JP2003042859A - 物体内部の残留応力測定方法およびその測定装置 - Google Patents

物体内部の残留応力測定方法およびその測定装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機器、構造物等の実構造物の内部残留応力を
簡単かつ非破壊的に評価できる物体内部の残留応力測定
方法およびその装置を提供する。 【解決手段】 物体を要素に分割する段階と、物体表面
の残留応力を測定する段階と、物体力と物体表面に作用
するトラクションとそれによる変位との関係を示す第一
関係式と、物体力と物体表面に作用するトラクションと
変位と物体表面の任意の位置における応力の関係を示す
第二関係式とにおいて、残留応力発生源を物体力とし、
物体表面における一致を条件として前記第一および第二
関係式を連立させて未知境界量と残留応力発生源の分布
を解く段階と、物体力と物体表面のトラクションと変位
から物体内部の任意の位置における残留応力を求める段
階と、を有するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接或いは機械的
な結合により構成される機器や構造物の内部に生じる残
留応力を評価する技術に係り、特に、物体表面における
力と変位の関係および物体表面にはたらく表面力ベクト
ル(「トラクション」という)と変位と応力の関係から
残留応力発生源の分布を決定し、残留応力発生源と表面
のトラクションと変位から破壊検査を行うことなく物体
内部の残留応力の分布や強さを測定できる物体内部の残
留応力測定方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に残留応力は、機器や構造物が変動
荷重の作用を受けたり、腐食環境中で使用されたりする
場合に、それらの疲労寿命やSCC(応力腐食割れ)寿
命などに影響を及ぼすことが知られている。
【0003】変動荷重下や腐食環境下で使用される機
器、構造物の寿命は、荷重や環境等の外的条件の厳しい
部位に亀裂が発生し、亀裂が成長して機器、構造物の機
能を果たせなくなるか或いは最終破壊を生じて機能を果
たせなくなるなるまでの時間である。この寿命は、大き
く分けて亀裂が発生するまでの時間と亀裂が成長する時
間からなっている。亀裂の発生及び成長の速度は一般に
は荷重条件、環境条件と材料により異なる。荷重条件や
環境条件が厳しいほど亀裂の発生および成長の時間が短
くなる。さらに、材料のほか荷重条件や環境条件が等し
い場合には、残留応力により亀裂発生の時間が短縮化さ
れることが知られている。従って、機器や構造物を寿命
予測に基づいて効率的に運用するには残留応力を正確に
把握する必要がある。
【0004】疲労亀裂やSCC亀裂は一般に表面で発生
するため、亀裂が発生するまでの時間の予測には表面の
残留応力を評価すればよい。
【0005】表面残留応力の測定法としては、残留応力
が生じている表面に評点を印し、その周囲の材料を除去
することにより解放されるひずみを評点間距離の変化と
して測定し、解放されたひずみから計算した弾性応力を
残留応力として評価する解放法がある。評点間距離の変
化の測定には光学的な方法や直接抵抗線ひずみゲージを
用いる方法などがある。また、材料を除去して残留応力
を解放させる方法にも、完全に評点の周囲を分離させる
方法や完全に分離させた場合とほぼ同程度とみなせるよ
うな部分的な解放がある。
【0006】なお、これらの方法はひずみを完全に解放
させるため機器、構造物の表面を部分的に破壊する必要
があり、解放前後の評点間距離の変化に及ぼす解放以外
の材料除去による影響を防止するため、ある程度の体積
が必要で、その中での平均的な残留応力を与えることに
なる。
【0007】このほか金属の結晶格子の弾性ひずみから
直接残留応力を評価するX線回折法があり、非破壊的な
測定が可能である。しかし、深さ方向の残留応力分布を
測定する場合は、表面層を順次除去して残留応力測定を
繰返すことになり、破壊的検査となる。
【0008】一方、亀裂が成長する時間の評価は、物体
内部の残留応力が問題となる。一般に機器や構造物では
亀裂が発生しても直ちに機能を喪失したり破壊したりす
ることはまれで、破壊までに亀裂が進展、成長するのに
長い時間を要する。この時間を利用することにより機
器、構造物をより効率的に使用することが可能となるた
め、亀裂の進展挙動の予測は重要である。前述したとお
り、亀裂は表面で発生して内部に進展、成長して行き、
その進展速度は物体内部の残留応力により変化する。引
張り残留応力下では進展速度が加速され、逆に圧縮残留
応力下では減速する。従って、亀裂の進展挙動を予測す
るには内部の残留応力を把握することが不可欠となる。
【0009】物体内部の残留応力を直接評価する唯一の
方法として中性子線回折法があり、X線回折法と同様に
金属内部の結晶格子のひずみを中性子線の回折から測定
する方法である。
【0010】しかし、金属内部まで中性子線を透過させ
るため強い線源が必要である。また、遮蔽も大掛かりに
なる。従って、現在は試験用の原子炉等が中性子源とし
て使用され、原子炉に入る試験片以外の大きな実構造物
の測定には適用が困難である。
【0011】このほか、内部の残留応力を評価する方法
としては、測定しようとする面に亀裂を導入した時に解
放されるひずみから残留応力を逆算する亀裂コンプライ
アンス法がある。しかし、この方法では予め亀裂を導入
する面を決定しておかなければならないことや、亀裂に
より破壊されることなどにより、実機への適用が難し
い。
【0012】これ以外の方法として解析的な方法があ
る。熱弾塑性解析法のようにすべて解析による方法で
は、内部の残留応力を連続的に把握可能であるが、溶接
現象をモデル化して解析しているため得られた結果の信
頼性を、実規模のモックアップ試験体に対する測定など
の何らかの方法で確認する必要がある。
【0013】このほか、表面や内部の固有ひずみを測定
して、固有ひずみにより発生する応力として残留応力を
評価する方法があるが、内部の固有ひずみを測定するに
は、破壊的に測定する必要があり、やはり実機の測定に
は適用できない。
【0014】以上のように、従来の技術では、破壊的な
測定が不可能な大きな寸法の実構造物の内部残留応力を
評価する手法が無いのが実状である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決
しようとする課題は、機器、構造物等の余寿命を把握し
て効率的に運用できることを目的として、破壊的な測定
が不可能な大きな寸法の実構造物の内部残留応力を簡単
かつ非破壊的に評価できる「物体内部の残留応力測定方
法およびその装置」を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本願請求項1に係る物体
内部の残留応力測定方法は、物体を要素に分割する段階
と、物体表面の残留応力を測定する段階と、物体力と物
体表面に作用するトラクションとそれによる変位との関
係を示す第一関係式と、物体力と物体表面に作用するト
ラクションと変位と物体表面の任意の位置における応力
の関係を示す第二関係式とにおいて、残留応力発生源を
物体力とし、物体表面における一致を条件として前記第
一および第二関係式を連立させて未知境界量と残留応力
発生源の分布を解く段階と、物体力と物体表面に作用す
るトラクションと変位から物体内部の任意の位置におけ
る残留応力を求める段階と、を有するものである。
【0017】本願請求項2は、上記方法において、まず
物体内部の残留応力発生源の分布を同定し、その残留応
力発生源から物体内部の任意の位置における残留応力を
求めるものである。
【0018】一般に応力ひずみに関する境界値問題で
は、物体表面の応力ひずみ状態に対応して内部の応力ひ
ずみ状態が一意的に決まる。一方、残留応力は外力とは
関係無く物体内部に生じているひずみ(固有ひずみと呼
ぶ)により発生するため、内部に生じている固有ひずみ
が定まれば物体表面における残留応力も一意的に定まる
ことになる。本発明では固有ひずみの代わりにそれと力
学的に等価な物体力(物体に作用する力)を用いる。
【0019】上記請求項1の発明は、上記した境界値問
題の原理を応用することにより、逆に表面の残留応力を
測定して、内部の物体力を決定し、さらにその物体力を
用いて、表面のみならず内部の任意位置における残留応
力を連続的に評価する方法である。また、請求項2の発
明は、残留応力が発生する源になっている固有ひずみな
どの内部の残留応力発生源の分布を表面の残留応力から
同定し、同定した残留応力発生源から内部の任意位置に
おける残留応力を評価する方法である。
【0020】本願請求項3に係る物体内部の残留応力測
定方法は、請求項2の方法において、残留応力発生源
を、作用する位置と大きさが等しくかつ反対方向に作用
する物体力の対として残留応力発生源の分布を同定する
ことを特徴とするものである。
【0021】上記請求項3の発明は、請求項2において
残留応力発生源として、物体力の対を用いる方法であ
る。物体力は一方向に作用するため、外力の作用しない
物体に物体力を作用させると力の平衡が取れず、第一、
第二関係式以外に物体力の平衡を確実にする第三の関係
式が必要になる。従って、作用する位置と大きさが等し
く、180°反対方向に作用する2つの物体力、すなわ
ち物体力対を作用させることにより、第一、第二関係式
と同様な式を誘導できるとともに残留応力発生源は力の
平衡条件を自動的に満たすことができる。
【0022】本願請求項4に係る物体内部の残留応力測
定方法は、請求項2の方法において、物体力の代わりに
転位を用い、前記第一関係式と第二関係式とを連立させ
て解くことにより転位の分布を求め、その転位の分布か
ら物体内部の任意の位置における残留応力を求めること
を特徴とするものである。
【0023】上記請求項4の発明は、請求項2において
残留応力発生源として転位を用いる方法である。転位は
力ではなく変位の食い違いのため、力の平衡条件ははじ
めから満足されており、刃状転位や螺旋転位に応じて第
一、第二関係式に相当する転位の変位場、応力場の式を
容易に誘導できる。ただし、転位による変位の食い違い
を無くす第三の関係式が必要になる。
【0024】本願請求項5に係る物体内部の残留応力測
定方法は、請求項2の方法において、物体力の代わりに
初期ひずみを用い、前記第一関係式と第二関係式とを連
立させて解くことにより物体内部の初期ひずみの分布を
求め、その物体内部の初期ひずみの分布から物体内部の
任意の位置における残留応力を求めることを特徴とする
ものである。
【0025】上記請求項5の発明は、請求項2において
残留応力発生源としてひずみを用いる方法である。外力
が作用することなく初めから存在するひずみのため、初
期ひずみと呼ぶ。初期ひずみも物体内部で力の平衡条件
を満足することができ、やはり第一、第二関係式と同様
な式を誘導できる。
【0026】本願請求項6に係る物体内部の残留応力測
定方法は、請求項2の方法において、物体内部の残留応
力発生源の強さと分布を決定するのに必要な表面残留応
力の数より多くの表面残留応力を測定することを特徴と
するものである。
【0027】測定点数が多くすることにより、算出され
る応力発生源の解を評価して解の精度、妥当性を向上さ
せることができる。
【0028】本願請求項7に係る物体内部の残留応力測
定方法は、請求項6の方法において、前記第一関係式と
第二関係式を離散化して解く方法において、表面で測定
された残留応力をも含む既知量から算出される定数項と
未知量から算出される量の誤差の自乗の和が最小となる
ように離散化方程式を解くことを特徴とするものであ
る。
【0029】上記請求項7の発明によれば、未知の残留
応力発生源と表面残留応力との力学的な第一関係式と第
二関係式を離散化して解く方法において、測定結果或い
は境界条件と関係式を介して残留応力発生源から予測さ
れる変位、応力の誤差の自乗の和が最少となるように離
散化方程式を解くことに相等し、誤差がもっとも少ない
残留応力発生源を求めることができる。
【0030】本願請求項8に係る物体内部の残留応力測
定方法は、請求項1〜5の方法において、残留応力発生
源を溶接金属とその周辺に限定して分布させるようにし
たことを特徴とするものである。
【0031】溶接残留応力は溶接部及びその近傍に限定
されているため、上記請求項8の方法によれば、残留応
力発生源を溶接金属及びその周辺に限定でき、少ない計
算量によって残留応力発生源を同定することができる。
【0032】本願請求項9に係る物体内部の残留応力測
定装置は、物体力と物体表面に作用するトラクションと
それによる変位との関係を示す第一関係式と、物体力と
物体表面に作用するトラクションと変位と物体表面の任
意の位置における応力の関係を示す第二関係式とにおい
て、残留応力発生源を物体力とし、物体表面における一
致を条件として前記第一および第二関係式を連立させて
未知境界量と残留応力発生源の分布を解くことにより、
物体力と物体表面に作用するトラクションと変位から物
体内部の任意の位置における残留応力を求める内部残留
応力評価手段を有することを特徴とするものである。
【0033】この装置によれば、物体力を未知の残留応
力発生源と考えて第一、第二関係式を連立させて残留応
力発生源を同定し、既知になった残留応力発生源を用い
て物体内部の任意位置における応力、すなわち残留応力
を評価することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】本発明による「物体内部の残留応
力測定方法およびその装置」の実施の形態について添付
の図1〜図5を参照して以下に説明する。
【0035】図1に、本発明による残留応力測定方法の
主要な処理の流れを示す。本発明の第一の処理は、評価
対象となる機器や物体表面の残留応力の評価である。本
発明を実施するには表面の残留応力測定は不可欠であ
る。この物体表面の残留応力の測定は、本発明による残
留応力評価装置を用いて実施できるし、既存の方法で実
施することもできる。
【0036】本発明の第二の処理は、第一の処理で決定
した表面残留応力から、物体内部における残留応力発生
源の大きさと分布を同定することである。
【0037】残留応力発生源の大きさと分布を同定する
には、物体に作用する力(物体力)と、物体表面に作用
するトラクションと変位との関係を示す第一関係式と、
物体力と物体表面に作用するトラクションと変位と物体
内部の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式
とにおいて、残留応力発生源を物体力とし、物体表面に
おける一致を条件として前記第一および第二関係式を連
立させて解くようにする。
【0038】一般に境界値問題では物体表面に作用する
既知のトラクションtj *、変位uj *、と物体に作用する物
体力bjとそれらにより表面に発生するトラクションtj
変位ujの間に関係式(1)(第一関係式)が成立する。こ
こで、t,uは未知境界量であり、物体力bも未
知である。従って、物体を要素に分割して関係式(1)
(第一関係式)を離散化することにより表面上の未知の
力tjと変位ujを求めることができる。
【0039】 uj *=f1(tj *,uj *,tj,uj)+f2(bj) (1) また、既知になった(このため諸量に*を付けて記す)表
面上の全てのトラクションtj *、変位uj *と物体力bj *
ら、物体内部の任意位置における応力σを次式のように
計算できる。
【0040】 σ=g1(tj *,uj *)+g2(bj *) (2) 滑らかな物体表面の応力σも次式(3)(第二関係式)
から計算できる。
【0041】 σ =g1(tj *,uj *,tj,uj)+g2(bj) (3) なお、トラクションは表面の外向き単位法線ベクトルn
(n1,n2,n3)と応力成分σsijと以下の関係がある。
【0042】 tisijnj(i,j=1,2,3) (4) 本発明の特徴は、上記した原理を用いるが、既知の物体
力bj *を用いて式(1)、(2)或いは(3)の順に応力評価を実
施するのではなく、物体力bj *を未知の残留応力発生源
と考えて式(1)、(3)を連立させて残留応力発生源bj *
同定し、既知になったbj *を用いて式(2)により内部の任
意位置における応力、すなわち残留応力を評価すること
にある。なお、本手法では式(3)の応力σは、表面で
測定した残留応力となる。
【0043】上記式(1)(第一関係式)と式(3)(第二関
係式)において物体力bj *の取り扱いとして、残留応力
発生源を作用する位置と大きさが等しくかつ反対方向に
作用する物体力の対とし、第一関係式と第二関係式を解
いて残留応力発生源の分布を同定する方法(本願請求項
3)と、物体力の代わりに転位を用い、第一関係式と第
二関係式とを連立させて解くことによって転位の分布を
求め、その転位の分布から物体内部の任意の位置におけ
る残留応力を求める方法(本願請求項4)と、物体力の
代わりに初期ひずみを用い、第一関係式と第二関係式と
を連立させて解くことによって物体内部の初期ひずみの
分布を求め、その物体内部の初期ひずみの分布から物体
内部の任意の位置における残留応力を求める方法(本願
請求項5)とがある。
【0044】残留応力発生源を作用する位置と大きさが
等しくかつ反対方向に作用する物体力の対とする方法
(本願請求項3の方法)によれば、式(1),(3)と同様の
関係式が誘導でき、かつ、求められた残留応力発生源は
力の平衡条件を満たすことになる。物体力の代わりに転
位を用いる方法(本願請求項4の方法)によれば、転位
が変位の食い違いであるため、力の平衡条件をはじめか
ら満足しており、刃状転位や螺旋転位に応じて式(1),
(3)に相当する関係式を容易に誘導することができる。
ただし、分布させた転位を一周することにより生ずる変
位の食い違いを無くすための条件式を追加し、式(1),
(3)と連立させて解かねばならない。物体力の代わりに
初期ひずみを用い方法(請求項5の方法)も、初期ひず
みが物体内部で力の平衡条件を満足しており、やはり式
(1),(3)と同様の関係式を誘導することができる。な
お、従来の固有ひずみ法は、内部の初期ひずみ(残留応
力を発生源となるひずみで固有ひずみと呼んでいる)を
測定し、式(2)に相当する式から内部の残留応力を計算
する方法であるが、本発明では測定した表面残留応力を
用い式(1)、(3)を解いて、初期ひずみを同定するという
本質的な違いがある。
【0045】計算の精度を向上させるため、残留応力発
生源の数より多くの表面残留応力を測定することができ
る(本願請求項6)。さらに残留応力発生源の数より多
くの表面残留応力を測定する方法において、算出された
物体表面の変位、応力と測定された変位、表面残留応力
の誤差の自乗の和が最小となるように離散化方程式を解
くこともできる(本願請求項7)。
【0046】式(1),(3)において未知数は表面上の力tj
と変位uj及び内部の残留応力発生源bjである。既知の境
界条件tj *,uj *,は未知のtj、ujの数と等しい。従って、
表面で測定する残留応力σを未知の残留応力発生源bj
*の数以上にすれば、式(1),(3)を解くことができ、測
定点数が多くなるほど、解の精度、妥当性は向上すると
考えられる。
【0047】この場合に、すなわち未知の残留応力発生
源と表面残留応力との力学的関係式(1)、(3)を離散化し
て解く方法において、測定結果或いは境界条件と関係式
を介して残留応力発生源から予測される変位、応力の誤
差の自乗の和が最少となるように離散化方程式を解くこ
とができる。
【0048】すなわち式(1)、(3)から誤差の自乗の和E
は次式で与えられる。
【0049】
【数1】 …(5) ここで簡単のため、f1( )、g1( )はそれぞれ表面及び
領域全体からの影響を表わしているものとし、N、Mはそ
れぞれ表面及び領域を離散化した場合の(節点数)×(成
分数)を表わしているものとする。式(5)を用いると、未
知数ui、ti、biに対する、未知数の数と等しい数の連立
一次方程式が次式から得られる。
【0050】 ∂E/∂ui=0、∂E/∂ti=0、∂E/∂bi=0 (6) 本発明の第三の処理は、第二の処理で同定した残留応力
発生源を用いて、式(2)に示した原理に基づいて物体内
部の残留応力を計算する処理である。
【0051】図2に本発明による残留応力評価装置1の
構成を示す。残留応力評価装置1は、表面残留応力測定
装置2、内部残留応力評価装置3、結果をグラフィック
出力する残留応力分布表示装置4からなる。
【0052】内部残留応力評価装置3は本発明による方
法で物体内部の残留応力を決定する手段である。内部残
留応力評価装置3は、物体表面の残留応力と測定位置、
物体形状、寸法等に対する設計データを入力し、評価対
象を要素分割し、本発明の手法、すなわち、表面残留応
力を含む表面諸量と残留応力発生源の関係式を離散化
し、離散化方程式の最小自乗法により処理、解法、結果
の出力を行う。
【0053】残留応力分布表示装置4は、詳細に検討し
たい位置、応力成分を指定することにより、内部残留応
力評価装置3で得られた結果を視覚的に表示する装置で
ある。
【0054】図3に溶接継手5の内部の残留応力評価へ
の本発明の適用例を示す。同図に示した表面の位置6に
おいてのみ残留応力を測定し、内部では何も測定する必
要がない。表面残留応力の測定は、図2に示した本発明
の表面残留応力測定装置2を用いて測定できるし、既存
の方法を用いて測定することも可能である。
【0055】図4に残留応力発生源の分布を決めるため
の要素分割例を示す。要素分割は内部要素分割7と表面
の要素分割10からなる。本発明では内部の要素分割7
を、評価対象全体に行うのではなく、残留応力発生源が
あると考えられる溶接金属8とその周辺に限定して行
う。
【0056】溶接残留応力は溶接金属とその周囲が加熱
膨張後、冷却収縮するために生ずるものであり、残留応
力発生源は物体全体ではなく、溶接部及びその近傍に限
定されている。従って、溶接残留応力の決定には、溶接
金属及びその周辺に残留応力発生源の分布を限定し、溶
接部近傍の表面残留応力を詳細に測定した結果を適用す
ればよいからである。
【0057】図5に評価結果のグラフィック出力イメー
ジの一例を示す。この例では、溶接金属8の中心線に沿
う板幅方向の残留応力σxxを表示している。このよう
に、注目している位置、応力成分を指定することによ
り、それを視覚的に表示できる。
【0058】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、評価対象の機器、構造物等に対して破壊検査
をすることなく、表面の残留応力を非破壊的に測定する
ことによって内部残留応力を成分毎に正確かつ連続的に
求めることが可能になる。
【0059】これにより、従来不可能であった実機にお
ける亀裂の進展方向とその進展速度を正確に評価できる
ようになる。従って、従来の機器や構造物において過度
な裕度を見込んでいた安全係数を合理的なものにするこ
とができ、機器等の構造健全性評価、亀裂の進展に関わ
る余寿命診断の精度、信頼性を大幅に向上することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による物体内部の残留応力
測定方法の処理の流れを示したフローチャート。
【図2】本発明の一実施形態による物体内部の残留応力
測定装置の構成を示したブロック図。
【図3】溶接継手の内部の残留応力評価へ本発明による
物体内部の残留応力測定方法を適用した場合の表面残留
応力の測定方法例を示した図。
【図4】図3の溶接継手の内部の残留応力評価の要素分
割例を示した図。
【図5】図3の溶接継手の内部の残留応力評価の残留応
力分布の出力例を示した図。
【符号の説明】
1 残留応力評価装置 2 表面残留応力測定装置 3 内部残留応力評価装置 4 残留応力分布表示装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菊 池 正 明 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】物体を要素に分割する段階と、 物体表面の残留応力を測定する段階と、 物体力と物体表面に作用する表面力ベクトルとそれによ
    る変位との関係を示す第一関係式と、物体力と物体表面
    に作用する表面力ベクトルと変位と物体表面の任意の位
    置における応力の関係を示す第二関係式とにおいて、残
    留応力発生源を物体力とし、物体表面における一致を条
    件として前記第一および第二関係式を連立させて未知境
    界量と残留応力発生源の分布を解く段階と、物体力と物
    体表面の表面力ベクトルと変位から物体内部の任意の位
    置における残留応力を求める段階と、を有することを特
    徴とする物体内部の残留応力測定方法。
  2. 【請求項2】物体を要素に分割する段階と、 物体表面の残留応力を測定する段階と、 残留応力発生源と物体表面に作用する表面力ベクトルと
    それによる変位との関係を示す第一関係式と、残留応力
    発生源と物体表面に作用する表面力ベクトルと変位と物
    体表面の任意の位置における応力の関係を示す第二関係
    式とにおいて、残留応力発生源を物体力とし、物体表面
    における一致を条件として前記第一および第二関係式を
    連立させて解くことにより、未知境界量を明らかにし物
    体内部の残留応力発生源の分布を同定する段階と、その
    残留応力発生源と物体表面の表面力ベクトルと変位から
    物体内部の任意の位置における残留応力を求める段階
    と、を有することを特徴とする物体内部の残留応力測定
    方法。
  3. 【請求項3】残留応力発生源を、作用する位置と大きさ
    が等しくかつ反対方向に作用する物体力の対として残留
    応力発生源の分布を同定することを特徴とする請求項2
    に記載の物体内部の残留応力測定方法。
  4. 【請求項4】物体力の代わりに転位を用い、前記第一関
    係式と第二関係式とを連立させて解くことにより転位の
    分布を求め、その転位の分布から物体内部の任意の位置
    における残留応力を求めることを特徴とする請求項2に
    記載の物体内部の残留応力測定方法。
  5. 【請求項5】物体力の代わりに初期ひずみを用い、前記
    第一関係式と第二関係式とを連立させて解くことにより
    物体内部の初期ひずみの分布を求め、その物体内部の初
    期ひずみの分布から物体内部の任意の位置における残留
    応力を求めることを特徴とする請求項2に記載の物体内
    部の残留応力測定方法。
  6. 【請求項6】物体内部の残留応力発生源の強さと分布を
    決定するのに必要な表面残留応力の数より多くの表面残
    留応力を測定することを特徴とする請求項2に記載の物
    体内部の残留応力測定方法。
  7. 【請求項7】前記第一関係式と第二関係式を離散化して
    解く方法において、既知量から算出される定数と未知量
    から算出される量との誤差の自乗の和が最小となるよう
    に離散化方程式を解くことを特徴とする請求項6に記載
    の物体内部の残留応力測定方法。
  8. 【請求項8】残留応力発生源を溶接金属とその周辺に限
    定して分布させるようにしたことを特徴とする請求項1
    ないし5のいずれかに記載の物体内部の残留応力測定方
    法。
  9. 【請求項9】物体力と物体表面に作用する表面力ベクト
    ルとそれによる変位との関係を示す第一関係式と、物体
    力と物体表面に作用する表面力ベクトルと変位と物体表
    面の任意の位置における応力の関係を示す第二関係式と
    において、残留応力発生源を物体力とし、物体表面にお
    ける一致を条件として前記第一および第二関係式を連立
    させて解くことにより、物体内部の任意の位置における
    残留応力を求める内部残留応力評価手段を有することを
    特徴とする物体内部の残留応力測定装置。
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