JP3610252B2 - 記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体に塗布されたインクを発色あるいは定着させるための定着器を備えた記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録ヘッドのノズルからインクを吐出して記録媒体に画像記録を行うインクジェット記録装置は、構造が簡単で小型かつ安価なことから、近年では多方面で広く使われている。しかし、インクジェット記録装置は、インク滴を紙等の記録媒体の表面に塗布するだけの構造であるので、水分による画像の流れや紫外線による退色等によって記録後に画像が劣化してしまうため、インクジェット記録装置によって記録された記録媒体は長期間の保存に適さないという欠点があった。
【0003】
そこで、記録媒体の表面に多孔質樹脂層を設け、記録時すなわちインク塗布時にはその多孔質樹脂を通過させて吸収層にインクを吸収させ、その後に、定着器を用いて多孔質樹脂を加熱溶融し、さらにその樹脂を硬化させて記録用紙の表面に透明で空気を遮断するような被膜(ラミネート層)を形成し、記録画像の長期保存を可能にする方法が実用化されている。
【0004】
ところが、インクジェット記録装置においては、画像記録精度は記録媒体の送り精度に大きく依存しているため、画像記録動作中の記録媒体を記録動作と同時に定着器に通すことは、記録媒体の送り精度の低下、ひいては画像記録精度の低下を招くおそれがある。
【0005】
同様に、インクシートから受像シートに染料を転写して画像を記録した後に加熱し、キレート処理を行う昇華型プリンタ、あるいはトナーを紙に塗布して画像を記録した後に加熱定着する記録装置、あるいは記録紙に感光材料もしくは発色物質を塗布し、レーザーや発熱体等で化学変化を起こして画像を記録する記録装置においても、画像記録精度は記録媒体の送り精度に大きく依存する。
【0006】
そこで、従来では、画像記録後に、記録媒体に搬送力を加えつつ記録媒体を加熱する場合には、記録媒体を記録装置から取り出し、外部の定着器を用いて画像の定着動作を行ったり、あるいは、画像記録が終わるまで記録媒体を一時的に貯蔵する記録媒体貯蔵部を設け、画像記録動作と画像定着動作とを分けて行っていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、画像記録動作と画像定着動作とを分けて行うと、画像記録動作が終了するまで定着動作を開始できなくなるため、作業効率が悪くなるという欠点があった。さらに、記録媒体貯蔵部を設ける場合には、記録装置が大型化してしまうという欠点があった。
【0008】
そこで本発明は、作業効率を低下させず、かつ装置を大型化させることなく、画像記録動作および画像定着動作を行うことができる記録装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の記録装置は、記録媒体に画像を記録する記録手段および前記記録媒体を搬送する搬送手段を備えた記録部と、前記画像が記録された記録媒体を搬送しつつ、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着器とを有する記録装置であって、前記記録部と前記定着器との間では、前記記録媒体がたるみを持った状態で搬送されるように構成されており、前記記録部と前記定着器との間における前記記録媒体の搬送経路には、前記記録媒体をたるみを持たせた状態で支持する記録媒体支持部材が設けられており、前記記録装置は前記記録手段がインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置であり、前記記録手段の記録パス数が変更されることに伴って前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度が変更される場合に、前記定着器における前記記録媒体の定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の変更後の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の記録装置は、記録媒体に画像を記録する記録手段および前記記録媒体を搬送する搬送手段を備えた記録部と、前記画像が記録された記録媒体を搬送しつつ、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着器とを有する記録装置であって、前記記録部と前記定着器との間では、前記記録媒体がたるみを持った状態で搬送されるように構成されており、前記記録部と前記定着器との間における前記記録媒体の搬送経路には、前記記録媒体をたるみを持たせた状態で支持する記録媒体支持部材が設けられており、前記記録装置は前記記録手段がインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置であり、前記記録手段の駆動周波数が変更されることに伴って前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度が変更される場合に、前記定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の変更後の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記のように構成された本発明の記録装置によれば、記録媒体が定着器の搬送動作によって一時的に引っ張られた場合でも、記録部と定着器との間で記録媒体が突っ張ることはなく、定着器による引っ張り力によって記録部の搬送手段による記録媒体の搬送速度が乱れることが防止される。そのため、画像記録動作と画像定着動作とを一連の工程で行うことが可能となり、また従来技術における記録媒体貯蔵部を設ける必要がなくなることから、作業効率を低下させず、かつ記録装置を大型化させることなく、画像定着動作を行うことが可能となる。
【0012】
また、前記定着器における前記記録媒体の定着速度を、前記画像が記録された記録媒体の長さに応じて変更することができるように構成することにより、画像定着動作の効率がさらに向上する。
【0013】
さらに、前記画像が記録された記録媒体の長さが前記搬送経路よりも短い場合には、前記定着速度を前記記録部の搬送手段による前記記録媒体の搬送速度よりも速い速度とすることができるように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記画像が記録された記録媒体の長さが前記記録部と前記定着器との間における前記記録媒体の搬送経路よりも長い場合には、前記定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されていることが好ましい。
【0015】
さらに、前記記録手段の画像記録速度が変更されることに伴って前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度が変更される場合に、前記定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の変更後の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されていてもよい。
【0018】
また、前記定着器における前記記録媒体の定着加熱温度を、前記定着速度の変更に応じて所望の温度にすることができるように構成されていることが好ましい。
【0019】
さらに、前記定着器における前記記録媒体の定着加熱面積を、前記定着速度の変更に応じて所望の面積にすることができるように構成されていることが好ましい。
【0020】
さらには、前記定着器は前記記録媒体を狭持した状態で回転することにより前記記録媒体を搬送する少なくとも2つのローラ部材を有し、該ローラ部材による前記記録媒体の狭持圧力を、前記定着速度の変更に応じて所望の圧力にすることができるように構成されていることが好ましい。
【0021】
また、前記記録媒体は表面に多孔質樹脂層が形成され、前記定着器は前記記録媒体の多孔質樹脂層を加熱溶融して前記記録媒体の表面に保護層を形成するように構成されていてもよい。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の記録装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0024】
本実施形態の記録装置は、記録媒体である記録用紙2に画像を記録する記録部1と、記録用紙2に記録された画像を定着させる定着器3とを有している。記録用紙2は、中心軸6にロール状に巻かれており、記録部1と定着器3との間の搬送路に配置されたカッター4によって所望の長さに切断される。また、記録部1と定着器3との間の搬送路には、記録用紙2を図示下方に凸状にたるませた状態で支持する記録媒体支持部材である搬送ガイド7と、記録用紙2の搬送機構(不図示)とが備えられている。なお、記録用紙2の表面には多孔質樹脂層が設けられており、後述する定着器3で加熱されて溶融し、記録用紙2の表面に透明で空気を遮断する被膜(ラミネート層)を形成する。
【0025】
記録部1は、ノズルから記録用紙2にインクを吐出して画像を記録する記録手段であるインクジェット記録ヘッド11と、記録用紙2を搬送する搬送手段である主走査ローラ12とを備えている。また、定着器3は、記録用紙2を狭持し、かつ記録用紙2の多孔質樹脂を加熱溶融する2つの定着ローラ31,32を備えている。
【0026】
次に、本実施形態の記録装置による画像記録および定着シーケンスについて説明する。
【0027】
図2に示すように、中心軸6にロール状に巻かれている記録用紙2は、記録部1に給紙される。記録部1では、インクジェット記録ヘッド11が図1の紙面に対して垂直な方向に往復走査しながら記録用紙2にインクを吐出するとともに、記録用紙2が主走査ローラ12によって間欠的に一定の送り幅で搬送される。このようにして、記録用紙2には、記録ヘッド11の1走査分ごとに画像が記録されていく。
【0028】
上記のようにして画像記録が行われていくと、図3に示すように、記録用紙2の先端がカッター4を通過する。なお、図3に示す状態のときにも、画像記録動作が引き続き行われている。
【0029】
ここで、まず、画像が記録された記録用紙2の長さが、定着器3の両ローラ31,32による記録用紙2の狭持位置(以下、「ニップ位置」という。)と記録部1との距離L(図1参照)よりも短い場合について説明する。
【0030】
画像が記録された記録用紙2の長さが、記録部1と定着器3との間の記録用紙2の搬送経路よりも短く、記録用紙2の先端が定着器3に到達する前に画像記録動作が終了し、さらに記録用紙2の切断位置がカッター4に到達するまで記録用紙2を主走査ローラ12によって搬送しても記録用紙2の先端が定着器3に到達しない場合は、画像記録動作が終了した後、記録用紙2の切断位置がカッター4に到達するまで主走査ローラ12によって記録用紙2を連続送りする(図4参照)。この状態で記録用紙2をカッター4によってカットする。なお、「記録用紙2の切断位置がカッター4に到達するまで記録用紙2を主走査ローラ12によって搬送する」のは、画像記録終了時において、カッター4位置には記録用紙2の画像が記録されている部分が位置しているため、記録用紙2の画像記録部の端部で記録用紙2を切断するには記録用紙2を空送りする必要があるためである。
【0031】
図5に示すように、カットされた記録用紙2aは不図示の搬送系によって定着器3に搬送され、同時に、ロール側の記録用紙2は、主走査ローラ12および中心軸6が逆回転することによって印刷準備位置まで引き戻される。
【0032】
定着器3に搬送された記録用紙2aは、2つの定着ローラ31,32によって狭持された状態で、多孔質樹脂を溶融するための加熱が行われつつ搬送され、記録用紙2に記録画像が定着される。定着ローラ31,32は、画像が十分定着される定着条件を満足する範囲において、できるだけ速く回転して記録用紙2aを搬送排出することが、スループット向上の面から好ましい。上記のように、画像が記録された記録用紙2の長さが搬送経路長Lよりも短い場合には、定着器3における定着速度を、主走査ローラ12による搬送速度よりも速くすることができ、画像記録および定着の作業効率が向上される。
【0033】
次に、画像が記録された記録用紙2の長さが、定着器3のニップ位置と記録部1との距離L(図1参照)よりも長い場合について説明する。
【0034】
画像が記録された記録用紙2の長さが、記録部1と定着器3との間の記録用紙2の搬送経路よりも長く、画像記録動作が終了する前に記録用紙2の先端が定着器3に到達する場合、あるいは画像記録動作が終了した後に記録用紙2の切断位置がカッター4に到達するまで主走査ローラ12によって記録用紙2をさらに搬送すると記録用紙2の先端が定着器3に到達する場合は、定着ローラ31,32による記録用紙2の搬送速度V1が主走査ローラ12による記録用紙2の搬送速度の平均値V2以下の速度となる速さで、定着器ローラ31,32を回転させる(図6参照)。なお、「主走査ローラ12による記録用紙2の搬送速度の平均値」とは、主走査ローラ12による間欠送り速度を連続送り速度に換算した場合の搬送速度であり、すなわち「単位時間あたりの主走査ローラ12による記録用紙2の搬送量」である。
【0035】
例えば、定着ローラ31,32による記録用紙2の搬送速度V1が、主走査ローラ12による記録用紙2の搬送速度の平均値V2よりも速い場合には、定着ローラ31,32と主走査ローラ12との間で記録用紙2が突っ張り、主走査ローラ12による搬送速度が変動してしまうため、記録ヘッド11の走査タイミングと主走査ローラ12による搬送タイミングとがずれてしまい、画像形成に悪影響を与える。従って、定着ローラ31,32による記録用紙2の搬送速度V1が主走査ローラ12による記録用紙2の搬送速度の平均値V2以下の速度となる速さで定着ローラ31,32を回転させる必要があり、記録が記録された記録用紙2の長さが短い場合のように速く回転させることはできない。
【0036】
画像記録動作中に記録用紙2の先端が定着器3に到達すると、図7に示すように、記録用紙2の先端が上側定着ローラ31と下側定着ローラ32とのニップ位置において挟持される。このとき、記録用紙2は、搬送ガイド7に添うようにして図示下方に凸形状のたるみが形成されているので、記録用紙2の先端が定着ローラ31,32に挟持されて記録用紙2が一時的に引っ張られた場合でも、定着ローラ31,32と主走査ローラ12との間で記録用紙2が突っ張ることはなく、定着ローラ31,32による引っ張り力で主走査ローラ12による搬送速度が乱れることが防止される。そのため、画像記録動作と画像定着動作とを一連の工程で行うことが可能となり、また従来技術における記録媒体貯蔵部を設ける必要がなくなることから、作業効率が低下せず、かつ記録装置を大型化させることなく、画像定着動作を行うことが可能となる。
【0037】
画像記録動作が終了した後には、記録用紙2の切断位置がカッター4に到達するまで、主走査ローラ12によって記録用紙2が連続送りされる。この状態で記録用紙2がカッター4によってカットされる。
【0038】
図8に示すように、定着器3に搬送された記録用紙2aは、2つの定着ローラ31,32によって狭持された状態で、多孔質樹脂を溶融するための加熱が行われつつ搬送される。これと同時に、ロール側の記録用紙2は、主走査ローラ12および中心軸6が逆回転することによって印刷準備位置まで引き戻される。
【0039】
上述したように、画像が記録された記録用紙2の長さが一定の長さよりも長い場合には、記録用紙2は記録動作中に主走査ローラ12と定着ローラ31,32とによって狭持される。そのため、記録パス数や記録ヘッド11の駆動周波数が変わることによって記録速度が変化し、それに伴って主走査ローラ12による搬送速度が変化する場合には、定着ローラ31,32による搬送速度すなわちローラ31,32の回転速度もそれに応じて変化させる必要がある。
【0040】
ここで、「記録パス数」について説明する。ここで、記録パス数とは、マルチパスプリントにおける分割数のことをいう。
【0041】
モノクロプリンタとしてキャラクタのみプリントするものと異なり、カラーイメージ画像をプリントするに当たっては、発色性、階調性、一様性など様々な要素が必要となる。特に、一様性に関しては、マルチヘッド製作工程差に生じるわずかなノズル単位のインク吐出量や吐出方向の向き等のばらつきが、プリント画像に影響を及ぼし、最終的にはプリント画像の濃度むらとして画像品位を劣化させる原因となる。
【0042】
その具体例を、図9および図10を参照して説明する。図9は各ノズルのインク吐出量や吐出方向の向きにばらつきがない状態のプリント動作を説明する図、図10は各ノズルのインク吐出量や吐出方向の向きにばらつきがある状態のプリント動作を説明する図である。
【0043】
図9(A)において、符号91はマルチヘッドを示す。説明を簡略化するために、マルチヘッド91は8個のマルチノズル92を有する構成とする。符号93はマルチノズル92から吐出されたインクドロップレットを示し、通常は、同図のように揃った吐出量で、揃った方向にインク滴が吐出されるのが理想である。このようにインク吐出が行われれば、図9(B)に示すように記録用紙上に大きさが揃ったドット(インク滴)が着弾し、図9(C)に示すように、全体的にも濃度むらが無い、一様な画像が得られる。
【0044】
しかし、実際には、先にも述べたように各ノズル毎に吐出量や吐出方向の向きにばらつきがあり、上記と同じようにプリントをした場合には、図10(A)に示すように、それぞれのノズル92から吐出されるインクドロップ93の大きさおよび向きにばらつきが生じ、記録用紙上には図10(B)に示すように着弾される。同図(B)から分かるように、主走査方向(同図(B)の上下方向)に関して100%のエリアファクターを満たせない白紙の部分が周期的に存在したり、また逆に、必要以上にドットが重なり合ったり、あるいは同図(B)の中央に見られる様な白筋が発生したりしている。このような状態で着弾されたドットの集まりは、ノズル並び方向に関して図10(C)に示す濃度分布をなし、結果的には、通常、人間の目で見た限りで、これらの現象が濃度むらとして認識される。
【0045】
そこで、このような濃度むらを低減させるための対策として、以下に説明するような方法が考案されている。図11を参照して、濃度むらを低減させるための方法を説明する。
【0046】
図11(A)に示すように、濃度むらを低減させるための方法として、図9(B)および図10(B)に示したプリント領域と同じ領域に画像形成を行う際に、マルチヘッド91を3回スキャンさせる。マルチヘッド91の8個のノズルは、図示上側の4つのノズルのグループと、下側の4ノズルのグループとに分けられており、全プリント領域の半分である4画素(4ノズル)分の領域は、2パスで完成させている。
【0047】
1つのノズルから1回目のスキャンでプリントされるドットは、規定の画像データを、ある所定の画像データ配列に従い、約半分に間引いたものである。そして、2回目のスキャン時に残りの半分のドットで画像データを埋め込むことにより、4画素分の領域のプリントが完成される。以上のようなプリント法を、以下において「分割プリント法」と称することとする。
【0048】
このような分割プリント法を用いれば、図10で用いたマルチヘッドと同じものを使用した場合であっても、各ノズル固有のインク吐出量や吐出方向の違いによるプリント画像への影響が低減されるので、プリントされた画像は図11(B)に示すようになり、図10(B)に見るような黒筋や白筋があまり目立たなくなる。従って、濃度むらも、図11(C)に示すように、図10に示した場合と比べてかなり緩和される。
【0049】
以上には、同一領域内のプリントを2回のスキャンで完成させる構成(すなわち2パス印刷)を説明してきた。分割プリント法の効果は、分割数を多くすればするほど顕著に現れるものであるため、上記で説明した記録装置においても、1回のスキャンでプリントする画素をさらに半分の2画素にし、間欠的な紙送り幅をマルチヘッド91の長さの1/4である2画素分の幅とする構成(すなわち4パス印刷)にすれば、同じ走査方向に4つのノズルグループによって画像が完成されることとなるので、さらに滑らかで良好な画像を、さらに濃度の高い状態で得ることが可能となる。しかしながら、分割数を多くすると走査幅(紙送り幅)が狭くなるので、記録用紙の搬送速度は遅くなる。このような場合であっても、定着器3における定着ローラ31,32による搬送速度(すなわち定着速度)は、上記のように変更された主走査ローラ12による搬送速度以下の速度となるように変更される。
【0050】
また、インクを吐出口から吐出する時間は、記録ヘッド11の駆動周波数によって変化するため、インクジェット記録ヘッド11の走査速度は記録ヘッドの駆動周波数によって制限される。よって、記録速度は記録ヘッド11の駆動周波数によって変化し、それに伴って記録用紙2の搬送速度も変化する。このような場合においても、定着器3の定着ローラ31,32による搬送速度(すなわち定着速度)は、上記のように変化された主走査ローラ12による搬送速度以下の速度となるように変更される。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態は、定着ローラ31,32の搬送速度すなわち定着器3の定着速度が、画像が記録された記録用紙2の長さが一定の長さよりも短い場合と長い場合とで変更され、さらに、画像の長さが一定の長さよりも長い場合において、記録パス数および記録ヘッド11の駆動周波数に応じて変更されるように構成されている。そして、いずれの場合においても、変更された後の定着器3の定着速度は、主走査ローラ12による搬送速度以下の速度とされる。
【0052】
一般的に、記録画像を記録用紙に十分に定着させるための定着条件を満足するには、記録用紙の特性毎に、定着速度(定着器内で加熱される時間)、定着加熱温度、定着ローラのニップ面積(定着加熱面積)およびニップ圧(狭持圧)の関係が、一定の条件を満たす必要がある。本実施形態ではこれらの条件のうち「定着速度」が変化し、さらに例えば複数種の記録用紙に画像記録が行われる場合等には、他の条件(「定着加熱温度」、「ニップ面積」あるいは「ニップ圧」)を定着速度の変化に応じて適宜変化させ、定着条件を満足させる必要がある。
【0053】
以下に、図12を参照して定着条件の決定工程について説明する。図12は、本実施形態の記録装置の定着条件を決定するための構成を説明するブロック図である。
【0054】
定着条件を決定する際には、まず最初に、オペレータが所望の記録部長さ、印刷パス数および駆動周波数を決め、オペレータ操作部61を介して記録用紙搬送速度決定回路62に画像記録条件を入力する。
【0055】
記録用紙搬送速度決定回路62は、入力された記録部長さ情報に基づいて、定着ローラ31,32の搬送速度を記録速度とリンクさせる必要があるか否かを判断する。すなわち、記録部の長さが短い場合は定着ローラ31,32をできるだけ速く回転させ、記録部の長さが長い場合は、定着ローラ31,32による搬送速度V1が主走査ローラ12による搬送速度の平均値V2以下の速度となるように、定着ローラ31,32の搬送速度を決定する。なお、定着ローラ31,32の搬送速度を決定するにあたり、まず主走査ローラ12による搬送速度を決定する必要がある。この決定は、オペレータが入力した所望の印刷パス数および駆動周波数に基づいて行われる。
【0056】
決定された搬送速度情報はローラ回転モータ駆動回路63に入力され、ローラ回転モータ駆動回路63は前記の情報に基づいてローラ回転モータ64を回転し、所望の搬送速度を実現する。
【0057】
搬送速度情報は、さらに、定着条件決定回路65にも入力される。定着条件決定回路65には、さらに紙種検知部66から記録用紙2の紙種情報が入力される。定着条件決定回路65は、あらかじめ記憶された定着テーブルから、搬送速度および記録用紙の紙種に応じた定着温度およびニップ圧を決定する。
【0058】
決定された定着温度情報は、それぞれヒーターランプ駆動回路67およびローラニップモータ駆動回路69に入力され、ヒーターランプ68およびローラニップモータ70が駆動されることにより、所望の定着条件が実現される。ヒータランプ駆動回路67は、定着ローラ31,32の表面に設けられた温度検知センサ71の出力信号を用いて、定着ローラの表面温度が所望の温度になるように、定着ローラ31,32内に配置されたヒータランプ68の点灯を制御する。
【0059】
図13は、図1等に示した定着ローラのニップ量を変化させるニップ量調整機構の一例を示す概略構成図である。
【0060】
図13において、符号31はシリコーンゴム製の上側定着ローラ、符号32はスポンジゴム製の下側定着ローラ、符号33は不図示の雌ねじを備えた下側定着ローラ保持部材、符号34は雄ねじ、符号35,36,37はギヤ列、符号38はパルスモータを用いたローラニップモータをそれぞれ示している。
【0061】
ローラニップモータ38は、ローラニップモータ駆動回路69(図12参照)の出力に応じて回転し、ギヤ列37,36,35を介して雄ねじ34を回転させ、下側定着ローラ保持部材33を昇降させて、上側定着ローラ31に対する下側定着ローラ32の押圧(ニップ)およびその解除を行う。したがって、本例のニップ量調整機構では、ローラニップモータ38の回転量を制御することにより、記録用紙2を加熱する幅(ニップ幅)およびニップ圧を決定することができる。
【0062】
図14は、図1等に示した定着ローラのニップ量を変化させるニップ量調整機構の他の例を示す概略構成図である。
【0063】
図14において、符号31は上側定着ローラ、符号32は下側定着ローラ、符号51は張力ローラ、符号52は上側定着ローラ31と張力ローラ51とによって張力が与えられたベルト、符号53は平歯車53aが形成され、上側定着ローラ32および張力ローラ51を保持する保持部材、符号54はウォームギヤ、符号55はパルスモータを用いたローラニップモータをそれぞれ示している。
【0064】
ローラニップモータ55は、ローラニップモータ駆動回路69(図12参照)の出力に応じて回転し、ウォームギヤ54および平歯車53aによって保持部材53が回動され、下側定着ローラ32にベルト52が巻きつけられる。したがって、本例のニップ量調整機構では、ローラニップモータ38の回転量を制御することにより、記録用紙2を加熱する幅(ニップ幅)を決定することができる。
【0065】
以上の説明では、インクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、インクシートから受像シートに染料を転写して画像を記録した後に加熱し、キレート処理を行う昇華型プリンタや、トナーを紙に塗布した後に加熱定着する記録装置等においても有効である。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の記録装置は、記録部と定着器との間では、記録媒体がたるみを持った状態で搬送されるように構成されているので、画像記録動作と画像定着動作とを一連の工程で行うことが可能となり、また従来技術における記録媒体貯蔵部を設ける必要がなくなることから、作業効率が低下せず、かつ記録装置を大型化させることなく、画像定着動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した記録装置の画像記録および定着シーケンスを説明するための図であって、画像記録動作中の状態を示す図である。
【図3】図1に示した記録装置の画像記録および定着シーケンスを説明するための図であって、画像記録動作がさらに進行した状態を示す図である。
【図4】図1に示した記録装置の画像記録および定着シーケンスを説明するための図であって、画像記録部の長さが短い記録用紙がカットされる前の状態を示す図である。
【図5】図1に示した記録装置の画像記録および定着シーケンスを説明するための図であって、画像記録部の長さが短い記録用紙がカットされた後の状態を示す図である。
【図6】図1に示した記録装置の画像記録および定着シーケンスを説明するための図であって、画像記録部の長さが長い記録用紙に画像記録が行われている状態を示す図である。
【図7】図1に示した記録装置の画像記録および定着シーケンスを説明するための図であって、画像記録部の長さが長い記録用紙がカットされる前の状態を示す図である。
【図8】図1に示した記録装置の画像記録および定着シーケンスを説明するための図であって、画像記録部の長さが長い記録用紙がカットされた後の状態を示す図である。
【図9】各ノズルのインク吐出量や吐出方向の向きにばらつきが無い状態のプリント動作を説明する図である。
【図10】各ノズルのインク吐出量や吐出方向の向きにばらつきがある状態のプリント動作を説明する図である。
【図11】濃度むらを低減させる方法を説明するための図である。
【図12】図1等に示した記録装置の定着条件を決定するための構成を示すブロック図である。
【図13】図1等に示した定着ローラのニップ量を変化させるニップ量調整機構の一例を示す概略構成図である。
【図14】図1等に示した定着ローラのニップ量を変化させるニップ量調整機構の他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 記録部
2,2a 記録用紙
3 定着器
4 カッター
6 中心軸
7 搬送ガイド
11 インクジェット記録ヘッド
12 主走査ローラ
31 上側定着ローラ
32 下側定着ローラ
33 下側定着ローラ保持部材
34 雄ねじ
35,36,37 ギヤ列
38,55,70 ローラニップモータ
51 張力ローラ
52 ベルト
53 保持部材
53a 平歯車
54 ウォームギヤ
61 オペレータ操作部
62 記録用紙搬送速度決定回路
63 ローラ回転モータ駆動回路
64 ローラ回転モータ
65 定着条件決定回路
66 紙種検知部
67 ヒーターランプ駆動回路
68 ヒーターランプ
69 ローラニップモータ駆動回路
71 温度検知センサ
91 マルチヘッド
92 マルチノズル
93 インクドロップレット

Claims (10)

  1. 記録媒体に画像を記録する記録手段および前記記録媒体を搬送する搬送手段を備えた記録部と、前記画像が記録された記録媒体を搬送しつつ、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着器とを有する記録装置であって、
    前記記録部と前記定着器との間では、前記記録媒体がたるみを持った状態で搬送されるように構成されており、
    前記記録部と前記定着器との間における前記記録媒体の搬送経路には、前記記録媒体をたるみを持たせた状態で支持する記録媒体支持部材が設けられており、
    前記記録装置は前記記録手段がインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置であり、前記記録手段の記録パス数が変更されることに伴って前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度が変更される場合に、前記定着器における前記記録媒体の定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の変更後の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されていることを特徴とする記録装置。
  2. 記録媒体に画像を記録する記録手段および前記記録媒体を搬送する搬送手段を備えた記録部と、前記画像が記録された記録媒体を搬送しつつ、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着器とを有する記録装置であって、
    前記記録部と前記定着器との間では、前記記録媒体がたるみを持った状態で搬送されるように構成されており、
    前記記録部と前記定着器との間における前記記録媒体の搬送経路には、前記記録媒体をたるみを持たせた状態で支持する記録媒体支持部材が設けられており、
    前記記録装置は前記記録手段がインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置であり、前記記録手段の駆動周波数が変更されることに伴って前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度が変更される場合に、前記定着器における前記記録媒体の定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の変更後の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されていることを特徴とする記録装置。
  3. 前記定着器における前記記録媒体の定着速度を、前記画像が記録された記録媒体の長さに応じて変更することができるように構成されている請求項1または2に記載の記録装置。
  4. 前記画像が記録された記録媒体の長さが前記搬送経路よりも短い場合には、前記定着速度を前記記録部の搬送手段による前記記録媒体の搬送速度よりも速い速度とすることができるように構成されている請求項3に記載の記録装置。
  5. 前記画像が記録された記録媒体の長さが前記記録部と前記定着器との間における前記記録媒体の搬送経路よりも長いときには、前記定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されている請求項3に記載の記録装置。
  6. 前記記録手段の画像記録速度が変更されることに伴って前記搬送手段による前記記録媒体の搬送速度が変更される場合に、前記定着速度を前記搬送手段による前記記録媒体の変更後の搬送速度以下の速度とすることができるように構成されている請求項5に記載の記録装置。
  7. 前記定着器における前記記録媒体の定着加熱温度を、前記定着速度の変更に応じて所望の温度にすることができるように構成されている請求項3からのいずれか1項に記載の記録装置。
  8. 前記定着器における前記記録媒体の定着加熱面積を、前記定着速度の変更に応じて所望の面積にすることができるように構成されている請求項3からのいずれか1項に記載の記録装置。
  9. 前記定着器は前記記録媒体を狭持した状態で回転することにより前記記録媒体を搬送する少なくとも2つのローラ部材を有し、該ローラ部材による前記記録媒体の狭持圧力を、前記定着速度の変更に応じて所望の圧力にすることができるように構成されている請求項3からのいずれか1項に記載の記録装置。
  10. 前記記録媒体は表面に多孔質樹脂層が形成され、前記定着器は前記記録媒体の多孔質樹脂層を加熱溶融して前記記録媒体の表面に保護層を形成するように構成されている請求項1からのいずれか1項に記載の記録装置。
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