JP3609693B2 - 高圧吐出ポンプ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧用吐出ポンプと、特に往復プランジャの原理によって作動する吐出ポンプの駆動装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
高圧吐出ポンプは、プランジャの径に関して相対的に長いプランジャ行程を有し、ゆえに、高圧を発生するのに適している。そのような高圧吐出ポンプは、例えば、内燃機関用の燃料噴射系（例えばコモンレール）の噴射圧を発生するために用いられている。一般的な形式の高圧吐出ポンプは、ＥＰ−Ａ−８８１ ３８０
Ａ１に開示されている。
【０００３】
一般的な形式の高圧吐出ポンプは、高圧シリンダあるいはプランジャシリンダと、その中で往復の動作で動くことができる円筒形のプランジャとを有し、上記高圧シリンダ内部の吐出空間の体積が、上記プランジャの行程動作によって変動される。上記プランジャの注入行程の間、押し除け量を増やしながら上記吐出空間を流れ媒体で満たすために、吐出空間が、流れ媒体用の供給空間に、注入バルブを介して接続される。次に続く吐出行程の間、上記注入バルブが閉じて、上記吐出空間の圧力が、圧力バルブが開くまで上昇して、その結果、吐出空間が高圧の空間に接続する。高圧ポンプの詳細の構造が、上述したＥＰ−Ａ−０ ８８１ ３８０ Ａ１に述べられていて、これを参照すると、その開示内容によって本出願の内容が明白になる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
プランジャは偏心駆動装置によって駆動されて、この偏心駆動装置は、偏心シャフトに搭載された偏心器を備え、上記偏心シャフトには回転リングが回転可能に取り付けられている。上記偏心器が回転する間、予め荷重を負ったプランジャが、その一端に設けられた円盤様の拡大部分によって、上記回転リングを押圧する。上死点と下死点を通過するときの力の割合によって、その過程で回転リングは前後に回転して、上記偏心シャフトが１回転する間に回転の方向を２度変える。これは、駆動シャフトが高い速度で回転すると、上記偏心駆動装置に損害を与える結果に導くことがある。
【０００５】
ゆえに、本発明の目的は、高回転速度においても、問題の無い挙動で動作する高圧吐出ポンプを提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
この目的は、請求項１の特徴を有する高圧吐出ポンプによって達成される。
【０００７】
本発明によれば、回転リングは少なくとも１つの凹み、または除去部分を有し、そのため、回転軸周りの回転リングの慣性モーメントが減少する。この慣性モーメントの減少によって、回転方向の変化の間における回転リングの加速度モーメントもまた減少して、その結果、偏心駆動装置の、特に回転リングとプランジャとの間の接触面の領域での損傷が回避される。
【０００８】
その結果、回転リングとプランジャ底部との間の滑動動作が不都合な結果を引き起こすことなく、一般的な形式の高圧吐出ポンプを、従来よりも高い回転速度で作動させることが可能になる。そのうえ、慣性モーメントの減少と、そのような回転リング全体の質量の減少によって、偏心駆動装置にかかる負荷が和げられる。なぜならば、駆動シャフトの軸受もまた、より少ない負荷にさらされるからである。
【０００９】
本発明の有利な実施形態は、明細書本文と図、従属クレームに述べられる。
【００１０】
第１の実施形態において、上記凹み、または除去部分は、回転リングの外周面に形成されている。その結果、慣性モーメントを減らすことができると同時に、上記回転リングの安定性が弱まらない。
【００１１】
本発明のさらなる着想において、上記回転リングは、その外周かつ接触面の領域の軸方向外側に、一周する少なくとも１つの凹みを有する。この実施形態において、回転リングは接触面の領域の外側が、対称に陥没していて、その結果、安定性が減少することがなく、回転方向が変わるときの慣性モーメントと、そしてその結果、加速度モーメントとが減少する。
【００１２】
回転リングが、その周りを一周する２つの凹みを有し、この凹みは回転リングの外側端部に夫々設けられて、横方向に接触面を定義するのであれば、特に有利である。これは左右対称の配列に形成されて、慣性モーメントの削減に関して最も効果的である。この実施形態において、回転リングの必須の外径は、接触面の領域に現れるのみである。上記回転リングは、接触面の外側領域において質量が削減されている。
【００１３】
【発明の実施の形態】
本発明は、有利な実施形態と添付された図面を参照しながら、純粋に例示として、以下においてさらに詳細に述べられる。
【００１４】
図１は、高圧吐出ポンプの軸方向断面を示し、高圧吐出ポンプはハウジング４を有し、その中に高圧シリンダ８を備え、その中にプランジャが、往復動作が可能に設けられている。上記高圧シリンダ８は、基部要素１１によってハウジング４の中に押し付けられていて、この基部要素１１は、ねじボルト１８と１８’によって、ハウジング４に、ねじ止めされている。さらに、吸入バルブ１２と吐出バルブ１３とが、上記基部要素１１に設けられていて、上記吐出バルブ１３は高圧容器１４に通じる通路を開閉する。
【００１５】
さらに、偏心駆動装置が高圧吐出ポンプのハウジング４の中に設けられていて、この偏心駆動装置は、回転軸１周りに回転自在に軸受５と５’によって支持された駆動シャフト３を有する。この駆動シャフト３は、軸受地点５，５’の間に偏心ピン６を有し、この偏心ピン６は駆動シャフト３の回転軸１に関して偏心して配置されていて、この偏心ピン６の中心軸２は駆動シャフト３の回転軸１に対して平行に延びている。外周が上反りになっている回転リング７が、偏心ピン６に対して回転可能に、偏心ピン６に設置されている。
【００１６】
プランジャ９は、高圧シリンダ８の実質的に円筒形のボア１０の中で、滑動動作して変位可能に案内される。上記プランジャ９は、駆動シャフト３に向う端部に、円盤のような拡大部分１５を有し、この拡大部分１５は回転リング７の上に係止している。この場合、参照番号１６は、回転リング７とプランジャ９の拡大端部１５との間の接触点、または接触面を示す。上記プランジャ９は、圧縮バネ１７によって回転リング７に対する予荷重がかけられていて、この圧縮バネ１７は一方を高圧シリンダ８に支えられ、他方を円盤１５に支えられている。
【００１７】
流れ媒体を圧縮して吐出するために、プランジャ９が偏心駆動装置３，６，７によって上下に動かされる。注入行程においてプランジャ９が下方に動くとき、高圧シリンダ８の吐出空間が、入口バルブ１２を経由した流れ媒体によって満たされる。その後に続く吐出行程においてプランジャ９が上方に動くとき、入口バルブ１２は閉じていて、出口バルブ１３が開いて高圧容器１４に吐出空間が連通するまでの間、吐出空間の圧力が上昇する。
【００１８】
図２は、図１中のＩＩ−ＩＩ線に沿う断面を示し、この断面に沿って接触面１６がハッチングされて示されている。見て分かるように、回転リング７に対するプランジャ９の高圧の負荷がかかる際に生じる接触面１６は楕円形で、これは上記回転リング７をわずかに上反りにしているからである。
【００１９】
図３と４は、上死点と下死点の間を通過する間における偏心駆動機構の動作の形態と回転リング７の動きを説明している。図３はプランジャ９が上死点に位置している様子を示している。偏心ピン６や駆動シャフト３の回転が、図示された反時計回り方向に進行している間、上記接触面１６は図３において左側に動く。その結果、回転リング７が時計回りに回転する。これは以下のことが理由で起こる。すなわち、スプリング１７の予荷重と吐出空間での圧力が上死点位置で最大になって、その結果、スプリング１７によって発揮される力が、円盤１５と回転リング７との間の滑り摩擦力よりも大きいからである。
【００２０】
図４は、プランジャ９の下死点位置を示している。偏心ピン６がこの下死点位置の方向になると、接触面１６は図において右側に移動する。その結果、回転リング７は反時計回りの回転動作を行う。これもまた、以下の理由で起こる。すなわち、スプリング１７によって発揮された力が、下死点位置の領域での円盤１５と回転リング７との間の滑り抵抗力よりもまた、大きいからである。
【００２１】
その結果、偏心軸６の回転動作の間、回転リング７は円盤１５に関して前後に動いて、駆動シャフト３が１回転する間に、上記回転リング７は回転方向を２度変える。これは、駆動シャフト３が高い回転速度のとき、回転リング７の回転方向が変化する割合と、これによる回転リング７の加速度モーメントの増加によって、問題に導かれる。最も望ましくない状況では、回転加速度の頂点の間で、円盤１５と回転リング７との間に滑りが起こり、これは損傷に至る要素である。
【００２２】
高回転速度において接触面１６の領域で損傷が起こることを防ぐために、図５の断面図に示すような本発明による回転リング７’が提供される。この回転リング７’は、回転リング７’の外周に２つの凹み、あるいは除去部分２０，２２が備えられていること以外は、図１から４までの回転リング７と実質的に一致する。上記除去部分２０，２２は、接触面１６の領域の軸方向において外側に位置すると共に、回転リング７’の外側端部に夫々配置されている。周りを一周する２つの除去部分２０，２２の間に現れる接触面、すなわち、回転リング７’の外周面の突出する部分もまた、僅かに上反りになっている。上記回転リング７’の除去部２０，２２は、断面で見ると、おおよそ矩形である。
【００２３】
【発明の効果】
本発明による回転リングは、より少ない慣性モーメントを有すると共に、それに対応する少ない加速度モーメントを有し、より大きな回転リングの回転方向の変換速度を許容する要素を有し、駆動シャフトのより高い回転速度を有するので、回転加速度の最高点において回転リング７’が円盤１５上で滑ることなく高圧ポンプのより高い吐出出力が得られる。したがって、本発明による偏心駆動装置を有する高圧吐出ポンプは、偏心駆動装置の損傷や過剰な摩耗を生じることなく、より高い回転速度で動作できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】偏心駆動装置を備える高圧吐出ポンプの断面を示した図である。
【図２】図１において示したＩＩ−ＩＩ平面に沿う断面図を示し、回転リングとプランジャとの間の接触面を表している。
【図３】プランジャが上死点に位置するときの偏心駆動装置の断面を示す図である。
【図４】プランジャが下死点に位置するときの偏心駆動装置の断面を示す図である。
【図５】本発明による回転リングの断面を示す図である。
【符号の説明】
３ 駆動シャフト
６ 偏心ピン
７ 回転リング
７’ 回転リング
８ 高圧リング
９ プランジャ
１６ 接触面
２０ 凹み
２２ 凹み

Claims (6)

1. 高圧シリンダと、その中で移動可能なプランジャと、駆動シャフトに配置されたと共に回転リングが回転可能に搭載された偏心器とを備え、上記回転リングは、プランジャ、または、それに連結された部分が押圧する円周の接触面を有する高圧吐出ポンプにおいて、上記回転リングは、２つの一周する凹みを外周面に有し、上記凹みは、この回転リングの軸方向において、この回転リングの外側の端部に設けられ、上記２つの凹みは、この２つの凹みの間に設けられる接触面を側方に定義することを特徴とする高圧吐出ポンプ。
2. 請求項１に記載の高圧吐出ポンプにおいて、
   上記凹みは、断面における形状が概ね矩形であることを特徴とする高圧吐出ポンプ。
3. 請求項１または２に記載の高圧吐出ポンプにおいて、
   上記回転リングの接触面の表面は、断面において上反りの形状になっていることを特徴とする高圧吐出ポンプ。
4. 請求項１乃至３のいずれか１つに記載の高圧吐出ポンプのための回転リングであって、上記回転リングは、外周面に２つの一周する凹みを有し、上記凹みは、この回転リングの軸方向において、この回転リングの外側の端部に設けられ、上記２つの凹みは、この２つの凹みの間に設けられる円周の接触面を側方に定義することを特徴とする回転リング。
5. 請求項４に記載の回転リングにおいて、
   上記凹みは、断面における形状が概ね矩形であることを特徴とする回転リング。
6. 請求項４または５に記載の回転リングにおいて、
   上記円周の接触面の表面は、断面において上反りの形状になっていることを特徴とする回転リング。

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