JP3603971B2 - 導電性パイプの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シリコン等の導電性材料からなるパイプの製造方法に関し、更に詳しくは電磁鋳造による導電性パイプの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ディバイスの製造分野では、シリコンウエハを熱処理する際の容器として、汚染の少ない非金属パイプが用いられている。この非金属パイプとして代表的なものはSiO2 パイプであり、他には焼結により成形し内面にSiNをコーティングしたSiCパイプも用いられている。また最近ではシリコンパイプも使用され始めた。シリコンパイプの製造方法としては、中実材をダイヤモンドカッターにより中ぐりする機械加工法が実用されており、研究段階ではあるがCVD法による化学的な製造方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら熱処理用の非金属パイプのうち、SiO2 パイプはそれ自体のコストが安いことから最も多く使用されているが、1000〜1100℃に変態点があり、熱処理での加熱・冷却毎にこの変態が繰り返されるため、その使用寿命は非常に短い。熱処理用のパイプが使用限界に達すると、そのパイプを変換するわけであるが、そのときライン全体のフラッシュが必要となるため、1回の変換に要するコストが嵩み、頻繁な変換が必要なことを考え併せると、総合的な経済性はパイプ単価から期待されるほど良好とは言えない。
【0004】
これに加えて、SiO2 パイプにはウエハ汚染の問題がある。一方、SiCパイプはSiO2 パイプより使用寿命が長いとされているが、焼結にバインダーを使用しなければならないため、汚染の問題はSiCパイプの方が大きい。
【0005】
このような事情から最近になって高純度シリコンパイプが注目され始めた。シリコンパイプはウエハと同材質であることから、熱処理での変態点通過による機械的性質の劣化がなく、また高純度でありさえすれば汚染の心配もない。しかし、現在ディバイスメーカーに提供されているシリコンパイプの単価は余りにも高い。それは、その製造に穴ぐり加工が用いられ、加工費が嵩むためである。この加工費は製品価格の約80%を占めるとされており、穴ぐりによる材料ロスが多いこととあいまって、製品価格を著しく高めるのである。
【0006】
それでも一部ではシリコンパイプが使われ始めている。それは、シリコンパイプの使用寿命が長く、ライン全体をフラッシュする頻度が著しく低下するためと、汚染の問題を解決できるためである。特に、半導体ディバイスの集積度が高まるにつれ、汚染の防止は不可欠な課題になっており、ディバイスメーカーからは安価な高純度シリコンパイプの提供が強く要望されている。
【0007】
なお、CVD法による化学的なシリコンパイプの製造方法は、析出成長を用いるため組織構造が極端に脆弱となり、仕上げのための機械加工や熱処理で簡単に割れてしまうので、実用化の域には達していない。
【0008】
本発明の目的は、高純度で強靱なシリコンパイプを安価に製造することができる導電性パイプの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法は、軸方向の少なくとも一部が周方向に複数分割された導電性の円筒体からなる2つの異径の無底るつぼを、半径方向に間隔をあけて同心状に組み合わせると共に、その内側および外側に誘導コイルを配置し、2つの無底るつぼの間に形成された環状の隙間に投入される導電性の原料を、2つの誘導コイルを用いた電磁誘導により内側および外側から加熱して、2つの無底るつぼの対向面に対して非接触の状態で溶解し、その溶湯を環状の隙間から徐々に引き抜いて凝固させることによりパイプとなすものである。
【0010】
【作用】
本発明の方法では、原料からパイプが電磁鋳造により直接製造されるので、穴ぐり加工が不要になる。製造されるパイプは、鋳造空間を形成する2つの無底るつぼに対して非接触であるため、鋳造時の汚染が少なく、高純度となる。また、鋳造組織であるため、析出成長パイプより格段に強靱となる。従って、シリコンパイプについても高純度で強靱なものが安価に製造される。
【0011】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の方法を実施するのに適したパイプ鋳造装置の概要を示す断面図、図2は実施例で用いた鋳造部の詳細を示す斜視図、図3はパイプ鋳造の概要を示す斜視図、図4は誘導電流の方向を示す平面図、図5は被加熱材の半径方向における電流分布を示すグラフである。
【0013】
本鋳造装置は、図1に示すように、分割組立式の気密容器1を具備し、その中で粒塊状の高純度シリコン17を原料として方向性凝固組織を有するシリコンパイプ18を製造する。
【0014】
気密容器1は上面に原料装入口2を有し、側面に真空引きのため排気口3とアルゴン供給のための給気口4とを有する。気密容器1内には、内外径が異なる2つの無底るつぼ6a,6bが、中心軸を鉛直方向に向けて配置されている。無底るつぼ6a,6bは、図2および図3に示すように、銅等の導電性材料からなる円筒体であって、半径方向に所定の間隔をあけて同心状に組み合わされ、いずれも最上部を残して周方向に複数分割されている。
【0015】
外側に位置する大径の無底るつぼ6aの外側には、中心軸を鉛直方向に向けた大径の誘導コイル7aが、無底るつぼ6aに対して同心状に配置されている。また、内側に位置する小径の無底るつぼ6bの内側には、中心軸を鉛直方向に向けた小径の誘導コイル7bが、無底るつぼ6aに対して同心状に配置されている。誘導コイル7a,7bは、2つの無底るつぼ6a,6bの分割部外側および内側に位置し、その分割部の軸方向一部を外側および内側から包囲している。
【0016】
無底るつぼ6a,6bの下方には、円筒状の保温炉8と引抜きシャフト12とが同心状に設けられている。保温炉8は、外側の無底るつぼ6aとほぼ同じ内径のグラファイトからなる導電スリーブ9を有する。導電スリーブ9の上端部を除く部分は保温材10により外側から覆われ、導電スリーブ9の上端部上側には誘導コイル11が配置されている。引抜きシャフト12は、シール機構13を介して気密容器1内に下方から挿入され、上方にグラファイトからなる円筒状のダミーブロック14を支持し、図示されない容器外の駆動装置により上下方向に昇降駆動される。ダミーブロック14は保温炉8内を通って、無底るつぼ6a,6bの隙間に下方より挿入され得る。
【0017】
一方、無底るつぼ6a,6bの上方には、その隙間に原料17を装入するためのダクト15と、隙間に装入された原料17を予熱するためのグラファイトからなる昇温助材16とが設けられている。なお、無底るつぼ6a,6bおよび誘導コイル7a,7bは、いずれも冷却のための通水孔を有する。
【0018】
本鋳造装置を使用して高純度シリコンからなる内径200mm、外径250mmの方向性凝固パイプを製造した結果を以下に説明する。
【0019】
無底るつぼ6a,6bおよび誘導コイル7a,7bの寸法は図2の通りである。無底るつぼ6a,6bの分割数は外側が32、内側が24とした。誘導コイル7a,7bの下端レベルは、無底るつぼ6a,6bの下端レベルより40mm上方とした。また、無底るつぼ6a,6bの対向面は、パイプ18の引抜きを容易にするため、下方に向かって間隔が徐々に増大するテーパー面とし、本実施例ではこのテーパーを0.5度とした。すなわち、無底るつぼ6a,6bの隙間は下方に向かって徐々に広がる幅広がりの空間である。
【0020】
保温炉8の導電スリーブ9は、内径260mm、外径290mm、高さ700mmのグラファイトスリーブであり、外側の無底るつぼ6aとの間に隙間が生じないように設置した。保温用の誘導コイル11は、内径300mm、外径340mmの2ターンコイルであり、保温材10としてはグラファイト綿を50mmの厚さに積層した。
【0021】
ダミーブロック14はグラファイトからなり、円筒部の寸法を内径201mm、外径249mm、高さ150mmとした。
【0022】
シリコンパイプの製造においては、まず、引抜きシャフト12を上昇させ、ダミーブロック14の上端から40mmの部分を無底るつぼ6a,6bの隙間に下方から挿入した。ダミーブロック14の上には、内径205mm、外径245mm、高さ50mmに切り出した初期溶解用のシリコンリングを載せた。ダミーブロック14の上端面には、シリコンリングの融着を防ぐため、部分的に窒化珪素の微粉末を塗布した。一方、無底るつぼ6a,6bの上からは、その隙間に昇温助材16をシリコンリングの上方5mmまで挿入した。昇温助材16は、ここでは内径210mm、外径240mm、高さ200mm、中心角120度の湾曲グラファイト板とした。
【0023】
以上の準備が終了したのち、気密容器1内をアルゴンで満たすために、排気口3から気密容器1内を真空ポンプによって0.1Torr以下まで排気し、その後に給気口4からアルゴンを1気圧まで気密容器1内に流入させた。気密容器1が1気圧に満たされたのちも、アルゴンを流量約30リットル/min で気密容器1内に流入させ、気密容器1内を1気圧に保持するために余剰のアルゴンを排気口3から気密容器1の外に排出させた。
【0024】
気密容器1がアルゴン気体で満たされたのち、誘導電源の出力スイッチを入れて誘導コイル7a,7bに高周波を通電し、シリコンリングの誘導加熱および溶解を開始した。誘導周波数は後で詳しく説明するが、ここでは20kHzとした。
【0025】
誘導電源の出力が100kW程度の段階で、グラファイト昇温助材16の赤熱が始まり、しばらくするとシリコンリングも赤熱された。シリコンリングが赤熱状態になったのちにグラファイト昇温助材16を2つの無底るつぼ6a,6bの間から上方に引抜き、誘導電源の出力を180kWまで増大させた。誘導加熱されたシリコンリングは徐々に昇温され、やがてシリコンリングの外面側と内面側から溶解が始まり、ついにはシリコンリング全体が完全に溶解した。
【0026】
このとき、2つの無底るつぼ6a,6bの間に形成されたシリコン溶湯19には、図4に示すように、誘導コイル7a,7bに電流A,Bが流れることにより、内外逆向きの表層電流a,bが誘導される。これらの誘導電流と、無底るつぼ6a,6bの対向表面層に流れる電流によって誘導される磁界との相互作用によって、シリコン溶湯19は無底るつぼ6a,6bとは非接触の状態で安定的に保持される。
【0027】
また、保温用の誘導コイル11に通電を開始して、保温炉8を昇温させ、保温炉8の上端部の温度を約1000℃に保持した。
【0028】
シリコンリングが完全に溶解したのちに、原料装入ダクト15からシリコン原料17を2つの無底るつぼ6a,6bの間に装入し始めた。無底るつぼ6a,6b間の溶湯深さが50mmになったときに、引抜きシャフト12を気密容器1の外の駆動装置によって下降させた。
【0029】
引抜きシャフト12を下降させると、シリコン溶湯19の下部は溶解用の1組の誘導コイル7a,7bの下端から引き抜かれ、引き抜かれた溶湯部分は誘導電力が減衰するために温度が下降して凝固が始まった。シリコン溶湯19の上部では原料装入ダクト15から装入されたシリコン原料17が新たに溶解された。こうして、シリコンパイプ18が連続的に鋳造された。
【0030】
保温炉8では、その上端で温度約1000℃に保たれているが、下端では温度約500℃になって、温度が下方に向かって緩やかに下降し、この温度勾配により鋳固部の熱歪みが防止され、良好な方向性凝固組織が得られる。
【0031】
シリコンパイプ18の長さが700mmに達するまで鋳造を継続し、その後にシリコン原料17の装入を停止した。シリコン原料17の装入を停止したのち、引抜きシャフト12の下降を継続しながら、同時に溶解用の誘導電源の出力を漸次減少させた。引抜きシャフト12の下降にともなって、シリコン溶湯19は溶解帯の下部から漸次凝固が進み、ついにはシリコンの全量が凝固した。
【0032】
なおも、引抜きシャフト12の下降を継続させながら凝固したシリコンパイプ18を1組の無底るつぼ6a,6b間から完全に引き抜き、シリコンパイプ18を保温炉8の中で停止させた。溶解用の高周波電源の出力を停止するとともに保温用の高周波電源の出力を漸次減少させて、保温炉8の温度降下を緩慢に行なった。保温炉8の温度が室温まで降下したのち、気密容器1を解体してシリコンパイプ18を取り出すことにより、方向性凝固組織を有する外径250mm、内径200mm、長さ700mmの高純度鋳造シリコンパイプ18が割れなしで製造された。
【0033】
ところで本発明の方法では、図4に示した通り、無底るつぼ6a,6bの隙間に存在する導電性の材料が、誘導コイル7a,7bによる誘導電流a,bにより外面側および内面側から加熱される。ここで、外側の誘導コイル7aによる誘導電流aと内側の誘導コイル7bによる誘導電流bとは、図5に示すように、誘導周波数が低くなると材料の厚さ方向中央部で重合し、その重合部分では互いに打ち消し合うため加熱に寄与しなくなる。そして、誘導電流の浸透深さは誘導周波数と材料の導電率とによって決まり、材料の導電率が一定の場合は、誘導周波数が低くなるほど表皮効果が小さくなるため、加熱に寄与しない重合部分が増大する。
【0034】
そのため本発明の方法では、誘導周波数を高くし、材料の内外表層部を加熱することが重要になる。具体的には、電流浸透深さが材料の厚さtの半分の更に1/3以下になるよう、材料の導電率を考慮して誘導周波数を選択することが望まれる。ただし、電流浸透深さが極端に小さくなると周波数が極端に高くなり、高周波発振回路の制約からコイル端の電圧が高くなり、溶解時の放電が起きやすくなる。同時に、材料の表面層のみが加熱されるために、材料全体を昇温・加熱する効率が低下する。そのため、電流浸透深さの下限としては材料厚さtの半分の1/10以上が望ましい。上記実施例では材料がシリコンであることを考慮して、誘導周波数を20kHzとし、電流浸透深さが材料厚さtの半分の1/3以下となるようにした。
【0035】
同様にして、外径250mm、内径200mm、長さ700mmの高純度チタンパイプを製造することもできた。その場合、初期溶解用シリコンリング、ダミーブロックはチタン製のものに代えた。昇温助材および保温炉は不要であった。誘導電源出力はシリコンの場合より高い220kWとし、誘導周波数はシリコンの場合と同じ20kHzとした。また、他の導電性パイプの製造に本発明を適用できることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明の導電性パイプの製造方法は、外面側および内面側からの電磁誘導加熱による非接触鋳造により、高純度で強靱なシリコンパイプを経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に適したパイプ鋳造装置の概要を示す断面図である。
【図2】実施例で用いた鋳造部の詳細を示す斜視図である。
【図3】鋳造方法の概要を示す斜視図である。
【図4】電流の方向を示す平面図である。
【図5】被加熱材の半径方向における電流分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 気密容器
6a,6b 無底るつぼ
7a,7b 誘導コイル
8 保温材
17 原料
18 パイプ
19 溶湯
【産業上の利用分野】
本発明は、シリコン等の導電性材料からなるパイプの製造方法に関し、更に詳しくは電磁鋳造による導電性パイプの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ディバイスの製造分野では、シリコンウエハを熱処理する際の容器として、汚染の少ない非金属パイプが用いられている。この非金属パイプとして代表的なものはSiO2 パイプであり、他には焼結により成形し内面にSiNをコーティングしたSiCパイプも用いられている。また最近ではシリコンパイプも使用され始めた。シリコンパイプの製造方法としては、中実材をダイヤモンドカッターにより中ぐりする機械加工法が実用されており、研究段階ではあるがCVD法による化学的な製造方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら熱処理用の非金属パイプのうち、SiO2 パイプはそれ自体のコストが安いことから最も多く使用されているが、1000〜1100℃に変態点があり、熱処理での加熱・冷却毎にこの変態が繰り返されるため、その使用寿命は非常に短い。熱処理用のパイプが使用限界に達すると、そのパイプを変換するわけであるが、そのときライン全体のフラッシュが必要となるため、1回の変換に要するコストが嵩み、頻繁な変換が必要なことを考え併せると、総合的な経済性はパイプ単価から期待されるほど良好とは言えない。
【0004】
これに加えて、SiO2 パイプにはウエハ汚染の問題がある。一方、SiCパイプはSiO2 パイプより使用寿命が長いとされているが、焼結にバインダーを使用しなければならないため、汚染の問題はSiCパイプの方が大きい。
【0005】
このような事情から最近になって高純度シリコンパイプが注目され始めた。シリコンパイプはウエハと同材質であることから、熱処理での変態点通過による機械的性質の劣化がなく、また高純度でありさえすれば汚染の心配もない。しかし、現在ディバイスメーカーに提供されているシリコンパイプの単価は余りにも高い。それは、その製造に穴ぐり加工が用いられ、加工費が嵩むためである。この加工費は製品価格の約80%を占めるとされており、穴ぐりによる材料ロスが多いこととあいまって、製品価格を著しく高めるのである。
【0006】
それでも一部ではシリコンパイプが使われ始めている。それは、シリコンパイプの使用寿命が長く、ライン全体をフラッシュする頻度が著しく低下するためと、汚染の問題を解決できるためである。特に、半導体ディバイスの集積度が高まるにつれ、汚染の防止は不可欠な課題になっており、ディバイスメーカーからは安価な高純度シリコンパイプの提供が強く要望されている。
【0007】
なお、CVD法による化学的なシリコンパイプの製造方法は、析出成長を用いるため組織構造が極端に脆弱となり、仕上げのための機械加工や熱処理で簡単に割れてしまうので、実用化の域には達していない。
【0008】
本発明の目的は、高純度で強靱なシリコンパイプを安価に製造することができる導電性パイプの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法は、軸方向の少なくとも一部が周方向に複数分割された導電性の円筒体からなる2つの異径の無底るつぼを、半径方向に間隔をあけて同心状に組み合わせると共に、その内側および外側に誘導コイルを配置し、2つの無底るつぼの間に形成された環状の隙間に投入される導電性の原料を、2つの誘導コイルを用いた電磁誘導により内側および外側から加熱して、2つの無底るつぼの対向面に対して非接触の状態で溶解し、その溶湯を環状の隙間から徐々に引き抜いて凝固させることによりパイプとなすものである。
【0010】
【作用】
本発明の方法では、原料からパイプが電磁鋳造により直接製造されるので、穴ぐり加工が不要になる。製造されるパイプは、鋳造空間を形成する2つの無底るつぼに対して非接触であるため、鋳造時の汚染が少なく、高純度となる。また、鋳造組織であるため、析出成長パイプより格段に強靱となる。従って、シリコンパイプについても高純度で強靱なものが安価に製造される。
【0011】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の方法を実施するのに適したパイプ鋳造装置の概要を示す断面図、図2は実施例で用いた鋳造部の詳細を示す斜視図、図3はパイプ鋳造の概要を示す斜視図、図4は誘導電流の方向を示す平面図、図5は被加熱材の半径方向における電流分布を示すグラフである。
【0013】
本鋳造装置は、図1に示すように、分割組立式の気密容器1を具備し、その中で粒塊状の高純度シリコン17を原料として方向性凝固組織を有するシリコンパイプ18を製造する。
【0014】
気密容器1は上面に原料装入口2を有し、側面に真空引きのため排気口3とアルゴン供給のための給気口4とを有する。気密容器1内には、内外径が異なる2つの無底るつぼ6a,6bが、中心軸を鉛直方向に向けて配置されている。無底るつぼ6a,6bは、図2および図3に示すように、銅等の導電性材料からなる円筒体であって、半径方向に所定の間隔をあけて同心状に組み合わされ、いずれも最上部を残して周方向に複数分割されている。
【0015】
外側に位置する大径の無底るつぼ6aの外側には、中心軸を鉛直方向に向けた大径の誘導コイル7aが、無底るつぼ6aに対して同心状に配置されている。また、内側に位置する小径の無底るつぼ6bの内側には、中心軸を鉛直方向に向けた小径の誘導コイル7bが、無底るつぼ6aに対して同心状に配置されている。誘導コイル7a,7bは、2つの無底るつぼ6a,6bの分割部外側および内側に位置し、その分割部の軸方向一部を外側および内側から包囲している。
【0016】
無底るつぼ6a,6bの下方には、円筒状の保温炉8と引抜きシャフト12とが同心状に設けられている。保温炉8は、外側の無底るつぼ6aとほぼ同じ内径のグラファイトからなる導電スリーブ9を有する。導電スリーブ9の上端部を除く部分は保温材10により外側から覆われ、導電スリーブ9の上端部上側には誘導コイル11が配置されている。引抜きシャフト12は、シール機構13を介して気密容器1内に下方から挿入され、上方にグラファイトからなる円筒状のダミーブロック14を支持し、図示されない容器外の駆動装置により上下方向に昇降駆動される。ダミーブロック14は保温炉8内を通って、無底るつぼ6a,6bの隙間に下方より挿入され得る。
【0017】
一方、無底るつぼ6a,6bの上方には、その隙間に原料17を装入するためのダクト15と、隙間に装入された原料17を予熱するためのグラファイトからなる昇温助材16とが設けられている。なお、無底るつぼ6a,6bおよび誘導コイル7a,7bは、いずれも冷却のための通水孔を有する。
【0018】
本鋳造装置を使用して高純度シリコンからなる内径200mm、外径250mmの方向性凝固パイプを製造した結果を以下に説明する。
【0019】
無底るつぼ6a,6bおよび誘導コイル7a,7bの寸法は図2の通りである。無底るつぼ6a,6bの分割数は外側が32、内側が24とした。誘導コイル7a,7bの下端レベルは、無底るつぼ6a,6bの下端レベルより40mm上方とした。また、無底るつぼ6a,6bの対向面は、パイプ18の引抜きを容易にするため、下方に向かって間隔が徐々に増大するテーパー面とし、本実施例ではこのテーパーを0.5度とした。すなわち、無底るつぼ6a,6bの隙間は下方に向かって徐々に広がる幅広がりの空間である。
【0020】
保温炉8の導電スリーブ9は、内径260mm、外径290mm、高さ700mmのグラファイトスリーブであり、外側の無底るつぼ6aとの間に隙間が生じないように設置した。保温用の誘導コイル11は、内径300mm、外径340mmの2ターンコイルであり、保温材10としてはグラファイト綿を50mmの厚さに積層した。
【0021】
ダミーブロック14はグラファイトからなり、円筒部の寸法を内径201mm、外径249mm、高さ150mmとした。
【0022】
シリコンパイプの製造においては、まず、引抜きシャフト12を上昇させ、ダミーブロック14の上端から40mmの部分を無底るつぼ6a,6bの隙間に下方から挿入した。ダミーブロック14の上には、内径205mm、外径245mm、高さ50mmに切り出した初期溶解用のシリコンリングを載せた。ダミーブロック14の上端面には、シリコンリングの融着を防ぐため、部分的に窒化珪素の微粉末を塗布した。一方、無底るつぼ6a,6bの上からは、その隙間に昇温助材16をシリコンリングの上方5mmまで挿入した。昇温助材16は、ここでは内径210mm、外径240mm、高さ200mm、中心角120度の湾曲グラファイト板とした。
【0023】
以上の準備が終了したのち、気密容器1内をアルゴンで満たすために、排気口3から気密容器1内を真空ポンプによって0.1Torr以下まで排気し、その後に給気口4からアルゴンを1気圧まで気密容器1内に流入させた。気密容器1が1気圧に満たされたのちも、アルゴンを流量約30リットル/min で気密容器1内に流入させ、気密容器1内を1気圧に保持するために余剰のアルゴンを排気口3から気密容器1の外に排出させた。
【0024】
気密容器1がアルゴン気体で満たされたのち、誘導電源の出力スイッチを入れて誘導コイル7a,7bに高周波を通電し、シリコンリングの誘導加熱および溶解を開始した。誘導周波数は後で詳しく説明するが、ここでは20kHzとした。
【0025】
誘導電源の出力が100kW程度の段階で、グラファイト昇温助材16の赤熱が始まり、しばらくするとシリコンリングも赤熱された。シリコンリングが赤熱状態になったのちにグラファイト昇温助材16を2つの無底るつぼ6a,6bの間から上方に引抜き、誘導電源の出力を180kWまで増大させた。誘導加熱されたシリコンリングは徐々に昇温され、やがてシリコンリングの外面側と内面側から溶解が始まり、ついにはシリコンリング全体が完全に溶解した。
【0026】
このとき、2つの無底るつぼ6a,6bの間に形成されたシリコン溶湯19には、図4に示すように、誘導コイル7a,7bに電流A,Bが流れることにより、内外逆向きの表層電流a,bが誘導される。これらの誘導電流と、無底るつぼ6a,6bの対向表面層に流れる電流によって誘導される磁界との相互作用によって、シリコン溶湯19は無底るつぼ6a,6bとは非接触の状態で安定的に保持される。
【0027】
また、保温用の誘導コイル11に通電を開始して、保温炉8を昇温させ、保温炉8の上端部の温度を約1000℃に保持した。
【0028】
シリコンリングが完全に溶解したのちに、原料装入ダクト15からシリコン原料17を2つの無底るつぼ6a,6bの間に装入し始めた。無底るつぼ6a,6b間の溶湯深さが50mmになったときに、引抜きシャフト12を気密容器1の外の駆動装置によって下降させた。
【0029】
引抜きシャフト12を下降させると、シリコン溶湯19の下部は溶解用の1組の誘導コイル7a,7bの下端から引き抜かれ、引き抜かれた溶湯部分は誘導電力が減衰するために温度が下降して凝固が始まった。シリコン溶湯19の上部では原料装入ダクト15から装入されたシリコン原料17が新たに溶解された。こうして、シリコンパイプ18が連続的に鋳造された。
【0030】
保温炉8では、その上端で温度約1000℃に保たれているが、下端では温度約500℃になって、温度が下方に向かって緩やかに下降し、この温度勾配により鋳固部の熱歪みが防止され、良好な方向性凝固組織が得られる。
【0031】
シリコンパイプ18の長さが700mmに達するまで鋳造を継続し、その後にシリコン原料17の装入を停止した。シリコン原料17の装入を停止したのち、引抜きシャフト12の下降を継続しながら、同時に溶解用の誘導電源の出力を漸次減少させた。引抜きシャフト12の下降にともなって、シリコン溶湯19は溶解帯の下部から漸次凝固が進み、ついにはシリコンの全量が凝固した。
【0032】
なおも、引抜きシャフト12の下降を継続させながら凝固したシリコンパイプ18を1組の無底るつぼ6a,6b間から完全に引き抜き、シリコンパイプ18を保温炉8の中で停止させた。溶解用の高周波電源の出力を停止するとともに保温用の高周波電源の出力を漸次減少させて、保温炉8の温度降下を緩慢に行なった。保温炉8の温度が室温まで降下したのち、気密容器1を解体してシリコンパイプ18を取り出すことにより、方向性凝固組織を有する外径250mm、内径200mm、長さ700mmの高純度鋳造シリコンパイプ18が割れなしで製造された。
【0033】
ところで本発明の方法では、図4に示した通り、無底るつぼ6a,6bの隙間に存在する導電性の材料が、誘導コイル7a,7bによる誘導電流a,bにより外面側および内面側から加熱される。ここで、外側の誘導コイル7aによる誘導電流aと内側の誘導コイル7bによる誘導電流bとは、図5に示すように、誘導周波数が低くなると材料の厚さ方向中央部で重合し、その重合部分では互いに打ち消し合うため加熱に寄与しなくなる。そして、誘導電流の浸透深さは誘導周波数と材料の導電率とによって決まり、材料の導電率が一定の場合は、誘導周波数が低くなるほど表皮効果が小さくなるため、加熱に寄与しない重合部分が増大する。
【0034】
そのため本発明の方法では、誘導周波数を高くし、材料の内外表層部を加熱することが重要になる。具体的には、電流浸透深さが材料の厚さtの半分の更に1/3以下になるよう、材料の導電率を考慮して誘導周波数を選択することが望まれる。ただし、電流浸透深さが極端に小さくなると周波数が極端に高くなり、高周波発振回路の制約からコイル端の電圧が高くなり、溶解時の放電が起きやすくなる。同時に、材料の表面層のみが加熱されるために、材料全体を昇温・加熱する効率が低下する。そのため、電流浸透深さの下限としては材料厚さtの半分の1/10以上が望ましい。上記実施例では材料がシリコンであることを考慮して、誘導周波数を20kHzとし、電流浸透深さが材料厚さtの半分の1/3以下となるようにした。
【0035】
同様にして、外径250mm、内径200mm、長さ700mmの高純度チタンパイプを製造することもできた。その場合、初期溶解用シリコンリング、ダミーブロックはチタン製のものに代えた。昇温助材および保温炉は不要であった。誘導電源出力はシリコンの場合より高い220kWとし、誘導周波数はシリコンの場合と同じ20kHzとした。また、他の導電性パイプの製造に本発明を適用できることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明の導電性パイプの製造方法は、外面側および内面側からの電磁誘導加熱による非接触鋳造により、高純度で強靱なシリコンパイプを経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に適したパイプ鋳造装置の概要を示す断面図である。
【図2】実施例で用いた鋳造部の詳細を示す斜視図である。
【図3】鋳造方法の概要を示す斜視図である。
【図4】電流の方向を示す平面図である。
【図5】被加熱材の半径方向における電流分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 気密容器
6a,6b 無底るつぼ
7a,7b 誘導コイル
8 保温材
17 原料
18 パイプ
19 溶湯
Claims (2)
- 軸方向の少なくとも一部が周方向に複数分割された導電性の円筒体からなる2つの異径の無底るつぼを、半径方向に間隔をあけて同心状に組み合わせると共に、その内側および外側に誘導コイルを配置し、2つの無底るつぼの間に形成された環状の隙間に投入される導電性の原料を、2つの誘導コイルを用いた電磁誘導により内側および外側から加熱して、2つの無底るつぼの対向面に対して非接触の状態で溶解し、その溶湯を環状の隙間から徐々に引き抜いて凝固させることによりパイプとなすことを特徴とする導電性パイプの製造方法。
- 2つの誘導コイルによって無底るつぼ間の材料に生じる2種類の誘導電流の各浸透深さが、材料厚さの半分の1/3以下となるように、各誘導コイルにおける誘導周波数を選択することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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