JP3615346B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な両親媒性多糖類を含有して成る、保湿性及び皮膚保護効果に優れ、且つ安定性及び安全性の高い皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、多糖類又はその誘導体の水酸基にホスファチジル基を導入して得られる、両親媒性高分子化合物を含有して成る皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化粧料をはじめ皮膚外用剤の分野においては、油性物質の乳化や水に溶けにくい物質の可溶化を行うために界面活性剤が多く用いられてきた。しかしながら従来の界面活性剤には、一部の脂肪酸セッケンのように、乳化条件や製剤の保存条件によっては析出したり、製剤の安定性の低下をきたしたりするものがあったり、また皮膚に対する刺激性や感作性が問題となるものが存在するのが実情である。さらに、生体に対する親和性が低く、皮膚外用剤に配合した時に、痛みや不快な刺激感等の好ましくない使用感を与えることが多かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明においては、生体に対する親和性が高く且つ安全な両親媒性物質を含有した皮膚外用剤を提供することによって、従来の界面活性剤の使用量をできる限り低減させることを可能として、優れた安定性及び安全性と、良好な使用感及び皮膚保護効果を得ることを目的とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、リン脂質の構成部分であるホスファチジル基を多糖類又はその誘導体の水酸基に導入することにより新規な両親媒性高分子化合物を得、これを皮膚外用剤に含有させることを検討したところ、良好な結果を得ることができ、本発明を完成させるに至った。
【0005】
生体に対する親和性を向上させるため、生体膜の構成成分であるリン脂質を利用することはすでに検討されている。一例として、細胞賦活作用,美白作用等の生理活性を有する物質の安定化を図り、また経皮吸収性を向上させるために、これらのホスファチジル誘導体の調製と皮膚外用剤への応用が検討されており、たとえばホスファチジルグルコサミンや、ホスファチジルアスコルビン酸を含有する皮膚外用剤が開示されている(特開平8−133945,特開平4−99724,特開平4−247011)。
【0006】
また、高分子化合物とリン脂質とを結合させた複合体も製造されており、ホスホリパーゼA2阻害剤,抗リウマチ剤としての応用が開示されている(特開平2−70703,特開平6−72893)。
【0007】
しかしながら、上記の特開平2−70703及び特開平6−72893に示された脂質複合体は、アミド結合やアミノアルキル結合等のスペーサーを介した反応生成物であって、本発明で用いるホスファチジル基を水酸基に直接導入した多糖類とは構造を異にするものであり、また本発明で目的とする両親媒性や皮膚保護効果についても全く記載されていない。
【0008】
すなわち本発明においては、ホスファチジル基を多糖類及びその誘導体の水酸基に直接導入して成る両親媒性多糖類より、1種又は2種以上を選んで皮膚外用剤基剤に含有させる。
【0009】
【作用】
本発明において皮膚外用剤に含有させる両親媒性多糖類は、優れた可溶化又は乳化安定化作用と皮膚親和性及び水分保持能を有し、これを含有した皮膚外用剤は安定性及び安全性が高く、皮膚保護効果及び使用感に優れる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明でホスファチジル基を導入する多糖類としては、α−1,5−;α−1,3−アラビナン,β−1,3−キシラン,β−1,4−キシラン等のペントーサン、α−1,4−グルカン(アミロース),α−1,4−;α−1,6−グルカン(アミロペクチン,グリコーゲン),β−1,2−グルカン,β−1,3−グルカン(カードラン),β−1,3−;β−1,6−グルカン(スクレロタン,レンチナン,シゾフィラン,コリオラン),β−1,4−グルカン(セルロース),α−1,6−グルカン(デキストラン),α−1,3−;α−1,4−グルカン(ニゲラン,マイコデキストラン),β−1,6−グルカン(プスツラン,酵母β−グルカン,ルテオース),α−1,4−;α−1,3−グルカン(エルシナン),α−1,4−;α−1,6−グルカン(プルラン),β−1,3−;β−1,4−グルカン(リケナン),β−1,3−;β−1,6−グルカン(ラミナラン),α−1,3−;β−1,4−ガラクタン(アガロース),β−1,4−ガラクタン,β−1,6−;β−1,3−ガラクタン,α−1,5−ガラクタン(ガラクトカロロース),α−1,3−;β−1,4−ガラクタン(κ−カラギーナン,λ−カラギーナン),β−1,4−マンナン,β−1,3−;β−1,4−マンナン,α−1,6−マンナン,β−2,1−フルクタン(イヌリン),β−2,6−フルクタン(レバン)等のヘキソーサン等のホモグリカン、β−1,4−ポリ−N−アセチルグルコサミン(キチン),α−2,8−ポリ−N−アセチルノイラミン酸(コロミン酸)等のポリグリコサミン、α−1,4−ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)等のポリウロン酸、ポリリボースリン酸,リン酸化ガラクタン,リン酸化マンナン等のリン酸化多糖といったホモ多糖類、ケラト硫酸,ケラタン硫酸,コンドロイチン,コンドロイチン4−硫酸,デルマタン硫酸,コンドロイチン6−硫酸,コンドロイチン硫酸D,コンドロイチン4,6−硫酸,テイクロン酸,ヒアルロン酸,ヘパラン硫酸,ヘパリン等のムコ多糖類、α−1,3−ガラクトラムノグリカン(1:2),ガラクトマンノグリカン(1:2)(グアラン),グルコマンノグリカン(コンニャクマンナン),アラビノガラクトグリカン等のヘテロヘキソーサン、アラビノキシログリカン,アラビアゴム,β−1,4−マンヌロノ−1,4−L−グルロノグリカン(アルギン酸),ローカストビーンガム,ガッティゴム,カーヤゴム,ガラクツロノガラクトグリカン,グルクロノグルコマンノグリカン,大豆種皮ガラクトマンナン,ダムソンゴム,トラガントゴム,フコイダン,メスキートゴム,グアーガム,クインスシード,タマリンドガム,キサンタンガム,サクシノグルカンといったヘテロ多糖類が挙げられる。
【0011】
また、本発明においてホスファチジル基を導入する多糖類の誘導体としては、メチルセルロース,エチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,カルボキシメチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系半合成高分子、カルボキシメチルデンプン,メチルデンプン等のデンプン系半合成高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル,アルギン酸塩等のアルギン酸系半合成高分子、キトサン,N−アシル化キトサン,N−ベンゾイル化キトサン,グリコールキトサン,カルボキシメチル化キチン,カルボキシエチル化キチン等のキチン,キトサン誘導体などが挙げられる。
【0012】
多糖類又はその誘導体へのホスファチジル基の導入は、ホスファチジン酸と多糖類とを通常の方法により縮合させ、エステルを形成させることによっても行うことができるが、ホスホリパーゼDによるエステル交換反応によるのが穏和な条件で効率よく行うことができ、最も好ましい。
【0013】
ホスホリパーゼDによるエステル交換反応によるホスファチジル基の導入は、国生らの方法(Biosci. Biotech. Biochem., 57 (8) 1302−1305 (1993))により行うことができる。ホスファチジル供与体としては、卵黄レシチン,大豆レシチン,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルセリン等のリン脂質及びこれらの水素添加物を用いることができる。ホスホリパーゼD(EC 3.1.4.4)としては、放線菌の1種であるActinomadura sp. No.362(名糖産業株式会社製)が、反応性等の面で最も好ましい。溶媒としては、ジエチルエーテル,イソプロピルエーテル,メチルエチルケトン,ジエチルケトン,シクロヘキサン,tert−ブタノール,tert−アミルアルコール,ベンゼン,トルエン,ジクロロメタン,1,2−ジクロロエタン,酢酸エチル等の有機溶媒が好適に用いられる。また、ナトリウムイオン,カリウムイオン,リチウムイオン,アンモニウムイオン等の一価の陽イオンや、カルシウムイオン,マグネシウムイオン,バリウムイオン,鉄イオン(II),コバルトイオン(II),ニッケルイオン(II)等の二価の陽イオンを添加することにより、ホスファチジル化多糖類又はその誘導体の収率を上げることができる。反応液のpHは4〜8、反応温度は30〜50℃程度が適当である。
【0014】
本発明の目的には、上記により得られたホスファチジル基導入多糖類及びその誘導体より、1種又は2種以上を選択して皮膚外用剤に含有させる。皮膚外用剤当たりの含有量としては、0.01〜10.0重量%程度が適当である。
【0015】
また本発明においては、油脂類,界面活性剤,保湿剤,抗酸化剤,防腐防黴剤,顔料,色素類,紫外線吸収剤,香料等の通常皮膚外用剤に配合される成分や、細胞賦活剤,抗炎症剤,美白剤,抗脂漏剤,養毛,育毛剤等の生理活性成分をも含有させることができる。なお、本発明で含有させるホスファチジル基導入多糖類が両親媒性を有し、分散,乳化安定化作用を有することから、本発明に係る皮膚外用剤においては、界面活性剤の含有量を大幅に低減させることができる。
【0016】
本発明に係る皮膚外用剤は、ローション剤,乳剤,ゲル剤,クリーム,軟膏等の形態で提供することができる。さらに、化粧水,乳液,クリーム,パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション,メイクアップベースクリーム,ファンデーション,アイカラー,チークカラー,口紅等のメイクアップ化粧料、クレンジングローション,クレンジングフォーム等の洗浄料、ヘアーシャンプー,ヘアーリンス,ヘアートリートメント,ヘアートニック,ヘアークリーム等の毛髪用化粧料、ハンドクリーム,レッグクリーム,ボディローション等の身体用化粧料、日焼けローション,日焼け止め乳液,日焼け止めクリーム等の日焼け止め化粧料などとしても提供することができる。
【0017】
【実施例】
さらに本発明について、実施例により詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明において皮膚外用剤に含有させるホスファチジル基導入多糖類及びその誘導体の調製例を示す。表1に、ホスファチジル基導入多糖類等の調製に用いたリン脂質、多糖類又はその誘導体及びホスファチジル基導入多糖類等の収率を示した。
【0019】
【表1】
表1に示すリン脂質100g及び多糖類又はその誘導体1kgとを、ジエチルエーテル1.0l,塩化ナトリウム40g,精製水500ml,及び10ユニットのActinomadura sp. No.362由来ホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)の溶液500mlと混合し、30℃にて24時間振とうしながら反応させた。次いでクロロホルム−メタノール混液(容量比;2:1)5l及び精製水1lを添加して激しく振とうし、リン脂質を抽出した後、3,000rpmで5分間遠心分離して、下層のクロロホルム層を回収した。表1に示す多糖類及びその誘導体としては、平均分子量10,000程度のものを用いた。ホスファチジル基導入多糖類又はその誘導体は調製用薄層クロマトグラフィーにより得た。なおこれらの収率は、薄層クロマトグラフィー−水素炎イオン化検出(TLC/FID)分析計により、クロロホルム−メタノール−28%アンモニア−精製水(容積比;50:20:2:1)を展開溶媒として定量して求めた。
【0020】
続いて本発明の実施例である、皮膚外用剤の処方を示す。
【0021】
[実施例1] 皮膚用ローション剤
製法:(1),(2)を(3)に添加し、均一に溶解させる。
【0022】
[実施例2] 皮膚用乳剤
製法:(1)〜(5)の油相成分を混合,加熱して均一に溶解し、70℃に保つ。一方、(6)〜(8)の水相成分を混合,加熱して均一とし、70℃とする。この水相成分に前記油相成分を攪拌しながら徐々に添加して乳化し、冷却して40℃で(9)を添加,混合する。
【0023】
[実施例3] 皮膚用ゲル剤
(調製例8)
製法:(5)に(2)を均一に溶解させた後、(3)を加え、さらに(1)に(4)を溶解させて添加した後80℃に加熱してゲル化させ、次いで冷却して40℃にて(6)を添加,混合する。
【0024】
[実施例4] 皮膚用クリーム
製法:(1)〜(5)の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、(6)〜(11)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却する。
【0025】
[実施例5] 水中油型乳剤性軟膏
製法:(1),(2)の油相成分を混合,加熱して均一に溶解し、75℃に保つ。一方、(3)〜(7)の水相成分を混合,加熱して均一とし、75℃とする。この水相成分に前記油相成分を攪拌しながら徐々に添加して乳化し、冷却後40℃にて(8)を添加,溶解する。
【0026】
[実施例6] 美容液
製法:(8)に(4),(5)を添加し均一として十分増粘させた後、(1)〜(3)に(6),(7)を溶解して添加,混合する。
【0027】
[実施例7] ゼリー状パック剤
製法:(7)に(1),(2)を加えて加温溶解し、増粘させる。これに、(5),(6)を(3),(4)に溶解して添加,混合し、冷却する。
【0028】
[実施例8] クレンジングローション
製法:(1)〜(5)を順次(9)に添加して加温溶解,均一化し、これに(7),(8)を(6)に溶解して添加,混合する。
【0029】
[実施例9] メイクアップベースクリーム
製法:(4)を(7)に溶解し、これに(9)〜(11)を(5)及び(6)で練って添加,混合し、70℃に加熱する。一方、(1)〜(3)の油相成分を混合,加熱して70℃とし、これを前記水相に攪拌しながら添加して乳化する。乳化後冷却して40℃にて(8)を添加,混合する。
【0030】
[実施例10] 乳液状ファンデーション
製法:(14)〜(18)の顔料を混合後、粉砕機により粉砕する。(12)を70℃に加熱し、(9)を加えてよく膨潤させ、これに(8)を加え、さらに(10),(11)を添加し、溶解させる。(1)〜(7)の油相は混合し、加熱,融解して80℃とする。前記顔料を水相に攪拌しながら加え、コロイドミルを通して75℃とし、前記油相を攪拌しながら加えて乳化し、冷却後40℃にて(13)を添加する。
【0031】
[実施例11] ヘアーシャンプー
製法:(1)〜(6)を順次(7)に添加し、均一に混合,溶解する。
【0032】
[実施例12] ヘアーリンス
製法:(9)に(4)〜(7)を加え、70℃に加熱する。一方、(1)〜(3)を混合,溶解し、70℃に加熱する。この油相を攪拌しながら先に調製した水相に徐々に加えて予備乳化し、ホモミキサーを加えて均一とした後冷却し、40℃にて(8)を添加,混合する。
【0033】
[実施例13] ヘアースプレー
製法:原液は(1)〜(4)を(5)に添加,溶解し、ろ過する。充填は缶に原液を充填し、バルブ装着後、ガスを充填する。
【0034】
上記実施例のうち、実施例1〜実施例5について、表2に示すこれらに対応する各比較例とともに、製剤安定性,使用感及び皮膚保護効果の評価を行った。なお表2の比較例においては、いずれも精製水にて全量を100重量%とした。
【表2】
【0035】
(1)製剤安定性の評価 実施例及び比較例の各試料を−5℃,25℃及び50℃で3カ月間保存し、状態の変化を観察した。評価結果は、「○;状態の変化を認めない」,「△;配合成分の分離,凝集,析出といった状態変化がわずかに認められる」,「×;配合成分の分離,凝集,析出といった状態変化が顕著に認められる」として表し、表3に示した。
【0036】
【表3】
表3より明らかなように、本発明の実施例1〜実施例5については、いずれの温度においても状態の変化は認められなかった。これに対し、ホスファチジル化多糖類又はその誘導体を、ホスファチジル基を導入しない多糖類又はその誘導体に代替した比較例1及び比較例3と、リン脂質に代替した比較例5については、50℃において顕著な状態変化を認め、−5℃においても若干の状態変化を認めていた。比較例5については、25℃においても若干の状態の変化が見られた。
【0037】
(2)使用感の評価 20才〜50才代の女性パネラー20名を1群とし、各群にブラインドにて実施例及び比較例のそれぞれを1週間使用させ、保湿性,皮膚との馴染み及び皮膚刺激感について官能評価させた。官能評価は、保湿性については「高い;5点」,「やや高い;4点」,「普通;3点」,「やや低い;2点」,「低い;1点」、皮膚との馴染みについては「良い;5点」,「やや良い;4点」,「普通;3点」,「やや悪い;2点」,「悪い;1点」とし、皮膚刺激感については、使用期間中に痛み,かゆみ,ヒリヒリ感,ピリピリ感,チクチク感といった不快感を感じたか否かを回答させ、その程度を表4に示す基準に従って点数化させた。結果は20名の平均値にて表5に示した。
【表4】
【0038】
【表5】
表5より明らかなように、本発明の実施例については、いずれも高い保湿性が認められ、皮膚との馴染みも良好であると評価されていた。特に、ホスファチジル基を導入した多糖類及びその誘導体の含有量の多い実施例3〜実施例5については、非常に高い評価が得られていた。また使用期間中に皮膚刺激感を感じたパネラーもわずかであり、いずれの実施例使用群においても微妙に感じたか、少々感じられた程度であった。これに対し、ホスファチジル基を導入していない多糖類を含有する比較例1及び比較例3については、保湿性についてはかなり高い評価が得られていたが、皮膚との馴染みについての評価は実施例1及び実施例3に比べてやや劣っていた。リン脂質のみを含有する比較例5使用群では、保湿性についての評価が低かった。また、ホスファチジル基導入多糖類及びその誘導体の替わりに界面活性剤を用いた比較例2及び比較例4使用群では、使用期間中にかなり高い刺激感が認められていた。
【0039】
(3)皮膚保護効果の評価 20才〜50才代の女性パネラー20名を1群とし、各群に実施例及び比較例をそれぞれブラインドにて3カ月間使用させた。この使用試験は1995年12月〜1996年2月の冬季に行った。使用試験終了後の皮膚の状態を観察し、表6に示す判定基準により点数化して、20名の平均値にて表7に示した。
【表6】
【0040】
【表7】
表7より明らかなように、本発明の実施例使用群では、使用試験終了後の皮膚の状態はいずれもほぼ良好な状態であり、特にホスファチジル基を導入した多糖類及びその誘導体の含有量の多い実施例4及び実施例5使用群では、使用試験終了後の皮膚の状態は極めて良好なものであった。これに対し、比較例使用群では、使用試験終了後の皮膚の状態はさほど良好ではなく、多糖類であるデンプンを0.2重量%含有するのみである比較例1使用群、及び界面活性剤を含有する比較例2と比較例4使用群では、若干の肌荒れ症状の認められたパネラーも見られ、冬季の乾燥等に対する皮膚保護効果が不十分であることが示されていた。
【0041】
続いて、本発明の実施例11〜実施例13について使用試験を行った。使用試験は20才〜50才代の男女パネラー20名を1群とし、各群に実施例及び比較例をそれぞれブラインドにて1週間使用させ、毛髪のしっとり感,さらさら感,べたつき感及び頭皮のかさつきについて官能評価させて行った。比較例としては、表8に示すような代替を行ったものを用いた。官能評価結果は、毛髪のしっとり感及びさらさら感については「ある;5点」,「ややある;4点」,「どちらともいえない;3点」,「ややない;2点」,「ない;1点」、毛髪のべたつき感及び頭皮のかさつきについては「ない;5点」,「ややない;4点」,「どちらともいえない;3点」,「ややある;2点」,「ある;1点」として点数化し、20名の平均値を求めて表9に示した。
【表8】
【0042】
【表9】
表9より明らかなように、本発明の実施例11〜実施例13は毛髪に対しても良好な保湿性を示しており、且つさらさらした感触を毛髪に与えることができ、べたつき感もほとんど感じさせないものであった。さらに頭皮の保護効果にも優れ、頭皮のかさつきはほとんどのパネラーで見られていなかった。これに対し、ホスファチジル基導入多糖類の替わりに界面活性剤を用いた比較例11では、毛髪に対する保湿性が不十分で、頭皮のかさつきもかなり顕著に認められていた。またホスファチジル基導入多糖類及びその誘導体をリン脂質に代替した比較例12では、毛髪のさらさら感に欠け、べたつきもかなり認められていた。ホスファチジル基を導入しないプルランを用いた比較例13においても、さらさら感に欠け、べたつきがかなり認められていた。
【0043】
なお、本発明の上記実施例について48時間の閉塞貼付試験を行ったところ、皮膚刺激性反応及び皮膚感作性反応はいずれにおいても認められなかった。さらに、実施例6〜実施例13についても良好な保存安定性を示していた。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、保湿性及び皮膚保護効果に優れ、且つ安定性及び安全性が高く、使用感も良好な皮膚外用剤を得ることができた。
Claims (1)
- ホスホリパーゼDによるホスファチジル基転移反応によりホスファチジル基を導入した多糖類及びその誘導体の1種又は2種以上を含有して成る、保湿用皮膚外用剤。
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