JP3614904B2 - 塗装後鮮映性に優れた鋼板及びその製造方法 - Google Patents

塗装後鮮映性に優れた鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車や家電製品などの外板に使用し、塗装後の塗膜表面が優れた鮮映性を有する塗装用鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車や家電製品などの分野においては、消費者の更なる購買意欲を喚起し且つ他社の製品との差別化を図るために、塗装後は塗膜面が耐食性などの性能に加えて直接視覚に訴え得る「鮮映性」をも十分に消費者を満足させる製品を製造することが重要になってきている。なお、「鮮映性」に優れるとは、塗膜面の乱反射が少なく光沢性に優れており、且つ、塗膜面に生ずる写像の歪みがなく写像性に優れていることを意味する。
【0003】
鮮映性には、塗料の種類や塗装条件にも勿論影響を受けるが、塗膜の表面性状にも大きく影響を受ける。例えば、塗装下地の凹凸の程度が大きければ塗膜も大きい凹凸を有することになり、結果として、光の乱反射により光沢性を損なうばかりでなく写像の歪みをも生ずる。塗装前の工程で表面平滑化処理(例えば、ブラスト処理)を施せばダル仕上げした鋼板に比べて遥かに優れた鮮映性を有するものが得られるが、鋼板を板状のまま使用することはまれであり殆どの場合は加工して使用するため、そのような表面平滑化処理をすると加工の際に油保持性の劣化や接触面積の増大により焼付けを生じてしまうという欠点がある。
【0004】
従って、ある程度の加工性を保持しつつ塗装後の鮮映性にも優れた鋼板を製造すべく鋼板の表面処理方法と表面性状の評価方法の確立が求められている。一般に鋼板の表面粗さは、中心線平均粗さRaで評価されていたが、最近では「ろ波中心線うねり:Wca(ろ波うねり曲線の中心線平均値:JIS B 0610)」で評価されることが多く、Wcaが大きいほど塗装後振幅を減衰することができず、鮮映性を劣化させると言われている。
【0005】
例えば、特開昭62−230402号公報には、鮮映性に及ぼすうねり波長成分の影響を調べた結果波長400μm未満の波は関与しないことが判明したとして、鋼板表面の粗さ曲線に含まれる波長400μm以上のうねり成分を可能な限り少なくするが、400μm以上の波長成分の強度を示す指標であるろ波中心線うねりをWca≦0.7μmとすることが提案されている。また、特開昭63−132728号公報には、平均粗さをRa≦0.8μmとろ波中心線うねりをWca≦0.7μmとした上で所定量の固形潤滑剤を鋼板表面に塗布することが提案されているが、塗装下地としての鋼板の表面性状が大きく影響する薄膜(70μm未満)塗装の場合にはこれらの条件を満足しても塗装後鮮映性はなお不十分であり、薄膜塗装でWcaの値から塗装後鮮映性を適正に評価することはできなかった。
【0006】
コストダウンの要請から、薄膜塗装であってもある程度の加工性を保持しつつ塗装後の鮮映性にも優れた鋼板を製造することが現在では特に求められている。従って、膜厚が70μm未満の薄膜塗装の場合でも優れた塗装後鮮映性を有しうる表面性状の鋼板の開発と、その鋼板の表面性状を工場での実操業下で簡便な測定に基づいて評価しうる品質評価指標の確立が検討されている。
【0007】
薄膜塗装に関する品質評価指標としては、特開平4−37404号公報には、3次元粗さ計を用いて、塗装用鋼板の表面の断面曲線を検出し、該断面曲線をフーリエ変換して周波数解析曲線を得、通常塗装塗膜鮮映性波長域と薄塗装塗膜鮮映性波長域の2つの波長域のパワースペクトル和を求めてこれが小さければ、通常塗装用は勿論薄塗装用鋼板であっても塗装面の鮮映性が良好であると評価できると教示されている。
【0008】
しかしながら、3次元粗さ計は測定時間が長く実際に工場で品質評価指標として採用するには不適切である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、簡単で且つ短時間で済む測定で得られた値から、特に薄膜塗装であっても適正な品質評価指標となるものを見出すことを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記適正な品質評価指標を満足する鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
更に、本発明は、従来使用されてきた塗料と塗装方法を用いて薄膜塗装をしても、満足すべき塗装後鮮映性を有しうる鋼板を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者は、鋭意研究の結果、Wcaに加えて、
高さ1.0μm以上の山の1インチ当たりの数:PC1と
深さ1.0μm以上の谷の1インチ当たりの数:PC2と
の2つの2次元の粗さ計で測定できる指標を新たに導入することで、薄膜塗装を含む塗装後鮮映性を適正に評価できるとの知見を得、新たな品質保証指標を確立して本発明を完成させた。
【0013】
本発明によれば、鋼板の表面性状が、
ろ波中心線うねり(低域フィルターのカットオフ値0.8mm、高域フィルターのカットオフ値2.5mm):Wca≦0.65
ろ波うねり曲線(低域フィルターのカットオフ値0.8mm)の、
高さ1.0μm以上の山の1インチ当たりの数:PC1≦3
深さ1.0μm以上の谷の1インチ当たりの数:PC2≦3
であることを特徴とする塗装後鮮映性に優れた鋼板が提供される。この鋼板は、例え膜厚が70μm未満の薄膜塗装であったとしても良好な塗装後鮮映性を確保する。
【0014】
各指標の数値限定理由を以下に説明する。
【0015】
Wca:0.65μm以下とした。0.65μmを超えると、図1に示されるように、その外の指標の値を規定範囲内でどのように調整しても満足すべき鮮映性は得られなかったからである。
【0016】
ろ波うねり曲線(低域フィルターのカットオフ値0.8mm)の、
PC1、PC2:共に3以下とした。共に3を超えると、図2に示されるようにWcaを規定範囲内でどのように調整しても満足すべき鮮映性は得られなかったから、表面の谷部の数は塗装のレベリングと相関があり、厚膜塗装の場合は谷部が塗料で埋まり谷部の影響が小さくなるが、薄膜の場合には谷部が塗料で埋まらず谷部が塗装後の表面に影響を及ぼすためと推察される。山部については、塗装膜厚に関係なく、塗装後の表面に残存し、鮮映性に及ぼす影響が大きいためと推察される。
【0017】
本発明の鋼板は、ろ波うねり曲線の深さ2μm以上の谷の1インチ当たりの数(PC2’)が8以下の鋼板を、ろ波中心線うねりWcaが1.5μm以下で、うねり曲線の高さ2.5μm以上の山の1インチ当たりの数(PC1*)が8以下で深さ2.5μm以上の谷の1インチ当たりの数(PC2*)が8以下のロールで調質圧延することによって製造できる。
【0018】
調質圧延される前の鋼板表面はPC2’を8以下に抑える必要がある。ダル加工をしたワークロールの粗度の軽圧下率での圧延による鋼板への転写率を考慮した場合、圧延によっておこさせる局所的塑性流動によって埋める(すなわち、抑制する)ことのできるうねり曲線の谷数は限界があるため、PC’が8を超えると圧延しても鋼板表面にうねり曲線の谷が顕著に残り鮮映性が劣化するからである。
【0019】
なお、ワークロールのダル加工の方式は特定のものに限定されず、ショットブラスト、放電加工の他に、レーザ、プレズマ、電子ビーム等の高密度エネルギービームを用いたものなど種々の加工方法を利用でき、いずれの加工方法によってダル目付けしたワークロールを用いて加工しても上記の指標を満足すれば、塗装後鮮映性に優れた鋼板を製造できる。
【0020】
また、本発明では、膜厚が70μm未満かそれを超えるかにかかわらず、塗料の種類や塗布方法は従来から膜厚が70μmを超える厚膜塗装で採用されてきたものをそのまま利用できる。
【0021】
【実施例】
以下に示す実施例は単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
ろ波うねり曲線の深さ2μm以上の谷の1インチ当たりの数(PC2’)が12以下の鋼板を、ろ波中心線うねりWcaが1.5μm以下で、うねり曲線の高さ2.5μm以上の山の1インチ当たりの数(PC1*)が12以下で深さ2.5μm以上の谷の1インチ当たりの数(PC2*)が11以下のロールで、板厚が0.8mmの自動車用鋼板(普通鋼板(CR)、電気めっき鋼板(SZ)、溶融亜鉛めっき鋼板(GA))を圧下率1.0%以上で調質圧延した。そして、得られた鋼板の品質保証指標(Wca、PC1、PC2)を測定した。その後、鋼板表面にりん酸塩処理、電着塗装、上塗り塗装を施した。全体の膜厚は60μmと100μmにした。そして、得られた鋼板を写像鮮映度計で測定して、NSIC値を得た。尚、NSIC(60)は、塗装膜厚が60μmの時の塗装後鮮映性を表わし、また、NSIC(100)は、塗装膜厚が100μmの時の塗装後鮮映性を表わす。NSIC値は、鋼板表面の反射によって結像した矩形波パターンの光強度分布を測定し、それをフーリエスペクトル解析し、結像パターンの「矩形波からのズレ」の程度として鮮映度を評価したものであり、値が80以上のものを合格(○)とした。
【0023】
【表1】
Figure 0003614904
【0024】
【発明の効果】
通常塗装に限らず、70μm未満の薄膜塗装をしても、塗装前の鋼板の表面性状が上記指標を全て満足していれば、鮮映性に優れていた。鋼板が上記指標を満足するか否かの測定は簡便で短時間で済むため工場での実操業下での品質管理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】品質指標、特にWcaと鮮映性との関係を示す。
【図2】品質指標、特にPC1,PC2と鮮映性との関係を示す。

Claims (3)

  1. 鋼板の表面性状は、
    ろ波中心線うねり(低域フィルターのカットオフ値0.8mm、高域フィルターのカットオフ値2.5mm):Wca≦0.65
    ろ波うねり曲線(低域フィルターのカットオフ値0.8mm)の、
    高さ1.0μm以上の山の1インチ当たりの数:PC1≦3
    深さ1.0μm以上の谷の1インチ当たりの数:PC2≦3
    であることを特徴とする塗装後鮮映性に優れた鋼板。
  2. 塗膜の厚さが70μm未満の薄塗装鋼板用であることを特徴とする請求項1に記載の塗装後鮮映性に優れた鋼板。
  3. ろ波うねり曲線の深さ2μm以上の谷の1インチ当たりの数(PC2’)が8以下の鋼板を、
    ろ波中心線うねりWcaが1.5μm以下で、うねり曲線の高さ2.5μm以上の山の1インチ当たりの数(PC1*)が8以下で深さ2.5μm以上の谷の1インチ当たりの数(PC2*)が8以下のロールで調質圧延する
    ことを特徴とする請求項1に記載の塗装後鮮映性に優れた鋼板の製造方法。
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