JP3603969B2 - クロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、クロム鉱石や半還元クロムペレット等のクロム酸化物を含有する原料、および/またはニッケル鉱石等の溶融還元プロセスにおいて、炉体保護並びに歩留向上およびスピッテイング防止等、操業の安定性を確保するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉱石の溶融還元プロセスは、原料の選択に柔軟性があり、且つ脱電力プロセスとして、従来の高炉法や電気炉法よりも、安価に普通鋼やステンレス鋼等を溶製することができるため、近年注目を集めている。従来、クロム鉱石やニッケル鉱石の溶融還元プロセスについて、鉱石の還元速度の向上や、炉体ライニング耐火物の溶損防止、あるいは製錬効率の改善技術が開示され、その中にはスラグ組成に関しての記載がある。
【0003】
例えば、特公昭62−50545号公報には、クロム鉱石等からのクロムの還元速度を確保するために、炭材の供給量を制御することによって、溶湯のCおよびCr含有量の間に、〔C(wt.%)〕>0.07〔Cr(wt.%)〕+4.3を満たすように遊離炭材を炉内に残存させ、且つ、スラグ組成と溶湯温度との間に、1/2(MgO(wt.%)+Al2 O3 (wt.%))≦0.09〔溶湯温度(℃)〕−108なる関係を満たすようにフラックスの添加量を変化させて、MgO(wt.%)およびAl2 O3 (wt.%)の一方または双方を制御し、Cr酸化物を含有する原料の溶融・還元を行なう方法が記載されている(以下、先行技術1という)。
【0004】
特開昭62−164848号公報には、クロム酸化物の還元速度を高めるために、高融点のクロムスピネルの溶解を促進させ、且つ、耐火物の溶損速度を低減させるために、スラグ中のAl2 O3 およびMgO濃度を制御する方法、即ち、クロム酸化物の溶融・還元時に、スラグ中のAl2 O3 、MgOおよび溶湯温度Tの間に、(Al2 O3 +MgO)(wt.%)<0.16T−208の関係が満たされ、且つ、フラックスを添加することにより、(CaO+1.39MgO)/(SiO2 +1.18Al2 O3 )を0.7〜1.5の範囲内に調整する方法が記載されている(以下、先行技術2という)。
【0005】
特開平1−215951号公報には、溶融還元時に脱硫精錬も行なうことによって、後に続く粗脱炭精錬炉での脱硫を不要とし、かくして高O濃度での出鋼により吸Nを防止し、更に仕上げ脱炭精錬開始時のC濃度を低下させることをねらった方法が記載されている。即ち、溶融還元製錬時に、スラグ塩基度:2.1〜3.5、スラグ中残留C≧10wt.%、溶鉄中C≧4.0wt.%で且つ溶鉄温度≧1500°Cとすることが記載されている(以下、先行技術3という)。
【0006】
特公昭62−14209号公報には、クロム鉱石の溶解期に製錬炉の内張り耐火物の溶損を抑制するために適したスラグの組成についての記載がある。即ち、耐火物の溶損対策上、原料を1500〜1600°Cで溶解させる(その時の温度を溶解温度という)ためにスラグ組成から算定される液相線温度と溶解温度との差が−50〜+250°Cの範囲内となり、更に、塩基度が1.3〜2.0の範囲内となるように原料および造滓剤の供給量を調整することが記載されている(以下、先行技術4という)。
【0007】
また、ニッケル鉱石の溶融還元プロセスについては、吹錬中のスロッピングを防止するために、攪拌用の吹込みガス量を適正範囲内に限定し、且つ、スラグ中Fe濃度を20wt.%以下とする方法が、特開平2−274824号公報に記載されている(以下、先行技術5という)。
【0008】
特開平2−274804号公報には、同じく吹錬中のスロッピングを防止することを目的に、排ガス発生量を低減するため、2次燃焼比を適正範囲内に限定する方法が記載されている(以下、先行技術6という)。
【0009】
しかしながら、先行技術1および2はいずれも、クロム酸化物の還元速度を高めることに主眼がおかれており、従って、それらのスラグ組成はいずれも溶融還元期におけるものを対象としており、吹錬初期におけるスラグ組成については記載されていない。先行技術3は、溶湯の脱硫反応を効率的に行わせることを目的としたスラグについて記載され、製錬炉のライニング耐火物の溶損を抑制するスラグについては記載されていない。先行技術4には、溶解期における耐火物の溶損抑制を目的としたスラグ組成が記載されている。しかしながら、そのような組成のスラグを吹錬開始以後溶解期において形成させる方法についての記載がなく、また、そのような組成のスラグによって、耐火物の溶損防止並びに炉内容物の噴出防止を十分に行なうことはできない。先行技術5および6には、スロッピングの防止をはかるためのスラグの組成について記載されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、クロム酸化物およびニッケル酸化物の溶融還元プロセスにおいて、その操業条件が製錬炉体の損耗、および炉内容物の飛散ロス等に伴う製錬歩留に及ぼす影響を詳細に調査した結果、吹錬初期における造滓方法が極めて重要な意義をもつことが判明した。
【0011】
即ち、吹錬初期に適正な性状のスラグが形成されない場合、例えば、高融点のスラグが形成されたり、スラグの滓化が不十分な場合には、スラグによる溶湯の被覆効果が劣り、上吹きあるいは底吹きガスによる溶湯の飛散が過多になること、またこのような条件下ではスラグの性状が劣悪で流動性が低下し、スラグ内の温度分布が不均一となり部分的に過熱が発生し、そのために炉体内張り耐火物が溶損されることが極めて多いことが判った。しかも、吹錬初期段階での内容物飛散量および耐火物溶損量が、全製錬期間中の発生量の大部分を占めていることが明らかとなった。従って、上記飛散および溶損の問題を解決するためには、吹錬開始当初からどのようにして適正な性状のスラグを造滓するかということが最も重要である。
【0012】
しかしながら、上述したように、先行技術には、溶融還元製錬炉の炉体ライニング耐火物の溶損を抑制し、且つ、スロッピングやスピッテイングを防止して製錬歩留の向上をはかるのに適したスラグ組成および造滓方法について記載されたものは見当たらない。
【0013】
一般に、クロム鉱石および/またはニッケル鉱石の溶融還元製錬により、クロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑を製造する工程は、下記の通りである。先ず、温度約1300°Cの溶銑を製錬炉内に装入し、酸素ガスおよび炭材を供給しつつ、温度約1500°C(ニッケル鉱石のみを還元する場合)〜約1600°C(クロム鉱石のみを還元する場合)まで昇温し、次いで前記鉱石を、炉内に供給し、溶解および溶融還元して所望の溶銑を製造する。この間、造滓材を適宜添加する。
なお、この溶銑を用いて含クロム鋼、含ニッケル鋼あるいはステンレス鋼を製造する場合には、引き続き、精錬炉内からスラグを排滓し、溶湯に粗脱炭精錬を施した後、必要に応じてスラグを排滓し、更に溶湯に仕上げ脱炭精錬を施す。この間、溶湯に適宜脱硫精錬を施す。また粗脱炭および仕上げ脱炭は、前記溶融還元製錬炉から別途の精錬炉に出鋼して行われることもある。
【0014】
図1は、従来の、クロム鉱石およびニッケル鉱石の溶融還元時、並びにステンレス鋼の脱炭精錬時の、各時期におけるスラグの成分組成例(表1に示す)を、Al2 O3 =10wt.%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平行状態図上にプロットして示したものである。
【0015】
また、溶融還元または脱炭精錬の開始前には、炉内に前チャ−ジのスラグが残留することは避けられない。表1には、前チャ−ジがクロム鉱石の溶融還元、ニッケル鉱石の溶融還元またはステンレス鋼の脱炭精錬の各場合に、炉内に残留していたスラグ組成の代表例を示す。
【0016】
【表1】
【0017】
図1および表1から明らかなように、これらのスラグの融点は、1590〜1800°Cである。それに比較し、クロムおよび/またはニッケル含有溶銑の製造初期における溶銑昇温時期の溶湯温度は、前述したように1300〜約1600°Cの範囲内であって、低い。よって、溶銑昇温時期においては、上記のような高融点スラグは、その溶解速度は極めて遅く、従って、溶湯の上表面を被覆することができる性状のスラグにはならない。一方、この間、熱源として供給されるコ−クス中の脈石成分であるSiO2 およびAl2 O3 によりスラグが生成されるが、このスラグはMgOで飽和されていない低融点スラグであるため、昇温吹錬中、に炉体ライニングのマグネシア煉瓦はそのスラグによって著しく溶損される。
【0018】
このように、この時期に適正な性状のスラグが形成されていないと、炉体の損耗が激しいのみならず、鉱石添加後における吹錬用ガスによる炉内容物の飛散ロスも大きく、製錬歩留を大きく低下させる原因となる。
【0019】
従って、この発明の目的は、クロム酸化物および/またはニッケル酸化物の溶融還元プロセスにおいて、特に吹錬初期段階の溶湯の昇温段階において、適正な性状を有するスラグを形成させることによって、製錬炉の炉体保護並びに歩留向上およびスピッテイング防止等、操業の安定性を確保するための方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した問題点を解決するため、吹錬開始からできるだけ早期に、適正な性状のスラグを形成するための条件について鋭意研究を重ねた。その結果、吹錬開始時に、造滓用フラックスを別途炉内に添加し、これを溶解することによって早期に所望の性状の溶融スラグを形成させ、次いで、炉体ライニングのマグネシア煉瓦を保護するためにそのスラグをMgO飽和の組成に調整し、その後、更に製錬末期までには所望の最終スラグ系の組成に調整することにより、上述した問題点を解決することができるとの結論を得た。そして、吹錬開始時に添加する造滓用フラックスのMgO含有量を適正範囲内に限定することが重要であるとの知見を得た。
【0021】
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、本発明によるクロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑の製造方法は、製錬炉に、少なくとも、クロム酸化物および/またはニッケル酸化物を含有する原料並びに炭材を供給し、前記製錬炉に酸化性ガスを供給することにより前記原料を溶解し、溶融還元することにより、クロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑を製造する方法において、前記クロム酸化物および/またはニッケル酸化物を前記製錬炉に装入する前の、吹錬の初期にフラックスを添加し、しかも前記フラックスのMgO含有量は、溶融還元操業温度における飽和溶解度よりも1〜15wt%の範囲内で少なく、更に、前記フラックスの融点は、溶融還元操業温度以下であることに特徴を有するものであり、必要に応じて前記フラックスとして高炉滓の組成と同じ組成のフラックスを使用するものである。
【0022】
【作用】
この発明によるクロムおよび/またはニッケル含有溶銑の製造において、クロム含有酸化物としては、クロム鉱石、あるいは半還元クロムペレットのようにクロム鉱石を前処理して予備還元したものであって、クロム鉱石中に含まれていたMgO、Al2 O3 、SiO2 等を主成分とする脈石分が実質的に分離されずに含まれている状態のものを使用する。また、ニッケル含有酸化物については、ニッケル鉱石を使用し、クロム含有酸化物と同様、鉱石中の脈石分が実質的に分離されずに含まれているものを使用する。従って、上記脈石分は、溶融還元製錬の過程でスラグへ移行し、その組成変化に影響する。
【0023】
上記クロムおよび/またはニッケル含有酸化物(以下、合金含有酸化物という)を原料として、溶融還元製錬炉として知られている上底吹転炉型反応容器に装入し、コ−クス等の炭材を供給しながら酸化性ガスを供給することにより前記原料を溶解し、溶融還元製錬する。このように、合金含有酸化物を溶融還元製錬炉へ装入する前の、吹錬開始初期(吹錬開始時を含む)に、造滓用フラックスを炉内に添加するのであるが、そのフラックスの融点は、溶融還元期の溶融温度、即ち、溶融還元操業温度以下であるから、溶融還元時期には溶融したスラグが形成されている。従って、この時期にスピッッテイング等による炉内容物の噴出が発生せず、原料の製錬歩留が向上し、また操炉上のトラブルが防止される。従って、吹錬初期に添加する造滓用フラックスは、その融点が低いほど早期滓化の観点からは有利である。
なお、溶融還元操業温度は、通常、例えば、クロム鉱石のみの溶融還元する場合は、1600〜1650°Cであり、またニッケル鉱石のみを溶融還元する場合は、1500〜1550°Cであり、このように還元溶融される合金の酸化物種類によってきまる所定の温度である。
【0024】
一方、製錬炉ライニングの耐用性改善の観点から、マグネシア煉瓦の溶損を抑制するするため、溶融スラグのMgO不飽和度(その時点の温度におけるスラグの、MgO飽和溶解度と現実のMgO濃度との差、(wt%))が小さいほど望ましい。しかしながら、スラグのMgO不飽和度が小さいほど、即ち、スラグのMgO濃度が高くなるほどその融点は高くなり早期滓化にとって不利となる。従って、スラグのMgO不飽和度を適正範囲内に限定しなければならない。
よって、造滓用フラックス中のMgO含有量を適正範囲内に限定すべきである。以下、そのMgO含有量の適正範囲について述べる。
【0025】
図2は、本発明者等の検討によって得られた結果であり、温度1500〜1650°Cの範囲内、スラグ塩基度(CaO/SiO2 )1.2における、スラグのMgO不飽和度とそのスラグを溶解・収容するMgO煉瓦溶損指数との関係を示すグラフである。同図からわかるように、MgO煉瓦の溶損を抑制するために、スラグのMgO不飽和度は、15wt%以下であることが望ましい。
【0026】
図3は、本発明者等の検討によって得られた結果であり、温度1500〜1650°Cの範囲内、スラグ塩基度(CaO/SiO2 )1.2における、スラグのMgO不飽和度とそのスラグの軟化指数との関係を示すグラフである。なお、この軟化指数とスラグの溶解速度との間にはよい相関関係がある。従って、スラグの溶解速度を高めて早期に造滓するためには、スラグの不飽和度は、1wt%以上であれば問題ないことがわかった。
【0027】
従って、吹錬初期に添加する造滓用フラックスは、そのMgO含有量が、飽和溶解度よりも1〜15wt%の範囲内で少ない組成を有するものとすべきである。
【0028】
上記吹錬初期に添加する造滓用フラックスとしては、一旦融解されたプリメルト系スラグが溶解性が高いので望ましい。特に、製鉄の高炉プロセスで排出される溶融状態のスラグ(以下、溶融高炉滓という)は、融点が約1450°Cと比較的低く、しかもそのMgO不飽和度は本発明の条件を満たしており、初期添加フラックスとして最も優れたものの1つである。なお、高炉溶融滓が冷却・凝固したもの(以下、冷高炉滓という)であっても、初期添加フラックスとして適している。表2に、溶融高炉滓の化学成分組成例を示した。
なお、造滓用フラックスは、溶融状態、粒状固体その他、形態について特に限定するものではない。
【0029】
【表2】
【0030】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例によって詳細に説明する。
〔実施例1〕
この実施例の操業は、吹錬初期に造滓用フラックスを添加し、しかもそのフラックスは、本発明の範囲内の条件にあって、クロム鉱石の溶融還元が行われた。即ち、マグネシア系煉瓦を内張りし、前チャ−ジにおいてステンレス鋼を脱炭精錬した上底吹転炉型製錬炉に、約1300℃の溶銑(Fe:95wt%):約50トン、および表2に示した組成と同じ組成の冷高炉滓:2トンを装入し、炭材としてコ−クス(フリ−C:87wt%):10トンを添加し、上吹き酸素ランスから酸素ガスを吹き込むことにより、溶湯が約1600℃になるまで昇温吹錬をした(以下、吹錬開始からこの時期までを昇温期という)。その後、クロム鉱石の投入を開始し、クロム鉱石の溶融還元を行った(以下、この期間を溶融還元期という)。なお、昇温期および溶融還元期を通じて吹錬中に、MgO源として軽焼ドロマイトを合計6トン、分割添加し、適正なスラグ組成にコントロ−ルした。
【0031】
図4は、上記吹錬開始から終了まで適時スラグのサンプリングを行ない、その組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に、矢印付きの線で示したものである。同図中、★印は、吹錬開始時に製錬炉内に装入した高炉滓の組成、■印は、前チャ−ジにおいて行ったステンレス鋼の脱炭精錬終了後、このチャ−ジの開始時に炉内に残留していたスラグの組成、そして▲印は、溶融還元終了時のスラグ組成をプロットしたものである。
また、表3は、クロム鉱石を投入する直前のスラグ組成をCaO−SiO2 −MgO−Al2 O3 の4元系で示したものである。
【0032】
【表3】
【0033】
このチャ−ジの操業で、吹錬途中の造滓状況は良好であって、溶融スラグが溶湯を被覆し、スピッテイング等の現象は全くみられなかった。この操業を合計10チャ−ジ連続して行った後、炉体のマグネシア系煉瓦の溶損速度を調査したところ、0.1mm/Hr程度であって非常に少なかった。
【0034】
〔実施例2〕
この実施例の操業は、吹錬初期に造滓用フラックスを添加し、しかもそのフラックスは、本発明の範囲内の条件にあって、クロム鉱石の溶融還元が行われた。即ち、マグネシア系煉瓦を内張りした上底吹転炉型製錬炉に、約1300℃の含ニッケル溶銑(Ni:8wt%、Fe:87wt%):約50トン、および表2に示した組成と同じ組成の冷高炉滓:2トンを装入し、炭材としてコ−クス(フリ−C:87wt%):10トンを添加し、上吹き酸素ランスから酸素ガスを吹き込むことにより、溶湯が約1600℃になるまで昇温吹錬をした。その後、クロム鉱石の投入を開始し、クロム鉱石の溶融還元を行った。なお、昇温期および溶融還元期を通じて吹錬中に、MgO源として軽焼ドロマイトを合計6トン、分割添加し、適正なスラグ組成にコントロ−ルした。なお、前チャ−ジにおいては、ニッケル鉱石の溶融還元を行っており、炉内に残留していたスラグ(以下、Niスラグという)量は、4トンと見積もられた。
【0035】
図5は、上記吹錬開始から終了まで適時スラグのサンプリングを行ない、その組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に、矢印付きの線で示したものである。同図中、★印は、吹錬開始時に製錬炉内に装入した高炉滓の組成、●印は、前チャ−ジ終了後、炉内に残留していたNiスラグの組成、◎印は、クロム鉱石投入直前のスラグ組成、そして▲印は、溶融還元終了時のスラグ組成をプロットしたものである。
また、表4は、クロム鉱石を投入する直前のスラグ組成をCaO−SiO2 −MgO−Al2 O3 の4元系で示したものである。
【0036】
【表4】
【0037】
このチャ−ジの操業で、吹錬途中の造滓状況は良好であって、溶融スラグが溶湯を被覆し、スピッテイング等の現象は全くみられなかった。この操業を合計10チャ−ジ連続して行った後、炉体のマグネシア系煉瓦の溶損速度を調査したところ、0.1mm/Hr程度であって非常に少なかった。
【0038】
〔実施例3〕
この実施例の操業は、吹錬初期に造滓用フラックスを添加し、しかもそのフラックスは、本発明の範囲内の条件にあって、ニッケル鉱石の溶融還元が行われた。即ち、マグネシア系煉瓦を内張りした上底吹転炉型製錬炉に、約1300℃の溶銑(Fe:95wt%):約50トン、および表2に示した組成と同じ組成の冷高炉滓:4トンを装入し、炭材としてコ−クス(フリ−C:87wt%):14トンを添加し、上吹き酸素ランスから酸素ガスを吹き込むことにより、溶湯が約1500℃になるまで昇温吹錬をした。その後、ニッケル鉱石の投入を開始し、ニッケル鉱石の溶融還元を行った。なお、昇温期および溶融還元期を通じて吹錬中に、MgO源として軽焼ドロマイト:合計1.5トン、および、マグネシアクリンカ−:合計2トンの各々を分割添加し、適正なスラグ組成にコントロ−ルした。なお、前チャ−ジにおいては、ニッケル鉱石の溶融還元を行っており、炉内に残留していたNiスラグ量は、4トンと見積もることができた。
【0039】
図6は、上記吹錬開始から終了まで適時スラグのサンプリングを行ない、その組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に、矢印付きの線で示したものである。同図中、★印は、吹錬開始時に製錬炉内に装入した高炉滓の組成、◎印は、ニッケル鉱石投入直前のスラグ組成、そして●印は、溶融還元終了時のスラグ組成をプロットしたものである。 また、表5は、ニッケル鉱石を投入する直前のスラグ組成をCaO−SiO2 −MgO−Al2 O3 の4元系で示したものであり、図6中、◎印で示した組成に対応するものである。
【0040】
【表5】
【0041】
このチャ−ジの操業で、吹錬途中の造滓状況は良好であって、溶融スラグが溶湯を被覆し、スピッテイング等の現象は全くみられなかった。この後、スラグのMgO濃度を過飽和にするように、軽焼ドロマイトおよびマグネシアクリンカ−等の投入量を制御しながら、最終的なスラグ組成とした(図6の●印の組成に対応)。この操業を合計10チャ−ジ連続して行った後、炉体のマグネシア系煉瓦の溶損速度を調査したところ、0.1mm/Hr程度であって非常に少なかった。
【0042】
〔実施例4〕
この実施例の操業は、吹錬初期に造滓用フラックスを添加し、しかもそのフラックスは、本発明の範囲内の条件にあって、ニッケル鉱石の溶融還元が行われた。即ち、マグネシア系煉瓦を内張りした上底吹転炉型製錬炉に、約1300℃の溶銑(Fe:95wt%):約50トン、および表2に示した組成と同じ組成の冷高炉滓:4トンを装入し、炭材としてコ−クス(フリ−C:87wt%):14トンを添加し、上吹き酸素ランスから酸素ガスを吹き込むことにより、溶湯が約1500℃になるまで昇温吹錬をした。その後、ニッケル鉱石の投入を開始し、ニッケル鉱石の溶融還元を行った。なお、昇温期および溶融還元期を通じて吹錬中に、MgO源として軽焼ドロマイト:合計1.2トン、および、マグネシアクリンカ−:合計2トンの各々を分割添加し、適正なスラグ組成にコントロ−ルした。なお、前チャ−ジにおいては、ステンレス鋼の脱炭吹錬を行っており、炉内に残留していたスラグ量は、4トンと見積もられた。
【0043】
図7は、上記吹錬開始から終了まで適時スラグのサンプリングを行ない、その組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に、矢印付きの線で示したものである。同図中、★印は、吹錬開始時に製錬炉内に装入した高炉滓の組成、◎印は、ニッケル鉱石投入直前のスラグ組成、そして●印は、吹錬終了時のスラグ組成をプロットしたものである。また、表6は、ニッケル鉱石を投入する直前のスラグ組成をCaO−SiO2 −MgO−Al2 O3 の4元系で示したものであり、図7中、◎印で示した組成に対応するものである。
【0044】
【表6】
【0045】
このチャ−ジの操業で、吹錬途中の造滓状況は良好であって、溶融スラグが溶湯を被覆し、スピッテイング等の現象は全くみられなかった。この後、スラグのMgO濃度を過飽和にするように、軽焼ドロマイトおよびマグネシアクリンカ−等の投入量を制御しながら、最終的なスラグ組成とした(図6の●印の組成に対応)。この操業を合計10チャ−ジ連続して行った後、炉体のマグネシア系煉瓦の溶損速度を調査したところ、0.1mm/Hr程度であって非常に少なかった。
【0046】
〔比較例1〕
この比較例の操業は、吹錬初期に造滓用フラックスを添加せず、本発明の範囲外の条件で、クロム鉱石の溶融還元が行われた。即ち、マグネシア系煉瓦を内張りした上底吹転炉型製錬炉に、約1300℃の溶銑(Fe:95wt%):約50トンを装入し、炭材としてコ−クス(フリ−C:87wt%):10トンを添加し、上吹き酸素ランスから酸素ガスを吹き込むことにより、溶湯が約1600℃になるまで昇温吹錬をした。その後、クロム鉱石の投入を開始し、クロム鉱石の溶融還元を行った。なお、昇温期および溶融還元期を通じて吹錬中に、MgO源として軽焼ドロマイトを合計6トン、分割添加した。なお、前チャ−ジにおいては、ニッケル鉱石の溶融還元を行っており、炉内に残留していたNiスラグ量は、4トンと見積もられた。
【0047】
このチャ−ジの操業では、吹錬途中の造滓は不良で、スラグが溶湯を被覆しておらず、スピッテイングが多くみられた。この操業を2チャ−ジ連続して行った後の炉体マグネシア系煉瓦の溶損速度を調査したところ、1.0mm/Hr程度と溶損が進行していた。
【0048】
〔比較例2〕
この比較例の操業は、吹錬初期に造滓用フラックスを添加せず、本発明の範囲外の条件で、ニッケル鉱石の溶融還元が行われた。即ち、マグネシア系煉瓦を内張りした上底吹転炉型製錬炉に、約1300℃の溶銑(Fe:95wt%):約50トンを装入し、炭材としてコ−クス(フリ−C:87wt%):14トンを添加し、上吹き酸素ランスから酸素ガスを吹き込むことにより、溶湯温度が約1500℃になるまで昇温吹錬をした。その後、ニッケル鉱石の投入を開始し、ニッケル鉱石の溶融還元を行った。なお、昇温期および溶融還元期を通じて吹錬中に、MgO源として軽焼ドロマイト:合計1.2トン、および、マグネシアクリンカ−:合計2.0トンの各々を分割添加した。なお、前チャ−ジにおいては、ニッケル鉱石の溶融還元を行っており、炉内に残留していたNiスラグ量は、4トンと見積もられた。
【0049】
このチャ−ジの操業では、吹錬途中の造滓は不良で、スラグが溶湯を被覆しておらず、スピッテイングもみられた。この操業を2チャ−ジ連続して行った後の炉体のマグネシア系煉瓦の溶損速度を調査したところ、1.0mm/Hr程度と溶損が進行していた。
【0050】
以上の実施例から明らかなように、本発明の範囲内の条件によって、クロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑を製造した場合には、適正な性状の溶融スラグが形成され、しかも溶湯表面を被覆したので、炉体内張りのマグネシア系煉瓦の溶損が抑制され、しかもスピッテイング等の発生が皆無となり、安定した操業が行なわれた。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、クロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑を、合金含有酸化物の溶融還元により製造する場合、この発明による適正な造滓用フラックスを吹錬初期に添加することによって、良好なスラグが形成され、炉体の内張り耐火物の溶損が著しく抑制され、しかもスピッテイング等の炉内容物の噴出が皆無となり、工業上極めて有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の、クロム鉱石およびニッケル鉱石の溶融還元時、並びにステンレス鋼の脱炭精錬時のスラグの成分組成例を、Al2 O3 =10wt.%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平行状態図上にプロットして示したものである。
【図2】温度1500〜1600°Cの範囲内、スラグ塩基度(CaO/SiO2 )1.2における、スラグのMgO不飽和度とMgO煉瓦溶損指数との関係を示すグラフである。
【図3】温度1500〜1600°Cの範囲内、スラグ塩基度(CaO/SiO2 )1.2における、スラグのMgO不飽和度と軟化指数との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1の吹錬開始から終了までのスラグ組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に示したものである。
【図5】実施例2の吹錬開始から終了までのスラグ組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に示したものである。
【図6】実施例3の吹錬開始から終了までのスラグ組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に示したものである。
【図7】実施例4の吹錬開始から終了までのスラグ組成の変化を、Al2 O3 =10wt%におけるCaO−SiO2 −MgOの3元系平衡状態図上に示したものである。
Claims (2)
- 製錬炉に、少なくとも、クロム酸化物および/またはニッケル酸化物を含有する原料並びに炭材を供給し、前記製錬炉に酸化性ガスを供給することにより前記原料を溶解し、溶融還元することにより、クロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑を製造する方法において、前記クロム酸化物および/またはニッケル酸化物を前記製錬炉に装入する前の、吹錬の初期にフラックスを添加し、しかも前記フラックスのMgO含有量は、溶融還元操業温度における飽和溶解度よりも1〜15wt%の範囲内で少なく、更に、前記フラックスの融点は、溶融還元操業温度以下であることを特徴とする、クロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑の製造方法。
- 前記フラックスの化学成分組成は、高炉滓の組成と同じである請求項1記載のクロムおよび/またはニッケルを含有する溶銑の製造方法。
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