JP3616633B2 - テトラキスフルオロフェニル硼酸塩の精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はテトラキスフェニル硼酸塩の製造方法の改良に関し、さらに詳しくは、α−オレフィンやスチレン系単量体などのオレフィンの重合用触媒成分、又は、その合成原料として有用なオレフィン重合活性に優れ、かつ高純度なテトラキスフェニル硼酸塩、特に、テトラキスフルオロフェニル硼酸塩を、単位溶媒当たりの生産量が多く、高収率で効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
α−オレフィン等のオレフィンの重合において、ジルコニウム化合物とアルミノキサンとからなる触媒が高い重合性を示すことが知られている(例えば、特許文献1参照。)が、この方法は高価なアルミノキサンを遷移金属化合物に対して高い比率で使用しなければ十分な活性を得ることができないという欠点があった。また、アルミノキサンはその製造において反応性の高いトリメチルアルミニウムと水とを反応させる必要があり、危険を伴なう上、その反応生成物から単一の物質を単離することが困難であり、物性の安定した製品を得るための触媒の管理が困難であった。
【0003】
これに対して、遷移金属化合物、配位錯化合物、及び有機アルミニウム化合物の反応生成物を主成分とする均一系重合触媒を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この配位錯化合物としては、遷移金属化合物と反応してイオン性錯体を形成しうる化合物が用いられ、このような配位錯化合物の中で代表的なものとして、テトラキスフェニル硼酸錯化合物が知られている。
このテトラキスフェニル硼酸錯化合物と遷移金属化合物との反応生成物を主成分とする均一系触媒は、アルミノキサン等の高価な成分を用いる必要がなく、また用いても少なくてすむため経済的であり、かつ種々の特性を有する重合体を効率よく与えるため、例えばα−オレフィンやスチレン系単量体などのオレフィンの重合触媒として、最近積極的な使用が試みられている。
【0004】
前記テトラキスフェニル硼酸錯化合物の合成原料としては、例えば、リチウム(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Li[B(C6F5)4]]などのテトラキスフェニル硼酸塩が用いられる。このテトラキスフェニル硼酸塩の製造方法としては例えば反応式
に従って製造する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、この方法においては、反応中間体のB(C6F5)3を単離してから最終生成物のLi[B(C6F5)4]を合成するため、操作が煩雑である上、溶媒としてペンタンを用いることにより、固体のLiC6F5が生成し、そしてそれが液体のBCl3と反応するため、反応が緩慢となって収率が低い等の欠点があった。
【0006】
また、反応式
に従って製造する方法が報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0007】
しかしながら、この方法においては、溶媒としてエーテルを用いるため、BCl3がエーテルと錯体を形成し、エーテル不溶物となることから収率が低いという欠点があった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭58−19309号公報
【特許文献2】
特開平3−207704号公報
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・オルガノメタル・ケミストリー(J. Organometal Chem.)」第2巻,第245〜250ページ(1964年)
【非特許文献2】
「旭硝子工業技術奨励会研究報告」第42巻,第137ページ(1983年)]
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記式(1)及び(2)の反応を順次行なう第一ステップと、下記式(3)及び(4)の反応を順次行なう第二ステップとからなり、
第一ステップ:
X1C6Y1 5+R1M1→M1C6Y1 5+R1X1 …(1)
3M1C6Y1 5+BX2 3→B(C6Y1 5)3+3M1X2 …(2)
第二ステップ:
X1C6Y1 5+R2M2→M2C6Y1 5+R2X1 …(3)
M2C6Y1 5+B(C6Y1 5)3→M2B(C6Y1 5)4 …(4)
[式(1)〜(4)中、X1及びX2はそれぞれハロゲン原子、Y1は水素原子又はフッ素原子を示し、5個のY1のうち2〜5個はフッ素原子である。R1及びR2はそれぞれアルキル基又はアリール基、M1又はM2はそれぞれアルカリ金属、アルカリ土類金属又はR3 2Alを示す。ただし、R3はアルキル基である。]
かつ、前記式(2)の反応においてM1C6Y1 5とBX2 3とのモル比を3/2.5≦M1C6Y1 5/BX2 3≦3/1.05とすることを特徴とするテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の製造方法が提供される。
【0010】
また、反応溶媒として脂肪族炭化水素系溶媒を用い、下記式(5)及び(6)
4X3C6Y2 5+4R4M3→4M3C6Y2 5+4R4X3 …(5)
4M3C6Y2 5+BCl3→M3B(C6Y2 5)4+3M3Cl3…(6)
[式中、X3はハロゲン原子、Y2は水素原子又はフッ素原子を示し、5個のY2のうち2〜5個はフッ素原子である。R4はアルキル基又はアリール基、M3はアルカリ金属、アルカリ土類金属又はR5 2Alを示す。ただし、R5はアルキル基である。]
の反応を順次行なうことを特徴とするテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の製造方法が提供される。
【0011】
また、下記式(7)
4M4−C6Y3 5+BCl3→M4B(C6Y3 5)4 …(7)
[式中、M4はアルカリ金属,アルカリ土類金属またはR6 2Al(R6はアルキル基)を示し、Y3は水素原子またはハロゲン原子を示す。]
に従いテトラキスフェニル硼酸塩を製造するに当たり、反応溶媒としてエーテルと脂肪族炭化水素との混合溶媒を用いることを特徴とするテトラキスフェニル硼酸塩の製造方法が提供される。
【0012】
また、ルイス塩基の配位したテトラキスフルオロフェニル硼酸塩に炭化水素系溶媒を加え、減圧濃縮又は減圧乾固することにより、ルイス塩基を除去することを特徴とするテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の製造方法が提供される。
また、前記ルイス塩基の配位したテトラキスフルオロフェニル硼酸塩が上記の方法によって製造されたものであることを特徴とするテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の製造方法が提供される。
【0013】
また、テトラキスフルオロフェニル硼酸塩を、SP値が15以上で30以下の溶媒により溶解し、次に、水又は脂肪族炭化水素系溶媒により析出させることを特徴とするテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の精製方法が提供される。
さらに、前記精製前のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩が上記の方法により製造されたものであることを特徴とするテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の精製方法が提供される。
【0014】
本発明の方法で得られるテトラキスフェニル硼酸塩は、オレフィン重合用触媒成分である配位錯化合物またはその合成原料等として好適に使用することができる。この配位錯化合物としては、例えば、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ(n−ブチル)アンモニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラブチルアンモニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラエチルアンモニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸[メチルトリ(n−ブチル)アンモニウム],
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸[ベンジルトリ(n−ブチル)アンモニウム],
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルトリフェニルアンモニウム
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N−メチルアニリニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N,N−ジメチルアニリニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N,N,N−トリメチルアニリニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(m−ニトロアニリニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(p−ブロモアニリニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ピリジニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p−シアノピリジニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N−メチルピリジニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N−ベンジルピリジニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(O−シアノ−N−メチルピリジニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p−シアノ−N−メチルピリジニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p−シアノ−N−ベンジルピリジニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルスルホニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルジメチルスルホニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルホスホニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アセチルフェロセニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ホルミルフェロセニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸シアノフェロセニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン鉄クロライド),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン亜鉛),
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジイソブチルアルミニウム,
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジエチルアルミニウム,
等を挙げることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的態様を、第一〜第七の発明として順次詳細に説明する。
1.第一の発明
第一の発明(製造方法)は、前述のように、前記式(1)及び(2)の反応を順次行なう第一ステップと前記式(3)及び(4)の反応を順次行なう第二ステップとからなり、かつ前記式(2)の反応において、M1C6Y1 5とBX2 3とのモル比を3/2.5≦M1C6Y1 5/BX2 3≦3/1.05とすることを特徴とする。
【0016】
ここで、式(1)の反応に用いるX1C6Y1 5において、X1のハロゲン原子としてはヨウ素、臭素、塩素、フッ素等を挙げることができるが、好ましくは臭素又は塩素である。C6Y1 5としては、3,5−ジフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基等を挙げることができるが、ペンタフルオロフェニル基が好ましい。式(1)の反応に用いるR1M1において、R1のアルキル基としてはメチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基等の炭素数1〜20のアルキル基、R1のアリール基としてはフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、M1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、臭化マグネシウム等を挙げることができる。R3のアルキル基としてはR1のアルキル基と同様のものを挙げることができ、R3 2Alとしてはジイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム等を挙げることができる。
【0017】
また、式(2)の反応に用いるBX2 3において、X2のハロゲン原子としてはヨウ素、臭素、塩素、フッ素等を挙げることができる。BX2 3は、例えばトリフルオロボラン−ジエチルエーテル錯体(BF3・OEt2)のように、電子供与性錯体を持っていてもよい。
具体的には、X1C6Y1 5としてブロモペンタフルオロベンゼン,クロロペンタフルオロベンゼン,ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン等、R1M1としてn−ブチルリチウム,メチルリチウム,sec−ブチルリチウム,トリイソブチルアルミニウム等、BX2 3として三塩化硼素,三臭化硼素,三フッ化硼素,三フッ化硼素−ジエチルエーテル錯体等を好適に使用することができる。
式(1)及び(2)の反応の反応様式、反応条件に特に制限はないが、例えば以下に述べる態様を好適に採用することができる。
【0018】
式(1)の反応
まず、溶媒(以下、式(1)及び(2)の反応に用いる溶媒を溶媒aという)と3xモルのX1C6Y1 5とを混合する。溶媒aとしては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の直鎖状又は環状の脂肪族炭化水素系溶媒を好適に用いることができる。また、溶媒aに対するX1C6Y1 5の混合割合[X1C6Y1 5/溶媒a]は、0.1〜1モル/リットルとすることが好ましい。
【0019】
次に、溶媒aとX1C6Y1 5との混合液を、−30℃以下、望ましくは、−60℃以下に冷却する。そして、溶媒aに2.7x〜3.6xモルのR1M1を溶解した溶液を、撹拌下において上記混合液に添加する。このとき、該溶液における溶媒aに対するR1M1の混合割合[R1M1/溶媒a]は、0.5〜3モル/リットルとすることが好ましい。
その後、上記温度を維持したまま所定時間(通常2時間程度)撹拌を行ない、溶媒a中にM1C6Y1 5及びR1X1を生成させる。
【0020】
式(2)の反応
前記式(1)の反応によってM1C6Y1 5及びR1X1が生成した溶媒aに、1.0x〜2.5xモルのBX2 3を溶媒aに溶解した溶液を添加する。このとき、該溶液における溶媒aに対するBX2 3の混合割合[BX2 3/溶媒a]は、0.1モル/リットル以上とすることが好ましい。
その後、上記温度を維持したまま所定時間(通常2時間程度)撹拌を行ない、溶媒a中にB(C6Y1 5)3を生成させる。
【0021】
B(C 6 Y 1 5 ) 3 の単離
式(2)の反応終了後、溶媒a中にはB(C6Y1 5)3の他、BX2 3、BX2 2C6Y1 5、BX2(C6Y1 5)2、M1X2、R1X1、M1[B(C6Y1 5)4]等の副生物が存在している。そこで、溶媒aを−30℃以下、好ましくは−60℃以下の温度として溶媒aのろ過分離を行なう。これにより、BX2 3、BX2 2C6Y1 5、BX2B(C6Y1 5)3、M1[B(C6Y1 5)4]、M1X2(M1:アルカリ金属)が固相として分離される。
【0022】
次に、得られた固相に溶媒aを加える。このとき、固相に対する溶媒aの添加量は、溶媒a中におけるB(C6Y1 5)3の量[B(C6Y1 5)3/溶媒a]が0.1〜1モル/リットルとなる添加量とすることが好ましい。
その後、溶媒aを−20〜30℃、好ましくは−10〜20℃に昇温し、溶媒aのろ過分離を行なう。これにより、B(C6Y1 5)3が液相(溶媒相)中に単離され、M1[B(C6Y1 5)4]、M1X2(M1:アルカリ金属)が固相として分離される。
【0023】
ここで、式(3)の反応において、X1C6Y1 5としては式(1)の反応に用いたものと同じものを用いる。また、式(3)の反応に用いるR2M2において、R2及びM2としてはそれぞれ前述したR1及びM1と同様のものを挙げることができる。
具体的には、R2M2としてn−ブチルリチウム,メチルリチウム,sec−ブチルリチウム,トリイソブチルアルミニウム等を好適に使用することができる。
式(3)及び(4)の反応の反応様式、反応条件に特に制限はないが、以下に述べる態様を好適に採用することができる。
【0024】
式(3)の反応
まず、溶媒(以下、式(3)の反応においてX1C6Y1 5を混合する溶媒を溶媒bという)とyモルのX1C6Y1 5とを混合する。溶媒bとしては、特に制限はないが、M2C6Y1 5が溶解することが必要であり、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましい。また、溶媒bの使用量は、前記ステップ1で単離したB(C6Y1 5)3を含む溶媒aとの容量比[溶媒a/溶媒b]が1/1〜100/1、特に5/1〜10/1となるような使用量とすることが好適である。
【0025】
次に、溶媒bとX1C6Y1 5との混合液を−30℃以下、好ましくは−60℃以下に冷却する。そして、溶媒(以下、式(3)の反応においてR2M2を混合する溶媒を溶媒cという)に0.9y〜1.2yモルのR2M2を溶解した溶液を、撹拌下において上記混合液に添加する。このとき、該溶液における溶媒cに対するR2M2の混合割合[R2M2/溶媒c]は、0.5〜3モル/リットルとすることが好ましい。なお、溶媒cとしては溶媒aと同様のものを挙げることができる。 その後、上記温度を維持したまま所定時間(通常30分程度)撹拌を行ない、溶媒b及び溶媒cの混合液中にM2C6Y1 5及びR2X1を生成させる。
【0026】
式(4)の反応
上記式(3)の反応によってM2C6Y1 5及びR2X1が生成した溶媒b及び溶媒cの混合液を−30℃以下、望ましくは−60℃以下、前記ステップ1で単離したB(C6Y1 5)3を含む溶媒aを−20〜30℃、好ましくは−10〜20℃とした状態で、溶媒aに溶媒b及び溶媒cの混合液を添加する。
その後、−20〜30℃、好ましくは−10〜20℃で所定時間(通常30分程度)撹拌を行なう。これにより、M2B(C6Y1 5)4と溶媒bとの錯体が固体として析出する。したがって、ろ過により溶媒を除去し、固体状の[M2B(C6Y1 5)4]−[溶媒b]錯体を採取する。
【0027】
本発明の方法で得られるフッ素置換テトラフェニル硼酸塩は、合成時または精製時の溶媒を配位したものであってもよい。
なお、上述した式(3),(4)の反応は、いずれも不活性ガス気流下で行なうことが好ましい。
このようにして得られた[M2B(C6Y1 5)4]−[溶媒b]錯体(zモル)の収率(B(C6Y1 5)3(yモル)基準;(z/y)×100%)は、本態様によれば55%以上となる。
また、[M2B(C6Y1 5)4]−[溶媒b]錯体(zモル)の全収率(X1C6Y1 5(xモル)基準;(z/x)×100%)は、本態様によれば通常30%以上となる。
【0028】
この第一発明においては、前記式(2)の反応においてM1C6Y5/BX2 3(モル比)を3/2.5〜3/1.05にするものであり、好ましくはさらに式(2)の反応で得られた反応混合物から副生物を除去し、B(C6Y5)3を精製して、次にこれを式(4)の反応に用いるものである。これらにより、前述のようにM2B(C6Y5)4をX1C6Y5基準で30%以上の高収率で効率的に製造することができる。これに対し、M1C6Y5/BX2 3(モル比)が上記範囲から外れる場合には、フッ素置換テトラフェニル硼酸塩を収率良く得ることが困難である。なお、M1C6Y5/BX2 3(モル比)のより好ましい範囲は3/2.0〜3/1.1である。
【0029】
2.第二の発明
第二の発明(製造方法)は、前述のように反応溶媒として脂肪族炭化水素系溶媒を用い、前記式(5)及び(6)の反応を順次行なうことを特徴とする。
この場合、式(5)の反応に用いるX3C6Y2 5において、X3のハロゲン原子としてはヨウ素、臭素、塩素、フッ素等を挙げることができるが、好ましくは臭素又は塩素である。C6Y2 5としては、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等を挙げることができるが、好ましくはペンタフルオロフェニル基である。また、式(5)の反応に用いるR4M3において、R4のアルキル基としてはメチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基等の炭素数1〜20のアルキル基、R4のアリール基としてはフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基を挙げることができる。M3のアルカリ金属又はアルカリ土類金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、臭化マグネシウム等を挙げることができるが、好ましくはリチウムである。また、R3のアルキル基としてはR4のアルキル基と同様のものを挙げることができ、R3 2Alとしてはジイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム等を挙げることができる。
【0030】
具体的には、X3C6Y2 5としてブロモペンタフルオロベンゼン,クロロペンタフルオロベンゼン,ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン、ブロモ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等、R4M3としてn−ブチルリチウム,t−ブチルリチウム、メチルリチウム,sec−ブチルリチウム,トリイソブチルアルミニウム等を好適に使用することができる。
式(5)及び(6)の反応の反応様式、反応条件に特に制限はないが、以下に述べる態様を好適に採用することができる。
【0031】
式(5)の反応
まず、前述した反応溶媒a(以下、式(5)及び(6)の反応に用いる溶媒を溶媒aという)と4xモルのX3C6Y2 5とを混合する。
次に、溶媒aとX3C6Y2 5との混合液に3.6x〜4.8xモルのR4M3を溶解した溶液を添加する。
その後、上記温度を維持したまま所定時間(通常2時間程度)撹拌を行ない、溶媒a中にM3C6Y2 5及びR4X3を生成させる。
【0032】
式(6)の反応
上記式(5)の反応によってM3C6Y2 5及びR4X3が生成した溶媒a(−30℃以下、望ましくは−60℃以下)に、0.9x〜1.1xモルのBX4 3、たとえば、BCl3を溶媒aに溶解した溶液を添加する。このとき、該溶液における溶媒aに対するBCl3の混合割合[BCl3/溶媒a]は、0.1モル/リットル以上とすることが好ましい。
その後、上記温度を維持したまま所定時間(通常2時間程度)撹拌を行ない、溶媒a中にM3B(C6Y2 5)4を生成させる。
式(6)の反応終了後、溶媒aを0〜30℃、好ましくは0〜20℃に昇温し、溶媒aのろ過分離を行なう。
【0033】
本発明の方法で得られるテトラキスフルオロフェニル硼酸塩は、合成時または精製時の溶媒を配位したものであってもよい。
このようにして得られた[M3B(C6Y2 5)4]−[溶媒d]錯体(yモル)の収率(B(C6Y2 5)3(xモル)基準;(y/x)×100%)は、本態様によれば30%以上となる。
【0034】
3.第三の発明
第三の発明(製造方法)は、前述のように前記式(7)の反応を行なう際、反応溶媒としてエーテルと脂肪族炭化水素との混合溶媒を用いることを特徴とする。
第三の発明においては、M4−C6Y3 5と三塩化硼素(BCl3)とを溶媒中で反応させてM4B(C6Y3 5)4からなるテトラキスフェニル硼酸塩を製造する。この原料の一成分であるM4−C6Y3 5のM4は、リチウム,ナトリウム,カリウム等のアルカリ金属、カルシウム,マグネシウム,ストロンチウム等のアルカリ土類金属またはR2Al(Rはアルキル基、特に炭素数1〜8のアルキル基)であるが、これらの中でアルカリ金属が好ましく、特にリチウムが好適である。また、Y3は水素原子又はハロゲン原子であるが、少なくとも1つがハロゲン原子、特にフッ素原子であるものが好ましい。このようなM4−C6Y3 5の好ましいものとしては、例えばM4−C6F5,M4−C6HF4,M4−C6H2F3,M4−C6H3F2,M4−C6H4F等を挙げることができる。
【0035】
前記M4−C6Y3 5の製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法によればよい。
例えば、M4−C6Y3 5としてLiC6F5を製造する場合には、適当な溶媒中においてBrC6F5とn−ブチルリチウムとを反応させればよい。この際用いる適当な溶媒としては、後述のエーテルと脂肪族炭化水素との混合溶媒と同じものを用いるが反応面で有利である。
【0036】
本発明においては、M4−C6Y3 5と三塩化硼素との反応には、反応溶媒としてエーテル及び脂肪族炭化水素との混合溶媒を用いることが必要である。反応溶媒がエーテル又は脂肪族炭化水素単独の場合は、目的とするテトラキスフェニル硼酸塩の収率が低く、本発明の目的が達せられない。
該エーテルとしては、例えばジエチルエーテル,ジプロピルエーテル,プロピルメチルエーテル,プロピルエチルエーテル,ジブチルエーテル,ブチルメチルエーテル,ブチルエチルエーテル,ブチルプロピルエーテル等の脂肪族エーテル等を挙げることができ、これらは一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。一方、脂肪族炭化水素としては、例えばペンタン,ヘキサン等の炭素数5〜12のパラフィンやシクロヘキサン,シクロヘプタン等の炭素数5〜8のシクロパラフィンを挙げることができ、これらは一種以上用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記エーテルと脂肪族炭化水素との混合割合については特に制限はないが、重量比で100:1〜1:100の範囲にあるのが好ましい。また、エーテルの混合量は三塩化硼素に対して等モル以上であるのが有利である。
反応温度については、−20℃より低い温度であればよく、特に制限はないが−50℃以下であるのが好ましい。また、反応圧力については特に制限はないが、窒素などの不活性ガス雰囲気下で反応を行なうのが好ましい。
【0038】
このようにして、M4B(C6Y3 5)からなるテトラキスフェニル硼酸塩(M4及びY3は前記と同じである。)が収率よく得られる。該テトラキスフェニル硼酸塩の具体例としては、B(C6F5)4−,B(C6HF4)4−,B(C6H2F3)4−,B(C6H3F2)4−,B(C6HF4)4−などの各異性体とアルカリ金属、アルカリ土類金属又はR2Al(Rはアルキル基)とのイオン錯体を挙げることができる。
【0039】
4.第四の発明
第四の発明(製造方法)は、前述のようにルイス塩基の配位したテトラキスフルオロフェニル硼酸塩に炭化水素系溶媒を加え、減圧濃縮又は減圧乾固することにより、ルイス塩基を除去することを特徴とする。
ここで、前述のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩に配位した、除去されるべきルイス塩基(L)とは酸素,硫黄,窒素,リン等、共有電子対(ローンペア)を含有する元素を含んだ化合物をいう。
【0040】
具体的には、酸素を含有する化合物としては、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン,アセトン,酢酸エチル,メチルエチルケトン等を、硫黄を含有する化合物としては、ジエチルチオエーテル,テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド等を、窒素を含有する化合物としては、トリエチルアミン,ジメチルアニリン,ピリジン,ピペリジン,アセトニトリル等を、また、リンを含有する化合物としては、トリエチルホスフィン,トリメチルホスフィン等を挙げることができる。
【0041】
次に、ルイス塩基を減圧濃縮または減圧乾固することにより除去するに際し、用いる炭化水素溶媒としては、特に制限はないが、沸点80℃以上180℃以下の炭化水素が好ましい。
具体的にはベンゼン,トルエン,キシレン類,トリメチルベンゼン類,エチルベンゼン等の芳香族化合物、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素を挙げることができ、中でもトルエン,キシレン類が好ましい。
なお、溶媒は、配位しているルイス塩基類の種類によって適宜選択することができる。
【0042】
また、本発明における減圧濃縮または減圧乾固の条件は、真空度が1mmHg以下、好ましくは0.5mmHg以下であり、温度が−20℃〜100℃、好ましくは、0℃〜80℃である。
なお、この減圧濃縮又は減圧乾固は1回だけ行なってもよく、又は2回以上繰り返して行なってもよい。濃縮倍率としては、溶媒量を1/2にするのが好ましい。
【0043】
また、本発明におけるテトラキスフルオロフェニル硼酸塩と、炭化水素溶媒との使用モル比(炭化水素系溶媒/テトラキスフルオロフェニル硼酸塩)は、10〜1,000、好ましくは50〜200である。
さらに、本発明によって得られるテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の純度は、0≦ルイス塩基/テトラキスフルオロフェニル硼酸塩<0.5であることが好ましく、0≦ルイス塩基/テトラキスフルオロフェニル硼酸塩<0.1であることがさらに好ましい。
【0044】
5.第五の発明
第五の発明(製造方法)は、前述のように前記第四の発明においてテトラキスフルオロフェニル硼酸塩として、第一〜第三の発明のいずれかによって製造されたものであることを特徴とする。
【0045】
6.第六の発明
第六の発明(精製方法)は、前述のようにテトラキスフルオロフェニル硼酸塩を、SP値が15以上で30以下の溶媒により溶解し、次に、水又は脂肪族炭化水素系溶媒により析出させることを特徴とする。
そもそも、テトラキスフルオロフェニル硼酸塩は、合成直後は、着色しており、また塩が残留している。そのため重合用触媒として用いた場合、重合体への着色、成形時の金型腐食等の問題を生じている。本第六発明はこれらの不純物を取除くべくテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の精製方法に関するものである。
【0046】
詳しく述べると、合成後のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩には合成反応における副生成物である塩化リチウム等の塩類や、n−ブチルリチウム、LiC6F5、B(C6F5)3、MgBrC6F5等の分解物が混入している。本発明においては、これら不純物を取除くために、生成したテトラキスフルオロフェニル硼酸塩を、まずSP値が15以上で30以下の溶媒に溶解させる。かかる溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルブチルエーテル、メチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が用いられる。これらは、二種以上併用してもよい。次に水又は脂肪族炭化水素系溶媒により析出させる。
【0047】
7.第七の発明
第七の発明(精製方法)は、前述のように前記第六の発明において、精製前のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩として第四又は第五の発明により製造されたものを用いたことを特徴とする。
【0048】
以上説明したように本発明のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の製造方法及び精製方法は、オレフィンの重合用触媒成分又はその合成原料として有用なオレフィン重合活性に優れ、かつ、高純度なテトラキスフェニル硼酸塩、特にテトラキスフルオロフェニル硼酸塩を、単位溶媒当たりの生産量が多く高収率で効率よく製造及び精製することができる。
【0049】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1
下記第1ステップ及び第2ステップによりテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウムを合成した。この場合、下記ステップはすべて窒素気流下で行なった。
【0050】
(I)トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素の合成(第1ステップ)
ブロモペンタフルオロベンゼン(BrC6F5)24.7g(F.W.246.97,0.1モル)及び乾燥ヘキサン500mlを混合し、−70℃に冷却した。その後、撹拌下において、上記混合液中にn−ブチルリチウム0.1モルを1.5モル/リットル−ヘキサン溶液として徐々に滴下し、液温−70℃で2時間撹拌を続け、反応させた。
次に、この反応溶液中に三塩化硼素0.04モルを1.35モル/リットル−ヘキサン溶液としてすばやく滴下し、液温−70℃で2時間撹拌を続け、反応させた。
その後、液温−70℃で反応溶液のろ過分離を行ない、ヘキサン相(不純物可溶)を除いた。得られた固相に新たにヘキサン500mlを加え、室温に戻した。さらに固相を除いたヘキサン相(不純物不溶)には、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素(B(C6F5)3)が12.1g(収率:BrC6F5基準で71%)含まれていた。
【0051】
(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウムの合成(第2ステップ)
ブロモペンタフルオロベンゼン5.85g(0.0237モル)及び乾燥ジエチルエーテル100mlを混合し、−70℃に冷却した。その後、撹拌下において、上記混合液中にn−ブチルリチウム0.0237モルを1.5モル/リットル−ヘキサン溶液として徐々に滴下し、液温−70℃にて30分間撹拌を続け、反応させた。
【0052】
次に、この反応溶液(−70℃)を(I)で得たトリス(ペンタフルオロフェニル)硼素12.1gのヘキサン溶液(500ml,室温)に滴下した。室温にて30分間撹拌した後、溶液を除き、残部を減圧乾燥することにより、白色固体のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム−ジエチルエーテル錯体(LiB(C6F5)4・OEt2)17.1g(収率:95%)を得た。
(I),(II)のステップにより、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム−ジエチルエ−テル錯体を、原料BrC6F5を基準として全収率67.5%で得ることができた。
【0053】
(III)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウムの合成
(II)で得られたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム・ジエチルエーテル錯体2g(2.92×10−3モル)を水70mlに溶解し、この中に塩酸ジメチルアニリニウム0.44g(2.78×10−3モル)を加え、室温にて1時間撹拌した。得られた固体を水及びヘキサンで十分に洗浄した。
上記固体をアセトン20mlに溶解し、このアセトン溶液を多量の水に注ぎ、再沈殿を行ない、ろ過により固体成分を回収した。得られた固体成分に乾燥トルエンを10ml加え、減圧、乾固することにより、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム([PhNMe2H][B(C6F5)4])2.01g(収率86%)を得た。この錯体は、ルイス塩基類が配位していなかった。
【0054】
(VI)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸酸ジメチルアニリニウムを用いた重合
オートクレーブ中でトルエン400ml、トリイソブチルアルミニウム4×10−4モル(2モル/リットル−トルエン溶液)を十分に撹拌し、さらにイソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド1×10−5モル(0.01モル/リットル−トルエン溶液)、(III)で得たテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム1×10−5モル(0.01モル/リットル−トルエン溶液)を順次オートクレーブに仕込み、十分に撹拌した。
【0055】
次に、25℃にてプロピレンを圧力が3Kg/cm2で一定になるように連続的にオートクレーブに供給し、1時間反応させた。反応終了後、メタノールを加えて触媒を失活させ、ろ過、減圧乾燥を行なうことにより、シンジオタクチックポリプロピレン54.5gを得た。重合活性は、59.7Kg/g・Zr、5.05Kg/g・Alであった。
得られた重合体の示差走査熱量計による融点は132℃、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量、数平均分子量はそれぞれポリスチレン基準で6.0×104,2.7×104であった。また13C−NMRにより求めたタクティシティーはrrrr(ラセミペンタッド)で88%であった。
【0056】
参考比較例1
(I)参考例1(II)で得られたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム・ジエチルエーテル錯体2g(2.92×10−3モル)を水70mlに溶解し、この中に塩酸ジメチルアニリニウム0.44g(2.78×10−3モル)を加え、室温にて1時間撹拌した。得られた固体を水およびヘキサンで十分洗浄した後、減圧乾固を行なった。得られた固体の1H−NMRを測定したところ、テトラキス(ペンタフルオフロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム−ジエチルエーテルのほぼ1:1の錯体であることがわかった。また、回収量は、2.3g(2.66×10−3モル)であった。
【0057】
(II)オートクレーブ中でトルエン400ml、トリイソブチルアルミニウム4×10−4モル(2モル/リットル−トルエン溶液)を十分に撹拌し、さらにイソプロピリデン(シルロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド1×10−5モル(0.01モル/リットル−トルエン溶液)、(I)で得たテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアルミニウムエチルエ−テル錯体1×10−5モル(0.01モル/リットル−トルエン溶液)を順次オ−トクレ−ブに仕込み、十分に撹拌した。
つぎに、25℃以下にてプロピレンを圧力が3kg/cm2で一定になるように連続的にオ−トクレ−ブに供給し、1時間反応させた。反応終了後、メタノ−ルを加えて触媒を失括させ、ろ過、減圧乾燥を行なうことにより、シンジオクタクチックポリプロピレン22.2gを得た。重合活性は、24.3kg/g・Zr、2.06kg/g・Alであった。
【0058】
参考比較例2
(I)参考例1(II)で得られたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム・ジエチルエーテル錯体2g(2.92×10−3モル)を水70mlに溶解し、この中に塩酸ジメチルアニリニウム0.44g(2.78×10−3モル)を加え、室温にて1時間撹拌した。得られた固体を水およびヘモサンで十分洗浄した。上記固体をアセトン20mlに溶解し、このアセトン溶液を多量の水に注ぎ、再沈殿を行ない、ろ過により固体成分を回収した。得られた固体成分を十分減圧乾燥を行なった。得られた固体の1H−NMRを測定したところ、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウムアセトンのほぼ1:1の錯体であることがわかった。回収量は、2.2g(2.57×10−3モル)であった。
【0059】
(II)オートクレーブ中でトルエン400ml、トリイソブチルアルミニウム4×10−4モル(2モル/リットル−トルエン溶液)を十分に撹拌し、さらにイソプロピリデン(シルロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド1×10−5モル(0.01モル/リットル−トルエン溶液)、(I)で得たテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアルミニウムアセトン錯体1×10−5モル(0.01モル/リットル−トルエン溶液)を順次オ−トクレ−ブに仕込み、十分に撹拌した。
次に、25℃以下にてプロピレンを圧力が3kg/cm2で一定になるように連続的にオ−トクレ−ブに供給し、1時間反応させた。反応終了後、メタノ−ルを加えて触媒を失括させ、ろ過、減圧乾燥を行なうことにより、シンジオタクチックポリプロピレン27.6gを得た。重合活性は、30.2kg/g・Zr、2.56kg/g・Alであった。
【0060】
参考例2
[リチウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートの製造]
窒素置換した反応器に、乾燥ヘキサン180ミリリットル,ジエチルエーテル180ミリリットル及びブロモペンタフルオロベンゼン24.7g(0.1モル)を入れ、−70℃に冷却し、撹拌下n−ブチルリチウム0.1モルを滴下した。次いで、−70℃で三塩化硼素0.025モルを滴下し、室温まで徐々に昇温して沈殿物をろ別したのち、ヘキサンで洗浄し、乾燥することでLiClを含むLi[B(C6F5)4]・O(C2H5)20.023モルを得た。ブロモペンタフルオロベンゼンからの収率は92%であった。
【0061】
参考比較例3
参考例2において、乾燥ヘキサン180ミリリットルおよびジエチルエーテル180ミリリットルの代わりに、乾燥ジエチルエーテル360ミリリットルを用いた以外は、参考例2と同様に行ない、Li[B(C6F5)4]・O(C2H5)20.016モルを得た。ブロモペンタフルオロベンゼンからの収率は64%であった。
【0062】
参考例3
[リチウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートの製造]
窒素置換した反応器に、乾燥ヘキサン40ミリリットル,ジエチルエーテル320ミリリットル及びブロモペンタフルオロベンゼン24.7g(0.1モル)を入れ、−70℃に冷却し、撹拌下n−ブチルリチウム0.1モルを滴下した。次いで、−70℃で三塩化硼素0.025モルを滴下し、室温まで徐々に昇温して沈殿物をろ別したのち、ヘキサンで洗浄し、乾燥することでLiClを含むLi[B(C6F5)4]・O(C2H5)20.022モルを得た。ブロモペンタフルオロベンゼンからの収率は88%であった。
【0063】
参考例4
[リチウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートの製造]
窒素置換した反応器に、乾燥ヘキサン340ミリリットル,ジエチルエーテル20ミリリットル及びブロモペンタフルオロベンゼン24.7g(0.1モル)を入れ、−70℃に冷却し、撹拌下n−ブチルリチウム0.1モルを滴下した。次いで、−70℃で三塩化硼素0.025モルを滴下し、室温まで徐々に昇温して沈殿物をろ別したのち、ヘキサンで洗浄し、乾燥することでLiClを含むLi[B(C6F5)4]・O(C2H5)20.020モルを得た。ブロモペンタフルオロベンゼンからの収率は80%であった。
【0064】
参考例5
乾燥ヘキサンの代わりに乾燥ペンタン340ミリリットルを用い、またジエチルエーテルの代わりにジイソプロピルエーテル20ミリリットルを用いたこと以外は、参考例4と同様の操作を行なった結果、LiClを含むLi[B(C6F5)4]・O(C3H7)20.021モルが得られた。ブロモペンタフルオロベンゼンからの収率は84%であった。
【0065】
実施例1
(I)ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートの合成・精製
窒素置換した反応器にジエチルエーテル1000ml及びブロモペンタフルオロベンゼン49.4g(0.4mol)を入れ、−70℃に冷却する。撹拌下n−ブチルリチウム0.4molを滴下した。次に、−70℃で三塩化硼素0.10molを滴下し、室温まで徐々に昇温し、沈殿物を濾別した後、ヘキサンで洗浄した。沈殿物を200mlの水に溶解し、50mlの水に溶解した塩化ジメチルアニリニウム0.10molを滴下し、粗ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートを79g得た。
粗ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート50gを20mlのメタノールで溶解し、500mlの水に滴下した。真空乾燥することで白色の精製ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートを46g得た。
【0066】
(II)スチレンの重合
乾燥し、窒素置換した10リットルの容器にスチレン6リットルを入れ、70℃に加熱する。ここに、トルエン75mlにトリイソブチルアルミニウム9mmol、精製ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート150μmol、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリメトキサイド150μmolを混合した溶液を添加し、2時間重合を行い、MeOH1リットルを投入することで反応を停止した。ろ過によりMeOHを分離し、生成ポリマーを150℃5時間の真空乾燥を行ない、4.1kgのポリマーを得た。
生成したポリマーを290℃で溶解し、140℃の鉄製の金型に100回射出成形し、金型を相対湿度50%下で一日保存し、金型に腐食がないことを確認した。また、成形品のY.I.は19であった。
【0067】
比較例1
粗ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いること以外は実施例1と同様にスチレンの重合を行ない、4.0kgのポリマーを得、射出成形を行なった。金型には腐食が見られ、成形品のY.I.は25であった。
【0068】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明にかかる製造方法及び精製方法によって得られるテトラキスフェニル硼酸塩は、α−オレフィンやスチレン系単量体等のオレフィンの重合用触媒成分、又はその合成原料として有用である。中でも、本発明によって得られるテトラキスフルオロフェニル硼酸塩は、オレフィン重合活性に優れ、かつ、高純度であるためオレフィン重合用触媒成分又はその合成原料として特に有用である。
Claims (3)
- テトラキスフルオロフェニル硼酸塩を、SP値が15以上で30以下の溶媒により溶解し、次に、水又は脂肪族炭化水素系溶媒により析出させることを特徴とするテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の精製方法。
- 前記精製前のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩が、ルイス塩基の配位したテトラキスフルオロフェニル硼酸塩に炭化水素系溶媒を加え、減圧濃縮又は減圧乾固することにより、ルイス塩基を除去したテトラキスフルオロフェニル硼酸塩であることを特徴とする請求項1記載のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の精製方法。
- 前記ルイス塩基の配位したテトラキスフルオロフェニル硼酸塩が、
反応溶媒として脂肪族炭化水素系溶媒を用い、下記式(5)及び(6)
4X3C6Y2 5+4R4M3→4M3C6Y2 5+4R4X3 …(5)
4M3C6Y2 5+BCl3→M3B(C6Y2 5)4+3M 3 Cl…(6)
[式中、X3はハロゲン原子、Y2は水素原子又はフッ素原子を示し、5個のY2のうち2〜5個はフッ素原子である。R4はアルキル基又はアリール基、M3はアルカリ金属、アルカリ土類金属又はR5 2Alを示す。ただし、R5はアルキル基である。]
の反応を順次行なう方法によって製造されたものであることを特徴とする請求項2記載のテトラキスフルオロフェニル硼酸塩の精製方法。
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