JP3612293B2 - 物体内部の残留応力測定方法およびその測定装置 - Google Patents

物体内部の残留応力測定方法およびその測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接或いは機械的な結合により構成される機器や構造物の内部に生じる残留応力を評価する技術に係り、特に、物体表面における力と変位の関係および物体表面にはたらく表面力ベクトル(「トラクション」という)と変位と応力の関係から残留応力発生源の分布を決定し、残留応力発生源と表面のトラクションと変位から破壊検査を行うことなく物体内部の残留応力の分布や強さを測定できる物体内部の残留応力測定方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に残留応力は、機器や構造物が変動荷重の作用を受けたり、腐食環境中で使用されたりする場合に、それらの疲労寿命やSCC(応力腐食割れ)寿命などに影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
変動荷重下や腐食環境下で使用される機器、構造物の寿命は、荷重や環境等の外的条件の厳しい部位に亀裂が発生し、亀裂が成長して機器、構造物の機能を果たせなくなるか或いは最終破壊を生じて機能を果たせなくなるなるまでの時間である。この寿命は、大きく分けて亀裂が発生するまでの時間と亀裂が成長する時間からなっている。亀裂の発生及び成長の速度は一般には荷重条件、環境条件と材料により異なる。荷重条件や環境条件が厳しいほど亀裂の発生および成長の時間が短くなる。さらに、材料のほか荷重条件や環境条件が等しい場合には、残留応力により亀裂発生の時間が短縮化されることが知られている。従って、機器や構造物を寿命予測に基づいて効率的に運用するには残留応力を正確に把握する必要がある。
【0004】
疲労亀裂やSCC亀裂は一般に表面で発生するため、亀裂が発生するまでの時間の予測には表面の残留応力を評価すればよい。
【0005】
表面残留応力の測定法としては、残留応力が生じている表面に評点を印し、その周囲の材料を除去することにより解放されるひずみを評点間距離の変化として測定し、解放されたひずみから計算した弾性応力を残留応力として評価する解放法がある。評点間距離の変化の測定には光学的な方法や直接抵抗線ひずみゲージを用いる方法などがある。また、材料を除去して残留応力を解放させる方法にも、完全に評点の周囲を分離させる方法や完全に分離させた場合とほぼ同程度とみなせるような部分的な解放がある。
【0006】
なお、これらの方法はひずみを完全に解放させるため機器、構造物の表面を部分的に破壊する必要があり、解放前後の評点間距離の変化に及ぼす解放以外の材料除去による影響を防止するため、ある程度の体積が必要で、その中での平均的な残留応力を与えることになる。
【0007】
このほか金属の結晶格子の弾性ひずみから直接残留応力を評価するX線回折法があり、非破壊的な測定が可能である。しかし、深さ方向の残留応力分布を測定する場合は、表面層を順次除去して残留応力測定を繰返すことになり、破壊的検査となる。
【0008】
一方、亀裂が成長する時間の評価は、物体内部の残留応力が問題となる。
一般に機器や構造物では亀裂が発生しても直ちに機能を喪失したり破壊したりすることはまれで、破壊までに亀裂が進展、成長するのに長い時間を要する。この時間を利用することにより機器、構造物をより効率的に使用することが可能となるため、亀裂の進展挙動の予測は重要である。前述したとおり、亀裂は表面で発生して内部に進展、成長して行き、その進展速度は物体内部の残留応力により変化する。引張り残留応力下では進展速度が加速され、逆に圧縮残留応力下では減速する。従って、亀裂の進展挙動を予測するには内部の残留応力を把握することが不可欠となる。
【0009】
物体内部の残留応力を直接評価する唯一の方法として中性子線回折法があり、X線回折法と同様に金属内部の結晶格子のひずみを中性子線の回折から測定する方法である。
【0010】
しかし、金属内部まで中性子線を透過させるため強い線源が必要である。また、遮蔽も大掛かりになる。従って、現在は試験用の原子炉等が中性子源として使用され、原子炉に入る試験片以外の大きな実構造物の測定には適用が困難である。
【0011】
このほか、内部の残留応力を評価する方法としては、測定しようとする面に亀裂を導入した時に解放されるひずみから残留応力を逆算する亀裂コンプライアンス法がある。しかし、この方法では予め亀裂を導入する面を決定しておかなければならないことや、亀裂により破壊されることなどにより、実機への適用が難しい。
【0012】
これ以外の方法として解析的な方法がある。熱弾塑性解析法のようにすべて解析による方法では、内部の残留応力を連続的に把握可能であるが、溶接現象をモデル化して解析しているため得られた結果の信頼性を、実規模のモックアップ試験体に対する測定などの何らかの方法で確認する必要がある。
【0013】
このほか、表面や内部の固有ひずみを測定して、固有ひずみにより発生する応力として残留応力を評価する方法があるが、内部の固有ひずみを測定するには、破壊的に測定する必要があり、やはり実機の測定には適用できない。
【0014】
以上のように、従来の技術では、破壊的な測定が不可能な大きな寸法の実構造物の内部残留応力を評価する手法が無いのが実状である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、機器、構造物等の余寿命を把握して効率的に運用できることを目的として、破壊的な測定が不可能な大きな寸法の実構造物の内部残留応力を簡単かつ非破壊的に評価できる「物体内部の残留応力測定方法およびその装置」を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1に係る物体内部の残留応力測定方法は、
物体を要素に分割する段階と、
物体表面の残留応力を測定する段階と、
物体力と物体表面に作用するトラクションとそれによる変位との関係を示す第一関係式と、物体力と物体表面に作用するトラクションと変位と物体表面の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式とにおいて、残留応力発生源を物体力とし、物体表面における一致を条件として前記第一および第二関係式を連立させて未知境界量と残留応力発生源の分布を解く段階と、物体力と物体表面に作用するトラクションと変位から物体内部の任意の位置における残留応力を求める段階と、を有するものである。
【0017】
本願請求項2は、上記方法において、まず物体内部の残留応力発生源の分布を同定し、その残留応力発生源から物体内部の任意の位置における残留応力を求めるものである。
【0018】
一般に応力ひずみに関する境界値問題では、物体表面の応力ひずみ状態に対応して内部の応力ひずみ状態が一意的に決まる。一方、残留応力は外力とは関係無く物体内部に生じているひずみ(固有ひずみと呼ぶ)により発生するため、内部に生じている固有ひずみが定まれば物体表面における残留応力も一意的に定まることになる。本発明では固有ひずみの代わりにそれと力学的に等価な物体力(物体に作用する力)を用いる。
【0019】
上記請求項1の発明は、上記した境界値問題の原理を応用することにより、逆に表面の残留応力を測定して、内部の物体力を決定し、さらにその物体力を用いて、表面のみならず内部の任意位置における残留応力を連続的に評価する方法である。また、請求項2の発明は、残留応力が発生する源になっている固有ひずみなどの内部の残留応力発生源の分布を表面の残留応力から同定し、同定した残留応力発生源から内部の任意位置における残留応力を評価する方法である。
【0020】
本願請求項3に係る物体内部の残留応力測定方法は、請求項2の方法において、
残留応力発生源を、作用する位置と大きさが等しくかつ反対方向に作用する物体力の対として残留応力発生源の分布を同定することを特徴とするものである。
【0021】
上記請求項3の発明は、請求項2において残留応力発生源として、物体力の対を用いる方法である。物体力は一方向に作用するため、外力の作用しない物体に物体力を作用させると力の平衡が取れず、第一、第二関係式以外に物体力の平衡を確実にする第三の関係式が必要になる。従って、作用する位置と大きさが等しく、180°反対方向に作用する2つの物体力、すなわち物体力対を作用させることにより、第一、第二関係式と同様な式を誘導できるとともに残留応力発生源は力の平衡条件を自動的に満たすことができる。
【0022】
本願請求項4に係る物体内部の残留応力測定方法は、請求項2の方法において、
物体力の代わりに転位を用い、前記第一関係式と第二関係式とを連立させて解くことにより転位の分布を求め、その転位の分布から物体内部の任意の位置における残留応力を求めることを特徴とするものである。
【0023】
上記請求項4の発明は、請求項2において残留応力発生源として転位を用いる方法である。転位は力ではなく変位の食い違いのため、力の平衡条件ははじめから満足されており、刃状転位や螺旋転位に応じて第一、第二関係式に相当する転位の変位場、応力場の式を容易に誘導できる。ただし、転位による変位の食い違いを無くす第三の関係式が必要になる。
【0024】
本願請求項5に係る物体内部の残留応力測定方法は、請求項2の方法において、
物体力の代わりに初期ひずみを用い、前記第一関係式と第二関係式とを連立させて解くことにより物体内部の初期ひずみの分布を求め、その物体内部の初期ひずみの分布から物体内部の任意の位置における残留応力を求めることを特徴とするものである。
【0025】
上記請求項5の発明は、請求項2において残留応力発生源としてひずみを用いる方法である。外力が作用することなく初めから存在するひずみのため、初期ひずみと呼ぶ。初期ひずみも物体内部で力の平衡条件を満足することができ、やはり第一、第二関係式と同様な式を誘導できる。
【0026】
本願請求項6に係る物体内部の残留応力測定方法は、請求項2の方法において、
物体内部の残留応力発生源の強さと分布を決定するのに必要な表面残留応力の数より多くの表面残留応力を測定することを特徴とするものである。
【0027】
測定点数が多くすることにより、算出される応力発生源の解を評価して解の精度、妥当性を向上させることができる。
【0028】
本願請求項7に係る物体内部の残留応力測定方法は、請求項6の方法において、
前記第一関係式と第二関係式を離散化して解く方法において、表面で測定された残留応力をも含む既知量から算出される定数項と未知量から算出される量の誤差の自乗の和が最小となるように離散化方程式を解くことを特徴とするものである。
【0029】
上記請求項7の発明によれば、未知の残留応力発生源と表面残留応力との力学的な第一関係式と第二関係式を離散化して解く方法において、測定結果或いは境界条件と関係式を介して残留応力発生源から予測される変位、応力の誤差の自乗の和が最少となるように離散化方程式を解くことに相等し、誤差がもっとも少ない残留応力発生源を求めることができる。
【0030】
本願請求項8に係る物体内部の残留応力測定方法は、請求項1〜5の方法において、残留応力発生源を溶接金属とその周辺に限定して分布させるようにしたことを特徴とするものである。
【0031】
溶接残留応力は溶接部及びその近傍に限定されているため、上記請求項8の方法によれば、残留応力発生源を溶接金属及びその周辺に限定でき、少ない計算量によって残留応力発生源を同定することができる。
【0032】
本願請求項9に係る物体内部の残留応力測定装置は、
物体力と物体表面に作用するトラクションとそれによる変位との関係を示す第一関係式と、物体力と物体表面に作用するトラクションと変位と物体表面の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式とにおいて、残留応力発生源を物体力とし、物体表面における一致を条件として前記第一および第二関係式を連立させて未知境界量と残留応力発生源の分布を解くことにより、物体力と物体表面に作用するトラクションと変位から物体内部の任意の位置における残留応力を求める内部残留応力評価手段を有することを特徴とするものである。
【0033】
この装置によれば、物体力を未知の残留応力発生源と考えて第一、第二関係式を連立させて残留応力発生源を同定し、既知になった残留応力発生源を用いて物体内部の任意位置における応力、すなわち残留応力を評価することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明による「物体内部の残留応力測定方法およびその装置」の実施の形態について添付の図1〜図5を参照して以下に説明する。
【0035】
図1に、本発明による残留応力測定方法の主要な処理の流れを示す。
本発明の第一の処理は、評価対象となる機器や物体表面の残留応力の評価である。本発明を実施するには表面の残留応力測定は不可欠である。この物体表面の残留応力の測定は、本発明による残留応力評価装置を用いて実施できるし、既存の方法で実施することもできる。
【0036】
本発明の第二の処理は、第一の処理で決定した表面残留応力から、物体内部における残留応力発生源の大きさと分布を同定することである。
【0037】
残留応力発生源の大きさと分布を同定するには、物体に作用する力(物体力)と、物体表面に作用するトラクションと変位との関係を示す第一関係式と、物体力と物体表面に作用するトラクションと変位と物体内部の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式とにおいて、残留応力発生源を物体力とし、物体表面における一致を条件として前記第一および第二関係式を連立させて解くようにする。
【0038】
一般に境界値問題では物体表面に作用する既知のトラクションt 、変位u 、と物体に作用する物体力bとそれらにより表面に発生するトラクションtと変位uの間に関係式(1)(第一関係式)が成立する。ここで、t,uは未知境界量であり、物体力bも未知である。従って、物体を要素に分割して関係式(1)(第一関係式)を離散化することにより表面上の未知の力tと変位uを求めることができる。
【0039】
=f(t ,u ,t,u)+f(b) (1)
また、既知になった(このため諸量に*を付けて記す)表面上の全てのトラクションt 、変位u と物体力b から、物体内部の任意位置における応力σを次式のように計算できる。
【0040】
σ=g(t ,u )+g(b ) (2)
滑らかな物体表面の応力σも次式(3)(第二関係式)から計算できる。
【0041】
σ =g(t ,u ,t,u)+g(b) (3)
なお、トラクションは表面の外向き単位法線ベクトルn(n,n,n)と応力成分σ ijと以下の関係がある。
【0042】
=σ ij(i,j=1,2,3) (4)
本発明の特徴は、上記した原理を用いるが、既知の物体力b を用いて式(1)、(2)或いは(3)の順に応力評価を実施するのではなく、物体力b を未知の残留応力発生源と考えて式(1)、(3)を連立させて残留応力発生源b を同定し、既知になったb を用いて式(2)により内部の任意位置における応力、すなわち残留応力を評価することにある。なお、本手法では式(3)の応力σは、表面で測定した残留応力となる。
【0043】
上記式(1)(第一関係式)と式(3)(第二関係式)において物体力b の取り扱いとして、残留応力発生源を作用する位置と大きさが等しくかつ反対方向に作用する物体力の対とし、第一関係式と第二関係式を解いて残留応力発生源の分布を同定する方法(本願請求項3)と、物体力の代わりに転位を用い、第一関係式と第二関係式とを連立させて解くことによって転位の分布を求め、その転位の分布から物体内部の任意の位置における残留応力を求める方法(本願請求項4)と、物体力の代わりに初期ひずみを用い、第一関係式と第二関係式とを連立させて解くことによって物体内部の初期ひずみの分布を求め、その物体内部の初期ひずみの分布から物体内部の任意の位置における残留応力を求める方法(本願請求項5)とがある。
【0044】
残留応力発生源を作用する位置と大きさが等しくかつ反対方向に作用する物体力の対とする方法(本願請求項3の方法)によれば、式(1),(3)と同様の関係式が誘導でき、かつ、求められた残留応力発生源は力の平衡条件を満たすことになる。物体力の代わりに転位を用いる方法(本願請求項4の方法)によれば、転位が変位の食い違いであるため、力の平衡条件をはじめから満足しており、刃状転位や螺旋転位に応じて式(1),(3)に相当する関係式を容易に誘導することができる。ただし、分布させた転位を一周することにより生ずる変位の食い違いを無くすための条件式を追加し、式(1),(3)と連立させて解かねばならない。物体力の代わりに初期ひずみを用い方法(請求項5の方法)も、初期ひずみが物体内部で力の平衡条件を満足しており、やはり式(1),(3)と同様の関係式を誘導することができる。なお、従来の固有ひずみ法は、内部の初期ひずみ(残留応力を発生源となるひずみで固有ひずみと呼んでいる)を測定し、式(2)に相当する式から内部の残留応力を計算する方法であるが、本発明では測定した表面残留応力を用い式(1)、(3)を解いて、初期ひずみを同定するという本質的な違いがある。
【0045】
計算の精度を向上させるため、残留応力発生源の数より多くの表面残留応力を測定することができる(本願請求項6)。さらに残留応力発生源の数より多くの表面残留応力を測定する方法において、算出された物体表面の変位、応力と測定された変位、表面残留応力の誤差の自乗の和が最小となるように離散化方程式を解くこともできる(本願請求項7)。
【0046】
式(1),(3)において未知数は表面上の力tと変位u及び内部の残留応力発生源bである。既知の境界条件t ,u ,は未知のt、uの数と等しい。従って、表面で測定する残留応力σを未知の残留応力発生源b の数以上にすれば、式(1),(3)を解くことができ、測定点数が多くなるほど、解の精度、妥当性は向上すると考えられる。
【0047】
この場合に、すなわち未知の残留応力発生源と表面残留応力との力学的関係式(1)、(3)を離散化して解く方法において、測定結果或いは境界条件と関係式を介して残留応力発生源から予測される変位、応力の誤差の自乗の和が最少となるように離散化方程式を解くことができる。
【0048】
すなわち式(1)、(3)から誤差の自乗の和Eは次式で与えられる。
【0049】
【数1】
Figure 0003612293
Figure 0003612293
ここで簡単のため、f( )、g( )はそれぞれ表面及び領域全体からの影響を表わしているものとし、N、Mはそれぞれ表面及び領域を離散化した場合の(節点数)×(成分数)を表わしているものとする。式(5)を用いると、未知数u、t、bに対する、未知数の数と等しい数の連立一次方程式が次式から得られる。
【0050】
∂E/∂u=0、∂E/∂t=0、∂E/∂b=0 (6)
本発明の第三の処理は、第二の処理で同定した残留応力発生源を用いて、式(2)に示した原理に基づいて物体内部の残留応力を計算する処理である。
【0051】
図2に本発明による残留応力評価装置1の構成を示す。
残留応力評価装置1は、表面残留応力測定装置2、内部残留応力評価装置3、結果をグラフィック出力する残留応力分布表示装置4からなる。
【0052】
内部残留応力評価装置3は本発明による方法で物体内部の残留応力を決定する手段である。内部残留応力評価装置3は、物体表面の残留応力と測定位置、物体形状、寸法等に対する設計データを入力し、評価対象を要素分割し、本発明の手法、すなわち、表面残留応力を含む表面諸量と残留応力発生源の関係式を離散化し、離散化方程式の最小自乗法により処理、解法、結果の出力を行う。
【0053】
残留応力分布表示装置4は、詳細に検討したい位置、応力成分を指定することにより、内部残留応力評価装置3で得られた結果を視覚的に表示する装置である。
【0054】
図3に溶接継手5の内部の残留応力評価への本発明の適用例を示す。
同図に示した表面の位置6においてのみ残留応力を測定し、内部では何も測定する必要がない。表面残留応力の測定は、図2に示した本発明の表面残留応力測定装置2を用いて測定できるし、既存の方法を用いて測定することも可能である。
【0055】
図4に残留応力発生源の分布を決めるための要素分割例を示す。要素分割は内部要素分割7と表面の要素分割10からなる。
本発明では内部の要素分割7を、評価対象全体に行うのではなく、残留応力発生源があると考えられる溶接金属8とその周辺に限定して行う。
【0056】
溶接残留応力は溶接金属とその周囲が加熱膨張後、冷却収縮するために生ずるものであり、残留応力発生源は物体全体ではなく、溶接部及びその近傍に限定されている。従って、溶接残留応力の決定には、溶接金属及びその周辺に残留応力発生源の分布を限定し、溶接部近傍の表面残留応力を詳細に測定した結果を適用すればよいからである。
【0057】
図5に評価結果のグラフィック出力イメージの一例を示す。この例では、溶接金属8の中心線に沿う板幅方向の残留応力σxxを表示している。このように、注目している位置、応力成分を指定することにより、それを視覚的に表示できる。
【0058】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、評価対象の機器、構造物等に対して破壊検査をすることなく、表面の残留応力を非破壊的に測定することによって内部残留応力を成分毎に正確かつ連続的に求めることが可能になる。
【0059】
これにより、従来不可能であった実機における亀裂の進展方向とその進展速度を正確に評価できるようになる。従って、従来の機器や構造物において過度な裕度を見込んでいた安全係数を合理的なものにすることができ、機器等の構造健全性評価、亀裂の進展に関わる余寿命診断の精度、信頼性を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による物体内部の残留応力測定方法の処理の流れを示したフローチャート。
【図2】本発明の一実施形態による物体内部の残留応力測定装置の構成を示したブロック図。
【図3】溶接継手の内部の残留応力評価へ本発明による物体内部の残留応力測定方法を適用した場合の表面残留応力の測定方法例を示した図。
【図4】図3の溶接継手の内部の残留応力評価の要素分割例を示した図。
【図5】図3の溶接継手の内部の残留応力評価の残留応力分布の出力例を示した図。
【符号の説明】
1 残留応力評価装置
2 表面残留応力測定装置
3 内部残留応力評価装置
4 残留応力分布表示装置

Claims (9)

  1. 物体を要素に分割する段階と、
    物体表面の残留応力を測定する段階と、
    物体力と物体表面に作用する表面力ベクトルとそれによる変位との関係を示す第一関係式
    uj *=f1(tj *,uj *,tj,uj)+f2(bj) (1)
    tj *:既知のトラクション
    uj *:既知の変位
    bj:物体に作用する物体力
    ,u:未知境界量
    と、物体力と物体表面に作用する表面力ベクトルと変位と物体表面の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式
    σ=g1(tj *,uj *,tj,uj)+g2(bj) (3)
    σ:物体表面の応力
    tj *:既知のトラクション
    uj *:既知の変位
    bj:物体に作用する物体力
    ,u:未知境界量
    とにおいて、
    物体表面の残留応力σを未知の残留応力発生源bjの数以上測定し、残留応力発生源を物体力とし、物体表面における一致を条件として前記第一および第二関係式を連立させて未知境界量と残留応力発生源の分布を解く段階と、
    物体力と物体表面の表面力ベクトルと変位から物体内部の任意の位置における残留応力を求める段階と、を有することを特徴とする物体内部の残留応力測定方法。
  2. 物体を要素に分割する段階と、
    物体表面の残留応力を測定する段階と、
    残留応力発生源と物体表面に作用する表面力ベクトルとそれによる変位との関係を示す第一関係式
    uj *=f1(tj *,uj *,tj,uj)+f2(bj) (1)
    tj *:既知のトラクション
    uj *:既知の変位
    bj:残留応力発生源
    ,u:未知境界量
    と、残留応力発生源と物体表面に作用する表面力ベクトルと変位と物体表面の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式
    σ=g1(tj *,uj *,tj,uj)+g2(bj) (3)
    σ:物体表面の応力
    tj *:既知のトラクション
    uj *:既知の変位
    bj:残留応力発生源
    ,u:未知境界量
    とにおいて、
    物体表面の残留応力σを未知の残留応力発生源bjの数以上測定し、残留応力発生源を物体力とし、物体表面における一致を条件として前記第一および第二関係式を連立させて解くことにより、未知境界量を明らかにし物体内部の残留応力発生源の分布を同定する段階と、
    その残留応力発生源と物体表面の表面力ベクトルと変位から物体内部の任意の位置における残留応力を求める段階と、を有することを特徴とする物体内部の残留応力測定方法。
  3. 残留応力発生源を、作用する位置と大きさが等しくかつ反対方向に作用する物体力の対として残留応力発生源の分布を同定することを特徴とする請求項2に記載の物体内部の残留応力測定方法。
  4. 物体力の代わりに転位を用い、前記第一関係式と第二関係式とを連立させて解くことにより転位の分布を求め、その転位の分布から物体内部の任意の位置における残留応力を求めることを特徴とする請求項2に記載の物体内部の残留応力測定方法。
  5. 物体力の代わりに初期ひずみを用い、前記第一関係式と第二関係式とを連立させて解くことにより物体内部の初期ひずみの分布を求め、その物体内部の初期ひずみの分布から物体内部の任意の位置における残留応力を求めることを特徴とする請求項2に記載の物体内部の残留応力測定方法。
  6. 物体内部の残留応力発生源の強さと分布を決定するのに必要な表面残留応力の数より多くの表面残留応力を測定することを特徴とする請求項2に記載の物体内部の残留応力測定方法。
  7. 前記第一関係式と第二関係式を離散化して解く方法において、既知量から算出される定数と未知量から算出される量との誤差の自乗の和が最小となるように離散化方程式を解くことを特徴とする請求項6に記載の物体内部の残留応力測定方法。
  8. 残留応力発生源を溶接金属とその周辺に限定して分布させるようにしたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の物体内部の残留応力測定方法。
  9. 物体力と物体表面に作用する表面力ベクトルとそれによる変位との関係を示す第一関係式と、物体力と物体表面に作用する表面力ベクトルと変位と物体表面の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式とにおいて、残留応力発生源を物体力とし、物体表面における一致を条件として前記第一および第二関係式を連立させて解くことにより、物体内部の任意の位置における残留応力を求める内部残留応力評価手段を有することを特徴とする物体内部の残留応力測定装置。
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