JP3609348B2 - アルミニウム合金の電解着色方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム及びアルミニウム合金(以下、アルミニウム合金という)の表面に均一な着色皮膜を形成することができる電解着色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金の表面に陽極酸化処理を施し、金属イオンを含有する電解浴中で電解処理をする着色方法は、住宅用建材などで従来から広く実施されているが、得られる色調がブラック、ブロンズ、アンバー等に限られている。そこで、各種の多色電解着色方法が提案されているが、着色に濃淡が生じ、色調の安定性や再現性が良くないという問題があり、広く実用化されるに至っていない。この問題を解決するため、例えば、特許第2534805号公報には、電解着色処理に先立って交流電解処理をする際にピーク電流を検出して積算電荷量を制御する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した公報に示される電解着色方法においては、交流電解処理の電圧によっては電流のピーク値が非常に穏やかとなり、ピーク電流を明確に検出することが困難となる恐れがあった。また、通電開始からの合計電荷量を制御する方法では、電流の変動にむらがあるため誤差が大きくなる恐れがあった。
【0004】
それゆえ、本発明は、色調の変化に富んだ多色の電解着色方法にも関わらず、ばらつきを抑えて安定した色調を均一に着色することができるアルミニウム合金の電解着色方法を提供することを、その技術的課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した技術的課題を解決するために講じた本発明によるアルミニウム合金の電解着色方法は、アルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、陽極酸化皮膜の微細ポアー構造を形成する膜質調整工程と、該微細ポアー構造の底部に金属イオンを析出させる工程とを備える電解着色方法において、前記膜質調整工程をする際、通電開始からの電流と通電時間との関係を表した通電曲線の所定通電時間範囲における一次微分値がピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を制御することを特徴とする。
【0006】
上記した本発明によるアルミニウム合金の電解着色方法においては、ばらつきの少ない多色の電解着色皮膜を形成することができる。
【0007】
ここで、好ましくは、前記陽極酸化処理工程直後に、陽極酸化処理工程での電圧を低下させて通電することにより、陽極酸化皮膜のバリヤ層の厚さを調整することが望ましい。これにより、膜質調整工程の電圧を低く設定することができ、鮮やかな色調を得ることができると共に、色調のばらつきを更に抑えることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
第1工程(陽極酸化処理工程)は、図1に示すように、アルミニウム合金1の表面に多孔質の陽極酸化皮膜2を化成するのが目的である。従って、通常はアルミニウム合金1の表面を必要に応じてバフ研磨を行った後に脱脂洗浄し、アルカリエッチング又は化学研磨を行い酸洗処理を施し、これを陽極とし、鉛板・グラファイト等を陰極にして用い、直流又はパルス波形にて電解される。また用いられる電解液としては、硫酸・シュウ酸・クロム酸・リン酸・芳香族スルホン酸などが広く知られている。
【0010】
第2工程(バリヤ層調整工程)は、図2に示すように、第1工程にて化成された陽極酸化皮膜2のバリヤ層4の厚さを薄く、均一にすることが目的であり、第1工程終了後連続して電圧を50〜90%まで30〜60秒間にわたり徐々に低下させて、そのまま1〜10分間の直流電解を行う。これにより次工程の微細ポアー構造の電解調整工程にて印加される交流電圧を低く設定することができ、鮮やかな発色が得られるとともに、色調のばらつきを抑える効果がある。
【0011】
第3工程(膜質調整工程)は、図3に示すように、ポアー3の底部を枝分かれ状の微細ポアー構造5にすることで、第4工程における電解着色にて干渉色を生じさせることを目的とする。電解条件としては、第1〜2工程と同一の電解液の浴内で、第2工程で最終的に印加された直流電圧よりも低い電圧にて1〜8分間の交流電解を行う。このときの交流電圧は、できるだけ低いほうが皮膜の改質される速度を遅らせることができ、色のばらつきを抑える効果があることから、望ましくは2〜3Vにて電解する。
【0012】
また、この第3工程における電解条件のばらつきを抑えることが、第4工程での着色の色調を抑えるのに不可欠であるが、この方法としては、図5に示すように、通電開始からの電流と通電時間との関係を表した通電曲線の所定通電時間範囲(例えば、時間ta〜tb)における一次微分値、すなわち時間t1における電流値をi1、時間t2における電流値をi2とするとき、di=i2−i1で表されるdiの値がピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を一定に制御することで色調のばらつきを抑えることができる。また、このときdt=t2−t1で表されるdtの値は、0.5〜5秒程度が望ましい。尚、積算電荷量の値は、電流や所望する色調等により異なった値が定められる。
【0013】
第4工程(電解着色処理工程)は、図4に示すように、第3行程までに形成された微細ポアー構造5の底部に金属イオン6を析出させ、干渉色を得ることを目的とし、Sn、Cu、Ni、Co、Fe等の金属イオンを含む水溶液中にて、対極にグラファイト電極を使用して、交流電解を行う。このときの電解条件は、8〜20Vで1〜5分間程度が望ましい。
【0014】
次に、本発明の実施例について、比較例と比較して具体的に説明する。
【0015】
[実施例1]
A6063合金(JIS)からなる自動車用ドアフレームをヘアラインバフ研磨し、工業用弱アルカリ洗剤にて50℃×5分間洗浄した後、水酸化ナトリウム100g/l、50℃中で3分間エッチング処理を行い、水洗後に硝酸150g/l、20℃×1分間酸洗し、水洗後に硫酸200g/l、対極に鉛極板を使用し13V×35分間の陽極酸化処理をして、10μmの陽極酸化皮膜が得られた(第1工程)。
【0016】
次に、第2工程として、第1工程終了後連続して40秒間で電圧を8Vまで低下させて、その後5分間の陽極電解を行い、バリヤ層の厚さを調整した。
【0017】
第3工程として、第1〜2工程と同じ浴内で交流電圧2.5Vで、電流の一次微分値のピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を9200C(一定)になるように通電を制御し、陽極酸化皮膜の調整を行った。
【0018】
第4工程として、硫酸第一スズ10g/l、酒石酸20g/l、硫酸15g/lを含む水溶液を用い、浴温25℃、交流電圧10Vで120秒間の電解着色を行うと、シルバー調の鈍い金属光沢を有するブルー色の着色皮膜が得られた。
【0019】
上記の条件にて5回の繰り返し処理を行ったときの色調を、L* a* b*表色系(CIE規格)による色差計(村上色彩技術研究所製、鏡面色差計SCD−1)により測定した結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0003609348
【0021】
表1に示すように、繰り返して処理を行った5回共、同一色調(ブルー)に着色された均一な着色皮膜が得られ、最大色差はΔE=2.1となり、目視による色調の差は認められなかった。
【0022】
[比較例]
第3工程の交流電解で、通電開始からの積算電荷量を12000C(一定)になるように通電を行った以外は、実施例1と同様に実施し、5回の繰り返し処理を行ったときの色調を測定した結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
Figure 0003609348
【0024】
表2に示すように、5回の繰り返し処理を行った結果、グリーン、ブルー、グレー等に着色された着色皮膜が得られ、最大色差はΔE=4.8となり、実施例1に比べて色のばらつきが大きくなっている。特に、色相差Δa* と彩度差Δb* の値が実施例1と比べて大きいため、目視によっても明らかな色調の差が認められた。この原因は、図6に示すように、第3工程における通電のばらつきが、電流が上がり始めるまでの時間のばらつきに起因するからである。
【0025】
それに対して、本発明よる実施例1は、電流の一次微分値がピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を一定になるように通電を制御して管理しているので、電流が上がり始めるまでの時間のばらつきを無視することができ、電流が上昇し始めてからの電荷量、即ち皮膜の改質にかかわる有効な電荷のみを抽出して制御することにより、色のばらつきを抑えることができる。
【0026】
[実施例2]
第3工程の交流電解で、電流の一次微分値のピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を9600C(一定)になるように通電を行った以外は、実施例1と同様に実施したところ、シルバー調の鈍い金属光沢を有するグリーンの色調が得られた。
【0027】
[実施例3]
第3工程の交流電解で、電流の一次微分値のピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を14000C(一定)になるように通電を行った以外は、実施例1と同様に実施したところ、クロムメッキ調の鏡面光沢をもつパープルの色調が得られた。
【0028】
[実施例4]
特開平6−100970号公報で開示されたアルミニウム合金を使用した自動車用ベルトモールを鏡面バフ研磨し、工業用弱アルカリ洗剤にて50℃×5分間洗浄した後、リン酸および硝酸を含む浴中で95℃×1分間の化学研磨処理を行い、水洗後に硝酸150g/l、20℃×1分間酸洗し、水洗後に硫酸200g/l、対極に鉛極板を使用し13V×35分間の陽極酸化処理をして、10μmの陽極酸化皮膜が得られた(第1工程)。
【0029】
次に、第2工程として、第1工程終了後連続して40秒間で電圧を8Vまで低下させて、その後5分間の陽極電解を行い、バリヤ層の厚さを調整した。
【0030】
第3工程として、第1〜2工程と同じ浴内で交流電圧2.5Vで、電流の一次微分値のピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を7200C(一定)になるように通電を制御し、陽極酸化皮膜の調整を行った。
【0031】
第4工程として、硫酸第一スズ10g/l、酒石酸20g/l、硫酸15g/lを含む水溶液を用い、浴温25℃、交流電圧10Vで120秒間の電解着色を行うと、クロムメッキ調の鏡面光沢をもつ淡いブルー色調が得られた。
【0032】
【発明の効果】
以上の如く、本発明によるアルミニウム合金の電解着色方法によれば、色調の変化に富んだ多色の着色皮膜にも関わらず、ばらつきを抑えて安定した色調で均一に着色することができる。その結果、住宅用の壁装材や窓枠材に使用することは勿論、複数の部品が狭い範囲で組み合わされ一層色調のばらつきを抑える必要のある自動車用外装部材にも使用することができ、装飾効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電解着色方法の一実施形態における第1工程を示す模式図である。
【図2】本発明による電解着色方法の一実施形態における第2工程を示す模式図である。
【図3】本発明による電解着色方法の一実施形態における第3工程を示す模式図である。
【図4】本発明による電解着色方法の一実施形態における第4工程を示す模式図である。
【図5】本発明による電解着色方法の一実施形態における通電曲線を示す図である。
【図6】比較例における通電曲線を示す図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム合金
2 陽極酸化皮膜
3 ポアー
4 バリヤ層
5 微細ポアー構造
6 金属イオン

Claims (2)

  1. アルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、陽極酸化皮膜の微細ポアー構造を形成する膜質調整工程と、該微細ポアー構造の底部に金属イオンを析出させる工程とを備える電解着色方法において、前記膜質調整工程をする際、通電開始からの電流と通電時間との関係を表した通電曲線の所定通電時間範囲における一次微分値がピークに達した時点を基点としてそれ以降の積算電荷量を制御することを特徴とするアルミニウム合金の電解着色方法。
  2. 前記陽極酸化処理工程直後に、陽極酸化処理工程での電圧を低下させて通電することにより、陽極酸化皮膜のバリヤ層の厚さを調整することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金の電解着色方法。
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