JP3611879B2 - カラー画像を記録した回折格子記録媒体の作成方法 - Google Patents

カラー画像を記録した回折格子記録媒体の作成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はカラー画像を記録した回折格子記録媒体の作成方法、特に、多数の画素からなるカラー画像を回折格子を用いて記録した回折格子記録媒体の作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クレジットカード、預金通帳、金券などの偽造を防止するための手段として、ホログラムシールが利用されている。また、ビデオテープや高級腕時計などの商品についても、海賊版が出回るのを防止するために、ホログラムシールが利用されている。この他、装飾用、販売促進用といった目的にも、ホログラムシールが利用されている。このようなホログラムシールには、三次元立体像ではなく二次元画像がモチーフとして用いられることが多い。
【0003】
このようなホログラムシールを作成する第1の方法は、レーザ光を用いて干渉縞を形成させる光学的なホログラム撮影法である。すなわち、二次元画像が描かれた原稿を用意し、2つに分岐させたレーザ光の一方をこの原稿に照射し、その反射光と分岐したもう一方のレーザ光とを干渉させてその干渉縞を感光材に記録するのである。こうしてホログラム原版が作成できたら、この原版を用いて、プレスの手法によりホログラムシールを量産することができる。
【0004】
ホログラムシールを作成する第2の方法は、媒体上に回折格子パターンを形成する方法である。この方法では、画像は、干渉縞パターンではなく、回折格子パターンとして記録されるため、この方法で記録された媒体に対しては、「ホログラム」という言葉を用いず、「回折格子記録媒体」という言葉を用いることにする(一般には、上述の第1の方法で作成された媒体も、この第2の方法で作成された媒体も、いずれも「ホログラムシール」と呼ばれることが多い)。最近は、電子線描画によって回折格子パターンを形成する技術が確立されてきたため、この第2の方法によれば、印刷を上回る解像度をもったパターン形成が可能である。また、第1の方法によって形成した画像に比べて、より高い輝度をもった鮮明な画像が得られる。たとえば、特開平3−39701号公報には、回折格子パターンが形成された微小なドットの集合により、所定の絵柄を表現する方法が開示されている。また、特開平6−337622号公報には、多数の画素から構成される二次元画像を、回折格子パターンが形成された微小画素の集合として表現する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した第1の方法、すなわち、光学的なホログラム撮影方法には、鮮明なホログラム像が得られないという問題がある。すなわち、光学的に形成された干渉縞は、振動に敏感であるため、振動を完全に排除した環境でのホログラム撮影を行う必要がある。ところが、かなりの精度の防振台を用いて撮影を行っても、振動を完全に排除することは困難であり、このため、干渉縞の記録像にいわゆる「ボケ」が生じ、コントラストのある明るいホログラム像が得られないのである。また、用いるレーザ光の発振波長にもゆらぎが生じるため、くも硝子状ノイズが避けられない。このように、光学的なホログラム撮影には再現性が悪いという問題があるため、同じ原版を何枚か作成することも困難になる。
【0006】
これに対して、上述した第2の方法、すなわち、電子線などによって描かれた回折格子パターンとして二次元画像を表現する方法では、鮮明な画像が得られ、しかも再現性の良い記録媒体の作成が可能である。しかしながら、この方法では、画像の一部に着色効果を与えるための手法はいくつか提案されているが、従来提案されている手法では、カラー画像をそのまま記録することはできない。いわゆる「ホログラムシール」の分野は、今後も益々需要が高まる分野であり、フルカラーの画像を鮮明に記録する技術が切望されている。
【0007】
そこで本発明は、鮮明なカラー画像を記録することができる回折格子記録媒体の作成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、多数の画素から構成されるカラー画像を、回折格子を用いて記録することにより回折格子記録媒体を作成する作成方法において、
P通りの色成分のそれぞれについてQ通りの画素値のうちのいずれかが定義された画素の集合として表現されるカラー画像を用意する段階と、
所定の画素値に対応した面積をもった格子占有領域内に、所定の色成分の波長に対応したピッチで一定方向に格子線を配置することにより回折格子を形成し、この回折格子を所定の画素領域内に配置してなる画素パターンを、P通りの色成分およびQ通りの画素値について(P×Q)通り用意する段階と、
カラー画像を構成する個々の画素に1対1に対応させて、記録媒体上にそれぞれ画素領域を定義する段階と、
カラー画像を構成する各画素について、P通りの色成分のうちのいずれか1成分のみを選択する段階と、
各画素領域に、この画素領域に対応する画素について選択された色成分およびその画素値に基づいて、用意した(P×Q)通りの画素パターンのうちのいずれか1つを割り当てる段階と、
各画素領域に割り当てられた画素パターンに応じた回折格子を、記録媒体上に形成する段階と、
を行い、
カラー画像の全領域について、選択された色成分の分布が均一になるように、各画素についての色成分の選択を行うようにしたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係るカラー画像を記録した回折格子記録媒体の作成方法において、
M行N列の行列状に画素を配列してなるカラー画像を用い、
第1行目に並んだ各画素については、第1番目〜第P番目の色成分を順に繰り返し選択し、
第i行目(i≧2)に並んだ各画素については、第(i−1)行目の選択を左右いずれかの所定方向に1画素分だけずらした選択を行うようにしたものである。
【0018】
【作 用】
本発明に係る回折格子記録媒体では、回折格子が形成された画素を平面的に配置することにより、多数の画素から構成されるカラー画像が記録される。記録媒体上には、もとのカラー画像の個々の画素に対応して多数の画素領域が定義される。この各画素領域内には、所定の回折格子が形成された画素パターンが割り付けられる。カラー画像を構成する各画素は、各色成分ごとに画素値をもっている。本発明では、各画素のもつ色成分は、回折格子のピッチにより表現される。これは、回折格子を所定方向から観測した場合、回折格子のピッチとこの観測方向に現れる回折光の波長との間の相関関係を利用したものである。一方、各画素が各色成分ごとにもつ画素値成分は、回折格子を形成する格子占有領域の面積比によって表現される。予め画素領域の大きさを決めておき、この画素領域内の広い面積部分に回折格子を形成すれば、輝度の高い(すなわち画素値の大きな)画素が形成できるし、狭い面積部分に回折格子を形成すれば、輝度の低い(すなわち画素値の小さな)画素が形成できる。
【0019】
このような原理により、ある特定の色のある特定の画素値に対応する画素パターンを決定することができる。この画素パターンには、当該画素値に対応する面積部分に、当該特定の色に対応するピッチで、回折格子が形成されている。このような画素パターンを必要な色数分、必要な画素値分、用意しておき、もとのカラー画像を構成する個々の画素に応じて、対応する画素パターンを割り当てるようにすれば、もとのカラー画像を媒体上で回折格子を用いて表現することが可能になる。
【0020】
なお、同一の画像を表現するために用いる画素パターンについては、回折格子の格子線の配置角度はほぼ同一にしておく必要がある。格子線の配置角度が異なると、回折光が得られる観測方向が異なってしまうためである。同一の画像を表現するために配置されたすべての画素パターンが、同一の観測方向から同時に観測されなければ、正しいカラー画像が認識できなくなる。逆に、異なる複数の画像を同一の媒体上に記録するには、個々の画像ごとに、格子線配置角度が異なる画素パターンを用いればよい。
【0021】
もとのカラー画像に基づいて回折格子パターンを割り当てる処理は、コンピュータによって実行することができる。また、個々の回折格子パターンは、電子線描画により媒体上に形成することができる。したがって、一度作成した回折格子パターンをデータとして保存しておき、このデータに基づいて再度回折格子記録媒体の作成作業を行えば、ほぼ同じ記録媒体を得ることができ、ほぼ完全な再現性が得られることになる。また、光学的な撮影を行う必要がないため、鮮明な画像が得られる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を図示するいくつかの実施例に基づいて説明する。
【0023】
§1. モノクロ画像を記録した回折格子記録媒体
本発明は、特開平6−337622号公報において提案したモノクロ画像についての回折格子記録媒体を、カラー画像を記録するために更に拡張したものである。そこで、はじめに、このモノクロ画像を記録した回折格子記録媒体を簡単に説明する。
【0024】
この回折格子記録媒体は、複数の画素の集合によって構成されるモノクロ画像を、媒体上に回折格子として表現したものである。ここでは、図1(a) に示すような比較的単純なモノクロ画像(英文字の「A」を示す)を回折格子記録媒体上に表現する方法について説明する。なお、以下の回折格子記録媒体の作成方法は、コンピュータを用いて実施することを前提としたものであり、これから説明する各処理は、いずれもコンピュータを用いて実行される。
【0025】
まず、図1(a) に示すモノクロ画像に対応する画像データとして、図1(b) に示すようなモノクロ画像の画素情報を用意する。ここに示す例では、7行7列に画素が配列されており、各画素は「0」または「1」のいずれかの画素値をもっており、いわゆる二値画像を示す情報となる。このような情報は、いわゆる「ラスター画像データ」と呼ばれている一般的な画像データであり、通常の作画装置によって作成することができる。あるいは、紙面上に描かれたデザイン画をスキャナ装置によって取り込むことにより、このようなモノクロ画像画素情報を用意してもかまわない。
【0026】
続いて、図2に示すように、所定線幅dの格子線を所定ピッチpおよび所定角度θで所定の格子占有領域V内に配置した画素パターンを定義する。ここで、格子占有領域Vは1つの画素を構成する領域であり、実際には非常に微小な要素になる。別言すれば、図1(a) ,(b) に示した7×7の配列における1つ1つの画素に相当した大きさのものになる。この例では、格子占有領域Vとして、縦×横が50μm×45μmの大きさの長方形を用いているが、もちろん、正方形(たとえば、50μm×50μm)や円などの他の形状のものを用いてもよい。
【0027】
この格子占有領域V内に配置される格子線Lの線幅dおよびピッチpも光の波長に準じた微小な寸法をもったものであり、この実施例では、線幅d=0.6μm、ピッチp=1.2μmである。要するに、格子線Lは回折格子としての機能を果たす線幅dおよびピッチpで配置されている必要がある。格子線Lの配置角度θは、所定の基準軸に対して設定された角度である。本明細書では、図示するような方向にX軸およびY軸をとったXY座標系を定義し、X軸を基準軸として格子線Lの配置角度θを表わすことにする。このような画素パターンも、コンピュータ上では画像データとして用意されることになる。なお、この画素パターンの画像データは、「ラスター画像データ」として用意してもよいし(この場合は、モノクロ画像を構成する1つ1つの画素が、更に微小な画素によって表現されることになる)、あるいは、格子線Lを構成する四角形の4頂点の座標値を指定することにより格子線Lの輪郭線を定義した「ベクトル画像データ」として用意してもよい。データ量を抑えるためには、後者の方が好ましい。
【0028】
次に、図1(b) に示すようなモノクロ画像の画素情報における各画素値に基づいて、図2に示すような画素パターンを所定の画素に対応づけ、各画素位置に、対応する画素パターンを配置する処理を行う。具体的には、図1(b) に示すモノクロ画像画素情報において、画素値が「1」である画素のそれぞれに図2の画素パターンを対応づける。画素値が「0」である画素には、画素パターンは対応づけられない。こうして対応づけられた画素位置に、それぞれ画素パターンを配置してゆく。いわば、図1(b) に示す配列を壁にたとえれば、この壁の中の「1」と描かれた各領域に、図2に示すようなタイルを1枚ずつ貼る作業を行うことになる。この結果、図3に示すような画像パターンが得られる。この画像パターンが最終的に回折格子記録媒体に記録されるパターンである。図1(a) に示すモノクロ画像がそのまま表現されているが、1つ1つの画素は回折格子で構成されており、回折格子としての視覚的な効果が得られることになる。
【0029】
もっとも、図2に示すような画素パターンを「タイル」として貼り付ける処理は、コンピュータ内での画像処理として行われる。この処理は、たとえば、図4に示すように、モノクロ画像全体に対応する画像の右下位置に座標原点Oをとった場合、貼り付けるべき画素位置に基づいたオフセット量a,bを演算により求め、画像データとしての貼り込み処理を行えばよい。このような演算処理の結果、図3に示すようなパターンを示す画像データが得られるので、この画像データに基づいて、図3に示すようなパターンをフィルムなどの上に物理的に出力すれば、所望の回折格子記録媒体が作成できることになる。実際には、コンピュータで作成した画像データを電子ビーム描画装置に与え、電子ビームにより図3に示すようなパターンを原版上に描画し、この原版を用いてプレスの手法で回折格子記録媒体(いわゆる「ホログラムシール」)を大量生産することになる。
【0030】
§2. 画素パターンの種類
以上、モノクロ画像を構成する各画素に、回折格子が形成された画素パターンを割り付けることにより、回折格子記録媒体を作成する手法を説明した。本発明では、モノクロ画像ではなくカラー画像を回折格子記録媒体に記録しなければならない。そのためには、複数種類の画素パターンを用意しておき、これらを選択的に割り付ける手法を採る。そこで、まず、画素パターンとして、どのような種類があるかを考えてみる。図2に示す画素パターンは、所定の角度θにより、所定の線幅dをもった格子線Lを、所定のピッチpで、所定の格子占有領域V内に配置したものである。ここで、配置角度θ、線幅d、ピッチp、格子占有領域V、といった各パラメータを変えると、それぞれ異なる画素パターンが得られる。
【0031】
たとえば、格子線の配置角度θを変えると、図5に示すような種々の画素パターンP1〜P5が得られる。この5種類の画素パターンP1〜P5では、配置角度が、θ=0°,30°,60°,90°,120°と5通りに異なっている(実際の格子線は所定の幅をもったものであるが、図示の便宜上、以下の図では格子線を単なる線で示すことにする)。この5種類の画素パターンP1〜P5では、回折光が観測される方向が異なる。すなわち、回折光は、基本的には、格子線の配置方向に対して直角な方向に得られるので、仮に、このような5種類の画素パターンP1〜P5を同一の媒体上に形成したとすると、この媒体を肉眼で観測するときの視線の角度によって、観測される画素パターンが異なることになる。たとえば、ある角度では、画素パターンP1が観測され、別な角度では、画素パターンP2が観測されることになる。もっとも、実際には散乱光も観測されるため、特定の視線角度で特定の画素パターンが完全に観測されなくなることはない。
【0032】
それでは、格子線のピッチpを変えるとどうであろう。たとえば、図6に示すように、ピッチが、p=0.8μm,0.9μm,1.0μm,1.1μm,1.2μmと5通りに異なった5種類の画素パターンP6〜P10を用意してみる。いずれも格子線の配置角度θ=0と共通である。これらの画素パターンがどのように観測されるかを検討するために、図7の側面図を参照してみる。ここでは、回折格子記録媒体10上に、画素パターンP6〜P10のいずれかが記録されているものとし、この回折格子記録媒体10の垂直上方から白色光を当てながら、この白色光の照射方向に対して角度φだけ傾いた方向から観測を行うものとする。このような回折現象については、
p・sinφ = n・λ
なるブラッグの式が知られている。ここで、pは回折格子のピッチ、φは回折角、λはこの回折角φの方向に得られる回折光の波長、nは回折光の次数である。したがって、観測方向を固定し(φが一定)、1次の回折光(n=1)だけを考慮することにすれば、この固定された観測方向において観測される回折光の波長λは、回折格子のピッチpに基づいて一義的に定まることになる。
【0033】
ここでは、より具体的な数値で考えてみる。たとえば、図7において、φ=30°となるような観測方向から観測する場合を考える。すると、sinφ=1/2となるので、1次回折光についてのn=1の場合に、上述の式は、
p・(1/2) = λ
となる。すなわち、この観測方向においては、回折格子ピッチpの(1/2)の波長をもった1次回折光が観測されることになる。これを図6に示す画素パターンP6〜P10に当てはめてみると、結局、画素パターンP6〜P10からは、それぞれ400nm,450nm,500nm,550nm,600nmの回折光が観測されることになる。 続いて、格子占有領域Vを変えた場合を考えてみる。たとえば、図8に示すように、格子占有領域Vの面積が異なる5種類の画素パターンP11〜P15を用意してみる。いずれも外枠は、この画素パターンを割り付ける対象となる画素領域を示している。画素パターンP11では、格子占有領域Vの面積が0に設定されているため、この画素パターンを画素領域に割り付けても、回折格子は全く形成されないことになる。これに対して、画素パターンP15では、格子占有領域Vの面積は外枠の画素領域の面積と等しく設定されているため、この画素パターンを画素領域に割り付ければ、画素領域全域に回折格子が形成されることになる(これまで述べてきた例では、いずれもこのように画素領域と格子占有領域Vとを一致させることが前提であった)。画素パターンV12〜V14は、これらの中間段階に対応するものである。
【0034】
この5種類の画素パターンP11〜P15では、格子線の配置角度θおよびピッチpは共通であり、回折格子が形成されている領域(格子占有領域V)の面積が異なっているだけである。このような面積の相違は、輝度の相違として観測されることは容易に理解できよう。各画素パターンから得られる回折光の総量は、回折格子が形成されている領域の面積に比例するため、より広い領域に回折格子が形成されている画素パターンほど、その画素パターンから得られる回折光の量は多くなり、輝度が高くなるのである。この他、格子線の線幅dを変えることにより、複数種類の画素パターンを用意してもよい。
【0035】
§3. 本発明の基本原理
いま、多数の画素から構成される一般的なカラー画像(ラスター画像)を考える。このカラー画像を構成する個々の画素は、所定の色成分ごとに所定の画素値をもっている。本発明の基本原理は、個々の画素の色成分を、回折格子の格子線の配置ピッチにより表現し、個々の画素の画素値成分を、回折格子が形成されている格子占有領域の面積により表現することにある。
【0036】
この原理をより具体的な例で説明しよう。一般的なカラー画像は、三原色の色成分ごとに画素値をもった画素の集合として定義される。以下、R,G,Bという三原色の各色成分ごとに、8ビットの画素値(0〜255)をもたせた画素によって、カラー画像が定義されている典型的な例について考える。既に述べたように、図6において、画素パターンP10は波長600μm、画素パターンP8は波長500nm、画素パターンP6は波長400nmの回折光を特定の観測方向(図7における回折角φ=30°の観測方向)に提示する。これらの波長は、R,G,Bなる三原色の各波長にほぼ一致する。したがって、このような観測方向における1次回折光の観測を意図している限りにおいては、Rなる色成分についてはピッチ1.2μmの画素パターンにより表現することができ、Gなる色成分についてはピッチ1.0μmの画素パターンにより表現することができ、Bなる色成分についてはピッチ0.8μmの画素パターンにより表現することができる。
【0037】
一方、8ビットの画素値(0〜255)は、図8に示すように、格子占有領域Vの面積が異なる複数の画素パターンによって表現することができる。すなわち、図8に示す5種類の画素パターンP11〜P15において、外枠となる画素領域に対する格子占有領域Vの面積比を、それぞれ、(0/255),(64/255),(128/255),(192/255),(255/255)と設定しておけば、これらの画素パターンは、それぞれ画素値0,64,128,192,255に対応することになる。実際には、図8に示す5通りの画素パターンではなく、0〜255に対応した256通りの画素パターンを用意すればよい。もっとも、面積比の異なる何通りの画素パターンを用意すべきかは、表現すべきカラー画像の各色成分ごとの階調値の数に応じて適宜設定すればよい。8ビットの階調であれば、この例のように256通り(2通り)を用意する必要があるが、4ビットの階調でよければ、16通り(2通り)を用意するだけですむ。
【0038】
結局、R,G,Bという三原色の各色成分ごとに、8ビットの画素値(0〜255)をもたせた画素によってカラー画像を表現するためには、3×256=768通りの画素パターンを用意しておけばよいことになる。図9は、このようにして用意した画素パターンのイメージを示す図である(便宜上、0〜255の256通りの画素値のうちの5通りの画素値についての画素パターンを代表として示してある)。原色R用の画素パターンR〜R255には、いずれもピッチp=1.2μmで回折格子が形成されており、原色G用の画素パターンG〜G255には、いずれもピッチp=1.0μmで回折格子が形成されており、原色B用の画素パターンB〜B255には、いずれもピッチp=0.8μmで回折格子が形成されている。また、各原色用の256通りの画素パターンは、格子占有領域の画素領域に対する面積比がそれぞれ(0/255)〜(255/255)となっている。
【0039】
このように768通りの画素パターンを用意しておけば、RGBの三原色のうちの任意の色成分についての任意の画素値に対応した画素パターンを提供することができる。なお、この768通りの画素パターンは、いずれも格子線配置角度θは同一(この例では、θ=0°)となっている。これは、特定の観測方向から観測した場合に、この768通りの画素パターンのいずれについても回折光が得られる必要があるためである。もっとも、実際には格子線配置角度θが多少異なっても、同一の観測方向から回折光が観測できるので、このように同一の観測方向から回折光が観測できるという条件の範囲内で、格子線配置角度は多少異なっていてもかまわない。
【0040】
なお、図9に示す例では、いずれも各格子占領領域の左上隅を、各画素領域の左上隅に揃えて配置しているが、必ずしもこの位置に揃えて配置する必要はなく、右下隅位置を揃えたり、中央に配置したり、自由に配置を設定することができる。
【0041】
三原色からなるカラー画像を表示する場合、画像全体に三原色の分布が均一になっていないと自然な表示を行うことができない。そこで本実施例では、図10に示すような画素領域マトリックスを定義し、このマトリックスに従って、各原色用の画素パターンを配置するようにしている。いずれも3行3列からなる画素領域マトリックスであるが、図10(a) に示す画素領域マトリックスでは、1行目に、RGBなる三原色が順番に配置され、2行目以後は、前の行の配置を右方向にずらしている。これに対し、図10(b) に示す画素領域マトリックスでは、2行目以降は、前の行の配置を左方向にずらしている。いずれの画素領域マトリックスを用いても、均一な三原色分布が得られる。
【0042】
このように画素領域マトリックスを定義したら、この画素領域マトリックスを縦横に多数配列することにより多数の画素領域を形成する。そして、個々の画素領域内に、この画素領域マトリックスに示されている原色用の画素パターンを配置するようにする。こうすれば、画像全体において、均一な三原色分布が得られることになる。図11は、単一の画素領域マトリックスに対して、それぞれ画素パターンを配置した例である。各画素領域には、種々の画素パターンが配置されているが、図10(a) に示す画素領域マトリックスの色配列に従った配置がなされている。
【0043】
画素領域マトリックスは、図10に示したものに限定されるものではなく、少なくとも用いる色の数(この例の場合は3)に対応した数の画素領域をもったマトリックスであれば、どのようなマトリックスを用意してもかまわない。ただし、各色に強弱の差ができないように、単位画素領域マトリックス内における各色の数を等しくするのが好ましく、単位画素領域マトリックス内において、各色が均一に分布しているようなマトリックスにするのが好ましい。図10に示す例では、9つの画素領域内にRGBのいずれの色も3個ずつ配置されており、かつ、均一に分布している。
【0044】
§4. 本発明による回折格子記録媒体を作成する方法
これまでの説明により、本発明の基本原理は理解できたであろう。そこで、本発明によりカラー画像を記録した回折格子記録媒体を作成する具体的な方法についての説明を以下に行うことにする。
【0045】
はじめに、カラー画像をラスターデータの形式で用意する。ここでは、図12に示すように、6行6列に配列された36個の画素からなるカラー画像を例にとって説明する。実際には、より大きな画素配列をもったカラー画像を用いるのが一般的である。このようなカラー画像は、グラフィックアプリケーションソフトウエアを用いてコンピュータにより発生させることもできるし、スキャナ装置などを用いて原画をデジタルデータとして入力することにより用意することもできる。
【0046】
図12に示すように、このカラー画像を構成する36個の画素は、それぞれ、RGBの三原色についての画素値をもっている。たとえば、1行1列目の画素は、原色Rについての画素値R(1,1)と、原色Gについての画素値G(1,1)と、原色Bについての画素値B(1,1)と、を有し、一般に、i行j列目の画素は、原色Rについての画素値R(i,j)と、原色Gについての画素値G(i,j)と、原色Bについての画素値B(i,j)と、を有する。これらの画素値は、本実施例では、いずれも8ビットで表され、0〜255のいずれかの値をもっているものとする。
【0047】
こうして用意した6行6列の画素に対応して、6行6列に配列された画素領域を用意する。そして、i行j列目の画素と、i行j列目の画素領域とを1対1に対応させ、各画素領域には、対応する画素のもつ画素値に基づいて選択された1つの画素パターンを割り付けるのである。ただし、1つの画素は、3つの色成分についてそれぞれ画素値をもっているので、各画素について、3つの色成分のうちの1つを選択する処理を行う。この処理において選択されなかった2つの色成分の画素値は、最終的に作成された回折格子記録媒体には反映されないことになる。別言すれば、3つの色成分の画素値情報のうち2つは間引きされることになる。この色成分の選択(あるいは間引き)は、カラー画像の全領域について、選択された色成分の分布が均一になるように行う。図12に示すカラー画像に対して、このような選択(あるいは間引き)を行った一例を図13に示す。二本線で抹消された画素値が間引きされた色成分であり、残った画素値が選択された色成分である。この図13に示す選択は、図10(a) に示す画素領域マトリックスに基づいて、行ったものである。すなわち、図10(a) に示す画素領域マトリックスを縦横に2つずつ配置して6行6列の配列を作り、図12に示す画素配列に対応づけ、各画素について、画素領域マトリックス内に示された色成分を選択して残すようにしたのである。その結果、図13において抹消されずに残った3つの色成分の分布は均一になっている。
【0048】
このような選択処理(間引処理)を行えば、1つの画素は選択された色成分についての1つの画素値のみをもつことになる。そこで、この6行6列の画素に対応して用意した6行6列の画素領域のそれぞれに、対応する画素のもつ画素値に応じた画素パターンを割り付けるのである。たとえば、図13に示す選択処理(間引処理)の結果、図14に示すような6行6列の画素配列が得られるので、図15に示すような6行6列の画素領域配列を用意し、各画素領域内に、たとえば、図15に示されているような特定の画素パターンを割り付けるのである。より具体的に説明すれば、図14における1行1列目の画素値R(1,1)=「64」の場合は、図9に示す768通りの画素パターンの中の画素パターンR64を選択し、この画素パターンR64を図15における1行1列目の画素領域に割り付けることになる。図15は、画素値R(1,1)=「64」、画素値G(1,2)=「192」、画素値B(1,3)=「128」、画素値R(1,4)=「0」、…、といった具体的な場合を例として示したものである。
【0049】
こうして、図15に示す36個の画素領域のすべてに、それぞれ特定の画素パターンが割り付けられれば、これら個々の画素パターンを合成したパターンが、媒体に記録すべき回折格子パターンとなる。図15に示す各色成分ごとの画素パターンの割り付け態様は、図10(a) に示す画素領域マトリックスに従ったものになっており、各色成分についての画素パターンの分布が均一になっている。このような回折格子パターンを媒体上に形成し、前提となった所定の観測方向から観測すれば、もとのカラー画像が観測されることになる。
【0050】
§5. 参考例としての回折格子記録媒体を作成する方法
上述した本発明に係る方法では、もとのカラー画像に用意された画素値のいくつかは間引きされ、最終的に作成された回折格子記録媒体には、もとのカラー画像の一部の情報しか反映されないことになり、画質が低下することになる。ここに参考例として示す方法では、もとのカラー画像がもっていたすべての情報を回折格子記録媒体上に反映し、画質の低下を防ぐことができる。
【0051】
ここでは、上述の本発明に係るの方法と同様に、図12に示すような6行6列の画素からなるカラー画像が用意されたものとして説明を行う。こうして用意した6行6列の画素に対応して、1つの画素に対して3行3列に配列された画素領域を用意する。図16は、こうして用意した画素配列を示しており、実線で示した6行6列の配列は、図12の画素配列に対応したものであり、破線で示した3行3列の配列は、1画素に対して対応づけられた9つの画素領域を示すものである。結局、図16において、36×9個の画素領域が定義されたことになる。
【0052】
続いて、この図16に示す個々の画素領域に対して、図10(a) に示す画素領域マトリックスを適用して、図12に示す各画素の各色成分ごとの画素値を対応させる。図17は、このような対応づけを行った結果を示す部分拡大図である。たとえば、1行1列目の画素に対応する9つの画素領域には、原色Rについての画素値R(1,1)と、原色Gについての画素値G(1,1)と、原色Bについての画素値B(1,1)とが、画素領域マトリックスの色配置に基づいてそれぞれ対応づけられている。3つの原色成分についての画素値は、9つの画素領域のいずれかに対応づけられ、間引かれることはない。この後は、各画素領域に対応づけられた画素値に基づいて、特定の画素パターンを割り付ければよい。たとえば、画素値R(1,1)=「64」であれば、図17において、R(1,1)と記された3か所の画素領域には、画素パターンR64が割り付けられることになる。
【0053】
この参考例として示す方法によって、前述の本発明に係る方法で作成した回折格子記録媒体と同じ寸法の記録媒体を作成しようとする場合には、本発明に係る方法で定義した画素領域の(1/9)の大きさの画素領域を定義する必要がある。このため、画素パターンも(1/9)の大きさのものを用意する必要があり、本発明に係る方法と比べて、より微細なパターン形成技術が必要になる。しかしながら、画素値の間引きは行われないため、高画質のカラー画像記録が可能になる。
【0054】
§6. より好ましい回折格子記録媒体
図18は、本発明に係る回折格子記録媒体のより好ましい一態様を示す図である。ここに示す回折格子記録媒体10には、絵柄領域11と、位置合わせマーク12と、観測角度指標領域13と、が形成されている。絵柄領域11には、これまで述べてきた方法によりカラー画像が記録されており、回折格子記録媒体としての本来の機能を果たす領域である。位置合わせマーク12は、この回折格子記録媒体10を他の印刷物と貼り込み合成する場合の位置合わせに利用する指標(いわゆるトンボ)である。観測角度指標領域13は、この回折格子記録媒体10を観測する場合に、観測者に対して正しい観測角度を示すための指標である。
【0055】
この実施例では、この観測角度指標領域13は、4つの領域M,M,M,Mから構成されている。領域Mは、各色成分ごとの画素値がR=255,G=0,B=0に設定された多数の画素によって構成されており、領域Mは、各色成分ごとの画素値がR=0,G=255,B=0に設定された多数の画素によって構成されており、領域Mは、各色成分ごとの画素値がR=0,G=0,B=255に設定された多数の画素によって構成されており、領域Mは、各色成分ごとの画素値がR=255,G=255,B=255に設定された多数の画素によって構成されている。したがって、この回折格子記録媒体10を、前提となる正しい観測方向(上述の例の場合、図7においてφ=30°の方向)から観測した場合、領域M,M,M,Mは、それぞれ赤,緑,青,白の色を提示する領域として観測されることになる。
【0056】
結局、この回折格子記録媒体10の絵柄領域11に記録されているカラー画像を、作成者が意図している本来の正しいカラー画像として観測するには、領域M,M,M,Mが、それぞれ赤,緑,青,白の色として見えるような観測方向から観測すればよいことになる。したがって、この回折格子記録媒体10を手にした観測者は、回折格子記録媒体10の角度を試行錯誤でいろいろ変化させながら、観測角度指標領域13が赤,緑,青,白の4領域に見えるような観測角度を探し、この観測角度から絵柄領域11に記録されたカラー画像を観測すればよいことになる。もっとも、これはカラー画像を正しい色合いで鑑賞するための観測方法であり、このような特定の観測角度以外から観測した場合も、カラー画像の観測は可能であり(正しい色合いにはならないが)、偽造防止のためのセキュリティチェックを行う上で、必ずしも、このような特定の観測方向から観測する必要があるわけではない。したがって、観測角度指標領域13は、本発明の回折格子記録媒体にとって必須の構成要素ではない。
【0057】
§7. 複数のカラー画像を記録する実施例
これまでの実施例は、いずれも単一のカラー画像を記録した回折格子記録媒体についてのものであった。ここでは、複数のカラー画像を1枚の回折格子記録媒体に重畳して記録するための手法について説明する。
【0058】
上述した実施例では、図9に示すように、768通りの画素パターンを用意し、これらを適宜選択しながら各画素領域に割り付けていた。この768通りの画素パターンは、格子線の配置ピッチpや格子占有領域Vの面積がそれぞれ異なるが、格子線の配置角度θは一定で、この例の場合、すべての画素パターンについてθ=0°(図の水平方向)に設定されている。
【0059】
複数のカラー画像を記録する場合には、各カラー画像ごとに、格子線の配置角度が異なった画素パターンを用意すればよい。たとえば、第1のカラー画像を記録するために、図9に示すような格子線配置角度θ=0°の768通りの画素パターンを用意し、第2のカラー画像を記録するために、格子線配置角度θ=45°の768通りの画素パターンを用意すれば、第1のカラー画像は配置角度θ=0°の回折格子を用いて記録され、第2のカラー画像は配置角度θ=45°の回折格子を用いて記録されることになる。したがって、同一の媒体上に第1のカラー画像と第2のカラー画像とが重畳して記録されていたとしても、第1の観測方向から観測すれば第1のカラー画像が観測され、第2の観測方向から観測すれば第2のカラー画像が観測されるようになる。
【0060】
ところで、同一の媒体上に2つのカラー画像を重畳して記録するといっても、2つの回折格子自体が重なってしまっては、所期の回折現象を得ることができなくなる。少なくとも格子占有領域は空間的に重ならないように配置しなければならない。このような配置は、たとえば、図19に示すような配置方法を採れば実現できる。この図19に示す例では、3行3列に配列された各画素領域について、左上部分に第1のカラー画像のための格子占有領域(格子線配置角度θ=0°)が配置され、右下部分に第2のカラー画像のための格子占有領域(格子線配置角度θ=45°)が配置されている。いわば、画素領域内の格子占有領域以外の空領域を有効利用した配置方法である。ただし、この配置方法では、画素値の自由度は若干阻害される。すなわち、2つのカラー画像において、同じ位置の画素の同じ色成分の画素値の和が255を越えると、左上部分に配置した格子占有領域と右下部分に配置した格子占有領域とが、部分的に重なり合ってしまうために問題が生じる。したがって、このような問題が生じないように、2つのカラー画像の各画素の画素値をうまく設定してやる必要がある。
【0061】
別な方法として、2つのカラー画像についての画素領域を完全に別個独立に定義してやる方法がある。すなわち、上述の方法では、図20(a) に示すように、同一の画素領域の左上部分に第1の画像Iを割り当て、右下部分に第2の画像IIを割り当てていたが、この方法では、図20(b) に示すように、1つの画素領域を更に4つに分割し、右上および左下の画素領域には第1のカラー画像Iを割り当て、左下および右上の画素領域には第2のカラー画像IIを割り当てるのである。この場合、もとのカラー画像の1画素に対して、図21に示すような6行6列の画素領域が定義され、個々の画素領域に所定の画素パターンが割り付けられることになる。ここで、RI,GI,BIと記した画素領域には、第1のカラー画像Iを表現するための画素パターン(格子線配置角度θ=0°)が割り付けられ、RII,GII,BIIと記した画素領域には、第2のカラー画像IIを表現するための画素パターン(格子線配置角度θ=45°)が割り付けられることになる。この方法では、2つのカラー画像の各画素の画素値についての制約はないが、回折格子が形成されていない空領域の有効利用ができないため、前述した方法に比べて、全体的な画像の輝度は低下する。
【0062】
§8. 本発明に係る回折格子記録媒体を作成する装置
最後に、本発明に係る回折格子記録媒体を作成する装置の一例を、図22に示すブロック図に基づいて簡単に説明しておく。カラー画像生成部1は、グラフィックスアプリケーションソフトウエアなどを搭載したコンピュータによって構成され、RGBの三原色の画素値が定義された多数の画素の集合としてカラー画像を作成できる。一方、カラー画像入力部2は、スキャナ装置などにより構成され、紙面上に描かれたカラー原稿などから、カラー画像を入力する機能を有する。いずれの装置を用いた場合であっても、結果的に、256階調のRGB画素データが用意できることになる。
【0063】
画素パターンファイル3は、たとえば、図9に示すような768通りの画素パターンをデータとして記憶するファイルであり、コンピュータ用のメモリや磁気記録装置によって構成されている。もっとも、このような画素パターンのデータは、必ずしも実際のパターンデータとして用意しておく必要はなく、必要な画素パターンを適宜発生できるような計算式として用意しておいてもよい。
【0064】
パターン合成部4は、カラー画像生成部1あるいはカラー画像入力部2から与えられた256階調のRGB画素データに基づいて、所定の大きさの画素領域の配列を定義し、各画素領域に対して、画素パターンファイル3内に用意された画素パターンを選択的に割り付ける処理を行う。この割り付け処理は、§7までに述べたとおりであり、このパターン合成部4も、コンピュータによって構成される。こうして、パターン合成部4からは、回折格子パターンデータが出力される。
【0065】
こうして出力された回折格子パターンデータは、データフォーマット変換装置5を介して、電子ビーム描画装置6に与えられる。データフォーマット変換装置5は、パターン合成部4で作成された回折格子パターンデータのデータフォーマットを、電子ビーム描画装置6が取り扱えるデータフォーマットに変換する処理を行う装置である。電子ビーム描画装置6は、半導体マスクなどの作成に利用されている一般的な描画装置であり、電子ビームを用いて回折格子パターンを所定の媒体上に描画し、回折格子原版7を作成する。この回折格子原版7を用いて、プレス装置8により印刷の手法により、多数の回折格子記録媒体9を作成することができる。
【0066】
このように、電子ビームを用いると、非常に高精度に回折格子を描画することができ、干渉縞により作成したホログラムに比べて、鮮明で輝度の高い画像を記録することができる。また、解像度の点においても、通常の印刷では16画素/mm程度が標準であるが、本発明に係る回折格子記録媒体では、20画素/mm程度の解像度が得られ、カラー写真なみの画質を得ることができる。更に、RGBの三原色による加色混合によりカラー画像を表現するという点では、カラーディスプレイなどと同様であるが、本発明に係る回折格子記録媒体では、三原色が回折格子で分光された光であるため、カラーディスプレイで使用している蛍光体から得られる三原色に比べて単色性にすぐれ、色再現が鮮明になる。したがって、商品パッケージやラベルなどに利用すると、大きな宣伝効果が期待できる。また、フルカラーでの画像表現が可能になるため、写真と文字とを同一の媒体上に記録することができ、更に、ロゴや絵柄を光った態様で表現することもできる。このため、店頭陳列時に高いアピール効果も得られる。
【0067】
もちろん、セキュリティを確保するための偽造防止用シールとしての効果も大きい。すなわち、電子ビームによる描画工程は、高度の技術と設備が必要になるため、レーザを利用して干渉縞を記録する方法に比べて、偽造は非常に困難になる。
【0068】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係る回折格子記録媒体の作成方法では、カラー画像を構成する各画素の色成分の一部を間引き、残った1つの色成分からなる画素を、それぞれ所定の回折格子が形成された画素パターンによって記録し、画素の色成分については、回折格子のピッチにより表現し、画素値成分については、回折格子を形成する格子占有領域の面積によって表現するようにしたため、鮮明なカラー画像を記録することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本原理を説明するためのモノクロ画像のパターンおよび画素情報の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る回折格子記録媒体に用いられる画素パターンの基本構成を示す図である。
【図3】図1に示すモノクロ画像を図2に示す画素パターンを用いて記録した回折格子記録媒体を示す頭である。
【図4】図3に示す回折格子記録媒体を作成するための貼り込み処理の概念を示す図である。
【図5】格子線配置角度θを変えることにより得られる種々の画素パターンの例を示す図である。
【図6】格子線配置ピッチpを変えることにより得られる種々の画素パターンの例を示す図である。
【図7】回折格子から得られる回折光の観測方向と波長との関係を説明するための図である。
【図8】格子占有領域Vの面積を変えることにより得られる種々の画素パターンの例を示す図である。
【図9】本発明に係る回折格子記録媒体を作成するために用意した各原色RGBごとの画素パターンの一例を示す図である。
【図10】本発明に係る回折格子記録媒体を作成するために利用する画素領域マトリックスの一例を示す図である。
【図11】図10(a) に示す画素領域マトリックスに基づいて、実際に画素パターンを割り付けた状態を示す図である。
【図12】本発明に係る回折格子記録媒体において表現されるもとのカラー画像の画素配列および各原色ごとの画素値の一例を示す図である。
【図13】図12に示す各画素値に対して、間引処理を実行した後の状態を示す図である。
【図14】図13に示す間引処理によって残った画素値の配列を示す図である。
【図15】図14に示す画素値配列に基づいて、各画素領域に所定の画素パターンを割り付けた一例を示す図である。
【図16】図12に示す各画素について、それぞれ3行3列からなる9つの画素領域を定義した状態を示す図である。
【図17】図16において定義した各画素領域に、所定の画素値を対応づけた状態を示す図である。
【図18】本発明に係る回折格子記録媒体のより好ましい一態様を示す図である。
【図19】同一の回折格子記録媒体上に2つのカラー画像を重複記録するための第1の手法を示す図である。
【図20】同一の回折格子記録媒体上に2つのカラー画像を重複記録するための2つの手法の原理を示す図である。
【図21】同一の回折格子記録媒体上に2つのカラー画像を重複記録するための第2の手法を示す図である。
【図22】本発明に係る回折格子記録媒体を作成する装置の基本構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…カラー画像生成部
2…カラー画像入力部
3…画素パターンファイル
4…パターン合成部
5…データフォーマット変換装置
6…電子ビーム描画装置
7…回折格子原版
8…プレス装置
9…回折格子記録媒体
10…回折格子記録媒体
11…絵柄領域
12…位置合わせマーク
13…観測角度指標領域
P1〜P15…画素パターン
V…格子占有領域

Claims (2)

  1. 多数の画素から構成されるカラー画像を、回折格子を用いて記録することにより、回折格子記録媒体を作成する方法であって、
    P通りの色成分のそれぞれについてQ通りの画素値のうちのいずれかが定義された画素の集合として表現されるカラー画像を用意する段階と、
    所定の画素値に対応した面積をもった格子占有領域内に、所定の色成分の波長に対応したピッチで一定方向に格子線を配置することにより回折格子を形成し、この回折格子を所定の画素領域内に配置してなる画素パターンを、P通りの色成分およびQ通りの画素値について(P×Q)通り用意する段階と、
    前記カラー画像を構成する個々の画素に1対1に対応させて、記録媒体上にそれぞれ画素領域を定義する段階と、
    前記カラー画像を構成する各画素について、P通りの色成分のうちのいずれか1成分のみを選択する段階と、
    前記各画素領域に、この画素領域に対応する画素について選択された色成分およびその画素値に基づいて、前記(P×Q)通りの画素パターンのうちのいずれか1つを割り当てる段階と、
    各画素領域に割り当てられた画素パターンに応じた回折格子を、記録媒体上に形成する段階と、
    を有し、
    前記カラー画像の全領域について、選択された色成分の分布が均一になるように、各画素についての色成分の選択を行うようにしたことを特徴とするカラー画像を記録した回折格子記録媒体の作成方法。
  2. 請求項1に記載の作成方法において、
    M行N列の行列状に画素を配列してなるカラー画像を用い、
    第1行目に並んだ各画素については、第1番目〜第P番目の色成分を順に繰り返し選択し、
    第i行目(i≧2)に並んだ各画素については、第(i−1)行目の選択を左右いずれかの所定方向に1画素分だけずらした選択を行うようにしたことを特徴とするカラー画像を記録した回折格子記録媒体の作成方法。
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