JP3608391B2 - ホログラフィック拡散シートとそれを用いた反射型液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型液晶テレビ,反射型液晶モニタなどの、反射型液晶パネルを使った画像表示装置に利用でき、機器本体の消費電力を増やすことなく、明るく高コントラストな画像表示を実現する上で好適な拡散シートとそれを用いた反射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型液晶表示装置は、液晶パネルの背面(観察者の反対側)に光拡散性を有する反射板もしくは反射フイルムなどの反射体を配置し、装置に入射する周辺光を拡散反射させて、液晶パネル上で構成される表示画像を観察者に視認させるものである。前記装置は、表示光としてバックライトやエッジライトなどの特殊な光源を必要とせず、周辺光(日光や照明光)を利用する構成なため、消費電力の上で有効である。
【0003】
明るくコントラストが高い画像を表示するためには、反射体は反射率が高くかつある程度の指向性を持つことが好ましい。そのため、従来の反射体はマット状に加工した金属面を有するものから形成されていた。
【0004】
従来の金属面をマット状に加工した反射体は、金属の表面をサンドブラスター処理、或いは溶液(酸性またはアルカリ性)を用いた溶解処理、などによりマット面が形成される。従って、光拡散性(粗面の状態)を制御することが難しく、反射型液晶表示装置に用いると観察に寄与しない不要な拡散光を生じ、明るさやコントラストの低下を招いてしまうという問題点がある。
【0005】
また、近年、液晶を駆動する電極が反射体を兼ねるタイプの反射型液晶表示装置も開発されており、表示光に拡散性を持たせるため、液晶パネルの前面(観察者側)に光拡散フィルムを配置する方式も採用されている。
【0006】
通常の光拡散フィルムを使用した場合、光の入射時と反射時の両方で光拡散が生じるため、画素ずれによる2重像が生じ、高精細な表示が十分にできないという問題点がある。
加えて、電極(反射体)をマット状に加工する方式も採用されているが、前記した従来の金属反射体と同様に不要な拡散光を生じてしまう問題点がある。
【0007】
また、上記の拡散フィルムの代替として、拡散光を回折するホログラム(ホログラフィック拡散シートまたはホログラム散乱板と称する)の採用が検討されており、前記ホログラムとしてオフアクシス(Off−axis)ホログラムの使用が提案されているが、オフアクシスで記録されたホログラムの回折光には色分散が起こるため、表示画面を見る位置によって拡散光が虹色に変化し、観察者が表示画像を視認する上で妨げになる問題がある。
【0008】
オフアクシスホログラムとは、ホログラムの撮影記録を行う際の2光束光学系において、物体光と参照光の光軸が角度を持って記録されたホログラムのことである。
【0009】
液晶パネルの前面にホログラム散乱板を配置することで、視域の制御(広域化)を図った提案として、特開平9−152602号公報が公知であるが、前記提案は、バックライトによる表示光の出射範囲を制御するものであり、反射型液晶表示装置での表示光に拡散性を持たせるものではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特殊な光源の不要な反射型液晶表示装置の液晶パネルの前面に配置する上で好適なホログラフィック拡散シートとそれを用いた反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0011】
すなわち、拡散シートに、装置への光の入射時には光拡散が生じ、反射時には光拡散は生じずに直接透過する機能(異方性を持つ光拡散)を持たせることで、不必要な光拡散を無くし、画素ずれによる2重像を防ぐようにする。
また、観察位置による表示光の色変化がなく、白色の回折光を実現することにより、明るく高コントラストであり高精細な表示ができるような反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明では、ホログラフィック拡散シートとして、オンラインホログラムからなる拡散シートを採用する。
オンラインホログラムは、オフアクシスホログラムに対するものであり、物体光と参照光の光軸がほぼ一致する角度をなして撮影記録されたホログラムのことである。
【0013】
請求項1のホログラフィック拡散シートは、
マスターホログラムを透過した再生光からなる物体光と、前記マスターホログラムを透過した参照光とを、それぞれの光軸がほぼ一致する角度をなすように、ホログラフィックに撮影記録されたオンラインホログラムからなることを特徴とする反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シートである。
【0014】
請求項2のホログラフィック拡散シートは、
前記オンラインホログラムが、体積位相透過型ホログラムであることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シートである。
【0015】
請求項3のホログラフィック拡散シートは、
前記オンラインホログラムが、角度選択性を有する表面レリーフホログラムであることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シートである。
【0016】
本発明の請求項4の反射型液晶表示装置は、
液晶パネルの背面に反射体が配置され、液晶パネルの前面から入射する周辺光を、反射体で液晶パネル側に反射し、液晶パネルで変調された表示光を観察者に視覚させる反射型液晶表示装置において、
液晶パネルの前面に、請求項1〜3の何れかに記載の反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シートを配置したことを特徴とする。
【0017】
前記反射体は、入射光を正反射させる正反射性の反射体であっても良い。
【0018】
前記反射体は、入射光を拡散反射させる拡散性の反射体であっても良い。
【0019】
前記反射体が、液晶を駆動させるための電極を兼ねても良い。
【0020】
<作用>
オンラインホログラフィック拡散シートは、その撮影条件に応じて、異方性を持つ光拡散機能を付与することが可能であり、回折光が拡散出射する範囲(方向)を縦と横のそれぞれの方向に対して任意に制御することも可能である。(請求項1)
【0021】
オンラインホログラフィック拡散シートが、体積位相透過型ホログラムである場合には、反射型液晶表示装置への入射光はホログラムで回折して拡散し、出射する表示光は直接透過させるような異方性を持たせることができると共に、ホログラムが持つ角度選択性により、特定の入射角度での入射光のみを回折させることも可能である。(請求項2)
【0022】
オンラインホログラフィック拡散シートが、角度選択性を持つ表面レリーフホログラムである場合には、マスターホログラムから起こしたスタンパでの熱可塑性樹脂へのエンボス複製により、低コストで拡散シートが量産される。(請求項3)
【0023】
本発明による反射型液晶表示装置は、液晶パネルの前面に、上述のオンラインホログラフィック拡散シートを配置することにより、液晶パネルの前面よりオンラインホログラムを透過して入射する光は、光透過性の拡散シートを透過する時のような光拡散を生じて拡散光として反射体に到達し、反射体で反射された拡散光はオンラインホログラムを透過して液晶パネルの前面より出射する光は、透明シートを透過するときのように拡散せずに出射する。
そのため、不必要な表示光の拡散がないため表示が明るくなり、且つ光の入射の際にのみ光拡散が起こるため、液晶パネルの前面より観察される表示画像に、画素ずれや二重画素や画素のにじみのような現象がなく、高精細な表示が可能となる。(請求項4)
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る反射型液晶表示装置の実施の形態を図面を参照にして詳述する。図1に示すように本発明の反射型液晶表示装置1は、液晶パネル2と、その背面に配置された正反射性もしくは拡散性の反射体3と、液晶パネル2の前面に配置されたオンラインホログラフィック拡散シート4とで構成されている。
【0025】
同図では、光学特性(入・出射光の光路)を模式的に表すために、オンラインホログラフィック拡散シート4,液晶パネル2,反射体3との間は離間させて示しているが、実際には接着層(図示せず)により接着されて積層されている。また、すべての請求項を概念的に説明できるように入射光や反射光、表示光などは全て光線として示している。
【0026】
また、反射型液晶表示装置1では、反射体3が液晶パネル2と別体ではなく、液晶パネル2中に液晶を駆動させる電極として内在していてもよい。
【0027】
前記液晶パネル2は、一般的な構造のものからなり、印加電圧の有無に応じて入射光を変調し、白/黒の切り替え表示をするものからなる。
【0028】
図示のように、入射光5が液晶パネル2の前面側からオンラインホログラフィック拡散シート4に入射すると光拡散が生じて、その拡散光は液晶パネル2の背面側の反射体3で反射し、オンラインホログラフィック拡散シート4を透過して前面に出射し、観察者7に表示光が到達することになる。
この際にオンラインホログラフィック拡散シート4は、出射する拡散光6を二次的に光拡散せずにそのまま透過させる。
【0029】
図2および図3は、図1に示したオンラインホログラフィック拡散シート4を作製する光学系の一例を示す構成図である。
【0030】
図2に示すように1つのレーザー光源10から出射されたレーザービームをビームスプリッタ11により2つに分け、一方をすりガラスなどの拡散板12を照明した拡散光13である物体光とし、他方を球面波や平面波である参照光14として、その2つの光波の干渉縞をまずホログラム用感光材料15に記録し、現像漂白処理を施し、マスターホログラムを作成する。
【0031】
次に図3に示すように、マスターホログラム22を再生して拡散板の像をホログラム用感光材料25上に結像し、また再生光23の光軸と参照光23の光軸を一致させるようにマスターホログラム22を透過した参照光23でホログラム用感光材料25を照明して、再度ホログラフィックな撮影記録を行なう。
【0032】
図2および図3の光学系を用いた上記のような、2ステップのホログラム記録方法により、拡散板12からの拡散光をまずホログラム用感光材料15にホログラム記録してマスターホログラムを作製し、次にマスターホログラム22からの再生光23を物体光として、また物体光と同一の光軸を持つ光を参照光24としてホログラム用感光材料25に照射記録され、それを現像漂白処理することにより、オンラインホログラフィック拡散シート4を作成することができ、液晶表示パネル2の前面に配置して使用される。
【0033】
なお、図2における前記オンラインホログラフィック拡散シート4を作製する際の、拡散板12とホログラム用感光材料15との距離や拡散板12のサイズが前記オンラインホログラフィック拡散シート4の光拡散性を決定するため、本発明の反射型液晶表示装置1の最も良好に観察できる視域を考慮して0〜1m程度の範囲で適宜選定している。
また、図3においては、露光光線が感光材料に対して斜めに入射しているが、この入射角が光拡散/直接透過という機能を生じさせる角度の選択性に影響するため、0度から80度の間で本発明の反射型液晶表示装置1の用途に応じて適宜選択される。
【0034】
また、拡散板21のサイズと拡散性はオンラインホログラフィック拡散シート4の光拡散性に影響するため、サイズは一辺の長さが1から500mmの範囲で、拡散性は擦りガラスの番数で10番から10000番の間の適当番数で適宜選択している。
【0035】
本発明の反射型液晶表示装置の液晶表示パネル2には、R・G・B画素に対応してカラーフィルタを搭載したカラー表示用パネル、又はモノクロ表示用パネルのいずれを使用してもよい。
また、TN方式,STN方式,ゲストホスト方式,ポリマー分散型など液晶の駆動方式に特に限定されるものではない。
【0036】
また、液晶表示パネル2の背面に配置される反射板3には、正反射性の反射板または光拡散性の反射板のいずれを使用してもよい。あるいは液晶パネル2中に内在する液晶を駆動させる電極をそのまま反射体として機能させてもよい。
【0037】
光拡散性シート4の作製に使用するアルゴンイオンレーザは、514.5nmの波長のレーザ光(緑色),488nmのレーザー光(青緑色)又は波長457.9nmの波長のレーザ光(青色)を用いることができる。またアルゴンイオンレーザー以外でもコヒーレント性の良いレーザー光源であれば作製可能で、例えばヘリウムネオンレーザーやクリプトンイオンレーザーなどが使用できる。
【0038】
また、被写体の拡散板12としては、例えば、すりガラスを用い、ホログラム用感光材料15,25としては、例えばアグファゲバルト社製の緑用、青用のホログラム用銀塩感光材料を用いることができる。
【0039】
本発明の一実施例では、2ステップのホログラム記録方法により1000番のすりガラスをアルゴンレーザーの514.5nmの発振光を用いて、アグファゲバルト社製8E56ホログラム用銀塩感光材料に記録した後、現像にはCWC2現像液を用い、漂白にはPBQ2漂白液を用いて現像、漂白、水洗、乾燥を行なったものを、TN型液晶を用いた反射型液晶表示装置に図1のような構成にて実施した。
【0040】
また、図3の光学系において物体光と参照光の角度を0〜5度の範囲で軸はずしにしてホログラム記録しても、そのホログラフィック拡散シートからの回折光の色分散は小さく、図1のような構成にてTN型液晶を用いた反射型液晶表示装置に上記ホログラフィック拡散シートを実装してその表示画像を観察したが、拡散光の虹色の変化は小さく、表示画像の視認の妨げになら、0〜5度の範囲の軸はずしであればオンラインホログラムと見なせることを確認した。
【0041】
また、請求項2に記載の体積位相型ホログラムの場合は上記の銀塩感光材料や重クロム酸ゼラチン、フォトポリマー等を使用して作製される。
請求項3に記載の表面レリーフホログラムの場合は、図3におけるホログラム用感光材料25にフォトレジストを使用して作製、あるいはそれを原版(スタンパ)として熱可塑性樹脂シートへのエンボス法などで複製したエンボスホログラムを使用することができる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、異方性を持つ光拡散性を備えたオンラインホログラフィック拡散シートを反射型液晶表示装置の光拡散板として液晶表示パネルの前面に配置することにより、
照明光である周辺光が液晶表示装置に入射した際にのみ光を拡散させて、液晶表示装置から光が出射する際には拡散せずに透過するような異方性を持たせることが可能であり、不必要な表示光の拡散が発生せず表示が明るくなり、画素ずれによる二重画像の発生がなく高精細な表示が可能となる。
特に、本発明による拡散シートでは、観察位置に応じて視覚される表示光の色が変化することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射型液晶表示装置を概念的に示す説明図。
【図2】オンラインホログラフィック拡散シートを作製する光学系(1ステップ目)の一例を示す説明図。
【図3】オンラインホログラフィック拡散シートを作製する光学系(2ステップ目)の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1…反射型液晶表示装置
2…液晶表示パネル
3…反射体
4…オンラインホログラフィック拡散シート
5…入射光
6…出射光
7…観察者
10…レーザー光源
11…ビームスプリッタ
12…拡散板
13…拡散光
14…参照光
15…ホログラム用感光材料
16a,16b,16c,26a,26b,26c…反射鏡
17 a,17b,27 a,27b…空間フィルタ
18 a,18b,28 a,28b…レンズ
20…レーザー光源
21…ビームスプリッタ
22…マスターホログラム
23…回折光
24…参照光
25…ホログラム用感光材料
Claims (7)
- マスターホログラムを透過した再生光からなる物体光と、前記マスターホログラムを透過した参照光とを、それぞれの光軸がほぼ一致する角度をなすように、ホログラフィックに撮影記録されたオンラインホログラムからなることを特徴とする反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シート。
- 前記オンラインホログラムが、体積位相透過型ホログラムであることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シート。
- 前記オンラインホログラムが、角度選択性を有する表面レリーフホログラムであることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シート。
- 液晶パネルの背面に反射体が配置され、液晶パネルの前面から入射する周辺光を、反射体で液晶パネル側に反射し、液晶パネルで変調された表示光を観察者に視覚させる反射型液晶表示装置において、
液晶パネルの前面に、請求項1〜3の何れかに記載の反射型液晶表示装置用ホログラフィック拡散シートを配置したことを特徴とする反射型液晶表示装置。 - 前記反射体は、入射光を正反射させる正反射性の反射体であることを特徴とする請求項4記載の反射型液晶表示装置。
- 前記反射体は、入射光を拡散反射させる拡散反射性の反射体であることを特徴とする請求項4記載の反射型液晶表示装置。
- 前記反射体が、液晶を駆動させるための電極を兼ねることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の反射型液晶表示装置。
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