JP3618091B2 - 塩素含有重合体用複合安定剤粒子及び該樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非鉛系の塩素含有重合体配合剤とそれを含有して成る塩素含有樹脂組成物に関する。より詳細には、非鉛系無機安定剤、炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸亜鉛及び多価アルコール乃至そのエステルを主成分とする複合安定剤粒子から成り、樹脂に対する分散性、熱安定性及び初期着色性に優れた塩素含有重合体用複合安定剤粒子とそれを含有してなる塩素含有重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル樹脂の如き塩素含有重合体は、高温において脱塩化水素反応による重合体の着色・劣化を生じ、これを防止するために熱安定剤の配合が必要となる。また、塩化ビニル樹脂を可塑化混練するには、滑剤、可塑剤等の配合が必要となる。
【0003】
これらの配合剤は、用いる樹脂中に均一且つ一様な分散を行わせるには、微細な粉末の形で使用しなければならない。塩素含有重合体に対するこれらの配合剤粉末の数種をブレンドした所謂ワンパッケージ配合剤は、各配合剤成分を樹脂への練り込みに際して個別に計量する必要がないという利点を有しているが、配合剤粉末が、その取り扱い中に容易に飛散して、作業環境や生活環境を汚染すること等の欠点を有している。
また最近は、高温領域で成形加工を行うことが多くなっており、加工時に耐熱安定性を持ち、作業時及び使用面から無毒性の物が一層求められている。
【0004】
上記粉末飛散の欠点を防止するため、塩素含有重合体に対するワンパッケージ配合剤を粒状化する方法としては、例えば、特公昭42−11491号公報には、脂肪酸鉛の単独又はその混合物に同量以上の無機鉛系安定剤の単独またはその混合物を加え、湿式にて混合して重質な複合体となし、濾過、乾燥後、粉砕又は造粒するか或いは濾過することなく噴霧乾燥により小粒状として製品とする事を特徴とする塩化ビニル樹脂用配合剤の製造法が記載されている。
【0005】
また、特公昭48−3701号公報には、塩素含有樹脂の加工温度では溶融しない安定剤の40ミクロン以下の粉末と、塩素含有樹脂の加工温度で溶融する安定剤との混合物を加熱して溶融し、この溶融混合物を加熱した雰囲気中にある回転円板上に落下させ、かくして円板の遠心力によって溶融物を円板から飛散せしめて球形の粒子とし、その粒子の大きさを実質的に70乃至200ミクロンとすることを特徴とする、塩素含有樹脂用球状安定剤の製造方法が記載されている。
【0006】
特公昭49−15950号公報には、塩化ビニル系樹脂用安定剤として使用される可溶融性金属石鹸と難融性安定剤との混合安定剤を溶融噴霧造粒するに際し、まず両者を粉末のまま混合し、次いでこれを半融ペレットとし、それを押出機によって溶融押出して噴霧造粒装置の噴霧ノズルまたは回転円板に供給することを特徴とする噴霧造粒法における原料供給方法が記載されている。
【0007】
更に、特公昭55−20738号公報には、塩化ビニル樹脂の加工温度で以下で溶融する粉末状金属石けんと、該加工温度以下では溶融しない粉末状安定剤及び必要に応じ充填剤を1000rpm以上の超高速度ミキサーを用いて混合し、衝撃と摩擦により発生する熱によって溶融流動体となし、これを加圧下で空冷室内に噴射して粒状化することを特徴とする複合安定剤の製造方法が記載されている。
【0008】
更にまた、特開平6−254845号公報には、塩素含有重合体に対する熱安定剤粉末と、該熱安定剤よりも低い融点乃至軟化点を有する有機配合剤の粉末とを、熱安定剤粉末100重量部当たり有機配合剤が2乃至60重量部となる割合で、有機配合剤の融点乃至軟化点よりも低い温度で均密に混合し、この混合物を有機配合剤の融点乃至軟化点以上の温度に剪断力が作用しない条件下に加熱し、互いに独立した多数の貫通孔を有する環状目皿板の内面側に加熱された混合物を供給し、該目皿板内面側を回転するローラと接触させて、前記貫通孔内に混合物を充填させると共に、貫通孔の外面から粒状物を抽出することを特徴とする塩素含有重合体用粒状安定剤の製法が記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記の造粒方法により得られる安定剤は、金属石鹸の溶融相に粉末安定剤が分散したデンスでしかも機械的強度の大きい粒体であり、樹脂との混練に際しては、金属石鹸が樹脂中に溶融分散するにつれて、はじめて粉末安定剤の樹脂中への分散が可能となるものである。このため、ニーダー・ロール或いは押出機のような混練装置内で長時間にわたって混練操作を続けなければ、満足すべき樹脂中への分散が得られず、樹脂成形品の生産性や製造コストの点で欠点が認められる。また、金属石鹸等の有機配合剤はその融点以上の高温に比較的長時間加熱されることに伴って、この有機配合剤は、所謂「焼け」等の熱劣化を受けやすく、これにより有機配合剤の本来の性能が低下する場合がある。
【0010】
また、従来の複合タイプの塩素含有重合体用粒状安定剤は、上記の問題に加えて、粒状にすることにより、本来の複合安定剤における熱安定化作用が、混合粉末のものよりもどうしても低下する傾向があるという問題がある。
即ち、本発明者らの塩素含有重合体用安定剤に関する長年の研究履歴によると、複合安定剤の成分及び組成が同一である場合、熱安定性については混合粉末の場合に最も高く、粒状物の場合には程度の差はあれ、低下する傾向が認められる。
かくして、塩素含有重合体用粒状安定剤の分野においては、粉末複合安定剤よりも熱安定性に優れている粒子状複合安定剤の出現が大いに望まれている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来の粒状の塩素含有重合体用複合安定剤に比しては勿論のこと、粉末の複合安定剤に比して優れた熱安定作用を示す塩素含有重合体用複合安定剤粒子を提供するにある。
本発明の他の目的は、上記の優れた熱安定作用及び樹脂への分散性を示し、その粒子の大きさが3乃至50μmである塩素含有重合体用粒状安定剤を高い収率で製造できる塩素含有重合体用複合安定剤粒子の製造方法を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、非鉛系無機安定剤粒子の集合体からなるコアと、この非鉛系無機安定剤の集合体を覆うモノペンタエリスリトール凝集体のシェルから成り、且つ炭素数Cが8〜22の脂肪酸或いは脂肪酸塩を含み、3乃至50μmの大きさを有していることを特徴とする塩素含有重合体用複合安定剤粒子が提供される。
本発明によれば、また、非鉛系無機安定剤粒子と、ジペンタエリスリトール粒子及び炭素数Cが8〜22の脂肪酸或いは脂肪酸塩を含む複数個の微細球状体との凝集体から成り、3乃至50μmの大きさを有していることを特徴とする塩素含有重合体用複合安定剤粒子が提供される。
本発明においては、
1.前記非鉛系無機安定剤が、A型ゼオライトから成ること、
2.前記脂肪酸塩が、ステアリン酸亜鉛から成ること、
が好ましい。
【0013】
本発明によれば、さらに、塩素含有重合体100重量部当たり、前記の塩素含有重合体用複合安定剤粒子を0.1乃至10重量部含有して成る塩素含有重合体組成物が提供される。
【0014】
【発明の実施形態】
本発明の塩素含有重合体用複合安定剤粒子は、(A)非鉛系無機安定剤、(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩及び(C)多価アルコール(モノペンタエリスリトール或いはジペンタエリスリトール)を主成分とする安定剤を水分の存在下で摩砕混合した後、噴霧造粒して得られ、その粒子の大きさが3乃至50μmである。
【0015】
すなわち、本発明の塩素含有重合体用複合安定剤粒子は、以下のようにして製造される。
最初に(A)非鉛系無機安定剤、(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩及び(C)多価アルコールを主成分とする安定剤を水分の存在下で10℃乃至95℃、好ましくは30℃乃至80℃の温度で摩砕混合する。ここでは、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合したときに乳化し、水になじむ混合層を形成することが重要である。
この乳化をスムーズに行うためには(A)非鉛系無機安定剤がナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を含有しているものが好ましく、非鉛系無機安定剤にアルカリ金属を含まないものを使用するときは、摩砕混合時アルカリ金属を添加することにより乳化させることができる
次に(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合したスラリーを100℃乃至300℃、好ましくは150℃乃至250℃の雰囲気中に、噴霧し造粒して3乃至50μmの球状複合粒子を得ることができる。
【0016】
その代表的な一例として、(A)成分の非鉛系無機安定剤としてA型ゼオライト、(B)成分としてステアリン酸亜鉛を使用し、
(1)(C)多価アルコールとしてモノペンタエリスリトールを使用した場合は、図1に示す電子顕微鏡写真からA型ゼオライト粒子の集合体から成るコアと、このA型ゼオライトの集合体を覆うモノペンタエリスリトール凝集体のシェルから成る安定剤粒子が得られる(後述の実施例1)。
(2)次に、(C)多価アルコールとしてジペンタエリスリトールを使用した場合は、図2及び3に示す電子顕微鏡写真からA型ゼオライト粒子と、ジペンタエリスリトール粒子及びステアリン酸亜鉛を含む複数個の微細球状体から成る凝集体が得られる(後述の実施例2)。
(3)更に、(C)多価アルコールとしてモノペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールを使用した場合は、図4に示す電子顕微鏡写真からA型ゼオライト粒子の集合体から成るコアと、このA型ゼオライトの集合体を覆うモノペンタエリスリトール凝集体のシェルから成る安定剤粒子が得られる(後述の実施例3)。
【0017】
上記の場合、A型ゼオライトとしてNa−A型ゼオライトを使用し、炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩としては、ステアリン酸亜鉛を使用することが良い。一般にステアリン酸亜鉛は撥水性であり水にはなじまないがNa−A型ゼオライトと共存させることにより、水とよくなじみ均一な混合相を形成する。これは、ステアリン酸亜鉛の一部がゼオライトのナトリウム分と反応し石鹸化し、乳化したものと考えられる。
【0018】
また、(A)非鉛系無機安定剤、(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩及び(C)多価アルコールを主成分とする安定剤を水分の存在下で摩砕混合(湿式粉砕)することにより、(A)及び(C)成分が微細化され、それに(B)成分が介在する。これにより、塩素含有重合体に配合したときに分散性と熱安定性が良好な複合安定剤粒子が得られる。
【0019】
一般に、湿式粉砕のような摩砕処理し得られたスラリーを濾過・乾燥して得られたものは非常に固く粉砕が必要となる。しかし本発明においては、摩砕混合した後、噴霧造粒することにより粒子状の安定剤が得られ粉砕工程が必ずしも必要ではない。また、本発明の安定剤は粒子状であるため粉塵の発生も少なくハンドリングに優れている。
【0020】
本発明の塩素含有重合体用複合安定剤粒子の、(A)非鉛系無機安定剤、(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩及び(C)多価アルコールのそれぞれの成分は周知なものであるが、この三成分を組合わせることにより熱安定性が向上し、更にこれら三成分を(A)成分が30乃至60重量%、(B)成分が5乃至30重量%及び(C)成分が30乃至60重量%の割合で複合化することにより、熱安定性、分散性が予想外に向上する。
【0021】
本発明に用いる(A)非鉛系無機安定剤としてゼオライト等のアルミノケイ酸金属塩を使用すると、延長された熱安定性と持続した塩化水素補足能を有するが、暖色系の初期着色傾向を有している。
この初期着色傾向を無彩化して緩和するために、寒色系の初期着色を有する安定剤、特に亜鉛系化合物を使用することが好ましく、(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸の亜鉛塩が好適に使用される。次に(C)多価アルコールは、(A)及び(B)成分と共に配合することにより熱安定性を更に延長し、塩化水素補足性をさらに持続し、亜鉛バーニングの発生をより遅延させることができる。
本発明では湿式粉砕のような摩砕処理をすることにより、ゼオライトの粒子が微粉砕され、後述する実施例11に示すように、ゼオライトを単なる混合で使用した比較例2に比べ一層熱安定性が向上し、亜鉛化合物を用いた場合には、亜鉛バーニングを著しく遅延させることができるという利点もある。
【0022】
摩砕処理は、それ自体公知の摩砕混合機を用いて行うことができ、例えば、振動ボールミル、回転ボールミルなどが単独或いは組合せで使用されるが、勿論例示したものに限定されない。
【0023】
また、本発明の塩素含有重合体組成物は、塩素含有重合体100重量部当たり、前述した塩素含有重合体用複合安定剤粒子を0.1乃至10重量部、好ましくは0.2乃至5重量部含有して成る。
【0024】
(A)非鉛系無機安定剤:
本発明の(A)非鉛系無機安定剤としては、ゼオライト等のアルミノケイ酸金属塩、ケイ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、合成層状ケイ酸マグネシウム、タルク、ハイドロタルサイト、アルカリアルミニウム複合水酸化物塩、アルカリアルミニウム複合水酸化物炭酸塩、複合金属多塩基性塩等が挙げられ、これらを単独もしくは2種以上混合して用いても良い。好ましくは、A型ゼオライトが使用される。
【0025】
[アルミノケイ酸金属塩]
アルミノケイ酸金属塩としては、層状アルミノケイ酸塩、特に各種粘土鉱物や、テクトケイ酸塩、ゼオライトが挙げられる。
ゼオライトとしては、天然、合成に限定されず、例えば、A型、X型、Y型、Pc型、L型ゼオライト等や、アナルサイム、チャバサイト、モルデナイト、エリオナイト、クリノプチロライトが使用され、当然Ca,Zn,Mg,Sn,Ti,Pb等のイオンでイオン交換されたものも使用できる。一般に、A型ゼオライトのカチオン交換容量は、400乃至550meq/100g、Y型ゼオライトで約370meq/100g、X型ゼオラオトで約470meq/100g程度である。特にA型ゼオライト、好ましくはNa−A型ゼオライトが使用される。
【0026】
[ケイ酸カルシウム]
ケイ酸カルシウムとしては、トバモライト、ゾノトライト等が挙げられ、中でも微結晶カルシウムシリケートが好ましい。
【0027】
微結晶カルシウムシリケートは、一般に40μm以上の粒度のものが全体の10重量%以下で且つ20μm以下の粒度のものが全体の50重量%以上であるような粒度分布を有していることが、塩素含有重合体への均一な分散と熱安定化効果の点で好ましい。また、この微結晶カルシウムシリケートは、上記の粒子構造に関連して、60乃至200m2 /g、特に70乃至150m2 /gの比較的大きな比表面積、0.5ml/g以上、特に1.0乃至4.0ml/gの細孔容積、及び50乃至250ml/100g、特に80乃至200ml/100gの吸油量を有している。
【0028】
この微結晶カルシウムシリケートは、非晶質の活性ケイ酸を石灰乳中で微粉砕することにより製造できるが、勿論この製造法に限定されない。
【0029】
[ハイドロタルサイト]
ハイドロタルサイトは、炭酸アルミニウムマグネシウム水酸化物に属する合成鉱物であり、一般式(1)
M2 x M3 y(OH)2x+3y−2z(A2−)z・aH2O ‥(1)
式中、M2 はMg等の2価金属イオンであり、M3 はAl等の3価金属イオンであり、A2−はCO3 等の2価アニオンであり、
x,y及びzは8≧x/y ≧1/4 およびz/(x+y)>1/20を満足する正数であり、
aは0.25≦a/(x+y)≦1.0 を満足する数である。
を有する複合金属水酸化物が使用される。
【0030】
これらの複合金属水酸化物の内、式(2)
Mg6 Al2(OH)16(CO3)・4H2O ‥(2)
で表わされる化合物は、ハイドロタルサイトとして知られる天然鉱物であり、この鉱物及び同族類は、協和化学工業株式会社の出願に係る特公昭47−32198号、特公昭48−29477号及び特公昭48−29478号公報記載の方法等により合成されるものである。
【0031】
これらのハイドロタルサイト類、特に式(3)
Mg4.5 Al2(OH)13(CO3)・3H2O ‥(3)
で示される化合物が塩素イオンの捕捉性能に優れていることも既に知られており、このものを本発明の(D)として用いることもできる。
【0032】
これらのハイドロタルサイト類が水に十分に分散された状態において容易にイオン交換されるという特性、即ち炭酸イオンが他のアニオンでイオン交換されるという性質を利用して、過ハロゲン酸素酸イオンを導入したものを用いることもできる。
【0033】
[リチウム・アルミニウム水酸化物炭酸塩]
リチウム・アルミニウム複合水酸化物炭酸塩(LAHCS)は、ギブサイト構造の水酸化アルミニウム八面体層の空位(ベーカント)にリチウムイオンが入り込み、その電荷を補うためにアニオンが組み込まれたものとされている。即ち、リチウムイオンはカチオンの中でイオン半径が最も小さく、しかも1価イオンとしては例外的に6配位イオンであるため上記空位に入り、上記構造をとるものと認められる。
【0034】
リチウム・アルミニウム水酸化物炭酸塩は、下記式(4)、
mAl2O3・nM2O・X・kH2O ‥‥(4)
式中、Xは炭酸根を主体とする無機のアニオンであり、
Mはリチウムを主体とするアルカリ金属であり、
mは1.5乃至2.5の数であり、
nは0.1乃至1の数であり、kは0乃至10の数である、
で表される組成を有ずる。
【0035】
また、リチウム・アルミニウム水酸化物炭酸塩粒子は、レーザー散乱回折法で測定して、一般に0.1乃至10μm、特に0.1乃至3μmの体積基準メジアン径(D50)を有していること、JIS K6721で測定して、0.1乃至0.35g/cm3 、特に0.25乃至0.35g/cm3 の嵩密度を有すること、10乃至70m2 /gのBET比表面積を有すること、吸油量も40乃至70ml/100gと小さいことが好ましい。
【0036】
上記リチウム・アルミニウム水酸化物炭酸塩は、勿論これに限定されるものではないが、非晶質乃至擬ベーマイト型の水和アルミナゲルと、リチウムの炭酸塩または重炭酸塩とを、水性媒体中で、アルミナ(Al2O3)としての濃度が1乃至5重量%となり且つ反応終結時のpHが7乃至11となる条件下に反応させる方法(以下単に水和アルミナゲル法と呼ぶことがある)により、或いは、ギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子と、炭酸のリチウム塩または炭酸イオン及びリチウムイオンを形成し得るリチウム化合物と炭酸塩との組合せとを水の存在下に反応させる方法、即ちマイグレーション法により製造される。
【0037】
また、本発明に用いるアルカリアルミニウム水酸化物炭酸塩としては、ドーソナイト型のナトリウム・アルミニウム水酸化物炭酸塩も挙げられ、単独としてはもちろん、リチウム・アルミニウム水酸化物炭酸塩との混晶にしても用いることができる。
【0038】
(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩:
本発明の(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩、特に14乃至18の飽和乃至不飽和脂肪酸の金属石鹸としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、亜鉛塩等が使用される。これらは単独でも2種以上の組合せでも使用でき、中でも、亜鉛塩が好適である。
金属石鹸の脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が使用される。中でも、ステアリン酸が好適なものである。脂肪酸は勿論牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の混合脂肪酸であってもよい。
【0039】
特に、亜鉛塩が好ましいのは、一般に上記に挙げたゼオライト等のアルミノケイ酸金属塩、ケイ酸カルシウム等の非鉛系無機安定剤は、延長化された熱安定性と持続した塩化水素捕捉性を有するが、暖色系の初期着色傾向を有しているため、この初期着色傾向を無彩化して緩和するために、寒色系の初期着色傾向を有することから、着色傾向を抑制した複合安定剤粒子が得られるためである。尚、亜鉛塩以外のものを使用した場合は、樹脂配合時に亜鉛系化合物及び/又は過塩素酸塩系化合物を加えることにより着色を抑制できる。
【0040】
(C)多価アルコール:
本発明において、(C)多価アルコールとしては、モノペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールが使用される。これらを併用することもできる。
【0041】
その他の配合剤:
本発明の塩素含有重合体組成物には、それ自体公知の塩素含有重合体用配合剤をそれ自体公知の処方に従って、配合することができる。例えば、本発明の組成物には、可塑剤、滑剤、充填剤、着色剤、耐候安定剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、衝撃強化剤、改質用樹脂乃至ゴム、塩基性無機金属塩、過塩素酸塩、エポキシ化合物、帯電防止剤、脂肪酸エステル、スズ系等の公知の安定剤等、抗菌剤、着色剤、キレート化剤、酸化防止剤等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
また、初期着色や亜鉛バーニングを防止するために、更にβ−ジケトン、β−ケト酸エステル、過塩素酸、過塩素酸塩又はジヒドロピリジン誘導体を配合することができる。
【0042】
[塩素含有重合体組成物]
塩素含有重合体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩素化ビニル−塩化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、内部可塑化ポリ塩化ビニル等の重合体、及びこれらの塩素含有重合体とポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−3−メチルブテンなどのα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、などのポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレンと他の単量体(例えば無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体とのブレンド品などを挙げることができる。
【0043】
本発明の塩素含有重合体組成物成形加工方法としては、公知の方法によって混合あるいは混和したのち押出成形、射出成形、圧縮成形、インフレーション、カレンダー加工、コーティングなど各種の成形方法により行うことができる。
また、本発明における無酸素成形法においてはできるだけ空気と接触しないような雰囲気で行うか、更には不活性ガス雰囲気で行うことにより、着色を防止することができる。
【0044】
【実施例】
本発明を次の実施例により、更に詳しく説明する。尚、試験方法は次の方法によった。
【0045】
(測定方法)
(1)平均粒径
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で得られた写真像から、代表的な粒子を選んで、粒径を測定した。
【0046】
(2)ギアオーブン耐熱試験(静的熱安定性)(硬質用)
下記配合1に示す組成物を温度160℃、3分間ロールミルで混練を行い、厚さ1mmの均一な硬質塩化ビニルシートを作成し、その後185℃に設定したギアオーブンに試験片を入れ、黒化時間を測定した。
(配合1)
塩化ビニル樹脂(重合度=1050) 100部
配合試料(表参照) 2.7部
【0047】
(3)ギアオーブン耐熱試験(静的熱安定性)(軟質用)
下記配合2に示す組成物を温度150℃、5分間ロールミルで混練を行い、厚さ1mmの均一な軟質塩化ビニルシートを作成し、その後185℃に設定したギアオーブンに試験片を入れ、黒化時間を測定した。
(配合2)
塩化ビニル樹脂(重合度=1050) 100部
ジ・2−エチルヘキシル・フタレート 50部
配合試料(表参照) 2.7部
【0048】
(4)熱安定性試験(H.T.塩素捕捉能)
JIS.K.6723に準拠し、上記配合2の軟質塩化ビニルシートを1mm×1mmに裁断し、コンゴーレッド紙を装着した試験管に試料チップ2gを充填、180℃に加熱し、塩化ビニルの熱分解による塩化水素脱離時間を測定した。
【0049】
実施例に用いた非鉛系無機安定剤として、以下の物を用いた。
[アルミノケイ酸金属塩]
4Aゼオライト(水澤化学製ミズカライザーDS)
平均粒径:2.15μm
[珪酸カルシウム]
微結晶カルシウムシリケート(水澤化学製)
化学組成:CaO・1.25SiO2・0.58H2O
平均粒径:4μm
【0050】
(実施例1〜5)
表1に示した割合で各物質を水を加えて50℃で、摩砕混合を行った後、噴霧造粒を行い、複合安定剤粒子を得た。なお、各試料は表1に示したような試料名とする。また、試料S−1のSEM写真を図1に、試料S−2のSEM写真を図2及び3に、試料S−3のSEM写真を図4にそれぞれ示す。
【0051】
【表1】
【0052】
(実施例6〜10、比較例1)
表2に示した割合で配合し、ギアオーブン耐熱試験(硬質用)の測定を行った。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
(実施例11〜13、比較例2〜4)
表3に示した割合で配合し、ギアオーブン耐熱試験(軟質用)及び塩素捕捉能の測定を行った。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、(A)非鉛系無機安定剤、(B)炭素数Cが8〜22から成る脂肪酸或いは脂肪酸塩及び(C)多価アルコール乃至そのエステルを主成分とする安定剤を水分の存在下で摩砕混合した後、噴霧造粒して得られ、その粒子の大きさが3乃至50μmである塩素含有重合体用複合安定剤粒子を生成することに成功した。
また、該複合安定剤粒子を塩素含有重合体樹脂に配合することで、従来の粒状の塩素含有重合体用複合安定剤に比しては勿論のこと、粉末の複合安定剤に比して優れた熱安定作用を示した。
また、本発明によれば、上記の塩素含有重合体用粒状安定剤を高い収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた、本発明による塩素含有重合体用複合安定剤粒子のSEM写真(倍率:2000倍)である。
【図2】実施例2で得られた、本発明による塩素含有重合体用複合安定剤粒子のSEM写真(倍率:2000倍)である。
【図3】実施例2で得られた、本発明による塩素含有重合体用複合安定剤粒子のSEM写真(倍率:10000倍)である。
【図4】実施例3で得られた、本発明による塩素含有重合体用複合安定剤粒子のSEM写真(倍率:2000倍)である。
Claims (5)
- 非鉛系無機安定剤粒子の集合体からなるコアと、この非鉛系無機安定剤の集合体を覆うモノペンタエリスリトール凝集体のシェルから成り、且つ炭素数Cが8〜22の脂肪酸或いは脂肪酸塩を含み、3乃至50μmの大きさを有していることを特徴とする塩素含有重合体用複合安定剤粒子。
- 非鉛系無機安定剤粒子と、ジペンタエリスリトール粒子及び炭素数Cが8〜22の脂肪酸或いは脂肪酸塩を含む複数個の微細球状体との凝集体から成り、3乃至50μmの大きさを有していることを特徴とする塩素含有重合体用複合安定剤粒子。
- 前記非鉛系無機安定剤が、A型ゼオライトである請求項1または2に記載の塩素含有重合体用複合安定剤粒子。
- 前記脂肪酸塩が、ステアリン酸亜鉛である請求項1乃至3の何れかに記載の塩素含有重合体用複合安定剤粒子。
- 塩素含有重合体100重量部当たり、請求項1または2に記載の塩素含有重合体用複合安定剤粒子を0.1乃至10重量部含有して成る塩素含有重合体組成物。
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