JP3608579B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、軽量でありながら高速耐久性が良好でしかもユニフォーミティー、操縦安定性、乗心地性に優れ、さらには安価に製造可能な空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気入りラジアルタイヤのベルト部には、その優れた強度および弾性率によりスチールベルト層が使われている。そのスチールベルト層は、スチールコードがタイヤ周方向に対して比較的小さな角度(10°〜30°)でプライ間のコードが互いに交差し、ベルト層の幅方向両側端に切断破面のある2層からなる構造であった。しかし、スチールベルト層は比重が大きい故にタイヤ重量が大となり、さらには、その切断破面に応力が集中してゴム層との間にセパレーションが生じ易く、高速耐久性が劣るようになるといった欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ベルト層にスチールコードを使用することなく、繊維コードの使用によって軽量化を図りながら高速耐久性が良好であり、しかもユニフォーミティー、操縦安定性、乗心地性に優れ、さらには安価に製造可能な空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トレッドにおけるカーカス層の外側にベルト層が配置された空気入りラジアルタイヤにおいて、1本乃至複数本の繊維コードを平行にマトリックスに埋設してなるテープを、前記カーカス層の外周にタイヤ1周当りn=3回、5回、7回、又は9回の折り曲げ回数で前記ベルト層に相当する幅をジグザグに折り曲げながら、タイヤ周方向にほぼテープの幅だけずらして多数回に亘って巻き付けることにより偶数層のベルト層を形成し、該繊維コードの2.25g/dの荷重を負荷したときの伸び率が4%以下であって、該ベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θ、該ベルト層の幅D、該ベルト層の半径r、前記テープのタイヤ1周当りのジグザグ折り曲げ回数n(3回、5回、7回、又は9回)としたとき、tan θ=n×D/2πrの関係を満たし、かつ10°<θ<35°であることを特徴とする。
【0005】
このように、繊維コードをベルト層のコードとして用いるために、スチールコードを用いる場合に比して、タイヤの軽量化をはかることができる。また、テープをベルト層幅方向相当端で折り曲げながらカーカス層に巻き付けることによりベルト層を形成するために、ベルト層の幅方向両側端に切断破面がないのでセパレーションが生じることがなく、高速耐久性が良好となる。さらに、テープのタイヤ1周当りのジグザグ折り曲げ回数(以下、テープのカーカス層幅方向移動回数という)nを3回、5回、7回、又は9回としたためにユニフォーミティー特にRFVが向上し、またベルト層のコード角度θを10°〜35°の範囲内としたために、タイヤ横剛性が高まるので操縦安定性が向上すると共にタイヤ縦剛性が低減するので乗心地性が向上する。
【0006】
以下、図を参照して本発明の構成につき詳しく説明する。
図1は、本発明の空気入りラジアルタイヤの一例の子午線方向半断面説明図である。図1において、左右一対のビードコア1の廻りにタイヤ内側から外側にカーカス層2の端部が巻き上げられており、トレッド3においてはカーカス層2の外側に2層のベルト層4,4がタイヤ周方向にタイヤ1周に亘って設けられている。
【0007】
トレッド3の表面、すなわちトレッド面にはタイヤ周方向に延びる複数の溝5およびタイヤ幅方向に延びる複数の溝(図示せず)が設けられている。
ベルト層4は、図2に示すように、繊維コードの1本乃至複数本を、好ましくは5〜10本を平行にマトリックスに埋設してなるテープ6を、カーカス層2のタイヤ1周に亘って3回、5回、7回、又は9回ジグザグにカーカス層2の幅方向に移動させると共にベルト層幅方向相当端7、8で折り曲げながらカーカス層2に巻き付けることにより形成される。この巻き付けは、テープ6相互間に隙間が生じないように、タイヤ周方向にほぼテープ6の幅だけずらして多数回行われる。この巻き付け状況を図3〜図6で説明する。
【0008】
図3は、テープ6のカーカス層幅方向移動回数n=2の場合を示したものである。図3において、巻き始めテープ▲1▼が一方のベルト層幅方向相当端7から始まって他方のベルト層幅方向相当端8で折り曲げられ、一方のベルト層幅方向相当端7に戻って次のテープ▲2▼に連通し、巻き始めテープ▲1▼に対してほぼテープ幅だけタイヤ周方向にずらして一方のベルト層幅方向相当端7で折り曲げられる。この手順がテープ▲2▼〜▲8▼まで順序的に繰り返される。このため、全体としてテープ6は常に2枚重なった状態となるから、得られるベルト層4は2重層となる。なお、ベルト層4は、偶数層形成すればよく、2層(2重層)であるのが好ましい。
【0009】
しかしながら、テープ6のカーカス層幅方向移動回数n=偶数の場合には、図4および図5に示されるように、巻き始めテープ▲1▼の巻き始め端と巻き終りテープ▲8▼の巻き終り端との間に途中のテープを介して段差が生じてしまう。この段差により、タイヤのユニフォーミティーが悪化してしまう。
そこで、本発明では、テープ6のカーカス層幅方向移動回数n=奇数としている。このように奇数とすることにより、図6に「*」で示されるように、巻き始めテープの巻き始め端と巻き終りテープの巻き終り端との間に段差が生じることなく、巻き途中のテープ相互間に段差が生じ、この段差が1周に亘って分散することになるので、タイヤのユニフォーミティーの悪化は実質的にもたらされない。
【0010】
つぎに、テープ6のカーカス層幅方向移動回数nとベルト層4のタイヤ周方向に対するコード角度θとの関係を図7〜図11に示す。図7はn=1の場合を、図8はn=2の場合を、図9はn=3の場合を、図10はn=4の場合を、図11はn=5の場合をそれぞれ示す。これらの図7〜図11から判るように、nが大きくなるにつれてθが大となる。そこで、本発明では、θ=10°〜35°の範囲とするために、n=3、5、7、又は9としている。
【0011】
また、本発明では、このように形成されるベルト層4において、タイヤ周方向に対するコード角度θ、幅D、半径rとし、テープ6のカーカス層幅方向移動回数n(3回、5回、7回、又は9回)としたとき、tan θ=n×D/2πrの関係を満たし、かつ10°<θ<35°としている。θは、回数nとベルト層4の幅Dとベルト層4の半径rとによって定まるものだからである。
【0012】
テープ6に用いる繊維コードとしては、コード1本に2.25g/d の荷重を負荷した時の伸び率が4%以下のものを用いる。この伸び率が4%を超えるとコードの引張り剛性が低くなり過ぎるためベルト剛性が低下し、高速耐久性が低下するからである。
この繊維コードは、例えば、芳香族ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン2,6-ナフタレート繊維から選ばれる繊維の1種又は2種以上を撚り合わせたものである。
【0013】
テープ6は、この繊維コードの1本乃至複数本を平行にマトリックスに埋設することにより構成される。この場合のマトリックスとしては、ゴムに限ることなくウレタン樹脂などのプラスチックを用いることができる。
【0014】
【実施例】
表1に示す内容の本発明タイヤ1〜4、対比タイヤ1〜3、従来タイヤ1につき、下記条件で下記によりユニフォーミティー、高速耐久性、乗心地性(突起乗り越し試験)、操縦安定性を評価した。この結果を表1に示す。
条件
空気圧;1.9kg/cm2 、リム;14×51/2JJ、荷重;450kg
タイヤサイズ;195/70 R14
タイヤ外形 635mm、ベルト層の幅D=135mm 、ベルト層の半径r=305mm
移動回数n=1、3、5、7、9、11
tan θ=n×D/2πr=n×135mm/(2π×305mm)
タイヤユニフォーミティー(RFV):
JASO C607 「自動車用タイヤのユニフォーミティー試験方法」に準拠。
【0015】
ベルト層1周内の幅方向移動回数nが偶数であるとRFVが大きくなり、nが奇数であるとRFVが比較的小さく良好であることが判る。
高速耐久性:
ドラム径1707mmでJATMA 高速耐久性試験終了後、10km/hr 毎加速してタイヤが破壊するまで試験を続行した。この結果を従来タイヤ1を100 とする指数で示す。数値が大きい方がよい。
【0016】
コード角度θが小さいほど(nが小さいほど)高速耐久性が良好であることが判る。
乗心地性:
乗心地性能の代用特性としての室内ドラム突起乗り越し試験を行った。この場合、ドラム径2500mmでドラム表面に半径10mmの突起を設け、時速40km/hr で走行したときの反力をロードセルで検出することによった。この結果を従来タイヤ1を100 とする指数で示す。数値が大きい方がよい。
【0017】
コード角度θが高いほど(nが大きいほど)乗心地性は良好であることが判る。
操縦安定性:
実車操縦安定性能フィーリングテストを行った。この場合、国産2.5 リットルクラスの車にタイヤを装着して、車を6回幅方向に移動させることによりテストパネラーが操舵フィーリング評価した。表1中、「○」は良いを、「◎」は極めて良いを、「×」は悪いをそれぞれ表わす。
【0018】
【表1】
表1から明らかなように、本発明タイヤ1〜3は高速耐久性、乗心地性、操縦安定性のいずれにおいても優れていることが判る。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッドにおけるカーカス層の外側にベルト層が配置された空気入りラジアルタイヤにおいて、1本乃至複数本の繊維コードを平行にマトリックスに埋設してなるテープを、前記カーカス層の外周にタイヤ1周当りn=3回、5回、7回、又は9回の折り曲げ回数で前記ベルト層に相当する幅をジグザグに折り曲げながら、タイヤ周方向にほぼテープの幅だけずらして多数回に亘って巻き付けることにより偶数層のベルト層を形成し、該繊維コードの2.25g/dの荷重を負荷したときの伸び率が4%以下であって、該ベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θ、該ベルト層の幅D、該ベルト層の半径r、前記テープのタイヤ1周当りのジグザグ折り曲げ回数n(3回、5回、7回、又は9回)としたとき、tan θ=n×D/2πrの関係を満たし、かつ10°<θ<35°であるとしたために、軽量であって、かつ高速耐久性が良好でしかもユニフォーミティー、操縦安定性、乗心地性に優れた空気入りラジアルタイヤを提供することが可能となる。さらに、本発明では、ベルト層はテープをカーカス層の外周でタイヤ1周に亘ってジグザグに該カーカス層の幅方向に移動させると共にベルト層幅方向相当端で折り曲げながら該カーカス層の外周に巻付けることにより形成されるため、従来から使用されているベルト成型ドラムでベルト層の製造が可能となるので、新たに設備を設けなくともよいので空気入りラジアルタイヤを安価に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りラジアルタイヤの一例の子午線方向半断面説明図である。
【図2】本発明におけるベルト層の形成状況を示す斜視説明図である。
【図3】ベルト層の形成に際してカーカス層にテープを巻き付ける状況を示す説明図である。
【図4】テープの巻き始め端と巻き終り端との間に途中のテープを介して段差が生じる様子を示す断面説明図である。
【図5】テープの巻き始め端と巻き終り端との間に途中のテープを介して段差が生じる様子を示す平面視説明図である。
【図6】ベルト層の形成に際してカーカス層にテープを巻き付ける状況を示す説明図である。
【図7】テープのカーカス層幅方向移動回数n=1とベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θとの関係図である。
【図8】テープのカーカス層幅方向移動回数n=2とベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θとの関係図である。
【図9】テープのカーカス層幅方向移動回数n=3とベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θとの関係図である。
【図10】テープのカーカス層幅方向移動回数n=4とベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θとの関係図である。
【図11】テープのカーカス層幅方向移動回数n=5とベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θとの関係図である。
【符号の説明】
1 ビードコア 2 カーカス層 3 トレッド 4 ベルト層
6 テープ
Claims (4)
- トレッドにおけるカーカス層の外側にベルト層が配置された空気入りラジアルタイヤにおいて、1本乃至複数本の繊維コードを平行にマトリックスに埋設してなるテープを、前記カーカス層の外周にタイヤ1周当りn=3回、5回、7回、又は9回の折り曲げ回数で前記ベルト層に相当する幅をジグザグに折り曲げながら、タイヤ周方向にほぼテープの幅だけずらして多数回に亘って巻き付けることにより偶数層のベルト層を形成し、該繊維コードの2.25g/dの荷重を負荷したときの伸び率が4%以下であって、該ベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度θ、該ベルト層の幅D、該ベルト層の半径r、前記テープのタイヤ1周当りのジグザグ折り曲げ回数n(3回、5回、7回、又は9回)としたとき、tan θ=n×D/2πrの関係を満たし、かつ10°<θ<35°である空気入りラジアルタイヤ。
- 前記繊維コードが、芳香族ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン2,6−ナフタレート繊維から選ばれる繊維の1種又は2種以上を撚り合わせたものである請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
- 前記マトリックスがゴム、プラスチックからなる群から選択される1種である請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層が2層である請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
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1994
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