JP3606508B2 - 履物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、負傷した足に適した履物に関する。
【0003】
【従来の技術】
【0004】
従来、足を負傷した場合、特に足のつま先部や甲部に包帯が巻かれた状態では、既存の履物では開放的なサンダルでさえ、包帯で膨らんだ足先を通すことができない場合があり、また、無理矢理通すことができても負傷部に痛みを伴うことがあった。また、かかとの負傷によりかかと部にのみ包帯が装着されたような際には、サンダルを足先に引っかけることができる場合もあるが、通常のサンダルでは脱げやすかった。
【0005】
このような場合、外出時に利用できる適当な履物がなく、そのため、自由に外出することがためらわれた。また、通院等やむを得ない外出時には松葉杖を利用して始終一方の足を空中に浮かせておくか、あるいは、ポリエチレン製等の袋をかぶせて急場をしのぐ、というのが現状であった。
【0006】
包帯ではなくギブスをした場合にも同様である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、適当な履物さえあれば松葉杖なしで歩行できる場合まで、松葉杖を利用しなければならないのは極めて不便である。また、歩行に松葉杖の補助が必要な場合であっても、足裏を常に空中に浮かせておくのは負担であり、必要時にはためらうことなく足を接地できる状況であることが好ましい。ポリエチレン等の袋をかぶせる方法は、見栄えが悪いだけでなく、その薄い層を介して接地することは負傷した足には負担が大きいという問題があった。
【0009】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、その目的は負傷した足に適した履物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による履物は、負傷した足に履く履物であって、底部材と、底部材の両側部間に架け渡される甲押さえ部材とを備え、この甲押さえ部材は、伸縮可能な弾性部材で形成されるとともに、その端部または中間部において開放可能であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、甲押さえ部材がその端部または中間部において開放可能であるので、負傷した足に負担を掛けることなく、適切に装着できる。また、甲押さえ部材が伸縮可能な弾性部材で形成されるので、装着時に履物を足に密着させ、足からの離脱を防止することができる。
【0013】
なお、本明細書において「負傷」とは、傷や怪我に限るものではなく、種々の足の病気をも含むものとする。すなわち、包帯やギブス等により通常のサンダル等の履物が履けない状態となった足の状態を広く意味する。
【0014】
前記甲押さえ部材は、好ましくは、ワンタッチで互いに着脱可能な第1の部分と第2の部分とを有し、少なくともその一方が伸縮可能な弾性部材で形成する。これによって、履物の迅速な着脱が可能となる。
【0015】
前記第1の部分は、非伸張状態での長さを調整可能な長さ調整手段を有することが好ましい。これによって、同じ甲押さえ部材を、負傷した足の種々の甲高さに共用することができる。
【0016】
前記底部材両側部に対する前記甲押さえ部材の取り付け端部を前記底部材から離脱可能とするとともに、前記底部材に対する両取り付け端部の取り付け位置を左右交換可能としてもよい。これによって、同じ履物を左右のいずれの足に装着しても同様の操作性が保証される。
【0017】
前記底部材の両側部に沿って、前記取り付け端部を取り付け可能な取り付け位置を複数組設けてもよい。これにより、負傷した足のサイズ、状態に応じて適切な甲押さえ部材の前後方向位置を選択できるようになる。
【0018】
前記底部材の先端部に着脱可能な足先被覆部を設けてもよい。これによれば、足先を保護するとともに、塵埃等による足先の汚れを防止できる。
【0019】
前記底部材自体または前記底部材の上に設ける表部材の少なくともかかと側に後ろ高の傾斜を付けてもよい。この構成は、足に対して履物をより良くフィットさせ、甲押さえ部材の弾力性と相俟って、履物の離脱防止に寄与する。
【0020】
【発明の実施の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る履物の概略の構成を示す斜視図である。この履物は、主として、人間の足裏形状にほぼ合致した形状の、緩衝材として機能する底部材11と、この底部材の左右側部間に架け渡される甲押さえ部材としてのベルト20とにより構成される。
【0023】
通常、負傷した足は片足であり、履物を左右のいずれの足にも利用可能とするために、底部材11は左右対称の形状としてある。底部材11としては、好ましくは可撓性、弾性を有する比較的軽量の材質(例えば発泡プラスチック)を用いる。
【0024】
ベルト20は、第1の部分21と第2の部分24からなり、少なくとも第1の部分がゴム等の伸縮自在の弾性部材により構成される。この実施の形態では、第2の部分24の一端は底部材11の側部(図の左側)に固定され(縫いつけられ)、その他端は自由端となり、その表面側に一方の面ファスナ25が取り付けられている。
【0025】
ベルト20の第1の部分21は、図1(b)からより明確に分かるように、比較的に長く、一端が日の字状バックル(留め具)31の中央の軸31aに固定され、その他端は自由端として、口の字状バックル22の一方の軸を巻回して折り返し、日の字状バックル31の2つの開口部を内外内の順に通過する。この第1の部分21の自由端の裏側には、先の面ファスナ25と着脱可能な他方の面ファスナ26が取り付けられている。また、この自由端は、ユーザが手の親指と人差し指でつまんで操作できるつまみ部27を構成している。口の字状バックル22の他方の軸は、底部材11の他方の側部(図の右側)に固定されたベルト取付部23に取り付けられている。ベルト取付部23は、この実施の形態では、バックルの軸が貫通する環状部を形成するように、短いベルト状部材を折り曲げて底部材11上に固定したものである。
【0026】
ベルト20の第1の部分21は日の字状バックル31と口の字状バックル22との間の部分にベルト往復部を有するので、この往復部の長さを調節することにより、第1の部分21の使用上の長さ(非伸張状態での長さ)を調節できる。この長さ調整手段の存在により、図2に示したつま先にのみ包帯33が巻かれた場合の素足の甲部のような比較的低い甲高さから、図3に示したすねから甲部までギブス35で覆われた場合の甲部のような比較的高い甲高さまで、1つのベルト20で対応できる。
【0027】
また、図示しないが、かかとの負傷によりかかと部にのみ包帯が装着されたような場合であってもベルトの弾性力により履物の脱落を防止できる。
【0028】
実際の使用時には、最初に、つまみ部27をつかんで面ファスナを開放し、負傷した方の足を底部材11の所定の位置に載せ、負傷した足の甲の高さに合わせて少し短めにベルト20の長さを調節する。この調整は、初めてこの履物を利用する際に1回行えばよく、以後はこの長さ調節は不要である。
【0029】
ついで、つまみ部27をつかみベルトの第1の部分21をその弾性力に抗して伸ばしながら、負傷した足の甲に巻き付けるようにして第2の部分24に対して合わせるようにする。これにより、面ファスナ25、26が直ちに接合し、負傷した足にほとんど負担を掛けることなく、この履物の足への装着が完了する。
【0030】
この履物の重量は、その構造および材質上、通常の靴やサンダルに比べて軽く、また、負傷した足用なので急激な動きに晒される場合もないので、通常の使用状態では、ベルト1本による装着でも離脱の心配はない。しかし、図11、図12に後述するような対処を行ってもよい。
【0031】
装着した履物を脱ぐ場合には、ベルトの第1の部分21のつまみ部27を摘み、面ファスナの接合力に抗して摘み部27を引張り上げることにより、面ファスナの接合を解除し、第1の部分21を第2の部分24から離脱させることができる。これにより、負傷した足に全く負担を掛けることなく、一瞬にして履物を脱ぐことができる。本明細書では、このような面ファスナ25,26によるベルトの第1および第2の部分21,24の着脱の様子を「ワンタッチで着脱可能」と形容しているが、ワンタッチで着脱可能とは、第1および第2の部分の21,24を互いに押しつけることにより接合状態が得られ、また、互いに引き離すことにより接合状態が解除されることを意味し、このような機能が得られれば面ファスナに限定されるものではない。
【0032】
図4は、底部材11に対して、ベルト20を2本取り付けた構成を示している。これにより、足に対して履物がより安定に装着される。より幅広の1本のベルトの使用も考えられるが、独立した複数のベルトの方が足への適合性に勝る。前述したように、ベルト20の面ファスナの着脱操作は極めて簡単で短時間に行えるので、ベルト20の本数の増加は、操作上は何ら問題ない。
【0033】
図5は、負傷した足のつま先(足先)が露出されるのを防止するために、底部材11の前部に着脱可能な足先カバー(足先被覆部)40を設けた実施の形態を示す。図5(b)から分かるように、この足先カバー40はほぼ四分の一球状であり、その底部内側面に沿って一方の面ファスナ42が固定され、これと接合する他方の面ファスナ44が底部材11の前方側面部に固定されている。この足先カバー40は、プラスチックや高強度加工された紙等の材質で作製され、必要に応じて履物の前部に簡単に装着でき、また、簡単に取り外すことも可能である。足先カバー40は、図2のような負傷したつま先部を、あるいは図4のような露出した裸足のつま先を、外部から保護する働きを有する。さらに、それらを汚れや塵埃から守る働きを有する。
【0034】
ところで、今まで説明したベルト20は、その第1の部分21と第2の部分24との接合部(面ファスナ部)が足の一方の側部側に位置するため、この履物をいずれの足に装着するかによって、接合部が足の内側に来る場合と外側に来る場合とがある。これでも特に問題はないと思われるが、左右いずれの足に装着する場合にも足の一方の側(例えば外側)に接合部が来るよう選択的に装着できる他の実施の形態を図6に示す。
【0035】
図6の実施の形態では、図1の履物の口の字状バックル22に代えて、側部に切り欠き部59を有する日の字状バックル57を用いたこと、第2の部分24の側にも同じ切り欠き部59を有する日の字状バックル58を設けたこと、この日の字状バックル58が係合するベルト取付部50を底部材11の側部に設けたこと、が主な変更点である。この構成により、ベルト20は底部材11に対して左右を逆転して取り付けることができ、これにより左右いずれの足に装着した場合でも接合部29の位置を所望の側に位置させることができる。
【0036】
さらに、図6の例では、底部材11の前後方向に位置のずれた3組のベルト取付部23,50;51,52;53,54を設けた例を示している。これは、ベルト20の両端をともに着脱可能としたことに伴って、さらに、ユーザの足の大きさに応じて、あるいは、素足、包帯、ギブス等の足の状態に応じて、ベルト20の位置を足の前後方向に変更できるようにしたものである。ベルト取付部は図では3組の場合を示したが、2組あるいは4組以上であってもよい。
【0037】
図7は、図6のベルト20を最も後ろのベルト取付部の組23,50に対して、接合部29が左側に来るように取り付けた様子を示す。この図から、日の字状バックル57,58の最下部の軸の自由端部56がそれぞれベルト取付部23,50の環状部を貫通していることが分かる。自由端部56は若干軸部から上方へ湾曲しているので、この履物の通常の使用状態では取付部から離脱することはない。
【0038】
図7では1本のベルトのみを取り付けた例を示したが、図4に示したように、複数本のベルトを底部材11の異なる位置に同時に取り付けるようにしてもよい。例えば、2本のベルトを用いる場合、足の状態に応じて、取付部の任意の2つの組(前2組、後2組、中間を除く前後の2組)に当該2本のベルトを装着することができる。
【0039】
図8は、図6の実施の形態の変形例を示す。図6ではベルト取付部は、底部材11の表面から上部へ突出した構造としたが、図8では内蔵型とした。具体的には、底部材11の上に同一形状の表部材12を重ね合わせ、表部材12の各ベルト取付部において、表部材12に1対の開口67,68を設け、表部材12と底部材11の間にバックル57,58の軸が貫通可能な貫通孔61〜66を設けた。各貫通孔は、例えば、その両側長辺に沿って表部材12を底部材11に縫いつけることにより、形成できる。
【0040】
図9は、ベルト20を最後部のベルト取付部に取り付けた様子を示す。この構造により、図6に示した例におけるベルト20の着脱機能は維持したまま、ベルト取付部の内蔵化により、不使用状態のベルト取付部の目立つという外観上の欠点を解消することができる。図9においても、複数本のベルトを異なる位置に同時に取り付けるようにしてもよい。
【0041】
図10〜図12はさらに他の実施の形態を示すものである。
【0042】
図10は、底部材11の裏側のかかと位置にかかと台座71を追加したものである。これにより、かかとの高さを若干高くするとともに、体重のかかるかかと部の弾力を向上させ、履き易さの改善を図ることができる。
【0043】
図11は、一般的な足の裏の凹凸にほぼ合わせて、履物のつま先部、土踏まず部およびかかと後部を若干高くするような表面傾斜を付けた表部材72(底部材11と同一形状)を設けた例を示す。これにより、この履物の履き心地が向上するとともに、特に後部側の表部材72の後ろ高の傾斜がベルト20の弾力性と相俟って、意図しない履物の離脱を防止することができる。表部材72と底部材11を別体とすることにより両者を異なる材質で形成できるが、その必要がなければ、底部材11自体の表面を表部材72のような形状にすることも可能である。
【0044】
図12は、図11の表部材72と同一構成の中部材73の上に、同一形状の、厚さ一定の表部材74を重ね合わせたものである。
【0045】
図10〜図12の構成は、上述した他の実施の形態と組み合わせて採用することもできる。例えば、図12の例は、図8の貫通孔61〜64を中部材73の長方形の開口として設けることができる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、種々の変形、変更が可能である。例えば、バックルの形状や構造は単なる例示であり、他の形状や構造ものもの利用可能である。
【0047】
【発明の効果】
【0048】
本発明の履物によれば、負傷した足に負担を掛けることなく、かつ、簡単な操作で足に着脱できる。その結果、足の負傷者の外出時の不便が解消され、また、適当な履物がないために外出がためらわれるということもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る履物の概略の構成を示す図である。
【図2】図1の履物を素足に装着した例を示す図である。
【図3】図1の履物をギブスの足に装着した例を示す図である。
【図4】図1の履物のベルトを2本にした構成を示す図である。
【図5】図1の履物の前部に着脱可能な足先カバー(足先被覆部)を設けた実施の形態を示す図である。
【図6】左右いずれの足に装着する場合にも足の一方の側(例えば外側)に接合部が来るようにする他の実施の形態を示す図である。
【図7】図6の履物におけるベルトの取付例を示す図である。
【図8】図6の実施の形態の変形例を示す図である。
【図9】図8の履物におけるベルトの取付例を示す図である。
【図10】本発明の別の実施の形態を示す図である。
【図11】本発明のさらに別の実施の形態を示す図である。
【図12】本発明の今一つの実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
11 底部材
12,72,74 表部材
20 ベルト(甲押さえ部材)
21 ベルトの第1の部分
22 口の字状バックル
23,50〜54 ベルト取付部
24 ベルトの第2の部分
25,26 面ファスナ
27 つまみ部
29 接合部
30 足
31 バックル
33 包帯
35 ギブス
40 足先カバー(足先被覆部)
42,44 面ファスナ
56 自由端部
57,58 バックル
59 切り欠き部
61〜66 貫通孔
67,68 開口
71 かかと台座
73 中部材

Claims (5)

  1. 負傷した足に履く履物であって、
    底部材と、
    底部材の両側部間に架け渡される甲押さえ部材とを備え、
    この甲押さえ部材は、少なくとも一部分が、伸縮可能な弾性部材で形成されるとともに、その端部または中間部において開放可能であり、
    前記底部材両側部に対する前記甲押さえ部材の取り付け端部を前記底部材から離脱可能とするとともに、前記底部材に対する両取り付け端部の取り付け位置を左右交換可能としたことを特徴とする履物。
  2. 前記第1の部分は、非伸張状態での長さを調整可能な長さ調整手段を有することを特徴とする請求項1記載の履物。
  3. 前記底部材の両側部に沿って、前記取り付け端部を取り付け可能な取り付け位置を複数組設けたことを特徴とする請求項1または2記載の履物。
  4. 前記底部材の先端部に着脱可能な足先被覆部を有する請求項1〜のいずれかに記載の履物。
  5. 前記底部材自体または前記底部材の上に設ける表部材の少なくともかかと側に後ろ高の傾斜を付けたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の履物。
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