段Cが、計時手段Kにより計測されるギヤ式変速装置Gの変速操作時間、油温計93により検出される作動油の温度、及び、回転計94により検出されるエンジン回転数、のうちのいずれか一つ、又は、いずれか二つに基づいて設定時間tを設定するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】走行変速系の伝動構造を示す概略図
【図3】走行変速系の操作構造を示す油圧制御回路図
【図4】電磁比例弁の開度を示す図
【図5】電磁比例弁を大きい開度にする設定時間と変速操作時間の関係を示す図
【図6】設定時間の補正値と油温の関係を示す図
【図7】設定時間の補正値とエンジン回転数の関係を示す図
【図8】設定時間経過後の電磁比例弁の開度と走行負荷の関係を示す図
【符号の説明】
2 後輪
3 エンジン
9 油圧クラッチ
80 油圧ポンプ
93 油温計
94 回転計
95 回転センサ
A アクチュエータ
C 制御手段
G ギヤ式変速装置
K 計時手段
V 弁機構
t 設定時間
Claims (7)
- アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、前記ギヤ式変速装置の変速操作時に伝動を一時的に遮断する単一の多板式の油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、該弁機構の作動を制御する制御手段とを備え、
前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するように、前記弁機構の作動を前記アクチュエータの作動に連動させてある作業車の変速操作構造であって、
前記アクチュエータの作動による前記ギヤ式変速装置の変速操作時間を計測する計時手段を設け、
前記制御手段が、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記弁機構の開度を大きい開度に維持するとともに、前記計時手段により計測される前記変速操作時間に基づいて前記設定時間を設定変更し、その変更後の設定時間に基づいて、その設定時間の間は、前記油圧クラッチが迅速に昇圧するように前記弁機構の開度を大きい開度に維持し、その設定時間の経過後は、前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように前記弁機構の開度を調節するように構成してある作業車の変速操作構造。 - アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、前記ギヤ式変速装置の変速操作時に伝動を一時的に遮断する単一の多板式の油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、該弁機構の作動を制御する制御手段とを備え、
前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するように、前記弁機構の作動を前記アクチュエータの作動に連動させてある作業車の変速操作構造であって、
作動油の温度を検出する油温計を設け、
前記制御手段が、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記弁機構の開度を大きい開度に維持するとともに、前記油温計により検出される油温に基づいて前記設定時間を設定変更し、その変更後の設定時間に基づいて、その設定時間の間は、前記油圧クラッチが迅速に昇圧するように前記弁機構の開度を大きい開度に維持し、その設定時間の経過後は、前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように前記弁機構の開度を調節するように構成してある作業車の変速操作構造。 - アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、前記ギヤ式変速装置の変速操作時に伝動を一時的に遮断する単一の多板式の油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、該弁機構の作動を制御する制御手段とを備え、
前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するように、前記弁機構の作動を前記アクチュエータの作動に連動させてある作業車の変速操作構造であって、
前記油圧クラッチに向けて作動油を圧送する油圧ポンプをエンジンからの動力で駆動するとともに、前記エンジンの回転数を検出する回転計を設け、
前記制御手段が、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記弁機構の開度を大きい開度に維持するとともに、前記回転計により検出されるエンジン回転数に基づいて前記設定時間を設定変更し、その変更後の設定時間に基づいて、その設定時間の間は、前記油圧クラッチが迅速に昇圧するように前記弁機構の開度を大きい開度に維持し、その設定時間の経過後は、前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように前記弁機構の開度を調節するように構成してある作業車の変速操作構造。 - 作動油の温度を検出する油温計を設けて、前記制御手段が、前記油温計により検出される油温を加味して前記設定時間を設定変更するように構成してある請求項1記載の作業車の変速操作構造。
- 前記油圧クラッチに向けて作動油を圧送する油圧ポンプをエンジンからの動力で駆動するとともに、前記エンジンの回転数を検出する回転計を設けて、前記制御手段が、前記回転計により検出されるエンジン回転数を加味して前記設定時間を設定変更するように構成してある請求項1又は2記載の作業車の変速操作構造。
- 前記油圧クラッチに向けて作動油を圧送する油圧ポンプをエンジンからの動力で駆動するとともに、前記エンジンの回転数を検出する回転計と、作動油の温度を検出する油温計とを設けて、前記制御手段が、前記回転計により検出されるエンジン回転数と前記油温計により検出される油温とを加味して前記設定時間を設定変更するように構成してある請求項1記載の作業車の変速操作構造。
- 後輪の回転数を検出する回転センサを備え、前記制御装置が、前記回転センサにより検出される前記後輪の回転数に基づいて走行速度を算出するとともに、前記油圧クラッチの切り作動時に低下する走行速度の変化から走行負荷を検知し、この走行負荷に基づいて前記設定時間の経過後における前記弁機構の開度を調節して、前記設定時間の経過後に前記油圧クラッチを徐々に昇圧させる際の昇圧特性を変更するように構成してある請求項1〜6のいずれか一つに記載の作業車の変速操作構造。
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