JP3609153B2 - 床材用上張材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、細く裁断された紙に撚りをかけて抄織糸を形成し、この抄織糸を機織することにより作った床材用上張材の製造方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
住宅用床材としては、フローリング、カーペット、クッションフロア、畳などがあるが、日本の生活習慣に合い、保温性、弾力性、感触性に優れた畳が現在見直されている。畳表の材料としてはイ草が代表的であるが、イ草にも各種の欠点が存在する。即ち、
▲1▼ 天然繊維のために繊維径や色が限定され、デザイン・バリエーションに乏しい。
▲2▼ 天然繊維のため、ダニやカビが発生しやすい。
▲3▼ イ草の内部には白いスポンジ状の繊維の芯があり、表面が摩耗して白いスポンジ状の繊維が表れると目立って見苦しくなる。
▲4▼ 天然繊維の生産量は天候に左右され易く、又、天候による品質のばらつきも大きい。
▲5▼ イ草の長さには一定の限度があるので、織り幅が制限され、幅の大きいものを織る事が出来ない。
【0003】
このような天然繊維であるイ草の欠点に対してポリプロピレン等の合成樹脂を繊維とした畳表も提案されているが、これも以下のような欠点がある。
▲1▼ 吸湿性が乏しいため、べとつき易く感触性に劣る。
▲2▼ 素材が人工的であるため風合いや色合など自然感に劣る。
【0004】
そこで、前記近年では問題点を解決する床材用上張材の素材として紙が着目されている。紙を用いた製造法としては抄造した紙を20〜40mm程度の幅に裁断して、これに筒状に撚りをかけて抄繊糸を形成し、この抄繊糸を機織することによって畳表とする方法が提案されている(特開平7−3572号等)。
【0005】
素材として抄繊紙を用いる場合、紙の段階,抄繊糸の段階又は編繊後のいずれかの段階で紙のケバ立ちを防止し、製品にコシを持たす目的でアクリル樹脂等の合成樹脂,スチレンブタジエンゴムのような合成ゴムが表面にコーティングされ、摩耗強度,触感等の物性を向上させるためにセルロース系樹脂,ナイロン樹脂,アミノ樹脂等で表面処理している。
【0006】
このような処理が施された抄造紙製の畳表は多くの点でイ草と同等の性能を有しているが、吸水性が高い。よって、抄造紙製の畳表にコーヒー,ジュース,醤油等の液体をこぼした場合には時間の経過とともに抄繊糸の内部にまで浸透し、汚れを除去することが困難になる。
また、掃除の際に濡れ雑巾等で強く繰り返し擦られると、表面層がはげる恐れがある。
【0007】
そこで、上記の樹脂等にワックスや撥水剤を添加することが行われているが、素材の吸水性によりワックスや撥水剤を多量に必要とするという問題点があった。ここに、本発明は製品に十分な撥水性を発揮させると共に、製造工程で用いられる撥水剤の量を少なくすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の床材用上張材の製造方法は、紙に撚りをかけて形成した抄繊糸に合成樹脂液を含浸させた後に乾燥させ、次いで先に含浸させた合成樹脂液と同じ合成樹脂液と撥水剤との混合液を含浸させた後に乾燥させる工程を有することを特徴とする。
【0009】
【作用】
第1段階の処理,乾燥の後に撥水剤を用いた第2段階の処理をしているため、撥水剤が抄繊糸の内部に吸収されにくく、主として抄繊糸の表面部分のみに付加されるため、必要な撥水剤の量が少なくてよい。表面部分に撥水剤が集中して付与されるために、水分が浸透しにくく汚れにくい。
【0010】
【実施例】
以下、本発明を好適な実施例を用いて説明する。
厚さ25μm,18g/m2の紙を25mm幅のテープ状とし、これに撚りをかけ太さ1.1mmの抄繊糸を形成した。この抄繊糸に40%アクリル樹脂液50重量部,水50重量部の処理液を750g/kgの割合で含浸し、1分間加熱乾燥し樹脂硬化後,40%アクリル樹脂液5重量部,フッ素樹脂10重量,水85重量部よりなる処理液を180g/kgの割合で含浸し、30秒加熱乾燥し樹脂を硬化させたものを編織した。
【0011】
[比較例]実施例と同様の抄繊糸に40%アクリル樹脂液50重量部,フッ素樹脂10重量部,水40重量部の処理液を940g/kgの割合で含浸させたものを1.5分加熱乾燥させ樹脂を硬化させた後に編織した。
【0012】
[比較試験]
以上のようにして製作した実施例及び比較例の畳表と、従来からのイ草を用いた畳表について、耐汚染性とウエットアブレージョン性について調べる比較試験を行った。ここに耐汚染性はAATCC法で調べた。このAATCC法は汚染状態を1級〜8級までの8段階の級に分けるものであり、級が大きくなるほど(8級に近づくほど)耐汚染性に優れていることになる。また、ウエットアブレージョン性については濡れ雑巾で同じ箇所を繰り返し擦り、表面層がはげる回数を調べた。したがって、この回数が大きいほどウエットアブレージョン性が優れていることになる。
【0013】
この比較試験の結果を下記に示す。
Figure 0003609153
【0014】
この結果から、本発明の実施例は耐汚染性,ウエットアブレージョン性共に優れていることが分かる。ここで、注目すべきことは、実施例の処理用いた樹脂の必要量であり、実施例の樹脂使用量は比較例と比較してアクリル樹脂使用量は約80%,フッ素樹脂使用量は20%でよい。すなわち、本実施例は少ない樹脂使用量であるにもかかわらず比較例を大きく上回る耐汚染性,ウエットアブレージョン性を示したといえる。
【0015】
実施例がこのように優れた性能を示すのは、処理を2段階とすることにより第2段階の処理時に撥水剤が必要以上に抄繊糸内部に吸収されず、その結果、抄繊糸の表面付近に集中的に撥水剤が付与されることにより抄繊糸表面に撥水性の被膜が形成され、少ない量の撥水剤でも水性物質の抄繊糸内部への浸透を有効に防止できるためであると思われる。
【0016】
撥水剤は紙を撚ることにより作られた抄繊糸の表面のみに付与されればよいので、撚る前の紙の段階で処理すると必要以上の使用量を必要とする(撚られときに抄繊糸の内部に位置することになる部分にも撥水剤を付与することになるので、多量の撥水剤が必要となる)ので好ましくない。また、編繊後に処理すると隣接する抄繊糸間の目が詰まり通気性を損なう恐れがあるだけでなく、隣接する抄繊糸が接着されてしまうことによって製品加工時に不都合を生じる恐れもある。したがって、処理は抄繊糸の段階で行うのが望ましい。
【0017】
上記実施例においては撥水剤としてフッ素樹脂を用いたが、これに限られるものではなく例えばシリコーン樹脂のような他の撥水剤を用いてもよい。尚、シリコーン樹脂を撥水剤として用いる場合には抄繊糸の内部に浸透しやすい為に皮膜を形成し易い有機樹脂と混合して用いるのが好ましい。また、バター,オイル等の油性の汚染物質による汚染が問題となるような場合には、ワックス樹脂はあまり好適ではないと考えられる。
【0018】
【発明の効果】
以上述べたように本発明により、細く裁断された紙に撚りをかけて抄糸を形成し、この抄糸を機織することにより作った床材用上張材の製造方法において、製品に十分な撥水性,耐汚染性を発揮させると共に、製造工程で用いられる樹脂及び撥水剤の量を少なくすることができる。

Claims (2)

  1. 紙に撚りをかけて形成した抄繊糸に合成樹脂液を含浸させた後に乾燥又は硬化させ、次いで先に含浸させた合成樹脂液と同じ合成樹脂液と撥水剤との混合液を含浸させた後に乾燥又は硬化させる工程を有することを特徴とする床材用上張材の製造方法。
  2. 撥水剤はフッ素系樹脂であり、その含浸量は抄繊糸1kgに対して10g以上25g以下であることを特徴とする請求項1記載の床材用上張材の製造方法。
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