JP3610078B2 - レーザーマーキング方法及びレーザーマーキングされた成形品 - Google Patents

レーザーマーキング方法及びレーザーマーキングされた成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、レーザー光を利用して熱可塑性樹脂成形品または該樹脂により被覆された成形品の表面に白色及び黒色以外の、所望の赤色、青色、黄色等の有彩色の鮮明な文字、記号等のマークを付与するレーザーマーキング方法およびこれによって良好なマーキングが行われた成形品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
レーザー光を照射して熱可塑性樹脂にマーキングを行う方法として既に多くの方法が提案されており、(1) 照射部分の蝕刻による表面状態の変化(粗面化、凹み)によりマーキングを行う方法、(2) 変色及び脱色可能な充填物を添加することによりマーキングを行う方法が知られている。
【0003】
しかしながら、ほとんどの場合、従来技術で得られるマーキング文字の色は、樹脂の炭化による黒色文字、あるいは添加した顔料・染料による白色文字しか得られず、任意の色のマーキング文字を得ることは不可能であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術に鑑み、レーザーマーキング文字の色の多様化について鋭意検討した結果、有機顔料・染料の多くはレーザー光に対し安定であることに着目し、レーザーマーキング方法へのこれらの有機顔料・染料の応用について更に検討した結果、本発明を完成するに到った。
【0005】
即ち、本発明は
熱可塑性樹脂より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングする方法において、カーボンブラックと、レーザー光の影響を受けにくい白色及び黒色以外の有機顔料・染料とを併せて含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品の表面にレーザー光を照射して白色及び黒色以外のマーキングすることを特徴とするレーザーマーキング方法である。
【0006】
以下、本発明のレーザーマーキング方法を詳細に説明する。
【0007】
先ず、本発明において用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶性ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の熱可塑性樹脂がいずれも使用できる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上を混合して使用することも可能である。これらの樹脂のうち、本発明においてはレーザーの加熱により炭化しにくいポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、特にポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、かかる樹脂を用いた場合には特に鮮明な色のマーキングが可能である。
【0008】
ここで本発明に用いられるポリアセタール樹脂は(−CHO−) を主たる構成単位とする高分子化合物で、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するコポリマー(ブロックコポリマーを含む)、ターポリマーの何れにてもよく、また分子が線状のみならず、分岐、架橋構造を有するものであっても良い。又、その重合度等に関しても特に制限はない。
【0009】
又、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート樹脂が挙げられる。
【0010】
本発明の方法においては、上記の如き樹脂に、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物(カーボンブラック)と、レーザー光の影響を受けにくい白色及び黒色以外の(即ち、赤色、青色、黄色等の有彩色の)有機顔料・染料とを併せて配合し、かかる樹脂組成物より成形された成形品の表面にレーザー光を照射して白色及び黒色以外の(即ち、赤色、青色、黄色等の有彩色の)マーキングすることを特徴とする。
【0011】
かかる本発明の方法において、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物(カーボンブラック)の配合量は0.01〜0.5 重量%が好ましい。カーボンブラックの配合量が0.01重量%未満では充分なコントラストを持つマーキングを行うことができず、逆に0.5 重量%を越えるとレーザー照射による樹脂成形品表面の蝕刻が激しくなりコントラストの良いマーキングが難しくなる。より鮮明なマーキングを行うためには、カーボンブラックの配合量を0.03〜0.3 重量%とするのが特に好ましい。
【0012】
カーボンブラックは、その製法の違いによりファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック等に、また、原料の違いによりアセチレンブラック、オイルブラック、ガスブラック等に分類されるが、本発明においてはこれらのいずれも使用できる。また、ケッチェンブラックの使用も可能である。
【0013】
かかる如く低濃度のカーボンブラックを配合した熱可塑性樹脂組成物からなる成形品もしくは該樹脂組成物によって被覆された成形品の表面にレーザー光を照射することにより、一般的には、レーザー照射部がごく僅か、例えば5〜50μm 程度、凸状に盛り上がり、コントラストの良いマーキングが得られる。
【0014】
また、本発明の方法において、所望の色のマーキング文字を得るために、上記添加物と併せて配合されるレーザー光の影響を受けにくい有機顔料・染料としては、レーザー光の影響を受けにくいものであって、熱可塑性樹脂の着色、染色が可能なものであれば特に限定されない。ここで、レーザー光の影響を受けにくい有機顔料とは、レーザー光に曝されても変色あるいは脱色等を起こしにくい耐熱性の高いものを意味し、例えばアンストラキノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ポリアゾ系顔料が挙げられる。
【0015】
又、染料としては、分散染料、昇華性染料、カチオン染料、塩基性染料等の中から、レーザー光に曝されても変色あるいは脱色等を起こしにくいものが選択される。特に好ましくは、疎水性繊維を染色するために開発された疎水性染料(分散染料)である。
【0016】
本発明において、成形され或いは被覆されてレーザーマーキングに供される上記の如き樹脂組成物には、レーザー照射によるマーキングを損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤、無機充填剤等を加えることができる。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤、離型剤、界面活性剤、結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することも可能である。
【0017】
本発明においては、前述した特定樹脂組成物からなる成形品あるいは該樹脂組成物を印刷、塗布、多重成形等によって被覆した樹脂、セラミック、金属等の成形品に対し、その所望位置にレーザー光線を照射するだけで、容易に鮮明なマーキングが行われる。所望の形状のマーキングを行うためには、例えば、レーザー光を適当な大きさのスポットにして対象物の表面を走査する方法、レーザー光をマスクすることによって所望形状のレーザー光とし、これを対象物の表面に照射する方法等が挙げられる。使用されるレーザーの種類としては特に限定はないが、例えば炭酸ガスレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー、YAG レーザー等が挙げられる。なかでも波長が1.06μm であることを特徴とするNd:YAG レーザーが好ましい。その発振形態は連続発振であってもパルス発振であっても構わないが、特に適したものはQスイッチを用いた連続発振であるスキャン式のNd:YAG レーザーである。
【0018】
【作用】
本発明の作用機構は、次のように推測される。
【0019】
即ち、本発明の如く、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物(例えばカーボンブラック)と、レーザー光の影響を受けにくい有機顔料・染料とを併せて含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品もしくは該樹脂組成物によって被覆された成形品の表面にレーザー光を照射すると、レーザー光は成形品表面を透過し、樹脂中のカーボンブラックを選択的に加熱する。特に樹脂自身による吸収の少ないNd:YAG レーザーの場合、効率的に加熱される。加熱されたカーボンブラックは、まわりの樹脂を加熱溶融し、局所的に分解させると同時に、カーボンブラック自身も過度の加熱により酸化されガスとなる。そのため、レーザー光を照射した部分には、カーボンブラックの存在しない発泡領域が形成される。有機顔料・染料の色をカーボンブラックにより隠蔽された本成形品の場合、カーボンブラックの存在しない領域が形成されることにより、隠蔽されていた有機顔料・染料の色が現れ、添加した有機顔料・染料の色と同一のレーザーマーキング文字が得られる。特に、レーザー光を吸収したり、加熱により変色や脱色をしない、つまりレーザー光の影響をほとんど受けない有機顔料・染料を使用することで達成されるものであると考えられる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
ポリアセタール樹脂に、カーボンブラック0.05重量%と、下記染料aを1重量%を添加し、押出機で練込み、黒色系のペレットを得た。このペレットを射出成形し、7cm×5cmで厚さ3mmの黒色の平板を成形した。次に、この平板に下記条件にてマーキングを行ったところ、染料と同色(この場合はピンク)の鮮明なマーキング文字を得た。又、染料として下記b、cを用い、カーボンブラックの添加量を0.1 重量%にした場合についても同様に行ったところ、染料と同色(bの場合は紺色、cの場合は黄色)の鮮明なマーキング文字を得た。
【0021】
尚、マーキング条件は下記の通りである。
【0022】
装置: 日本電気(株)製 レーザーマーカー SL475E
レーザーの種類: Nd:YAG レーザー(Qスイッチ搭載)
マーキング方式: 一筆書き方式(スキャン方式)
マーキング部での加工パワー: 1〜3W
スキャンスピード: 100 〜400mm/sec
バイトサイズ: 30〜50μm
Qスイッチ周波数: 1〜3kHz
又、実施例に使用した染料a〜cは三菱化成(株)製の分散染料である。
【0023】
a;Dianix Red AC−E
b;Dianix Blue AC−E
c;Diacelliton Fast Yellow GL
【0024】
【発明の効果】
従来、熱可塑性樹脂に対するレーザーマーキング技術は、無人化、自動化、無溶剤化、信頼性等の点で優れた表面装飾方法として知られていたが、得られるマーキング文字の色が黒または白の無彩色であるために利用分野が非常に限られていたが、本発明によれば得られるマーキング文字の色が多様化することで応用分野が広がり、経済的価値が高い。

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングする方法において、カーボンブラックと、レーザー光の影響を受けにくい白色及び黒色以外の有機顔料・染料とを併せて含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品の表面にレーザー光を照射して白色及び黒色以外のマーキングすることを特徴とするレーザーマーキング方法。
  2. カーボンブラックの配合量が組成物中0.01〜0.5 重量%である請求項1記載のレーザーマーキング方法。
  3. マーキングがスキャン式のNd:YAGレーザーを用いて行われる請求項1又は2記載のレーザーマーキング方法。
  4. 熱可塑性樹脂がポリアセタール樹脂又は熱可塑性ポリエステル樹脂を主体とするものである請求項1〜3の何れか1項記載のレーザーマーキング方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のレーザーマーキング方法によりマーキングされた成形品。
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