JP7061487B2 - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
従来、合成樹脂材料同士を接合する手段としては、レーザーを照射して合成樹脂材料を接合するレーザー溶着方法が知られている。例えば、レーザー透過性樹脂部材とレーザー吸収性樹脂部材との間に、レーザー透過性のシートを介在させてレーザー溶着を行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、包装体の印刷表面にレーザー照射によって文字や記号を描画し記載する印字方法が知られている。例えば、合成樹脂層からなる基材(表面保護層)、金属層または金属酸化物層、シーラントを融着させた樹脂成形体を用意し、表面保護層越しに金属層または金属酸化物層の表面へレーザー光を照射して所望の印字を行う印字方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。このようなレーザー印字方法では、印字の鮮明さが不十分であることがあり、これを改善するために表面保護層を設けずに樹脂成形体の表面へ直接レーザー照射して所望の印字を行う印字方法も検討されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2007-111961号公報 特開2007-217048号公報 特開2016-124562号公報
しかしながら、従来の印字方法では、印字部の鮮明さと耐摩耗性とを両立させることは困難であった。具体的には、特許文献2に開示されている技術では、レーザー照射して形成された印字部の体積が増加するため、印字部が僅かに盛り上がる。そして、表面保護層が樹脂成形体に密着した状態で固定されているために、樹脂成形体に形成された印字部の体積変化に表面保護層が追従することができない。そのため、印字界面がぼやけてしまい、印字部の鮮明さが損なわれてしまうという課題があった。また、特許文献3に開示されている技術では、表面保護層が設けられていないため、外部からの衝撃により印字部が損傷しやすいという課題があった。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、レーザー照射による印字手段を用いた場合に、印字部の鮮明さ及び耐摩耗性を同時に向上できる積層体及びその製造方法を提供するものである。さらに、本発明に係る幾つかの態様は、上記特性に加えて、レーザー透過部材とレーザー印字部材との融着強度に優れた積層体及びその製造方法を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
本発明に係る積層体の製造方法の一態様は、
レーザー透過部材と、レーザーを吸収して発色するレーザー印字部材と、を重ね合わせる工程と、
前記レーザー透過部材を透過させてレーザーを前記レーザー印字部材に照射して、前記レーザー印字部材の表面に印字する工程と、
を含み、この順に行う。
前記積層体の製造方法の一態様において、
前記重ね合わせ工程後、前記印字工程前に、
さらに、前記レーザー透過部材を透過させてレーザーを前記レーザー印字部材に照射して、前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部とを融着する工程を含むことができる。
前記積層体の製造方法のいずれかの態様において、
前記融着工程において、前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部との融着領域が、前記レーザー印字部材の印字部以外の領域であることができる。
前記積層体の製造方法のいずれかの態様において、
前記レーザー印字部材が、樹脂100質量部に対してレーザー発色剤を0.01質量部超1質量部未満含有する樹脂組成物からなることができる。
前記積層体の製造方法のいずれかの態様において、
前記レーザー発色剤がカーボンブラックであることができる。
本発明に係る積層体の一態様は、
レーザー透過部材と、
レーザーを吸収して発色するレーザー印字部材と、
を備えた積層体において、
前記レーザー印字部材の表面に印字部を有し、
前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部とが固定され、前記レーザー透過部材と前記レーザー印字部材との間に前記積層体の厚み方向に対する可撓性領域を有し、
前記印字部が前記可撓性領域に位置する。
前記積層体の一態様において、
前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部とが融着して固定されることができる。
前記積層体の一態様において、
前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部とがレーザー融着して固定されることができる。
前記積層体のいずれかの態様において、
前記レーザー印字部材が、樹脂100質量部に対してレーザー発色剤を0.01質量部超1質量部未満含有する樹脂組成物からなることができる。
前記積層体のいずれかの態様において、
前記レーザー発色剤がカーボンブラックであることができる。
本発明に係る積層体の製造方法の一態様によれば、レーザー照射により形成された印字部の鮮明さ及び耐摩耗性を同時に向上できる積層体を製造することができる。さらに、本発明に係る積層体の製造方法の一態様によれば、上記特性に加えて、レーザー透過部材と
レーザー印字部材との融着強度にも優れた積層体を製造することができる。
本実施形態の重ね合わせ工程を模式的に示す断面図である。 本実施形態の印字工程を模式的に示す断面図である。 本実施形態の融着工程を模式的に示す断面図である。 図3に示す積層体を模式的に示す平面図である。 本実施形態に係る積層体の構成を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
本発明において、「印字」とは、レーザー照射によって描画することをいい、印字されるものは、文字、数字、記号、図柄、各種情報、バーコード等を含むが、これらに限定されない。
本発明において、「融着」とは、二つの部材の少なくとも一部を局所的に加熱溶融して溶着させることをいう。
1.積層体の製造方法
本実施形態に係る積層体の製造方法は、レーザー透過部材と、レーザーを吸収して発色するレーザー印字部材とを重ね合わせる工程(本明細書において「重ね合わせ工程」ともいう。)と、前記レーザー透過部材を透過させてレーザーを前記レーザー印字部材に照射して、前記レーザー印字部材の表面に印字する工程(本明細書において「印字工程」ともいう。)と、を含み、この順に行う。また、本実施形態に係る積層体の製造方法は、前記重ね合わせ工程後、前記印字工程前に、前記レーザー透過部材を透過させてレーザーを前記レーザー印字部材に照射して、前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部とを融着する工程(本明細書において「融着工程」ともいう。)をさらに含んでもよい。以下、本実施形態に係る積層体の製造方法の各工程について図面を参照しながら詳細に説明する。
1.1.重ね合わせ工程
図1は、本実施形態の重ね合わせ工程を模式的に示す断面図である。まず、図1に示すように、レーザー透過部材10と、レーザーを吸収して発色するレーザー印字部材12とを重ね合わせる。この段階では、レーザー透過部材10とレーザー印字部材12とは、脱着可能な状態となっている。本明細書において「脱着可能」とは、レーザー透過部材10とレーザー印字部材12とが、接着層を介して固定されたり、融着によって固定されたりすることなく、両者を分離させることが可能な状態であることをいう。レーザー透過部材10とレーザー印字部材12とが脱着可能な状態となっている場合、両者の間に積層体の厚み方向に対する可撓性領域が存在することになり、いわゆる“遊び”が確保できる。
図1の例では、レーザー印字部材12は、独立に形成されているが、例えばレーザー吸収部材のような他の部材と一体に形成されてもよい。これらの部材を一体成形する場合は、例えば射出成形法や押出成形法等のような一般の成形方法により成形を行うことができる。また、レーザー印字部材12とレーザー吸収部材のような他の部材とが別々に形成さ
れる場合は、これらの部材は接着剤等で脱着不可能な状態で固定してもよい。なお、レーザー印字部材12と他の部材とが固定された場合であっても、レーザー透過部材10とレーザー印字部材12とが接するようにして、これらの部材同士が脱着可能な状態で重ね合わせる必要がある。
各部材の成形は、通常行われる種々の手順により行い得る。例えば、樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形機により成形することができる。その他には、例えば、押出成形、圧縮成形、発泡成形、ブロー成形、真空成形、インジェクションブロー成形、回転成形、カレンダー成形、溶液流延等、一般に行われる何れの成形方法を採用することもできる。このような成形により、種々形状の部材を得ることができる。
レーザー透過部材10の材料は、使用するレーザーを透過することができるものであれば特に限定されない。例えば、非液晶性半芳香族ポリエステル、非液晶性全芳香族ポリエステルなどの非液晶性ポリエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、脂肪族ポリアミド、脂肪族-芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、液晶性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体及びエチレン/プロピレン-g-無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる(「/」は共重合を表す。以下同じ)。
レーザー印字部材12の材料は、レーザー発色剤を含有する樹脂であることが好ましい。レーザー発色剤としては、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属;酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の金属酸化物;カーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを使用すると、発色が良好となり、印字部が鮮明なものとなりやすい。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などのポリエステル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル系樹脂;その他ポリスチレン(PS)などのような透明性が高く、吸収率の低いフィルムを得ることができる材料が挙げられる。レーザー印字部材12の製造方法としては、例えば、レーザー発色剤と樹脂を溶融混練して樹脂組成物ペレットを作成し、射出成形機により成形する方法が挙げられる。
樹脂組成物ペレット中のレーザー発色剤の含有割合は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部超1質量部未満であり、より好ましくは0.02質量部以上0.9質量部以下であり、特に好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下である。レーザー発色剤の含有割合が前記範囲にあると、レーザー印字部材12がレーザー照射によるダメージを受け難くなるとともに、印字濃度が適度なものとなり印字部が鮮明になりやすい。
レーザー吸収部材を用いる場合、レーザー吸収部材の材料は、使用するレーザーを吸収するものであれば特に限定されない。例えば、上記のレーザー透過部材10で説明した樹脂のうち、レーザー透過部材10よりもレーザー吸収性であるもの、各種添加剤を加えることによりレーザー不透過性(またはレーザー吸収性)とした材料、またはレーザー印字
部材12と同じ材料を用いることができる。各種添加剤は、レーザー融着に使用される一般的な添加剤であり、特に限定されない。
レーザー印字部材12とレーザー吸収部材とを別々に成形する場合、レーザー印字部材12は、少なくとも印字部に介在させればよい。また、レーザー印字部材12とレーザー吸収部材とを別々に成形する場合、レーザー印字部材12は、レーザー印字に使用されるレーザーに対して5%以下の吸収率を有する材料であることが好ましい。その結果、高エネルギーのレーザー照射によりレーザー印字を行った場合でも、レーザー印字部材12の焦げ付きを防止でき、レーザー印字の自由度を向上させることができる。
吸収率(%)は、印字に用いるレーザーの波長において、100%-透過率(%)-反射率(%)にて算出することができる。透過率や反射率の測定方法は、特に限定されない。測定装置も市販の装置を用いることができる。なお、測定装置によって吸収率が有意に異なる場合には、本願発明においては、島津製作所株式会社製UV-VIS-NIR分光光度計(UV3100)を用いて算出される数値を、吸収率として用いるものとする。
本実施形態の重ね合わせ工程において、レーザー透過部材10、レーザー印字部材12及びレーザー吸収部材の材料には、任意の割合で酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、離型剤及び滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、他の重合体などを添加することができる。
本発明の各部材は、必要な材料を目的に添った配合量で配合し、上記形成方法により形成することで得ることができる。配合量や成形の条件は当業者によって適宜選択することができる。
レーザー透過部材10及びレーザー印字部材12は、特にレーザー印字強度の観点から、それぞれの厚みが0.1mm~10mmであることが好ましく、0.5mm~5mmであることがより好ましい。
1.2.融着・接着工程
上記のようにして得られた部材同士を、適切な固定手段(例えば、クランプ、空気圧等で各部材の厚み方向に圧力(加重)をかけて固定する手段、または印字部以外の箇所での接着剤による接着、熱板による融着、振動・超音波による融着、レーザー融着による溶接などの手段)で固定して積層体を形成してもよい。これらの固定手段の中でも、各部材の位置ずれを防止するために、印字部以外の箇所にレーザー融着により溶接する手段が好ましい。具体的には、以下のようにすることができる。
図2は、本実施形態の融着工程を模式的に示す断面図である。図2に示すように、重ね合わせ工程後、印字工程前に、レーザー透過部材10を透過させてレーザーをレーザー印字部材12に照射して、レーザー透過部材10の一部とレーザー印字部材12の一部とを融着させることができる。これにより、レーザー透過部材10とレーザー印字部材12とが融着領域14で固定されるので位置ずれを防止できる。図2の矢印は、矢印の向きにレーザーが照射されることを意味する。
図2に示すように、レーザー透過部材10とレーザー印字部材12との融着領域14は、レーザー印字部材12の印字部16以外の領域であることが好ましい。例えば、積層体の平面視において、印字部16以外の領域であり、かつ、積層体の各辺から内側の領域の少なくとも一部に融着領域14を形成することが好ましい。これにより、レーザー透過部材10とレーザー印字部材12との間の印字部16に積層体の厚み方向に対する可撓性領域が存在することになり、いわゆる“遊び”が確保できる。なお、融着領域14は、用途
に応じて円形、円筒形、半球形などの種々の形状を取り得る。
本実施形態の融着工程で使用できるレーザー源としては、YAGレーザー(1064nm)、YVO4レーザー(1064nm)、半導体レーザー(例えば、808nm、940nm、980nmなどの近赤外領域の波長を有するもの)などが挙げられる。融着工程におけるレーザー照射の条件は、当業者による少しの予備実験により容易に設定することができ、具体的にはレーザー出力、スポット径、スキャン速度等を適宜調整しながら融着工程を行うことができる。
1.3.印字工程
図3は、本実施形態の印字工程を模式的に示す断面図である。図4は、図3の平面図である。図4のA-A線に沿った断面図が図3に相当する。なお、図3の矢印は、矢印の向きにレーザーが照射されることを意味する。
次いで、図3に示すように、レーザー透過部材10側からレーザーを照射して、該レーザーがレーザー透過部材10を透過し、レーザー印字部材12で該レーザーの少なくとも一部が吸収されることによりレーザー印字が行われる。図3及び図4に示す例では、レーザー照射により「E」という文字を印字している。レーザー照射により形成された印字部16は、体積が増加して僅かに盛り上がるが、この印字部16には積層体の厚み方向に対する可撓性領域が存在するため、いわゆる“遊び”が確保できる。これにより、印字部16が僅かに盛り上がっても、レーザー透過部材10に何ら拘束を受けることなく追従できるので、印字部16が鮮明にあらわれる。その一方で、印字部16はレーザー透過部材10によって保護されているため、外部からの衝撃にも強い。
本実施形態の印字工程で使用できるレーザー源としては、YAGレーザー(1064nm)、YVO4レーザー(1064nm)、半導体レーザー(例えば、808nm、940nm、980nmなどの近赤外領域の波長を有するもの)などが挙げられる。印字工程におけるレーザー照射の条件は、当業者による少しの予備実験により容易に設定することができ、具体的にはレーザー出力、スポット径、スキャン速度等を適宜調整しながら印字工程を行うことができる。
以上のようにして、レーザー透過部材10によって保護された印字部16を有する積層体100を製造することができる。
2.積層体
本発明は、上記製造方法により製造される積層体を包含する。図5は、本実施形態に係る積層体の構成を模式的に示す断面図である。図5に示すように、本発明の一実施形態に係る積層体は、レーザー透過部材10と、レーザーを吸収して発色するレーザー印字部材12と、を備えた積層体100において、レーザー印字部材12の表面に印字部16を有し、レーザー透過部材10の一部とレーザー印字部材12の一部とが固定され、レーザー透過部材10とレーザー印字部材12との間に積層体100の厚み方向に対する可撓性領域18を有し、印字部16が可撓性領域18に位置する。
レーザー透過部材10の一部とレーザー印字部材12とが固定される手段としては、図5に示すように、レーザー透過部材10の一部とレーザー印字部材12との一部とが融着して形成された融着領域14により固定される手段が好ましい。
上記の通り、レーザー照射により形成された印字部16は、体積が増加して僅かに盛り上がるが、この印字部16には積層体100の厚み方向に対する可撓性領域18が存在するため、いわゆる“遊び”が確保できる。これにより、印字部16が僅かに盛り上がって
も、レーザー透過部材10に何ら拘束を受けることなく追従できるので、印字部16が鮮明にあらわれる。その一方で、印字部16はレーザー透過部材10によって保護されているため、外部からの衝撃にも強い。
本実施形態に係る積層体は、例えば、電気・電子用途、自動車用途、一般雑貨用途、建築部材等に有用であり、特に自動車部品、例えばエンジンルーム内のモジュール部品、インテークマニホールド、アンダーフード部品、ラジエター部品、インパネなどに用いるコックピットモジュール部品に用いることができる。その他の用途としては、例えば、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話等の電子部品に有用である。
3.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
3.1.実施例1
3.1.1.積層体の作成
<重ね合わせ工程>
シリンダー温度230℃、金型温度60℃の条件下、射出成形機(JSW社製、110H)を用いてPMMA樹脂(三菱ケミカル社製、商品名「アクリペット MF」)を射出成形し、長さ90mm×幅50mm×厚み3mmのレーザー透過部材を作成した。
次いで、PMMA樹脂(三菱ケミカル社製、商品名「アクリペット MF」)100質量部と、レーザー発色剤としてカーボンブラック(三菱ケミカル社製、商品名「#45」、平均粒子径24nm)0.3質量部とを、二軸押出機で溶融混練した後、ペレット化した。作成したペレットを、シリンダー温度230℃、金型温度60℃の条件下、射出成形機(JSW社製、110H)を用いて射出成形し、長さ90mm×幅50mm×厚み3mmのレーザー印字部材を作成した。
得られたレーザー透過部材とレーザー印字部材とを重ね合わせ、さらにその外側から石英板で挟み込み、0.6MPaの荷重で仮固定して積層体を得た。
<融着工程及び印字工程>
上記で得られた積層体に対して、レーザー透過部材側からレーザーを、端部から5mmの内周を溶着線幅2mmで額縁上にスキャン照射し、レーザー透過部材とレーザー印字部材とを部分的に融着させた。レーザーには、ドイツロフィン-シナール製のYVO4レーザー(波長1064nm、スポット径60μm、最大出力24W)を使用した。
その後、同レーザーを用いて、レーザー印字部材の表面を焦点位置に設置し、スポット径60μm、出力4W、スキャン速度600mm/secとし、日本カラリングの会社情報を記録した14mm×14mmの2次元バーコードを印字した。
3.1.2.評価方法
<印字の鮮明さ>
上記で得られた積層体のレーザー透過部材側から2次元バーコードリーダーにより読み取りし、読み取り可否により印字の鮮明さを評価した。読み取り装置としては、ISO/IEC TR29158に基づいて評価できる、キーエンス社製2次元バーコードリーダーSR1000を用いた。
(評価基準)
・読み取り可能であり、しかも目視で印字が非常に鮮明であると認められる場合、非常に良好と判断し「◎」と表記した。
・読み取り可能であり、しかも目視で印字が鮮明であると認められる場合、良好と判断し「○」と表記した。
・読み取り不可の場合、印字が不鮮明であり不良と判断し「×」と表記した。
<耐摩擦性>
上記で得られた積層体の印字部を爪で擦り、擦った後の積層体の印字部のかすれ(ダメージ)の状態を目視にて観察し耐摩擦性の評価を行った。評価基準は下記の通りである。評価結果を表1に併せて示す。
(評価基準)
・印字部にかすれが認められない場合、良好と判断し「○」と表記した。
・印字部にかすれが認められる場合、不良と判断し「×」と表記した。
<融着強度>
上記で得られた積層体を、インストロン社製の型番「5565」を用いてJIS K6850に準じてレーザー透過部材とレーザー印字部材の剪断強度を測定して評価した。評価基準は下記の通りである。評価結果を表1に併せて示す。
(評価基準)
・せん断強度が1kgf以上の場合、融着強度が良好と判断し「○」と表記した。
・せん断強度が1kgf未満の場合、融着強度が不良と判断し「×」と表記した。
3.2.実施例2~7
レーザー強度を適時変化させ、樹脂組成物の組成を表1の組成に変更した以外は、実施例1と同様にしてレーザー印字部材を作成し、印字の鮮明さ、耐摩擦性、融着強度を評価した。評価結果を表1に併せて示す。
3.3.比較例1
実施例1と同様にして作成したレーザー透過部材を金型内に載置し、実施例1と同じ装置(JSW社製、110H)を用いて実施例1で作成したレーザー印字部材用ペレットを、シリンダー温度230℃、金型温度60℃の条件下、インサート成形することによって、レーザー透過部材とレーザー印字部材とが一体化した長さ90mm×幅50mm×厚み6mmの積層体を得た。その後、実施例1と同様にして印字の鮮明さ、耐摩擦性及び融着強度を評価した。評価結果を表1に併せて示す。
3.4.比較例2
実施例1で得られたレーザー印字部材の表面を焦点位置に設置し、スポット径60μm、出力4W、スキャン速度600mm/secとし、直接レーザーを照射して日本カラリングの会社情報を記録した14mm×14mmの2次元バーコードを印字した。その後、実施例1と同様にして印字の鮮明さ及び耐摩擦性を評価した。評価結果を表1に併せて示す。
3.5.評価結果
下表1に、各実施例及び比較例における、レーザー印字部材を作成するのに用いた樹脂組成物ペレットの組成、工法、及び評価結果を示す。
Figure 0007061487000001
上表1中の樹脂種の略称は、それぞれ以下の通りである。
・PMMA:三菱ケミカル社製、商品名「アクリペット MF」、ポリメタクリル酸メチル
・PC:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「7022PJ」、ポリカーボネート
・PS:PSジャパン社製、商品名「HF77」、ポリスチレン
上表1から明らかなように、実施例1~7の本願発明に係る積層体の製造方法によれば、レーザー照射による印字手段を用いた場合に、印字部の鮮明さ及び耐摩耗性を同時に向上できる積層体が得られることがわかった。また、実施例1~7の本願発明に係る積層体の製造方法によれば、積層体の端部から5mmの内周を額縁状に融着させることによって、融着強度にも優れていることがわかった。
一方、比較例1の積層体の製造方法では、インサート二色成形によってレーザー透過部材とレーザー印字部材とが一体化された積層体であったため、レーザー透過部材とレーザー印字部材との間に可撓性領域が存在せず、印字部が不鮮明となることがわかった。
比較例2の積層体の製造方法では、印字部は鮮明であったが、印字部がレーザー透過部材によって保護されていないので、耐摩擦性に劣ることがわかった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…レーザー透過部材、12…レーザー印字部材、14…融着領域、16…印字部、18…可撓性領域、100…積層体

Claims (3)

  1. レーザー透過部材と、レーザーを吸収して発色するレーザー印字部材と、を重ね合わせる工程と、
    前記レーザー透過部材を透過させてレーザーを前記レーザー印字部材に照射して、前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部とを融着する工程と、
    前記レーザー透過部材を透過させてレーザーを前記レーザー印字部材に照射して、前記レーザー印字部材の表面に印字する工程と、
    を含み、この順に行い、
    前記融着工程における、前記レーザー透過部材の一部と前記レーザー印字部材の一部との融着領域が、前記レーザー印字部材の印字部以外の領域である、積層体の製造方法。
  2. 前記レーザー印字部材が、樹脂100質量部に対してレーザー発色剤を0.01質量部超1質量部未満含有する樹脂組成物からなる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記レーザー発色剤がカーボンブラックである、請求項に記載の積層体の製造方法。
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