JP3613612B2 - 電圧昇圧回路及びこれを用いたパルス発生回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電圧昇圧回路及びこれを用いたパルス発生回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電力用半導体スイッチ素子を用いたパルス放電回路について、図3を用いて説明する。従来のパルス放電回路は、パルス発生部Dと、磁気パルス圧縮部Eと、電極部Fとで構成されている。パルス発生部Dと磁気パルス圧縮部Eとから成る回路はパルス発生回路と呼ばれる。
【0003】
パルス発生部Dは、充電電源10に対して直列に接続された抵抗14及び電力用半導体スイッチ素子13と、抵抗14と電力用半導体スイッチ素子13のアノードとの接続点に一端を接続した磁気アシスト11と、磁気アシスト11の他端に接続したチャージングキャパシタ12と、磁気アシスト11及びチャージングキャパシタ12を介して電力用半導体スイッチ素子13の両端に一次側巻線を接続したパルストランスPTとで構成されている。
【0004】
磁気パルス圧縮部Eは、パルストランスPTの二次側巻線から得られるパルスをより急峻に圧縮するためのものである。磁気パルス圧縮部Eは、互いに並列に接続されたn段のキャパシタ15−1〜15−nと、各段の間に接続されたn個の磁気スイッチ16−1〜16−nと、各磁気スイッチをリセットするためのn個のリセット回路17−1〜17−nとで構成されている。電極部Fは、ピーキングキャパシタ18と電極(予備電離を含む)19とで構成される。
【0005】
このパルス放電回路の動作は、以下の通りである。充電電源10からチャージングキャパシタ12に貯えられたエネルギーを、電力用半導体スイッチ素子13にトリガ信号を与えてオンすることによってパルスを発生させる。発生されたパルスを、パルストランスPTの巻数比(通常1:10程度)に応じて昇圧し、磁気パルス圧縮部Eへ移行させる。磁気パルス圧縮部Eでは、昇圧されたパルスをn段のキャパシタ15−1〜15−n及びn個の磁気スイッチ16−1〜16−nにより所定のパルス幅まで圧縮する。圧縮されたパルスをピーキングキャパシタ18へ移行させ、電極19において放電させる。
【0006】
ここで、磁気アシストについて説明する。磁気アシストはコアに巻線を巻回して作製され、その作製方法、動作は磁気スイッチのそれと同じであるが、挿入目的、設計方法が異なる。
【0007】
磁気アシストの場合、挿入目的は半導体スイッチ素子の損失を低減することにある。すなわち、図4に示されるように、半導体スイッチ素子のターンオン時に電圧が十分に低下してから電流を流すことによって、V×I(損失)を減らす動作をする。図4において、磁気アシストが無い場合、電流は破線のように流れるので、この時の損失(V×I)は電圧と電流とが重なっている部分の面積となる。そして、大電力をスイッチングする場合、電圧、電流の値はkV、kAのオーダとなるのでスイッチング時間が短くても損失(V×I)の値は無視できなくなる。なお、時間ΔTは、以下の式で設計される。
【0008】
ΔT=(ΔB・N・S)/V
但し、ΔBは磁束密度の変化量、Nは巻線の巻数、Sはコアの断面積、Vは磁気アシストに加わる電圧である。設計の際、時間ΔTは半導体スイッチ素子のスイッチング時間より大きい値で設計する。いずれにしても、磁気アシストを挿入すると、磁性体のヒステリシス特性により流れる電流を遅らせることができ、流れる電流は図4において実線で示すようになる。その結果、損失(V×I)を十分に小さくすることができる。
【0009】
次に、磁気スイッチとそのリセット回路について説明する。リセット回路は、磁気スイッチにおける磁性体の磁束密度の変化量をできるだけ多くするために、あらかじめ飽和電流が流れる方向と逆方向に電流を流す回路である。
【0010】
図5は磁性体のヒステリシス特性を示しており、磁気スイッチがオンするまでの時間Δtは、前述した式と同じ、
Δt=(ΔB・N・S)/V
で表される。この場合、時間Δtは磁気スイッチのコアの磁束密度の変化量ΔBに比例する。一方、磁界Hは以下の式で表される。
【0011】
H=(N・I)/L
但し、Iは電流、Lは磁性体の平均磁路長である。この式から、磁界Hは電流Iに比例する。
【0012】
上記の点から、より小さい磁気スイッチで十分なスイッチ待ち時間を得るためには、ΔBを大きくすることが必要となる。このために、リセット回路(定電流源)を接続し、あらかじめコアをリセットするようにしている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のパルス放電回路においては、パルス発生部Dで発生されるパルス幅は、電力用半導体スイッチ素子13の電流増加率di/dtと、磁気アシスト11の飽和インダクタンス、チャージングキャパシタ12、パルストランスPTの一次側漏れインダクタンスによる共振周波数で決定される。このため、高出力のエネルギーが要求される場合、チャージングキャパシタ12にチャージされる電荷量が大きくなるので、パルス発生部Dから発生するパルス幅が長くなってしまう。これは、磁気パルス圧縮部Eでの圧縮率増大によるエネルギーロスの増大及び磁気パルス圧縮部E(リセット回路を含む)の複雑化(多段化)を招くという欠点がある。
【0014】
また、パルストランスPTにおいて高い巻数比(1:10程度)で昇圧を行うと、パルストランスPTの一次側と二次側の結合が密でなくなってしまい、漏れインダクタンスが増大することによるエネルギー伝送効率の低下を招いてしまうという欠点がある。
【0015】
そこで、本発明の課題は、従来に比べて高いエネルギー伝送効率を得ることのできるパルス発生回路を提供することにある。
【0016】
本発明の他の課題は、上記のパルス発生回路に適した電圧昇圧回路を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、巻数比の低いパルストランスを複数個用い、各パルストランスの一次側巻線を互いに並列に接続すると共に、二次側巻線は直列に接続したことを特徴とする電圧昇圧回路が提供される。
【0018】
本発明によればまた、巻数比の低いパルストランスを複数個用い、各パルストランスの一次側巻線を互いに並列に接続すると共に、二次側巻線は直列に接続して成る電圧昇圧回路を備え、前記電圧昇圧回路の一次側においては、充電電源にスイッチング用の電力用半導体スイッチ素子が接続されると共に、前記電力用半導体スイッチ素子に各パルストランスの一次側巻線とチャージングキャパシタとの直列接続回路が並列に接続され、前記電圧昇圧回路の二次側には、直列接続された各パルストランスの二次側巻線から得られるパルスを圧縮するための磁気パルス圧縮部を接続したことを特徴とするパルス発生回路が得られる。
【0019】
なお、前記電力用半導体スイッチ素子には、SIサイリスタを用いることが好ましい。
【0020】
各パルストランスにおいてはその一次側巻線と二次側巻線とを重ね巻とすることが好ましい。
【0021】
各パルストランスにおいてはその一次側巻線と二次側巻線とをより線巻としても良い。
【0022】
また、各パルストランスの巻数比は、1:1〜1:3とすることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、本発明によるパルス発生回路をパルス放電回路に適用した場合の実施の形態について説明する。本パルス放電回路の構成は、パルス発生部Aと磁気パルス圧縮部Bとから成るパルス発生回路に、電極部Fを付加して成る。パルス発生部Aは、充電電源1に抵抗5とSIサイリスタ4との直列回路を接続し、SIサイリスタ4の両端にはn個のパルストランスPT1〜PTnの一次側巻線と磁気アシスト3−1〜3−n及びチャージングキャパシタ2−1〜2−nとの直列接続回路を並列に接続して成る。すなわち、電圧昇圧回路として作用するn個の各パルストランスの一次側巻線は互いに並列に接続し、二次側巻線は直列に接続している。
【0024】
磁気パルス圧縮部Bは、ここでは1段のキャパシタ6と、磁気スイッチ7と、磁気スイッチ7をリセットするためのリセット回路8とで構成されている。キャパシタ6、磁気スイッチ7、リセット回路8の機能は、図3に示した従来のものと同じであり、磁気パルス圧縮部Bの段数はパルス幅の圧縮率に応じて適宜設定される。電極部Fは、ピーキングキャパシタ18と電極(予備電離を含む)19とで構成されている。
【0025】
本回路の動作は、図3で説明した従来例と同様でパルス発生部Aによりパルスを発生するが、発生されたパルスはn個のパルストランスの二次側巻線が直列に接続されているので昇圧される。昇圧されたパルスは磁気パルス圧縮部Bで所定のパルス幅に圧縮され、電極部Cへとエネルギーを伝送する。本回路は、以下の特徴を有する。
【0026】
1)電力用半導体スイッチ素子として、大電流、大電流増加率であるSIサイリスタ4を使用している。
【0027】
2)パルス発生部Aをn分割しそれぞれの一次側を並列接続することで、磁気アシスト3の飽和インダクタンス、チャージングキャパシタ2、パルストランスPTの一次側漏れインダクタンスによる共振周波数を高くし、発生するパルス幅を短くしている。
【0028】
3)パルストランスPTによる昇圧方式としては、図1に示すように、低い巻数比1:1〜1:3としたn個のパルストランスPT1〜PTnの二次側を直列接続することにより昇圧を行っている。
【0029】
4)パルストランスPTの製作は、図2(a)に示すようにファインメット等の高透磁率コア20に絶縁を施した線を重ねて巻くか、あるいは図2(b)に示すように絶縁を施した線をより線状にして高透磁率コア20に巻き、より結合係数を良くしている。
【0030】
なお、本発明はレーザ装置用のパルス放電回路に適しており、特に高電圧パルス、高出力エネルギー、高くり返し動作を必要とする回路に適用可能で、気体レーザ全般に適用され得る。
【0031】
【発明の効果】
上記の特徴から従来のパルス発生回路に対する利点を以下に示す。
【0032】
パルス発生部Aで発生するパルス幅を従来型に比べ短くすることができる。すなわち、磁気パルス圧縮部Bへの入力パルス幅が短く、圧縮率を減少させることができる。これにより、磁気パルス圧縮部Bでのエネルギー伝送効率を増加させ、また磁気パルス圧縮部Bの構造を簡単にすることができる。
【0033】
SIサイリスタ4は、大電流を流すことが可能で、またGTO等の電力用半導体スイッチ素子に比べ1桁以上の電流増加率を有するので、1素子で大きなエネルギーをスイッチングすることができる。よって、スイッチング素子を直列に接続した場合に必要とされるトリガ回路の同期の必要性が無く、トリガ回路を簡単にできる。
【0034】
パルストランスPTの巻数比を1:1〜1:3と低くすることで、漏れインダクタンスを減少させることができる。また、パルストランスPTの一次側は並列接続とし、二次側を直列接続とすることにより、従来と同様かそれ以上の昇圧比を得ることができる。
【0035】
巻数比の減少によりコアに巻く巻数も減らすことができるので、図2(a)、(b)のような巻線手法を取ることができる。よって、結合係数をより増加させることができ、パルストランス部分でのエネルギー伝送効率を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をパルス放電回路に適用した回路図である。
【図2】図1のパルストランスに適用される巻線方法の例を説明するための図である。
【図3】従来のパルス放電回路を示した図である。
【図4】磁気アシストの機能を説明するための図である。
【図5】磁気スイッチとそのリセット回路の機能を説明するための図である。
【符号の説明】
2−1、2−2、2−n、11 チャージングキャパシタ
3−1、3−2、3−n、12 磁気アシスト
4 SIサイリスタ
PT、PT1、PT2、PTn パルストランス
7、16−1、16−n 磁気スイッチ
19 電極
Claims (9)
- 巻数比の低いパルストランスを複数個用い、各パルストランスの一次側巻線を互いに並列に接続すると共に、二次側巻線は直列に接続したことを特徴とする電圧昇圧回路。
- 請求項1記載の電圧昇圧回路において、各パルストランスにおいてはその一次側巻線と二次側巻線とを重ね巻としたことを特徴とする電圧昇圧回路。
- 請求項1記載の電圧昇圧回路において、各パルストランスにおいてはその一次側巻線と二次側巻線とをより線巻としたことを特徴とする電圧昇圧回路。
- 請求項2あるいは3記載の電圧昇圧回路において、各パルストランスの巻数比を1:1〜1:3とすることを特徴とする電圧昇圧回路。
- 巻数比の低いパルストランスを複数個用い、各パルストランスの一次側巻線を互いに並列に接続すると共に、二次側巻線は直列に接続して成る電圧昇圧回路を備え、
前記電圧昇圧回路の一次側においては、充電電源にスイッチング用の電力用半導体スイッチ素子が接続されると共に、前記電力用半導体スイッチ素子に各パルストランスの一次側巻線とチャージングキャパシタとの直列接続回路が並列に接続され、
前記電圧昇圧回路の二次側には、直列接続された各パルストランスの二次側巻線から得られるパルスを圧縮するための磁気パルス圧縮部を接続したことを特徴とするパルス発生回路。 - 請求項5記載のパルス発生回路において、前記電力用半導体スイッチ素子としてSIサイリスタを用いることを特徴とするパルス発生回路。
- 請求項5あるいは6記載のパルス発生回路において、各パルストランスにおいてはその一次側巻線と二次側巻線とを重ね巻としたことを特徴とするパルス発生回路。
- 請求項5あるいは6記載のパルス発生回路において、各パルストランスにおいてはその一次側巻線と二次側巻線とをより線巻としたことを特徴とするパルス発生回路。
- 請求項7あるいは8記載のパルス発生回路において、各パルストランスの巻数比を1:1〜1:3とすることを特徴とするパルス発生回路。
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