JP3615408B2 - ガス圧縮膨張機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力の発生に用いるスターリングエンジンや、低温の発生に用いるスターリング冷凍機などのガス圧縮膨張機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、バイオテクノロジーの分野や電子デバイスの分野等の先端技術分野において、各種試料や各種材料の極低温の保存技術の開発が急務になっている。特に、スターリング冷凍機などのガス圧縮膨張機は、上記極低温を実現する手段として注目され各種赤外線センサー、超電導デバイス等の冷却用やバイオメディカル用のフリーザ、冷凍庫等に広く利用されようとしている。
【0003】
図3は、かかるガス圧縮膨張機の概略構成を示している。ガス圧縮膨張機100は、圧縮ピストン151を備えたピストン型圧縮機である圧縮部150、ディスプレーサ131を備えた膨張部130、クランク機構121を備えた駆動部120等を有し、圧縮部150と膨張部130とは、ガス流路170で連通されている。
【0004】
また、圧縮部150は、圧縮ピストン151を収納する圧縮シリンダ152、圧縮シリンダ152の頭部側(図3において左側)に設けられた圧縮空間153、圧縮シリンダ152の外側面に設けられて圧縮により発生した作動ガスの熱を外部に放熱する放熱フィン154、圧縮シリンダ152の駆動部120側に配設されたオイルシール部155、圧縮ピストン151と圧縮シリンダ152とにより形成されるバッファ空間156、オイルシール部155を挿通して圧縮ピストン151に駆動力を伝達する圧縮ピストン151等を有している。
【0005】
膨張部130は、ディスプレーサ131を収納する膨張シリンダ132、膨張シリンダ132の頭部側(図3において上側)に設けられた膨張空間134,ディスプレーサ131内に設けられた蓄冷材133等を有して、膨張シリンダ132の頭部にコールドヘッド112が取付けられている。
【0006】
駆動部120は、クランク室122内に、クランク機構121と、クランク機構121及び圧縮ピストンロッド157とに連結されたコネクティングロッド123と、クランク機構121及びディスプレーサロッド135とに連結されたコネクティングロッド124等を有しており、そのクランク室122内の底部にはクランク機構121等を潤滑するためのオイルが貯溜されている。
【0007】
このような構成で、クランク機構121が回動することにより、回動力がコネクティングロッド123,124等を介して圧縮ピストン151及びディスプレーサ131に伝達される。
【0008】
このとき、2つのコネクティングロッド123、124は、同一の作用点でクランク機構121から駆動力を受けているので、圧縮ピストン151はディスプレーサ131より略90度位相がずれて往復運動するようになっている。
【0009】
そして、圧縮ピストン151が図3上の右端(下死点)から左端(上死点)に移動すると、圧縮空間153内の作動ガスは等温圧縮される。
【0010】
この間、ディスプレーサ131は上動し、上死点に達した後、下動するようになる。圧縮ピストン151の上動に伴い圧縮された作動ガスは、ガス流路170を介して膨張部130側に送られ、ディスプレーサ131が下動すると作動ガスは蓄冷材133を通過し蓄冷材133と熱交換して膨張空間134に送られる。
【0011】
ディスプレーサ131が下死点に達するに従い、圧縮ピストン151は上死点から下死点に移動し、作動ガスは膨張して降温する。このときの膨張過程は等温膨張過程であるため、膨張により降温しただけ外部の熱を吸熱する。この結果、膨張シリンダ132頭部に設けたコールドヘッド112が冷却される。
【0012】
そして、圧縮ピストン151が下死点に近づくに従い、ディスプレーサ131は上動を始め、作動ガスはディスプレーサ131を通過し、蓄冷材133から吸熱して1サイクルが終了する。
【0013】
そして、上記構造よりなるガス圧縮膨張機においては、圧縮ピストン151には、リング溝が形成され、リング溝にピストンリング159が嵌合している。そして、ピストンリング129がリング溝及び圧縮シリンダ152に密接することにより、圧縮ピストン151と圧縮シリンダ152との密着性を維持している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成にかかるピストン型圧縮機を使用していると、圧縮空間153の平均圧力とバッファ空間156の平均圧力とに差圧が生じて、当該差圧に依存した力が圧縮ピストン151に加わるようにようになり、この結果、駆動部120の消費電力が増加して装置効率を低下させるという問題があった。
【0015】
かかる差圧の発生メカニズムを図4〜図6を参照して説明する。尚、差圧発生のメカニズムは、現在の所学術的に明確になっておらず、後述するメカニズムはその1つのモデルであると考えられる。
【0016】
図4は、圧縮空間153の平均圧力が高くなった場合の圧力変動を示す図である。同図において、実線は圧縮空間153の圧力変動を示し、点線はバッファ空間156の圧力変動を示している。また、図5及び図6は、圧縮ピストン151の往復運動に伴うピストンリング159の動きを模式的に示した図で、図5(a)及び図6(a)は圧縮ピストン151が圧縮空間153側に動いたときを示し、図5(b)及び図6(b)はバッファ空間156側に動いたときを示している。
【0017】
ピストンリング159が正常に作用しているならば、圧縮空間153及びバッファ空間156の作動ガスは相互に移動せず、平均圧力の差圧が発生しないはずである。しかし、現実には図4に例示するように圧縮空間153とバッファ空間156との平均圧力に差が生じてしまう。
【0018】
ピストンリング159は、圧縮ピストン151の周面に沿って形成されたリング溝160に挿嵌されている(図5、図6参照)。このとき、リング溝160の上下側面160a、160cとピストンリング159の上下側面159a、159cの少なくとも1つの相対向する側面は密接しておらず隙間Ga、Gcが形成されている。また、リング溝160の底面160bとピストンリング159の底面159bとも密接しておらず、隙間Gbが形成されている。
【0019】
このような隙間Ga〜Gcは、リング溝160を形成した後にピストンリング159を挿嵌して組み立てるため、これらを密接させることが困難であるためであり、また以下の効果を得るために積極的に非密接状態としている。
【0020】
即ち、圧縮ピストン151が圧縮シリンダ152と密接することは、圧縮を高効率に行うために必要であるが、圧縮ピストン151等の加工誤差、熱膨張の違い等が存在するため上記要求を常に満たすことができず、隙間G1,G2が発生してしまう。
【0021】
かかる隙間G1,G2を塞ぐために、ピストンリング159が用いられる。しかし、ピストンリング159においても加工誤差、熱膨張等があり、また上述したようにリング溝160を形成した後にピストンリング159を挿嵌して組み立てるため、ピストンリング159と圧縮シリンダ152との密着性を確保することが容易でない。
【0022】
そこで、隙間Ga〜Gcを形成して、圧縮空間153又はバッファ空間156の作動ガスが、隙間Ga、Gcを介して隙間Gbに侵入するようにしている。
【0023】
そして、侵入した作動ガスは、ピストンリング159の底面159bを圧縮シリンダ152方向に付勢し(図5、図6において実線矢印)これによりピストンリング159と圧縮シリンダ152とが常時密着するようにしている。
【0024】
また、ピストンリング159とリング溝160との上下側面は、常時密接していないので、圧縮ピストン151の運動に伴いピストンリング159はリング溝160内で動くことになる。
【0025】
しかし、圧縮空間153又はバッファ空間156のうち圧力の高い方の空間の圧力により、低圧側の空間方向にピストンリング159が付勢されるので(図5、図6において点線矢印)、リング溝160の上又は下側面160a、160cとピストンリング159の上又は下側面160a、160cとの密着性が確保されて、圧縮空間153とバッファ空間156との作動ガスの移動が規制されるようになっている。
【0026】
ところが、圧縮ピストン151の運動に伴い、種々の異物が(例えば、圧縮シリンダ152と摺動して摩耗したピストンリング159の粉等)がリング溝160の上側面160a又は下側面160cに付着して、その部分でのピストンリング159とリング溝160とが密着しなくなる場合が生じる。
【0027】
そして、上側面160a又は下側面160cのいずれか一方に異物が付着した場合には、後述する現象によって上述の差圧が生じてしまう。
【0028】
図6は、異物Bがリング溝160の上側面160aに付着した場合における圧縮ピストン151の動きに伴うピストンリング159の動きを示したものである。
【0029】
この場合、圧縮ピストン151は圧縮空間153側に動くと(図6(a)参照)、圧縮空間153は縮小しバッファ空間156は拡張して、圧縮空間153の圧力はバッファ空間156の圧力より大きくなる。
【0030】
これにより、ピストンリング159は異物Bが付着していないシール溝160の下側面160c側に動き、ピストンリング159の下側面159cとシール溝160の下側面160cとが密接する。従って、圧縮空間153からバッファ空間156に作動ガスが移動することはない。
【0031】
一方、圧縮ピストン151がバッファ空間156側に動くと(図6(b)参照)、圧縮空間153は拡張しバッファ空間156は縮小して、圧縮空間153の圧力はバッファ空間156の圧力より小さくなる。
【0032】
この時、ピストンリング159は異物Bが付着しているシール溝160の上側面160a側に動くが、この異物Bのためにシール溝160の上側面160aと密接することができず、バッファ空間156から圧縮空間153側に作動ガスが移動する(図6(b)において2点矢印)。
【0033】
従って、圧縮空間153の平均圧力は、バッファ空間156の平均圧力より高くなって、図4に示したような差圧が発生してしまう。
【0034】
尚、ここでは異物Bは、シール溝160の上側面160aに付着した場合について説明したが、下側面160cについても同様であり、また、ピストンリング159の上下側面159a、159cのいずれかに付着しても同様の現象が生じると推察される。但し、シール溝160の下側面160cに異物Bが付着した場合には、圧縮空間153の平均圧力が、バッファ空間156の平均圧力より低くなってしまう。
【0035】
本発明は斯かる点に鑑みて為されたものであって、上述した差圧の発生を抑制したガス圧縮膨張機を提供することを目的とする。
【0036】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、シリンダ内に配設されたピストンを挟んで作動空間とバッファ空間とが形成され、前記作動空間で圧縮又は膨張された作動ガスのガス流路が前記シリンダとの間に形成されるように該シリンダに被せて配設された筐体部を有し、前記ピストンが往復運動することにより前記作動空間の作動ガスを圧縮又は膨張してなるガス圧縮膨張機において、前記バッファ空間と前記ガス流路とを連通するように所定径の連通孔が前記シリンダに形成されていることを特徴とする。具体的には、前記ピストンの周面に形成されたリング溝と、該リング溝に嵌合され、前記作動空間とバッファ空間との気密性を保持し得るピストンリングとを備えている。
【0037】
この構成を用いることにより、所定径の連通孔をシリンダに形成して、バッファ空間とガス流路とを連通させているので、作動空間とバッファ空間との平均圧力の差圧発生を防止する。
【0038】
また、駆動部と、該駆動部から駆動力を受ける圧縮ピストンが、圧縮シリンダ内に往復自在に配設されて、該圧縮シリンダ内に形成された圧縮空間の作動ガスを圧縮する圧縮部と、該圧縮部と位相がずれた駆動力を受けてディスプレーサが膨張シリンダ内を往復運動することにより、前記圧縮部からの作動ガスを膨張させる膨張部とを有したガス圧縮膨張機において、前記圧縮シリンダとの間に前記圧縮部と前記膨張部とを連通するガス流路が形成されるように該圧縮シリンダに被せて配設された筐体部を有し、前記圧縮ピストンを挟んで前記圧縮空間と反対側に形成されたバッファ空間と前記ガス流路とを連通するように所定径の連通孔が前記圧縮シリンダに形成されている構成としても良い。
【0039】
この構成を用いることにより、1ピストン1ディスプレーサ型ガス圧縮膨張機において、圧縮空間とそのバッファ空間との平均圧力に差圧が生じないようにすることができ、成績係数を向上させることができる。
【0040】
そして、前記圧縮部と前記膨張部とを並設して前記駆動部に固定すると共に、前記筐体部の周囲に放熱フィンを形成して、該圧縮部で圧縮された作動ガスの熱を放熱してなる構成としても良い。この構成を用いることにより、圧縮部と膨張部とを同一方向に配設することができ、装置全体の占有面積を小さくすることができると共に、作動ガスから受けた熱を効率的に外気に放出することが可能になる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のガス圧縮膨張機を適用させた一実施の形態例であるスターリング冷凍機の構成を示す概略断面図である。このスターリング冷凍機10は、圧縮ピストン51を備えたピストン型圧縮機である圧縮部50、ディスプレーサ31を備えた膨張部30、クランク機構21を備えた駆動部としてのクランク室20等を有し、膨張部30と圧縮部50とが並設されてクランク室20の上部に設けられている。
【0042】
クランク室20には、クランク機構21に回転駆動力を与えるロータ25と、クランク21a、21bに連結されたコネクティングロッド23、24と、コネクティングロッド23、24に連結されたクロスガイド26、27等を有し、その底部にクランク機構21を潤滑するためのオイルが貯溜されている。
【0043】
尚、クランク21aとクランク21bとは、シャフト21cに偏心して連結され、且つ、圧縮ピストン51の位相がディスプレーサ31の位相に対して略90度遅れるようにクランク21a、21bの取付角度が設定されている。
【0044】
膨張部30には、ディスプレーサ31を収納する膨張シリンダ32と、膨張シリンダ32の頭部側(図1において上側)に設けられた膨張空間34と、膨張シリンダ32のクランク室20側に配設されたオイルシール部36と、オイルシール部36を挿通してディスプレーサ31に駆動力を伝達するディスプレーサロッド35と、ディスプレーサ31内に設けられた蓄冷材33等を有して、膨張シリンダ32の頭部に冷熱を取り出すコールドヘッド12が取り付けられている。
【0045】
また、圧縮部50は、圧縮ピストン51を収納する圧縮シリンダ52と、圧縮シリンダ52の頭部側(図1において上側)に設けられた圧縮空間53と、圧縮シリンダ52の外側面に被せて設けられ、その周面に圧縮により発生した作動ガスの熱を外部に放熱するための放熱フィンが取り付けられている圧縮筐体部54と、圧縮シリンダ52のクランク室20側に配設されたオイルシール部55と、オイルシール部55を挿通して圧縮ピストン51に駆動力を伝達する圧縮ピストンロッド57等を有している。圧縮筐体部54は、圧縮シリンダ52を覆うように設けられ、圧縮シリンダ52の外壁面との間に圧縮部50と膨張部30とを連通するガス流路70を形成しており、その圧縮筐体部54の外壁周囲に放熱フィン54aが取り付けられている。
【0046】
そして、圧縮部50と膨張部30とは、並設してクランク室20に固定されている。これにより、同一方向に配設して装置全体の占有面積を小さくすることができる。
【0047】
また、圧縮ピストン51には、リング溝60が形成され、そのリング溝60にピストンリング59が嵌合して設けられて圧縮シリンダ52との密接を高めている。圧縮シリンダ52には、圧縮ピストン51を挟んで圧縮空間53の反対側に形成されるバッファ空間56と、ガス流路70とを連通する所定径の連通孔52aが形成されている。
【0048】
ここで、バッファ空間56は圧縮ピストン51とオイルシール部55によって密閉空間となり、圧縮ピストン51を往復運動させる際の抵抗として働くようになるので、この抵抗を小さくするためにバッファ空間56は圧縮空間53に比べて大きく設定している。しかし、装置の小型化を図るためにはバッファ空間56の容積を十分確保できない場合には、バッファ空間に連通したバッファ室(図示せず)を設けて実効的にバッファ空間56の容積を大きくさせても良い。
【0049】
また、本実施形態の説明では、圧縮空間53が圧縮シリンダ52の頭部側に形成させた場合について説明しているが、これに限らず、クランク室20側に設けて圧縮ピストン51を挟んで形成される圧縮空間53とバッファ空間56との配設位置を逆にしても良い。
【0050】
次に、上記構成に基づくスターリング冷凍機10の動作を説明する。クランク機構21が回動することにより、回動力がコネクティングロッド23、24等を介して圧縮ピストン51及びディスプレーサ31に伝達されて、圧縮ピストン51はディスプレーサ31に対して位相が略90度遅れた往復運動をするようになる。
【0051】
そして、圧縮ピストン51が下死点から上死点に移動すると、圧縮空間53内の作動ガスが圧縮される。この間、ディスプレーサ31は上動して上死点に達した後、下動するようになる。
【0052】
圧縮ピストン51の上動に伴い圧縮された作動ガスは、ガス流路70を移動して放熱フィン54aにより放熱して膨張部30側に送られる。ディスプレーサ31が下動すると作動ガスは蓄冷材33を通過し蓄冷材33と熱交換して膨張空間34に送られる。
【0053】
ディスプレーサ31が下死点に達するに従い、圧縮ピストン51は上死点から下死点に移動し、作動ガスは膨張して降温する。この時の膨張過程は等温膨張過程であるため、膨張により降温しただけ外部の熱を吸熱する。即ち、コールドヘッド12から熱を奪うことができる。
【0054】
圧縮ピストン51が下死点に近づくに従い、ディスプレーサ31は上動を始め、作動ガスはディスプレーサ31を通過し蓄冷材33と熱交換して圧縮空間53に戻り1サイクルが終了する。
【0055】
このようなサイクルにおいて、装置効率を高くするためには、圧縮部50で圧縮された作動ガスの熱を速やかに、且つ、効率的に外部に放熱する必要がある。そこで、本発明では、放熱フィン54aを設けた圧縮筐体部54と圧縮シリンダ52との間に隙間を形成し、この隙間がガス流路となるようにして作動ガスと放熱フィン54aとの熱接触面積を大きくし、効率的に作動ガスの熱を放熱フィン54aに伝達できるようにしている。また、圧縮筐体部64の放熱フィン54aは、ガス流路70に近接し、かつ、その周囲を覆って設けられているので、作動ガスから受けた熱を効率的に外気に放出することが可能になる。従って、冷凍機の場合には成績係数を高くすることができる。
【0056】
さらに、上記サイクル中に、ピストンリング59とリング溝60との間に、異物が付着すると先に説明した理由によりバッファ空間56と圧縮空間53との平均圧力に差圧が生じて、この差圧により装置効率が低下することになるが、上記連通孔52aによりバッファ空間と圧縮空間53とが常時連通した状態となるので当該差圧の発生は抑えられる。
【0057】
図2は、連通孔52aの効果を示す図で、実線は圧縮空間53の圧力変動を示し、点線はバッファ空間56の圧力変動を示している。
【0058】
尚、連通孔52aにより圧縮空間53とバッファ空間56とが連通しているので、装置効率が若干低下するが、当該効率低下の低下量は差圧発生を防止したことによる効率の上昇量より小さくなるように連通孔52aの大きさ(寸法)が設定されている。従って、これらの差分だけ装置効率が向上し、冷凍機の場合には成績係数を向上することになる。
【0059】
差圧量及び差圧発生頻度等は、圧縮ピストン51の大きさや往復周期、ピストンリング59の材質等種々の条件により異なる。従って、連通孔52aの大きさは一義的に規定することができず、上記条件を勘案して圧縮空間53とバッファ空間56とが連通されることによる効率低下と、差圧発生防止による効率の向上との関係から決定しなければならない。
【0060】
上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態の説明では、1ピストン1ディスプレーサ型スターリング冷凍機10において圧縮シリンダ52に連通孔52aを設け、圧縮空間53とバッファ空間56とを連通させる場合について説明したが、これに限らず、膨張部30のディスプレーサ31の代わりに膨張ピストンを使用する2ピストン型スターリング冷凍機にも適応可能であり、この場合には、膨張ピストンを挟んで膨張シリンダ内に形成される膨張空間とバッファ空間とを連通させるように、膨張部30にも同様の連通孔を形成しても構わない。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたとおり本発明によれば、所定径の連通孔をシリンダに形成して、バッファ空間とガス流路とを連通させているので、作動空間とバッファ空間との平均圧力に差圧が生じないようにすることができ、装置効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスターリング冷凍機の概略断面図である。
【図2】図1装置の連通孔52aの効果を説明する図である。
【図3】従来のスターリング冷凍機の概略断面図である。
【図4】差圧発生時の状態を示す説明図である。
【図5】異物が無い場合のピストンリングの動き等を示す図である。
【図6】異物が付着した場合のピストンリングの動き等を示す図である。
【符号の説明】
10 スターリング冷凍機(ガス圧縮膨張機)
12 コールドヘッド
20 クランク室(駆動部)
21 クランク機構
30 膨張部
31 ディスプレーサ
32 膨張シリンダ
33 蓄冷材
34 膨張空間
35 ディスプレーサロッド
50 圧縮部
51 圧縮ピストン
52 圧縮シリンダ
52a 連通孔
53 圧縮空間(作動空間)
54 圧縮筐体部(筐体部)
54a 放熱フィン
55 オイルシール部
56 バッファ空間
57 圧縮ピストンロッド
59 ピストンリング
60 リング溝
70 連通路
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力の発生に用いるスターリングエンジンや、低温の発生に用いるスターリング冷凍機などのガス圧縮膨張機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、バイオテクノロジーの分野や電子デバイスの分野等の先端技術分野において、各種試料や各種材料の極低温の保存技術の開発が急務になっている。特に、スターリング冷凍機などのガス圧縮膨張機は、上記極低温を実現する手段として注目され各種赤外線センサー、超電導デバイス等の冷却用やバイオメディカル用のフリーザ、冷凍庫等に広く利用されようとしている。
【0003】
図3は、かかるガス圧縮膨張機の概略構成を示している。ガス圧縮膨張機100は、圧縮ピストン151を備えたピストン型圧縮機である圧縮部150、ディスプレーサ131を備えた膨張部130、クランク機構121を備えた駆動部120等を有し、圧縮部150と膨張部130とは、ガス流路170で連通されている。
【0004】
また、圧縮部150は、圧縮ピストン151を収納する圧縮シリンダ152、圧縮シリンダ152の頭部側(図3において左側)に設けられた圧縮空間153、圧縮シリンダ152の外側面に設けられて圧縮により発生した作動ガスの熱を外部に放熱する放熱フィン154、圧縮シリンダ152の駆動部120側に配設されたオイルシール部155、圧縮ピストン151と圧縮シリンダ152とにより形成されるバッファ空間156、オイルシール部155を挿通して圧縮ピストン151に駆動力を伝達する圧縮ピストン151等を有している。
【0005】
膨張部130は、ディスプレーサ131を収納する膨張シリンダ132、膨張シリンダ132の頭部側(図3において上側)に設けられた膨張空間134,ディスプレーサ131内に設けられた蓄冷材133等を有して、膨張シリンダ132の頭部にコールドヘッド112が取付けられている。
【0006】
駆動部120は、クランク室122内に、クランク機構121と、クランク機構121及び圧縮ピストンロッド157とに連結されたコネクティングロッド123と、クランク機構121及びディスプレーサロッド135とに連結されたコネクティングロッド124等を有しており、そのクランク室122内の底部にはクランク機構121等を潤滑するためのオイルが貯溜されている。
【0007】
このような構成で、クランク機構121が回動することにより、回動力がコネクティングロッド123,124等を介して圧縮ピストン151及びディスプレーサ131に伝達される。
【0008】
このとき、2つのコネクティングロッド123、124は、同一の作用点でクランク機構121から駆動力を受けているので、圧縮ピストン151はディスプレーサ131より略90度位相がずれて往復運動するようになっている。
【0009】
そして、圧縮ピストン151が図3上の右端(下死点)から左端(上死点)に移動すると、圧縮空間153内の作動ガスは等温圧縮される。
【0010】
この間、ディスプレーサ131は上動し、上死点に達した後、下動するようになる。圧縮ピストン151の上動に伴い圧縮された作動ガスは、ガス流路170を介して膨張部130側に送られ、ディスプレーサ131が下動すると作動ガスは蓄冷材133を通過し蓄冷材133と熱交換して膨張空間134に送られる。
【0011】
ディスプレーサ131が下死点に達するに従い、圧縮ピストン151は上死点から下死点に移動し、作動ガスは膨張して降温する。このときの膨張過程は等温膨張過程であるため、膨張により降温しただけ外部の熱を吸熱する。この結果、膨張シリンダ132頭部に設けたコールドヘッド112が冷却される。
【0012】
そして、圧縮ピストン151が下死点に近づくに従い、ディスプレーサ131は上動を始め、作動ガスはディスプレーサ131を通過し、蓄冷材133から吸熱して1サイクルが終了する。
【0013】
そして、上記構造よりなるガス圧縮膨張機においては、圧縮ピストン151には、リング溝が形成され、リング溝にピストンリング159が嵌合している。そして、ピストンリング129がリング溝及び圧縮シリンダ152に密接することにより、圧縮ピストン151と圧縮シリンダ152との密着性を維持している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成にかかるピストン型圧縮機を使用していると、圧縮空間153の平均圧力とバッファ空間156の平均圧力とに差圧が生じて、当該差圧に依存した力が圧縮ピストン151に加わるようにようになり、この結果、駆動部120の消費電力が増加して装置効率を低下させるという問題があった。
【0015】
かかる差圧の発生メカニズムを図4〜図6を参照して説明する。尚、差圧発生のメカニズムは、現在の所学術的に明確になっておらず、後述するメカニズムはその1つのモデルであると考えられる。
【0016】
図4は、圧縮空間153の平均圧力が高くなった場合の圧力変動を示す図である。同図において、実線は圧縮空間153の圧力変動を示し、点線はバッファ空間156の圧力変動を示している。また、図5及び図6は、圧縮ピストン151の往復運動に伴うピストンリング159の動きを模式的に示した図で、図5(a)及び図6(a)は圧縮ピストン151が圧縮空間153側に動いたときを示し、図5(b)及び図6(b)はバッファ空間156側に動いたときを示している。
【0017】
ピストンリング159が正常に作用しているならば、圧縮空間153及びバッファ空間156の作動ガスは相互に移動せず、平均圧力の差圧が発生しないはずである。しかし、現実には図4に例示するように圧縮空間153とバッファ空間156との平均圧力に差が生じてしまう。
【0018】
ピストンリング159は、圧縮ピストン151の周面に沿って形成されたリング溝160に挿嵌されている(図5、図6参照)。このとき、リング溝160の上下側面160a、160cとピストンリング159の上下側面159a、159cの少なくとも1つの相対向する側面は密接しておらず隙間Ga、Gcが形成されている。また、リング溝160の底面160bとピストンリング159の底面159bとも密接しておらず、隙間Gbが形成されている。
【0019】
このような隙間Ga〜Gcは、リング溝160を形成した後にピストンリング159を挿嵌して組み立てるため、これらを密接させることが困難であるためであり、また以下の効果を得るために積極的に非密接状態としている。
【0020】
即ち、圧縮ピストン151が圧縮シリンダ152と密接することは、圧縮を高効率に行うために必要であるが、圧縮ピストン151等の加工誤差、熱膨張の違い等が存在するため上記要求を常に満たすことができず、隙間G1,G2が発生してしまう。
【0021】
かかる隙間G1,G2を塞ぐために、ピストンリング159が用いられる。しかし、ピストンリング159においても加工誤差、熱膨張等があり、また上述したようにリング溝160を形成した後にピストンリング159を挿嵌して組み立てるため、ピストンリング159と圧縮シリンダ152との密着性を確保することが容易でない。
【0022】
そこで、隙間Ga〜Gcを形成して、圧縮空間153又はバッファ空間156の作動ガスが、隙間Ga、Gcを介して隙間Gbに侵入するようにしている。
【0023】
そして、侵入した作動ガスは、ピストンリング159の底面159bを圧縮シリンダ152方向に付勢し(図5、図6において実線矢印)これによりピストンリング159と圧縮シリンダ152とが常時密着するようにしている。
【0024】
また、ピストンリング159とリング溝160との上下側面は、常時密接していないので、圧縮ピストン151の運動に伴いピストンリング159はリング溝160内で動くことになる。
【0025】
しかし、圧縮空間153又はバッファ空間156のうち圧力の高い方の空間の圧力により、低圧側の空間方向にピストンリング159が付勢されるので(図5、図6において点線矢印)、リング溝160の上又は下側面160a、160cとピストンリング159の上又は下側面160a、160cとの密着性が確保されて、圧縮空間153とバッファ空間156との作動ガスの移動が規制されるようになっている。
【0026】
ところが、圧縮ピストン151の運動に伴い、種々の異物が(例えば、圧縮シリンダ152と摺動して摩耗したピストンリング159の粉等)がリング溝160の上側面160a又は下側面160cに付着して、その部分でのピストンリング159とリング溝160とが密着しなくなる場合が生じる。
【0027】
そして、上側面160a又は下側面160cのいずれか一方に異物が付着した場合には、後述する現象によって上述の差圧が生じてしまう。
【0028】
図6は、異物Bがリング溝160の上側面160aに付着した場合における圧縮ピストン151の動きに伴うピストンリング159の動きを示したものである。
【0029】
この場合、圧縮ピストン151は圧縮空間153側に動くと(図6(a)参照)、圧縮空間153は縮小しバッファ空間156は拡張して、圧縮空間153の圧力はバッファ空間156の圧力より大きくなる。
【0030】
これにより、ピストンリング159は異物Bが付着していないシール溝160の下側面160c側に動き、ピストンリング159の下側面159cとシール溝160の下側面160cとが密接する。従って、圧縮空間153からバッファ空間156に作動ガスが移動することはない。
【0031】
一方、圧縮ピストン151がバッファ空間156側に動くと(図6(b)参照)、圧縮空間153は拡張しバッファ空間156は縮小して、圧縮空間153の圧力はバッファ空間156の圧力より小さくなる。
【0032】
この時、ピストンリング159は異物Bが付着しているシール溝160の上側面160a側に動くが、この異物Bのためにシール溝160の上側面160aと密接することができず、バッファ空間156から圧縮空間153側に作動ガスが移動する(図6(b)において2点矢印)。
【0033】
従って、圧縮空間153の平均圧力は、バッファ空間156の平均圧力より高くなって、図4に示したような差圧が発生してしまう。
【0034】
尚、ここでは異物Bは、シール溝160の上側面160aに付着した場合について説明したが、下側面160cについても同様であり、また、ピストンリング159の上下側面159a、159cのいずれかに付着しても同様の現象が生じると推察される。但し、シール溝160の下側面160cに異物Bが付着した場合には、圧縮空間153の平均圧力が、バッファ空間156の平均圧力より低くなってしまう。
【0035】
本発明は斯かる点に鑑みて為されたものであって、上述した差圧の発生を抑制したガス圧縮膨張機を提供することを目的とする。
【0036】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、シリンダ内に配設されたピストンを挟んで作動空間とバッファ空間とが形成され、前記作動空間で圧縮又は膨張された作動ガスのガス流路が前記シリンダとの間に形成されるように該シリンダに被せて配設された筐体部を有し、前記ピストンが往復運動することにより前記作動空間の作動ガスを圧縮又は膨張してなるガス圧縮膨張機において、前記バッファ空間と前記ガス流路とを連通するように所定径の連通孔が前記シリンダに形成されていることを特徴とする。具体的には、前記ピストンの周面に形成されたリング溝と、該リング溝に嵌合され、前記作動空間とバッファ空間との気密性を保持し得るピストンリングとを備えている。
【0037】
この構成を用いることにより、所定径の連通孔をシリンダに形成して、バッファ空間とガス流路とを連通させているので、作動空間とバッファ空間との平均圧力の差圧発生を防止する。
【0038】
また、駆動部と、該駆動部から駆動力を受ける圧縮ピストンが、圧縮シリンダ内に往復自在に配設されて、該圧縮シリンダ内に形成された圧縮空間の作動ガスを圧縮する圧縮部と、該圧縮部と位相がずれた駆動力を受けてディスプレーサが膨張シリンダ内を往復運動することにより、前記圧縮部からの作動ガスを膨張させる膨張部とを有したガス圧縮膨張機において、前記圧縮シリンダとの間に前記圧縮部と前記膨張部とを連通するガス流路が形成されるように該圧縮シリンダに被せて配設された筐体部を有し、前記圧縮ピストンを挟んで前記圧縮空間と反対側に形成されたバッファ空間と前記ガス流路とを連通するように所定径の連通孔が前記圧縮シリンダに形成されている構成としても良い。
【0039】
この構成を用いることにより、1ピストン1ディスプレーサ型ガス圧縮膨張機において、圧縮空間とそのバッファ空間との平均圧力に差圧が生じないようにすることができ、成績係数を向上させることができる。
【0040】
そして、前記圧縮部と前記膨張部とを並設して前記駆動部に固定すると共に、前記筐体部の周囲に放熱フィンを形成して、該圧縮部で圧縮された作動ガスの熱を放熱してなる構成としても良い。この構成を用いることにより、圧縮部と膨張部とを同一方向に配設することができ、装置全体の占有面積を小さくすることができると共に、作動ガスから受けた熱を効率的に外気に放出することが可能になる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のガス圧縮膨張機を適用させた一実施の形態例であるスターリング冷凍機の構成を示す概略断面図である。このスターリング冷凍機10は、圧縮ピストン51を備えたピストン型圧縮機である圧縮部50、ディスプレーサ31を備えた膨張部30、クランク機構21を備えた駆動部としてのクランク室20等を有し、膨張部30と圧縮部50とが並設されてクランク室20の上部に設けられている。
【0042】
クランク室20には、クランク機構21に回転駆動力を与えるロータ25と、クランク21a、21bに連結されたコネクティングロッド23、24と、コネクティングロッド23、24に連結されたクロスガイド26、27等を有し、その底部にクランク機構21を潤滑するためのオイルが貯溜されている。
【0043】
尚、クランク21aとクランク21bとは、シャフト21cに偏心して連結され、且つ、圧縮ピストン51の位相がディスプレーサ31の位相に対して略90度遅れるようにクランク21a、21bの取付角度が設定されている。
【0044】
膨張部30には、ディスプレーサ31を収納する膨張シリンダ32と、膨張シリンダ32の頭部側(図1において上側)に設けられた膨張空間34と、膨張シリンダ32のクランク室20側に配設されたオイルシール部36と、オイルシール部36を挿通してディスプレーサ31に駆動力を伝達するディスプレーサロッド35と、ディスプレーサ31内に設けられた蓄冷材33等を有して、膨張シリンダ32の頭部に冷熱を取り出すコールドヘッド12が取り付けられている。
【0045】
また、圧縮部50は、圧縮ピストン51を収納する圧縮シリンダ52と、圧縮シリンダ52の頭部側(図1において上側)に設けられた圧縮空間53と、圧縮シリンダ52の外側面に被せて設けられ、その周面に圧縮により発生した作動ガスの熱を外部に放熱するための放熱フィンが取り付けられている圧縮筐体部54と、圧縮シリンダ52のクランク室20側に配設されたオイルシール部55と、オイルシール部55を挿通して圧縮ピストン51に駆動力を伝達する圧縮ピストンロッド57等を有している。圧縮筐体部54は、圧縮シリンダ52を覆うように設けられ、圧縮シリンダ52の外壁面との間に圧縮部50と膨張部30とを連通するガス流路70を形成しており、その圧縮筐体部54の外壁周囲に放熱フィン54aが取り付けられている。
【0046】
そして、圧縮部50と膨張部30とは、並設してクランク室20に固定されている。これにより、同一方向に配設して装置全体の占有面積を小さくすることができる。
【0047】
また、圧縮ピストン51には、リング溝60が形成され、そのリング溝60にピストンリング59が嵌合して設けられて圧縮シリンダ52との密接を高めている。圧縮シリンダ52には、圧縮ピストン51を挟んで圧縮空間53の反対側に形成されるバッファ空間56と、ガス流路70とを連通する所定径の連通孔52aが形成されている。
【0048】
ここで、バッファ空間56は圧縮ピストン51とオイルシール部55によって密閉空間となり、圧縮ピストン51を往復運動させる際の抵抗として働くようになるので、この抵抗を小さくするためにバッファ空間56は圧縮空間53に比べて大きく設定している。しかし、装置の小型化を図るためにはバッファ空間56の容積を十分確保できない場合には、バッファ空間に連通したバッファ室(図示せず)を設けて実効的にバッファ空間56の容積を大きくさせても良い。
【0049】
また、本実施形態の説明では、圧縮空間53が圧縮シリンダ52の頭部側に形成させた場合について説明しているが、これに限らず、クランク室20側に設けて圧縮ピストン51を挟んで形成される圧縮空間53とバッファ空間56との配設位置を逆にしても良い。
【0050】
次に、上記構成に基づくスターリング冷凍機10の動作を説明する。クランク機構21が回動することにより、回動力がコネクティングロッド23、24等を介して圧縮ピストン51及びディスプレーサ31に伝達されて、圧縮ピストン51はディスプレーサ31に対して位相が略90度遅れた往復運動をするようになる。
【0051】
そして、圧縮ピストン51が下死点から上死点に移動すると、圧縮空間53内の作動ガスが圧縮される。この間、ディスプレーサ31は上動して上死点に達した後、下動するようになる。
【0052】
圧縮ピストン51の上動に伴い圧縮された作動ガスは、ガス流路70を移動して放熱フィン54aにより放熱して膨張部30側に送られる。ディスプレーサ31が下動すると作動ガスは蓄冷材33を通過し蓄冷材33と熱交換して膨張空間34に送られる。
【0053】
ディスプレーサ31が下死点に達するに従い、圧縮ピストン51は上死点から下死点に移動し、作動ガスは膨張して降温する。この時の膨張過程は等温膨張過程であるため、膨張により降温しただけ外部の熱を吸熱する。即ち、コールドヘッド12から熱を奪うことができる。
【0054】
圧縮ピストン51が下死点に近づくに従い、ディスプレーサ31は上動を始め、作動ガスはディスプレーサ31を通過し蓄冷材33と熱交換して圧縮空間53に戻り1サイクルが終了する。
【0055】
このようなサイクルにおいて、装置効率を高くするためには、圧縮部50で圧縮された作動ガスの熱を速やかに、且つ、効率的に外部に放熱する必要がある。そこで、本発明では、放熱フィン54aを設けた圧縮筐体部54と圧縮シリンダ52との間に隙間を形成し、この隙間がガス流路となるようにして作動ガスと放熱フィン54aとの熱接触面積を大きくし、効率的に作動ガスの熱を放熱フィン54aに伝達できるようにしている。また、圧縮筐体部64の放熱フィン54aは、ガス流路70に近接し、かつ、その周囲を覆って設けられているので、作動ガスから受けた熱を効率的に外気に放出することが可能になる。従って、冷凍機の場合には成績係数を高くすることができる。
【0056】
さらに、上記サイクル中に、ピストンリング59とリング溝60との間に、異物が付着すると先に説明した理由によりバッファ空間56と圧縮空間53との平均圧力に差圧が生じて、この差圧により装置効率が低下することになるが、上記連通孔52aによりバッファ空間と圧縮空間53とが常時連通した状態となるので当該差圧の発生は抑えられる。
【0057】
図2は、連通孔52aの効果を示す図で、実線は圧縮空間53の圧力変動を示し、点線はバッファ空間56の圧力変動を示している。
【0058】
尚、連通孔52aにより圧縮空間53とバッファ空間56とが連通しているので、装置効率が若干低下するが、当該効率低下の低下量は差圧発生を防止したことによる効率の上昇量より小さくなるように連通孔52aの大きさ(寸法)が設定されている。従って、これらの差分だけ装置効率が向上し、冷凍機の場合には成績係数を向上することになる。
【0059】
差圧量及び差圧発生頻度等は、圧縮ピストン51の大きさや往復周期、ピストンリング59の材質等種々の条件により異なる。従って、連通孔52aの大きさは一義的に規定することができず、上記条件を勘案して圧縮空間53とバッファ空間56とが連通されることによる効率低下と、差圧発生防止による効率の向上との関係から決定しなければならない。
【0060】
上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態の説明では、1ピストン1ディスプレーサ型スターリング冷凍機10において圧縮シリンダ52に連通孔52aを設け、圧縮空間53とバッファ空間56とを連通させる場合について説明したが、これに限らず、膨張部30のディスプレーサ31の代わりに膨張ピストンを使用する2ピストン型スターリング冷凍機にも適応可能であり、この場合には、膨張ピストンを挟んで膨張シリンダ内に形成される膨張空間とバッファ空間とを連通させるように、膨張部30にも同様の連通孔を形成しても構わない。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたとおり本発明によれば、所定径の連通孔をシリンダに形成して、バッファ空間とガス流路とを連通させているので、作動空間とバッファ空間との平均圧力に差圧が生じないようにすることができ、装置効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスターリング冷凍機の概略断面図である。
【図2】図1装置の連通孔52aの効果を説明する図である。
【図3】従来のスターリング冷凍機の概略断面図である。
【図4】差圧発生時の状態を示す説明図である。
【図5】異物が無い場合のピストンリングの動き等を示す図である。
【図6】異物が付着した場合のピストンリングの動き等を示す図である。
【符号の説明】
10 スターリング冷凍機(ガス圧縮膨張機)
12 コールドヘッド
20 クランク室(駆動部)
21 クランク機構
30 膨張部
31 ディスプレーサ
32 膨張シリンダ
33 蓄冷材
34 膨張空間
35 ディスプレーサロッド
50 圧縮部
51 圧縮ピストン
52 圧縮シリンダ
52a 連通孔
53 圧縮空間(作動空間)
54 圧縮筐体部(筐体部)
54a 放熱フィン
55 オイルシール部
56 バッファ空間
57 圧縮ピストンロッド
59 ピストンリング
60 リング溝
70 連通路
Claims (5)
- シリンダ内に配設されたピストンを挟んで作動空間とバッファ空間とが形成され、前記作動空間で圧縮又は膨張された作動ガスのガス流路が前記シリンダとの間に形成されるように該シリンダに被せて配設された筐体部を有し、前記ピストンが往復運動することにより前記作動空間の作動ガスを圧縮又は膨張してなるガス圧縮膨張機において、
前記バッファ空間と前記ガス流路とを連通するように所定径の連通孔が前記シリンダに形成されていることを特徴とするガス圧縮膨張機。 - 前記ピストンの周面に形成されたリング溝と、該リング溝に嵌合され、前記作動空間とバッファ空間との気密性を保持し得るピストンリングと、を備えていることを特徴とする請求項1記載のガス圧縮膨張機。
- 駆動部と、該駆動部から駆動力を受ける圧縮ピストンが、圧縮シリンダ内に往復自在に配設されて、該圧縮シリンダ内に形成された圧縮空間の作動ガスを圧縮する圧縮部と、該圧縮部と位相がずれた駆動力を受けてディスプレーサが膨張シリンダ内を往復運動することにより、前記圧縮部からの作動ガスを膨張させる膨張部とを有したガス圧縮膨張機において、
前記圧縮シリンダとの間に前記圧縮部と前記膨張部とを連通するガス流路が形成されるように該圧縮シリンダに被せて配設された筐体部を有し、前記圧縮ピストンを挟んで前記圧縮空間と反対側に形成されたバッファ空間と前記ガス流路とを連通するように所定径の連通孔が前記圧縮シリンダに形成されていることを特徴とするガス圧縮膨張機。 - 前記圧縮部と前記膨張部とを並設して前記駆動部に固定すると共に、前記筐体部の周囲に放熱フィンを形成して、該圧縮部で圧縮された作動ガスの熱を放熱してなることを特徴とする請求項3記載のガス圧縮膨張機。
- 前記圧縮ピストンの周面に形成されたリング溝と、該リング溝に嵌合され、前記圧縮空間とバッファ空間との気密性を保持し得るピストンリングと、を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載のガス圧縮膨張機。
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