JP6061767B2 - コンクリート内部の剥離探査方法およびその装置 - Google Patents

コンクリート内部の剥離探査方法およびその装置 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート構造物のコンクリート内部の剥離部の有無、範囲を探査するコンクリート内部の剥離探査方法およびその装置に関する。
コンクリート構造物は長年使用すると,コールドジョイントやひび割れなどの初期欠陥が経年変化によって部分的に剥離し、最悪の場合には不良箇所が剥落するなどの致命的な事故に至ることがある。これから、構造物を壊さずに直接検査する非破壊試験により、劣化の発生状況を定期的に点検することは、コンクリート構造物の維持管理において有効な手段となる。また、定期点検の結果、異常が認められた場合などには、様々な工法による補修・補強が実施されている。補修・補強は部材、構造物の力学的な性能を回復もしくは向上させることを目的としており、構造物の長寿命化に寄与する対策となる。しかしながら、実際の補修・補強の施工が、施工不良などにより計画・設計通りに実施されずに、内部に剥離などの欠陥が存在していれば、再劣化の要因などとなり、前述の目的を満足できないことが考えられる。これから、補修・補強の施工管理についても、非破壊試験により実施することは、コンクリート構造物の維持管理において有効な手段になる。
コンクリート構造物のコンクリート内部(コンクリート表面から深さ100mm程度)での剥離探査は、ハンマーで打撃し、耳で感知した振動音から異常の有無を判断する人為的な探査が一般的である。
また、近年は、非破壊検査装置による剥離探査技術も開発されている。
例えば、コンクリート表面を打撃し、測定した振動数と被打撃物の理想固有振動数とを比較して評価する非破壊検査方法および装置がある(例えば特許文献1参照)。
また、コンクリート構造物を打撃して、発生した信号の強さと信号の経過時間の関係についてフーリエ変換することにより、信号の強さと振動数の関係に置き換えてスペクトル化し、センサによって検知したサンプリングデータによってしきい値を設定し、しきい値と測定データとを比較することによりコンクリート構造物の良否を判別する非破壊診断方法および装置がある(例えば特許文献2参照)。
さらに、コンクリート表面を打撃して、打音の発生から減衰に至る過渡的現象のうち初期の段階における打音の強さの平均値を求め、求めた平均値とあらかじめ設定した基準値との比較により評価するコンクリート健全度評価方法および装置がある(例えば特許文献3参照)。
特開2002−340869号公報 特開2008−020425号公報 特開2003−057217号公報
特許文献1および特許文献2に示された探査技術は、コンクリート内部に剥離部が存在する場合に発生するたわみ振動と、健全な場合に発生する縦弾性波やレイリー波との周期(周波数、振動数)の相違に着目する方法であり、このような方法が一般的であるが、剥離部があっても、その発生位置や寸法によっては、周期(周波数、振動数)が一致することがある。また、特許文献3に示された探査技術は、打撃力の強弱による影響を受ける問題がある。このため、従来の探査技術は、いずれも、信頼性のある探査精度が得られない。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、コンクリート表面からの測定波形の解析方法を改善して、従来探査技術の周期の相違に着目する方法の問題を解決するとともに、打撃力の強弱による影響をなくして、探査精度の向上を図れるコンクリート内部の剥離探査方法およびその装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載された発明は、コンクリート構造物のコンクリート内部に剥離部が存在すると、たわみによるたわみ振動が発生し、コンクリート内部が健全な場合は縦弾性波やレイリー波が発生し、たわみ振動は縦弾性波やレイリー波と比較して振幅値が大きい特性を利用するコンクリート内部の剥離探査方法であって、コンクリート表面に打撃力を加えて、この打撃により発生する振動波形を測定して記録し、この測定波形を振幅値の最大値の共通化により標準化し、この標準化した測定波形の振幅値の絶対値を算出し、一定時間内での上記絶対値を加算して振幅加算値を算出し、この振幅加算値を基準値と比較して、この振幅加算値が基準値より大きくなるたわみ振動を抽出する場合に剥離部があると評価するコンクリート内部の剥離探査方法である。
請求項2に記載された発明は、コンクリート構造物のコンクリート内部に剥離部が存在すると、たわみによるたわみ振動が発生し、コンクリート内部が健全な場合は縦弾性波やレイリー波が発生し、たわみ振動は縦弾性波やレイリー波と比較して振幅値が大きい特性を利用するコンクリート内部の剥離探査装置であって、コンクリート表面を打撃する打撃具と、この打撃により発生する振動波形を測定する加速度計と、この加速度計により測定した測定波形を記録し、この測定波形を振幅値の最大値の共通化により標準化し、この標準化した測定波形の振幅値の絶対値を算出し、一定時間内での上記絶対値を加算して振幅加算値を算出し、この振幅加算値を基準値と比較して、この振幅加算値が基準値より大きくなるたわみ振動を抽出する場合に剥離部があると評価する携帯可能な探査装置本体とを具備したコンクリート内部の剥離探査装置である。
請求項1記載の発明によれば、コンクリート表面に打撃力を加えて、この打撃により発生する振動波形を測定して記録し、この測定波形を振幅値の最大値の共通化により標準化し、この標準化した測定波形の振幅値の一定時間内での絶対値を加算して振幅加算値を算出し、この振幅加算値を基準値と比較して、この振幅加算値が基準値より大きくなるたわみ振動を抽出する場合に剥離部があると評価するので、測定波形の振幅に着目したことにより、従来探査技術の周期(周波数、振動数)の相違に着目する方法の問題をなくすことができるとともに、測定波形の振幅値の最大値での標準化、振幅加算値による評価を行なうことにより、打撃力の強弱による影響をなくすことができ、これらにより探査精度の向上を図れる。さらに、人為的な剥離探査技術と比較して、客観的な評価が可能であり、データ記録により経年比較が可能である。
請求項2記載の発明によれば、打撃具と、加速度計と、携帯可能な探査装置本体とを備えた剥離探査装置により、請求項1記載のコンクリート内部の剥離探査方法を簡易に実施できる。
本発明に係るコンクリート内部の剥離探査方法およびその装置の一実施の形態を示す模式図であり、(a)は、縦弾性波およびレイリー波が発生する場合の模式図、(b)は、たわみ振動が発生する場合の模式図である。 供試体での測定振動と周波数解析結果の一例を示す特性図である。 各測定条件で振幅が最大となる周波数fmaxの比較を示すグラフである。 各測定条件での振幅加算値Ysの比較を示すグラフである。 全測定値の振幅が最大となる周波数fmaxのヒストグラムである。 全測定値の振幅加算値Ysのヒストグラムである。 全測定点での振幅が最大となる周波数fmaxの測定結果を示す分布図である。 全測定点での振幅加算値Ysの測定結果を示す分布図である。
以下、本発明を、図1乃至図8に示された測定または実験により裏付けされた実施の形態に基いて詳細に説明する。
断面修復工法、増厚工法またはコンクリート巻立工法などの、母材コンクリートに厚さ数十mmの補修・補強材料を接着させる接着工法を対象として、母材コンクリートと補修・補強材料との剥離状況を衝撃弾性波法により検査する方法を検討する。その際、補修・補強材料は、厚さ20mm〜100mm程度のポリマーセメントモルタル(以下、PCMという)を想定した。
先ず、供試体実験により、母材コンクリートとPCMとの剥離状況によって衝撃弾性波法の測定値がどのように変化するのかを確認し、検査方法や適用条件について検討した。さらに、下面増厚工法による補強後15年が経過した実橋梁で測定し、供試体実験により検討した母材コンクリートとPCMとの剥離状況の検査方法を検証した。
(測定原理および実験概要)
図1(a)は、母材コンクリートに厚さ数十mmのPCMが接着されたコンクリート構造物において、母材コンクリートとPCMとの剥離状況を検査または測定する際に用いるコンクリート内部の剥離探査装置を示し、この剥離探査装置は、コンクリート表面10を打撃する打撃具としての鋼球11と、この打撃により発生する振動波形を検出して測定する加速度計12と、この加速度計12により検出して測定した測定波形を記録し以下に説明する演算処理をして剥離部の有無を評価する携帯可能な解析機能を備えた探査装置本体13とを具備している。この探査装置本体13は、表示部13aを有するパソコン機能部13bを一体的に備えている。
そして、測定方法は、PCMの表面に加速度計12を設置し、その加速度計12に隣接する近傍位置のPCM表面を鋼球11で打撃した際に発生する振動波形を測定し、探査装置本体13が、内蔵されたソフトウェアにより、その測定波形の振幅に着目した演算処理を行なって、PCMの剥離状況を評価する。
始めに、図1の模式図により、コンクリート構造物のコンクリート内部での剥離部等の空隙の存在が、鋼球11の打撃により発生する振動へ及ぼす影響を説明する。
図1(a)に示されるように、コンクリート内部に剥離部が存在しない場合には、コンクリート内部を球面状に伝搬する縦弾性波14が、コンクリート表面10と背面等の反射面15で反射を繰り返したり、コンクリート表面10をレイリー波16が上下方向に楕円を描くように伝搬する。
これに対して、図1(b)に示されるようにコンクリート内部に剥離部17が存在し、その剥離部17までの深さに対して鋼球11の打撃による入力波長が長くなる場合には、剥離部17のたわみ18による振動(以下、たわみ振動という)が発生する。
図1(a)のコンクリート表面10と反射面15で反射を繰り返す縦弾性波14により生成される周波数は、[数1]の式に示す周波数foとなる。また、図1(b)の剥離部17の断面形状を円形とすれば、たわみ振動により生成される周波数は、[数2]の式に示す周波数fmnとなる。
Figure 0006061767
Figure 0006061767
ここで、Vpは縦弾性波14の伝搬速度、Dは縦弾性波14の反射面15までの深さ、Eは縦弾性係数、ρは密度、νはポアソン比、hは剥離部17までの深さ、aは剥離部17の半径、Rmnはたわみ振動を形成する固有値である。
以上のとおり、コンクリート内部に剥離部17等の空隙が存在するか否かによって、測定される振動の種類や周波数は変化することとなり、これらの変化に着目すれば、PCMと母材コンクリートとの剥離状況を検査できる。
そこで、先ず、供試体として厚さの異なるPCM板を製作し、コンクリート供試体と密着した場合と密着していない場合に測定される振動を比較し、衝撃弾性波法による検査方法や適用条件について検討した。
さらに、下面増厚工法による補強後15年が経過した実橋梁で測定し、供試体実験により検討した母材コンクリートとPCMとの剥離状況の検査方法を検証した。
使用したPCMは、ポリアクリル酸エステル共重合樹脂系特殊ポリマーセメントモルタルで、ポリマー/セメント比=12%、W/C=32%、標準養生における材齢28日時の圧縮強度の規格値は30.ON/mmである。衝撃弾性波法での測定に使用した加速度計12は、圧電型加速度計(感度10mV/(m/s)、周波数範囲0.3Hz〜12kHz)で、サンプリング間隔は10μsである。測定振動に対する周波数解析方法は最大エントロピー法とした。
(供試体による実験結果)
供試体による実験の概要は、長さ×幅が300mm×300mmで、厚さが20mm、52mm、102mmと異なるPCM板を供試体に用いた。これらのPCM板の中央位置を測定点として、直径10mm、15mm、20mmの鋼球11の打撃により発生する振動を測定した。この測定をPCM板がコンクリート供試体に密着していない状態と、超速硬性無機化合物を主成分とする止水材により密着している状態で実施した。コンクリート供試体は、形状が870mm×900mm×厚さ300mm、W/C=48.0%、材齢28日時の圧縮強度は、36.2N/mmである。また、止水材は硬化時間15分〜35分タイプを使用し、PCM板をコンクリート供試体に接着させてから2時間後に測定した。
(1)周波数解析による検討
各条件での測定振動と周波数解析結果の一例を図2に、全周波数解析結果において、振幅が最大となった周波数fmaxを図3に示す。
密着前の測定結果に着目すると、周波数fmaxは鋼球11の直径に関係なく、厚さ20mmのPCM板では4.7kHz、52mmでは5.0kHz、102mmでは6.4kHzとなった。密着前の周波数fmaxは、PCM板の厚さが厚くなると高くなっている。これは、[数2]の式に示した、たわみ振動による周波数は剥離部17までの深さ、つまり、PCM板の厚さによって変化することと一致した結果である。これから、密着前のPCM板では、厚さ20mm、52mm、102mmともに、鋼球11の直径10mm、15mm、20mmに関係なく、たわみ振動が測定されたものと考えられる。
次に、密着後の周波数fmaxは、鋼球11の直径に関係なく、厚さ20mm、52mm、102mmともに密着前と変化していることが分かる。これから、密着後には、たわみ18によるたわみ振動以外の振動が測定されたものと考えられる。ただし、測定された周波数fmaxは鋼球11の直径によって変化し、常に[数1]の式に示される多重反射による周波数が測定されているとは限らない。具体的には、PCM板とコンクリート供試体の両者での多重反射による周波数は、縦弾性波速度を4000m/sとすれば、[数1]の式により、厚さ20mm(合計厚さ320mm)のPCM板では6.3kHz、52mmでは5.7kHz、102mmでは5.0kHzとなるが、この周波数が測定されたのは、厚さ52mmと102mmのPCM板を鋼球11の直径20mmで測定した場合のみである。また、測定される周波数fmaxが密着の前後でどの様に変化するのかを見ると、厚さ102mm、鋼球11の直径20mmだけが密着後の周波数が低くなった。密着による周波数fmaxの変化内容は、PCM板の厚さや測定する鋼球11の直径などの条件によって異なることが分かる。
これらの原因は、図1に示したとおり、鋼球11の打撃による測定ではレイリー波16など複数の振動が発生することから、測定される周波数fmaxは測定する鋼球11の直径によって変化することによる。つまり、測定する鋼球11の直径によって、入力される振動の周波数帯域は変化するが、測定される周波数fmaxは、この入力される振動の周波数帯域と近似する振動の周波数となることによる。
以上の結果より、PCMと母材コンクリートとが密着している場合に測定される周波数fmaxを予測することは困難である。また、剥離部17が存在する場合に測定されるたわみ振動の周波数は、剥離部17までの深さや剥離部17の断面寸法によって変化する。これらから、剥離部17の形状や位置、測定する鋼球11の直径などの条件によっては、密着している場合に測定される周波数と、たわみ振動による周波数とが一致する場合も考えられる。つまり、人の耳で変状の有無を判断する打音検査では、発生する振動の周波数の変化に着目した判定がされていると考えられるが、このような周波数のみによる比較ではPCMと母材コンクリートとの剥離状況の判定を誤る場合があると考えられる。
(2)測定振動の振幅値に着目した検討
図2に示した測定振動の時間経過による減衰に着目すると、密着前後で差があることが確認される。これは、たわみ振動は他の振動と比較して、振動の伝搬範囲が狭くエネルギー損失が小さくなることによるものと考えられる。そこで各測定条件での振幅加算値Ysを[数3]の式により算出して比較した。
Figure 0006061767
ここで、y(t)は、時間tでの測定波形の振幅値であって、打撃強さによる影響を除去するため、測定時間内での最大値により標準化した相対振幅値である。
すなわち、記録した測定波形の振幅値は、打撃力の強弱により変化することから、振幅値の最大値の共通化で標準化することにより、打撃力による相違の影響を除去している。また、標準化すれば全測定点とも振幅の最大値は共通の1となり、たわみ18によるたわみ振動の発生は標準化した振幅の最大値では確認できない。そこで、標準化した測定波形の振幅値の絶対値を算出し、一定時間内での上記絶対値を加算して振幅加算値Ysを算出し、この振幅加算値Ysを基準値と比較して、この振幅加算値Ysが基準値より大きいたわみ振動の発生を抽出する方法としている。
各測定条件での振幅加算値Ysの比較を図4に示す。厚さ20mm、52mm、102mmともに、鋼球11の直径10mm、15mm、20mmに関係なく、PCM板とコンクリート供試体とが密着することにより、たわみ振動は観察されず、振幅加算値Ysが著しく小さくなることが分かる。
(1)の周波数解析による検討より、周波数解析による比較ではPCMと母材コンクリートとの剥離状況の判定結果を誤る場合が考えられる。これに対して、振幅加算値Ysは、PCM板の厚さや鋼球11の直径に関係なく、密着により著しく小さくなる変化を示した。これから、振幅加算値Ysは剥離状況の評価に有効な測定値になると考えられる。
(実構造物における実験結果)
実構造物における実験の概要を説明すると、前記供試体による測定結果より、PCMと母材コンクリートとが剥離していれば、たわみ18によるたわみ振動が発生し、周波数解析結果で振幅が最大となる周波数fmaxや振幅加算値Ysが変化することが確認された。これらを実構造物で検証するため、昭和40年代に建設され平成7年に下面増厚工法にて補強が行なわれた道路橋2橋(A橋およびB橋とする)で実験を行った。
これらのA橋およびB橋は、供試体実験と同じ材料のPCMにより約20mmの厚さで増厚している。床版部の母材コンクリートは厚さが150mm程度であり、使用コンクリートの配合等は不詳である。母材コンクリートの側面で衝撃弾性波法の伝搬時間差法により縦弾性波速度を測定すると、A橋で3887m/s、B橋で3888m/sであった。測定点は橋軸方向と横断方向に格子状に50mm間隔で設定し、A橋では5点×10点、B橋では7点×9点で測定した。これらの測定に使用した鋼球11の直径は10mmである。
(1)判定方法の検討
上記の実験結果では、周波数解析結果で振幅が最大となる周波数fmaxや振幅加算値Ysが変化することが確認されたが、定量的な判定基準値を設定することはできていない。そこで、A橋およびB橋の部材厚さ、使用したPCMの材質、PCMの厚さ、そして、縦弾性波速度に大きな差が無いことから、2橋の全113点での測定値の統計処理により判定基準を設定した。全測定値のヒストグラム(度数分布図)と平均値m、標準偏差σの算出結果を図5、図6および表1に示す。
Figure 0006061767
上記の実験結果より、振幅が最大となる周波数fmaxは密着している場合には剥離部17のたわみ振動の周波数よりも高くなることも低くなることも考えられる。また、振幅加算値Ysは密着している場合には、剥離部17が存在する場合よりも小さくなることが確認されている。これらと平均値m、標準偏差σの算出結果より、平均値mから3σ離れたデータが異常値であると考え、振幅が最大となる周波数fmaxは、8.5kHz〜17.6kHzの範囲外、振幅加算値Ysは、32.0以上であれば異常値とする判定基準値を設定した。
(2)測定結果
A橋の全測定点での周波数fmaxの測定結果および判定結果を、図7および表2に、A橋の全測定点での振幅加算値Ysの測定結果および判定結果を、図8および表3に示す。図7および表2が、周期(周波数、振動数)による比較であり、図8および表3が、測定波形の振幅に着目した比較である。
Figure 0006061767
Figure 0006061767
測定結果より、A橋は振幅が最大となる周波数fmaxでは2測定点、振幅加算値Ysでは3測定点で異常値と判定された。橋軸方向750mm、横断方向200mmの測定点では、周波数fmaxが正常値、振幅加算値Ysが異常値となり、両者による判定結果が一致しない結果となった。すなわち、周期(周波数、振動数)による比較では、橋軸方向750mm、横断方向200mmでの異常を探査できない。
判定結果が一致しない原因としては、剥離部17によるたわみ振動の周波数は、[数2]の式に示したとおり、剥離部17が発生している深さ位置や剥離部17の断面寸法によって変化することから、判定基準内の周波数と一致したことにより、周波数fmaxによる判定では異常値と判断できなかったことが考えられる。
ここで、[数1]の式と[数2]の式から、多重反射による周波数foと、たわみ振動による周波数fmnとが一致する条件は、[数4]の式の条件となる。ポアソン比νを0.2、Rmn=1となる1次たわみ振動を想定すれば、[数4]の式から[数5]の式が得られる。
Figure 0006061767
Figure 0006061767
A橋はPCMの厚さが20mmであり、剥離部17までの深さhは20mmに設定できる。
また、多重反射による反射面15までの深さDは床版部の厚さから150mm程度である。[数5]の式にこれらを代入すれば、剥離部17の半径aが23mmであれば、多重反射による周波数と、たわみ振動による周波数とが一致する。さらに、判定基準値は平均値mから±3σの周波数を正常値とすることから、たわみ振動が発生しながら異常値と判定されない条件は、剥離部17の半径aが23mmの条件よりも広い条件になる。
以上の結果より、PCMと母材コンクリートとの剥離の有無は、周波数fmaxでは正確な判定ができない場合があり、振幅加算値Ysにより判定することが妥当であると考えられる。
(まとめ)
接着工法でのPCMと母材コンクリートとの剥離状況を、非破壊検査である衝撃弾性波法により確認する方法について検討した。得られた結果を以下に示す。
(1)厚さ20mm、52mm、102mmのPCM板をコンクリート供試体と密着していない状況で変化させると、直径10mm、15mm、20mmの鋼球11の打撃により、たわみ振動が発生することが確認された。
(2)たわみ振動の周波数は、剥離部17の発生位置や断面寸法で変化する。また、PCMと母材コンクリートとが密着している場合に測定される周波数は、打撃する鋼球11の直径などの条件で変化する。これらから、PCMと母材コンクリートとが密着している場合に測定される周波数と、密着していない場合でのたわみ振動による周波数が一致することも考えられる。
(3)たわみ振動は時間経過による振幅の減衰が小さい。これから、振幅加算値Ysは、PCM板の厚さや打撃する鋼球11の直径に関係なく、PCM板とコンクリート供試体との密着によって著しく小さくなる変化を示す。
(4)上記の (2) (3)より、周波数のみによる比較ではPCMと母材コンクリートとの剥離状況の判定を誤る場合がある。これに対して、振幅加算値Ysは判定に有効な測定値になると考えられる。実際に、下面増厚工法による補強後15年が経過した実構造物で測定すると、周波数による比較では(2)に示した原因により正確な判定ができない場合があることが確認された。振幅加算値Ysにより判定することが妥当である。
以上のとおり、測定振動の振幅加算値Ysを利用することで、厚さ20mm〜100mm程度のPCMと母材コンクリートとの剥離状況を客観的に評価できることが確認された。また、本法では、測定値を装置に記録できることから、測定結果を視覚的に捉えることや、経年変化の確認などが可能となり、コンクリート構造物の維持管理において有効な検査方法となる。
以上の点をふまえて、本剥離探査方法は、コンクリート内部に剥離部17が存在すると、たわみ18によるたわみ振動が発生し、一方、コンクリート内部に剥離部17が存在しない健全な場合は、縦弾性波14やレイリー波16が発生し、たわみ振動は、縦弾性波14やレイリー波16と比較して振幅値が大きい、という原理を利用して、コンクリート表面10を鋼球11により打撃し、この打撃により発生する振動波形を加速度計12により測定して、探査装置本体13に記録し、この探査装置本体13に内蔵されたソフトウェアにより、測定波形を振幅値の最大値の共通化により標準化し、この標準化した測定波形の振幅値の絶対値を算出し、一定時間内での上記絶対値を加算して振幅加算値Ysを算出し、この振幅加算値Ysを基準値と比較して、この振幅加算値Ysが基準値より大きくなる場合に剥離部17がある、そうでない場合は剥離部17がないと評価する。
そして、測定波形の振幅に着目したことにより、従来探査技術の周期(周波数、振動数)の相違に着目する方法の問題をなくすことができるとともに、測定波形の振幅値の最大値での標準化、振幅加算値Ysによる評価を行なうことにより、打撃力の強弱による影響をなくすことができ、これらにより探査精度の向上を図れる。さらに、人為的な剥離探査技術と比較して、客観的な評価が可能であり、データ記録により経年比較が可能である。
本発明は、コンクリート構造物の施工、維持管理などに関わる事業者にとって、産業上の利用可能性がある。
10 コンクリート表面
11 打撃具としての鋼球
12 加速度計
13 探査装置本体
14 縦弾性波
16 レイリー波
17 剥離部
18 たわみ

Claims (2)

  1. コンクリート構造物のコンクリート内部に剥離部が存在すると、たわみによるたわみ振動が発生し、コンクリート内部が健全な場合は縦弾性波やレイリー波が発生し、たわみ振動は、縦弾性波やレイリー波と比較して振幅値が大きい特性を利用するコンクリート内部の剥離探査方法であって、
    コンクリート表面に打撃力を加えて、この打撃により発生する振動波形を測定して記録し、
    この測定波形を振幅値の最大値の共通化により標準化し、
    この標準化した測定波形の振幅値の絶対値を算出し、
    一定時間内での上記絶対値を加算して振幅加算値を算出し、
    この振幅加算値を基準値と比較して、この振幅加算値が基準値より大きくなるたわみ振動を抽出する場合に剥離があると評価する
    ことを特徴とするコンクリート内部の剥離探査方法。
  2. コンクリート構造物のコンクリート内部に剥離部が存在すると、たわみによるたわみ振動が発生し、コンクリート内部が健全な場合は縦弾性波やレイリー波が発生し、たわみ振動は、縦弾性波やレイリー波と比較して振幅値が大きい特性を利用するコンクリート内部の剥離探査装置であって、
    コンクリート表面を打撃する打撃具と、
    この打撃により発生する振動波形を測定する加速度計と、
    この加速度計により測定した測定波形を記録し、この測定波形を振幅値の最大値の共通化により標準化し、この標準化した測定波形の振幅値の絶対値を算出し、一定時間内での上記絶対値を加算して振幅加算値を算出し、この振幅加算値を基準値と比較して、この振幅加算値が基準値より大きくなるたわみ振動を抽出する場合に剥離があると評価する携帯可能な探査装置本体と
    を具備したことを特徴とするコンクリート内部の剥離探査装置。
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