JP3604746B2 - フッ素樹脂延伸物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はフッ素樹脂延伸物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は特定な条件下でフッ素樹脂を固相押出しまたは固相圧延したのち、引張延伸することにより強度、弾性率等の力学的物性が改善されたフッ素樹脂延伸物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
フッ素樹脂は一般にその融点が著しく高く、耐薬品性が良好であり,樹脂表面の摩擦係数が小さいことから、エンジニアリングプラスチックの一つとして広く利用されているが、フッ素樹脂はその化学構造がポリオレフィンと酷似していることから、その分子鎖を十分に引き伸ばし、一軸に配向結晶化せしめることにより、高強度・高弾性率のフィルム、テープないしヤーン状の延伸物を得る試みもなされている。例えば、特開平1−192812号、特開平2−307907号、特開平5ー78908号などには、ポリエチレンやポリプロピレンを延伸する技術を応用して、フッ素樹脂繊維を製造する方法が教示されている。
これらの従来技術の一つは、汎用の溶剤には溶解しないフッ素樹脂を特殊の溶剤で溶液化した後、これを紡糸して延伸し、しかる後溶剤を抽出するという複雑な工程を必要とする。また、他の一つは、フッ素樹脂をその融点以上の高温で融解させ、得られた高粘度融液を紡糸して延伸するものである。しかし、高粘度の溶液や融液を均質に紡糸することは、技術的に極めて難しく、なかでも、後者の方法は、融点以上の非常に高い温度を採用しているため、フッ素樹脂の熱分解と人体に有害なガスの発生が心配される。従って、上記二つの従来技術は、必ずしも賞用できないのが実情である。
上記以外の従来技術としては、例えば、J.Polym.Sci.Polym.Phys.Ed.,17(1979 )73 あるいは Polym.Eng.Sci.,26(1986)239 に見られる如く、ポリテトラフルオロエチレンを固相押出しする方法があるが、この方法では延伸物の強度を満足できる程には向上させることができない。
一般に、原料樹脂を同じ倍率で延伸する場合には、原料樹脂の分子量を大きくすることによって、また、原料樹脂の分子量が同じである場合には、延伸倍率を大きくすることによって、延伸物の延伸方向の強度や弾性率を向上させることができる。しかし、フッ素樹脂の分子量をむやみに大きくすることは、先に紹介した従来技術では、溶剤への溶解性が低下するとか、あるいは、融解時の粘度が増大して紡糸ないしは延伸に支障を来すなどの不都合を招くばかりでなく、延伸倍率を大きくした場合には、延伸切れが多発する可能性があるため好ましくない。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術に指摘されるような問題点を伴うことなく、フッ素樹脂延伸物を製造する方法について鋭意検討した結果、特定の条件下フッ素樹脂を固相押出しまたは固相圧延した後、引張延伸することにより強度、弾性率等の力学的物性に優れたフッ素樹脂延伸物が製造できることを見出した。 すなわち、本発明に係るフッ素樹脂延伸物の製造方法は、フッ素樹脂が実質的に融解しない温度範囲内で、フッ素樹脂を固相押出しまたは固相圧延した後、引張延伸することを特徴とする。本発明において、固相押出しまたは固相圧延(以下、これを総称して固相加工という)されたフッ素樹脂を、引張延伸するに際しては、その温度を固相加工温度より低い温度に設定することが好ましい。
【0004】
本発明の原料樹脂としては、如何なる種類のフッ素樹脂も使用可能であって、これには共重合体も含まれる。本発明で使用可能なフッ素樹脂を例示すれば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などが挙げられる。なかでも、延伸によって高い結晶化度が得られるフッ素樹脂が好ましく、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
原料フッ素樹脂が共重合体である場合において、その共重合体のコモノマー比に特別な限定はなく、重合形態についても交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合などのいずれであっても差し支えない。また、コモノマーの結合様式も、頭−頭結合、頭−尾結合、尾−尾結合のいずれであるかを問わない。
また、本発明に使用する原料として例示したフッ素樹脂は、1種のみであっても、2種以上を組み合せたもの(例えはブレンドしたもの)でもよい。2種以上組み合せたものの場合、各樹脂の使用比(例えばブレンド比)は、本発明の目的が達成される限り、特に限定されない。
【0005】
原料フッ素樹脂の分子量にも特別な限定はないが、分子量の小さなものを用いると、引張延伸時の倍率を大きくとることができないため、引張強度の高い延伸物を得ることが難しく、分子量の大きなものを用いると、分子鎖が長大になりすぎるため押出しあるいは圧延時の変形比を大きくすることが難しい。従って、本発明で使用する原料フッ素樹脂は、数平均分子量が好ましくは5.0×10 〜5.0×10 、より好ましくは5.0×10 〜5.0×10 、さらに好ましくは5.0×10 〜1.0×10 の範囲にあることが望ましい。
フッ素樹脂の分子量測定に関しては、種々の文献で報告されている。例えば、PTFEについては Polym.Eng.Sci.,28,538(1988)に記載されているように、溶融状態における応力の緩和時間から見積もる方法、Macromol.,22,831(1989)に記載されているように、溶液の光散乱の状態から見積もる方法で測定することができる。また、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体については Macromol.,18,2023(1985)に記載されているように、溶融状態における応力の緩和時間から見積もる方法、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体については Macromol.,20,98(1987)などに記載されているように、溶液の光散乱の 状態から見積もる方法で測定することができる。そのほかのフッ素樹脂についてはPolym.Eng.Sci.,25,122(1985) に記載されているように、溶融状態における応 力の緩和時間から見積もる方法を応用して測定することができる。
フッ素樹脂の分子量分布は、上記した方法で分子量を測定した際に同時に求めることができるが、本発明で使用する原料フッ素樹脂は、力学的物性に優れた延伸物を得る上で、分子量分布の狭いものが望ましい。
【0006】
本発明の原料フッ素樹脂はその製法を問わない。従って、本発明で使用する原料フッ素樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法、気相重合法などのいずれで製造されたものであっても差し支えなく、それらの重合法で採用される重合触媒や助触媒の種類、さらには温度,圧力,時間などの重合条件にも特別な制限はない。溶媒を必要とする重合法にあっては、使用溶媒にも特別な制限はない。
本発明では、重合後溶剤などを除去させて得られる粉末状ないし粒状フッ素樹脂をそのまま原料樹脂として使用することができるが、それに先立ち、当該粉末状ないし粒状フッ素樹脂を融解後冷却するか、あるいは適当な溶剤に溶解後、溶剤を除去するという内容の予備処理を施すことができる。但し、この予備処理後のフッ素樹脂は、次の条件を満たすフッ素樹脂であることが望ましい。
すなわち、予備処理前後の粉末状ないし粒状フッ素樹脂をそれぞれ約1mg正確に秤量し、各々を示差走査型熱量計(セイコー電子工業(株)製DSC−220)を用い、昇温速度10℃/分の条件で融解吸熱曲線を描かせ、その曲線が最も大きい吸熱ピークを描く温度をピーク温度(いわゆる融点)とする。この場合において、
[予備処理後のピーク温度(℃)>予備処理前のピーク温度(℃)−4℃]好ましくは、
[予備処理後のピーク温度(℃)>予備処理前のピーク温度(℃)−2℃]を満たす粉末状ないし粒状フッ素樹脂が、予備処理後のフッ素樹脂である。
本発明の原料フッ素樹脂の粒径は、通常0.1μm〜1000μm程度の範囲に、好ましくは1μm〜500μm程度の範囲にある。
本発明の原料フッ素樹脂にはまた、その物性を改善するミルドカーボンファイバーなどの補強剤、紫外線吸収剤、耐候剤、耐光剤、酸化防止剤、さらには、顔料、染料などの任意の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合させることができるが、それらの各添加剤はフッ素樹脂に対して潤滑剤または溶剤としての作用しないものが選ばれる。
【0007】
本発明の方法は、基本的には原料フッ素樹脂をこれが実質的に融解しない温度で固相押出しまたは固相圧延(これを総称して固相加工という)し、次いで、引張延伸する工程で構成されるが、上記の固相加工に先立って、フッ素樹脂を予備圧縮成形しておくことができる。
任意的なこの予備圧縮成形工程も、フッ素樹脂が実質的に融解しない温度で行われるが、本発明で言う「実質的に融解しない温度」の上限は、原料フッ素樹脂の種類および性状によって相違し、また、原料フッ素樹脂に施す加工の内容によって、つまり、その加工が圧縮成形であるか、固相押出しであるか、固相圧延であるか,あるいは引張延伸であるかによっても相違する。従って、まず、本発明で言う「フッ素樹脂が実質的に融解しない温度」について説明する。
示差走査型熱量計を用いて或るフッ素樹脂の融解吸熱曲線を描かせると、その曲線から最大吸熱ピーク温度(いわゆる融点)を求めることができるが、同種のフッ素樹脂であっても、その最大吸熱ピーク温度は或る加工を施したフッ素樹脂と、その加工を施していないフッ素樹脂とでは相違し、また、加工の内容が異なれば、それによっても加工前の最大ピーク温度と加工後のそれとは相違する。加工前後でフッ素樹脂の最大吸熱ピーク温度が異なることに関して、本発明者は次のような新知見を得た。
すなわち、フッ素樹脂に圧縮成形、固相押出し、固相圧延または引張延伸の何れかの加工を施すと、その加工で採用した温度如何によって、加工後のフッ素樹脂の最大吸熱ピーク温度が、加工前の最大吸熱ピーク温度を上回る場合と、下回る場合があるが、加工が圧縮成形、固相押出し、固相圧延または引張延伸の何れであっても、任意の温度(t℃)でフッ素樹脂に加工を施し、その加工後のフッ素樹脂の最大吸熱ピーク温度が、加工前の最大吸熱ピーク温度を上回る場合には、常に本発明の方法によって所期の延伸物を得ることができる。そしてまた、本発明者は加工後のフッ素樹脂の最大吸熱ピーク温度が、加工前の最大吸熱ピーク温度を下回る場合であっても、その差が4℃、好ましくは2℃以内であれば、同様に所期の延伸物を得ることができる。
従って、本発明では原料フッ素樹脂または前工程で加工したフッ素樹脂を任意の温度(t℃)で加工したサンプルと、当該加工工程の加工前サンプルについて、それぞれの融解吸熱曲線から、それぞれの最大吸熱ピーク温度を求め、両者の差が下記の式を満たしていれば、その加工は「フッ素樹脂が実質的に融解しない温度」で行われていると定義する。
P(t)>P0 −4℃ 、好ましくは、 P(t)>P0 −2℃
ここで、P(t)は温度t℃で加工した、すなわち、圧縮成形、固相押出し、固相圧延または引張延伸した各々の加工後のサンプルの最大吸熱ピーク温度(℃)を示し、
P0 は当該加工工程の加工前のサンプルの最大吸熱ピーク温度(℃)を示す。
尚、フッ素樹脂の融解吸熱曲線を描かせるに当っては、測定サンプルを約1mg正確に秤量し、示差走査型熱量計(セイコー電子工業(株)製DSC−220)を昇温速度10℃/分の条件で使用した。
【0008】
また、本発明で原料となるフッ素樹脂の任意の一つを用い、加工温度(t℃)を変えて上記のような実験を、圧縮成形、固相押出し及び固相圧延のそれぞれについて繰り返すことにより、上記式1を満たす各加工温度の上限を求めることができる。そして、他の原料フッ素樹脂についても、上と同様な手順で、上記式1を満たす各加工温度の上限を求めることができる。本発明では、各原料フッ素樹脂について、各工程毎に求められる加工温度の上限が、「フッ素樹脂が実質的に融解しない温度」の上限値であって、これを以下加工上限温度という。
本発明の実施に際しては、フッ素樹脂に施される圧縮成形、固相押出し及び固相圧延の各加工は、それぞれの加工について上記のように規定される加工上限温度以下で行うことだけを要件とし、この要件が満足されれば、圧縮成形、固相押出し、固相圧延及び引張延伸の各加工は、任意の温度でこれを行うことができる。ちなみに、圧縮成形、固相押出し及び固相圧延の各加工工程における加工下限温度は、上記加工上限温度より150℃低い温度、好ましくは、100℃である。
【0009】
進んで、本発明で採用される圧縮成形、固相押出し、固相圧延および引張延伸の各工程について説明する。
原料フッ素樹脂は、これをそのまま固相押出し工程または固相圧延工程に供することも可能であるが、それに先立ち、原料樹脂を予め圧縮成形しておくことが好ましい。この予備圧縮成形には任意の圧縮成形機が使用可能であって、圧縮成形後のフッ素樹脂の形状もロッド状またはシート(フィルム)状の何れであっても差し支えない。尚、予備圧縮成形によってシート(フィルム)状成形物を得る場合、その厚さは通常0.1mm〜5mm程度の範囲にある。
任意的に行われるこの予備圧縮成形は、上記した「フッ素樹脂が実質的に融解しない温度」で行われ、一般には、上記した加工上限温度以下で、室温以上の温度が選ばれる。ちなみに、PTFEの場合にあっては、通常、室温〜335℃、好ましくは200〜330℃の範囲から、予備圧縮成形温度が選ばれる。また、予備圧縮成形に際して採用される圧力には特別な制限はないが、通常は10MPa〜2GPa、好ましくは20MPa〜500MPaの範囲であることを可とする。
【0010】
本発明によれば、原料フッ素樹脂は直接または上記の予備圧縮成形工程を経て、固相押出し工程または固相圧延工程に供される。
本発明の固相押出し工程は、フッ素樹脂だけを押出す通常の押出しの外、他の樹脂を共に押し出す、所謂、共押出しを包含する。何れの場合でも、押出し方法に特別な制限はない。例えば、末端にダイスを取り付けた固相押出し装置のシリンダーに、原料フッ素樹脂またはその圧縮成形物を供給し、これを常法通り押し出すことができる。また、固相共押出し法を採用する場合には、典型的には、予めシート状に圧縮成形されたフッ素樹脂を、他の樹脂から製造されたシートないしビレットの間に挟んで押出す方法が採用される。この場合、他の樹脂から製造されたシートないしビレットとしては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ4メチル1ペンテン等のポリオレフィンや別に用意されたフッ素樹脂が使用可能である。
固相押出しに用いるダイスの形状は、円形、楕円形、矩形その他任意に選択することができ、通常は入り口側の断面積よりも出口側の断面積の方が小さくなっているダイスが使用される。ダイスの大きさにも特別な制限はないが、通常はダイス入り口側の直径(対角線)が5〜100mm、好ましくは5〜50mmの範囲で選ばれる。押出し圧力は、押出しの変形比の大きさによって適宜変化するものであるが、本発明の押出し比の範囲を想定すると、通常0.1MPa〜300MPa、好ましくは1MPa〜100MPaの範囲を可とする。
押出し比(延伸比)は、原料フッ素樹脂の製法、粒径、粒径分布、分子量、分子量分布等に応じて、また、使用するダイスの形状または大きさに応じて選択される。一般に、押出し比の下限は2倍、好ましくは5倍である。上限は特に限定されないが、押出し比を大きくすれば、大きな押出し圧力を必要するので、通常は押出し比100倍、好ましくは60倍で固相押出しが行われる。
固相押出し温度は、先に説明した通りの「フッ素樹脂が実質的に融解しない温度」であって、具体的には、先に説明したところに従って規定される固相押出しについての加工上限温度以下で、加工下限温度以上の温度域で固相押出しが行われる。ちなみに、PTFEを対象とする場合には、固相押出しを室温〜335℃、好ましくは、200〜330℃の範囲に設定することを可とする。
固相押出しを加工上限温度以上の温度で行うと、フッ素樹脂の押出し性並びに後段の引張延伸工程における最高到達延伸比などに問題が生じて、本発明の目的を達成できない。また、加工下限温度以下の温度で固相押出しすると、後段の引張延伸工程での最高到達延伸比や延伸物の物性に問題が生じ、本発明の目的を達成できない。
本発明の固相押出しに際しては、押出し対象物を予備加圧後、固相押出しする方法も好ましく用いられる。この場合の予備加圧の圧力は、10MPa〜100MPa程度が望ましい。
押出し速度は適宜選択できるが、通常1mm/分〜1m/分,好ましくは10mm/分〜500mm/分の範囲で選ばれる。
固相押出しされた樹脂の形状は、ダイス形状や共押出しの方法で決まるが、通常その断面形状は、円形、楕円形、矩形の何れかである。
【0011】
本発明における固相圧延工程は、通常、予めロッド状またはシート状に圧縮成形されたフッ素樹脂が供給される。固相圧延にはロッド状またはシート状に圧縮成形されたフッ素樹脂を、等速あるいは周速度の異なる少なくとも2本の圧延ロールで挟んで圧延する方法が一般に採用される。圧延操作によるフッ素樹脂の変形比は広く選択することができ、圧延効率(圧延後の長さ/圧延前の長さ)で示せば、その下限は通常1.2倍、好ましくは1.5倍であるが、通常は30倍、好ましくは20倍で固相圧延を行うことを可とする。
固相圧延温度は、先に説明した通りの「フッ素樹脂が実質的に融解しない温度」であって、具体的には、先に説明したところに従って規定される固相圧延についての加工上限温度以下で、加工下限温度以上の温度域で固相圧延が行われる。ちなみに、PTFEを固相圧延する場合は、圧延温度を室温〜335℃、好ましくは、200〜330℃の範囲に設定することが望ましい。
固相圧延を加工上限温度以上の温度で行うと、フッ素樹脂の圧延性並びに後段の引張延伸工程における最高到達延伸比などに問題が生じて、本発明の目的を達成できない。また、加工下限温度以下の温度で固相圧延すると、後段の引張延伸工程での最高到達延伸比や延伸物の物性に問題が生じ、本発明の目的を達成できない。
圧延速度は適宜選択できるが、通常は0.5m/分〜100m/分、好ましくは1m/分〜50m/分の範囲で選ばれる。
固相圧延された樹脂の形状は、一般にテープ状、フィルム状ないしはシート状であって、その横断面は楕円形、矩形など任意の形状とすることができる。
もちろん、固相圧延操作は複数回多段階に行っても良い。
【0012】
本発明における引張延伸工程には、固相押出しされたフッ素樹脂または固相圧延されたフッ素樹脂が供給される。本発明の引張延伸には、例えば、恒温槽内において固相押出し物または圧延物を引張試験機により引張延伸する回分方式が利用できる外、ニップ延伸、熱板延伸、ゾーン延伸、熱風延伸などの連続方式を利用することもできる。そして、連続式引張延伸を利用する場合には、加熱手段として、加熱ロール、熱板、高周波加熱、マイクロ波加熱、赤外波ないし遠赤外波加熱、熱風加熱などの1種または2種以上を使用することができる。
引張延伸による試料の変形比は広く選択することができ、引張延伸倍率(引張延伸後の長さ/引張延伸前の長さ)により示すと、その下限を通常1.5倍、好ましくは5倍として任意に選ぶことができる。しかし、通常は20倍、好ましくは10倍の延伸倍率で、本発明の引張延伸を行うことを可とする。
引張延伸温度は、先に説明した通りの「フッ素樹脂が実質的に融解しない温度」であって、具体的には、先に説明したところに従って規定される引張延伸についての加工上限温度以下で、好ましくは、引張延伸工程の前にフッ素樹脂が固相押出しまたは固相圧延された温度より低い温度で、本発明の引張延伸が実施される。ちなみに、PTFEを引張延伸する場合、引張延伸温度の上限は、好ましくは170℃以下、さらに好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃未満であり、下限は通常室温以上、好ましくは40℃以上である。
引張延伸の速度はフッ素樹脂の分子量、分子量分布、延伸倍率、延伸前の樹脂の形状により適宜選択できるが、回分式延伸の場合の引張延伸速度の下限は、通常1mm/分、好ましくは5mm/分であり、上限は通常500mm/分、好ましくは100mm/分、さらに好ましくは50mm/分である。また,連続式延伸の場合の引張延伸速度の下限は、通常10mm/分、好ましくは50mm/分であり、上限は通常500m/分、好ましくは300m/分、さらに好ましくは100m/分である。
本発明の引張延伸を行うに際しては、押出し物または圧延物をそのままの幅で延伸をすることもできるが、延伸を行う前に、押出し物または圧延物を0.5〜150mm、好ましくは1〜100mm、より好ましくは1〜50mmの一定幅にスリットしてから、延伸を行っても良い。そして、本発明の引張延伸は、その操作を複数回多段階に行っても良い。
引張延伸後の樹脂は、繊維状、テープ状、フィルム状などの任意の形状をとることができるが、その断面形状は通常、楕円形または矩形である。引張延伸後の樹脂がテープ状またはフィルム状を呈しているものに対しは、横に広げると網のような形状となるように、延伸方向に機械的に割れ目を入れるスプリット処理を行っても良い。また、引張延伸の後工程として、延伸物が実質的に融解しない温度の範囲内で緊張下あるいは弛緩状態にある延伸物に、熱処理を施すこともできる。
本発明の方法においては、トータル延伸倍率(各加工工程の変形比の積、具体的には押出し比×引張延伸倍率または圧延効率×引張延伸倍率)を高めるほど、高強度、高弾性率が達成されるため、出来る限り延伸倍率を高めることが望ましい。具体的には30〜150倍の、好ましくは30〜100倍程度の延伸倍率が選ばれる。
本発明の方法によれば、フッ素樹脂の分子鎖を最大限まで引き伸ばし、かつ延伸方向に分子を配向せしめることにより、従来にない高い引張強度、弾性率を有する延伸物を得ることができる。例えば、PTFEの場合、常温において引張強度300MPa以上、好ましくは350MPa、引張弾性率通常40GPa、好ましくは50GPa以上の高強度、高弾性率のフッ素樹脂延伸物を得ることができる。
【0013】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
融点測定法
フッ素樹脂(原料樹脂、各加工工程前または各加工工程後の樹脂)を約1mg正確に秤量し、示差走査型熱量計(セイコー電子工業(株)製DSC−220)[以下、DSCと略記]を用い、昇温速度10℃/分の条件で融解吸熱曲線を描かせ、その曲線が最も大きい吸熱ピークを示した温度(ピーク温度)を融点とした。
実施例1
ポリテトラフルオロエチレンパウダー(PTFE,三井デュポンフロロケミカル(株)製6−J,分子量5.0×10 ,融点334℃)を、約6g秤取り直径 100mmの円板状の鉄板に挟み込み、融点以下の320℃の温度で10分間予熱を行った後、同じ温度で100MPaの圧力をかけ圧縮成形を行った。圧力をかけたまま室温まで冷却して、厚み0.5mm、直径90mmのフィルムを得た。このフィルムの融点をDSCを用いて測定したところ335℃であった。
このフィルムを短冊状に切り出した後、別に用意したPTFEのビッレットに挟み込み、330℃で固相共押出しを行った。この時、長さ方向に20倍の押出しが行われ、外観きれいな押出しが行われ、ビッレットに挟み込まれているサンプルを取り出したところ、テープ状の押出し物が得られた。この押出し物の融点をDSCを用いて測定したところ336℃であった。
この押出し物を長さ約5cmに切り出し、恒温層を備えた引張り試験機を用いて延伸を行った。この時温度は330℃、延伸前のつかみ具間距離は25mm、引張り速度は25mm/分で行った。引張り延伸は最大1.9倍まで達成され、トータルで38倍の延伸物が得られた。この延伸物の融点は337℃、24℃における引張り強度と引張り弾性率はそれぞれ300MPa、40GPaであった。
実施例2
実施例1と同様に作製した圧縮成型フィルムを短冊状に切り出した後、別に用意したPTFEのビッレットに挟み込み、330℃で固相共押出しを行った。この時、長さ方向に20倍の押出しが行われ、外観きれいな押出しが行われ、ビッレットに挟み込まれているサンプルを取り出したところ、テープ状の押出し物が得られた。この押出し物の融点をDSCを用いて測定したところ336℃であった。
この押出し物を長さ約5cmに切り出し、恒温層を備えた引張り試験機を用いて延伸を行った。この時温度は120℃、延伸前のつかみ具間距離は25mm、引張り速度は25mm/分で行った。引張り延伸は最大3.5倍まで達成され、トータルで70倍の延伸物が得られた。この延伸物の融点は341℃、24℃における引張り強度と引張り弾性率はそれぞれ450MPa、78GPaであった。
実施例3
実施例1と同様に圧縮成形を行い、縦横厚みが15cm×5cm×0.1cmのシートを得た。このシートの融点をDSCを用いて測定したところ334℃であった。このシートを直径15cm、面長30cmの200℃に加温された圧延ロールに挟み込み、長さ方向に8倍の圧延を行った。圧延速度は0.6m/分で行った。圧延物の融点は335℃であった。この圧延物を幅1cm、長さ約5cmに切り出し、恒温層を備えた引張り試験機を用いて延伸を行った。この時温度は60℃、延伸前のつかみ具間距離は25mm、引張り速度は25mm/分で行った。引張り延伸は最大8.2倍まで達成され,トータルで65.6倍の延伸物が得られた。この延伸物の融点は340℃、24℃における引張り強度と引張り弾性率はそれぞれ425MPa,70GPaであった。
比較例1
ポリテトラフルオロエチレンパウダー(PTFE,三井デュポンフロロケミカル(株)製6ーJ,分子量5.0×10 ,融点334℃)を、約6g秤取り直径100mmの円板状の鉄板に挟み込み、融点以上の360℃の温度で10分間予熱を行った後100MPaの圧力をかけ圧縮成形を行った。圧力をかけたまま室温まで冷却して、厚み0.5mm,直径90mmのフィルムを得た。このフィルムの融点をDSCを用いて測定したところ326℃であった。このフィルムを短冊状に切り出した後、別に用意したPTFEのビッレットに挟み込み、330℃で固相共押出しを行った。この時、長さ方向に20倍の押出しが行われ、外観きれいな押出しが行われたが、ビッレットに挟み込まれているサンプルを取り出してみると、小片に細かくちぎれたものとなっており、有効に押出しが行われていないことが分かった。
比較例2
比較例1で用いたポリテトラフルオロエチレンパウダーを約5g秤取り、これを直径10mmのシリンダーに入れ、320℃まで加温し、100MPaの圧力をかけ、30分間圧縮成形を行い、圧をかけたまま室温まで冷却した。得られた直径10mm、長さ約3cmの円柱状のサンプル(融点は334℃であった)を再度シリンダーに挿入し、シリンダー出口には押出し比が60倍となる断面が円形のダイスを取り付け、330℃の温度のもと固相押出しを行った。直径約0.65mmの線状の押出し物が得られた。得られた押出し物の24℃における曲げ弾性率を測定したところ約12GPaであった。押出し物の融点は338℃であった。
【0014】
【発明の効果】
本発明により製造されるフッ素樹脂延伸物は、従来のフッ素樹脂と同等の耐熱性、耐薬品性等の特長を保持しながら、従来にない高強度高弾性率を有する新しいフッ素樹脂材料である。また、本発明の製造法は従来技術と比較して経済性のあるプロセスであるため、市場ニーズに合う価格でフッ素樹脂延伸物の提供が可能となり、従来フッ素樹脂が用いられてきた用途の他に、高強度・高弾性率が要求される樹脂材料分野において全く新しい用途も期待できる。
具体的に、本発明の延伸物は、ロープ、漁網、海苔網、陸上ネット、防球ネット、医療用縫合糸、釣り糸、凧糸、セメント補強剤、織布、不織布、ソフ、各種フィルターなどに利用できる外、複合材料の補強剤などの用途にも利用でき、自動車、電気、石油、化学、水産、土木、建設、医療などの産業各分野のみならず日常品の衣類、雑貨などにおいても大いに利用される価値のあるものである。

Claims (3)

  1. フッ素樹脂が実質的に融解しない温度範囲内でフッ素樹脂を固相押出しまたは固相圧延したのち、引張延伸することを特徴とするフッ素樹脂延伸物の製造方法。
  2. フッ素樹脂を引張延伸する際の温度が、固相押出しまたは固相圧延する際の温度より低いことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
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