JP3608769B2 - シートベルト用バックル装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシートベルト用バックル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シートベルト装置のなかには、車両衝突等の緊急事態の発生初期に優れた拘束性能を得るためにプリテンショナを備えたものがある。プリテンショナによれば、車両が衝突したとき、シートベルトを引込んでシートベルトの緩みを瞬時に取除くことにより乗員の拘束性能を高めることができる。
また、シートベルト装置のなかには、シートベルト張力が設定値を越えると、シートベルト張力を一定に保ちながらシートベルトを所定量引出して、乗員に作用する衝撃エネルギを吸収する衝撃エネルギ吸収機構(以下「EA機構」という。なお、EAはEnergy Absorbの略である。)を備えたものがある。
【0003】
上記プリテンショナ及びEA機構を巻取装置に内蔵したシートベルト装置として、例えば▲1▼特開平9−2203号公報「シートベルト装置」が知られており、同公報の技術を次図18で説明する。
一方、上記プリテンショナ及びEA機構をバックル装置に設けたシートベルト装置として、例えば▲2▼特開平8−268224号公報「力の制限方法および力のリミッタ」が知られており、同公報の図5(a)の技術を次図19で説明する。
【0004】
図18は従来のシートベルト装置(プリテンショナ及びEA機構を巻取装置に内蔵したもの)の説明図である。
シートベルト装置は、巻取装置100にプリテンショナとEA機構とを内蔵しており、車両の減速度が設定値を超えたときプリテンショナが作動して巻取装置100でシートベルト101を巻取り、シートベルト101の緩みを瞬時に取除く。また、シートベルト張力が設定値を超えたときEA機構でシートベルト101を繰出して乗員102に作用する衝撃エネルギを吸収するものである。
【0005】
プリテンショナは、シートベルト101の緩みを取除くために、シートベルト101を矢印の如く肩ベルト101aに沿って巻取るように構成されている。
肩ベルト101aは、スルーアンカ105aとタング105bとの間のベルトを示す。なお、101bは、タング105bとアンカプレート105cとの間の腰ベルトを示す。
【0006】
図19は従来のシートベルト装置(プリテンショナ及びEA機構をバックル装置に設けたもの)の説明図である。(なお、シートベルト引角は肩ベルト113aの水平に対する傾きをいうが、理解を容易にするためバックル112の傾きαとして説明する。以下、同じ。)
シートベルト装置は、バックル装置110のプリテンショナ111にEA機構を内蔵したもので、車両の減速度が設定値を超えたときプリテンショナ111でバックル112を矢印方向に移動させてシートベルト113の緩みを瞬時に取除く。また、シートベルト張力が設定値を超えたときEA機構でバックル112を逆方向に移動して乗員115に作用する衝撃エネルギを吸収するものである。
【0007】
プリテンショナ111は、シートベルト113の緩みを取除くとき、シートベルト113を矢印の如く肩ベルト113aに沿って引張るように構成されている。このため、プリテンショナ111でシートベルト113を引張っても、シートベルト引角αは変らない。
なお、116はガス発生部、117はガスが流入するシリンダ、117aはシリンダ117内を移動するピストン、118はピストン117aとバックル112とをつなだケーブル、119はピンである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図20は図18の20−20線断面図である。
巻取装置100のプリテンショナでシートベルト101を矢印の如く肩ベルト101aの方向に引張ることにより(図18参照)、シートベルト張力T1,T1が肩ベルト101aの延長線上に作用する。このため、シートベルト引角は変らない。シートベルト張力T1,T1の合力T2は、乗員102に作用する慣性力T3の方向に対して角度θ1だけズレている。従って、車両急減速発生初期に、プリテンショナの作動で発生したシートベルト張力T1,T1を有効に活用していない。
【0009】
一方、図19のシートベルト装置も、プリテンショナでシートベルトを肩ベルトに沿って引張るので、シートベルト引角αは変らない。このため、肩ベルトのシートベルト張力をT1,T1、合力をT2、乗員に作用する慣性力をT3とすると、合力T2と乗員に作用する慣性力T3との関係は図20と同じになる。従って、車両急減速発生初期に、プリテンショナの作動で発生したシートベルト張力T1,T1を有効に活用していない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、車両急減速発生初期に、プリテンショナにより発生するシートベルト張力を有効に活用して初期拘束性を向上させるとともに、乗員に作用するシートベルトからの衝撃を緩和できるシートベルト用バックル装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1は、乗員の安全を確保するシートベルト用バックル装置において、車両の減速度に反応して駆動力を発生する駆動手段と、シートフレーム側方に配置されたガイドレールと、前記駆動力によって、ガイドレールに沿って車両後方に移動するようにガイドレールに連結された第1スライダと、バックルの基端部が連結されるとともに、シートベルト張力が設定値を超えると第1スライダに対し車両前方に相対移動可能なように第1スライダ内に設けられた第2スライダとから構成され、前記第2スライダに対し前記第1スライダ内壁との間に衝撃エネルギーを吸収するための衝撃エネルギー吸収部材を配設したことを特徴とする。
【0012】
第1スライダを車両後方に移動させることによりシートベルトが水平に近づき、バックルに連結したシートベルト引角が小さくなる。このため、シートベルト張力の合力を、乗員に作用する慣性力の作用方向に対して逆向きの方向に近づけることができる。この結果、シートベルト張力を乗員の拘束力として有効に作用させることができる。また、シートベルト張力を小さく抑えても、乗員の慣性力に応じた合力を得ることができるので、駆動手段の小型化をも達成することができる。
さらに、シートベルト張力が設定値を超えたとき、第2スライダを車両前方に移動させることにより、乗員に作用する衝撃エネルギをこの第2スライダで吸収することができる。
また、シートベルトの車両後方への移動をバックルを介して第1スライダで行い、衝撃エネルギの吸収を第2スライダで行う構成にしたので、乗員の拘束性能と衝撃エネルギの吸収性能とをそれぞれ独立させて個別に設定することができる。この結果、各々の性能を所望の性能に容易に設定することができる。
そして、第2スライダに対し第1スライダ内壁との間に衝撃エネルギーを吸収するための衝撃エネルギー吸収部材を配設したので、衝撃エネルギー吸収部材により第2スライダが第1スライダに沿って車両前方に移動する衝撃エネルギを十分に吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0013】
請求項2は、バックルの基端部を、第2スライダに対し、車両の前後及び左右方向に揺動可能となるように連結するるとともに、ガイドレールを、車両後方に向うにつれてシートに接近するように配置したことを特徴とする。
【0014】
第1スライダが車両後方に移動しながらシートに近づくように移動するので、シートベルト引角をより小さくするとともに、シートベルトの腰ベルトを乗員の腰部に巻きつかせるようにできる。このため、乗員の拘束力をより向上させることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、「前」、「後」、「左」、「右」は乗員を基準とした。
図1は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)を取付けたシートの斜視図である。
シート1は、車両2のフロア4に取付けたシートクッション6と、このシートクッション6にリクライニング可能に取付けたシートバック8と、乗員を保護するシートベルト装置10とからなる。
【0016】
シートベルト装置10は、シート1右側の車両2に取付け且つELR(図示しない)を備えた巻取装置12と、この巻取装置12に一端を取付け且つ他端をシートクッション6右側のフロア4に取付具7で取付けたシートベルト14と、このシートベルト14に移動自在に取付けたタング16と、このタング16を止めるためのバックル18を備えたシートベルト用バックル装置20とからなる。
【0017】
図2は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)を取付けたシートの平面図であり、シートクッション6の左側にシートベルト用バックル装置20を取付け、このシートベルト用バックル装置20のバックル18にタング16を取付けてシートベルト14で乗員11をシート1に拘束した状態を示す。
【0018】
図3は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置20は、シートクッション(シートフレーム)6の左側部に取付けた固定部21(図1,図2も参照)と、この固定部21に固定して車両の減速度に反応して駆動力を発生する駆動力発生手段(駆動手段)30と、固定部21に固定したガイドレール40と、駆動力発生手段30で発生した駆動力によって、ガイドレール40に沿って車両後方に移動するようにガイドレール40に取付けた第1スライダ45と、シートベルト14を掛け止めるバックル18のロッド19(基端部)を連結し、シートベルト張力Tが設定値を超えたときに第1スライダ45に沿って車両前方に相対移動するように第1スライダ45内に設けられた第2スライダ50とからなる。
【0019】
固定部21は、シートクッション6にボルト22…(図1に示す)で取付けた基板23と、基板23にガイドレール40及び駆動力発生手段30を取付けた前後の取付けブラケット24,25(図1も参照)とからなる。
駆動力発生手段30は、車両の減速度が所定値を超えたときに大量のガスを発生するガス発生部31と、ガス発生部31で発生したガスを案内路32を介して受入れるシリンダ33と、シリンダ33内に流入したガスで移動するピストン34と、ピストン34に取付けたロック部材35と、ロック部材35をロックするためにシリンダ33の内周に設けたロック爪36と、ピストン34と第1スライダ45をつなぐケーブル37とからなる。
【0020】
ガイドレール40は、フロア4(図1参照)に対して略平行に取付け、かつ車両後方に向うにつれてシート1に接近するように斜めに取付けた部材(図2に示す)であって、バックル18のロッド19を受入れるためにスリット41aを設けた筒体41と、筒体41の前端を塞ぐ前蓋42と、筒体41の後を塞ぐ後蓋43とからなる。
【0021】
第1スライダ45は、バックル18のロッド19を受入れるためにスリット46aを形成した筒体46と、筒体46の後端に取付けたケーブル止部47と、筒体46の前端を塞いだ前蓋48と、前蓋48に取付け且つガイドレール40の筒体41のロック孔41bに差込んだロック片49とからなる。
第2スライダ50は、スライダ単体51と、スライダ単体51にバックル18のロッド19を取付けるピン52と、スライダ単体51と第1スライダ45の前蓋48との間に取付けた塑性変形部材53とからなる。なお、塑性変形部材53は、例えば金属板やばね片で形成した部材である。
【0022】
図4は図3の4−4線断面図である。
ピン52は、球面部52aを中央に備え、この球面部52aにバックル18のロッド19を取付けることにより、バックル18は、車両の長手軸55(図3に示す)並びに車両のクロス軸56の廻りに回転可能に取付けることが可能である。すなわち、バックル18は車両の前後方向にかつ車両の左右方向に揺動することができる。
このため、図2に示すように、ガイドレール40を車両後方に向うにつれてシート1に接近するように斜めに取付けても、バックル18をガイドレール40に沿って移動することができる。
【0023】
以上に述べたシートベルト用バックル装置(第1実施例)の作用を次に説明する。
図5(a),(b)は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第1作用説明図である。
(a)において、車両の減速度が所定値を超えたときにガス発生部31で大量のガスを発生して、このガスが矢印の如くシリンダ33内に流入する。ピストン34が矢印▲1▼の如く移動して、ケーブル37で第1スライダ45を矢印▲2▼の如くガイドレール40に沿ってフロア4(図1参照)に略平行に引張る。
この結果、ロッド19とともにバックル18及びシートベルト14を矢印▲2▼の如く引込む。なお、14cはシートベルト軸線を示す。
【0024】
(b)において、ロック部材35をロック爪36に掛けることにより、シリンダ33の端部まで移動したピストン34をロックする。この結果、第1スライダ45をガイドレール40の後端に保持することができる。
このとき、第1スライダ45と共に第2スライダ50も(a)の位置から車両後方にL1だけ移動して、シートベルト軸線14cが車両後方に移動する。このため、シートベルト引角がα1からα2に小さくなる。
【0025】
図6は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第2作用説明図である。
シートベルト張力Tが設定値を超えたときに、塑性変形部材53がつぶれて第2スライダ50が矢印○3の如く第1スライダ45に沿って車両前方に移動する。
この結果、ロッド19とともにバックル18及びシートベルト14を矢印○3の如く車両前方に引出すことができるので、衝撃エネルギを十分に吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
このように、第1スライダ45内に設けられた第2スライダと、第1スライダ内壁との間に介設された塑性変形部材53は、上記したようにシートベルト張力が設定値を超えたときにつぶれ、衝撃エネルギーを吸収するための衝撃エネルギー吸収部材を構成する。
【0026】
シートベルト14の引込みを第1スライダ45で行い、衝撃エネルギの吸収を第2スライダ50で行う構成にしたので、シートベルト14の引込み性能と衝撃エネルギの吸収性能とをそれぞれ独立させて個別に設定することができる。この結果、各々の性能を所望の性能に容易に設定することができる。
【0027】
図7は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第3作用説明図であり、シートベルト用バックル装置が作動する前の状態を示す。なお、シートベルト引角α1は比較的大きい。
車両の減速度が所定値を超えると、図5(a)で説明したように、バックル18とともにシートベルト14を矢印▲2▼の如く引込む。
【0028】
図8(a),(b)は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第4作用説明図であり、(b)は(a)のb矢視図である。
(a)において、バックル18を車両後方の所定位置までL1だけ移動させて、シートベルト14の緩みを瞬時に取除いて乗員11を拘束する。
シートベルト用バックル装置20でバックル18を車両後方にL1だけ移動することにより、バックル18に連結したシートベルト引角がα1(図7参照)からα2と小さくなる。
(b)において、バックル18がL2だけ乗員11側に近づいた状態を示す。シートベルト14は、スルーアンカ58aとタング58bの範囲で肩ベルト14a、タング58bとアンカプレート58cとの範囲で腰ベルト14bになる。
【0029】
図9は図8(b)の9−9線断面図である。
シートベルト用バックル装置20でバックル18を車両後方にL1移動してバックル18に連結したシートベルト引角をα2(図8(a)参照)と小さくした。このため、肩ベルト14aに作用するシートベルト張力の向きは想像線で示す矢印方向から実線で示す矢印方向に変る。従って、シートベルト張力T5,T5の合力T6が作用する方向を、乗員11に作用する慣性力T7の方向に対してズレ角θ2と小さく抑えることができる。この結果、シートベルト用バックル装置20のプリテンショナ作動で発生したシートベルト張力T5,T5を有効に作用させることができる。
【0030】
また、シートベルト張力T5,T5を有効に作用させることにより、シートベルト張力を発生させるシートベルト用バックル装置20の駆動力発生手段30の小型化をも達成することができる。
さらに、第1スライダ45(図3参照)がガイドレール40に沿って車両後方にL1だけ移動し、かつシートにL2だけ近づくように移動するので、シートベルト引角(図7,図8(a)参照)がα1からα2と小さくなるとともに、シートベルト14が乗員11の腰部に巻きつくようになり、乗員11の拘束力をより向上させることが可能になる。
【0031】
図10は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第5作用説明図であり、乗員11を拘束した状態で、シートベルト張力Tが設定値を超えると、図6で説明したように、バックル18とともにシートベルト14を矢印▲3▼の如く車両前方に引出した状態を示す。
シートベルト14の張力に応じてバックル18を車両前方に移動することができるので、バックルにつないだ肩ベルト14a及び腰ベルト14bを車両前方に移動させることができる。この結果、衝撃エネルギを十分に吸収して乗員11の胸部や腰部に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0032】
次に、図11〜図17において第2〜第8実施例について説明する。
第1実施例では第2スライダ50の塑性変形部材53をつぶして衝撃エネルギを吸収する構成について説明したが、その他の例を第2〜第8実施例で説明する。なお、第2〜第8実施例において第1実施例と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
図11は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第2実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置60は、第1スライダ45に仕切壁61を取付け、この仕切壁61で第2スライダ50を第1スライダ45内に固定したものである。
シートベルト張力Tが設定値を超えたときに、仕切壁61が破壊されて第2スライダ50が第1スライダ45に沿って車両前方に移動する。この結果、衝撃エネルギを吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0033】
図12は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第3実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置65は、第1スライダ66の筒体67を車両前方に向って細くなるように形成し、かつ第2スライダ68のスライダ単体69を円錐台に形成したものである。
シートベルト張力Tが設定値を超えたときに、筒体67を押広げながらスライダ単体69が車両前方に向って移動する。この結果、衝撃エネルギを吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0034】
図13は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第4実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置70は、第1スライダ45内に圧縮ばね71を配置し、この圧縮ばね71で第2スライダ50を第1スライダ45に押付けたものである。
シートベルト張力Tが設定値を超えたときに、圧縮ばね71が圧縮して第2スライダ50が第1スライダ45に沿って車両前方に移動する。この結果、衝撃エネルギを吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0035】
図14は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第5実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置75は、第1スライダ45内に流体76を充填し、第2スライダ77にオリフィス77aを設けたものである。なお、78は流体の洩れを防ぐためのベローズである。
シートベルト張力Tが設定値を超えたときに、流体76がオリフィス77aを通って矢印の如く流れることにより、第2スライダ77が第1スライダ45に沿って車両前方に移動する。この結果、衝撃エネルギを吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0036】
図15は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第6実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置80は、第1スライダ45内に所定間隔をおいて複数の緩衝板81…を取付け、後方の緩衝板81で第2スライダ50を固定したものである。
シートベルト張力Tが設定値を超えたときに、緩衝板81…が順次破壊されることにより、第2スライダ50が第1スライダ45に沿って車両前方に移動する。この結果、衝撃エネルギを吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0037】
図16は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第7実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置85は、第2スライダ50の後端にロック片86を取付け、このロック片86の折曲部86aを第1スライダ87の掛部88に掛けたものである。
シートベルト張力Tが設定値を超えたときに、ロック片86の折曲部86aが伸びて掛部88から外れ、第2スライダ50が第1スライダ87に沿って車両前方に移動する。この結果、衝撃エネルギを吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0038】
図17は本発明に係るシートベルト用バックル装置(第8実施例)の断面図である。
シートベルト用バックル装置90は、ガイドレール91の内周にロック爪92を設け、ロック爪92に掛かるロック部材93を第1スライダ94に設けたものである。
第1実施例のように、駆動力発生手段30のシリンダ33にロック爪を設け、ピストン34にロック部材を設ける必要がない。
【0039】
前記実施例では、シートクッション6にガイドレール40を取付けた内容について説明したが、その他に車両2にガイドレール40を取付けてもよい。
【0040】
前記実施例では、第1スライダ45をフロア4(図1参照)に対して略平行に車両後方に移動する内容について説明したが、その他に、例えばフロアに対して斜め下方に第1スライダ45を移動するような構成にすることも可能である。要は、バックル18の基端部がシートベルト軸線14c(図5(a),(b)参照)より車両後方に移動すればよい。
【0041】
前記実施例では、図4に示すようにバックル18のロッド19をピン52の球面部52aに連結することにより、バックル18を車両左右方向に揺動させる内容について説明したが、ロッド19に代えてフレキシブル部材を使用してバックル18を車両左右方向に揺動させてもよい。なお、フレキシブル部材としては、例えば芯材のワイヤを可撓製の樹脂或いはゴム等の弾性部材で覆ったものがある。
【0042】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、第1スライダを車両後方に移動させることによりシートベルトが水平に近づき、バックルに連結したシートベルト引角が小さくなる。このため、シートベルト張力の合力を、乗員に作用する慣性力の作用方向に対して逆向きの方向に近づけることができる。この結果、シートベルト張力を乗員の拘束力として有効に作用させて、乗員を確実に保護することができる。また、シートベルト張力を小さく抑えても、乗員の慣性力に応じた合力を得ることができるので、駆動手段の小型化をも達成することができる。
【0043】
さらに、シートベルト張力が設定値を超えたとき、第2スライダを車両前方に移動させることにより、乗員に作用する衝撃エネルギをこの第2スライダで吸収することができる。
また、シートベルトの車両後方への移動をバックルを介して第1スライダで行い、衝撃エネルギの吸収を第2スライダで行う構成にしたので、乗員の拘束性能と衝撃エネルギの吸収性能とをそれぞれ独立させて個別に設定することができる。この結果、各々の性能を所望の性能に容易に設定できるので、高品質の製品を得ることができる。
さらにまた、第2スライダに対し第1スライダ内壁との間に衝撃エネルギーを吸収するための衝撃エネルギー吸収部材を配設したので、衝撃エネルギー吸収部材により第2スライダが第1スライダに沿って車両前方に移動する衝撃エネルギを十分に吸収して乗員に作用する衝撃力を緩和することができる。
【0044】
請求項2は、第1スライダが車両後方に移動しながらシートに近づくように移動するので、シートベルト引角をより小さくするとともに、シートベルトの腰ベルトを乗員の腰部に巻きつかせるように引張ることができる。このため、乗員の拘束力をより向上させて、乗員を確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)を取付けたシートの斜視図
【図2】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)を取付けたシートの平面図
【図3】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の断面図
【図4】図3の4−4線断面図
【図5】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第1作用説明図
【図6】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第2作用説明図
【図7】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第3作用説明図
【図8】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第4作用説明図
【図9】図8(b)の9−9線断面図
【図10】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第1実施例)の第5作用説明図
【図11】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第2実施例)の断面図
【図12】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第3実施例)の断面図
【図13】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第4実施例)の断面図
【図14】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第5実施例)の断面図
【図15】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第6実施例)の断面図
【図16】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第7実施例)の断面図
【図17】本発明に係るシートベルト用バックル装置(第8実施例)の断面図
【図18】従来のシートベルト装置(プリテンショナ及びEA機構を巻取装置に内蔵したもの)の説明図
【図19】従来のシートベルト装置(プリテンショナ及びEA機構をバックル装置に設けたもの)の説明図
【図20】図18の20−20線断面図
【符号の説明】
1…シート、2…車両、6…シートクッション(シートフレーム)、11…乗員、14…シートベルト、18…バックル、19…ロッド(基端部)、20,60,65,70,75,80,85,90…シートベルト用バックル装置、30…駆動力発生手段(駆動手段)、40,91…ガイドレール、45,94…第1スライダ、50…第2スライダ、53…衝撃エネルギー吸収部材、T…シートベルト張力。
Claims (2)
- 乗員の安全を確保するシートベルト用バックル装置において、
車両の減速度に反応して駆動力を発生する駆動手段と、
シートフレーム側方に配置されたガイドレールと、
前記駆動力によって、ガイドレールに沿って車両後方に移動するようにガイドレールに連結された第1スライダと、
バックルの基端部が連結されるとともに、シートベルト張力が設定値を超えると第1スライダに対し車両前方に相対移動可能なように第1スライダ内に設けられた第2スライダとから構成され、
前記第2スライダに対し前記第1スライダ内壁との間に衝撃エネルギーを吸収するための衝撃エネルギー吸収部材を配設した、
ことを特徴とするシートベルト用バックル装置。 - 前記バックルの基端部は、第2スライダに対し、車両の前後及び左右方向に揺動可能となるように連結されるとともに、
前記ガイドレールは、車両後方に向うにつれてシートに接近するように配置されたことを特徴とする請求項1記載のシートベルト用バックル装置。
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