JP3607120B2 - 内燃機関用ピストンにおける気密装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関におけるシリンダ内を往復動するピストンにおいて、その外周面と前記シリンダの内周面との間における気密を保持するためのシール装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内燃機関において、そのシリンダの内周面とピストンの外周面との間における気密保持は、前記ピストンに、前記シリンダの内周面に接触するピストンリングを少なくとも上下二段に嵌め込むことによって行うようにしていることは周知の通りである。
【0003】
また、この気密装置においては、前記各ピストンリングの合口における隙間寸法を、ピストンの頂面に近い上段のピストンリングにおいて小さく、下段のピストンリングにおいて大きくすることにより、ピストンの上昇行程のときにおいて各ピストンリングに作用する圧力を、各ピストンリングにおける合口からの圧力の下向き方向への吹き抜けにて順次下げるようにして、各ピストンリングの圧力バランスを図り、気密保持の確実性を向上するように構成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、少なくとも二本の各ピストンリングの合口における隙間寸法を、ピストンの頂面に近い上段のピストンリングにおいて小さく、下段のピストンリングにおいて大きくように構成した場合には、ピストンの下降行程に際して、下段のピストンリングにおける大きい隙間寸法の合口から吹き上がる潤滑油が多くなるから、潤滑油の消費量の増大及び排気ガスの悪化を招来するばかりか、前記大きい隙間寸法の合口における内面に潤滑油が燃焼した滓のカーボンが付着堆積して、当該合口における隙間寸法を狭め、ひいては各ピストンリングにおける圧力バランスが狂い、気密保持の性能が低下すると言う問題があった。
【0005】
本発明は、この問題を解消した気密装置を提供することを技術的課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を達成するため本発明は、
「シリンダ内を往復動するピストンの外周に少なくとも上下二段に設けたリング溝内に、前記シリンダの内周面に接触するピストンリングを嵌め込み、この各ピストンリングのうち下段ピストンリングの合口における隙間寸法を、上段ピストンリングの合口における隙間寸法よりも大きくして成る気密装置において、
前記下段ピストンリングにおける合口に、その隙間寸法を当該下段ピストンリングの外周部において部分的に狭めるようにした突起を設ける一方、前記ピストンの外周面のうち前記下段ピストンリングより下側の部分と前記シリンダの内周面との間の隙間寸法を、前記ピストンの外周面のうち前記下段ピストンリングより上側の部分と前記シリンダの内周面との間の隙間寸法よりも大きくする。」
という構成にした。
【0007】
【発明の作用・効果】
この構成において、ピストンの下降行程のとき、各ピストンリングは、その各々が嵌まるリング溝内の上面に密接する。
【0008】
この場合、下段ピストンリングの合口には、当該合口における大きい隙間寸法をピストンリングの外周部において部分的に狭めるように突起が設けられていることにより、この下段ピストンリングが、ピストンの下降行程においてリング溝内の上面に密接した時点で、この下段ピストンリングにおける大きい隙間寸法の合口が当該下段ピストンリングの上面側に連通することが前記突起によって閉ざされるか、その連通面積が前記突起によって狭められることになるから、下段ピストンリングにおける合口を通しての潤滑油に吹き上がりを少なく抑制することができるのである。
【0009】
一方、ピストンの上降行程のとき、各ピストンリングは、その各々が嵌まるリング溝内の下面に密接する。
【0010】
この場合、ピストンの外周面のうち前記下段ピストンリングより下側の部分と前記シリンダの内周面との間の隙間寸法を、前記ピストンの外周面のうち前記下段ピストンリングより上側の部分と前記シリンダの内周面との間の隙間寸法よりも大きくされていることにより、前記下段ピストンリングが、ピストンの下降行程においてリング溝内の上面に密接した時点で、この下段ピストンリングにおける大きい隙間寸法の合口が、これに設けた突起にかかわらず、当該下段ピストンリングの下面側に大きく連通することになるから、圧力の下向き方向への吹き抜けを許容できるのである。
【0011】
従って、本発明によると、潤滑油の吹き上がりによる排気ガスの悪化防止及び潤滑油の消費量の低減と、各ピストンリングにおける圧力バランスを保って気密保持の向上とを確実に達成できる効果を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図6の図面について説明する。
【0013】
この図において、符号1は、内燃機関におけるシリンダを、符号2は、前記シリンダ1内を往復動するピストンを各々示す。
【0014】
前記ピストン2の外周面には、少なくとも二本のリング溝3,4が上下に設けられ、これら各リング溝3,4内には、前記シリンダ1の内周面1aに密接するように構成したピストンリング5,6が嵌まっている。
【0015】
この各ピストンリング5,6のうち下段ピストンリング6の合口6aにおける隙間寸法P2を、上段ピストンリング5の合口5aにおける隙間寸法P1よりも大きく構成されている。
【0016】
そして、前記各ピストンリング5,6のうち下段ピストンリング6の合口6aにおける両内面6a′,6a″には、当該下段ピストンリング6における外周部の部分に突起7を一体的に設けることにより、下段ピストンリング6の合口6aにおける隙間寸法P2を、当該下段ピストンリング6の外周部において部分的に小さい隙間寸法P2′に狭めるように構成する。
【0017】
これに加えて、前記ピストン2の外周面のうち前記下段ピストンリング6より下側の部分2bと前記シリンダ1の内周面1aとの間の隙間寸法S2を、前記ピストン2の外周面のうち前記下段ピストンリング6より上側の部分2aと前記シリンダ1の内周面1aとの間の隙間寸法S1よりも大きくするという構成にする。
【0018】
この構成において、ピストン2の下降行程のとき、各ピストンリング5,6は、図4に示すように、その各々が嵌まるリング溝3,4内の上面に密接する。
【0019】
この場合、下段ピストンリング6の合口6aには、当該合口6aにおける大きい隙間寸法P2をピストンリング6の外周部において部分的に小さい隙間寸法P2′に狭めるように突起7が設けられていることにより、この下段ピストンリング6が、ピストン2の下降行程においてリング溝4内の上面に密接した時点で、この下段ピストンリング6における大きい隙間寸法P2の合口6aが当該下段ピストンリング6の上面側に連通することが前記突起7によって閉ざされるか、その連通面積が前記突起7によって狭められることになるから、下段ピストンリング6における合口6aを通しての潤滑油に吹き上がりを少なく抑制することができる。
【0020】
一方、ピストン2の上降行程のとき、各ピストンリング5,6は、図1に示すように、その各々が嵌まるリング溝3,4内の下面に密接する。
【0021】
この場合、ピストン2の外周面のうち前記下段ピストンリング6より下側の部分2bと前記シリンダ1の内周面1aとの間の隙間寸法S2を、前記ピストン2の外周面のうち前記下段ピストンリング6より上側の部分2aと前記シリンダ1の内周面1aとの間の隙間寸法S1よりも大きくしたことにより、前記下段ピストンリング6が、ピストン2の下降行程においてそのリング溝4内の上面に密接した時点で、この下段ピストンリング6における大きい隙間寸法P2の合口6aが、これに設けた突起7にかかわらず、当該下段ピストンリング6の下面側に大きく連通することになるから、圧力の下向き方向への吹き抜けを許容できて、各ピストンリング5,6における圧力バランスを保つことができる。
【0022】
本発明は、前記下段ピストンリング6の合口6aにおける両内面6a′,6a″の各々に突起7を設けることに代えて、図6に示すように、両内面6a′,6a″のうち一方の内面のみに突起7′を設けることによって、下段ピストンリング6の合口6aにおける隙間寸法P2を、当該下段ピストンリング6の外周部において部分的に小さい隙間寸法P2′に狭めるように構成しても良いのである。
【0023】
また、本発明は、前記実施の形態のように、ピストンリングを上下二段に設けることに限らず、上下三段に設けた場合にも、第2段目のピストンリング及び第3段目のピストンリングに、前記した構成を適用すれば良いのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部縦断正面図でピストンの上昇行程を示す図である。
【図2】図1のII−II視断面図である。
【図3】図1のIII −III 視断面図である。
【図4】ピストンの下降行程を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において下段ピストンリングの要部を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態において下段ピストンリングの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
1a シリンダの内周面
2 ピストン
3,4 リング溝
5 上段ピストンリング
5a 上段ピストンリングの合口
6 下段ピストンリング
6a 下段ピストンリングの合口
7,7′ 突起
2a ピストンの外周面のうち下段ピストンリングより上側の部分
2b ピストンの外周面のうち下段ピストンリングより下側の部分

Claims (1)

  1. シリンダ内を往復動するピストンの外周に少なくとも上下二段に設けたリング溝内に、前記シリンダの内周面に接触するピストンリングを嵌め込み、この各ピストンリングのうち下段ピストンリングの合口における隙間寸法を、上段ピストンリングの合口における隙間寸法よりも大きくして成る気密装置において、
    前記下段ピストンリングにおける合口に、その隙間寸法を当該下段ピストンリングの外周部において部分的に狭めるようにした突起を設ける一方、前記ピストンの外周面のうち前記下段ピストンリングより下側の部分と前記シリンダの内周面との間の隙間寸法を、前記ピストンの外周面のうち前記下段ピストンリングより上側の部分と前記シリンダの内周面との間の隙間寸法よりも大きくしたことを特徴とする内燃機関用ピストンにおける気密装置。
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