JP3609367B2 - パルス変換装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、起動および停止を繰り返す回転体から得られるパルス信号により、回転速度および累積回転数を表示し、またはその回転速度および累積回転数を制御に入力とする装置に利用する。本発明のパルス変換装置は、自動車、列車、機関車などの交通機関、工作機械その他に、速度とともに走行距離あるいは累積回転数を表示する装置に利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の速度計および走行距離計を例にとり説明すると、速度計用の回転パルスは、変速機の出力軸、すなわちプロペラ軸の回転に伴い発生するパルスを利用するものが普及している。具体的には、変速機の出力軸に回転板が取り付けられ、この回転板に光を反射するための模様が描かれていて、この回転板の回転による反射光の断続をフォトカプラが検出する構造になっている。このフォトカプラの電気出力パルスを利用して、運転席に設けた表示計にkm/hで表示される車速、およびkmで表示される走行距離が数字により表示される。このためには、フォトカプラが発生する出力パルスについて定められた変換比の周波数変換(または周期変換)が必要である。このためにフォトカプラと表示計との間にパルス変換装置が設けられる。
【0003】
いっぽう多数の車種の自動車を製造すると、車種ごとにタイヤの直径は異なり、プロペラ軸と車軸との間の減速比も異なる。したがってフォトカプラによるパルス発生器、および走行距離計つきの速度表示計を共通化するには、上記パルス変換装置は車種毎に周波数変換比の異なる規格のものが必要になる。これを避けて、パルス変換装置の規格を統一化し価格を安くするために、ハードウエアおよびソフトウェアがすべて同一規格であって、周波数変換比だけを後から設定することができるパルス変換装置が開発され、広く利用されるようになった。このようなパルス変換装置は、自動車に限らず、工場内で利用する無人運搬車両などの電気自動車にも利用されるようになった。
【0004】
また、フォトカプラの出力パルスを直接利用して運転席に設けた表示計に速度表示を行うと、車速のわずかな変動が発生するたびに表示計が変化するから、フォトカプラが発生する出力パルスのn個ごとに、その周期の移動平均を演算し、この移動平均に対応するパルスを運転席に設けた表示計に供給するようになった。すなわち、回転体装置(上記例では回転板およびフォトカプラ)から発生される入力パルスの周期が回転起動時から順にt1 、t2 、t3 、・・・・tn ・・とするとき、入力パルス毎に新しい移動平均演算周期を開始する構成では、この入力パルスのn個毎の周期の移動平均値に変換係数αを乗じた周期、すなわち
【0005】
【数1】
なる周期の出力パルスを送出するパルス変換装置が利用されるようになった。このnの値は具体的な例では数個ないし数十個である。この技術は例えば、特開平6−317603号公報、実開平1−58168号公報などに開示がある。この装置はプログラム制御回路を利用して、ソフトウェアの動作により周波数変換(または周期変換)を行うものであり、変換係数αは、タイヤの直径やプロペラ軸と駆動軸との変換ギヤ比に対応して、さらに運転席に設ける表示計の特性に対応して、このプログラム制御回路に後から設定することができるように構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この装置はきわめて優れた装置であり、速度計および走行距離計などに広く利用されるようになった。しかし、入力パルス周期の移動平均を演算するようになっているから、回転体装置が回転を起動した時点から、最初のn個のパルスが入力し、このn個のパルスについての周期(さらに詳しくはn−1個の周期)について最初の移動平均値が演算されるまでは出力パルスが現れない。そして、この回転体装置が回転を停止したときには、所定時間(数秒)にわたり新しいパルスが入力しないことにより、移動平均の演算動作は停止される。さらに誤動作を避けるために、この演算計数回路はリセットされてしまう。これは、速度表示については実質的に問題ないが、走行距離表示については最初のn個のパルスをミスカウントしたことになる。つまり、車両が走行停止を繰り返すと、その停止のつどn個のパルスを失って積算されたことになり、積算走行距離表示については誤差が生じることになる。
【0007】
この値を現在多用されている自動車用のパルス変換装置および実用車両について概算すると、一回の停車および発車のつど、走行距離にして数メートル、さらに詳しくは一例で1.96メートル(この計算根拠は煩雑になるので省略する)に相当する誤差が発生していることになる。これは通常の自動車の運転席に設けた走行距離計の表示については許容できる誤差である。しかしこの誤差は、無人運転により走行距離にしたがって停車位置を制御するたとえば「ゆりかもめ」のような車両や、工場内で材料や製品を運搬する無人運搬車両などについては無視できない誤差になる。とくに、このような無人運転の車両で、距離マーカを通過することにより距離情報がリセットされて、その時点を起点として停車位置までの距離を定めるように構成された車両では、距離情報がリセットされたあと、何らかの事情で一旦停車および発進が行われると、車両内の距離設定にそのつど数メートルの誤差が生じて、つぎに停車するときには所定位置に正しく停車することができないことになる。回転速度とともに回転回数を計数して、自動的な運転制御を行う工作装置などに利用する場合も同様な不都合が発生する。
【0008】
本発明はこのような背景に行われたものであって、移動平均を演算することにより生じる出力パルス数の誤差を補償するパルス変換装置を提供することを目的とする。本発明は、走行積算距離計、あるいは積算回転回数を正しく表示するためのパルス変換装置を提供することを目的とする。本発明は、無人の運転制御に利用することができるパルス変換装置を提供することを目的とする。本発明は、自動的な運転制御を行う工作装置などに利用することができるパルス変換装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、回転体が回転を開始した直後に発生するミスカウント分に相当する数のパルス、すなわち上記説明のn個のパルスに相当するαn個(αは変換係数)のパルスを出力に自動的に加算し送出することを特徴とする。このαn個のパルスを一度に送出すると、速度計表示が正しくなくなるから、速度計表示の誤差として許容される程度に分散させて、パルス変換装置の出力に加算して送出することがよい。
【0010】
すなわち本発明は、回転体から到来する入力パルスの周期が回転起動時から順にt1 、t2 、t3 、・・・・tn ・・とするとき、この入力パルスの連続するn個についての周期の移動平均値を入力パルスのm個毎に演算し、この移動平均値に変換係数αを乗じた周期
【0011】
【数2】
で出力パルスを送出するパルス変換装置において、
前記回転体が起動してから最初の出力パルスが送出されるまでの時間の入力パルスの数nに対応するαn個を補充すべき出力パルスとして追加して送出する手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
なお上記[数1]により示す移動平均演算の例は、新しい入力パルスが1個入力するごとに新しい移動平均演算を開始するように構成したものである。一般に移動平均演算は、新しい入力パルスがm個入力するごとに開始するように構成することができるから、この場合の出力パルスの周期T1 、T2 、T3 ・・・・は[数2]のようになる。上記した[数1]は[数2]においてm=1としたときに相当する。
【0013】
本発明は、前記送出する手段が補充すべき出力パルスを送出するタイミングを前記最初の出力パルスが送出された後に設けるように構成することができる。さらに本発明は、複数の移動平均周期にわたり前記補充すべきパルスを分散して送出する手段を含む構成とすることができる。
【0014】
この構成により、回転体の起動直後にミスカウントされたパルスは、あとから補充して出力されるから、このパルス変換装置の出力を利用する走行距離計その他パルスの積算値を利用または表示する場合にも、これを正確な距離情報として利用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施例図面を用いて詳しく説明する。図1は本発明実施例装置のブロック構成図である。この装置の構成要素は一つの半導体チップからなる演算回路1であり、その入力端子には回転体に設けられた回転センサ2から発生するパルスが入力する。そして、この入力パルスがこの演算回路1の内部で演算処理され、出力バッファ3を介して変換出力として送出される。
【0016】
この回転センサは、例えば自動車の変速機出力軸(プロペラ軸)に設けられた車速用回転センサである。たとえばプロペラ軸が一回転するごとに2個の電気パルスを送出するものが広く用いられている。そして出力バッファ3から送出される変換出力は、その車両の速度計および走行距離計の入力パルスとして利用される。
【0017】
この演算回路1では、回転センサ2から入力するパルスのn周期毎について移動平均値が演算され、さらにその演算された移動平均値に変換計数αを乗算した周期のパルスが変換出力として送出される。移動平均値を演算するのは、この回転センサ2の出力を直接利用して速度計入力とすると、車速のこまかい変化に対応して速度計が敏感に変動することになるが、移動平均値を速度計入力とすると、速度計の変化が緩やかになりその表示が見やすくなるからである。
【0018】
また、変換係数αを乗算した周期のパルスを利用するのは、この半導体チップで構成された演算回路1を複数の車種について共通化するためである。すなわち多数の車種の自動車を製造する場合には、それぞれ車種毎にタイヤの直径が異なり、プロペラ軸から駆動軸への変換比が異なる。したがって、回転センサを変速機出力軸に設けると、タイヤの直径および駆動軸への変換比に対応して異なる演算回路が必要になるところ、出力パルスの周期についての変換係数αを後から設定するように構成することにより、一種類の半導体チップが多数種類の自動車について共通に利用できるようになる。これは上記従来技術の欄で説明したとおりである。
【0019】
図1に示す変換係数α設定装置4は、自動車の製造ラインに設けたコンピュータ装置であり、自動車の製造工程で演算回路1に一時的に接続し、その車種に相当する変換係数αを入力し演算回路1に設定した後にその接続は切り離される。以降この演算回路1は変換出力として送出するパルスの周期は変換係数αを乗算した周期のパルスとなる。変換出力周波数は(1/α)となる。
【0020】
ここで本発明の特徴はその演算回路1の起動時の動作にある。図2は本発明実施例装置の動作を説明するタイミング図である。横軸に時間をとり、この時間軸は図2(1)から(5)について共通の時間軸である。いま回転体が停止している状態から起動して回転をはじめると、回転センサ2からの入力パルスは、回転体の加速状態に応じて、図2(1)に示すようにしだいに周期が短くなるパルスが入力する。
【0021】
そしてこの演算回路1は図2(2)の最上段に示すように、入力パルスを計数しその計数値がnになる毎に、図2(3)に示すような出力パルスを1個送出する。ついで入力パルスの2番めのパルスから同様に、図2(2)の第二段に示すように入力パルスを計数し、その計数値がnになる毎に図2(3)に示すような出力パルスを1個送出する。図2(2)の第三段についても、入力パルスの3番めのパルスからn個のパルスを計数すると出力パルスを1個送出する。このようにして得られた(3)に示す出力パルスは、入力パルスn個毎の移動平均周期のパルスになる。図2では変換係数αについては図示していないが、図2(3)に示すパルスの周期にαを乗算した周期のパルス、つまり図2(3)に示すパルスの(1/α)倍の周波数のパルスが、変換出力として出力バッファ3から送出される。図2(3)に示す図はα=1の場合に相当する。そして図2(3)に示す出力パルスの周期T1 、T2 、T3 ・・・・は
[数1]
のとおりになる。
【0022】
ここで本発明が問題にしたところは、この出力パルス(図2(3))には、最初のパルスが到来してからn番めのパルスが到来するまでは信号出力がないことである。これは移動平均周期を演算するために避けられないものである。そして、上述のように回転体が停止して所定時間(数秒)にわたりパルス入力がないときには、この演算回路1は雑音発生を避けるためにリセットされてしまうから、この最初のn個のパルスについては、ミスカウントされてしまい対応するパルスが出力されないことになる。この変換出力を速度計表示に利用する場合には問題ないが、積算値(例えば走行距離)として利用する場合には、回転体が停止するつど小さい誤差を発生することになる。
【0023】
本発明は、この誤差を補償するところに特徴がある。すなわち図2(5)に示すように、変換出力に図2(3)のパルスに加えて追加パルスを送出するように構成されている。この図2に示す例では回転体が起動するごとにn個のミスカウントが発生するから、この装置から変換出力が送出されるようになってから、出力端子に間欠的にn回パルスを余分に送出する。図2(5)にはこのn回のパルスのうちの最初の1回分が表示されている。
【0024】
このn回のパルスは、原理的には回転体が起動してから停止するまでの間のどの時期に送出してもよい。しかし、これをいちどにまとめて送出すると、速度計表示が変動して見にくくなるから、速度計表示に影響しないように比較的長い時間にわたり間欠的に送出することがよい。たとえば本来の出力パルスの10回ないし20回に1回ていどの割合で送出するなら、速度計の表示には影響がないので好都合である。
【0025】
図3に演算回路1の動作について要部フローチャートを示す。図3に一点鎖線で囲む部分が本発明により追加される処理動作である。
【0026】
図4に本発明実施例の出力パルスによる車速表示を示す図である。横軸は回転体の起動時点を零として時間の経過であり、縦軸は車速であり、たとえば運転席に表示されるアナログ表示の車速値である。回転体の起動時から時間nT1 が経過するまでは、実際の車速は破線のように推移するがパルス出力がないから運転席の表示は零である。そしてこの時間nT1 が経過した時点から車速表示が行われる。本発明の構成では、この時点から上で説明したようにα×n個のパルスを順次送出するから、実際の車速より斜線を付して表示した分だけ加算されて表示されることになる。そして時間txが経過したところでα×n個のパルス送出を完了し、実際の車速の移動平均値の表示にもどる。
【0027】
【発明の効果】
本発明により、移動平均演算を実行するに伴い発生する入力パルスのミスカウントは補償されるから、本発明のパルス演算装置では、その出力を積算値表示に利用しても誤差は発生しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例装置のハードウエアのブロック構成図。
【図2】本発明実施例装置の動作タイミング図。
【図3】本発明実施例制御回路の要部動作フローチャート。
【図4】本発明実施例の出力パルスによる車速表示を示す図。
【符号の説明】
1 演算回路
2 回転センサ
3 出力バッファ
4 変換係数(α)設定装置
Claims (3)
- 回転体から到来する入力パルスの周期がその回転体の起動時から順にt1 、t2 、t3 、・・・・tn ・・とするとき、この入力パルスのn個毎の周期の移動平均値に変換係数αを乗じた周期で出力パルスを送出するパルス変換装置において、
前記回転体が起動後にαn個のパルスを補充すべき出力パルスとして追加して送出する手段を備えたことを特徴とするパルス変換装置。 - 前記送出する手段が補充すべき出力パルスを送出するタイミングを前記最初の出力パルスが送出された後に設けた請求項1記載のパルス変換装置。
- 前記送出する手段は、複数の移動平均周期にわたり前記補充すべきパルスを分散して送出する手段を含む請求項2記載のパルス変換装置。
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- 2001-11-05 JP JP2001339597A patent/JP3609367B2/ja not_active Expired - Fee Related
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