JP3606896B2 - 反応器およびこの反応器の中において実施される共重合法または重合法 - Google Patents

反応器およびこの反応器の中において実施される共重合法または重合法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業状の利用分野】
本発明は、特に不均一系を混合するのに適した撹拌機構を備えた円筒形の反応器およびこの反応器の中において実施される共重合法または重合法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
種々の成分の連続均一混合と各相間の(例えば気−液、気−液−固、液−固、液−液などの相間の)効率的物質交換を必要とする処理を実施するための円筒形の各種機械的撹拌反応器が業界公知である。機械的撹拌は一般に反応器中に軸方向位置に配置された撹拌器によって実施される。主として撹拌される物質の粘度に対応して特定の撹拌器形状が使用される(タービン、羽根、プロペラなど)(これに関しては、「化学技術の進歩(Advances in Chemcal Engineering )」、Vol.17、5−8頁、アカデミックプレス、1992参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
気−液系の場合、業界公知のすべての撹拌装置の共通の問題点は、これらの相間の物質移動係数が一般に高くなく、撹拌される物質量が時間と共に減少するに従って、この物質移動係数が著しく低下する事にある。これは例えば、単量体の少なくとも一種が気相で存在するエマルジョンまたは懸濁液重合反応の場合であって、この場合には、重合に際して液相の量と液相の固体含有量が徐々に増大する。このようにして気相と液相の間の物質移動が低下し、従って収率が低下する。
【0004】
また各種の相間において満足な物質交換を生じる事の困難さから、反応器形状がある程度制限される。特に従来の撹拌システムにおいては、熱交換を効率化するために高さ/直径比の高い反応器を使用する事が実際上不可能である。
【0005】
気−液システムにおいて相間の物質交換を改良するため、液相中にガスを分布する装置(スパージャ)を使用する事が公知である。この種の装置は実際上円環形装置であって、複数の穴を備え、これらの穴を通してガスが泡状に放出される。しかしこれらの装置は閉塞しやすいので頻繁な保守作業を必要とする。これは特に、液相中に固相が存在しあるいは反応中に固相が形成される場合(例えば重合反応の場合)である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
出願人は、特に不均一系の混合に適し、相異なる相間において非常に効率的な物質交換を達成しまた撹拌される物質の量が増大した場合にも物質交換が一定にとどまるように成された新規な型の回転式撹拌装置を発見した。また本発明の撹拌装置においては、特に低い剪断応力値をもって高い混合均一性が得られる。
【0007】
従って本発明の目的は、特に不均一系を混合するのに適した撹拌機構を備えた円筒形の反応器において、前記撹拌機構は、回転式撹拌装置(1)と回転軸線に対して同軸の駆動軸とを備え、前記回転式撹拌装置は駆動軸に連結されるとともに複数の撹拌要素(2)を有し、これらの撹拌要素(2)は水平断面がC形形状となっているとともに回転軸線に対して対称的に配置され、各撹拌要素(2)は下端部(3)、垂直部(4)および上端部(5)からなり、それぞれの撹拌要素(2)は上方連結要素(7)および下方連結要素(6)にまとめて取り付けられ、前記撹拌装置(1)は、反応器の直径(T)の1/3乃至2/3の範囲内の底部直径(D)を有し、下端部(3)は、撹拌装置の底部直径(D)の少なくとも1/5以上の高さ(F)を有し、垂直部(4)は、反応器の直径(T)の1/20乃至1/4の範囲内の幅(G)を有し、各撹拌要素(2)は、撹拌装置の直径(D)の3/2と反応器の高さ(V)との間の範囲内の高さ(L)を有することを特徴とする反応器を提供することにある。
【0008】
以下、本発明を図面に示す実施例について詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
【実施例】
図1に図示の撹拌器1は3個の撹拌要素2を有し、これらの撹拌要素2は、装置そのものの回転方向に向かって凹形を成す凹形羽根である。撹拌要素2は回転軸線に対して対称的に配置され、各羽根が他の羽根に対して120゜の角度Aを成す。
【0010】
各撹拌要素2は下端部3、垂直部4および上端部5から成る。図1に図示のように撹拌装置1は好ましくは上端部5に向かってテーパを成し、そのため下端部3は上端部5より長いので、垂直部4は垂直軸線に対して0゜乃至10゜の範囲内の角度Bを成す。このようなテーパは、反応器内部の軸方向移動をさらに均一に分布させる機能を有する。
【0011】
3個の撹拌要素2は下方連結要素6と上方連結要素7とによって相互に接合され、これらの連結要素上にそれぞれ撹拌要素の下端部3と上端部5が連結されている。上方連結要素7は、撹拌装置1を回転させるために取付けられた駆動軸に固着されている。
【0012】
下端部3の下側面は水平面に対して、通常凹形の反応器底部のそれぞれの形状に対応して0゜乃至45゜の角度Cを成す。
【0013】
本発明の目的を成す撹拌装置のサイズ特性に関しては、これらの特性は主として装置を使用する反応器のサイズに依存している。
【0014】
直径(T)と高さ(V)を有する実質的に円筒形の反応器の場合、本発明の目的の撹拌装置のサイズは好ましくは下記とする。
【0015】
−撹拌装置1の底部直径(D):直径(T)の1/3乃至2/3;
−撹拌要素2の曲率半径(E):直径(T)の1/3と同等またはこれ以上;
−下端部3の高さ(F):直径(D)の1/5と同等またはこれ以上;
−垂直部4の幅(G):直径(T)の1/20乃至1/4;
−撹拌要素2の高さ(L):直径(D)の3/2乃至高さ(V)とほぼ同等の値:
もちろん高さ(L)の最大値は反応器の特殊形状に依存するが、反応器の中において撹拌装置を自由に回転させる程度でなければならない。
【0016】
上端部5の高さ(M)は、通常の状態ではこの高さは撹拌される物質の外部にあるので、撹拌効率には一般に無影響である。しかし高さ(M)は一般に少なくとも直径(T)の1/20に等しい。
【0017】
前記の値は単に例にすぎず、考慮される不均一系の特性、粘度、密度、固体含有量、相の数などに対応して変動する事ができる。
【0018】
また前記の実施態様について本発明の主旨の範囲内において、各要素の変更、調整、変形および機能的に同等の他の要素との交換を実施する事ができるのは明かである。
【0019】
相異なる相間の高物質交換率と低剪断応力との故に、本発明は特に下記の用途に使用される反応器に好適である。
【0020】
−特にフッ素化オレフィン単量体のエマルジョン重合(共重合)反応、例えばテトラフルオロエチレンのホモポリマーおよびそのヘキサフルオロプロペン、フルオロビニルエーテルとのエラストマーまたはプラストマー共重合体、例えばペルフルオロプロピルビニルエーテルまたはペルフルオロメチルビニルエーテル;フッ化ビニリデンのホモポリマーおよびそのヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、フルオロビニルエーテル、完全水添されたオレフィン、臭素化および/またはヨウ素化ビニル・コモノマーとのエラストマーまたはプラストマー共重合体などの製造;
−例えばエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)またはエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(CTFE)などのポリマー(共重合体)の製造のための、特にフッ素化オレフィン単量体の懸濁液重合反応(共重合反応);
−薬剤の有効成分の製造用の発酵反応、特に剪断応力感性微生物および/または生成物が存在する反応;
−スラリ製造工程、特に剪断応力感性生成物の存在する工程(例えば、ゼオライト分散系の製造工程)。
【0021】
前述のように、本発明の撹拌装置は時間的にきわめて一定の反応率を保証し、均一混合と低剪断応力とを示す。特に、エマルジョン重合反応の場合、低剪断応力はきわめて有利である。これは安定な重合ラテックスを生じ、望ましくない重合体凝塊の形成を防止するからである。公知のように、このような凝塊は反応器を汚して保守の問題を生じるのみならず、熱交換効率の低下、重合体の汚染、反応速度の低下などの種々の問題を伴なう。
【0022】
さらに本発明の撹拌装置は、懸濁重合に際して、50重量%以上の懸濁固体含有量についても均一混合を成す事ができる。
【0023】
不均一系の混合に際しての本発明の有効性は下記データから明かである。このデータは本発明の反応器(図3)を、同一回転軸上に配置された2つのラシュトンタービンを使用する先行技術の撹拌装置(図4)と比較する。
【0024】
図3は本発明の目的を成す撹拌装置の断面を示し、この撹拌装置は反応器8の中に配置され、この反応器の中に一対のじゃま板9が対称的に配置されている。撹拌される液体の水準はHによって示される。測定に使用される反応器+撹拌装置システムの各要素の実サイズは下記である。
【0025】
反応器(図3参照)
T=202mm;a=150mm;b=36mm;c=7mm;d=6mm;e=60mm;f=110mm;g=324mm;
撹拌装置(図1および図2参照)
A=120゜;B=2.42゜;C=10゜;D=112mm;E=60mm;F=54mm;G=14mm;L=420mm;M=20mm.
図4は先行技術の装置10の断面図であって、この装置は6枚羽根12のラシュトンタービンを回転軸13上に設置して構成され、内部に4枚のじゃま板15を対称的に配置された反応器14の中にこの装置10を配置する。撹拌される液体の水準をHで示す。測定に使用される反応器+撹拌装置システムの各要素の実サイズは下記である。
【0026】
T=202mm;m=20.2mm;n=100mm;p=25mm;q=20mm;r=67.3mm;s=200mm。
【0027】
各撹拌装置+反応器システムについて、液相(水)と気相(空気)の間の酸素の物質移動係数(k1 )を「バイオテクノロジー アンド バイオエンジニアリング(”Biotechnology and Bioengineering”)」、Vol.XXIX、p.982−993(1987)においてY.イマイ、H.タケイ、およびM.マツムラによって記載された方法に従って測定した。反応器の相異なる充填水準において測定が実施された。
【0028】
測定結果を図5に示す。横座標にはH/T比、すなわち液体高さ(H)と反応器直径(T)との比率を示し、縦座標には積k1 a・V1 ・101 を示した。ここに、
k1 は物質移動係数(m/sec)、aは気/液界面比面積(m−1)、V1 は反応器中の液体体積(m3 )とする。
【0029】
図5の3本の曲線はそれぞれ下記を示す。
【0030】
−本発明による反応器+撹拌装置システム(図3)、回転速度N=5.8秒−1および比電力=2.0−2.6Kw/m3 (符号○)、
−先行技術による反応器+撹拌装置システム(図4)、回転速度N=10秒−1および比電力=6.5−10Kw/m3 (符号△)、
−先行技術による反応器+撹拌装置システム(図4)、回転速度N=6.5秒−1および比電力=1.8−2.8Kw/m3 (符号□)。
【0031】
比電力は剪断応力に関連した量であって、反応器の充填水準に対応して変動する。
【0032】
【発明の効果】
図5のグラフを比較すれば明かなように、本発明による撹拌装置を使用すれば、反応器充填水準が変動しても気相と液相との間において実質的に一定の物質交換率が得られるが、先行技術の撹拌装置を使用すれば非常に大きな変動を生じる。また比電力を同等として、本発明による装置ははるかに高い相間物質交換率を示す事を注意しよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2の面X−X’にそった本発明の装置の長手方断面図。
【図2】本発明の装置の平面図。
【図3】反応器の中に収容された本発明による撹拌装置の長手方断面図。
【図4】先行技術の撹拌装置および反応器の長手方断面図。
【図5】本発明の撹拌装置と先行技術の撹拌装置を使用した場合の物質交換テスト結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1 撹拌装置
2 撹拌要素(羽根)
3 撹拌要素の下部
4 撹拌要素の垂直部
5 撹拌要素の上端部
8 反応器
A 羽根の相互角度
B 垂直部と回転軸線との角度
C 下端部の下側面と水平面との角度
D 下端部の直径
E 撹拌要素の曲率半径
F 下端部の高さ
G 垂直部の幅
H 液体の水準
L 撹拌要素の高さ
M 上端部の高さ
T 反応器の直径
V 反応器の高さ

Claims (7)

  1. 特に不均一系を混合するのに適した撹拌機構を備えた円筒形の反応器において、
    前記撹拌機構は、回転式撹拌装置(1)と回転軸線に対して同軸の駆動軸とを備え、
    前記回転式撹拌装置は駆動軸に連結されるとともに複数の撹拌要素(2)を有し、これらの撹拌要素(2)は水平断面がC形形状となっているとともに回転軸線に対して対称的に配置され、
    各撹拌要素(2)は下端部(3)、垂直部(4)および上端部(5)からなり、それぞれの撹拌要素(2)は上方連結要素(7)および下方連結要素(6)にまとめて取り付けられ、
    前記撹拌装置(1)は、反応器の直径(T)の1/3乃至2/3の範囲内の底部直径(D)を有し、下端部(3)は、撹拌装置の底部直径(D)の少なくとも1/5以上の高さ(F)を有し、垂直部(4)は、反応器の直径(T)の1/20乃至1/4の範囲内の幅(G)を有し、各撹拌要素(2)は、撹拌装置の直径(D)の3/2と反応器の高さ(V)との間の範囲内の高さ(L)を有することを特徴とする反応器。
  2. 各撹拌要素(2)は、曲率半径を有し撹拌装置の回転方向からみて凹面となっている凹形断面の羽根であり、前記曲率半径が反応器の直径(T)の少なくとも1/3以上となっていることを特徴とする請求項1記載の撹拌機構を有する円筒形の反応器。
  3. 撹拌要素(2)は3枚であることを特徴とする請求項1または2記載の撹拌機構を有する円筒形の反応器。
  4. 各撹拌要素(2)の下端部(3)は水平方向において上端部(5)よりも長く、各撹拌要素(2)の垂直部(4)は回転軸線に対して0°乃至10°の範囲内の角度(B)をなすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の撹拌機構を有する円筒形の反応器。
  5. 各撹拌要素(2)の下端部(3)の下側面は水平面に対して、0°乃至45°の範囲内の角度(C)をなすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の撹拌機構を有する円筒形の反応器。
  6. 各撹拌機構(2)の上端部(5)は、反応器の直径(T)の少なくとも1/20以上の高さ(M)を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撹拌機構を有する円筒形の反応器。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の撹拌機構を有する円筒形の反応器の中において実施されるエマルジョンまたは懸濁液中でのフッ素化オレフィン単量体の共重合法または重合法。
JP01946194A 1993-02-17 1994-02-16 反応器およびこの反応器の中において実施される共重合法または重合法 Expired - Lifetime JP3606896B2 (ja)

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