JP3613155B2 - 鋼材溶接用ワイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスシールドアーク溶接あるいはエレクトロガス溶接等によって鋼材を溶接する際に使用される鋼材溶接用ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、大気中における耐食性を向上した耐候性鋼は、船舶やタンク等の鋼構造物あるいは橋梁等の鋼建築物に広く利用されている。
近年、耐候性をさらに向上するために、Cu,Ni等の合金元素を添加した低炭素耐候性鋼が開発されている。CuおよびNiを含有する低炭素耐候性鋼は良好な耐食性を有するが、これらの鋼材を用いて鋼構造物や鋼建築物を建造する場合に、従来から知られている溶接材料を用いると、耐食性が低下するという問題があった。すなわち、これらの耐食性鋼は、鋼板の表面にNi,Cu等の元素添加が緻密な「安定さび層」を形成させることにより、自己防食機能を持つと考えられているだが、溶接金属およびその近傍では、金属の組成が耐食性鋼の組成と異なるため、耐食性が低下するのである。
【0003】
このような問題に対して、特開2000−102893 号公報ではNiおよびCuを添加した耐食性鋼に適用するガスシールドアーク溶接フラックス入りワイヤが開示されている。ところが、発明者らが特開2000−102893 号公報によるガスシールドアーク溶接フラックス入りワイヤについて種々検討したところ、そのフラックス入りワイヤを用いた溶接作業においては、スラグの剥離性が悪く、また、耐食性についても溶接される耐食性鋼に比べて劣るという問題が確認された。
阻害するという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、鋼材を溶接する際に溶接金属およびその近傍の耐食性を向上させ、かつ溶接スラグの剥離性に優れた鋼材溶接用ワイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、耐食性鋼を溶接するガスシールドアーク溶接フラックス入りワイヤについてさらに検討したところ、耐食性の劣化の原因は、溶接金属およびその近傍に剥離せずに残存した微小な溶接スラグが、緻密な「安定さび層」の形成を阻害することであると考えた。この考えに基づき、本発明者らは、スラグの剥離性が良好で、かつ溶接金属およびその近傍の耐食性も良好となるガスシールドアーク溶接フラックス入りワイヤを開発した。その構成は下記の通りである。
【0006】
本発明は、鋼材を溶接するために使用されるフラックスおよび鋼製外皮からなる鋼材溶接用ワイヤであって、フラックス中と鋼製外皮とに含有されるCu、Ni、Si、Mn、C、P、S、B、Cr、Tiの合計含有量が、フラックスと鋼製外皮との合計質量に対して、それぞれCu:0.05〜0.5 質量%、Ni: 2.5〜3.0 質量%、Si:0.05〜0.70質量%、Mn: 1.8〜3.0 質量%、C:0.02〜0.10質量%、P: 0.020質量%以下、S: 0.003〜0.020 質量%、B:0.0050質量%以下、Cr:0.05質量%以下、Ti: 2.0〜4.0 質量%であり、前記フラックス中と前記鋼製外皮とに含有されるBiの含有量が、前記フラックスと前記鋼製外皮との合計質量に対して、合計 0.068〜0.070 質量%である組成を有することを特徴とする耐食性に優れた溶接部を形成できる鋼材溶接用ワイヤである。
【0008】
【発明の実施の形態】
溶接金属およびその近傍のスラグ剥離性,耐食性を向上させるためには、溶接金属の組成を調整しなければならない。溶接金属の組成は、鋼材の組成と溶接材料の組成とによって決まるものである。鋼構造物や鋼建築物に使用される鋼材の組成は、その使用条件や環境条件によって設計されるため、溶接金属の組成を調整するためには、適正な組成の溶接材料を使用する必要がある。
【0009】
溶接材料として鋼材溶接用ワイヤを用いる場合は、フラックスの組成と鋼製外皮の組成とが溶接金属の特性に影響を与えるため、フラックスと鋼製外皮とに含まれる元素の含有量を適正な範囲に維持しなければならない。
以下に本発明の鋼材溶接用ワイヤに含有される各元素の含有量の限定理由を説明する。なおCu,Ni,Si,Mnの含有量は、その元素がフラックス中の金属成分と鋼製外皮とに含有される質量およびフラックス中の金属成分と鋼製外皮との合計質量を用いて下記の式で算出される値である。下記の式で算出される含有量を、以下では必要に応じて「含有量1」と称する。
なお、フラックス中の金属成分とは、金属や合金といったいわゆる金属相のことであり、酸化物,ハロゲン化物といった金属相以外の相に含有される金属元素のことを指すのではない。
【0010】
含有量1(質量%)= 100×(mFmetal+m)/(MFmetal+M
Fmetal:フラックス中の金属成分に含有される各元素の質量(kg)
:鋼製外皮に含有される各元素の質量(kg)
Fmetal:フラックス中の金属成分の質量(kg)
:鋼製外皮の質量(kg)
また、Bi,C,P,S,B,Cr,Tiの含有量は、フラックスと鋼製外皮とに含有される各元素の質量およびフラックスと鋼製外皮との合計質量を用いて下記の式で算出される値である。下記の式で算出される含有量を、以下では必要に応じて「含有量2」と称する。
【0011】
含有量2(質量%)= 100×(mF +ms )/(MF +Ms
F :フラックスに含有される各元素の質量(kg)
s :鋼製外皮に含有される各元素の質量(kg)
F :フラックスの質量(kg)
s :鋼製外皮の質量(kg)
Bi:合計 0.068〜0.070 質量%
Biは溶接の際に発生する溶接スラグの剥離性を改善するために不可欠の元素である。Biは主に Bi23 等の酸化物としてフラックスに添加されるが、金属BiまたはFe−Bi合金等の形態で添加しても良い。Biが、Bi含有量に換算した値で合計 0.068質量%未満では、溶接金属中に溶け込むBiが不足して溶接スラグの剥離性の改善効果は十分に得られない。またBiが、Bi含有量に換算した値で合計 0.070質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むBiが過多となり、溶接金属の高温割れ感受性が高くなる。したがってBiの含有量は合計 0.068〜0.070 質量%とする必要がある。
【0012】
Cu:合計0.05〜0.5 質量%
Cuは溶接金属の耐食性を改善する元素である。Cuが合計0.05質量%未満では、溶接金属中に溶け込むCuが不足して溶接金属の耐食性の改善効果が得られない。またCuが合計 0.5質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むCuが過多となり、溶接金属の高温割れ感受性が高くなる。したがってCuの含有量は合計0.05〜0.5 質量%とする必要がある。
【0013】
Ni:合計 2.5〜3.0 質量%
Niは溶接金属の高温割れ感受性を低減し、かつ耐食性を改善する元素である。Niが合計 2.5質量%未満では、溶接金属中に溶け込むNiが不足して溶接金属の高温割れ感受性が高くなり、しかも耐食性の改善効果も得られない。またNiが合計 3.0質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むNiが過多となり、溶接金属の高温割れ感受性が高くなる。したがってNiの含有量は合計 2.5〜3.0 質量%とする必要がある。
【0014】
Si:合計0.05〜0.70質量%
Siは脱酸のために不可欠な元素である。Siが合計0.05質量%未満では、溶接金属中に溶け込むSiが不足して脱酸の効果は十分に得られない。またSiが合計0.70質量%を超えると、高温割れ感受性が高くなる。Siが合計0.70質量%を超える場合、高くなる高温割れ感受性を低減させるためには、Mn,Ni等の溶接金属中合金元素量をフラックス中に添加することが必要となる。しかし、Mn,Ni等の添加により高温割れ感受性を低減させた場合には、溶接金属の靱性が低下し、かつ溶接金属中の水素が起因する低温割れ感受性が高くなる。したがってSiの含有量は合計0.05〜0.70質量%とすること必要がある。
【0015】
Mn:合計 1.8〜3.0 質量%
Mnは溶接金属を脱酸し、かつ溶接金属の強度および靱性を向上させる。また、高温割れ感受性を増大させるSと化合物を形成し、高温割れを抑制するために不可欠の元素である。Mnが合計 1.8質量%未満では、溶接金属中に溶け込むMnが不足して脱酸および高温割れ抑制の効果は十分に得らず、かつ強度および靱性が向上しない。またMnが合計 3.0質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むMnが過多となり、溶接金属の靱性が低下し、かつ溶接金属中の水素が起因した低温割れ感受性が高くなる。したがってMnの含有量は合計 1.8〜3.0 質量%とする必要がある。
【0016】
:合計0.02〜0.10質量%
Cは溶接金属の強度を向上させるが、溶接金属の高温割れ感受性を高める原因にもなる元素である。Cが合計0.02質量%未満では、溶接金属中に溶け込むCが不足して強度が向上しない。またCが合計0.10質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むCが過多となり、高温割れ感受性が高くなる。したがってCの含有量は合計0.02〜0.10質量%とする。
【0017】
P:合計 0.020質量%以下
Pは不純物として不可避的に含有され、溶接金属の靱性を低下させる元素である。したがって、Pは少ないほど好ましい。特に、Pが合計 0.020質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むPが過多となり、溶接金属の靱性が低下する。したがってPの含有量は合計 0.020質量%以下とする。
【0018】
S:合計 0.003〜0.020 質量%
Sは溶接時の液滴の流れを改善するが、溶接金属の靱性を低下させ、かつ高温割れ感受性を高める原因にもなる元素である。Sが合計 0.003質量%未満では、溶接時の液滴の粘性が高くなり、液滴の流れが阻害される。またSが合計 0.020質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むSが過多となり、溶接金属の靱性が低下し、かつ高温割れ感受性が高くなる。したがってSの含有量は合計 0.003〜0.020 質量%とする。
【0019】
B:合計0.0050質量%以下
Bは溶接金属の焼入れ性を向上させるが、高温割れ感受性を高める原因にもなる元素である。焼入れ効果を利用して溶接金属の強度を向上させるために、鋼材溶接用ワイヤを介して溶接金属にBを添加する。しかしBが合計0.0050質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むBが過多となり、溶接金属の靱性が著しく低下し、かつ高温割れ感受性が高くなる。したがってBの含有量は合計0.0050質量%以下とする。
【0020】
Cr:合計0.05質量%以下
Crは塩分の少ない環境下では耐食性を向上させる元素であるが、海岸地帯のように塩分の多い環境下では逆に耐食性を劣化させる元素である。よって本発明では積極的には添加しないが、0.05質量%までは許容できる。したがってCrの含有量は合計0.05質量%以下とする。
【0021】
Ti:合計 2.0〜4.0 質量%
Tiは溶接時のアークの安定性およびスラグの被包性を向上させて全姿勢溶接性を良好にし、かつ金属として添加された場合には溶接金属を脱酸する働きを有する元素である。Tiは主にTiO2 としてフラックスに添加されるが、金属TiまたはFe−Ti合金等の形態で添加しても良い。Tiが、Ti含有量に換算した値で合計 2.0質量%未満では、溶接時のアークの安定性およびスラグの被包性を向上する効果は十分に得られない。またTiが、Ti含有量に換算した値で合計 4.0質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むTiが過多となり、スラグの粘性が上昇するためビード形状が悪くなる。したがってTiの含有量は合計 2.0〜4.0 質量%とする。
【0022】
なお本発明の鋼材溶接用ワイヤは、上記の成分に加えて、一般に使用されるスラグ形成剤を含有しても良い。スラグ形成剤は、特定の種類に限定しないが、SiO,ZrO,Al,MnO,MgO等の酸化物、CaF,BaF,MgF,LiF等のふっ化物、CaCO,BaCO等の炭酸塩、Li,Na,K等のアルカリ金属およびその化合物、Al等の金属およびその合金等を使用できる。
【0023】
また本発明の鋼材溶接用ワイヤの直径,断面形状および鋼製外皮の材質は、適宜選択して使用すれば良い。溶接方法も特定の方法に限定せず、ガスシールドアーク溶接やエレクトロガス溶接等の種々の溶接方法から適宜選択すれば良い。
ガスシールドアーク溶接で溶接を行なう場合は、シールドガスとして、不活性ガス、または不活性ガスに任意の割合でCOを混合した混合ガス、または前記混合ガスに5 vol%以下のOを混合した混合ガス、または不活性ガスに5 vol%以下のOを混合した混合ガス、またはCOガスを用いるのが好ましい。なお不活性ガスはArガス,HeガスあるいはArとHeの混合ガスを用いるのが好ましい。
【0024】
本発明の鋼材溶接用ワイヤは、C含有量が0.01〜0.03質量%、S含有量が0.010 質量%以下、B含有量が0.0001〜0.0030質量%、Ni含有量が 2.5〜3.0 質量%、Cu含有量が0.05〜0.5 質量%の鋼材を溶接する際に使用するのが好ましい。
この組成を有する鋼材は溶接硬化性が低いので、溶接の際に予熱が省略できる。またC含有量が低いため、アークストライクのような冷却速度が非常に速い溶接を行なった場合でも、溶接熱影響部はマルテンサイト変態を起こさない。したがって、このような鋼材は、溶接によって建造される鋼構造物や鋼建築物に適している。
【0025】
以下に、鋼材に含有される各元素の含有量の好ましい範囲とその理由を説明する。
C:0.01〜0.03質量%
Cは鋼材の強度を向上させるために添加するが、溶接金属の高温割れ感受性を高める元素である。また鋼中C量の低減は耐食性向上に有利である。鋼材に含有されるCが0.01質量%未満では、所定の強度が得られない。また鋼材に含有されるCが0.03質量%を超えると、溶接金属の靱性が劣化し、高温割れ感受性が高くなる。したがってCの含有量は0.01〜0.03質量%とすることが好ましい。
【0026】
S: 0.010質量%以下
Sは不純物として不可避的に鋼材に含有され、溶接金属の高温割れ感受性を高める元素である。鋼材に含有されるSは少ないほど好ましい。特に、鋼材に含有されるSが 0.010質量%を超えると、溶接金属の高温割れ感受性が著しく高くなる。したがってSの含有量は 0.010質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
B:0.0001〜0.0030質量%
Bは鋼材の焼入れ性を増加させ、さらに耐食性を向上させ、かつ溶接金属の高温割れ感受性を高める元素である。この鋼材はC含有量が低いので、焼入れ効果を利用して鋼材の強度を向上させるためにBを添加する。鋼材に含有されるBが0.0001質量%未満では、焼入れ効果が得られない。また鋼材に含有されるBが0.0030質量%を超えると鋼材の靱性が低下し、溶接金属の高温割れ感受性が高くなる。したがってBの含有量は0.0001〜0.0030質量%とすることが好ましい。
【0028】
Ni: 2.5〜3.0 質量%
Niは鋼材の耐食性を向上させために添加される元素であるが、溶接金属の高温割れ感受性を低減する効果も有する。鋼材に含有されるNiが 2.5質量%未満では、鋼材の耐食性の向上効果が得られず、しかも溶接金属の高温割れ感受性の低減効果も得られない。また鋼材に含有されるNiが 3.0質量%を超えると、鋼材の耐食性の向上効果および溶接材料の高温割れ感受性の低減効果がともに飽和する。したがってNiの含有量は 2.5〜3.0 質量%とすることが好ましい。
【0029】
Cu:0.05〜0.5 質量%
Cuは鋼材の耐食性を向上させるために添加される元素である。鋼材に含有されるCuが0.05質量%未満では、鋼材の耐食性の向上効果が得られない。また鋼材に含有されるCuが 0.5質量%を超えると、鋼材の熱間加工性を阻害し、溶接金属の高温割れ感受性が高くなる。したがってCuの含有量は0.05〜0.5 質量%とすることが好ましい。
【0030】
鋼材および溶接金属が所望の特性を得るように、他の元素を適宜選択して添加しても良い。たとえば、鋼材の強度,靱性,耐候性および溶接金属の高温割れ感受性,溶接スラグの剥離性等の良好な特性を有する鋼材の例として、上記の組成に加えて、Si: 0.4質量%以下,Mn: 0.2〜1.4 質量%,P: 0.020質量%以下,Cr: 0.1質量%以下,Al:0.01〜0.05質量%を含有し、Nb: 0.005〜0.1 質量%,Ti: 0.005〜0.1 質量%,V: 0.005〜0.1 質量%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなることが好ましい。
【0031】
【実施例】
鋼材1を、図1に示すような開先形状に加工して、ガスシールドアーク溶接を行なった。開先形状は、板厚tが20mm、ルート面幅wが5mm、開先角度θが90°であった。鋼材1として使用した引張強さ570MPa級の耐候性鋼板は表1に示す2種類であり、鋼材溶接用ワイヤは表2に示す6種類を使用した。フラックス中の金属成分と鋼製外皮との合計質量に対するSi,Mn,Cu,Niの含有量(含有量1)、フラックスと鋼製外皮との合計質量に対するBi,C,P,S,B,Cr,Ti,Moの含有量(含有量2)、およびフラックスと鋼製外皮との合計質量に対するスラグ形成剤の含有量を湿式分析法で測定し、表2に示す。
【0032】
なお表2のワイヤdは本発明の鋼材溶接用ワイヤの例である。一方、ワイヤa〜c,fはBiの含有量が本発明の範囲を外れる鋼材溶接用ワイヤの例である。ワイヤgはCuおよびNiの含有量が本発明の範囲を外れる鋼材溶接用ワイヤの例である。なおワイヤa〜d,g,fには、スラグ形成剤としてSiO2 等の酸化物を添加した。ワイヤ径は、いずれも 1.2mmであった。
【0033】
【表1】
Figure 0003613155
【0034】
【表2】
Figure 0003613155
【0035】
溶接条件は、溶接電流: 250A,溶接電圧:30V,溶接速度:30cm/min ,溶接入力:15kJ/cm,シールドガス:CO,ガス流量:25 liter/min ,溶接姿勢:下向きとした。この溶接条件で、溶接長さ500mm のガスシールド多層溶接継手を作製した後、溶接金属およびその近傍から試料を採取し、耐食性,溶接金属のシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー vE−5(J)および溶接スラグの剥離性を調査した。その結果を表3に示す。
【0036】
耐食性試験に供する試験片は、全体のサイズを 100mm×50mm×板厚とし、溶接方向の長さ10mmとした。この試験片は、塩水散布を含む1年間の大気暴露を行った。耐食性試験のその他の条件としては、週2回の海水を塩水散布し、試験片は南向き45°の傾斜で設置した。暴露後、試験片をショットブラスト処理して錆を除去した後に試験片の質量減少量を測定し、5g以下を良好とした。シャルピー衝撃試験の吸収エネルギー vE−5(J)は、2mmVノッチ試験片の−5℃における吸収エネルギーの値である。また溶接スラグの剥離性は目視で評価した。
【0037】
【表3】
Figure 0003613155
【0038】
溶接継手1はBi の含有量が本発明の範囲を外れるワイヤaを使用して鋼材Aを溶接した例であり、溶接継手2はBi の含有量が本発明の範囲を外れるワイヤbを使用して鋼材Bを溶接した例であり、溶接継手3はBi の含有量が本発明の範囲を外れるワイヤcを使用して鋼材Aを溶接した例であり、溶接継手4は本発明のワイヤdを使用して鋼材Bを溶接した例である。溶接継手1〜4では割れは発生せず(すなわち0個)、吸収エネルギー V-5はそれぞれ97J,88J, 102Jおよび 106Jであり、高い値が得られた。しかも溶接スラグの剥離性は、すべて良好であった。
【0039】
溶接継手6は、Biの含有量が本発明の範囲を外れるワイヤfを使用して鋼材Bを溶接した例である。溶接継手6では、割れは発生せず、吸収エネルギー vE−5は 101Jであり溶接継手3と同等であったが、溶接スラグの剥離性が不良であった。
溶接継手7は、CuおよびNiの含有量が外れるワイヤgを使用して鋼材Aを溶接した例である。溶接継手7の吸収エネルギー vE−5は99Jであり、高い値が得られ、また溶接スラグの剥離性も良好であった。しかし、その試験片の溶接金属およびその近傍では錆の形成が顕著であり、耐食性は質量減少量 8.7gと他に対して劣っている。
【0040】
溶接継手4と溶接継手1〜3,6〜7を比べると、本発明の溶接用フラックス入りワイヤを使用した溶接継手4の方が、溶接継手6よりも溶接スラグの剥離性が優れており、また溶接継手7よりも耐食性が優れていることが確認された。また溶接継手4は、溶接継手1〜3よりも質量減少量が少なく、かつ吸収エネルギー V -5 が高かった。
【0041】
【発明の効果】
本発明では、鋼材を溶接する際に、溶接金属およびその近傍の耐食性を向上させ、かつ溶接スラグの剥離性を改善でき、特にNiおよびCuを含有する鋼材の溶接に使用すると格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】開先形状の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋼材
t 板厚
w ルート面幅
θ 開先角度

Claims (1)

  1. 鋼材を溶接するために使用されるフラックスおよび鋼製外皮からなる鋼材溶接用ワイヤであって、前記フラックス中と前記鋼製外皮とに含有されるCu、Ni、Si、Mn、C、P、S、B、Cr、Tiのそれぞれの合計含有量が、前記フラックスと前記鋼製外皮との合計質量に対して、それぞれCu:0.05〜0.5 質量%、Ni: 2.5〜3.0 質量%、Si:0.05〜0.70質量%、Mn: 1.8〜3.0 質量%、C:0.02〜0.10質量%、P: 0.020質量%以下、S: 0.003〜0.020 質量%、B:0.0050質量%以下、Cr:0.05質量%以下、Ti: 2.0〜4.0 質量%であり、前記フラックス中と前記鋼製外皮とに含有されるBiの含有量が、前記フラックスと前記鋼製外皮との合計質量に対して、合計 0.068〜0.070 質量%である組成を有することを特徴とする耐食性に優れた溶接部を形成できる鋼材溶接用ワイヤ。
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