JP3615661B2 - アルミニウム薄膜配線の補修方法 - Google Patents

アルミニウム薄膜配線の補修方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミック基板上に形成されるアルミニウム薄膜配線の断線部を補修するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
従来より、サーマルヘッド等の電子部品の配線材料として、安価で加工性に優れたアルミニウム(Al)が用いられている。このアルミニウムを用いてサーマルヘッドの配線を形成する場合、従来周知の薄膜手法、例えばスパッタリング法やフォトリソグラフィー技術,エッチング技術等を採用し、アルミニウムをセラミック基板の表面に所定厚み、所定パターンに被着させることによって所定のアルミニウム薄膜配線(以下、アルミ配線と略記する)が形成される。
【0003】
そして、このようなアルミ配線が被着・形成されるセラミック基板は、例えばアルミナセラミックスから成る場合、アルミナ,シリカ,マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤,溶媒を添加・混合して泥漿状に成すとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシートを形成し、しかる後、前記セラミックグリーンシートを四角形状に打ち抜き加工するとともに、これを高温で焼成することによって製作される。
【0004】
しかしながら、上述のようにして製作されるセラミック基板の表面には、セラミック基板の製造に使用されるセラミック原料粉末の粒径バラツキ等に起因して高さ10μm〜50μm程度の大きな突起が形成される。そのため、セラミック基板の表面に前述の薄膜手法によってアルミ配線を形成しようとすると、アルミニウム(Al)のスパッタ膜が突起付近で断線したり、或いは、アルミ配線をパターニングする際に使用されるフォトレジストが突起付近で破れてしまい、アルミ配線を所定形状にパターニングすることができなくなる欠点を有していた。
【0005】
そこで、このようなアルミ配線の断線部を補修して使用可能にすることで製品の良品率を上げることが検討されている。
【0006】
ところが、アルミ配線を形成するアルミニウム(Al)は極めて酸化され易く、ほんの少しの間でも大気と接触すると表面に厚み10Å〜50Å程度の酸化膜(酸化アルミニウムの膜)が形成される。そのため、アルミ配線の断線部上にただ単に補修用の導体膜を付着させただけでは前述の酸化膜によって導電膜−アルミ配線間の導通が遮断されてしまい、断線部を良好に補修することができない。
【0007】
またアルミ配線表面の酸化膜をエッチング等によって事前に除去したとしてもアルミニウムそのものが活性であるために再び表面に酸化膜が形成されてしまい、断線部を良好に補修することができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、本発明のアルミニウム薄膜配線の補修方法は、セラミック基板の表面に形成したアルミニウム薄膜配線に生じた断線部を補修する方法であって、前記アルミニウム薄膜配線の断線部付近を、イオン化傾向がアルミニウムよりも小さく、硬度がアルミニウム以上で、且つセラミック基板以下の金属から成る研磨針で引っ掻いて引っ掻き跡を形成するとともに、該引っ掻き跡の表面に研磨針自身の摩耗により生じた金属を付着させ、しかる後、前記アルミニウム薄膜配線の断線部を縦断するように導電膜を付着せしめ、該導電膜を引っ掻き跡表面の前記金属を介してアルミニウム薄膜配線と電気的に接続させて前記断線部を補修することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の補修方法によってアルミニウム薄膜配線を補修した配線基板の断面図、図2(a)〜(c)は本発明のアルミニウム薄膜配線の補修方法を説明するための各工程毎の平面図であり、1はセラミック基板、2はアルミニウム薄膜配線(以下、アルミ配線と略記する)、2aは引っ掻き跡、3は研磨針、3aは研磨針自身の摩耗によって生じた金属微粒子、4は導電膜である。
【0010】
図1の配線基板はセラミック基板1の上面にアルミ配線2を被着・形成した構造を有しており、アルミ配線2に生じた断線部を導電膜4等を用いて補修している。
【0011】
前記セラミック基板1は、アルミナセラミックスやガラスセラミックス、ムライト等のセラミック材料から成り、その上面でアルミ配線2を支持するための支持母材としての作用を為す。このセラミック基板1を例えばサーマルヘッド用の基板として用いる場合、セラミック基板1の上面には更にガラスグレーズ層や多数の発熱素子等が被着・形成され、発熱素子の発熱を制御するためのドライバIC等が搭載されることとなる。
【0012】
尚、前記セラミック基板1は、例えばアルミナセラミックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料の粉末に適当な有機溶剤,溶媒を添加・混合して泥漿状に成すとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシートを形成し、しかる後、前記セラミックグリーンシートを所定形状に打ち抜き加工するとともに、これを高温で焼成することによって製作される。このとき、セラミック基板1の表面には、セラミック原料の粉末の粒径バラツキ等によって高さ10μm〜50μm程度の大きな突起が形成されることとなる。
【0013】
また前記セラミック基板1の上面に被着されているアルミ配線2は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属から成り、例えばこのアルミ配線2をサーマルヘッドの配線として用いる場合、50μm〜100μmの線幅、62.5μm〜125μmピッチに被着・配列され、外部からの電力や信号等をセラミック基板1上に取着される発熱素子やドライバICに供給するための給電線、或いは信号線としての作用を為す。
【0014】
このアルミ配線2は、従来周知の薄膜手法、具体的にはスパッタリング法やフォトリソグラフィー技術,エッチング技術等を採用することによってセラミック基板1の表面に所定厚み(0.5μm〜1.2μm)、所定パターンに被着・形成される。
【0015】
そして前記アルミ配線2がセラミック基板表面の突起等に起因して断線を生じている箇所では、その部分の電気的接続を得るための補修が施される。
【0016】
この補修は、断線部付近のアルミ配線表面に引っ掻き跡2aを設けるとともに、該引っ掻き跡2aの表面に微粒子状もくしは箔状の所定金属3aを付着させ、更にその上に前記断線部を縦断するようにして導電膜4を被着・形成することにより行われており、これによって前記断線部で分断されてしまったアルミ配線同士を引っ掻き跡2a上の金属3aと導電膜4とで電気的に接続させている。
【0017】
前記引っ掻き跡2aは、アルミ配線2の補修の際に、アルミ配線表面の酸化膜を一部除去して酸化されていないアルミニウム(Al)の表面を露出させたことにより出来た跡であり、少なくともその一部がセラミック基板1の表面まで到達するように、深い領域まで形成される。
【0018】
また前記引っ掻き跡2aの表面の金属3aは、イオン化傾向がアルミニウム(Al)よりも小さく、ビッカース硬度Hvがアルミニウム(Al)以上で、且つセラミック基板以下という属性を持つ金属材料から成り、これらの金属3aはアルミ配線2の断線部付近に設けた引っ掻き跡2の表面に対して強固に付着してアルミ配線2と電気的に接続され、またその上に被着される導電膜4とも良好な状態で電気的に接続される。従ってこれらの金属3a等をアルミ配線2と導電膜4との間に介在させておくことにより、アルミ配線2−導電膜4間の導通が得られる。
【0019】
尚、このような金属3aとしては、セラミック基板1がアルミナセラミックス(ビッカース硬度Hv:1400)から成る場合、例えばビッカース硬度Hvが40〜1000程度の酸化されにくい金属、例えばSUS304(JIS規格)や銅(Cu),チタン(Ti),タンタル(Ta),タングステン(W)等から成る。
【0020】
また前記導電膜4は、銅(Cu)や銀(Ag)等の金属を含む厚膜導体やアルミ配線2と同様の薄膜導体から成り、引っ掻き跡2a上の金属微粒子3aを介してアルミ配線2と電気的に接続することでアルミ配線2の断線部を補修する作用を為す。
【0021】
次に上述した配線基板におけるアルミ配線2の補修方法について図2(a)〜(c)を用いて説明する。
【0022】
(1)まず、アルミ配線2の断線部付近(図2(a)参照)を、イオン化傾向がアルミニウム(Al)よりも小さく、ビッカース硬度がアルミニウム(Al)以上で、且つセラミック基板以下の金属から成る所定の研磨針3で数回、引っ掻いて、アルミ配線2の表面に、図2(b)に示す如く、複数本の引っ掻き跡2aをセラミック基板1の表面に到達するように形成するとともに、該引っ掻き跡2aの表面に研磨針自身の摩耗により生じた微粒子状もしくは箔状の金属3aを付着させる。
【0023】
このとき、引っ掻き跡2aが形成されたアルミ配線2の表面には、研磨針3の引っ掻きによる酸化膜の除去によりその下から酸化されていないアルミニウム(Al)が露出されるのとほぼ同時に、セラミック基板1との摩擦により摩耗して生じた、酸化されにくい金属3aが強固に付着されることから、該金属3aとアルミ配線2との間に両者の電気的接続を遮断する酸化膜等は何ら介在されることがなく、アルミ配線2及び金属3aを良好、且つ確実に電気的接続することができる。
【0024】
前記研磨針3は、先に述べた金属3aと同じ材質の金属材料、即ちSUS304(JIS規格)や銅(Cu),チタン(Ti),タンタル(Ta),タングステン(W)等から成り、このような硬度を持った研磨針3を使用してアルミ配線2を引っ掻くことにより、引っ掻き跡2aを比較的容易に形成することができるとともに、セラミック基板1との接触により研磨針3を効率良く摩耗させて微粒子状もしくは箔状の金属3aを発生させることができる。尚、研磨針3のビッカース硬度Hvがアルミニウム(Al)よりも小さいとアルミ配線2に引っ掻き跡2aを形成するのが難しくなり、またビッカース硬度Hvがセラミック基板1よりも大きいと研磨針自身を摩耗させて微粒子状もしくは箔状の金属3aを効率良く発生させることが不可となるばかりでなく、セラミック基板1の表面にまで引っ掻き跡が形成されてセラミック基板1に割れ等の破損を生じさせる恐れがある。従って研磨針3のビッカース硬度Hvはアルミニウム(Al)以上、セラミック基板以下の範囲内に特定される。
【0025】
また前記研磨針3として銅(Cu)を用いた場合には、引っ掻き跡2aを形成する際の作業性が良好で、アルミ配線2上に幅広く接触させることができ、しかも接続抵抗を小さく抑えることができる。従って研磨針3は銅(Cu)で形成することが好ましい。
【0026】
尚、研磨針自身の摩耗により発生する金属3aは、上述した如く、イオン化傾向がアルミニウム(Al)よりも小さい金属から成り、大気と接触しても酸化されにくいことから、比較的長時間(48時間程度)大気中に放置しておいても表面に酸化膜が形成されることは殆どなく、従ってその上に被着される導電膜4とも良好な状態で電気的に接続される。
【0027】
(2)次に図2(c)に示す如く、アルミ配線2の断線部を縦断し、かつ一部がアルミ配線表面の引っ掻き跡2aを被覆するように導電膜4を付着せしめ、これによって導電膜4を引っ掻き跡2a上の金属3aを介してアルミ配線2と電気的に接続させる。
【0028】
前記導電膜4は従来周知の厚膜手法や薄膜手法を採用することによって形成される。例えば厚膜手法を採用する場合、銅(Cu)や銀(Ag)等の金属粉末に適用な有機溶媒、溶剤等を添加・混合して得た所定の導電ペーストを従来周知のスクリーン印刷法によってアルミ配線2の断線部を縦断し、かつ一部がアルミ配線表面の引っ掻き跡2aを被覆するようにして印刷・塗布し、これを高温(150℃〜200℃)で焼き付けることによって被着・形成される。
【0029】
このとき、前記金属3aの表面には前述した如く酸化膜は殆ど形成されていないため、金属3aは導電膜4とも良好に電気的接続される。従って、導電膜4は金属3aを介して断線部の両側のアルミ配線2に良好に電気的に接続され、これによってアルミ配線2の断線部の補修が確実、且つ良好に行われる。
【0030】
尚、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0031】
例えば上述の形態においてセラミック基板表面のうち、少なくともアルミ配線2が形成される領域の表面粗さを中心線平均粗さRaで0.1μm〜1.0μmの範囲内になしておけば、研磨針3でアルミ配線2の表面に引っ掻き跡2aを形成する際に研磨針3を比較的効率良く摩耗させることができ、引っ掻きの回数を少なくして補修に要する時間を短縮することができる。従ってセラミック基板表面のうち、少なくともアルミ配線2が形成される領域の表面粗さを中心線平均粗さRaで0.1μm〜1.0μmの範囲内になしておくことが好ましい。
【0032】
【発明の効果】
本発明の補修方法によれば、引っ掻き跡が形成されたアルミ配線の表面には、研磨針の引っ掻きによる酸化膜の除去によりその下から酸化されていないアルミニウム(Al)が露出されるのとほぼ同時に、セラミック基板との摩擦により摩耗して生じた、酸化されにくい金属が強固に付着されることから、該金属とアルミ配線との間に両者の電気的接続を遮断する酸化膜等は何ら介在されることがなく、アルミ配線及び前記金属を良好、且つ確実に電気的接続することができる。従って、金属が付着されたアルミ配線の引っ掻き跡上にアルミ配線の断線部を縦断するように導電膜を形成することにより、該導電膜を前記引っ掻き跡表面の金属を介してアルミ配線と良好に電気的に接続させることができ、これによってアルミ配線の断線部を確実、且つ良好に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補修方法によってアルミニウム薄膜配線を補修した配線基板の断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明のアルミニウム薄膜配線の補修方法を説明するための各工程毎の平面図である。
【符号の説明】
1・・・セラミック基板
2・・・アルミ配線(アルミニウム薄膜配線)
2a・・引っ掻き跡
3・・・研磨針
3a・・金属
4・・・導電膜

Claims (1)

  1. セラミック基板の表面に形成したアルミニウム薄膜配線に生じた断線部を補修する方法であって、前記アルミニウム薄膜配線の断線部付近を、イオン化傾向がアルミニウムよりも小さく、硬度がアルミニウム以上で、且つセラミック基板以下の金属から成る研磨針で引っ掻いて引っ掻き跡を形成するとともに、該引っ掻き跡の表面に研磨針自身の摩耗により生じた金属を付着させ、しかる後、前記アルミニウム薄膜配線の断線部を縦断するように導電膜を付着せしめ、該導電膜を引っ掻き跡表面の前記金属を介してアルミニウム薄膜配線と電気的に接続させて前記断線部を補修することを特徴とするアルミニウム薄膜配線の補修方法。
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