JP3613903B2 - ポリエステル組成物およびフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル組成物およびフィルムに関するものであり、詳しくは、低分子量体含有量が少なく、電気的特性、耐加水分解性、耐熱性、耐ブリードアウト性、機械的特性、機械の各電絶部位への挿入性に優れたポリエステル組成物およびフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、とくにポリエチレンテレフタレート(以下PETという)は優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性により産業用途に広く使用され、需要量も増大している。しかしながら、用途および需要拡大に伴い、ポリエステルに要求される特性も、それぞれの用途分野においてますます厳しくなってきている。
【0003】
それらの要求特性として、低分子量体(以下オリゴマーという)含有量の少ないポリエステル成形品がある。また、絶縁フィルム等、フィルム製部品として用いる場合には、生産性向上の観点から、機械等の各絶縁部位への挿入性に優れることも要求される。
【0004】
PET成形品においては、通常エチレンテレフタレート環状三量体(以下環状三量体という)が1〜1.3重量%含まれている。このような低分子量体は、口金汚れや、蒸着品では膜抜けなどの原因ともなるが、特に冷凍機用の密閉型モーターの電気絶縁用に使用すると、ポリエチレンテレフタレート・フィルムからモーター中の冷媒により、低分子量体が抽出され、その中の環状三量体が冷凍機の各所に析出するためトラブルの原因となる。
【0005】
環状三量体含有量が少ないフィルムを得る方法としては、特開昭54− 62277号公報に記載されたように、フィルムをキシレンなどの溶媒に浸析してオリゴマーを抽出する方法や、特開昭63− 197643号公報に記載されたように、積層フィルムとすることでオリゴマの析出を押さえるなどの方法が提案されているが、いずれも生産性が著しく劣り、また、加工性にも問題があった。
【0006】
こうした低オリゴマーフィルムを得るための一つの方法としては、ポリマーチップに固相重合を施して環状三量体を減少させ、しかる後に溶融押し出し、製膜をする方法が知られている。ところが、こうした方法でポリエステルフィルムもしくはその他成形品を得る場合、溶融押し出し時に環状三量体は再び大きく増加してしまい、充分な低オリゴマー性を得るには不充分であり、また、フィルムの挿入性向上などは望めないものであった。
【0007】
一方、ポリエステルの溶融押し出しを容易にする目的で、特開昭61− 207458や、特開昭62− 74955、特表昭63− 501725には、ポリエステル樹脂に対して各種添加物の使用が開示されているが、押し出しを容易にする効果、耐ブリードアウト性等において充分なものではなく、さらに公知のこれら方法では、低オリゴマー化の効果は全く得られるものではなかった。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低分子量体含有量が少なく、かつ耐ブリードアウト性、電気的特性、耐熱性、機械的特性、機械の各電絶部位への挿入性に優れたポリエステル組成物およびフィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、1種または2種以上のイミド系可塑剤を0.1〜20重量%含有し、ポリエステル環状三量体含有量が0.5重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物により達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル組成物は、一般的なポリエステルにイミド系可塑剤を配合することにより得られる。配合に用いられるポリエステルは、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、もしくはこれら二種以上の構造単位からなる共重合ポリエステルなどいずれを用いてもよい。この中でも、ポリエチレンテレフタレートが生産性、耐熱性およびフィルムなどの成型品にした場合の取り扱い性等の点から好ましい。
【0011】
可塑剤の配合量は、好ましくは0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜15重量%であり、さらに好ましくは1〜10重量%である。配合量が0.1重量%未満では十分な溶融粘度低減効果が得られず、また、20重量%を超えるとブリードアウトの問題や、耐熱性の点で劣るため好ましくない。
【0012】
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステル環状三量体の含有量が0.5重量%以下であり、好ましくは0.4重量%である。ここでいうポリエステル環状三量体とは、ポリエステルを構成する構造単位が3つで環状構造を形成しているオリゴマーで、たとえばPETにおいてはエチレンテレフタレート環状三量体を示す。この特徴により、成型品製造時もしくは成型品使用時における様々なトラブルを回避することができる。環状三量体含有量を低減させる方法は、クロロホルムなどの溶媒でポリエステル中のオリゴマーを抽出する方法、固相重合によりポリエステル中の環状三量体含有量を減少させる方法などが挙げられるが、生産性の観点から、固相重合により減少させる方法が好ましい。
【0013】
ポリエステルに可塑剤を含有させるだけでは、フィルムなどの成形品とした場合の低オリゴマー化効果は全く得られず、また、環状三量体の含有量が少ないだけでは、成形品とした場合の低オリゴマー化の効果は小さい。のみならず、固相重合などで環状三量体を減少させる場合は、結果としてIVも上がってしまい、結果、溶融押し出しが困難となるので、滞留時間を長期化するか押し出し温度を上げざるを得ず、充分な低オリゴマー化された成形品は到底望めなかった。そこで本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、環状三量体を固相重合などで低減させた樹脂に特定の可塑剤を含有させると、溶融押し出し時のオリゴマー増加が抑えられ、これまで実現できなかった驚くべき低オリゴマー化の効果を発現することを見出した。しかも、かかるポリエステル組成物は、電気絶縁フィルムなどフィルム部品として用いる場合には、同時に挿入性が向上するという効果をも発現することを見出し、本発明を完成したものである。
【0014】
本発明において、可塑剤を混合させるベースとなるポリエステルは、従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造することができる。すなわち、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して、余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造することができる。また、酸成分としてジカルボン酸を用いて、従来公知の直接重合法により製造することもできる。反応触媒としては従来公知のチタン化合物、リチウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物等を用いることができる。
【0015】
このベースポリエステルは、エチレンテレフタレート成分がポリエステルに対し90モル%以上から成ることが耐熱性、機械特性の点で好ましいが、その他共重合成分として各種ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールを10モル%以内の範囲で共重合してもよい。共重合しうるジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4− ナフタレンジカルボン酸、1,5− ナフタレンジカルボン酸、2,6− ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。また、共重合しうる脂環族ジカルボン酸成分としては1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族、脂環族、芳香族ジオール等を挙げることができる。これらの成分は1種のみ用いてもよく、また2種以上併用しても良い。
【0016】
こうして得られたポリエステルもしくは可塑剤を配合したポリエステル組成物は、固相重合を施すことにより、環状三量体を低減させ、さらに重合度を上げることもできる。固相重合は、可塑剤添加前、添加後いずれの段階で施してもよい。固相重合は、窒素流通下もしくは1torr.以下の真空下において、180℃〜融点の範囲内の温度で5〜50時間加熱することにより行われる。
【0017】
本発明の可塑剤は、下記一般式(1)で表される。
【0018】
【化9】
(ただし、R1 、R2 はそれぞれフェニル基、シクロアルキル基もしくはこれらの水素の一つを炭化水素基で置換した基、P1 、P2 はそれぞれ下記構造式(2)、(3)、(4)のいずれかで表される基、Qはアルキレン基、フェニレン基、−S−基、−SO2 −基、−O−基、−CH2 −基、−CO−基もしくはこれらの基を含有する2価の基、nは1〜20の自然数)
【化10】
【化11】
【化12】
【0019】
このようなイミド系化合物は、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸および/またはその無水物と、脂肪族1級モノアミンまたは芳香族1級モノアミン、さらに脂肪族1級ジアミンまたは芳香族1級ジアミンを脱水縮合させることにより製造することができる。
【0020】
ここで、脂肪族1級モノアミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、ヘネイコシルアミン、ドコシルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0021】
また、芳香族第1級モノアミンとしては、アニリン、トルイジン、エチルアニリン、プロピルアニリン、ブチルアニリン、ペンチルアニリン、ヘキシルアニリン、ヘプチルアニリン、オクチルアニリン、ノニルアニリン、デシルアニリン、ウンデシルアニリン、ドデシルアニリン、トリデシルアニリン、テトラデシルアニリン、ペンタデシルアニリン、ヘキサデシルアニリン、ヘプタデシルアニリン、オクタデシルアニリン、ノナデシルアニリン、エイコシルアニリン、ヘネイコシルアニリン、ドコシルアニリン等が挙げられる。
【0022】
一方、脂肪族1級ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミンウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシリレンジアミンおよびこれらの構造異性体などが挙げられる。
【0023】
芳香族1級ジアミンとしては、ベンジジン、ジメチルベンジジン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジトリルメタンジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルブタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルベンゾフェノン、o,m,p−フェニレンジアミントリレンジアミン、キシレンジアミンを挙げることができる。
【0024】
これらより成るイミド系可塑剤は、1種のみ用いても良く、また、2種以上を併用して用いても良い。
【0025】
本発明においてイミド系可塑剤を配合させる方法は、固相重合により、ベースとなるポリエステルの密度を1.39g/cc以上、環状三量体含有量を0.4重量%以下とした後に、2軸押し出し機などにより可塑剤を混練、押し出すことにより製造するのが好ましく、より好ましくは、ポリエステルの密度を1.40g/cc以上、環状三量体含有量を0.38重量%以下とした後に、2軸押し出し機などにより可塑剤を混練、押し出すことにより製造される。
【0026】
また、ベースとなるポリエステルの溶融重合終了時に可塑剤を配合、吐出し、しかる後に、固相重合によりポリエステルの密度を1.39g/cc以上、環状三量体含有量を0.5重量%以下とすることにより製造することもでき、ポリエステルの密度を1.40g/cc以上、環状三量体含有量を0.38重量%以下とすることがより好ましい。
【0027】
また、一旦高濃度の可塑剤を含有するポリエステルチップを得た後、これを適宜他のポリエステルチップとブレンド、配合することにより、希望濃度の可塑剤を含有するポリエステル組成物を得ることもできる。
【0028】
なお、可塑剤を配合させる方法は、特に上記の方法に限定されるものではなく、他の種々の方法も用いることができる。
【0029】
本発明におけるポリエステル組成物は、常法にしたがって、乾燥後、溶融押し出しして、未延伸シートとし、続いて2軸延伸、熱処理することにより、二軸延伸フィルムを完成させることができる。2軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは2軸同時延伸のいずれでもよく、延伸倍率は特に限定されるものではないが、通常は縦、横それぞれ2.0〜5.0倍が適当である。あるいは縦、横延伸後、縦、横方向のいずれかに再延伸してもかまわない。このようにして得られたポリエステルフィルムの環状三量体含有量は0.6重量%以下であり、冷凍機コンプレッサの絶縁用途に用いた場合にオリゴマーによるトラブルを完全に防止させるためには、好ましくは0.5重量%以下である。
【0030】
このようにして得られた本発明のフィルムは、特に冷凍機用の密閉型モーターの電気絶縁用に使用すると、環状三量体のフィルム中含有量が少ないので、冷媒により抽出される量も少なく、環状三量体が冷凍機の各所に析出し、それが詰まり物となるために起きるトラブルを防止できる。また、絶縁部品として加工されたフィルムを各絶縁部位へ挿入する場合の挿入性も向上し、耐加水分解性、耐熱性にも優れるので、冷凍機モータの寿命を非常に延ばすことができる。
【0031】
【実施例】
以下本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。実施例中の特性は次のようにして測定した。
【0032】
A.ポリマーの固有粘度([η])
o−クロロフェノールを溶媒として、25℃で測定した値である。
【0033】
B.環状三量体含有量 ( [C3] )
ポリマー100mgをオルトクロロフェノール2mlに溶解し、液体クロマトグラフィー(HLC803D 東曹社製)で測定し、ポリマーに対する割合(重量%)で示した。
【0034】
C.耐ブリードアウト性
フィルムを熱風オーブン中160℃で5時間エージングし、表面の目視および手触りで○×で判定した。
【0035】
D.フィルム加工品挿入性
フィルムを切り取り、折り曲げて、長さ20cm、一辺3cmの正三角柱状の筒を作り、これを、一辺3cmの正三角柱状の穴の開いた鉄製の型に挿入し、挿入しやすさを○×で判定した。
【0036】
参考例1
ジメチルテレフタレート100重量%、エチレングリコール60重量%の混合物に、ジメチルテレフタレート量に対して酢酸マグネシウム0. 09重量%、三酸化二アンチモン0. 03重量%を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行なった。次いで、該エステル交換反応生成物に、ジメチルテレフタレート量に対して、リン酸トリメチル0. 026重量%を添加した後、重縮合反応層に移行する。次いで、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重合し、固有粘度[η]=0.54(dl/g)のポリエステルを得た。該ポリマーを重合反応層から吐出、3mm径の立方体に切断し、回転型真空重合装置を用いて、1mmHgの減圧下、225℃で30時間加熱処理することにより固相重合を行ない、固有粘度[η]=1.0、環状三量体含有量0.30重量%のポリエステルを得た。
【0037】
参考例2
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸46.8gと、ヘキサデシルアミン48.2g、さらにエチレンジアミン6gをフラスコ中でジメチルホルムアミドを溶媒として混合、260℃まで徐々に昇温しながら撹拌し、縮合された水およびジメチルホルムアミドを留去した。その後、さらに撹拌しながら徐々に減圧して、完全に留去を完了させ、フラスコ底に残留した化合物(可塑剤A)を得た。
【0038】
参考例3
エチレンジアミンの代わりに、m−キシリレンジアミン13.6gを用いる他は、参考例2と同様の方法により、残留化合物(可塑剤B)を得た。
【0039】
参考例4
ヘキサデシルアミンのかわりに、p−ドデシルアニリン55.2gを用いる他は、参考例2と同様の方法により、残留化合物(可塑剤C)を得た。
【0040】
実施例1
参考例1で製造したポリエステルチップ100重量%と、参考例2で得た可塑剤Aの5重量%をベント式二軸押出し機に供給し、ベント口を10torr.の真空度に保持し、温度290℃、滞留時間5分で混練して、目的とするポリエステル組成物を得た。このポリエステルは固有粘度[η]=0.91、環状三量体量0.35重量%であった。
【0041】
こうして得られたポリエステル組成物を用いて、常法により290℃で溶融押出し、二軸延伸により製膜を行い、250μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。高固有粘度のポリエステルを溶融押し出しすることにより懸念されていた剪断発熱は殆どみられず、また、押し出し温度も通常のポリエチレンテレフタレート押し出し時と同条件の290℃で問題なく押し出すことができた。該フィルムの環状三量体含有量は0.39重量%であった。また、挿入性テストでも、スムーズな挿入性を示した。
【0042】
実施例2〜4
可塑剤の添加量を、ポリエステルチップ100重量%に対して2、10、15重量%とする他は、実施例1と同様の方法で可塑剤含有ポリエステル組成物を得、これを用いて2軸延伸フィルムを得た。これらの結果を表に示す。
【0043】
実施例5、6
可塑剤としてを可塑剤B、可塑剤Cを用いる他は、実施例1と同様の方法で可塑剤含有ポリエステル組成物を得、これを用いて2軸延伸フィルムを得た。これらの結果を表に示す。
【0044】
実施例7
重合反応層から吐出する前の重合反応終了時に、可塑剤Aを5重量%加え、10分間撹拌後に吐出する他は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。固相重合後に可塑剤を混練したものに比べて、環状三量体量は低いポリエステル組成物が得られた。また、このポリエステル組成物を用いて得られたフィルムも、良好な低オリゴマー性、挿入性を示した。
【0045】
比較実施例1
参考例1と同様の方法で、[η]=0.88、環状三量体量0.34重量%のポリエステルチップを得た。このポリエステルを用いて、常法により290℃で溶融押出し、二軸延伸により製膜を試みたが、押し出しスクリューに負荷が掛かりすぎるため、押し出し速度を実施例の80%以下まで低下させる必要があり、生産性の悪いものであった。このことによりポリマーの押し出し機内の滞留時間が長期化し、また、さらに剪断発熱が発生したこともあって押し出し温度は約300℃まで上昇した結果、得られたフィルムの環状三量体量は0.64重量%と、非常に多いものであった。また、[ η] も大きく低下した。
【0046】
比較実施例2
可塑剤の添加量を30重量%とする他は、実施例1と同様の方法でポリエステルを得、これを用いて二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムは[ η] の低下が大きく、また、得られたフィルムはブリードアウトが激しく見られた。
【0047】
比較実施例3
可塑剤として、フタル酸ジオクチルを用いる他は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物のチップおよび二軸延伸フィルムを得た。可塑剤の効果としてはさほど大きくなく、得られたフィルムの環状三量体量は0.61重量%であり、激しいブリードアウトが見られた。
【0048】
比較実施例4
参考例1と同様の方法で溶融重合を行い、[η]=0.71のポリエステルを得た。このポリエステルに固相重合を施さずに、実施例1と同様の方法で可塑剤を混練し、得られたポリエステル組成物を用いてフィルムを得た。フィルム中の環状三量体は1.1重量%であり、低オリゴマー化効果は全く見られなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物およびフィルムは、特に冷凍機用の密閉型モーターの電気絶縁用に使用すると、環状三量体のフィルム中含有量が少ないので、冷媒とフィルムが接触しても、冷媒により抽出される量が少なく、環状三量体が冷凍機の各所に析出し、それが詰まり物となるために起きるトラブルを防止できる。また、高溶融粘度のポリエステルの押し出しが可能となるので、耐熱性、機械的特性にも優れたフィルムが得られるので、冷凍機モータの寿命をさらに延ばすことができる。さらに、フィルムの機械各絶縁部位への挿入性にも優れ、非常に好適である。
Claims (7)
- 1種または2種以上のイミド系可塑剤を0.1〜20重量%含有し、ポリエステル環状三量体含有量が0.5重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
- 密度が1.39g/cc以上、ポリエステル環状三量体含有量が0.40重量%以下のポリエステルに、イミド系可塑剤を配合して製造されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
- 溶融重合終了時にイミド系可塑剤を配合してポリエステル組成物を得た後、該ポリエステル組成物の密度を1.39g/cc以上、ポリエステル環状三量体含有量を0.50重量%以下として製造されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
- 1種または2種以上のイミド系可塑剤を0.1〜20重量%含有し、ポリエステル環状三量体含有量が0.6重量%以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- 用途が電気絶縁用途であることを特徴とする請求項5、6いずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
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