JP3610690B2 - 交流アーク炉の電極昇降制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、受電設備から直列リアクトルと炉用変圧器とを介し、該変圧器の二次側に接続された電極を昇降させることにより炉内のスクラップを溶解させる交流アーク炉の電極昇降制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は、この種の交流アーク炉の構成を示す回路図である。
図2において、1は直列リアクトル、2は炉用遮断器、3は負荷時タップ切換器を具備した炉用変圧器、4は人造黒鉛などから構成される電極、5は炉体、6は電極4に流れるアーク電流を検出する計器用変流器(CT),整流器などからなる電流検出器、7は電極4と炉体5との間のアーク電圧を検出する計器用変圧器(PT),整流器などからなる電圧検出器、8は電極4を昇降させる電極昇降装置、10は電極昇降装置8を構成する電動機に電極4の昇降制御に必要な電力を供給する電極昇降制御装置である。
【0003】
図3は、図2に示した電極昇降制御装置10の詳細回路構成図である。
この電極昇降制御装置10は、電圧検出器7による電極4と炉体5間のアーク電圧の検出値(整流値)と炉用変圧器3の選択されたタップ電圧に基づくタップ電圧補正定数とを乗算演算する乗算演算器11と、電流検出器6による電極4のアーク電流の検出値(整流値)とこの検出値のレベル整合定数とを乗算演算する乗算演算器12と、乗算演算器11の出力値と直列リアクトル1のインダクタンス値に基づくリアクトル補正定数とを加算演算する加算演算器13と、加算演算器13の出力値と電極4のアーク電流の設定値に基づく値とを乗算演算する乗算演算器14と、乗算演算器14の出力値と乗算演算器12の出力値との偏差を演算する加算演算器15と、演算された偏差に基づいて電極4の昇降を制御する昇降制御回路16とから構成されている。
【0004】
図2,図3に示した交流アーク炉の電極昇降制御装置10の動作を以下に説明する。
交流アーク炉の電極昇降制御(アーク長制御)はアーク電圧とアーク電流とを入力信号として、この比が一定となるように制御するものでインピーダンス制御と呼ばれる。このために電極昇降制御装置10では入力したアーク電圧に基づく値を設定値として、入力したアーク電流に基づく値を検出値とし、この検出値が前記設定値より大きくなったとき、すなわちインピーダンスが小さくなったときには電極4を上昇させ、逆に前記検出値が前記設定値より小さくなったとき、すなわちインピーダンスが大きくなったときには電極4を下降させる。このときの上昇または下降の速度は前記設定値と検出値との偏差が大きいときは急速に電極4を上昇または下降させ、前記偏差が小さいときには緩やかに電極4を上昇または下降させる制御を行っている。
【0005】
図3において、乗算演算器12のもう一方の入力であるレベル整合定数は、前述の検出値として、前述の設定値との偏差を求める際の整合を計るための定数であり、また、乗算演算器11のもう一方の入力であるタップ電圧補正定数は、炉用変圧器3のタップ切換器により選択されたいずれのタップでも電極4と炉体5との間のアーク電圧を一定に保ち変動をしないようにするための定数である。
【0006】
また、直列リアクトル1はこの交流アーク炉におけるフリッカの抑制およびアークを安定させるために設置され、受電設備の電圧から直列リアクトル1での電圧降下分を引いた電圧が炉用変圧器3に加わるため、このアーク炉に投入される電力を所望の値にする目的で、図3に示す加算演算器13では乗算演算器11の出力値と、リアクトル補正定数としてこの交流アーク炉における炉用変圧器3の定格容量時の前記電圧降下分に相当する定数とを加算するようにしている。
【0007】
さらに乗算演算器14では加算演算器13の出力値と、指令された電流設定に基づく値(0〜100%)とを乗算して電流設定値として出力し、乗算演算器12の出力である電流検出値との偏差を加算演算器15で求め、この偏差に基づいて昇降制御回路16では電極昇降装置8を構成する電動機に前述の電極4のアーク長制御に必要な電力を供給する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来の交流アーク炉の電極昇降制御装置によると、リアクトル補正定数としてこの交流アーク炉における炉用変圧器の定格容量時の前記電圧降下分に相当する定数としているため、指令された電流設定が100%以下または炉用変圧器のタップ電圧が定格値以下で操業しているとき、すなわち炉用変圧器が定格容量以下での動作を計画している時であっても、このリアクトル補正定数では値が大きすぎて実際のアーク電流が定格値を越えて流れる恐れがあり、その結果、この炉用変圧器が過負荷になる恐れがあった。
【0009】
この発明の目的は、上記問題点を解決する交流アーク炉の電極制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明による制御装置は、直列リアクトルを介して受電設備に接続されたと炉用変圧器の二次側に設けられた電極を昇降させることにより炉内のスクラップを溶解させる交流アーク炉の電極昇降制御装置において、
前記電極のアーク電圧の検出値と前記炉用変圧器の選択されたタップ電圧に基づくタップ電圧補正定数とを乗算演算する第1乗算演算器と、前記電極のアーク電流の検出値と該検出値のレベル整合定数とを乗算演算する第2乗算演算器と、該第2乗算演算器の出力値と前記炉用変圧器の選択されたタップ電圧に基づく値とを乗算演算する第3乗算演算器と、該第3乗算演算器の出力値を前記炉用変圧器の定格容量値で除算演算する除算演算器と、該除算演算器の出力値と前記直列リアクトルのインダクタンス値に基づくリアクトル補正定数とを乗算演算する第4乗算演算器と、前記第1乗算演算器の出力値と第4乗算演算器の出力値とを加算演算する第1加算演算器と、該第1加算演算器の出力値と前記電極のアーク電流の設定値に基づく値とを乗算演算する第5乗算演算器と、該第5乗算演算器の出力値と前記第2乗算演算器の出力値との偏差を演算する第2加算演算器と、前記演算された偏差に基づいて前記電極の昇降を制御する昇降制御回路とを備えたものとする。
【0012】
この発明によれば、交流アーク炉の操業状態に応じた新たなリアクトル補正定数とすることにより、実際のアーク電流を該交流アーク炉の定格値以内で操業でき、その結果、前記炉用変圧器も定格容量以下の状態で操業することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の実施例を示し、図2に示した交流アーク炉の電極昇降制御装置20の詳細回路構成図であって、図3に示した従来の電極昇降制御装置10と同一機能を有するものには同一符号を付している。
図1において、この電極昇降制御装置20は電圧検出器7による電極4と炉体5間のアーク電圧の検出値(整流値)と炉用変圧器3の選択されたタップ電圧に基づくタップ電圧補正定数とを乗算演算する乗算演算器11と、電流検出器6による電極4のアーク電流の検出値(整流値)とこの検出値のレベル整合定数とを乗算演算する乗算演算器12と、乗算演算器12の出力値と炉用変圧器3の選択されたタップ電圧に基づく値とを乗算演算する乗算演算器21と、乗算演算器21の出力値を炉用変圧器3の定格容量値で除算演算する除算演算器22と、除算演算器22の出力値と直列リアクトル1のインダクタンス値に基づくリアクトル補正定数とを乗算演算する乗算演算器23と、乗算演算器11の出力値と乗算演算器23の出力値とを加算演算する加算演算器13と、加算演算器13の出力値と電極4のアーク電流の設定値に基づく値とを乗算演算する乗算演算器14と、乗算演算器14の出力値と乗算演算器12の出力値との偏差を演算する加算演算器15と、演算された偏差に基づいて電極4の昇降を制御する昇降制御回路16とから構成されている。
【0014】
すなわちこの電極昇降制御装置20には、従来の電極昇降制御装置10に対して乗算演算器21,23と除算演算器22とが付加されており、以下にこの部分を中心に交流アーク炉の電極昇降制御装置20の動作を説明する。
この交流アーク炉を操業しているときに、乗算演算器12の出力値すなわちアーク電流の検出値に相当する値と、炉用変圧器3の選択されたタップ電圧に基づく値とを乗算演算器21で乗算演算した値は、炉用変圧器3の操業時の実使用容量に相当する値となる。
【0015】
この実使用容量を炉用変圧器3の定格容量で除算演算する除算演算器22の出力値に、炉用変圧器3の定格容量時の直列リアクトル1の電圧降下分に相当するリアクトル補正定数を乗算演算器23で乗算演算すると、この乗算演算値は直列リアクトル1の操業時の実際の電圧降下分に相当する値となる。
すなわち加算演算器13では乗算演算器11の出力値と、乗算演算器23の出力である直列リアクトル1の操業時の実際の電圧降下分に相当する値とを加算し、この加算値を基準に指令された電流設定に基づく値(0〜100%)を乗じた値を電流設定値とし、乗算演算器12の出力である電流検出値との偏差を加算演算器15で求め、この偏差に基づいて昇降制御回路16では電極昇降装置8を構成する電動機に前述の電極4のアーク長制御に必要な電力を供給することにより電極4のアーク電流を、この交流アーク炉に投入される電力を炉用変圧器3の定格容量以下の状態を維持しつつ、定格値以下の所望の値にすることができる。
【0016】
【発明の効果】
この発明によれば、炉用変圧器の定格容量時の直列リアクトルの電圧降下分に相当するリアクトル補正定数に、この交流アーク炉の操業状態に応じた値を乗算演算し、これを操業時の実際の電圧降下分に相当する新たなリアクトル補正定数とすることにより、実際のアーク電流を定格値以内でこの交流アーク炉を操業でき、その結果、常に炉用変圧器も定格容量以下の状態で操業することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示す交流アーク炉の電極昇降制御装置の回路図
【図2】交流アーク炉の構成図
【図3】従来例を示す交流アーク炉の電極昇降制御装置の回路図
【符号の説明】
1…直列リアクトル、2…炉用遮断器、3…炉用変圧器、4…電極、5…炉体、6…電流検出器、7…電圧検出器、8…電極昇降装置、10…電極昇降制御装置、11,12…乗算演算器、13…加算演算器、14…乗算演算器、15…加算演算器、16…昇降制御回路、20…電極昇降制御装置、21…乗算演算器、22…除算演算器、23…乗算演算器。

Claims (1)

  1. 直列リアクトルを介して受電設備に接続された炉用変圧器の二次側に設けられた電極を昇降させることにより炉内のスクラップを溶解させる交流アーク炉の電極昇降制御装置において、前記電極のアーク電圧の検出値と前記炉用変圧器の選択されたタップ電圧に基づくタップ電圧補正定数とを乗算演算する第1乗算演算器と、前記電極のアーク電流の検出値と該検出値のレベル整合定数とを乗算演算する第2乗算演算器と、該第2乗算演算器の出力値と前記炉用変圧器の選択されたタップ電圧に基づく値とを乗算演算する第3乗算演算器と、該第3乗算演算器の出力値を前記炉用変圧器の定格容量値で除算演算する除算演算器と、該除算演算器の出力値と前記直列リアクトルのインダクタンス値に基づくリアクトル補正定数とを乗算演算する第4乗算演算器と、前記第1乗算演算器の出力値と第4乗算演算器の出力値とを加算演算する第1加算演算器と、該第1加算演算器の出力値と前記電極のアーク電流の設定値に基づく値とを乗算演算する第5乗算演算器と、該第5乗算演算器の出力値と前記第2乗算演算器の出力値との偏差を演算する第2加算演算器と、前記演算された偏差に基づいて前記電極の昇降を制御する昇降制御回路とを備えたことを特徴とする交流アーク炉の電極昇降制御装置。
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