JP3614572B2 - サイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のドア等の壁面サイドのシートバックの側部にサイドエアバッグを内蔵するサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
衝突等の事故の際におけるその膨張、突出によって着座者への衝撃を軽減するエアバッグが、自動車等での保護装置として、近年広く提供されている。そして、この種のエアバッグとして、たとえば、シートバックの側部に内蔵され、衝撃発生時におけるシートバック側部から前方への膨張、突出によって着座者をドア等の壁面から保護する、いわゆるサイドエアバッグが知られている。
【０００３】
このようなサイドエアバッグは、一般に、自動車の衝突等での衝撃を衝撃センサで検出したとき、インフレータと称される起動装置でのガス発生（噴射）および点火によって、着座者の上体とドア等の壁面との間に瞬時に膨張、突出するように構成されている。
【０００４】
サイドエアバッグは、通常、所定形状に折り畳まれた状態で、その基部をシートバックフレーム等のブラケットに固着してシートバックの側部に内蔵されている。そして、衝突等の衝撃発生時に膨張したサイドエアバッグは、シートバックのトリムカバーの側面に位置するまち部と、かがみ部、がくぶち部からなるメイン部との間の縫合部分に規定された突出口を、糸材の切断のもとで破断して外部、つまりはシートバックより前方の着座者の上体とドア等の壁面との間に突出可能となっている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、サイドエアバッグに内蔵されるインフレータのガスの噴射口は、通常、上部に位置するため、ガスの噴射、点火時においては、サイドエアバッグがその上部から膨張される。つまり、サイドエアバッグの膨張時においては、その上部に隣接する部分のトリムカバーのまち部に多大な力が作用し、その力のもとでまち部、メイン部間の縫合部分を破断するため、サイドエアバッグの折り畳み状態やトリムカバーの縫合強度およびまち部の剛性等の諸条件によっては、トリムカバーのまち部、メイン部間の縫合部分が上方に過剰に破断し、サイドエアバッグの突出方向が当初の予定位置からずれる虞れがある。
【０００６】
また、インフレータから噴射されるガスの量（容積）は一定であるため、上部側方の膨張にガスを大量に使ってしまうと、前方への膨張、突出に使用すべきガスの量が減少する虞れがある。このような、ガスの振り分けの偏り、つまりサイドエアバッグの内圧の不均衡は、サイドエアバッグの突出速度や突出部分の内圧等に影響を与えることが考えられるため、サイドエアバッグに期待される効果が低下する虞れも生じる。
【０００７】
この発明は、サイドエアバッグの突出口の特定化をはかるとともに、サイドエアバッグの内圧の均等化をはかるサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造の提供を目的としている。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、この発明によれば、メイン部に対するまち部の縫合部分でのその一体的な縫合によるまち部内面への補強部材の配置のもとで、少なくともインフレータのガスの噴射口に整列する部分を含むトリムカバーのまち部の所定範囲が部分的な多重構造とされ、これによって、その対応部分の剛性が部分的に補強されている。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【００１０】
図１、図２に示すように、サイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造１０においては、サイドエアバッグ１２が、ドア１４等の壁面サイドでシートバック１６の側部に内蔵され、シートバックのトリムカバー１８の側面に位置するまち部１８ａ によって覆われている。そして、図１に一点鎖線で示すように、その膨張のもとで、たとえば、ドア（壁面）１４に沿って前方に突出可能に、サイドエアバッグ１２は構成されている。
【００１１】
図１に加えて図３を見るとわかるように、サイドエアバッグ１２においては、通常、起動装置となるインフレータ２０が内蔵され、衝突等のもとでの衝撃の検出に伴うインフレータでのガスの発生（噴射）および点火によって、サイドエアバッグが瞬時に膨張可能となっている。
【００１２】
なお、このサイドエアバッグ１２の動作原理は公知であり、その構造およびそのための作動装置等はこの発明の趣旨でないため、ここでは詳細に説明しない。
【００１３】
ここで、サイドエアバッグ１２として、一般に、シートバック１６の側部から外方サイドの斜め前方に膨張、突出し、ドア１４への当接に伴うリバウンドによって、着座者の上体の側方から前方に回り込むタイプと、その膨張、突出によるシートバックの側部からの直進によってドア、着座者の上体間に入り込むタイプとが知られているが、ここでは、前者のシートバック１６の側部から外方サイドの斜め前方に突出するタイプを例示し、以下説明する。
【００１４】
図１を見るとわかるように、この種のサイドエアバッグ１２は、収縮状態で所定形状、たとえば、その膨張のもとで斜め前方に突出可能な形状に折り畳まれ、シートバックフレーム２２、サイドフレーム２４に固着されたブラケット２６に対して、その基部が、ボルト止め等によって固定されている。
【００１５】
このような、サイドエアバッグ１２の内蔵されたシートバック１６は、表皮、ワディング、ワディングカバー等からなるトリムカバー１８による、シートパッド２７の被覆によって形成され、トリムカバーに規定された特定範囲の突出口２８を介して、サイドエアバッグは外部に突出可能となっている（図１、図２参照）。
【００１６】
図１、図２に示すように、トリムカバー18は、側面に位置するまち部18aと、着座面および背裏をなすメイン部18bとを縫合により組み合わせた形状として形成されている。そして、トリムカバー18におけるサイドエアバッグ12の突出口28が、トリムカバーのまち部18a、メイン部18b間の縫合部分の特定範囲に規定されている。
【００１７】
なお、サイドエアバッグの突出口２８は、たとえば、図１、図２にａ ゾーンとして示すように、たとえば、トリムカバーのまち部１８ａ の前端（図中左方）の、サイドエアバッグ１２の膨張時の上端、下端間にほぼ相当する高さ、範囲において規定される。
【００１８】
ところで、図３を見るとわかるように、この発明では、サイドエアバッグ１２に内蔵されるインフレータ２０は、通常、上部にガスの噴射口２０ａ を有していることに着目している。そこで、この発明のサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造１０においては、インフレータ２０のガスの噴射口２０ａ に整列する部分から上方のトリムカバーのまち部１８ａ の所定範囲、たとえば、一点鎖線よりなる斜線で図２、図３に示す範囲のまち部内面に、補強部材３０を配置し、この部分を補強部材とまち部との２重構造とすることでまち部の剛性を部分的に補強している。
【００１９】
補強部材30としては、トリムカバーのまち部18aと同様のカバー材、つまり表皮、ワディング、ワディングカバー等からなるカバー材が利用でき、このカバー材は、メイン部18bに対するまち部との一体的な縫合によって連結、固定されている（図１参照）。
【００２０】
図１、図４を比較するとわかるように、図４に示す補強部材３０のないサイドエアバッグ１２の下部位置においては、隣接する部分のトリムカバーのまち部１８ａ が通常の１重構造であるのに対し、図１に示す補強部材の配置されたサイドエアバッグの上部位置においては、隣接する部分のまち部が２重構造となっている。つまり、この２重構造によって、当該部分、つまりはインフレータの噴射口２０ａ に隣接する部分のトリムカバーのまち部１８ａ の剛性が、他の部分に比較して部分的に高くなるように補強されている。
【００２１】
通常、インフレータの噴射口２０ａ からのガスの噴射、点火によってサイドエアバッグ１２が膨張を開始すると、膨張したサイドエアバッグによって、トリムカバーのまち部１８ａ の対応部分が外方に押し出され、この力による糸材の切断によって、まち部、メイン部１８ｂ 間の縫合部分の対応箇所、つまりはサイドエアバッグの突出口２８が破断、開放される。そして、図１に一点鎖線で示すように、この開放された突出口２８を介して、サイドエアバッグ１２は、ドア１４の方向に突出し、ドアからのリバウンドによって、着座者の前方に回り込むように突出、配置される。
【００２２】
一般に、インフレータ２０のガスの噴射口２０ａ は上部に位置するため、サイドエアバッグ１２は上部から膨張し始め、順次下方にその膨張が移行される。しかし、この発明のトリムカバー構造１０においては、インフレータのガスの噴射口２０ａ に整列するトリムカバーのまち部１８ａ の所定範囲が、補強部材３０の配置による２重構造とされているため、その剛性は高く、当該部分の押し出しを伴うサイドエアバッグ１２の膨張は抑制される。そして、サイドエアバッグ１２の内部に噴射されたガスは、上部での膨張の抑制に伴って、次第に下部に流される。
【００２３】
このように、インフレータのガスの噴射口２０ａ に整列するトリムカバーのまち部１８ａ の所定範囲を補強することで、サイドエアバッグ１２の内部に噴射されたガスは、上部に集中することなく下部へも流れるため、上部におけるガスの偏り、つまりはサイドエアバッグの内圧の偏りが防止できる。
【００２４】
そして、サイドエアバッグ１２の内圧が均等化すれば、サイドエアバッグの上下位置での突出力の均衡化がはかられ、上下に偏りのない、サイドエアバッグの上下均等な突出が得られる。従って、サイドエアバッグ１２が、特に上方に偏って突出することもなく、サイドエアバッグの突出方向の特定化がはかられる。
【００２５】
このように、突出方向の特定化されたサイドエアバッグ１２によれば、その突出時における着座者の保護が適切に行えるため、サイドエアバッグによる保護効果が十分に確保できる。
【００２６】
なお、トリムカバーのまち部１８ａ の補強部分は、その剛性を高めているにすぎず、メイン部１８ｂ との縫合力は他の部分と同一であるため、サイドエアバッグ１２の膨張に伴う縫合部分の破断の障害となることもなく、サイドエアバッグの内圧が均等であれば、まち部、メイン部間の縫合部分の破断による突出口２８からのサイドエアバッグ１２の突出は上下均等に得られる。
【００２７】
そして、この構成においては、トリムカバーのまち部１８ａ の対応部分に補強部材３０を配置、縫合すれば足りるため、構成が複雑化することがなく、作業性の煩雑化も招かない。
【００２８】
更に、図１に示すように、補強部材３０はトリムカバーのまち部１８ａ の内面に配置されるため、シートバック１６の外部に露出することがなく、シートバック、ひいてはシートの全体的な外観品質の低下を招かない。
【００２９】
ここで、インフレータ２０から噴射されるガスの量（容積）は一定であるため、上部側方の膨張にガスを大量に使ってしまうと、下部の膨張、突出に使用すべきガスの量が減少する。
【００３０】
しかし、この発明においては、トリムカバーのまち部１８ａ と補強部材３０とによる２重構造部分によって、上部側方へのサイドエアバッグ１２の膨張が抑制されるため、インフレータからのガスは、サイドエアバッグを側方に膨張させる力から前方に膨張、突出させる力へと移行される。つまり、トリムカバーのまち部１８ａ の対応部分の剛性を補強することで、側方へのサイドエアバッグ１２の膨張に過剰なガスを使うことなく、サイドエアバッグの前方、下方等にそのガスが振り分けられるため、サイドエアバッグが迅速に突出される。
【００３１】
そして、サイドエアバッグ１２の前方へも、インフレータ２０からのガスが十分に振り分けられるため、サイドエアバッグの突出部分の内圧が十分に確保できる。従って、ドア１４からの着座者の隔離、着座者の弾性支持等の、サイドエアバッグ１２に期待される効果が十分に確保できる。
【００３２】
ここで、この発明の実施の形態においては、トリムカバーのまち部１８ａ と同様のカバー材として、補強部材３０を具体化しているが、まち部の対応部分の剛性を部分的に高めれば足りるため、これに限定されず、他の素材からなるシート片等の配置によって、当該部分を補強してもよい。しかしながら、補強部材３０としてカバー材を利用すれば、製造コストの上昇が防止できるとともに、構成の簡素化が十分にはかられる。
【００３３】
また、この実施の形態においては、トリムカバーのまち部１８ａ と補強部材３０との２重構造による補強として具体化しているが、多重構造による剛性の補強であれば足りるため、これに限定されず、３重構造等としてもよい。しかしながら、トリムカバーのまち部１８ａ の対応部分の剛性を他の部分の剛性に比較してある程度強化すれば足りるため、まち部と、このまち部と同素材のカバー材とによる２重構造とすることが、得られる剛性の高さから好ましいとともに、構成が簡素化でき、この点からも、作業性が向上される。
【００３４】
更に、この実施の形態においては、上部に噴射口２０ａ を有する構成としてインフレータ２０を具体化しているが、これに限定されず、他の部分、たとえば、中間部、下部等に噴射口を持つインフレータの内蔵されたサイドエアバッグ１２においても、この発明が応用できる。このような構成においても、インフレータ２０のガスの噴射口２０ａ に整列する部分を含むトリムカバーのまち部１８ａ の所定範囲に、補強部材３０を配置すれば、インフレータの噴射口に対応する部分でのサイドエアバッグ１２の過剰な膨張が抑制できるため、上記の実施の形態における効果と同様の効果が十分に得られる。
【００３５】
また、この実施の形態においては、サイドエアバッグ１２として、シートバック１６の側部から外方サイドの斜め前方に膨張、突出し、ドア１４への当接に伴うリバウンドによって、着座者の上体の側方から前方に回り込むタイプを例示し説明しているが、これに限定されず、その膨張、突出によるシートバックの側部からの直進によってドア、着座者の上体間に入り込むタイプのサイドエアバッグを備えたサイドエアバッグ内蔵シートにも、この発明のトリムカバー構造が適用できる。
【００３６】
このような構成のサイドエアバッグを内蔵したシートにおいても、補強部材３０との２重構造によって、トリムカバーのまち部１８ａ の対応する部分の剛性が部分的に補強されるため、インフレータ２０の噴射口２０ａ の位置する上部の膨張が抑制され、その余分なガスは下方および前方等の他の方向に有効に振り分けられる。従って、サイドエアバッグ１２の突出方向の特定化、および、十分な内圧のもとでの迅速な突出が得られ、このタイプのサイドエアバッグ内蔵シートにおいても、上述した実施の形態と同様の効果が確保できる。
【００３７】
上述した発明の実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【００３８】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係るサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造によれば、トリムカバーのまち部の剛性の部分的な補強によって、インフレータから噴射されたガスの有効な振り分けが可能となるため、サイドエアバッグの内圧の偏りが防止できる。そのため、サイドエアバッグの上下位置での突出力の均衡化がはかられ、上下に偏りのない、サイドエアバッグの上下均等な突出によって、サイドエアバッグの突出方向の特定化がはかられる。
【００３９】
従って、サイドエアバッグの突出時における着座者の保護が適切に行え、サイドエアバッグによる保護効果が十分に確保できる。
【００４０】
そして、サイドエアバッグ内でのガスの有効な振り分けによって、サイドエアバッグの迅速な突出、および、突出部分での十分な内圧が確保できるため、ドア等の壁面からの着座者の隔離、着座者の弾性支持等の、サイドエアバッグに期待される効果が十分に確保できる。
【００４１】
更に、補強部材として、トリムカバーのまち部との同素材のカバー材を利用すれば、構成の簡素化がはかられ、製造コストの上昇が防止できる。そして、トリムカバーのまち部と補強部材との２重構造とすれば、簡素な構成にも拘らず、サイドエアバッグの膨張の抑制に適した剛性が、まち部の対応部分に十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図２の線Ａ−Ａに沿った、この発明に係るサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造の概略横断面図である。
【図２】サイドエアバッグ内蔵シートの斜視図である。
【図３】サイドエアバッグを正面から見た、サイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造の概略縦断面図である。
【図４】図２の線Ｂ−Ｂに沿った、サイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造の概略横断面図である。
【符号の説明】
１０ サイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造
１２ サイドエアバッグ
１６ シートバック
１８ トリムカバー
１８ａ まち部
１８ｂ メイン部
２０ インフレータ
２０ａ インフレータの噴射口
２８ 突出口
３０ 補強部材（カバー材）

Claims (4)

1. シートバックの側部に、起動装置となるインフレータの噴射口からのガスの噴射、点火によって膨張するサイドエアバッグを内蔵し、トリムカバーの側面に位置するまち部と、その着座面および背裏をなすメイン部との縫合部分のうちの前端特定範囲に規定された突出口の破断によって、サイドエアバッグを特定方向に膨張、突出させるサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造において、
   メイン部に対するまち部の縫合部分でのその一体的な縫合によるまち部内面への補強部材の配置のもとで、少なくともインフレータのガスの噴射口に整列する部分を含むトリムカバーのまち部の所定範囲を部分的な多重構造とすることにより、その対応部分の剛性を部分的に補強したことを特徴とするサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。
2. シートバックの側部に、起動装置となるインフレータの噴射口からのガスの噴射、点火によって膨張するサイドエアバッグを内蔵し、トリムカバーの側面に位置するまち部と、その着座面および背裏をなすメイン部との縫合部分のうちの前端特定範囲に規定された突出口の破断によって、サイドエアバッグを特定方向に膨張、突出させるサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造において、
   メイン部に対するまち部の縫合部分でのその一体的な縫合によるまち部内面への補強部材の配置のもとで、少なくともインフレータのガスの噴射口に整列する部分から上方のトリムカバーのまち部の所定範囲を部分的な多重構造とすることにより、その対応部分の剛性を部分的に補強したことを特徴とするサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。
3. 補強部材が、トリムカバーのまち部と同一のカバー材から形成された請求項１または２記載のサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。
4. 補強部材が、トリムカバーのまち部と同一のカバー材から形成され、このカバー部材の配置によって、対応部分を２重構造とした請求項１または２記載のサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。

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