JP3613306B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機,レーザプリンター,ファクシミリ,これらの複合OA機器等の電子写真方式を利用した画像形成装置に関する。より具体的には、像担持体に形成されたトナー像を一旦中間転写体ベルトに一次転写した後、これを用紙等の記録媒体に転写定着して再生画像を得るようにした転写定着方式の画像形成装置およびその中間転写体ベルトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を利用した画像形成装置は、無機または有機光導電性材料で構成された感光体からなる像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザ光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像して可視化されたトナー像とする。そして、このトナー像を直接あるいは中間転写体を介して、用紙等の記録媒体に転写することにより所要の再生画像を得る。
像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、更に中間転写体上のトナー像を記録媒体に二次転写する方式を採用した画像形成装置は、例えば特開昭62−206567号公報等に開示されている。また、中間転写体ベルト上のトナー像を熱ロールにより二次転写と同時に定着処理を行う転写定着方式の画像形成装置も、広く知られている。
上記熱ロールを備えた画像形成装置に用いられるベルトの材質としては、ステンレス鋼板,ポリイミド樹脂,ポリエステル樹脂等の耐熱性基体と、シリコーン系やフッ素系ゴム等の耐熱性転写層を有するベルト材料(特開昭58−85469号公報)、ポリアミド繊維織布とその上にシリコーンゴムをコーティングした転写層を有するベルト材料(特開昭62−263270号公報)、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の基体と、シリコーンゴムまたはフッ素ゴムのゴム状の転写層からなる3層構成のベルト材料(特公平1−34375号公報)、プラスチックをベースとし、その上にフッ素樹脂等をコーティングして表面を非粘着性としたベルト材料(特開平5−204255号公報)などが知られている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
表面に上記シリコーンゴムまたはフッ素ゴムの転写層を有するベルトは、ゴム材料自体に粘着性があるため、ベルト駆動時に感光体等との接触によってベルト駆動に負荷変動が発生するので、ベルトの位置ズレが生じる。そのため、多色のトナーがベルトに担持される際に位置ズレが生じ、高品質の画像を安定して得ることができない等の問題がある。
また、フッ素樹脂でコーティングされたエンドレスベルトは、ベルト表面に弾性がないため、電界を作用させてトナー像を静電的に転写する一次転写部において、感光体ドラム等との接触圧による厚さ方向の変形が殆どない。例えば、一次転写器としてバイアスロールを用いた場合は、ベルトの変形が小さいので、ロールの押圧力による荷重が集中する。そのためトナーが凝集して、ライン画像が中抜けするホローキャラクタと称する画質欠陥を発生するという問題がある。
さらに、フッ素樹脂コーティングのエンドレスベルトのベースとして、耐熱性のある柔軟なプラスチック材料を用いた場合には、上述のゴム材料を表面層として用いた場合と同様に、駆動時の応力に対するベルトの変形が大きく、高品質の画像が安定して得られない。
【0004】
一方、熱硬化性ポリイミド樹脂にカーボンブラックを分散させたシームレスベルトが、例えば特開昭63−311263号公報に提案されている。しかしながら、上記ポリイミド樹脂を基材として用いた場合、該ポリイミド樹脂は機械特性に優れているため、上述のエンドレスベルトと同様に、一次転写部での接触圧による変形が小さいため、やはり画質欠陥を発生させる等の問題がある。
3層構成の中間転写体として、例えばアルミニウム製の金属基体を厚み0.75mmのウレタンゴム層で被覆し、更にフッ素樹脂表面層をコートした中間転写体ドラムを用い、二次転写ロールから転写電圧を印加して、中間転写体上のトナー像を記録媒体に静電的に二次転写する画像形成装置が公知である。しかし、転写定着方式の画像形成装置においては、ドラム基体に金属材料を用いると、二次転写部に作用させた熱が一次転写部に影響を与えるため、転写定着方式の画像形成装置に適用することはできない。しかも、中間転写体ドラムにおいては、一般に弾性層の厚みは0.5〜1.0mmの範囲にあり、これを中間転写体ベルトに適用した場合、上述のように、駆動時の応力に対するベルトの変形が非常に大きくなるという問題もある。
【0005】
このように、従来の技術においては、基材を柔軟な高分子材料または転写層を粘着性のあるゴム材料で構成したベルト材料は、駆動時の応力に対するベルトの変形が大きくまた粘着性があるので、高品質の転写画像が安定して得られないという問題がある。更には、表面層をフッ素樹脂で構成したベルト材料や、機械特性に優れたポリイミド樹脂を基材とするベルト材料は、ベルト表面に弾性がないので、一次転写部においてトナー像が凝集するため、画質欠陥を発生させるという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上述の問題点を解決しようとするものであって、駆動時の応力に対するベルトの変形が小さく、しかも一次転写部において像担持体との接触圧に追随して変形し、かつ表面に粘着性のない中間転写体ベルトを備えた画像形成装置および該中間転写体ベルトの製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、一次転写器としてバイアスロールを用いた場合でも、その押圧力によりトナー像が凝集することのない画像形成装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記問題点を解消すべく鋭意研究・検討を重ねてきたところ、機械特性に優れた樹脂材料を基材とし、非粘着性の材料を表面層として、基材を表面層の間に、像担持体との接触圧やバイアスロールの押圧力に追随して変形する弾性材料を介在させた3層構造のベルト材料を実現することによって、上述の目的が達成されることを見出し、本発明をなすに到ったものである。
すなわち、本発明の画像形成装置は、画像情報に応じた静電潜像が形成される像担持体と、像担持体に形成された静電潜像をトナーによりトナー像として可視化する現像装置と、像担持体上に担持されたトナー像を一次転写する一次転写器と、一次転写されたトナー像を担持する中間転写体ベルトと、中間転写体ベルト上の未定着トナー像を記録媒体に二次転写および定着する熱ロールとを備え、上記中間転写体ベルトは、樹脂材料および導電剤を構成成分とするヤング率が35000kg/cm2以上の基材と、弾性材料で構成された中間層と、水の濡れ性で表示した場合の水滴との接触角が90°以上の表面エネルギーの小さい材料を構成成分とする表面層との3層構造のベルト材料からなることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は主要構成部材を備えた画像形成装置における中間転写体ベルトの配置関係の概要を示す説明図である。
図1において、感光体ドラムからなる像担持体1の周面には、その回転方向に沿って順次、帯電器2、現像装置3、一次転写器4、クリーニング装置5等が配置されている。また、中間転写体ベルト6は、ベルト搬送ロール7a,7b,7cおよびバックアップロール8に張架されている。この中間転写体ベルト6は、像担持体1表面に適当な接触圧で当接しながら矢印方向に移動し、像担持体1とこれに対向して配置された一次転写器4との間を通過する際に、転写器4によって一次転写された未定着トナー像を担持する。中間転写体ベルト6を介して、上記バックアップロール8およびベルト搬送ロール7aと対向する位置に、それぞれ熱ロール9およびベルトクリーナ10が配置され、バックアップロール8は中間転写体ベルト6を裏面から支持する。熱ロール9にはヒータ9aが装着されていて、一次転写が完了した未定着トナー像を担持した中間転写体ベルト6がロール8,9間の二次転写定着部を通過する際に、例えば用紙P等の記録媒体(以下用紙Pで代表する)に二次転写定着される。
【0008】
前記一次転写器4としては、コロトロン等のコロナ転写器、バイアスロール、転写ブレードなどが用いられる。一次転写器4には1〜4kVの電圧が印加され、像担持体1と一次転写器4との間に発生する電界の作用により、像担持体1に担持されたトナー像が中間転写体ベルト6に一次転写される。
前記熱ロール9を支持するバックアップロール8は、金属あるいは単層または多層構造の弾性体から構成される。例えば、単層構造の場合は、シリコーンゴム等の耐熱性の良好なゴム材料で構成される。2層構造の場合は、単層の場合のゴム材料を下層として、その外周面に例えばフッ素系樹脂を被覆したロールから構成される。フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン(TFE),フッ化ビニリデン(VDF)等の重合体、エチレン−TFE共重合体(ETFE),TFE−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(FEP),TFE−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
【0009】
二次転写および定着を行う熱ロール9は、像担持体1に担持されたトナー像が中間転写体ベルト6上に一次転写される間は転写体ベルト6から離間しており、転写体ベルト6に担持されたトナー像を用紙Pに転写定着する時は、転写体ベルト6に圧接してこれをバックアップロール8に押圧するように構成される。
上記熱ロール9は、その材質が耐熱性の良好なものであれば、特に限定されるものではない。例えば、シリコーンゴム等のゴムロールや、このゴムロールをコア層として、その外周面に例えば前記フッ素系樹脂等の耐熱性および離型性の良好な材料を被覆したコーティング層から構成される。熱ロール9には、例えば酸化マグネシウム,シリカ,アルミナ,窒化硼素,炭化珪素,酸化亜鉛等の熱伝導性の良好な微粉末を分散させておくことが好ましい。
熱ロール9の外径は一般に25〜30mmの範囲にあり、また2層構造の場合のコア層の厚みは2〜4mmの範囲、コーティング層の膜厚は10〜30μmの範囲にあることが好ましい。熱ロール9の硬度は一般にJIS A で30〜50°の範囲にあるものが用いられる。中間転写体ベルト6更には用紙Pを介してバックアップロール8に押圧される熱ロール9は、その押圧力が8〜12kgの範囲、そのニッブ幅が2.5〜3.5mmの範囲にあることが好ましい。
前記ヒータ9aとしては、ハロゲンランプ,赤外線ランプ,シーズヒータ等の熱源が用いられ、使用するトナーによるもが、定着処理時には通常150〜200℃の範囲に発熱温度が制御される。
【0010】
本発明において、前記中間転写体ベルト6としては、図2に示すように、樹脂材料および導電剤を構成成分とする機械特性に優れたフィルム状の基材6aと、弾性材料で構成された中間層6bと、表面エネルギーの小さい材料を構成成分とする表面層6cとの3層構造からなるベルト材料が用いられる。
基材6aを構成する樹脂材料としては、熱硬化性ポリイミドや熱可塑性ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらの樹脂は、ポリカーボネート(PC)やPVDF等の従来の熱可塑性樹脂と比較して、駆動時のベルトの変形が小さいという特長がある。
また、導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、更には酸化錫,酸化亜鉛,酸化アンチモン,酸化インジウム,チタン酸カリウム,酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO),酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物が挙げられる。導電性金属酸化物は、硫酸バリウム,ケイ酸マグネシウム,炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。好ましく用いられる金属酸化物としては、三井金属(株)製の平均粒子径が0.1μmの錫系複合酸化物(製品名:UF),0.3μmの亜鉛系酸化物(パストランType−II),平均粒子径が0.4μmの硫酸バリウム表面に錫系酸化物を被覆したもの(パストランType−IV)、0.2μmのATO,0.2μmのITO等が挙げられる。これらの導電剤は2種以上併用することができる。
上記導電性金属酸化物は、基材を構成する樹脂との相溶性を向上させるために、シラン系カップリング剤で表面処理したものが好適である。また、基材の表面抵抗率は1010〜1015Ω/□の範囲にあることが好ましい。
【0011】
ところで、ベルト駆動時の外乱(負荷変動)によるベルトの伸び・縮み(変位量)は、ベルト材料のヤング率に逆比例することが知られている。すなわち、ベルト材料のヤング率とベルト駆動時の負荷変動によるベルトの変位量との関係は、下記の式(1)で表すことができる。
Δl = α・P・l/(t・w・E) (1)
Δl:ベルトの変位量(μm)
α:係数
P:負荷(N)
l:2本のテンションロール間のベルトの長さ(mm)
t:ベルトの厚さ(mm)
w:ベルト幅(mm)
E:ベルト材料のヤング率(N/mm2)
従来のPC,PVDF等の熱可塑性樹脂材料は、カーボンブラックを分散したときのヤング率が24000kg/cm2以下である。これに対して、本発明においては、基材のヤング率を35000kg/cm2以上と大きくした。そのため、ベルト駆動時の外乱によるベルトの伸び・縮みが少なく、中間層を介在させることによって高品質の転写画像が得られる。
ベルト駆動時の外乱によるベルトの変位量を少なくして、良質の転写画像を得るためには、基材の厚みは50μm以上あることが好ましい。なお、基材が厚くなりすぎると、ベルト表面の変形が大きくなり、カラー画像を形成する場合、多重トナー像の位置がずれて色ズレが発生するようになるので、基材の厚みは50〜150μm、特に70〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0012】
前記中間層6bは、像担持体1と中間転写体ベルト6の接触圧、特に一次転写器4としてバイアスロールを用いたときの押圧力による応力の集中を回避するために、弾性材料で構成される。
この弾性材料は、特に限定されるものではなく、任意のゴム材料を用いることができる。その具体例としては、イソプレンゴム,クロロプレンゴム,ブチルゴム,エピクロルヒドリン系ゴム,ノルボルネンゴム,フッ素系ゴム,シリコーンゴム,ウレタンゴム,アクリルゴム,EPDM,SBR,NBR,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム等が挙げられる。中間層は、転写定着時に中間転写体ベルトが熱ロールにより押圧されるので、フッ素系ゴム,シリコーンゴム等の耐熱性のある弾性材料が好ましく用いられる。
フッ素系ゴムとしては、PTFE,PVDF,PHFP,ポリクロロトリフルオロエチレン,PFA,ETFE,FEP,PFA−FEP共重合体等が挙げられる。また、シリコーンゴムとしては、硬度(JIS A)20〜60°の1液タイプのRTV(室温硬化:room temperature vulcanizing)型が好ましく用いられる。
【0013】
前述のホローキャラクタの発生を防止するためには、中間層の厚みはトナー平均粒径の3倍以上あることが好ましい。ここに、トナー平均粒径とはその体積平均粒径を意味し、通常4〜13μmの範囲にあるトナーが使用される。一例として、体積平均粒径7μmのトナーを使用した場合、中間層の厚みは21μm以上であることが好適となる。
また、弾性材料が厚くなりすぎると、テンションロール(7a〜7c,8)部位でのベルト表面とベルト裏面の変形量の差異が大きくなるので、中間層の厚みは一般に80μm以下に設定される。より好ましい厚みの範囲を示すと30〜65μmである。
【0014】
表面層6cは、水の濡れ性で表示した場合の水滴との接触角が90°以上の材料で構成される。「水の濡れ性」とは、表面層を構成する材料を試験片として用い、この試験片平面と水滴との接触角を尺度として表示される。
試験片表面に水滴をおくと、試験片の表面張力γs ,液体/試験片間の界面張力γi ,液体の表面張力γl が釣り合って、図3に示すように、ある一定の形を形成する。この時、液滴が小さく重力の影響を無視できれば、ヤング(Young )の式(2)が成り立つ。
γs = γi + γlcosθ (2)
そして、本発明における「表面エネルギーの小さい材料」とは、上記接触角θが90°以上の材料を意味する。
【0015】
かかる材料としては、前記中間層を構成する弾性材料として例示したゴム材料と同様の耐熱性に優れたフッ素系樹脂、これらのアミド変性樹脂や、ウレタン変性樹脂などが挙げられる。これらの材料は、表面エネルギーが小さいので、非粘着性でベルト表面へトナーが付着し難いという特性を有する。したがって、ベルト材料から用紙への転写および定着が良好であるため、オフセット等が発生するようなことがなく、良質の画像を得ることができる。
表面層の膜厚は、中間層の弾性を損なわないよう5μm以下であることが好ましい。その下限値は、中間層を構成する弾性材料によるベルト表面の粘着性を防止できればよく、通常1μm程度である。
【0016】
3層構造の中間転写体ベルト全体の厚みは、一般に70〜200μmの範囲にあり、100〜150μmの範囲にあることが好適である。厚みが200μmを越えると、中間層の場合と同様の理由により、テンションロール部位でのベルト表面とベルト裏面の変形量の差異が大きくなり、転写ズレを生じるようになる。静電転写法でトナー像を中間転写体ベルトに一次転写するには、中間転写体ベルトが所定の表面抵抗率を有していることが重要である。表面抵抗率が低すぎると、中間転写体ベルトと像担持体との間に過大な電流が流れることから、一旦は中間転写体ベルトに転写されたトナー像が像担持体に戻ってしまう、いわゆるリトランスファー現象が発生してしまう。一方、表面抵抗率が高すぎると、トナー像の転写時に中間転写体ベルトが著しく帯電することから、中間転写体ベルトが像担持体と離間する際に剥離放電が発生し、中間転写体ベルトに転写されたトナー像が剥離放電に伴って飛散してしまう。これらの現象を回避するためには、中間転写体ベルトの表面抵抗率は1011〜1015Ω/□の範囲にあることが適当である。特に、1012〜1014Ω/□の範囲にあることが好ましい。中間転写体ベルトの表面抵抗率は、必要に応じて、基材だけでなく中間層および表面層の一方または双方に導電剤を分散させることにより調整することができる。
【0017】
本発明の中間転写体ベルトは次のようにして製造される。
まずカーボンブラック等の導電剤を分散させた樹脂材料をフィルム状に成形して基材を形成する。例えば、樹脂材料がポリエーテルスルホン等の機械特性に優れた熱可塑性樹脂である場合は、導電剤を配合した樹脂材料を通常の射出成形,押出成形,圧縮成形等により基材を形成することができる。また、樹脂材料が熱硬化性樹脂、例えばポリイミド樹脂の場合は、一般にテトラカルボン酸二無水物とジアミンまたはジイソシアネートとの縮重合により形成される。
前者のジアミン法の場合は、合成されるポリアミド酸の有機極性溶媒中に導電剤を添加し、ミキサーで充分に混合して製膜原液を調製する。後者のジイソシアネート法の場合は、合成されるポリイミドの溶液またはその粉末を有機極性溶媒に再溶解した後、導電剤を添加して製膜原液を調製する。いずれの方法においても、フィルム成形前に予め製膜原液をフィルタに通して、二次凝集して粗大化した導電剤や異物を除去することが望ましい。また、導電剤を予めポリマー原料に添加しておいてもよい。
フィルムの成形法は、遠心成形法等の回転式成形法でも、あるいは金属シート上で成形するキャスティング法のいずれでもよい。これらの成形法では、製膜原液をスリットダイから円筒金型または金属シート状無端ベルト上に流延する。成形されるフィルムの厚みは、主として製膜原液のポリマー濃度と押出量,導電剤の配合量や、円筒金型の回転速度(前者)または液膜の引取速度(後者)によって調整される。
【0018】
成形されるフィルム表面の微小な凹凸の形成を抑制するには、製膜原液の乾燥温度を段階的に昇温させることが望ましい。
例えば、製膜原液のポリマーがポリアミド酸の場合には、円筒金型またはベルト上の流延膜をまず120℃の温度で2時間程度加熱し、上記極性溶媒を蒸発させて半硬化状態の自己支持性フィルムを得る。次いで、フィルムを120〜350℃で30〜150分程度加熱して、溶媒をほぼ完全に蒸発させる。この工程は、120℃から350℃に一挙に昇温させるのではなく、適当な温度幅で段階的にあるいは連続的に徐々に昇温させながら行われる。その後、420〜450℃で20〜30分加熱し、ポリアミド酸を脱水縮合させることにより、ポリイミド樹脂に導電剤が分散した基材が形成される。製膜原液のポリマーがポリイミドの場合には、上記脱水縮合工程を省略すればよい。
乾燥工程において溶媒が蒸発して自己支持性フィルムが形成された時点から上記縮合工程終了後の任意の段階で、形成されるフィルムに延伸加工を施すことが好ましい。
【0019】
基材上には弾性材料からなる中間層が積層される。この中間層は、例えば浸漬塗布法,エアスプレーコーティング法等により液状の前記ゴム材料を基材表面に塗布し、ゴム材料を硬化させることにより形成される。ゴム材料としては、室温で硬化する1液タイプのRTV型シリコーンゴムが好ましく用いられる。
中間層上には更に表面エネルギーの小さい材料からなる表面層が被覆される。この表面層は、上記中間層と同様の方法により形成される。なお、中間層や表面層の形成に際しては、必要に応じてプライマー処理を施してもよい。
中間層および表面層の好ましい形成法としては、フッ素系ゴム材料が前記フッ素系樹脂材料で変性された水エマルジョンを基材上に塗布した後、250〜300℃で10〜30分間加熱する方法が挙げられる。この方法によれば、膜厚1〜2μmの表面層と厚み20〜80μmの中間層を同時に形成することができる。フッ素系高分子材料の塗膜層表面に樹脂層が形成され、かつその内部側にゴム材料層が形成されるのは、フッ素系樹脂の表面エネルギーが非常に小さいため、樹脂材料とゴム材料が相分離することに起因する。その傾向は加熱温度が高い程著しい。一方、基材および中間層の劣化をできるだけ抑制するためには、より低温で硬化させることが好ましく、表面層と中間層の形成は上記温度範囲で実施される。フッ素系高分子材料としては、融点が300℃以下のFEP(mp:275℃),ETFE(mp:270℃)等が好適である。
基材が回転式成形法で形成される場合は、以上のようにして形成されたベルト材料を適当な幅に切削し、またキャスティング法の場合は適当な長さと幅に切削後シート端部を接着剤で接合すれば、本発明の中間転写体ベルトが製造される。
【0020】
本発明の作用は次のとおりである。
請求項1発明の画像形成装置の作用は、下記に示すようなものである。
画像情報に応じて像担持体1に形成された静電潜像は、現像装置3内のトナーにより現像され、未定着トナー像として可視化される。このトナー像は、像担持体1に担持されたまま一次転写部において、一次転写器4により中間転写体ベルト6に転写される。多色画像を転写する場合は、現像装置3内に収容されたトナーの各色毎に一次転写を繰り返す。
像担持体1から中間転写体ベルト6上へのトナー像の一次転写が終了して、所望の色相のトナー像を担持した中間転写体ベルト6が二次転写定着部に移動してくると、これと同期して用紙Pが二次転写定着部に搬送される。用紙Pは、バックアップロール8と熱ロール9との間の圧接力および熱ロール9からの熱を受けながら二次転写定着部を通過する際に、転写体ベルト6に担持されていたトナー像が中間転写体ベルト6表面から用紙Pに二次転写されると同時に、定着処理される。
【0021】
請求項1発明の画像形成装置は、中間転写体ベルト6が3層構造のベルト材料からなり、樹脂材料および導電剤で構成された下層の基材6aはヤング率が35000kg/cm2以上であり、中間層6bは弾性材料で構成され、表面層6cは表面エネルギーの小さい材料で構成される。
請求項1発明によれば、従来のカーボンブラックを分散したPCやPVDF等と比較して、基材6aのヤング率が高いので、駆動時の応力に対するベルトの変形が小さくなる。また、中間層6bの弾性により、一次転写部における接触圧を軽減することができる。特に、一次転写器としてバイアスローラを用いた場合には、その押圧力の集中を抑えることができる。そのため、ライン画像が中抜けするホローキャラクタの画質欠陥が発生するという問題がなくなる。しかも、表面エネルギーの小さい材料で構成された表面層6cは非粘着性であるため、用紙Pへのトナー像の二次転写定着が容易になり、高品質の転写画像を得ることが可能となる。
【0022】
請求項2発明の画像形成装置は、基材6a,中間層6bおよび表面層6cの厚みを所定の値に限定したことにより、良質の転写画像を得ることができる。すなわち、基材6aの厚みを50μm以上としたことにより、ベルト駆動時の外乱によるベルトの変位量を少なくなる。また、中間層6bの厚みをトナー平均粒径の3倍以上としたことにより、弾性層としての機能を発揮することができるので、ホローキャラクタが発生するようなことがない。さらに、表面層6cの膜厚を5μm以下としたことにより、上記中間層6bが有する弾性を損なうこともない。
請求項3,4発明の画像形成装置は、基材6aをカーボンブラックまたは導電性金属酸化物分散のポリイミド樹脂材料で、中間層6bをフッ素系ゴム材料で、および表面層6cをフッ素系樹脂材料で構成したものである。請求項3,4発明によれば、上記導電剤分散のポリイミド樹脂材料は、ヤング率が 62000kg/cm2 程度と高く、ベルト基材6aとしての機械特性を満足することができる。また、適量の導電剤をポリイミド樹脂中に分散させて、中間転写体ベルト6の表面抵抗率を1011〜1015Ω/□の範囲で所定の値に設定することにより、トナー像の一次転写が円滑に行われる。しかも、例えば前記接触角θが100°以上とフッ素系樹脂は表面エネルギーが小さく、かつ離型性が良好なので、二次転写定着時に中間転写体ベルト6上のトナー像がオフセットを発生することなく用紙Pへ円滑に移行する。さらに、同一のフッ素系ゴム材料を用いて、中間層6bと表面層6cとを同時に形成することが可能である。
【0023】
請求項5,6発明の画像形成装置は、請求項3,4発明における中間層6bをシリコーンゴム材料で構成したものである。シリコーンゴム材料として、例えば1液タイプのRTV型を用いると、中間層6bを簡単に形成することが可能である。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(画像形成装置)
図4は本発明の画像形成装置として中間転写体ベルトを備えたデジタルカラー複写機の全体図である。なお、図1に示す画像形成装置の構成要素と同様の機能を有するものには、図4にも同一の番号を付している。
図4において、プラテン11上に載置した原稿(図示せず)の下面に沿って移動する原稿照明用ランプ12から出射して、原稿で反射した光を移動ミラーユニット13、レンズ14、固定ミラー15を介して画像読取部のCCDに収束させる。CCDは、多数の光電変換素子とブルー(B),グリーン(G),レッド(R)の3色のフィルタにより、上記原稿画像を各色毎の電気信号に変換する。この電気信号は画像処理回路16に入力され、画像処理回路16は各色毎に入力された原稿画像読取信号をデジタル信号に変換して記憶する画像メモリを有している。
【0025】
光書込制御装置17は、上記画像処理回路16の画像データを所定のタイミングで読み出して、光ビーム書込装置18に出力する。光ビーム書込装置18は、矢印A方向に回転する感光体ドラムからなる前記像担持体1に前記各色に対応した静電潜像を書き込む。像担持体1の周囲には、その表面を一様に帯電させる帯電器2、像担持体1に書き込まれた静電潜像を各色のトナー像に現像する現像ユニット(現像装置)3、各色のトナー像を前記中間転写体ベルト6に転写するバイアスロール4、除電器およびクリーニングブレードを有するクリーナユニット(クリーニング装置)5が配置されている。
上記現像ユニット3は、黒(K),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の平均粒径7μmの各色トナーを収容した現像器を有し、それぞれ各色のトナーで上記静電潜像を現像して可視化する。
上記中間転写体ベルト6は、前記バックアップロール8およびベルト搬送ロール7a,7b,7cに張架され、像担持体1表面に当接しながらその接線方向に移動する。本実施例では、転写体ベルト6を張架する各ロール(7,8)のうち、転写体ベルト6が矢印B方向に移動するよう、ベルト搬送ロール7aを駆動ロールとし、他のロール(7b,7c,8)は従動ロールとして構成されている。また、転写体ベルト6の撓みを防止するために、搬送ロール7cをテンションロールとしている。
【0026】
中間転写体ベルト6の裏面側には前記バイアスロール4が配置され、転写体ベルト6を介してバイアスロール4が像担持体1表面に押圧する部位が一次転写部となる。一方、未定着トナー像を担持する転写体ベルト6の表面側には、バックアップロール8およびベルト搬送ロール7aに対向して、それぞれ前記ヒータ9aを装着した熱ロール9およびベルトクリーナ10が配置されている。転写体ベルト6を介してバックアップロール8と熱ロール9とが対向する部位が二次転写定着部となる。
また、バックアップロール8とベルト搬送ロール7aとの間には、二次転写されたトナー像を担持する用紙Pを転写体ベルト6から剥がす剥離爪19が配置されている。上記熱ロール9表面には、ポリウレタンで成形されたクリーニングブレード20が常時当接していて、二次転写定着時等で付着したトナー粒子や紙粉等の異物が除去される。
【0027】
画像形成装置U本体の下部には抽出自在の給紙トレイ21が設けられ、その上方にピックアップローラ22が配置されている。このピックアップローラ22の下流側には、用紙Pの重送を防止する一対のフィードロール23、用紙搬送ロール24、用紙Pを案内するガイド部材25およびレジロール26が順次配置されている。
前記二次転写定着部の下流側には、順次、定着画像が形成された用紙Pを搬送する搬送ベルト27、用紙Pを機外に排出する一対の排出ロール28、および排出された用紙Pを載置する排紙トレイ29が配置されている。
【0028】
(画像形成装置の作用)
矢印A方向に回転する像担持体1は、帯電器2により表面が一様に帯電され、光ビーム書込装置18により静電潜像が書き込まれる。像担持体1上の静電潜像は現像ユニット3により未定着トナー像に現像される。このトナー像の形成は、最初に第1色目のトナー像が形成され、以降像担持体1が所定時間回転する毎に、第2色目から第4色目までのトナー像が形成される。本実施例では、K,Y,M,C色のトナー像が順次形成されるようになっている。像担持体1の表面は、前記トナー像が中間転写体ベルト1に転写された後、クリーナユニット5のブレードによりクリーニングされる。
ここで、前記光書込制御装置17では、最初に第1色目のK色のデジタル信号を読出して光ビーム書込装置18に出力する。この書込装置18は像担持体1表面にK色に対応した静電潜像を書き込む。K色に対応した静電潜像は現像ユニット3内の現像器KによりK色の可視化されたトナー像に現像され、一次転写部へ移動する。一次転写部において、中間転写体ベルト6の裏面側に配置されたバイアスロール4からトナー像にその帯電極性とは逆極性の電界を作用させることにより、一次転写部に到達したK色のトナー像を静電的に転写体ベルト6に吸着させつつ、転写体ベルト6の矢印B方向の移動で一次転写させる。
【0029】
中間転写体ベルト6は、Kトナー像を吸着担持したまま像担持体1と同一周期で移動する。1色目のKトナー像の転写が終了すると、転写体ベルト6におけるKトナー像の転写開始位置が一次転写部に到達する迄に、光書込制御装置17からの出力によりブルー(B)のフィルタで色分解された光像に対応する静電潜像の書込が開始される。そして、Kトナー像を担持した転写体ベルト6の上記転写開始位置が一次転写部に到達すると、バイアスロール4によって2色目のYトナー像の転写が行われる。続いて、グリーン(G),レッド(R)のフィルタで色分解された光像に対応する静電潜像が現像器M,Cにより可視化され、Mトナー像およびCトナー像の転写が上記Yトナー像の転写と同様に行われる。
このようして、各色に重ね合わされた多重トナー像が中間転写体ベルト6上に形成される。この各色のトナー像が転写体ベルト6上に一次転写されるまで、転写体ベルト6の表面側に配置された前記熱ロール9,剥離爪19およびベルトクリーナ10は、転写体ベルト6から離間した退避位置に保持されている。
【0030】
一方、給紙トレイ21に収容された用紙Pは、ピックアップローラ22により所定のタイミングで1枚ずつ取り出されて、一対のフィードロール23、用紙搬送ロール24により給紙され、一対のレジロール26で一旦停止される。用紙Pは、その後中間転写体ベルト6上に転写された各色(K,Y,M,C)の多重トナー像が二次転写定着部に移動してくるのと同期して、レジロール26から二次転写定着部に搬送される。
二次転写定着部において、熱ロール9は中間転写体ベルト6を介してバックアップロール8に圧接した状態にある。そして、搬送されてきた用紙Pは、ロール8,9間の圧接搬送および転写体ベルト6の移動によって二次転写定着部を通過する。この際、転写体ベルト6に吸着担持されていたトナー像が転写体ベルト6表面から用紙Pに二次転写される。同時に、ヒータ9aを装着した熱ロール9の加熱により、未定着トナー像が用紙Pに固定されて永久画像に定着処理される。
【0031】
以上フルカラー画像の転写について述べてきたが、単色画像を形成する場合は、中間転写体ベルト6上に一次転写された例えばK色のトナー像が二次転写定着部に移動してきた時、直ちにトナー像は用紙Pに転写定着される。複数色の画像を形成する場合は、所望の色相を選択して、それらの色に重ね合わされた多色トナー像が二次転写定着部に移動してきた時、トナー像を用紙Pに転写定着すればよい。この多色画像の転写定着の場合は、各色のトナー像が一次転写部でズレることなく正確に一致するよう、前述のとおり、像担持体1の回転と中間転写体ベルト6の移動とを同期させている。
上述のようにして、トナー像が所望の色相に転写定着された用紙Pは、剥離爪19の作動により剥離され、更に搬送ベルト27に載置された後、一対の排紙ロール28により排紙トレイ29に排出される。二次転写定着が完了すると、中間転写体ベルト6は、二次転写定着部の下流に設けられたベルトクリーナ10によりクリーニングされ、次の一次転写に備える。
なお、本発明の画像形成装置は、現像ユニット3に単色のトナーを収容したモノカラー画像形成装置として使用することも可能である。
【0032】
(中間転写体ベルトの製造)
実施例1
樹脂成分100重量部に対して18重量部のカーボンブラックをポリイミドワニス(N−メチルピロリドンを溶媒とする耐熱皮膜用ポリイミドワニス;Uワニス−S:宇部興産(株)製)に添加して、ミキサーで充分に混合した。得られた製膜原液を直径168mm,高さ500mmのステンレススチール製円筒金型に注入し、120℃の熱風で120分間乾燥させながら、遠心形成した。
次いで、半硬化状態で脱型した円筒状フィルムを鉄芯に被せ、30分かけて120℃から350℃に昇温して溶媒を蒸発させた後、更に450℃で20分間加熱して、ポリアミド酸を脱水縮合させる本硬化を行った。得られた80μm厚のカーボンブラック分散ポリイミドフィルムを320mm幅に切削して、表面抵抗率1012Ω/□のシームレスベルト基材(6a)を形成した。なお、基材(6a)の表面抵抗率の計測は、表面抵抗計(ハイレスターIPのHRプローブ:三菱油化(株)製)を用い、500Vの電圧を印加してから30秒後の電流値を読みとって求めた。
次に、上記ベルト基材(6a)表面に、FEP系ゴム塗料(ダイエルラテックスGLS−213:ダイキン工業(株)製)をスプレー塗装で塗布した後、270℃で20分間加熱してコート層を形成した。このコート層は、表面に2μm厚のFEP樹脂が形成された表面層(6c)と、50μm厚(トナー平均粒径の約7倍)のフッ素ゴム層(6b)からなる。なお、表面層(6c)と水滴との接触角θは105°であった。
【0033】
実施例2
1液タイプのRTV型シリコーンゴム(SR2202:トーレシリコーン(株)製)を用いて、実施例1において得られたシームレスベルト基材(6a)表面に50μm厚の中間層(6b)を形成した。さらに、FEP系樹脂塗料(ND−4:ダイキン工業(株)製)をスプレー塗装で塗布した後、270℃で20分間加熱して5μm厚の表面層(6c)を形成した。この表面層(6c)と水滴との接触角θは105°であった。
【0034】
実施例3
酸化錫系導電層で被覆された平均粒子径0.4μmの硫酸バリウム(前記パストランType−IV)をγ−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理した導電剤(導電性金属酸化物)を実施例1で用いたポリイミドワニスの樹脂成分100重量部に対して37重量部添加して、ミキサーで充分に混合した。
得られた製膜原液をステンレススチール製シート上に厚さ200μmに均一に流延し、120℃の雰囲気で120分乾燥させて、更に150℃で30分、200℃で30分、250℃で60分、350℃で30分、420℃で30分と段階的に昇温して、厚み75μmのポリイミドシートを得た。シートの表面抵抗率は1012Ω/□であった。
得られたポリイミドシートを長さ540mm,幅320mmに切削した後、シートの一端部10mmにシラン変性ポリイミド樹脂からなる耐熱性接着剤(UPA−8322;宇部興産(株)製)を塗布し、両端部を重ね合わせて接合した。
以上のようにして形成されたシームレスベルト基材(6a)上に、FEP系ゴム塗料(前記ダイエルラテックスGLS−213)を実施例1と同様に塗布し、硬化して3層構造の中間転写体ベルト(6)を製造した。
実施例4
基材(6a)として、実施例3において形成された導電性金属酸化物分散のポリイミド製シームレスベルトを用いた以外は、実施例2と同様にして3層構造の中間転写体ベルト(6)を製造した。
【0035】
比較例1
実施例1のベルト基材を構成するカーボンブラック分散の熱硬化性ポリイミド樹脂を中間転写体ベルト材料として用いた。
比較例2
実施例1のベルト基材上にPFA含有塗布液をコーティングした後、樹脂を硬化させて、mp300℃以上の耐熱性フッ素樹脂からなる5μm厚の表面層を有する中間転写体ベルトを製造した。
比較例3
実施例1のベルト基材上に実施例2と同様にしてシリコーンゴムからなる60μm厚の弾性層を有する中間転写体ベルトを製造した。
比較例4
前記FEP系ゴム塗料を実施例1のベルト基材表面に塗布した後、230℃で20分間加熱して50μm厚のフッ素ゴムからなる弾性層を有する中間転写体ベルトを製造した。
【0036】
(中間転写体ベルト材料の特性試験と画質の評価)
実施例1〜4で製造された3層構造の中間転写体ベルト材料において、80μm厚のカーボンブラック分散ポリイミド樹脂、および75μm厚の導電性金属酸化物分散ポリイミド樹脂からなる基材のヤング率(引張弾性率)をJIS K 7127に準拠して計測した。すなわち、25×250mmの短冊試験片を用い、引張速度20mm/min で計測したところ、これらのポリイミド樹脂のヤング率はいずれも62000kg/cm2 であった。
また、実施例および比較例により製造された各中間転写体ベルトを図4に示す前述の画像形成装置に装着し、コピーテストを行って画質(ホローキャラクタ)の状態を評価した。なお、画像形成装置の一次転写部材および二次転写定着部材の具体的な構成は次のとおりである。
【0037】
一次転写部において、像担持体(1)は外径84mmのPC被覆OPC感光体ドラムからなる。バイアスロール(4)として、直径12mmのSUS製芯金に厚み4.5mmのシリコーンゴムを被覆した硬度(アスカーC)35°のロールを用いた。像担持体(1)とバイアスロール(4)の間には2kVのバイアス電圧を印加し、中間転写体ベルト(6)を介してバイアスロール(4)をニッブ幅3.5mmで像担持体(1)に押圧させた。
二次転写定着部において、バックアップロール(8)として外径28mmのSUS製金属ロールを用いた。熱ロール(9)は、外径がバックアップロール(8)と同径であり、直径22mmのSUS製芯金に酸化マグネシウムが分散された厚み3mmのシリコーンゴムが被覆され、更に表面が膜厚20μmのフッ素系樹脂(FEP)層で被覆された2層構造のロールからなる。その硬度はJIS A で40°であり、10kgの荷重をかけて熱ロール(9)をバックアップロール(8)にニップ幅3.0mmで押圧させた。また、定着温度は180℃に制御した。
【0038】
さらに、各中間転写体ベルト上に45mgのトナーを載せ、ベルトを45°に傾斜させた状態で、50Hzの振動を5秒間与えたときのトナーの移動距離を計測して、ベルト表面の粘着性を評価した。この粘着性テストにおいて、上記移動距離が50mm未満の場合を粘着性「あり」と評価した。
これらの評価結果をベルト材料と水滴の接触角θと併せて下記の表1に示す。なお、画質の評価基準は下記のとおりである。
◎ : ホローキャラクタの発生なし
〇 : ホローキャラクタの発生僅かにあり
× : ホローキャラクタの発生あり
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示す本発明の中間転写体ベルトは、ヤング率62000kg/cm2の基材と前記接触角105°の表面層と中間層として弾性層を介在させた3層構造からなり、ホローキャラクタおよび表面の粘着性はみられなかった。
一方、実施例1の基材をベルト材料とする単層の比較例1では、駆動時の応力に対するベルトの変形が小さく、表面の粘着性はないものの、表面エネルギーが大きいためトナーが用紙へ移行し難いだけでなく、ヤング率が62000kg/cm2と大きいため、ホローキャラクタが発生した。フッ素樹脂を表面層とする比較例2でも、表面層に粘着性はないものの、バイアスロールの押圧力に追随してベルト材料が変形しないために、ホローキャラクタの発生がみられた。
実施例1の基材表面にシリコーンゴム,フッ素ゴムを被覆した比較例3,4では、基材のヤング率が62000kg/cm2と大きいため、駆動時の応力に対するベルトの変形が小さいものの、表面が弾性層で構成されているので、ホローキャラクタの発生僅かにありのレベルであった。しかし、表面にゴム材料の粘着性があるため、ベルト駆動時に感光体ドラムとの接触によってベルト駆動に負荷変動が生じたので、ベルト位置がズレ、多色のトナーをベルトに担持する際に位置ズレが生じた。また、熱ロールのニップ圧を大きくした場合には、ベルトの駆動が停止する等の問題も発生した。
【0041】
【発明の効果】
本発明の画像形成装置は、基材のヤング率が大きく、かつ中間層が弾性材料で構成されているので、駆動時の応力に対するベルトの変形が小さい。そのため、像担持体との接触圧に追随して中間転写体ベルトの厚みが変形するので、ホローキャラクタの発生による画質欠陥の発生がない。したがって、一次転写器としてたとえバイアスロールを用いたとしても、一次転写部での応力の集中がないために、上記画質欠陥が発生するような恐れがない。また、表面層が表面エネルギーの小さい非粘着性の材料で構成されているため、ベルト駆動に負荷変動が生じないだけでなく、中間転写体ベルト上のトナー像部分が記録媒体へ二次転写されないという転写不良の恐れがない。特に、表面層を離型性に優れたフッ素系樹脂材料で構成した場合は、トナーオフセットが発生するようなこともない。このように、本発明は高品質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】主要構成部材を備えた画像形成装置における中間転写体ベルトの配置関係の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の中間転写体ベルトの横断面構造の概略図である。
【図3】表面エネルギーの尺度となる接触角を説明するための試験片表面と水滴との断面図である。
【図4】本発明の一実施例として示す画像形成装置の全体図である。
【符号の説明】
U…画像形成装置、P…用紙(記録媒体)、1…像担持体、3…現像ユニット(現像装置)、4…一次転写器、6…中間転写体ベルト、6a…基材、6b…中間層、6c…表面層、9…熱ロール。
Claims (6)
- 画像情報に応じた静電潜像が形成される像担持体と、像担持体に形成された静電潜像をトナーによりトナー像として可視化する現像装置と、像担持体上に担持されたトナー像を一次転写する一次転写器と、一次転写されたトナー像を担持する中間転写体ベルトと、中間転写体ベルト上の未定着トナー像を記録媒体に二次転写および定着する熱ロールとを備え、上記中間転写体ベルトは、樹脂材料および導電剤を構成成分とするヤング率が35000kg/cm2以上の基材と、弾性材料で構成された中間層と、水の濡れ性で表示した場合の水滴との接触角が90°以上の表面エネルギーの小さい材料を構成成分とする表面層との3層構造のベルト材料からなることを特徴とする画像形成装置。
- 前記基材の厚みが50μm以上であり、中間層の厚みがトナー平均粒径の3倍以上であり、かつ表面層の膜厚が5μm以下である請求項1記載の画像形成装置。
- 前記ベルト材料は、基材がカーボンブラック分散のポリイミド樹脂材料で、中間層がフッ素系ゴム材料で、および表面層がフッ素系樹脂材料でそれぞれ構成された請求項1記載の画像形成装置。
- 前記ベルト材料は、基材が導電性金属酸化物分散のポリイミド樹脂材料で、中間層がフッ素系ゴム材料で、および表面層がフッ素系樹脂材料でそれぞれ構成された請求項1記載の画像形成装置。
- 前記ベルト材料は、基材がカーボンブラック分散のポリイミド樹脂材料で、中間層がシリコーンゴム材料で、および表面層がフッ素系樹脂材料でそれぞれ構成された請求項1記載の画像形成装置。
- 前記ベルト材料は、基材が導電性金属酸化物分散のポリイミド樹脂材料で、中間層がシリコーンゴム材料で、および表面層がフッ素系樹脂材料でそれぞれ構成された請求項1記載の画像形成装置。
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