JP3613938B2 - 無電極hidランプ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無電極HIDランプ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高輝度放電ランプ(HIDランプ)のランプ寿命の向上を図るために、或いは発光物質の選択の幅を広げ、演色性や発光効率の向上を図るために、放電空間内に電極を取り付けず、ランプ外部から高周波電磁界を印加することによってランプ内を放電させる形式の、いわゆる無電極HIDランプが提案されている。
【0003】
無電極HIDランプは放電空間内に電極がないために、電極に起因する種々の欠点(封入物と電極との反応やスパッタリングによる電極の消耗、管壁の黒化、電極での電力ロスなど)がないという特徴があり、従来よりも高演色で高効率、長寿命のHIDランプに成り得ると期待されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように優れた特徴が期待される無電極HIDランプではあるが、これを例えば屋外灯やトンネル灯として、保守点検作業の行い難い場所に設置した場合には寿命が数万時間でも十分であるとはいえず、さらに長寿命のランプが研究開発される必要がある。
【0005】
また、ランプ単体で配光性や光特性(光量、色温度、演色性など)が変えられる無電極HIDランプは未だない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたもので、請求項1の発明の目的とするところはランプ寿命を大きく向上させるために、複数の放電空間の一つを選択して放電させることができ、さらには配光を放電する放電空間に合わせて可変することができる無電極HIDランプ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明では、発光管が複数個の放電空間から成る無電極HIDランプに対して、各放電空間の近傍に設けた始動補助電極と、各始動補助電極に高電圧パルスを各々印加する手段とを備え、始動補助電極の各々に選択的に高電圧パルスを印加することによって、放電空間の各々を選択的に放電させるとともに、反射板を具備して放電する放電空間に応じて、スポットライト的な配光と広がった配光とに可変としたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施形態を説明する前に、本発明の無電極HIDランプ及びその装置について概略的に説明する。
【0009】
寿命向上を目的とする場合において、本発明無電極HIDランプの発光管は大きさや形状のほぼ等しい複数個の放電空間から構成される。各放電空間には金属ハロゲン化物等の発光物質や、希ガス等のバッファーガスを封入する。各放電空間に封入する発光物質およびバッファーガスの種類や量はほぼ等しくする。また点灯装置の点灯回路のインピーダンスは放電空間1個が放電している時に整合するように調整されてある。点灯装置により無電極HIDランプ外部から高周波電磁界を印加することによって、複数個ある放電空間の中で最も放電が起こりやすい1個のみが放電する。従って2個以上の放電空間が同時に放電することはなく、最初に放電の起こった放電空間のインピーダンスが低下するために、その放電空間のみに電力が入る。無電極HIDランプの点灯消灯を繰り返すにつれ、当初最も放電しやすかった放電空間の内部は次第に劣化し、別の放電空間の方が相対的に放電しやすくなる。従って、点灯回数が増加するにつれ、放電点灯する放電空間が、順次交代していくことになる。このことによって、1個の放電空間を有する従来の発光管に比較して、放電空間1個あたりの劣化速度は小さくなる。故に放電空間が1個の従来の発光管を持つ無電極HIDランプに比較して、本発明無電極HIDランプは放電空間の数をnとしたとき、ランプ寿命はn倍、或いはそれ以上に向上させることができ、従来よりも長寿命の無電極HIDランプを提供することができる。
【0010】
なお、発光管内の各放電空間の近傍に始動補助電極を設置して高電圧パルスを与える等の手段を用いれば、放電空間のいずれか1個を選択的に放電させることができる。上述した発光管において、放電空間のいずれか1個がかってに放電するのに任せるのではなく、各放電空間が偏りなく同じ頻度で放電するように、この機構を用いて選択的に放電させるようにしても、ランプ寿命を向上させることができる。
【0011】
配光可変性を目的とする場合は、複数の放電空間を有する発光管を納めた無電極HIDランプ装置を反射板と組み合わせ、各放電空間の内の1個を選択的に放電させる。各放電空間の反射板に対する光学的配置は異なるので、点灯させる放電空間を選択的に切り替えることにより、配光性可変の無電極HIDランプ装置として提供することができる。
【0012】
光特性の可変を目的とする場合には、複数の放電空間を有する発光管の各放電空間内に種類や量の異なる物質を封入し、放電空間の内の1個を選択的に放電させる。例えば全光束の異なる発光物質を各放電空間に封入しておけば、点灯させる放電空間を切り替えることによって全光束可変のランプ(すなわち段調光可能なランプ)になるというように、封入する発光物質の種類や量によって、全光束や色温度、演色性など種々の光特性可変の無電極HIDランプ装置を提供することができる。
【0013】
以下本発明を参考例、および実施形態により詳説する。
【0014】
(参考例1)
本参考例で用いる無電極HIDランプ1は、ガラス等で形成された発光管2の内部空間を上下2つに分割して略同形状の分割空間を放電空間3a,3bとしたものであり、各放電空間3a,3b内には同一物質が封入されている。発光管1の回りには点灯回路4に接続された誘導コイル5が巻回されている。点灯回路4は高周波発振回路、電力増幅回路、インピダーンス整合回路等による周知の無電極ランプに対応する点灯回路であり、インピーダンスは1つの放電空間3a又は3bが安定に点灯している時に整合するように調整されている。
【0015】
而して誘導コイル5に点灯回路4から高周波電流を通電することにより、放電空間3a、3bのいずれか一方のみが放電することになる。
【0016】
本参考例では、誘導コイル5を用いてMHz領域の高周波を印加したが、使用する高周波の帯域や印加手段は特にこれに限定するものではなく、他に、例えばマイクロ波を導波管により印加する方式であっても構わない。
【0017】
図1では、発光管2は上下2つの放電空間3a、3bに分割されているが、図2(a)(b)に示すように左右に分割して放電空間3a,3bを形成しても良い。
【0018】
放電空間の数も特に2個に限定せず、図3のように3個の放電空間3a,3b、3c、あるいはそれ以上に分割してあっても構わない。また、参考例1では1つの発光管を分割して2つの放電空間を作ったが、図4、図5に示すように、単一の放電空間3a…を有する複数個の発光管2a…を近接させて無電極HIDランプ1を構成しても良い。
【0019】
図1に示す発光管2からなる無電極HIDランプと、図1とほぼ同形状で同一物質を封入した放電空間を1つだけ有する発光管からなる従来の無電極HIDランプの各々に対して、寿命試験(試験の形式は5.5時間点灯、0.5時間消灯の繰り返しで無電極HIDランプを点滅させる点滅寿命試験である)を行いつつ全光束の経時変化を調べたところ、図6に示す結果が得られた。図6中イは図1の無電極HIDランプ1の場合を、ロは従来例の場合を示す。この測定は各々の無電極HIDランプに対して約2万時間までしか行っていないが、測定値を外挿し、全光束が初期値の50%以下に低下した時点をそのランプの寿命と定めることにすれば、従来の無電極HIDランプの寿命は約4万時間であることがわかる。それに対して図1の無電極HIDランプ1の寿命は約8万時間となり、従来の無電極HIDランプに比べて寿命が大きく向上したことが確認できた。
【0020】
従って、複数個の放電空間から成る発光管を作り、放電空間のいずれか1個が放電するようにしたことにより、従来よりも長寿命の無電極HIDランプを提供することができることになる。
【0021】
(実施形態1)
図7は本実施形態の概略を図示したものだが、無電極HIDランプ1の発光管2は上下2個の放電空間3a,3bから成り、各放電空間3a、3bの大きさや形状をほぼ等し、同一物質を封入くしている。各放電空間3a,3bの近傍に設置された始動補助電極7a,7bに選択的に高電圧パルスを点灯回路(図示せず)から印加することにより、放電空間3a.3bは選択的に放電点灯させることができるようになっている。放電空間3aの中心は凹面鏡型反射板6の焦点に一致させてある。ただし、反射板6の形状はこれに限定されるものではない。
【0022】
而して放電空間3aを点灯させると、スポツトライト的で強い配光が得られる。それに対し、反射板6の焦点からずれた場所に中心がある放電空間3bを点灯させた場合には、反射板6の前方の空間全体に広がった配光が得られる。従って、複数個のほぼ同一の放電空間3a…を有する発光管2を持つ無電極HIDランプ1を作り、点灯させる放電空間3a…を選択的に変える手段(始動補助電極7a…)と、反射板6とを組み合わせることによって、配光性可変の無電極HIDランプ装置として提供することができる。尚図7においては、上下2つの放電空間3a、3bからなる発光管2を用いたが、図8のように左右2つの放電空間3a,3bから成る発光管2を持つ無電極HIDランプ1を用いても、配光性を変えることができる。この場合、点灯させる放電空間3a、3bを切り替えることによって、左あるいは右に偏った配光が得られる。また図9に示すように3つの放電空間3a…と、夫々に対応する始動補助電極7a…とを持つ発光管2を用いても、配光を変えることができる無電極HIDランプ装置を提供することができる。
【0023】
(実施形態2)
図10は本実施形態の無電極HIDランプ装置の概略を示すものだが、無電極HIDランプ1の発光管2は大きさが異なる2つの放電空間3a、3bから成る。図10においては、小さい放電空間3aが上になっているが、発光管2の向きはこれに限定されるものではなく、図11のように大きい方の放電空間3bが上になるようにしても構わない。而して、図10において、各放電空間3a,3bの近傍に設置された始動補助電極7a,7bに選択的に高電圧パルスを印加することにより、放電空間3a,3bは選択的に放電点灯させることができる。この場合放電空間3aの中心は凹面鏡型反射板6の焦点に一致させてある。ただし、反射板6の種類はこれに限定されるものではない。放電空間3aを点灯させると、図6に示す実施形態1よりもさらにスポットライト的な配光が得られた。反射板6の焦点からずれた場所に中心がある放電空間3bを点灯させた場合には、反射板6前方の空間全体に広がった配光が得られる。
【0024】
従って、大きさが異なる複数個の放電空間3a…を有する発光管2を用意し、点灯させる放電空間3a…を選択的に変えることにより、実施形態1と同様に配光性可変の無電極HIDランプ装置を提供することができる。
【0025】
(参考例2)
図12は本参考例の概略を示すものである。図12において、無電極HIDランプ1の発光管2は大きさが同じ放電空間3a,3bを持ち、各放電空間3a、3bの近傍に設置された始動補助電極7a,7bに選択的に高電圧パルスを印加することにより、放電空間3a,3bの何れか一方で選択的に放電点灯させることができる無電極HIDランプ装置を構成する。
【0026】
本参考例においては、放電空間3aには発光物質としてNaI−ScI3の混合物を10mg、バッファーガスとしてXeを200Torrを封入している。
【0027】
また、放電空間3bには同じくNaI−ScI3の混合物を0.2mg、Xeを200Torr封入している。
【0028】
尚各放電空間3a,3bに封入する発光物質やバッファーガスの種類、量は本参考例に限定するものではない。
【0029】
而して図1に示すような点灯回路4及び誘導コイル5からなる点灯装置に本参考例の無電極HIDランプ装置を装着して、誘導コイル5に200Wの電力を入力し、放電空間3aを点灯させたところ、全光束約14000lmの光が得られたのに対して、同じ電力量の下に放電空間3bを点灯させたところ、約7500lmの光が得られた。
【0030】
従って、複数の放電空間の各々に異なる量の発光物質を封入し、点灯させる放電空間を切り替えることによって、全光束可変(すなわち可調光〕の無電極HIDランプ装置として提供することができる。
【0031】
尚本参考例では、複数の放電空間3a、3bの各々に異なる量の発光物質を封入したが、異なる量のバッファーガスを各放電空間内に封入しても同様の効果が得られた。また、Csl等プラズマを広げる作用を持つ物質或いは放電空間に対するガス圧を高くしたり、点灯中の沃素が多いSbI3等プラズマを収縮させる作用を持つ物質の異なる量を発光物質に添加し、各放電空間に封入しても同様の効果が得られた。
【0032】
(参考例3)
図13は本参考例の概略を示すものである。図13において、無電極HIDランプ1の発光管1は異なる大きさの放電空間3a、3bから成る。各放電空間3a,3bの近傍に設置された始動補助電極7a,7bに選択的に高電圧パルスを印加することにより、放電空間3a、3bの何れか一方で選択的に放電点灯させることができる。本参考例においては、各放電空間3a、3bにはNaI−ScIの混合物を10mg、Xeを200Torr封入している。
【0033】
尚各放電空間3a、3bに封入する発光物質やバッファーガスの種類、量は本参考例に限定するものではない。
【0034】
而して図1に示すような点灯回路4及び誘導コイル5からなる点灯装置に本参考例の無電極HIDランプ装置を装着して、誘導コイル5に200Wの電力を入力し、放電空間3aを点灯させたところ、全光束約15000lmの光が得られたのに対して、同じ電力量の下に放電空間3bを点灯させたところ、約8000lmの光が得られた。
【0035】
従って、複数の放電空間の各々に異なる量の発光物質を封入し、点灯させる放電空間を切り替えることによって、全光束可変(すなわち可調光〕の無電極HIDランプ装置として提供することができる。
【0036】
(参考例4)
図14は本参考例の概略を示すものである。図14において、無電極HIDランプ1の発光管1は略同じ大きさの放電空間3a、3bから成る。各放電空間3a,3bの近傍に設置された始動補助電極7a,7bに選択的に高電圧パルスを印加することにより、放電空間3a、3bの何れか一方で選択的に放電点灯させることができる。本参考例においては、放電空間3aにLuハロゲン化物10mgとXe200Torrを、放電空間3bにはEuハロゲン化物10mgとXe200Torrを封入している。
【0037】
尚各放電空間3a、3bに封入する発光物質や量は本参考例に限定するものではない。
【0038】
而して図1に示すような点灯回路4及び誘導コイル5からなる点灯装置に本参考例の無電極HIDランプ装置を装着して、誘導コイル5に200Wの電力を入力し、放電空間3aを点灯させたところ、色温度約5000Kの光が得られた。それに対して、同じ電力量の下に放電空間3bを点灯させた場合は、色温度3000Kの光が得られた。従って、点灯させる放電空間を切り替えることによって色温度可変(すなわち可調色)の無電極HIDランプ装置として供することができた。
【0039】
尚発光管形状、放電空間形状は本参考例に限定されるものではない。
【0040】
【発明の効果】
請求項1の発明は、発光管が複数個の放電空間から成る無電極HIDランプに対して、各放電空間の近傍に設けた始動補助電極と、各始動補助電極に高電圧パルスを各々印加する手段とを備え、始動補助電極の各々に選択的に高電圧パルスを印加することによって、放電空間の各々を選択的に放電させるとともに、反射板を具備して放電する放電空間に応じて、スポットライト的な配光と広がった配光とに可変としたので、放電空間が1つの発光管を用いた従来の無電極HIDランプに比べて、長寿命となり、放電させる放電空間を選択することができる無電極HIDランプ装置を提供することができ、さらには配光可変の無電極HIDランプ装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例1の無電極HIDランプを用いた点灯装置の概略構成図である。
【図2】(a)は同上に用いる別の無電極HIDランプの側面図である。
(b)は同上の用いる別の無電極HIDランプの斜視図である。
【図3】同上に用いる他の無電極HIDランプの斜視図である。
【図4】同上に用いるその他の無電極HIDランプの側面図である。
【図5】同上に用いる更に別の無電極HIDランプの斜視図である。
【図6】同上の無電極HIDランプと従来例の全光束の経時変化の比較を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1の無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【図8】同上の別の例の無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【図9】(a)は同上に用いる他の無電極HIDランプの側面図である。
(b)は同上の他の無電極HIDランプを用いて構成した無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【図10】本発明の実施形態2の無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【図11】同上の別の例の無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【図12】本発明の参考例2の無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【図13】本発明の参考例3の無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【図14】本発明の参考例4の無電極HIDランプ装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 無電極HIDランプ
2 発光管
3a,3b 放電空間
4 点灯回路
5 誘導コイル
Claims (1)
- 発光管が複数個の放電空間から成る無電極HIDランプに対して、各放電空間の近傍に設けた始動補助電極と、各始動補助電極に高電圧パルスを各々印加する手段とを備え、始動補助電極の各々に選択的に高電圧パルスを印加することによって、放電空間の各々を選択的に放電させるとともに、反射板を具備して放電する放電空間に応じて、スポットライト的な配光と広がった配光とに可変としたことを特徴とする無電極HIDランプ装置。
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JP22868897A JP3613938B2 (ja) | 1997-08-26 | 1997-08-26 | 無電極hidランプ装置 |
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JPH1167159A JPH1167159A (ja) | 1999-03-09 |
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