JP3604788B2 - 植物性遺物の保存処理方法および保存処理植物性遺物 - Google Patents
植物性遺物の保存処理方法および保存処理植物性遺物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物性遺物の保存処理方法、さらに詳細には、屋内および屋外の自然環境中での長期保存を可能とする植物性遺物の保存処理方法、ならびに該保存処理方法により得られた植物性遺物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、出土木製遺物の保存処理方法として最も広範に用いられている方法はポリエチレングリコール(PEG)含浸法であるが、処理時間が長いことや吸湿による変色等の問題を有し、またそれにはPEG溶出防止等の保管管理も要求される。
また、最近、PEG法のかかる問題点を解決するものとして、高級アルコールを文化遺物に含浸し固化させる高級アルコール法が開示されている[特開平4−356401号参照]。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、劣化の著しい文化遺物においては、該高級アルコール法による処理によっても著しく収縮し、寸法安定性に劣る等の問題が未だ存在し、これらの改善が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる事情に鑑み、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、植物性遺物を特定の水溶性溶剤に浸漬し、その後に特定の化合物を含浸させ、次いで固化させることにより、意外にも、前記の出土文化遺物のみならず、他の一般的な植物性遺物の寸法安定性も改善されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明の第一の態様により、
(1)植物性遺物を水溶性溶剤に浸漬して該植物性遺物中の含浸水を該水溶性溶剤で置換し;
(2)融解状態の、
式I: R1−COO−R2
[式中、R1は炭素数18ないし38のアルキル鎖、または少なくとも1個のヒドロキシル基を有する炭素数9ないし21のアルキル鎖、R2は炭素数1ないし4のアルキル鎖を表す]
で示される高級脂肪酸エステル;
式II: R3−COOH
[式中、R3は炭素数13ないし21のアルキル鎖を表す]
で示される高級脂肪酸、
式III: R4−COO−(CH2CH2O)n−H
[式中、R4は炭素数13ないし21のアルキル鎖、または少なくとも1個のヒドロキシル基を有する炭素数9ないし19のアルキル鎖、nは2ないし91の整数を表す]
で示されるポリオキシエチレンアルキルエステル、および
少なくとも2個のヒドロキシル基を有する炭素数6ないし14のポリオールよりなる群から選択される化合物またはその混液に該植物性遺物を浸漬して該植物性遺物の水溶性溶剤を該化合物で置換し;次いで
(3)該化合物を固化させることを特徴とする植物性遺物の保存処理方法が提供される。
【0006】
本発明の第二の態様により、該水溶性溶剤が炭素数1ないし6の低級アルコールである前記植物性遺物の保存処理方法が提供される。
【0007】
本発明の第三の態様により、該高級脂肪酸エステルがヒドロキシステアリン酸メチルまたはヒドロキシステアリン酸エチルである前記植物性遺物の保存処理方法が提供される。
【0008】
本発明の第四の態様により、該高級脂肪酸がパルミチン酸、ステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸である前記植物性遺物の保存処理方法が提供される。
【0009】
本発明の第五の態様により、該ポリオキシエチレンアルキルエステルがポリオキシエチレンモノステアレートである前記植物性遺物の保存処理方法が提供される。
【0010】
本発明の第六の態様により、該ポリオールが1,8−オクタンジオールまたは1,10−デカンジオールである前記植物性遺物の保存処理方法が提供される。
【0011】
本発明の第七の態様により、該植物性遺物が出土木製遺物である前記植物性遺物の保存処理方法が提供される。
【0012】
本発明の第八の態様により、いずれかの前記保存処理方法により処理した植物性遺物が提供される。
【発明の実施の形態】
【0013】
まず、本発明の保存処理方法で対象となる植物性遺物とは、特に限定するものではないが、茎、葉、芽、根、花、種子、果実等と一般的に呼称されるいずれの植物器官で構成された建築用木材、木製用具、竹製用具、ツル製用具、布類および紙等の日常用いられる木材その他の植物性製品遺物も含み、これらは出土したもののみならず地上に存在したものをも含む。また、これら植物性遺物は、金属、石材等のその他の材料との複合体であってもよい。
【0014】
本発明の第一の工程では、目的の植物性遺物を水溶性溶剤に浸漬する。該水溶性溶剤は、植物性遺物組織に浸透して含浸水と置換されるものでなければならない。かかる水溶性溶剤の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられるが、エチルアルコールが好ましい。
【0015】
この第一の工程の処理は、対象とする植物性遺物の植物種および含水率やサイズ、特にサイズに依存する。一般的に、目的の植物性遺物を大過剰量の水溶性溶剤中に、例えば、3センチ角のサイズの植物性遺物では室温にて水溶性溶剤原液に3日間浸漬を3回繰り返し、5センチ角のサイズの植物性遺物では室温にて水溶性溶剤原液に5日間浸漬を3回繰り返す。
【0016】
本発明の第二の工程では、第一の工程で処理した植物性遺物を、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、ポリオキシエチレンアルキルエステルおよびポリオールよりなる群から選択される化合物またはその混液に浸漬させる。該化合物は、植物性遺物組織に含浸して、第一の工程で組織中の水と置換させた水溶性溶剤を置換するものでなければならない。
【0017】
かかる高級脂肪酸エステルの例としては、ヒドロキシステアリン酸メチル(例えば、12−ヒドロキシステアリン酸メチル)、ヒドロキシステアリン酸エチル(例えば、12−ヒドロキシステアリン酸エチル)等が挙げられるが、12−ヒドロキシステアリン酸メチルが好ましい。
【0018】
また、かかる高級脂肪酸の例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシパルミチン酸等が挙げられるが、パルミチン酸、ステアリン酸およびヒドロキシステアリン酸が好ましい。
【0019】
また、かかるポリオキシエチレンアルキルエステルの例としては、ポリオキシエチレンモノステアレートが挙げられる。
【0020】
また、かかるポリオールの例としては、炭素数6ないし14の直鎖状ジオール(1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール)、あるいはキシリトールやソルビトールなどの還元糖が挙げられるが、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオールが好ましい。
【0021】
この第二の工程の処理は、対象とする植物性遺物の植物種および含水率やサイズ、特にサイズに依存する。一般的に、第一の工程の処理をした植物性遺物を、融解させた大過剰量の該化合物中に、例えば、3センチ角のサイズの植物性遺物では融点以上の該化合物に3日間浸漬し、5センチ角のサイズの植物性遺物では融点以上の該化合物に5日間浸漬する。
【0022】
本発明の第三の工程では、第二の工程の処理をした該化合物を固化させる。固化は、限定されるものではないが、通常常温下にて冷却することによって行う。
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
植物性遺物のモデル保存処理
植物性遺物のモデル保存処理として以下の処理を行った。
性質の類似した繊維方向に同一な下記の供試植物性遺物を接線方向3cm×放射方向3cm×繊維方向1.5cmに切断して試験片とした。
また下記に併せて示す各供試植物性遺物の含水率は、目的の植物性遺物を、105℃にて一定重量となるまで乾燥し、この乾燥重量(w0)と乾燥前の重量(w)とから求めた。
含水率(%)={(w−w0)/w0}×100
【0024】
供試植物性遺物:
1:劣化の小さいアカガシ (含水率128〜158)
2:劣化が中程度のアカガシ (含水率290〜376)
3:劣化の大きいツブラジイ1 (含水率950〜1180)
4:劣化の大きいツブラジイ2 (含水率1340〜2300)
5:劣化が中程度のモミ (含水率260〜360)
6:劣化の小さいクリ (含水率138〜147)
【0025】
上記の各試験片を室温にて3日間エタノール原液に浸漬し、この処理を4回繰り返した。
次いで、各々のエタノール浸漬試験片を、75〜80℃に加温した1,10−デカンジオール、60〜65℃に加温した12−ヒドロキシステアリン酸メチル、また対照として60〜65℃に加温した高級アルコール(商品名NAA45(セチルアルコール:ステアリルアルコール=5:95(w/w)の混合物); 社製)の溶融液に各々3日間浸漬し、その後室温下にて乾燥させた。
【0026】
上記のごとく処理した試験片につき、エタノールに浸漬した後(図面中、「エタノール置換後」)、種々の融点以上の該化合物に浸漬終了時(図面中、「含浸後」)、該化合物を1日間放置冷却して固化させた時点(図面中、「冷却後」)、および冷却後の時点より1週間放置した時点(図面中、「放置後」)の寸法変化率を測定した。
試験片の寸法変化率は、
寸法変化率(%)=
{(各工程における寸法−初期の寸法)/初期の寸法}×100
により算出した。
結果をまとめて図1〜図6に示す(実線:高級アルコール、点線:1,10−デカンジオール、一点鎖線:12−ヒドロキシステアリン酸メチル)。
【0027】
図1ないし図6から明らかなごとく、本発明の1,10−デカンジオールまたは12−ヒドロキシステアリン酸メチルで処理を行った試験片は、植物種および劣化状態に関係なく、対照試験片よりも優れた寸法安定性を示した。
また、放置後の試験片については、対照の処理を行った試験片が−2.7%〜−11%と寸法変化率が大きいのに対し、本発明の処理を行った試験片は、1,10−デカンジオールで+1.5〜−3.7%、10−ヒドロキシステアリン酸メチルで−0.8〜−5.2と寸法変化率が小さいことが明らかである。
【0028】
【発明の効果】
本発明の保存処理方法では、寸法安定性に優れた植物性遺物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】劣化の小さいアカガシの寸法変化率を示すグラフである。
【図2】劣化が中程度のアカガシの寸法変化率を示すグラフである。
【図3】劣化の大きいツブラジイ1の寸法変化率を示すグラフである。
【図4】劣化の大きいツブラジイ2の寸法変化率を示すグラフである。
【図5】劣化が中程度のモミの寸法変化率を示すグラフである。
【図6】劣化が小さいクリの寸法変化率を示すグラフである。
Claims (6)
- (1)植物性遺物を水溶性溶剤に浸漬して該植物性遺物中の含浸水を該水溶性溶剤で置換し;
(2)融解状態の、
式I: R1−COO−R2
[式中、R1は炭素数18ないし38のアルキル鎖、または少なくとも1個のヒドロキシル基を有する炭素数9ないし21のアルキル鎖、R2は炭素数1ないし4のアルキル鎖を表す]
で示される高級脂肪酸エステル; および
少なくとも2個のヒドロキシル基を有する炭素数6ないし14のポリオールよりなる群から選択される化合物またはその混液に該植物性遺物を浸漬して該植物性遺物の水溶性溶剤を該化合物で置換し;次いで
(3)該化合物を固化させることを特徴とする植物性遺物の保存処理方法。 - 該水溶性溶剤が炭素数1ないし6の低級アルコールである請求項1記載の保存処理方法。
- 該高級脂肪酸エステルがヒドロキシステアリン酸メチルまたはヒドロキシステアリン酸エチルである請求項1または2のいずれか1項に記載の保存処理方法。
- 該ポリオールが1,8−オクタンジオールまたは1,10−デカンジオールである請求項1または2のいずれか1項に記載の保存処理方法。
- 該植物性遺物が出土木製遺物である請求項1ないし4いずれか1項に記載の保存処理方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の保存処理方法により得られた植物性遺物。
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