JP3615852B2 - サーマルヘッド及びサーマルプリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクリボンのインクを印刷媒体に転写するためのサーマルヘッド及びこのサーマルヘッドを使用したサーマルプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は、特開昭59−188452号に開示されている従来の4ヘッド方式のサーマルプリントヘッド部を示す断面正面図である。
このサーマルプリントヘッド部は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒用のプリントユニット101、102、103、104をそれぞれ用紙のストレートの搬送路105上に順番に配列して構成されている。
【0003】
例えば、イエロー用のプリントユニット101は、サーマルラインヘッド101−1と、このサーマルラインヘッド101−1を形成する発熱抵抗体の発熱面上に、イエローインクを含むイエローのインクリボン101−2を供給するスプール101−3を備えたインクリボン機構と、転圧用のローラ101−4とを備えている。
なお、他のプリントユニット102〜104も、それぞれ使用するインクリボンの色がマゼンタ、シアン、黒であるという点以外は全く同様な構造である。従って、ここではその説明は省略する。
【0004】
用紙106は、フィーダローラ107によりイエロー用のプリントユニット101から黒用のプリントユニット104への方向に搬送路105で移送され、例えば、各プリントユニット101〜104において、各インクリボン101−2〜104−2と各スプール101−3〜104−3との間を通過する。
【0005】
印刷時には、用紙106をイエロー用のプリントユニット101から黒用のプリントユニット104へ移送しながら、先ずイエローのプリントユニット101にてイエローの印刷を行い、この印刷部分が、他の各プリントユニット102〜104の各サーマルラインヘッド102−1〜104−1の発熱面に来た時に同期して、各色の印刷を順次重ねて行う。このときインクが重なって混色し、所定の色相の印刷を行うようになっている。
このように、1色毎に1つのサーマルラインヘッドを有する3〜4へッド方式の熱転写式カラ−記録方法では、1色の印刷毎に、1つのサーマルヘッドで複数色の重ね合わせを行うものと比べ、用紙106を繰り返し往復しないので高速印刷が可能になる。
ところで、熱転写式プリンタでは印刷媒体と発熱抵抗体の接触位置( 接触状態 )を適切に設定することにより、印字品質の向上を図ることができる。
【0006】
図11は、特開昭61−10468号に開示されている感熱記録装置の記録時の端面型サーマルヘッドと記録媒体および回転ローラとの押圧接触状態を示す要部拡大側面図である。
このプリンタの端面型サーマルヘッドは、発熱抵抗体111の中心を曲率を有する端面の頂点より、記録媒体の供給側位置になるように構成されている。
【0007】
そして、回転ローラを矢印方向に回転させて記録媒体の供給側に移動して、発熱抵抗体は押圧力は有効に作用し、印字品質が向上する。
【0008】
図12は、特開昭57−103863号に開示されているサーマルヘッドを示す断面図である。
このサーマルヘッドでは、「たわみ現象」に対して、発熱体112の形成位置を凸状領域の中心よりずらすことにより、印字効率のアップによる印字品質の向上に於いて、優れた効果を発揮することが記載されている。なお、図中の矢印Pは印字方向( 従って、感熱紙の搬送方向は逆方向になる )を示すものである。
【0009】
しかし、図10に示すような3〜4ヘッド方式の熱転写式カラープリンタにおいては、用紙が直線的に搬送され、かつ高速にカラー印刷するためには、熱応答性の優れたサーマルヘッドが必要になる。高速印刷の場合、サーマルヘッドの通電の駆動周期を短くし、この駆動周期にヘッドの昇温速度及び降温速度を追従させなければならない。
この昇温速度及び降温速度に大きな影響を及ぼすのが、発熱抵抗体の下に形成されるグレーズ層である。このグレーズ層の厚さが薄すぎると、放熱効果が高くなりヘッドの昇温速度が遅くなる。逆に、グレーズ層の厚さが厚すぎると、放熱効果が低くなり降温速度が遅くなる。
昇温速度に対しては、発熱抵抗体に印加する電気エネルギーを増大させることにより改善することができるが、降温速度に対しては、グレーズ層の厚さを調整するのが一般的な改善策となる。
【0010】
ところで、このグレーズ層の形状は曲面を有するものが多く使用されている。これは、グレーズ層の表面に形成される発熱抵抗体のインクリボン及び印刷媒体への接触面積を小さくして面圧を高め、印字品質を向上させるためである。従って、この曲面の曲率半径は小さい方がこの効果を大きいことになる。しかし、曲率半径を小さくすると、グレーズ層の厚さが厚くなり、ヘッドの降温速度が遅くなる。
このヘッドの降温速度の低下を改善する方法としては、グレーズ層の幅( 長さ )を狭く( 短く )して、グレーズ層の厚さを薄くする方法がある。
図11に示すような端面型サーマルヘッドの場合、グレーズ層の幅を狭くするためには、製造上、グレーズ層を形成する平板状基板の厚さを薄くしなければならない。しかし、この基板の厚さを薄くすると、基板の強度が低下し、サーマルヘッドとしてコストアップとなりサーマルヘッドの取扱いが困難になるという問題があった。
【0011】
そこで、平板状基板の端面の一角に( 面取り形状の )斜面を形成し、この斜面に曲面を有するグレーズ層を形成するサーマルヘッドが、コーナー型サーマルヘッドとして知られている。このようなコーナー型サーマルヘッドでは、基板の厚さに関係なく、斜面の幅を調整することによりグレーズ層の幅を調整することができ、曲面の曲率半径が小さく、厚さが薄いグレーズ層を形成することができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、曲面の曲率半径が小さいグレーズ層においては、接触面積が小さく圧力分布が急峻となり、グレーズ層の厚さも薄いため、それに対応して発熱抵抗体による熱応答分布も急峻となる。
従って、高印字品質を得るためには、発熱抵抗体とインクリボン及び印刷媒体との接触位置関係を厳密に管理して、発熱抵抗体の熱作用が的確にインクリボン及び印刷媒体に作用しなければならない。
【0013】
そのためには、グレーズ層における発熱抵抗体の位置を最適に配置する必要がある。特に、高速熱転写式カラープリンタでは、高速に印字するだけでなく、インクの上にインクを転写するため、印字条件がより厳密に管理しなければならないので、グレーズ層上の発熱抵抗体の位置については、より厳密に管理する必要がある。
しかしながら、特開昭61−10468号や特開昭57−103863号等の従来例においては、端面の頂点よりずらすことは開示されているが、そのずらし量については、グレーズ層の形状寸法に対して明確に定義されてはいない。そのため、高速熱転写式カラープリンタにおいては、実際上実施するには、従来技術では不足しており、グレーズ層の形状寸法に対してこのグレーズ層における発熱抵抗体の位置の厳密な定義を行う必要がある。
【0014】
そこでこの発明は、グレーズ層の形状寸法に対してこのグレーズ層における発熱抵抗体の位置の厳密な定義を行うことができ、高印字品質を確実に実現することができるサーマルヘッド及びサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1対応の発明は、平板状の長方体基板と、この長方体基板の一端の角に形成された面取り状の斜面と、この斜面上に形成された予め設定された曲面を有する絶縁層と、この絶縁層上に前記斜面の傾斜方向に予め設定された距離だけ隔てて複数組平行に配置した一対の電極と、この各一対の電極間にそれぞれ接続された発熱抵抗体とを設け、一対の電極間の中心が、絶縁層の曲面の斜面の傾斜方向に直交する最大圧力荷重線に対して印刷媒体搬送方向の供給側と排出側で電極間距離の2分の1の範囲内に位置したものである。
これにより、発熱抵抗体の熱が有効な圧力作用により、高い効率でインクリボン又は用紙に作用することができる。
【0016】
請求項2対応の発明は、請求項1記載のサーマルヘッドを使用し、サーマルヘッドとプラテンとの間にインクリボン及び印刷媒体を介挿し、サーマルヘッドの発熱作用により前記インクリボンのインクを前記印刷媒体へ転写して印字を行うサーマルプリンタにおいて、サーマルヘッドを、斜面の傾斜方向を印刷媒体の搬送方向と一致させ、サーマルヘッドを静止したプラテンに押圧接触させたときに、サーマルヘッドの絶縁層の曲面が最初にプラテンに接触する接線に対して印刷媒体の供給側へずれる圧力作用の最大圧力荷重線に対して印刷媒体搬送方向の供給側と排出側でサーマルヘッドの電極間距離の2分の1の範囲内に、サーマルヘッドの一対の電極間の中心が位置するように、サーマルヘッドを取付けたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、この発明を適用したブラック( K )、マゼンタ( M )、シアン( C )、イエロー( Y )の4色を重ね合わせて印刷するカラープリンタの概略の要部構成を示す図である。
K用サーマルヘッド1、M用サーマルヘッド2、C用サーマルヘッド3、Y用サーマルヘッド4は、複数の発熱抵抗体を直方体の4インチ長の端面に1列に配列した端面サーマルラインヘッドで、解像度は12dot/mm、ヘッド主走査方向単位長さ( 単位面積 )当りの荷重は0.4kg/cmを有し、主走査方向として形成された用紙の搬送路5上に順番に直列に配置されている。これらの各サーマルヘッド1〜4間の距離は100mmである。
【0018】
これらの前記K用サーマルヘッド1〜Y用サーマルヘッド4には、それぞれK用プラテン6〜Y用プラテン9が対向して配置され、また、リボンマガジン10〜13が着脱自在にセットされるようになっている。
このリボンマガジン10〜13には、それぞれ未使用のインクリボンが巻回されている送り側ローラ10−1〜13−1と使用済みのインクリボンが巻き取られる巻取側ローラ10−2〜13−2とが設けられている。
【0019】
これらの各リボンマガジン10〜13には、それぞれブラック( 黒 )のインクリボン、マゼンタのインクリボン、シアンのインクリボン、イエローのインクリボンがセットされ、これらのリボンマガジン10〜13から前記各サーマルヘッド1〜4へ各インクリボンが供給される。
前記搬送路5の前記Y用サーマルヘッド1の配置位置の用紙供給側に、用紙の搬送速度を制御するためのペーパー搬送用ローラ14及びこのペーパー搬送用ローラ14に対向して設けられた補助ローラ15が配置されている。
前記ペーパー搬送用ローラ14と前記K用サーマルヘッド1との間の搬送路5上には、用紙のラベル間のギャップを検出するギャップセンサ及び用紙に印刷されたマークを検出するマーカセンサからなるセンサ部16が配置されている。また、前記ペーパー搬送用ローラ14のさらに用紙供給側の前記搬送路5の用紙供給口5−1近傍には、用紙の末端を検出するための光学式透過形センサからなるペーパーエンドセンサ17が配置されている。
【0020】
前記搬送路5の前記用紙供給口5−1の外側にはペーパーホルダ18が固定され、このペーパーホルダ18に長尺状の用紙19が巻回されてセットされる。また、前記搬送路5の前記用紙供給口5−1の反対側には、印字済み用紙を排出するための用紙排出口5−2が形成されている。
【0021】
従って、前記各サーマルヘッド1〜4と前記各プラテン6〜9との間を、前記各リボンマガジン10〜13からのインクリボン及び前記ペーパーホルダ18からの前記用紙19がほぼ等速で搬送される。
すなわち、このカラープリンタでは、黒、マゼンタ、シアン、イエローの順に各々所望の画像が形成されていくことになる。
【0022】
図2は、このカラープリンタの前記各サーマルヘッド1〜4を制御する要部回路構成を示すブロック図である。
【0023】
21は、制御部本体を構成する中央制御部で、CPU( central processing unit)、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)等とから構成されている。この中央制御部21からの制御信号により、前記K用サーマルヘッド1を制御するK用サーマルヘッド制御部22、前記M用サーマルヘッド2を制御するM用サーマルヘッド制御部23、前記C用サーマルヘッド3を制御するC用サーマルヘッド制御部24、前記Y用サーマルヘッド4を制御するY用サーマルヘッド制御部25が設けられている。
【0024】
前記各サーマルヘッド制御部22〜25は、前記中央制御部21から制御信号により、前記各サーマルヘッド1〜4へ供給する駆動パルスのデューティ比を制御するか又は駆動電流の電圧を制御するようになっている。
さらに、前記M用サーマルヘッド制御部23は、前記M用サーマルヘッド2の駆動パルスのONパルス幅( 又は駆動電流の電圧 )を、前記K用サーマルヘッド制御部22は前記K用サーマルヘッド1へ供給される駆動パルスのONパルス幅( 又は駆動電流の電圧 )を制御する。
【0025】
前記C用サーマルヘッド制御部24及び前記Y用サーマルヘッド制御部25は、それぞれ該当するサーマルヘッド3,4の駆動パルスのONパルス幅( 又は駆動電流の電圧 )を、いずれも1つ前のサーマルヘッド2,3の駆動パルスのパルス幅( 又は駆動電流の電圧 )以上となるように制御する。
【0026】
図3( a )は、前記各サーマルヘッド( コーナー型サーマルラインヘッド )1〜4の先端部の概略的な要部構成を示す断面図であり、図3( b )は、その先端部の一部に形成された発熱素子の概略的な要部構成を示す断面図である。
アルミナ等の材料から形成された平板状基板31の主面31−1と端面31−2との間に斜面31−3が形成されている。この斜面31−3の幅tは、0.4mmとなっている。
【0027】
この斜面31−3上に、曲率半径0.5mm、5〜50μmの厚さでガラスグレーズ層32が形成されている。このガラスグレーズ層32上( 頂点 )に、例えばスパッタリング法や真空蒸着法に代表される真空薄膜成膜法により、Ta −Si O2等からなる発熱抵抗体層33、Al 等からなる電極層34、Si 3N4やSi Cからなる保護層35を形成し、発熱素子36を構成している。
【0028】
駆動IC( integrated circuit )等の回路は、例えば、前記主面31−1上に実装され、前記電極層34と接続されている。よって、用紙を前記各サーマルヘッド1〜4の発熱素子36( ガラスグレーズ層32 )に接触させながら、直線的に搬送することが可能になる。また、インクリボンを加熱してから記録媒体と剥離するまでの距離を短くすることができる。
【0029】
図4は、前記各サーマルヘッド1〜4の印字面を示す図である。
前記発熱抵抗体層33及びそれぞれ対向する一対の前記電極層34は、それぞれ各画素に対応して発熱素子36が一列に配列するように平行に配置されている。ここで、前記各電極層34間の距離( 発熱素子の長さ )をLとする。
【0030】
図5は、前記各サーマルヘッド(コーナー型サーマルラインヘッド)1〜4の先端部の一部に形成された発熱素子の実際の印刷媒体供給側限界の形状構成を示す断面図(a)とこの断面図における位置関係を示す上面図(b)である。なお、図中の矢印Pは印刷媒体の搬送方向を示し、図6は、その印刷媒体排出側限界の形状構成を示す断面図(a)とこの断面図における位置関係を示す上面図(b)である。
ところで、前記各プラテン6〜9の直径は50mmである。
【0031】
図中の頂点Sは、実際にはライン方向に連続した頂線となるが、前記各プラテン6〜9が回転停止しているときに、前記各サーマルヘッド1〜4をアップ位置(離間位置)からダウン位置(接触位置)へ移動させて前記各プラテン6〜9へ押圧接触させたときに最初に接触する点(線)である。
ここで、前記プラテン6〜9を実際に回転させ、印刷媒体及びインクリボンを供給したときに、前記サーマルヘッド1〜4の発熱素子36の近傍の圧力分布を調べると、その最大圧力荷重点Gは、実際にはライン方向に連続した最大圧力荷重線となるが、印刷媒体及びインクリボンの供給側に約10μmずれた位置にある。
このとき、前記発熱素子36の中心(中心線)は、すなわち、前記電極層34間の中心(中心線)は、図5に示すように、上記最大圧力荷重点Gから印刷媒体供給側へ電極層間距離Lの1/2ずれた位置から、図6に示すように、印刷媒体排出側へ電極層間距離Lの1/2ずれた位置までの範囲内にあることが、高印字品質を実現するための条件(定義)となる。
【0032】
また、上述した定義は、前記プラテン6〜9に最初に接触する頂線Sに基づいて書き直せば、図5に示すように、頂点Sから印刷媒体供給側へ最大圧力荷重点Gまでの距離10μmに電極層間距離Lの1/2を加算した距離( 10μm+( L/2 ) )ずれた位置から、図6に示すように、印刷媒体排出側へ電極層間距離Lの1/2から最大圧力荷重点Gまでの距離10μmを減算した距離( ( L/2 )−10μm )ずれた位置までの範囲内にあることである。
【0033】
図7は、前記サーマルヘッド1〜4の取付け方により前記ガラスグレーズ層( グレーズ層 )32の頂点( 頂線 )Sの位置が変化することを示す図である。
図7( a )は、ガラスグレーズ層32が接触するプラテン6〜9の接触線( 接触点 )の法線とガラスグレーズ層32が形成されている斜面31−1の垂線とを平行にした場合で、ちょうどガラスグレーズ層32の中央が頂線となる。
図7( b )及び図7( c )は、斜面31−1をガラスグレーズ層32が接触するプラテン6〜9の接触線( 接触点 )の法線に対してそれぞれガラスグレーズ層32が形成されている斜面31−1の垂線を傾けた場合で、頂線は、ガラスグレーズ層の中央からそれぞれ逆側にずれる。
【0034】
このような構成の本実施例において、以下の実験を行った結果を、表1、表2、表3に示す。
この実験は、上述したように、斜面の幅が0.4mm、ガラスグレーズ層の曲面の曲率半径が0.5mmと共通で、300dpi の発熱抵抗体サイズ幅70μm×長さ85μm…( タイプ1 )、400dpi の発熱抵抗体サイズ幅50μm×長さ62μm…( タイプ2 )、600dpi の発熱抵抗体サイズ幅33μm×長さ43μm…( タイプ3 )の3種類の4インチ幅のライン型サーマルヘッドで、ヘッド主走査方向の単位長さ当たりの荷重が0.4kg/cm となっている。印刷媒体としての記録紙は、ベック平滑度1000秒程度のコート紙を使用した。印字する順序はマゼンタ、シアン、イエローとした。
【0035】
項目1は、記録紙上に50mm×50mmの単色とカラーの正方形パターンを間隔をおいて、紙送りスピード6inch/sec で5回印刷する。
この項目1では、インクの転写状態を全体的な画質として観察し、その状態を、優れている(excellentな) ものをAA、良好なものをA、ややボイド( インクぬけ )が見られるものをB−1、やや逆転写が見られるものをB−2、かなりボイドが見られるものをC−1、かなり逆転写が見られるものをC−2の6段階で評価する。
【0036】
項目2は、記録紙上に80mm×10mmの単色とカラーのバーパターンを間隔をおいて、紙送りスピード6inch/sec で5回印刷する。
この項目2では、パターンエッジのシャープさを観察し、そのシャープさを、優れている(excellentな) ものをAA、ほとんど直線のものをA、ややぼけているものをB、著しくぼけているものをCの4段階で評価する。
【0037】
項目3は、先に印刷したインクの近傍の記録紙上にインクを転写した場合の画質を調べるために、紙送りスピード6inch/sec で、まず、マゼンタインクで8ドット×8ドットで構成される画点を印刷し、次にシアンインクで10ドット×10ドットで構成される画点を重ねて印刷する。また同様に、紙送りスピード6inch/sec で、マゼンタインクで8ドット×8ドットで構成される画点を印刷し、次にシアンインクで8ドット×8ドットで構成される画点を重ねて( 二重 )印刷し、さらにイエローインクで10ドット×10ドットで構成される画点を重ねて( 三重 )印刷する。
【0038】
以上の印刷を50回行い、その印刷結果の10ドット×10ドットの外周36ドット( 8ドット×8ドットの印刷を除いたドット )に関して、正規の画点の大きさの90%以上、110%以下であるものの個数を観察し、その個数が安定とされる所定数以上の回数が、46〜50回であったものをAA、41〜45回であったものをA、36〜40回であったものをB、35回以下のものをCと4段階で評価した。
【0039】
表1は、タイプ1のライン型サーマルヘッドを使用して項目1、項目2及び項目3について行った実験結果の評価をまとめたものである。
表2は、タイプ2のライン型サーマルヘッドを使用して項目1、項目2及び項目3について行った実験結果の評価をまとめたものである。
表3は、タイプ3のライン型サーマルヘッドを使用して項目1、項目2及び項目3について行った実験結果の評価をまとめたものである。
なお、一対の電極層34間の中心( 中心線 )とガラスグレーズ層32の曲面の頂点( プラテンに最初に接触する線=頂線 )との距離aは、ライン型サーマルヘッドのライン方向に4区分に分けたときの区分点( 5箇所 )において、触針又はレーザー光を使用した表面形状測定装置により、各中心線( 保護層25の段差を検出し、その段差間の中央を中心線とする )と頂線との距離を測定し、その絶対値が最大となる測定値をaとした。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
この結果から明らかなように、一対の電極層34間の中心線とガラスグレーズ層32の曲面の頂線との距離aが、電極層34間の距離Lに対して下記の条件を満たすとき、いずれのタイプのライン型サーマルヘッドでも、いずれの項目でも、良好以上の評価を得ている。
−10μm−( 1/2 )・L<a≦−10μm+( 1/2 )・L
すなわち、プラテン6〜9に対する最大圧力荷重線Gに対して書き直せば、一対の電極層34間の中心線と最大圧力荷重線Gとの距離bとすれば、
−( 1/2 )・L<b≦+( 1/2 )・L
という範囲条件となる。
【0044】
また、ここではその実験結果は示さないが、上記以外に、色重ねの順番を変えて同様な実験を行ったが、いずれも同様な結果と得た。
また、ライン型サーマルヘッドに加える主走査方向の単位長さ当たりの荷重( 線圧 )を0.4kg/cm以外に、0.2、0.3、0.5、0.6、0.7、0.8kg/cmでも実験を行ったが、一対の電極層34間の中心線と頂線又は最大圧力荷重線Gとの位置関係が、上記の範囲にあるものについては良好な印字結果を得た。
【0045】
ところで、線圧が小さいと、発熱素子36から記録紙への熱伝導効率が低下するため、ライン型サーマルヘッドに印加する電気エネルギーを増加する必要があり、線圧が大きいと、ライン型サーマルヘッドの保護層35の摩耗が大きくなる( 早まる )ので、バランス的にはライン型サーマルヘッドに加える線圧としては、0.3〜0.6kg/cmが最適と判断される。
なお、0.8kg/cm以上の線圧を加えると、インクリボンのベースフィルムが削れるという問題も見られた。
【0046】
また、実験結果は示さないが、発熱抵抗体の幅( 発熱抵抗体層33の幅 )Wと長さ( 電極層34間の距離 )Lについては、幅Wを1とすると、長さLは0.9〜2.0の範囲のものでは、一対の電極層34間の中心線と頂線又は最大圧力荷重線Gとの位置関係が上記の範囲にあるものについては良好な印字結果を得た。
これについて、電極層34は、熱伝導率の高い金属で形成されているため、長さLを短くしすぎると、電極層34を介して長さ方向( 副走査方向=記録紙の搬送方向 )の熱が放熱されるので、長さ方向の転写ドットのつながりが悪くなり、逆に長さLを長くしすぎると、特に高速印字では転写ドットが縦長に変形するので、発熱抵抗体について、幅Wを1とすると、長さLは1〜1.6の範囲のものがより好ましいと判断できる。
【0047】
ガラスグレーズ層32の曲面の曲率半径について、図8に示すように、斜面31−3の幅tを0.15mm〜1.50mmのライン型サーマルヘッドで印刷実験した。斜面31−3の幅tを大きくしすぎると、発熱素子36の直下のガラスグレーズ層32の厚みが厚くなり、高速印字では発熱素子36直下のガラスグレーズ層32の蓄熱作用によりカラー画質を劣化させる傾向がある。逆に、斜面31−3の幅tを小さくしすぎると、ガラスグレーズ層32の製造( 形成 )が難しくなるのでコストアップとなる。そこでバランス的には、斜面31−3の幅tは、0.2mm〜0.8mmが好ましいと判断できる。
【0048】
このときのガラスグレーズ層32の曲面の曲率半径について0.2mm〜2mmまでの範囲で実験してみたが、ライン型サーマルヘッドの発熱部表面( 保護層35 )は、電極層34の端部の発熱抵抗体層33との境界による段差が存在するので、転写時のインクリボン側への熱効率を低下させているが、曲面による突出性により熱効率の改善が図られている。
しかしながら、曲率半径を大きくし過ぎると、曲面が平坦的になり熱効率の改善の効果が低下する。特にカラー印字における2色目、3色目の重ね印字( 転写 )時に、印刷がかすれる等の現象が発生した。また逆に、曲率半径を小さくし過ぎると、曲面が極端に突起状になり、インクリボンとライン型サーマルヘッドの接触が面状ではなく線状( 点状 )となり、圧力分布がこの接触する線上部分を中心にして急峻に変化するため、転写が不安定になる。さらに、ガラスグレーズ層32と平板状基板31の主面31−1及び端面31−2との境界の段差が大きくなり、その部分にかかるストレスが大きく、この部分を介して端面31−2上に形成されている回路へ接続されている電極層34が断線するという可能性がある。そこで、高品位のカラー印刷を実現するためには、バランス的にはガラスグレーズ層34の曲面の曲率半径は0.3mm〜1.5mmが最適と判断される。
【0049】
また、紙送りスピードについては、0.5inch/sec 、1inch/sec 、2inch/sec 、4inch/sec 、8inch/sec で印刷評価を行ったが、どの速度においても一対の電極層34間の中心線と頂線又は最大圧力荷重線Gとの位置関係が上記の範囲にあるものについては良好な印字結果を得た。
特に2inch/sec 以上の紙送りスピードになると、上述した条件による効果が顕著に現れた。
【0050】
このようにこの実施の形態によれば、一対の電極層34間の中心線( 発熱抵抗体の中心 )とガラスグレーズ層32の曲面の頂線との距離aが、電極層34間の距離Lに対して下記の条件を満たすとき、高印字品質を実現することができる。
−10−( 1/2 )・L<a≦−10+( 1/2 )・L
すなわち、プラテン6〜9に対する最大圧力荷重線Gに対して書き直せば、一対の電極層34間の中心線と最大圧力荷重線Gとの距離bとすれば、
−( 1/2 )・L<b≦+( 1/2 )・L
という範囲条件となる。
この範囲条件により、ガラスグレーズ層の形状寸法に対して、このガラスグレーズ層における発熱抵抗体の位置の厳密な定義を行うことができ、高印字品質を確実に実現することができる。
【0051】
なお、この実施の形態においては、図8に示すように、平面状基板31の一角に形成された斜面31−3からはみ出さないように、ガラスグレーズ層32を形成したものについて説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、図9に示すように、ガラスグレーズ層32が、斜面31−3上から主面31−1及び端面31−2にわたるものにも適用できるものである。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したようにこの発明によれば、グレーズ層の形状寸法に対して、このグレーズ層における発熱抵抗体の位置の厳密な定義を行うことができ、高印字品質を確実に実現することができるサーマルヘッド及びサーマルプリンタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態のカラープリンタの概略の要部構成を示す図。
【図2】同実施の形態のカラープリンタの各サーマルヘッドを制御する要部回路構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態のカラープリンタのサーマルヘッドの先端部の概略的な要部構成を示す断面図及びその先端部の一部に形成された発熱素子の概略的な要部構成を示す断面図。
【図4】同実施の形態のカラープリンタの各サーマルヘッドの印字面を示す図。
【図5】同実施の形態のカラープリンタの各サーマルヘッドの先端部の一部に形成された発熱素子の実際の印刷媒体供給側限界の形状構成を示す断面図及びこの断面図における位置関係を示す上面図。
【図6】同実施の形態のカラープリンタの各サーマルヘッドの先端部の一部に形成された発熱素子の実際の印刷媒体排出側限界の形状構成を示す断面図及びこの断面図における位置関係を示す上面図。
【図7】同実施の形態のカラープリンタのサーマルヘッド1〜4の取付け方によりガラスグレーズ層の頂点( 頂線 )Sの位置が変化することを示す図。
【図8】同実施の形態のカラープリンタのサーマルヘッドの先端部の概略的な寸法形状を示す側面図。
【図9】同実施の形態のカラープリンタのサーマルヘッドの先端部の他の例の概略的な寸法形状を示す側面図。
【図10】従来の第1の例の特開昭59−188452号に開示されている従来の4ヘッド方式のサーマルプリントヘッド部を示す断面正面図。
【図11】従来の第2の例の特開昭61−10468号に開示されている感熱記録装置の記録時の端面型サーマルヘッドと記録媒体および回転ローラとの押圧接触状態を示す要部拡大側面図。
【図12】従来の第3の例の特開昭57−103863号に開示されているサーマルヘッドを示す断面図。
【符号の説明】
1〜4…サーマルヘッド、
6〜9…プラテン、
31…平板状基板、
31−1…主面、
31−2…端面、
31−3…斜面、
32…ガラスグレーズ層、
33…発熱抵抗体層、
34…電極層、
35…保護層、
L…各電極層34間の距離( 発熱素子の長さ )、
S…ガラスグレーズ層32のプラテンに最初に接触する点( 頂線 )の位置、
G…サーマルヘッドの発熱素子近傍の最大圧力荷重点( 線 )の位置。
Claims (2)
- 平板状の長方体基板と、
この長方体基板の一端の角に形成された面取り状の斜面と、
この斜面上に形成された予め設定された曲面を有する絶縁層と、
この絶縁層上に前記斜面の傾斜方向に予め設定された距離だけ隔てて複数組平行に配置した一対の電極と、
この各一対の電極間にそれぞれ接続された発熱抵抗体とを設け、
前記一対の電極間の中心が、前記絶縁層の曲面の前記斜面の傾斜方向に直交する最大圧力荷重線に対して印刷媒体搬送方向の供給側と排出側で前記電極間距離の2分の1の範囲内に位置したことを特徴とするサーマルヘッド。 - 請求項1記載のサーマルヘッドを使用し、前記サーマルヘッドとプラテンとの間にインクリボン及び印刷媒体を介挿し、前記サーマルヘッドの発熱作用により前記インクリボンのインクを前記印刷媒体へ転写して印字を行うサーマルプリンタにおいて、
前記サーマルヘッドを、前記斜面の傾斜方向を前記印刷媒体の搬送方向と一致させ、
前記サーマルヘッドを静止した前記プラテンに押圧接触させたときに、前記サーマルヘッドの前記絶縁層の曲面が最初に前記プラテンに接触する接線に対して前記印刷媒体の供給側へずれる圧力作用の最大圧力荷重線に対して印刷媒体搬送方向の供給側と排出側で前記サーマルヘッドの電極間距離の2分の1の範囲内に、前記サーマルヘッドの一対の電極間の中心が位置するように、前記サーマルヘッドを取付けたことを特徴とするサーマルプリンタ。
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