JP3614007B2 - 水中基礎の構築工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水中基礎の構築工法に関し、特に、圧力差を利用して水中基礎構造物を沈設する構築工法の改良技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水中に基礎を構築する際に、杭基礎の場合は、押し込み力として打撃や振動などの機械力を利用することができるが、例えば、大型の海岸や海洋構造物のような大水深基礎では、このような機械力により、基礎構造物を沈設することが困難になる。
【0003】
そこで、このような大水深基礎の構築方法の一つとして、スカート部を有する基礎構造物を、圧力差(サクション)を利用して、水底地盤中に沈設するサクション基礎工法と呼ばれている構築方法がある。
【0004】
この構築方法は、図6に示すように、基礎構造物1の下端外周縁に、水底に貫入させて、水の流入を阻止するスカート部2を設け、このスカート部2内の水を排除することで、内部の圧力を下げて、基礎構造物1に圧力差に応じたサクション圧がかかるようにしてこれを所定深度まで沈設する。
【0005】
この構築方法は、比較的施工が容易で、十分に水底地盤中に根入れされた基礎は、滑動,転倒,引き抜きに対する抵抗も著しく増大するという長所がある。しかしながら、このような水中基礎の構築方法には、以下に説明する技術的な課題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、図6に示した構築方法では、スカート部2の内外に作用する圧力差を大きくすれば、貫入力も大きくなるが、沈設対象地盤が、緩い砂地盤の場合には、図7に示すように、スカート部2の内部に土砂が圧力差により廻り込む、いわゆる、ボイリング現象が発生する。
【0007】
このようなボイリング現象が発生すると、貫入不能に陥り、必要な根入れ長が確保できず、基礎が不安定になるだけでなく、ボイリングで盛り上った部分は、乱されることにより強度が低下しているので、支持力が不足するとともに、沈下量も増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ボイリング現象を防ぐことができる水中基礎の構築工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、水中基礎構造物の下端に、水底地盤中に貫入させて、水の流入を阻止するスカート部を設け、前記水中基礎構造物内にサクション圧を作用することで水底地盤中に沈設する水中基礎の構築工法において、前記水中基礎構造物を基礎部分と前記スカート部とに分割し、前記基礎部分を水底地盤上に沈設させた後に、前記スカート部を水底地盤中に貫入し、しかる後に、前記水中基礎構造物内を減圧するようにした。
このように構成した水中基礎の構築工法によれば、水中基礎構造物を基礎部分とスカート部とに分割し、基礎部分を水底地盤上に沈設させた後に、スカート部を水底地盤中に貫入し、しかる後に、水中基礎構造物内を減圧するので、水底地盤上に沈設された基礎部分により、ボイリングを抑えることができる。
また、本発明の構築工法では、前記基礎部分の外周に、前記スカート部を嵌合挿入して、前記基礎部分と一体化させるガイドリングを設けることができる。
この構成によれば、ガイドリングを設けることにより、スカート部を沈設する際の位置決めが簡単に行え、スカート部とスカート部と基礎部分とを確実に一体化させることができる。
前記サクション圧は、前記水中基礎構造物の供用後の荷重よりも大きな値に設定することができる。
この構成によれば、水底地盤の強度増加を図るとともに、水底地盤を過圧密状態にして、供用後の沈下量を抑制することができる。
前記サクション圧は、前記水中構造物の供用後にもある程度の大きさの値が常時かるように設定することができる。
この構成によれば、地震や波力、潮力などの水平力による引き抜けに対しても抵抗が大きくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図5は、本発明にかかる水中基礎の構築工法の一実施例を示している。
【0011】
同図に示した構築工法は、図1および図2にその完成状態を示すような水中基礎構造物10を構築する際に適用したものであって、本実施例の構築対象となる水中基礎構造物10は、分割された基礎部分12およびスカート部14とガイドリング15とを有している。
【0012】
基礎部分12は、所定の厚みを備えた円板状に形成された本体16と、本体16の上面側の中心軸上に垂設された円筒部18とを備えていて、本体16の下面側には、凹部20が同心状に形成されていて、この凹部20内には、フィルター22が、凹部20内を埋めるようにして充填されている。
【0013】
フィルター20は、水分を透過し、土砂の透過を阻止する機能を備えている。凹部20は、本体16および円筒部18の中心軸上に貫通形成された吸引通路24を介して外部に連通していて、この吸引通路24の一端には、図外の減圧装置が接続される。
【0014】
スカート部14は、下端が開口し、上端内周にリング状フランジが設けられた略中空円筒体を、中心軸上を通る線分により放射状に分断した複数のスカートブロック体25から構成されている。
【0015】
各スカートブロック体25は、水底地盤26中に貫入させられる刃部28と、刃部28の上端に、直交する方向に一体に延設された係止部30とを備えていて、断面形状が略逆L字形に形成されている。
【0016】
ガイドリング15は、基礎部分12の本体16と同心円状に形成され、所定の高さを有するリング部32と、このリング部32の下端外周縁に一体に突設されたフランジ部34とを備えている。
【0017】
このガイドリング15のリング部32の内周径は、円板状の本体16の外周側に設置した際に、スカート部14の刃部28の厚みとほぼ同じ程度の間隔が形成され、刃部28の嵌合挿入が可能になる大きさになっている。
【0018】
以上のように構成された水中基礎構造物10を構築する工程について、図3から図5に基づいて説明する。水中基礎構造物10の構成部材である基礎部分12,スカート部14,ガイドリング15は、それぞれ構築現場近傍の製作ヤードで予め製作され、構築現場まで曳航される。
【0019】
基礎部分12,スカート部14,ガイドリング15が構築現場まで曳航されると、まず、図3に示すように、基礎部分12とガイドリング15とが水底地盤26上に沈設設置される。
【0020】
そして、基礎部分12の外周にガイドリング15が沈設設置されると、フィルター22の下面が水底地盤26の上面に当接するとともに、基礎部分12の本体16の外周面と、ガイドリング15のリング部32の内周面との間に、刃部28の嵌合挿入が可能な環状空間36が形成される。
【0021】
次いで、スカート部14の沈設設置が行われる。このスカート部14の沈設設置を行う際には、各スカートブロック25の刃部28の下端側を環状空間36内に嵌合挿入し、これを水底地盤26中の所定深度まで貫入させる。
【0022】
この貫入を行う際には、例えば、スカート部14の上端側から打撃または振動を印加する方式や、あるいは、スカート部14の先端側にウォータージェットを供給して水底地盤26を掘削する方式、さらには、これらを併用する方式により行うことができる。
【0023】
複数のスカートブロック25の各刃部28および係止部30を周方向に隣接配置して、図4に示すように、各係止部30が本体16の上面に当接するように設置すると、基礎部分12の外周に、スカート部14を嵌合挿入して、基礎部分12と一体化させた図1,2に示した水中基礎構造物10の形態となる。
【0024】
次ぎに、吸引通路24に接続されている減圧装置を稼動させて、凹部28内を減圧し、本体16の上部側にサクション荷重を印加して、水中基礎構造物10を水底地盤26中の所定深度まで沈設して、その構築を終了する。
【0025】
さて、以上のように構成した水中基礎の構築工法によれば、水中基礎構造物10を基礎部分12とスカート部14とに分割し、基礎部分12を水底地盤26上に沈設させた後に、スカート部14を水底地盤26中に貫入し、しかる後に、基礎部分12内を減圧するので、水底地盤26上に最初に沈設された基礎部分12により、ボイリングを抑えることができる。
【0026】
また、スカート部14を水底地盤26中に貫入した後に、基礎部分12側を減圧すると、その圧力差が基礎地盤(水底地盤26)への載荷重となって、以下に示す効果が期待できる。
【0027】
すなわち、まず、水中基礎構造物10の供用後の荷重よりも大きなサクション圧を作用させると、このサクション圧により水底地盤26を圧密化させて、水底地盤26の強度増加を図るとともに、水底地盤26を過圧密状態にして、供用後の沈下量を抑制することができる。
【0028】
また、水中基礎構造物10の供用後にもある程度のサクション圧を常時かけておくと、地震や波力、潮力などの水平力による引き抜けに対しても抵抗が大きくなる。
【0029】
さらに、本発明の構築工法では、基礎部分12の外周に、スカート部14を嵌合挿入して、基礎部分12と一体化させるガイドリング15を設けているので、スカート部14を沈設する際の位置決めが簡単に行え、スカート部14と基礎部分12とを確実に一体化させることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上、実施例で詳細に説明したように、本発明にかかる水中基礎の構築工法によれば、ボイリング現象を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる構築工法で構築する水中基礎構造の一例を示す設置状態の斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】本発明にかかる水中基礎の構築工法の最初の工程を示す断面説明図である。
【図4】図3の工程に引き続いて行われる工程の断面説明図である。
【図5】図4の工程に引き続いて行われる工程の断面説明図である。
【図6】従来の水中基礎の構築工法の一例を示す設置状態の断面説明図である。
【図7】図6の工法で構築された基礎の不具合を示す説明図である。
【符号の説明】
10 水中基礎構造物
12 基礎部分
14 スカート部
15 ガイドリング
16 本体
18 円筒部
20 凹部
22 フィルター
24 吸引通路
25 スカートブロック
26 水底地盤
28 刃部
30 係止部

Claims (4)

  1. 水中基礎構造物の下端に、水底地盤中に貫入させて、水の流入を阻止するスカート部を設け、前記水中基礎構造物内にサクション圧を作用することで水底地盤中に沈設する水中基礎の構築工法において、
    前記水中基礎構造物を基礎部分と前記スカート部とに分割し、前記基礎部分を水底地盤上に沈設させた後に、前記スカート部を水底地盤中に貫入し、しかる後に、前記水中基礎構造物内を減圧することを特徴とする水中基礎の構築工法。
  2. 前記基礎部分の外周に、前記スカート部を嵌合挿入して、前記基礎部分と一体化させるガイドリングを設けたことを特徴とする請求項1記載の水中基礎の構築工法。
  3. 前記サクション圧は、前記水中基礎構造物の供用後の荷重よりも大きな値に設定することを特徴とする請求項1または2記載の水中基礎の構築工法。
  4. 前記サクション圧は、前記水中構造物の供用後にもある程度の大きさの値が常時かるように設定することを特徴とする請求項1または2記載の水中基礎の構築工法。
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