JPS645071Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、往復動式内燃機関のシリンダとピス
トンとの間をシールして燃焼ガスの漏れを防止す
ると共にシリンダ壁面の油膜厚さを調整する機能
を有するピストンリングの改良に関するものであ
る。

ピストンリングのオイルコントロール機能を高
くしてオイル消費を限界まで改善すると、オイル
量が少ない第１コンプレツシヨンリングのスカツ
フが起き易くなる。このようなスカツフを防止す
るには、第１コンプレツシヨンリングの温度を下
げれば良いが、従来では第１コンプレツシヨンリ
ングが、リング溝の下壁より温度が高い上壁に接
する時間が長くてピストンからの加熱時間が長く
なるので第１コンプレツシヨンリングの温度を下
げるにも限界があり、オイル消費とスカツフの両
方を満足することは至難であるとされていた。

例えば、３本のコンプレツシヨンリングと１本
のオイルリングとを組み合わせた従来のピストン
リングでは、例えば第１図に示すようにピストン
１の頂面２に最も近い第１コンプレツシヨンリン
グ３をキーストンリングのようにシール性に優れ
たリングで構成し、この第１コンプレツシヨンリ
ング３に隣接する第２コンプレツシヨンリング４
をテーパリングのようにシール機能とオイルコン
トロール機能とを有するリングで構成し、第２コ
ンプレツシヨンリング４とオイルリング６とに挟
まれた第３コンプレツシヨンリング５をアンダカ
ツトリングあるいはアウタカツトリング等と称さ
れるリングで構成するというように、ピストン１
の頂面２から遠くなるに従つてリングのシール機
能を次第に低下させると共にオイルコントロール
機能を次第に高くしていた。７はシリンダであ
る。

ところが、このようなピストンリングでは、第
１コンプレツシヨンリング３がリング溝の上壁に
接触する時間が長いためにリングの温度が高くな
つてしまい、オイルの消費量を限界まで少なくす
ると第１コンプレツシヨンリング３の摺動面にス
カツフを生じ易くなるのでオイル消費を充分に改
善できないという不都合がある。

即ち、リング溝内におけるリングの動きは、リ
ングに作用する慣性力と圧力とによつて決まる
が、デイーゼル機関のように第１コンプレツシヨ
ンリング３の上面に働くガス圧力P₁が高い内燃
機関では、第２コンプレツシヨンリング３のシー
ル作用によつて第１コンプレツシヨンリング３の
下面に働くガス圧力P₂も高くなり、これらの圧
力P₁，P₂が第２図に示すような特性で変化する。
このために第１コンプレツシヨンリング３の上面
に働く圧力P₁が下面に働く圧力P₂より充分に高
くなつている領域Ａでのみ第１コンプレツシヨン
リング３がリング溝の下壁に接して他の領域Ｂで
はリング溝の上壁に接してしまつてリング温度が
高くなるという不都合が生じる。このような不都
合はシリンダ内圧力が高くなるほど顕著になるた
め、例えば排気ターボチヤージヤを備えたデイー
ゼル機関等のようにシリンダ内の圧力が高くてピ
ストンの温度が高い内燃機関では、オイル消費を
限界まで削減できないという不都合があつた。

又、上記のような不都合を解消するには、第１
コンプレツシヨンリング３と第２コンプレツシヨ
ンリング４との間にリングを装着しない溝を設け
て第１コンプレツシヨンリング３の下部の空間容
積を大きくすればよいが、この場合にはリングラ
ンドが長くなつてピストンが大型化するという欠
点があり、リング溝の数をそのままにしてリング
の数を減少して第１コンプレツシヨンリング３の
下部の容積を大きくすると、オイルコントロール
機能が低下してオイル消費が増加し、あるいは、
シール機能が低下してブローバイガスの量が多く
なるという不具合を招いてしまう。

本考案は、このような実状に鑑みてなされたも
のであり、ピストンの外周面に少なくとも４条の
リング溝を形成し、ピストンの頂面に近い３条の
リング溝にそれぞれコンプレツシヨンリングを装
着して他のリング溝にオイルリングを装着した内
燃機関において、ピストンの頂面に最も近い第１
コンプレツシヨンリングを最もシール機能に優れ
たリングで構成し、該第１コンプレツシヨンリン
グに隣接する第２コンプレツシヨンリングのシー
ル機能を前記オイルリングに隣接する第３コンプ
レツシヨンリングのシール機能より低くすると共
に、第２コンプレツシヨンリングのオイルコント
ロール機能を前記第３コンプレツシヨンリングの
オイルコントロール機能より高くすること、つま
り、従来の第２コンプレツシヨンリングと第３コ
ンプレツシヨンリングとの機能を入れ替えること
によつてオイル消費を悪化させることなく第１コ
ンプレツシヨンリングの温度を効果的に低下させ
てスカツフをも改善することを目的としている。

以下に本考案を図示された一実施例に基づいて
詳細に説明する。

第３図は本考案の一実施例を示す要部の断面図
であり、シリンダ１０に摺動自在に嵌挿したピス
トン１１の外周面には４条のリング溝を形成し、
ピストン１１の頂面１２に近い３条のリング溝に
それぞれコンプレツシヨンリング１３，１４，１
５を装着して前記頂面から最も離れたリング溝に
オイルリング１６を装着している。

ここに、最もピストン１１の頂面１２に近いリ
ング溝の装着されている第１コンプレツシヨンリ
ング１３は、キーストンリング、ウエツジリング
あるいはプレーンリング等のようにシール機能に
優れたリングで構成されており、この第１コンプ
レツシヨンリング１３に隣接する第２コンプレツ
シヨンリング１４をアンダカツトリングあるいは
アウタカツトリングと称されるリングのようにシ
ール機能はやや劣るもののオイルコントロール機
能に優れたリングで構成し、この第２コンプレツ
シヨンリング１４とオイルリング１６との間に位
置する第３コンプレツシヨンリング１５をテーパ
リングのようにオイルコントロール機能はやや劣
るもののシール機能に優れたリングで構成してい
る。

即ち、従来ではピストン１の頂面１２から離れ
るに従つてリングのシール機能を次第に低下させ
ると共に、オイルコントロール機能を逆に次第に
高くしていたが、本考案では第２コンプレツシヨ
ンリング１４のシール機能を第３コンプレツシヨ
ンリング１５のシール機能より低くしたうえで第
２コンプレツシヨンリング１４のオイルコントロ
ール機能を第３コンプレツシヨンリング１５のオ
イルコントロール機能より高くすることで全体と
してのシール性能とオイルコントロール性能とを
確保している。

従つて、第２コンプレツシヨンリング１４はほ
とんどガスシールをしなくなるので第１コンプレ
ツシヨンリング１３の下部の空間の容積が実質的
に増加する。このために、第１コンプレツシヨン
リング１３の上面に働く圧力P₁が第４図に実線
で示すように変化すると、該リング１３の下面に
働く圧力P₂が同図に破線で示すように変化する
ので上方に向う慣性力が作用する吸入行程初期の
領域Ｃを除いた他の領域Ｄでは第１コンプレツシ
ヨンリング１３がリング溝の下壁に接触保持され
てピストン１１による加熱量が減少する結果、第
１コンプレツシヨンリング１３の温度が低下して
オイルの消費量を限界まで削減しようともスカツ
フが発生しなくなる。

尚、第２コンプレツシヨンリング１４がオイル
コントロール作用をするのでオイル消費量が増加
するおそれもない。

上記実施例では、第１コンプレツシヨンリング
１３をキーストンリングで構成し、第２コンプレ
ツシヨンリング１４をアウタカツトリングで構成
し、第３コンプレツシヨンリング１５をテーパリ
ングで構成してオイルリング１６をオイルコント
ロール機能に優れたエキスパンダオイルリングで
構成しているが、各リングの具体構造及びリング
の総数は実施例に限定されない。

以上説明したように本考案によれば、第２コン
プレツシヨンリングと第３コンプレツシヨンリン
グとの機能を入れ替えるのみで第１コンプレツシ
ヨンリングがリング溝の上壁に接触する時間を著
しく短くしてこのリングの温度を低くできるた
め、オイル消費を限界まで削減しようとも第１コ
ンプレツシヨンリングにスカツフが発生すること
がなくなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の代表例の断面図、第２図は従来
の第１コンプレツシヨンリングに働く圧力の特性
図、第３図は本考案の一実施例の断面図、第４図
は本考案の第１コンプレツシヨンリングに働く圧
力の特性図である。 １１……ピストン、１２……頂面、１３……第
１コンプレツシヨンリング、１４……第２コンプ
レツシヨンリング、１５……第３コンプレツシヨ
ンリング、１６……オイルリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンの外周面に少なくとも４条のリング溝
   を形成し、ピストンの頂面に近い３条のリング溝
   にそれぞれコンプレツシヨンリングを装着して他
   のリング溝にオイルリングを装着した内燃機関に
   おいて、ピストンの頂面に最も近い第１コンプレ
   ツシヨンリングを最もシール機能に優れたリング
   で構成し、該第１コンプレツシヨンリングに隣接
   する第２コンプレツシヨンリングのシール機能を
   前記オイルリングに隣接する第３コンプレツシヨ
   ンリングのシール機能より低くすると共に、第２
   コンプレツシヨンリングのオイルコントロール機
   能を前記第３コンプレツシヨンリングのオイルコ
   ントロール機能より高くしたことを特徴とする内
   燃機関のピストンリング。