JP3617688B2 - β−N−アセチルグルコサミニダーゼ - Google Patents

β−N−アセチルグルコサミニダーゼ Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、糖質の非還元末端のβ−N−アセチルグルコサミニド結合を加水分解するが、β−N−アセチルガラクトサミニド結合は加水分解しないエキソグリコシダーゼである、β−N−アセチルグルコサミニダーゼおよびその生産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
β−N−アセチルグルコサミニド結合を含む糖鎖は、生体内の糖脂質および糖タンパク質に多く存在している。このような糖鎖は、近年の研究によって、生体内で重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあり、それに伴ってより簡便で正確な糖鎖の構造解析方法が望まれている。このような糖鎖の構造解析方法として、エキソグリコシダーゼを利用する方法が有望である(Pauline Rudd(小西憲治訳)、化学と生物、Vol.32、661頁、(1994);佐野睦、宮村毅、「BIO VIEW」、No.13、13頁、宝酒造刊(1994))。
【0003】
この方法は、エキソグリコシダーゼの基質特異性を利用したものであり、例えば、構造不明の糖鎖にβ−ガラクトシダーゼを加えて加水分解させた後、糖鎖からの単糖の遊離および/または基質糖鎖の構造変化に着目し、これらを確認することによって、糖鎖(オリゴ糖)の非還元末端におけるβ−ガラクトシド結合の存在を判定するものである。
【0004】
ところで、β−N−アセチルグルコサミニド結合に作用することが従来から知られているエキソグリコシダーゼはいずれも、β−N−アセチルグルコサミニド結合のほかにβ−N−アセチルガラクトサミニド結合に対しても作用することが知られている。
【0005】
従って、これらの酵素はβ−N−アセチルヘキソサミニダーゼ(EC3.2.1.52)と命名され、オリゴ糖、配糖体糖鎖等の糖質から非還元末端にβグリコシド結合しているN−アセチル−D−グルコサミンおよびN−アセチル−D−ガラクトサミンを遊離させる反応を触媒することで特徴付けられている(生化学辞典第2版、29〜30頁、東京化学同人刊、(1990))。上記酵素であって、β−N−アセチルグルコサミニド結合のみに作用する酵素の存在は、これまで否定されてきた(J.A.Cabezas、Biochem. J.、Vol.261、1059〜1060頁、(1989);「ENZYME NOMENCLATURE 1992」、350頁、Academic Press刊(San Diego))。
【0006】
β−N−アセチルガラクトサミニド結合は、β−N−アセチルグルコサミニド結合同様、糖脂質、および糖タンパク質中に存在している。従って、上記糖鎖構造解析方法に従来から知られているβ−N−アセチルヘキソサミニダーゼを用いる場合は、該酵素反応後、基質糖鎖からの単糖の遊離および/または基質糖鎖の構造変化を確認する工程の他に、基質糖鎖の非還元末端がN−アセチル−D−グルコサミンであるのかまたはN−アセチル−D−ガラクトサミンであるのかを決定するための煩雑な分析工程をさらに付加させねばならないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、糖質の非還元末端のβ−N−アセチルグルコサミニド結合を加水分解するが、β−N−アセチルガラクトサミニド結合は加水分解しないエキソグリコシダーゼである、β−N−アセチルグルコサミニダーゼおよびその生産方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、グラム陽性細菌であるバシラス(Bacillus)属に属する、新たに単離した菌株から、オリゴ糖、配糖体糖鎖などの糖質の非還元末端のβ−N−アセチルグルコサミニド結合を加水分解して、N−アセチル−D−グルコサミンを遊離させるが、糖質の非還元末端のβ−N−アセチルガラクトサミニド結合にはまったく作用せず、従ってN−アセチル−D−ガラクトサミンを遊離させないエキソグリコシダーゼである、β−N−アセチルグルコサミニダーゼを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ(以下、本β−N−アセチルグルコサミニダーゼまたは本酵素という)は、オリゴ糖および配糖体糖鎖などの糖質から非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−グルコサミンを遊離させるが、非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−ガラクトサミンは遊離させないことを特徴とするエキソグリコシダーゼである。このことによって、上記目的が達成される。
【0010】
本発明の好ましいβ−N−アセチルグルコサミニダーゼは、次の特性をさらに有する。
▲1▼.至適pH:5.0である。
▲2▼.安定pH範囲:37℃で1時間保持する場合において、pH4.5〜9.5である。
▲3▼.作用適温の範囲:至適温度は50℃である。
▲4▼.熱安定性:pH8.0で30分間保持した場合に45℃まで安定である。
▲5▼.ゲル濾過クロマトグラフィーにおける分子量:約180,000である。
▲6▼.等電点電気泳動における等電点:4.8である。
本β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、バシラス属の細菌により生産される。特に好ましいバシラス属細菌は、平成7年3月2日に工業技術院生命工学工業技術研究所(生命研と略称する)に寄託したバシラス・メガテリウムAT188(Bacillus megaterium AT188)株(生命研菌寄第14793号;FERM P−14793)である。
【0011】
本β−N−アセチルグルコサミニダーゼの生産方法は、本β−N−アセチルグルコサミニダーゼを生産するバシラス属細菌を培養する工程、および、該培養工程により得られた培養物より、本β−N−アセチルグルコサミニダーゼを採取する工程を包含する。このことによって、上記目的が達成される。
【0012】
本β−N−アセチルグルコサミニダーゼの好ましい生産方法は、上記バシラス・メガテリウムAT188株を用いる方法である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、バシラス属の細菌、特にバシラス・メガテリウムAT188株(生命研菌寄第14793号;FERM P−14793)(以下、本菌という)により生産される。本菌は、本発明者らが滋賀県甲賀郡甲西町内の土壌から分離した菌である。本菌の菌学的性質を次に示す。
【0015】
(a)形態および生理学的性質
本菌を培養した結果を以下の表1〜表3に示す。ここで特に記載のない限り、培養温度は37℃である。本菌の菌学的形態は、肉汁寒天培地上での培養により調べた。
【0016】
【表1】
Figure 0003617688
【0017】
【表2】
Figure 0003617688
【0018】
【表3】
Figure 0003617688
【0019】
表1〜表3に示した菌学的性質をもとに、Bergy’s Manual of Systematic Bacteriology第2巻(Williams and Wilkins, Baltimore, 1986)を参照して、本菌はバシラス・メガテリウムに属する菌株であることが判明した。本発明者らは本菌株をバシラス・メガテリウムAT188と命名した。
【0020】
以下、本菌から本β−N−アセチルグルコサミニダーゼを生産および採取するための条件について説明する。
【0021】
(b)培養条件
本菌の培養条件は特に限定されず、通常の液体培地または固体培地が用いられる。炭素源としては、各種の糖類が用いられ、グルコース、ショ糖、糖蜜等が好ましく使用され得る。窒素源としては、ペプトン、酵母エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー、カゼイン、肉エキス、アミノ酸などが用いられるがこれらに限定されない。上記炭素源および窒素源の他、各種の無機塩類(例えばマグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩)およびビタミン類などが必要に応じて添加され得る。本菌の生育好適pHは6〜8であるがこれに限定されない。
【0022】
本菌の培養温度は本菌が生育できる温度であれば特に制限はないが、培養温度20℃〜46℃が好ましく、特に37℃が好ましい。液体培養の場合は、通常24時間〜72時間、好気的に撹拌または振盪しながら培養を行う。培養過程における菌体増殖経時変化は、例えば、培養懸濁液の濁度変化(通常はO.D.660の計測)をモニターして、知り得る。
【0023】
本β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、主として菌体外に分泌される。
【0024】
(c)β−N−アセチルグルコサミニダーゼの採取方法
上記培養液から本発明の酵素を採取、精製するには、既知の精製法が単独もしくは併用して利用され得る。例えば、培養液を濾過または遠心分離することにより培養液中の菌体を除き、得られた上清液を、硫安、芒硝などによる塩析、またはメタノール、エタノール、アセトンなどの有機溶媒による沈澱などに供することによって分画、濃縮し、本β−N−アセチルグルコサミニダーゼを含有する粗酵素液が得られる。この粗酵素液は、さらにイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、および/またはその他の各種クロマトグラフィーを行うことにより精製され得る。好ましい精製法の概要を以下に示す。
【0025】
(1).培養液を遠心分離して菌体を除去し、上清液を得る。
(2).次いで、得られた上清液を硫安(50%〜70%飽和溶液)で塩析する。
(3).次いで、得られた塩析液をpH4.5の酢酸バッファーで透析し、CM−トヨパールカラムクロマトグラフィーにかける。
(4).上記(3)で得られた活性画分をpH8.0のトリス−塩酸バッファーで透析し、次いで、QAE−トヨパールカラムクロマトグラフィーにかける。
(5).上記(4)で得られた活性画分を限外濾過膜で濃縮し、次いで、セファクリルS−200カラムによるゲル濾過クロマトグラフィーにかける。
【0026】
(d)本β−N−アセチルグルコサミニダーゼの活性測定法
本明細書においては、本β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性は、パラニトロフェニル−β−N−アセチル−D−グルコサミニドを基質として用い、1分間に1マイクロモルのパラニトロフェノールを遊離させる酵素量を1単位(U)として測定する。具体的には本明細書においては、pH5.0の25mM酢酸バッファーに溶解させた2.5mMのパラニトロフェニル−β−N−アセチル−D−グルコサミニド溶液0.4mlに、0.1mlの試料溶液を加え、37℃で10分間反応させる。その後、2%炭酸ナトリウム溶液を2.5ml加えて反応を停止させ、反応液の波長420nmにおける吸光度(パラニトロフェノールの遊離に伴って増加する)を測定する。
【0027】
【作用】
本発明のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼは、β−N−アセチル−D−グルコサミニド結合を特異的に加水分解するエキソグリコシダーゼである。そのため、オリゴ糖および配糖体糖鎖等の糖質の非還元末端がβ−N−アセチル−D−グルコサミニドのとき、該グリコシド結合を加水分解して、非還元末端からN−アセチル−D−グルコサミンを遊離させるが、その糖質の非還元末端がβ−N−アセチル−D−ガラクトサミニドのとき、本酵素は作用せず、遊離単糖も生じさせない。
【0028】
【実施例】
以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に説明するが、これらはなんら本発明を限定するものではない。
【0029】
実施例1
(酵素液の調製)
100mlの培地(0.25%ジ−N−アセチルキトビオース、0.5%ポリペプトン、0.25%酵母エキス、0.1%KHPO、および0.02%MgSO・7HO、pH7)を含有する500ml容振盪フラスコ47本に、バシラス・メガテリウムAT188を植菌し、37℃で2日間、往復振盪培養を行った。培養終了後、この培養液を回収し、10,000rpmで10分間遠心分離して菌体を除き、得られた培養上清中のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を上記(d)に記載の方法に準じて測定して、本酵素の活性が0.43U/mlである培養上清を3920ml得た。この培養上清に硫酸アンモニウムを50%飽和になるまで加えた。生じた沈澱を遠心分離して除き、得られた上清にさらに70%飽和になるまで硫酸アンモニウムを加えた。生じた沈澱を遠心分離して回収した。この沈澱をpH6.0、25mMの酢酸バッファーに溶解し、次いでpH5.0、50mMの酢酸バッファーで透析した。以上の操作により、本酵素活性が33.2U/mlである酵素液を39.5ml得た。
【0030】
実施例2
(精製酵素標品の調製)
上記実施例1で得られた酵素液39.5mlを、pH4.5、25mMの酢酸バッファーでさらに透析した。この透析液を、pH4.5、25mMの酢酸バッファーで平衡化したCM−トヨパール650Mカラム(東ソー株式会社製)に吸着させ、0〜0.5Mの食塩濃度勾配をかけて溶出した。得られた本酵素画分をさらにpH8.0、50mMのトリス−塩酸バッファーで透析し、この透析液をpH8.0、50mMのトリス−塩酸バッファーで平衡化したQAE−トヨパール550Cカラム(東ソー株式会社製)に吸着させ、0〜0.5Mの食塩濃度勾配をかけて溶出した。得られた本酵素画分を次に限外濾過膜で濃縮し、この濃縮液を、pH8.0、50mMのトリス−塩酸バッファーで平衡化したセファクリルS−200カラム(ファルマシアバイオテク社製)にかけてさらに本酵素を精製した。 以上の操作により、実施例1で得られた培養上清3920ml(計1690U)から、収率14%で1360倍に精製された本β−N−アセチルグルコサミニダーゼ溶液を12ml(計238U)得た。本精製酵素の比活性は48.2U/mgであった。上記(c)に記載の(1)〜(5)に対応した本実施例1および2の各精製工程における酵素の精製度合いを、表4に示す。表中の活性値は、いずれも上記(d)に記載の測定方法に準じて測定した値である。
【0031】
【表4】
Figure 0003617688
【0032】
以下の実施例では、特に記載のない限り、上記実施例2で得られた酵素液を用いた。
【0033】
実施例3
(本酵素の基質特異性)
表5に示した各基質(パラニトロフェニル−β−N−アセチル−D−グルコサミニド、パラニトロフェニル−β−N−アセチル−D−ガラクトサミニド、パラニトロフェニル−β−D−ガラクトシド、パラニトロフェニル−β−D−グルコシド、パラニトロフェニル−β−D−マンノシド、パラニトロフェニル−α−D−ガラクトシド、パラニトロフェニル−α−D−グルコシド、パラニトロフェニル−α−L−フコシド、パラニトロフェニル−α−D−マンノシド)を25mMの酢酸バッファー(pH5.0)および25mMのリン酸バッファー(pH7.0)に溶解して作成した各基質の2.5mM溶液0.4mlに、実施例1で作成した本酵素活性が0.43U/mlである精製酵素液を0.1ml加えて、37℃で20時間反応させた。その後、2.5mlの2%炭酸ナトリウム溶液を加えて反応を停止した。得られた反応液における、遊離したパラニトロフェノールの増加に伴う波長420nmにおける吸光度の変化量を、上記酵素液の代わりにpH6.0、25mMの酢酸バッファーを加えたものをブランクテストとして測定した。結果を表5に示す。反応pH5.0およびpH7.0のいずれの条件下でも、使用したパラニトロフェニル−β−N−アセチル−D−グルコサミニド以外の基質では上記吸光度の増加は認められなかった。
【0034】
【表5】
Figure 0003617688
【0035】
種々のオリゴ糖基質に対する本酵素の反応性を比較した。表6に示した各種基質の0.2%溶液67.5μlに、40mMの酢酸バッファー(pH6.0)77.5μlおよび17.2U/mlの精製酵素液を5μl加えて、10〜240分間、37℃で反応させた。その後、反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、反応の結果生成されるN−アセチル−D−グルコサミンを定量した。結果を表6に示す。基質にGlcNAcβ1−6Galを用いた場合の酵素反応速度を100とした場合の相対反応速度(%)を示した。本酵素は、β−N−アセチルグルコサミニド結合におけるβ1−2、β1−3、β1−4およびβ1−6のいずれの結合様式にも反応した。
【0036】
【表6】
Figure 0003617688
【0037】
さらにまた、表7に示した種々のピリジルアミノ化糖鎖(宝酒造株式会社製)を基質として、それらに対する本酵素の反応性を比較した。ここで用いたピリジルアミノ化糖鎖は、還元末端を2−ピリジルアミンで修飾した糖鎖(オリゴ糖)である。2−ピリジルアミンは蛍光物質であり、本酵素の微量(ピコモル単位)分析に適する。
【0038】
2μlの10ピコモル/μlピリジルアミノ化糖鎖溶液に、6μlの25mM酢酸バッファー(pH5.0)および2μlの13U/ml精製酵素液を加え、37℃で16時間反応させた後、40μlの1%トリフルオロ酢酸を加えて反応を停止した。次いで、この反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析した。結果を表7に示す。非還元末端にβ−N−アセチルグルコサミニド結合を有する基質(1)〜(3)は、すべてのβ−N−アセチルグルコサミニド結合が完全に加水分解されたが、非還元末端にβ−N−アセチルガラクトサミニド結合を有する基質(4)および(5)は全く加水分解されなかった。
【0039】
【表7】
Figure 0003617688
【0040】
実施例4
(本酵素の至適pHおよび安定pH範囲)
(1)至適pH
50mMブリトン−ロビンソン広域緩衝液により、pHを3.0、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、および9.0に調整した以外は、上記(d)に記載の方法に準じて、各pHにおけるβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を測定した。結果を図1に示す。図中の横軸は反応pHを表し、縦軸は、得られた最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本酵素の至適pHは5.0であった。
【0041】
(2)安定pH範囲
90mMブリトン−ロビンソン広域緩衝液により、実施例1で得た酵素液のpHを3.0から11.0まで0.5間隔で調整し、37℃で1時間保持した後の本酵素の残存活性を上記(d)に記載の方法に準じて測定した。結果を図2に示す。図中の横軸は上記調整pHを表し、縦軸は、得られた最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。pHが4.5〜9.5の範囲で本酵素は安定であった。
【0042】
実施例5
(本酵素の作用適温の範囲および熱安定性)
(1)作用適温の範囲
種々の反応温度条件(30、37、40、45、50、55、60℃)下での本酵素活性を上記(d)に記載の方法に準じて測定した。結果を図3に示す。図中の横軸は反応温度(℃)を表し、縦軸は得られた最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本酵素の至適温度は50℃であった。
【0043】
(2)熱安定性
種々の温度条件(30、35、40、45、50、55、60℃)下、5mMの塩化カルシウムを含む37.5mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)中で、30分間保持した後の本酵素の残存活性を上記(d)に記載の方法に準じて測定した。結果を図4に示す。図中の横軸は反応温度(℃)を表し、縦軸は得られた最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本酵素は、pH8.0で30分間保持した場合、少なくとも45℃までは安定であった。処理温度条件が40℃の場合は、酵素活性は100%保持された。
【0044】
実施例6
(本酵素の分子量)
一般的なゲル濾過法(セファクリルS−200ゲル濾過クロマトグラフィー)を用いて、本酵素の分子量を測定した。本酵素を含む試料を実施例2に記載のセファクリルS−200カラムにかけ、次いで分子量既知の種々の標準試料を本酵素と同一条件でカラムにかけてゲル濾過し、それらの溶出位置と分子量の関係に基づいて分子量を測定した。図5に本酵素のセファクリルS−200カラムクロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。図中の横軸は上記カラムからの溶出液を分画回収したフラクション番号を表し、左側縦軸は回収した各フラクションの本酵素活性(U/ml;図中の●)、右側縦軸は各フラクションの280nm紫外吸光度(図中の○)を表す。図6に各標準試料の分子量(縦軸;×10)とKav値(横軸)の関係を示す。図6中のA、B、C、およびDは、それぞれウシ肝臓カタラーゼ(分子量232,000)、ウサギ筋肉アルドラーゼ(分子量158,000)、ウシ血清アルブミン(分子量67,000)、およびオボ(ニワトリ卵白)アルブミン(分子量43,000)を示す。Kav値は次式より求めた。
【0045】
Kav=([試料溶出体積]−[ボイド体積])/([カラム体積]−[ボイド体積])。
【0046】
ゲル濾過法(ゲル濾過クロマトグラフィー)により測定した本酵素の分子量は約180,000である。
【0047】
実施例7
(本酵素の等電点)
常法の等電点電気泳動法により本酵素の等電点を測定した。本酵素および等電点既知の種々の標準試料を同時に等電点電気泳動にかけ、その標準試料検出位置と等電点との関係に基づく検量線から、本酵素の等電点を測定した。本酵素の等電点は約4.8であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、糖質の非還元末端のβ−N−アセチルグルコサミニド結合を特異的に加水分解するβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ、およびその生産方法が提供される。
【0049】
本β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−グルコサミンを遊離させるが、非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−ガラクトサミンはまったく遊離させないので、構造解析が所望されるオリゴ糖および配糖体糖鎖の非還元末端のβ−N−アセチル−D−グルコサミンの存在の有無を容易に判定し得、糖鎖の構造決定に非常に有用である。本酵素は微生物の培養によって生産されるため、簡便な工程で大量にかつ安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】pH3.0〜9.0の範囲で本β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図2】本β−N−アセチルグルコサミニダーゼをpH3.0〜11.0の各条件下、37℃で1時間保持した後に測定した相対残存活性を示す。
【図3】30〜60℃の温度範囲で本β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図4】本β−N−アセチルグルコサミニダーゼを37.5mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)中、30〜60℃の各温度条件下で30分間保持した後に測定した相対残存活性を示す。
【図5】本酵素液のセファクリルS−200カラムによるゲル濾過クロマトグラフィーにおけるクロマトグラムを示す。
【図6】ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した本β−N−アセチルグルコサミニダーゼの分子量を示す。

Claims (4)

  1. 非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−グルコサミンを遊離させるが、非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−ガラクトサミンは遊離させないエキソグリコシダーゼであり、
    以下の特性:
    至適pH:5 . 0;
    安定pH範囲:37℃で1時間保持する場合において、pH4 . 5〜9 . 5;
    作用適温の範囲:至適温度は50℃である;
    熱安定性:pH8 . 0で30分間保持した場合に、45℃まで安定である;
    ゲル濾過クロマトグラフィーにおける分子量:180 , 000;および
    等電点電気泳動における等電点:4 . 8;
    を包含する、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ。
  2. バシラス属に属する細菌が生産する、請求項1に記載のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ。
  3. 非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−グルコサミンを遊離させるが、非還元末端にあるβ−グリコシド結合したN−アセチル−D−ガラクトサミンは遊離させないエキソグリコシダーゼであり、
    以下の特性:
    至適pH:5 . 0;
    安定pH範囲:37℃で1時間保持する場合において、pH4 . 5〜9 . 5;
    作用適温の範囲:至適温度は50℃である;
    熱安定性:pH8 . 0で30分間保持した場合に、45℃まで安定である;
    ゲル濾過クロマトグラフィーにおける分子量:180 , 000;および
    等電点電気泳動における等電点:4 . 8;
    を包含する、β−N−アセチルグルコサミニダーゼを生産する方法であって、以下の工程:
    (a)該β−N−アセチルグルコサミニダーゼを生産するバシラス属細菌を培養する工程;
    および
    (b)該培養工程(a)により得られた培養物より、該β−N−アセチルグルコサミニダーゼを採取する工程;
    を包含する、方法。
  4. 前記バシラス属細菌が、バシラス・メガテリウムAT188株(生命研菌寄第14793号)である、請求項に記載の方法。
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